(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】SOI構造から酸化膜を除去する方法およびSOI構造を準備する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240705BHJP
H01L 27/12 20060101ALI20240705BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/02 B
H01L27/12 Z
H01L21/306 R
(21)【出願番号】P 2022535733
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 US2020062578
(87)【国際公開番号】W WO2021118818
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-11-28
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ロッツ,チャールズ アール
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ショーン ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】アーク,ヘンリー フランク
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/155876(WO,A1)
【文献】特開2005-340622(JP,A)
【文献】特開2013-084663(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079494(WO,A1)
【文献】特開2019-040958(JP,A)
【文献】特開2015-177150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 27/12
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンオンインシュレータ構造から酸化膜を除去する方法であって、
ハンドル構造、シリコン上部層、およびハンドル構造とシリコン上部層との間に配置された誘電体層を有するシリコンオンインシュレータ構造を提供する工程であって、シリコンオンインシュレータ構造はシリコンオンインシュレータ構造の上面に酸化膜を有し、シリコンオンインシュレータ構造はシリコンオンインシュレータ構造の中心から周辺エッジに延びる半径Rを有する工程、
前記シリコンオンインシュレータ構造を回転させながら、
前記シリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域にエッチング液を向ける工程、および、
前記シリコンオンインシュレータ構造を回転させながら、
前記シリコンオンインシュレータ構造の上面のエッジ領域にエッチング液を向ける工程であって、エッジ領域は中央領域から半径方向外方に配置されている工程、を含む方法。
【請求項2】
中央領域は、シリコンオンインシュレータ構造の中心から0.1×Rまで延びている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域にエッチング液を向ける工程は、エッチング液をシリコンオンインシュレータ構造の中心に向ける工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
エッジ領域は、シリコンオンインシュレータ構造の中心から0.66×Rの距離で始まり、シリコンオンインシュレータ構造の周辺エッジまで延びる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エッジ領域は、シリコンオンインシュレータ構造の中心から0.80×Rの距離で始まり、シリコンオンインシュレータ構造の周辺エッジまで延びる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エッチング液は、フッ化水素酸と酢酸とを含み、エッチング液中のフッ化水素酸(49%基準)と酢酸(氷酸)との比は、1:1以下である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エッチング液の流れは、エッチング液が中央領域からエッジ領域へ向け直している間は停止される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エッチング液を、600ml/分以下の速度で、シリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域に向け、エッチング液を、600ml/分以下の速度で、シリコンオンシュレータ構造の上面のエッジ領域に向ける請求項1に記載の方法。
【請求項9】
エッチング液を、0.5~10秒間、シリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域に向ける請求項1に記載の方法。
【請求項10】
エッチング液を、10秒間~20分間、シリコンオンインシュレータ構造の上面のエッジ領域に向ける請求項1に記載の方法。
【請求項11】
中央領域に向けられたエッチング液は、エッジ領域に向けられたエッチング液と同じ濃度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
中央領域に向けられたエッチング液は、エッジ領域に向けられたエッチング液と異なる濃度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
中央領域に向けられたエッチング液およびエッジ領域に向けられたエッチング液は、それぞれフッ化水素および酢酸を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
エッチング液が排出されるブームを動かして、エッチング液を中央領域からエッジ領域へ向け直す工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
シリコン上部層、ハンドル構造、およびシリコン上部層とハンドル構造との間に配置された誘電体層を含むシリコンオンインシュレータ構造を準備する方法であって、
ドナー構造にイオンを注入し、ドナー構造中に劈開面を形成する工程、
ハンドル構造を提供する工程、
結合工程の前に、
前記ドナー構造および
前記ハンドル構造の少なくとも一方に誘電体層を形成する工程、
前記ドナー構造を
前記ハンドル構造に結合して、
前記ドナー構造、
前記ハンドル構造、およびハンドル構造とドナー構造との間に配置された誘電体層を含む結合されたウエハ構造を形成する
結合工程、
前記ドナー構造の一部がシリコン上部層として
前記ハンドル構造に結合されたままであるように、結合された
前記ウエハ構造を
前記劈開面で劈開し、
前記ハンドル構造、
前記シリコン上部層、および
前記ハンドル
構造と
前記シリコン上部層との間に配置された
前記誘電体層を含むシリコンオンインシュレータ構造を形成する工程、
前記シリコンオンインシュレータ構造をアニールし、アニール中に
前記シリコンオンインシュレータ構造の少なくとも上面に酸化物を形成する工程、
前記シリコンオンインシュレータ構造を回転させながら、
前記シリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域にエッチング液を接触させ
て、前記酸化物の少なくとも一部を除去する工程、
前記シリコンオンインシュレータ構造を回転させながら、
前記シリコンオンインシュレータ構造の上面のエッジ領域にエッチング液を接触させ
て、前記酸化物の少なくとも一部を除去する工程、および、
前記シリコンオンインシュレータ構造の上面の
前記中央領域と
前記エッジ領域とを
前記エッチング液に接触させる工程の後に、
前記シリコン上部層の上にエピタキシャルシリコン層を堆積させる工程、を含む方法。
【請求項16】
結合工程の前に、ハンドル構造上に誘電体層を形成する工程を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
中央領域は、シリコンオンインシュレータ構造の中心から0.1×Rまで延びる請求項15に記載の方法。
【請求項18】
エッチング液をシリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域に向ける工程は、エッチング液をシリコンオンインシュレータ構造の中心に向ける工程を含む請求項15に記載の方法。
【請求項19】
エッジ領域は、シリコンオンインシュレータ構造の中心から0.85×Rの距離で始まり、シリコンオンインシュレータ構造の周辺エッジまで延びる請求項15に記載の方法。
【請求項20】
エッチング液の流れは、エッチング液が中央領域からエッジ領域へ向け直している間は停止される請求項15に記載の方法。
【請求項21】
シリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域にエッチング液を接触させる工程は、エッチング液をシリコンオンインシュレータ構造の中心に向ける工程を含む請求項15に記載の方法。
【請求項22】
エッジ領域は、シリコンオンインシュレータ構造の中心から0.66×Rの距離で始まり、シリコンオンインシュレータ構造の周辺エッジまで延びる請求項15に記載の方法。
【請求項23】
エッジ領域は、シリコンオンインシュレータ構造の中心から0.80×Rの距離で始まり、シリコンオンインシュレータ構造の周辺エッジまで延びる請求項15に記載の方法。
【請求項24】
エッチング液は、フッ化水素酸と酢酸とを含み、エッチング液中のフッ化水素酸(49%基準)と酢酸(氷酸)との比は、1:1以下である請求項15に記載された方法。
【請求項25】
シリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域を600ml/分以下の速度でエッチング液と接触させ、シリコンオンインシュレータ構造の上面のエッジ領域を600ml/分以下の速度でエッチング液と接触させる請求項15に記載の方法。
【請求項26】
シリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域を0.5~10秒間エッチング液と接触させる請求項15に記載の方法。
【請求項27】
シリコンオンインシュレータ構造の上面のエッジ領域を10秒~20分間エッチング液と接触させる請求項15に記載の方法。
【請求項28】
中央領域に接触させるエッチング液とエッジ領域に接触させるエッチング液とは同じ濃度を有する請求項15に記載の方法。
【請求項29】
中央領域に接触させるエッチング液とエッジ領域に接触させるエッチング液とは異なる濃度を有する請求項15に記載の方法。
【請求項30】
中央領域に接触させるエッチング液とエッジ領域に接触させるエッチング液とは、それぞれフッ化水素および酢酸を含む請求項15に記載の方法。
【請求項31】
エッチング液が排出されるブームを動かして、エッチング液を中央領域からエッジ領域へ向け直す工程を含む請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年12月13日に出願された米国仮特許出願第62/947,981号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の分野は、シリコンオンインシュレータ(SOI)構造から酸化膜を除去するための方法、特に、エピタキシャルシリコン増厚層を堆積する前にSOI構造から酸化膜を剥離するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シリコンオンインシュレータ構造は、最上層の厚さを増加させるためにシリコンをシリコン最上層上に堆積させるエピタキシャルプロセスに供されることがある。シリコンエピタキシャル層の品質は、エピタキシャル層が堆積される表面の品質に依存する。SOI構造は、エピタキシャルシリコン層の堆積の前にアニールしてもよい。このアニールにより、SOI構造の表面に酸化物(SiO2)が形成される場合がある。この酸化物は、通常、エピタキシャル成膜の前に構造の上面から除去される。いくつかの実施例では、アニール中に、テラス酸化物(すなわち、より厚い酸化物)がSOI構造上面の端部付近に形成される。テラス酸化物は、ドナーの丸みを帯びた端部付近の接合不足により、ドナー全体が除去されたSOI構造の端部部分(すなわち、劈開面より下のドナー)にあってよい。このテラス酸化物は、ハンドルウエハ上に成長した酸化物で、ドナーが除去された後も残っている場合がある。このテラス酸化物は、ウエハ表面で酸化物が不均一になるため、酸化物除去を複雑にする。
【0004】
酸化物を除去する従来の方法は、ウェットクリーナー/エッチャーにウエハを浸す浸漬剥離を含んでもよい。これにより、裏面を含むSOI構造の全表面から酸化膜が除去される。裏面酸化物は、SOI構造が取り扱われる際のスクラッチや損傷からSOI構造の底面を保護し、エピタキシ中にSOI構造の汚染やオートドーピングを防止する裏面シールとして機能することがある。裏面酸化膜を保護するために、マスキングを行うこともある。しかし、マスキングは、上部シリコン層に損傷を与える可能性がある(例えば、ウエハテープの接着および除去の際に、テープに接着剤をセットするため、または接着したテープを裏面から除去するために、上部表面に力が加えられる)。マスキングはまた、劣化した酸化物除去の巻き付きまたは延長を引き起こす、テープのエッジでのエッチングリークに悩まされるかもしれない。
【0005】
その他の酸化膜剥離方法としては、エッチング液をウエハの中央で分散させ、エッチング液をウエハ上で「扇状に」広げて酸化膜を剥離するウエハスピン法がある。浸漬法、ウエハスピン法ともに、シリコン上部層表面にフッ化水素(HF)のアンダーカットが形成される。
図1に示すように、SOI構造の準備中に結合されたウエハ構造を劈開すると、シリコン層にボイドが形成されることがある。ボイドは、上部層と誘電体層の一部が使用済みドナー構造で引上げられると発生する。
図2に示すように、ボイドがHFエッチング液にさらされると、HFはシリコンよりも誘電体材料(例えば、シリカ)を容易にエッチングするため、シリコン上部層の下の誘電体層を劣化させる。
【0006】
HFアンダーカットを低減しながらテラス酸化物を除去することができ、裏面酸化物を保存することができる、SOI構造の上部表面の酸化物を除去するための方法に対するニーズが存在する。そのような酸化物剥離方法を使用するSOI構造を準備するための方法に対するニーズが存在する。
【0007】
このセクションは、以下に説明および/または請求される本開示の様々な態様に関連し得る技術の様々な態様を読者に紹介することを意図するものである。この議論は、本開示の様々な態様のより良い理解を促進するために、読者に背景情報を提供するのに役立つと考えられる。したがって、これらの記述は、この観点から読まれるべきであり、従来技術の容認ではないことが理解されるべきである。
【発明の概要】
【0008】
本開示の一態様は、シリコンオンインシュレータ構造から酸化膜を除去するための方法に関する。シリコンオンインシュレータ構造が提供される。シリコンオンインシュレータ構造は、ハンドル構造と、シリコン上部層と、ハンドル構造とシリコン層との間に配置された誘電体層とを有する。シリコンオンインシュレータ構造は、シリコンオンインシュレータ構造の上面上に酸化膜を有する。シリコンオンインシュレータ構造は、シリコンオンインシュレータ構造の中心から周方向の端部まで延びる半径Rを有する。シリコンオンインシュレータ構造を回転させながら、エッチング液をシリコンオンインシュレータ構造の上面の中央に当てる。エッチング液は、シリコンオンインシュレータ構造を回転させながら、シリコンオンインシュレータ構造の上面のエッジ領域に向けて供給される。エッジ領域は、中央領域から半径方向外側に配置される。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、シリコン上部層と、ハンドル構造と、シリコン上部層とハンドル構造との間に配置された誘電体層とを含むシリコンオンインシュレータ構造を準備するための方法に関する。ドナー構造にイオンを注入し、ドナー構造に劈開面を形成する。ハンドル構造が提供される。結合前に、ドナー構造およびハンドル構造の少なくとも一方に誘電体層を形成する。ドナー構造は、ハンドル構造に結合され、ドナー構造、ハンドル構造、およびハンドル構造とドナー構造との間に配置された誘電体層を含む結合ウエハ構造を形成する。結合ウエハ構造は、ドナー構造の一部がシリコン上部層としてハンドル構造に結合されたままになるように、劈開面で劈開され、この劈開により、ハンドル構造、シリコン上部層、およびハンドル層とシリコン上部層との間に配置された誘電体層を含むシリコンオンインシュレータ構造を形成する。シリコンオンインシュレータ構造はアニールされ、アニール中にシリコンオンインシュレータ構造の少なくとも上面に酸化物が形成される。シリコンオンインシュレータ構造を回転させながら、シリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域をエッチング液に接触させる。シリコンオンインシュレータ構造を回転させながら、シリコンオンインシュレータ構造の上面のエッジ領域を、エッチング液に接触させる。シリコンオンインシュレータ構造の上面の中央領域とエッジ領域とを接触させた後、シリコン上層にエピタキシャルシリコン層を堆積させる。
【0010】
本開示の上述の態様に関連して指摘された特徴には、様々な改良が存在する。さらなる特徴もまた、同様に本開示の上述の態様に組み込まれ得る。これらの洗練された特徴および追加の特徴は、個別にまたは任意の組み合わせで存在し得る。例えば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して後述する様々な特徴は、本開示の上述した態様のいずれかに、単独でまたは任意の組み合わせで組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】SOI構造上のHFアンダーカットの形成を示す模式図である。
【
図1B】SOI構造上のHFアンダーカットの形成を示す模式図である。
【
図1C】SOI構造上のHFアンダーカットの形成を示す模式図である。
【
図2】SOI構造上のHFアンダーカットの形成を示す模式図である。
【
図3】その上に誘電体層を有するドナーウエハを有するドナー構造の断面図である。
【
図4】その上にイオン注入中のドナー構造の断面図である。
【
図5】ハンドル構造に結合されたドナー構造の断面図である。
【
図6】劈開面においてドナー構造を劈開する際の、結合されたウエハ構造の断面図である。
【
図8】テラス酸化物を有する場合および有しない場合のSOI構造上に堆積されたエピタキシャル層の厚さの均一性を示すグラフである。
【
図9】低温エピタキシャル成長およびテラス酸化物(左パネル)、および酸化物なしの高温エピタキシャル成長(中央および右パネル)、に対する上部シリコンエッジの写真である。
【
図10】エピタキシャル成長中のHFアンダーカットの模式図である。
【
図11】中央スピンエッチ酸化物剥離プロセス後のボイドでのHFアンダーカットの写真である。
【
図12A】中央のみのディスペンスにより生じたHFアンダーカットの画像である。
【
図12B】中央からエッジへのディスペンスにより生じたHFアンダーカットの画像である。
【
図13】700ml/分の流速でのエッジディスペンスについての欠陥マップである。
【
図14】400ml/分の流速でのエッジディスペンスについての欠陥マップである。
【
図15】1μm以上のLPDカウントを有するテラス酸化物除去を行った場合と行わなかった場合のSOI上部シリコン表面のSP1表面の比較である。
【
図16】ウエハ当たりの総欠陥面積(mm
2)を示す、テラス酸化物除去を行った場合と行わなかった場合のSOI上部シリコン表面のSP1表面の比較である。
【
図17】0.2μm以上の粒子のカウントを有するエピタキシ後の上部シリコン表面検査のSPI表面の比較である。
【
図18】総スクラッチ長を示すエピタキシ後上部シリコン表面検査のSPI表面の比較である。
【
図19】0.16μm以上の粒子のカウントを有する、終点SP1表面検査比較である。
【
図20】0.5μm以上の粒子のカウントを有する終点SPI表面検査である。
【
図21】0.8μm以上の粒子のカウントを有する終点SP1表面検査である。
【
図22】ウエハのカウントに対するウエハあたりの欠陥の総面積のボックスプロット比較である。
【
図23】ウエハのカウントに対する0.8μm以上の欠陥のウエハあたりの欠陥カウントのボックスプロット比較である。
【0012】
対応する参照文字は、図面全体を通して対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の規定は、シリコンオンインシュレータ構造(本明細書では「SOI構造」またはさらに単に「ウエハ」と呼ぶことがある)から酸化膜を剥離するための方法に関する。酸化膜剥離方法の実施形態は、第1段階で構造を回転させながら構造の中央付近にエッチング液を分散させ、第2段階で構造を回転させながら構造のエッジ部に向かってエッチング液を分散させるCE(center-to-edge)スピンエッチであってもよい。
【0014】
シリコンオンインシュレータ構造の形成方法
酸化物を除去するための本開示の方法は、一般に、酸化膜を除去することが望ましい任意の結合ウエハ構造で使用することができる。いくつかの実施形態では、処理される構造は、シリコンオンインシュレータ構造でもよい。そのような構造は、ハンドルウエハと、シリコン層(「シリコンデバイス層」または「シリコン上部層」と呼ばれることもある)と、ハンドルウエハとシリコン層との間に配置された誘電体層とを含んでもよい。以下は、シリコンオンインシュレータ構造を準備するための方法およびシステムの単なる一例であり、特に断らない限り、他の方法を用いることもできる。
【0015】
結合ウエハ構造を形成するためにハンドル構造に結合され得るドナー構造30の一例を
図3に示す。ドナー構造30は、ドナーウエハ12の前面上に堆積された誘電体層15で形成されてもよい。代わりに、誘電体層15は、ハンドルウエハ上に成長または堆積されてもよく、または誘電体層は、ドナーウエハとハンドルウエハの両方に成長されてもよい。これらの構造は、制限なく、種々の配置のいずれかで結合されてもよいことを理解されたい。好適なドナーウエハ12は、シリコン、ゲルマニウム、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、ガリウムヒ素、インジウムガリウムヒ素、およびそれらの任意の組み合わせで構成されてもよい。いくつかの実施形態ではドナーウエハは単結晶シリコンで構成される。
【0016】
誘電体層15は、SiO2、Si3N4、酸化アルミニウム、または酸化マグネシウムを含む材料のような、SOI構造での使用に適した任意の電気絶縁性材料であってもよい。いくつかの実施形態では、誘電体層15はSiO2である(すなわち、誘電体層は本質的にSiO2で構成される)。誘電体層がシリカ(SiO2)である実施形態では、誘電体層は、「埋込酸化物(buried oxide)」または「BOX」層15と呼ばれることがある。誘電体層15は、熱酸化、湿式酸化、熱窒化またはこれらの技術の組み合わせなど、当技術分野における任意の既知の技術に従って適用することができる。
【0017】
例えば
図4に示すように、イオン(例えば、水素原子、ヘリウム原子または水素原子とヘリウム原子の組み合わせ)は、劈開面17を規定するためにドナー構造の前面22の下の実質的に均一な規定深度で注入されてもよい。ヘリウムイオンおよび水素イオンが劈開面17を形成するために構造に共注入されるとき、それらは同時にまたは順次に注入されてもよいことに留意されたい。いくつかの実施形態では、誘電体層15の堆積の前にイオンが注入される。注入が誘電体層15の堆積に先立って行われる場合、ドナーウエハ12上の誘電体層のその後の成長または堆積は、ドナー層における面17に沿った早期分離または劈開を防止するのに十分低い温度で(すなわち、ウエハ結合プロセスステップの前に)好適に実施される。
【0018】
ハンドル構造10(
図5)は、シリコン、炭化ケイ素、サファイア、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、ガリウムヒ素、インジウムガリウムヒ素、石英およびこれらの組み合わせのような、多層構造を準備するための任意の適切な材料から得られるハンドルウエハを含んでもよい。ハンドル構造10は、ハンドルウエハ上に堆積された誘電体層を含んでもよいし、他の実施形態と同様に、ハンドルウエハのみからなる(すなわち、誘電体層を含まない)ものであってもよい。ハンドルウエハおよびドナーウエハは、単結晶シリコンウエハでもよく、従来のチョクラルスキ結晶成長方法に従って成長した単結晶インゴットからスライスされた単結晶シリコンウエハでもよい。
【0019】
図5に示すように、ドナー構造の誘電体層15の前面は、好適には、ハンドル構造10の前面に結合され、結合プロセスを通じて結合ウエハ構造20を形成する。誘電体層15およびハンドル構造10は、構造の表面を例えば酸素または窒素を含むプラズマに曝すことによって表面活性化を行いながら結合してもよい。その後、ウエハは互いに押圧され、結合界面18での結合がその間に形成される。一般に、ウエハ結合は、結合界面の形成を達成するために採用されるエネルギーが、結合界面の完全性がその後の処理(すなわち、ドナーウエハ中の劈開面または分離面17に沿った分離による層移動)の間に維持されることを保証するのに十分であることを条件として、当技術分野で知られている本質的に任意の技術を用いて達成される。
【0020】
一旦準備されると、結合ウエハ構造20は劈開装置内に配置され、層状半導体構造(例えば、SOI構造)を形成するためにボンド構造から劈開面に沿ってドナーウエハの一部を分離(すなわち、劈開)する。一般に、劈開装置は、熱的および/または機械的に誘導される劈開技術のような、当該技術分野において既知の技術を使用してこの破壊を誘導する。
【0021】
図6を参照すると、分離時に、2つの構造30、31が形成される。結合ウエハ構造20の分離は、ドナー構造12(
図5)における劈開面17に沿って起こるので、ドナー構造の一部は、両方の構造の一部として残る(すなわち、ドナーウエハの一部は、誘電体層15と共に移される)。構造30は、ドナーウエハの一部からなる。構造31は、SOI構造であり、ハンドル構造10と、誘電体層15と、誘電体層15の上に配置されたシリコン上部層25(劈開後に残るドナーウエハの一部)とを含む。ドナー構造およびハンドル構造が共に誘電体層を含む実施形態では、誘電体層は結合して、SOI構造の誘電体層15を形成する。
【0022】
結合されたウエハ構造を劈開面に沿って分離するために使用される劈開デバイスは、単独でまたはアニールに加えて、分離が機械的力によって誘導または達成される機械的劈開デバイスであってよい。例えば、ドナー構造の一部を結合構造から引き離すために、結合構造の対向する側面に対して垂直に機械的な力が加えられる固定具に結合構造が配置されてもよい。
【0023】
例示的な劈開装置は、結合ウエハ構造20のリーディング劈開エッジの近くに機械的な力を加える吸引カップを含む。ドナーウエハの部分の分離は、劈開面17に沿った亀裂の伝播を開始するために、劈開面17において結合ウエハのエッジに機械的ウェッジまたはブレードを適用することによって開始しても良い。その後、吸引カップによって加えられた機械的な力は、ドナー構造の部分を結合された構造から引き離し、こうしてSOI構造を形成する。機械的劈開装置は、Silicon Genesis Corporation(カリフォルニア州サンノゼ)のDebond & Cleave Toolsのような市販のものである。
【0024】
代わりの実施形態では、劈開デバイスは、結合構造をアニールすることによって劈開が達成される熱劈開デバイスである。例えば、熱劈開は、不活性(例えば、アルゴンまたは窒素)雰囲気または周囲条件下で、少なくとも約10秒、少なくとも約1分、少なくとも約15分、少なくとも約1時間または少なくとも約3時間(より高温ではより短いアニール時間を必要とし、その逆も同様)、約200℃~約800℃、または約250℃~約650℃で実行されてもよい。熱劈開装置は、劈開の伝播が結合構造の前縁(すなわち、炉を通る構造の移動方向の前縁)で達成され、結合ウエハ構造の後縁に向かって進行するベルト炉であってもよい。他のタイプの劈開装置も使用することができる。
【0025】
SOI構造31の層(ハンドル構造10、誘電体層15、およびシリコン上部層25)は、一般に、層が本明細書に記載されるように機能することができる任意の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、シリコン上部層25は比較的薄く(例えば、約0.1μm~約0.3μmの厚さ)、誘電体層15は比較的厚い(約1.0μmまたはそれ以上)。SOI構造31は、構造31の中心Cから周縁Eまで延びる半径R(
図7)を有するが、SOI構造31は、特に断らない限り、任意の半径(例えば、約100mm、約150mm以上)を有することができる。
【0026】
アニール
SOI構造31(すなわち、ドナーウエハの薄いデバイス層25)の劈開面は、追加の処理によって平滑化されてもよい粗面を有する。構造31は、その上にデバイス製造のために、および/または厚膜化エピタキシャル層の堆積のために、望ましい特徴を有する層表面を生成するために、追加の処理に付されることがある。
【0027】
本開示のいくつかの実施形態に従って、シリコンオンインシュレータ構造31は、プレエピタキシ平滑化アニール(PESA)に供される。平滑化アニールは、構造31の上面32(
図7)上のシリコンを再整理する。特定の理論に束縛されることなく、平滑化アニールはまた、ハンドル構造10とシリコンデバイス層25との間の酸化物同士の結合を強化する(すなわち、ハンドルウエハおよびドナーウエハがそれらの結合表面に酸化物を含む実施形態において)。アニールの前に、構造31の上面32は、任意選択で、洗浄および/または簡単なエッチングまたは平坦化を受けてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、シリコンオンインシュレータ構造31のアニールは、少なくとも約900℃、少なくとも約1000℃、または少なくとも約1050℃(例えば、約1050℃~約1150℃)の温度で実施される。アニールの長さは変化してもよく(例えば、0.5時間~16時間)、より高いアニール温度はより低いアニール期間に対応し、逆もまた然りである。雰囲気としては、O2、N2、H2、アルゴン、およびそれらの組み合わせが例示される。アニールにより、SOI構造31の表面(すなわち、アニール中のすべての露出した表面)に酸化物が形成される。酸化物の厚さは変化してもよく、いくつかの実施形態では、約0.001μmから約0.02μmの厚さである。
【0029】
一般に、シリコンオンインシュレータ構造31上に形成された酸化物は、構造の全ての表面(上面、下面および側面(例えば、ハンドル上斜面、頂点、下斜面))上に形成される。いくつかの実施形態では、前面32の周辺エッジに向かって比較的厚い酸化物が存在する(例えば、ドナーが露出した埋込酸化物層と結合しなかった場所)。この酸化物は、本明細書において「テラス酸化物」と呼ばれることがある。テラス酸化物の幅は、ウエハのエッジ形状に応じて変化してもよい(例えば、幅1mm~3mm)。また、テラス酸化物の厚さは、ハンドル構造が酸化された厚さであってもよい。
【0030】
酸化物の除去
本開示の実施形態に従って、シリコンオンインシュレータ構造31上に形成される酸化物の少なくとも一部は、後述するエピタキシャルシリコン層の堆積の前に除去される(例えば、構造31の上面32上に形成される酸化物は少なくとも部分的にまたは完全に除去される)。本開示のいくつかの実施形態では、構造31の上面32に垂直に配置され、構造31の中心C(
図7)を通って延びる回転軸で、シリコンオンインシュレータ構造31が回転されるスピンエッチプロセスによって、酸化物の少なくとも一部は除去される。
【0031】
スピンエッチングプロセスは、SOI構造を回転させながらエッチング液をSOI構造に向ける(例えば、構造の上面32の上方から上面32に吹き付けるなど)2段階プロセス(すなわち、少なくとも2段階)であってよい。第1段階では、エッチング液は、シリコンオンインシュレータ構造31を回転させながら、シリコンオンインシュレータ構造31の上面33の中央領域42(
図7において破線で囲まれている)に向けられる。構造31を回転させることによって、エッチング液は、構造の表面上に扇形に広がり、それによって、構造31の上面32から酸化物をエッチングして除去する(すなわち、剥離する)ことができる。この点で、本明細書で使用される「エッチング」および/または「剥離」という用語は、限定的な意味で考えられるべきではなく、構造が溶液と接触する化学プロセスによってシリコンオンインシュレータ構造31の表面から酸化物を除去する任意のプロセスにおいて、特に断らない限り使用されてもよい。
【0032】
シリコンオンインシュレータ構造31の上面31の中央領域42は、構造の中央領域がエッチング液と接触するように比較的狭くてもよい(例えば、0.25×R未満または0.1×R未満の半径を有する)。いくつかの実施形態では、エッチング液は、酸化物除去の第1段階の間、シリコンオンインシュレータ構造31の中心Cに向けられる。
【0033】
第1段階のエッチングが完了した後、第2段階のエッチングが開始され、その中で、シリコンオンインシュレータ構造31を回転させながら、エッチング液がシリコンオンインシュレータ構造31の上面32のエッジ領域45に向けられる。エッジ領域45は、中央領域42から半径方向外側に配置されている。エッジ領域45(第2の破線で示す)は、構造31の中心Cから所定の距離からその周方向エッジEまで延びており、例えば、エッジ領域は、シリコンオンインシュレータ構造31の中心Cから距離0.66×Rで始まり、シリコンオンインシュレータ構造31の周辺エッジEまで延びてもよい。他の実施形態では、エッジ領域は、シリコンオンインシュレータ構造31の中心Cから距離0.80×R、あるいは0.85×Rで始まり、シリコンオンインシュレータ構造31の周辺エッジEまで延びている。そこを通って酸が吐出されるブームの位置を半径方向に変更することにより、SOI構造の上面に酸が吐出される点を変更(すなわち、第1段階から第2段階への移行)することができる。
【0034】
第1段階(中央領域分布)および第2段階(エッジ領域分布)の相対的な長さは、SOI構造の所望の品質に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、第1段階は0.5秒~10秒(例えば、3~5秒)であり、第2段階は10秒~約20分(例えば、1分~約15分または約1分~約10分)である。いくつかの実施形態では、酸の流量は、第1段階と比較して第2段階で減少する(例えば、第1段階の流量の90%以下、75%以下、または50%以下)。代替的にまたは追加的に、エッチング液の流れは、エッチング液が中央領域からエッジ領域へと方向転換される間(例えば、ブームが中央領域からエッジ領域へと移動される間)、一時停止することができる。
【0035】
エッチングプロセスは、乾燥時間を短縮するために、すすぎ(例えば、オゾン脱イオン水を使用する)および窒素ストロークを含む追加の段階を含んでもよい。いくつかの実施形態では、エッチング液がSOI構造に向けられる第1段階は、エッチング液が中央領域42に向けられる唯一の段階である。代替的にまたは追加的に、エッチング液は、2つ以上の段階(例えば、上述した第2段階、続いて中央に分配されるリンス段階、続いてエッチング液がエッジ領域45に向けられる第4段階)でエッジ領域45に向けることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、エッチング液は、フッ化水素酸(HF)および酢酸を含む。いくつかの実施形態において、エッチング液中のフッ化水素酸(49%)と酢酸(氷酸)の比は、1:1以下、3:2以下、2:1以下、3:1以下、または6:1以下である。任意選択で、エッチング液は、様々な界面活性剤、緩衝剤(例えば、フッ化アンモニウム)、他の酸化酸(例えば、HCl)、および/または他の酸化化合物(H2O2、オゾンなど)のような他の添加剤を含んでもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、エッチング液を中央領域および/またはエッジ領域に分配する間のエッチング液の流量は、従来の酸化物スピンエッチングプロセスと比較して減少する。いくつかの実施形態において、エッチング液(例えば、HFおよび酢酸を有する溶液)の流量は、約600ml/分以下または約500ml/分以下(例えば、約100ml/分~約600ml/分または約100ml/分~約400ml/分)である。この点、エッチングプロセス中に流量が変化する実施形態では、上述の流量は、エッチング液がSOI構造に接触している間(例えば、リンス工程を除く)に平均化される時間平均流量であってもよい。
【0038】
SOI構造を回転させるのに適した装置は、例えば、Entrepix(アリゾナ州フェニックス)により販売されているNexGen MG Series Single Wafer Wet Etch Platformを含む。他の適切な装置も、ACM Research(カリフォルニア州フリーモント)、AP&S International GmbH(ドイツ、ドナウエッシンゲン)、Decker Anlagenbau GmbH(ドイツ、ベルヒング)、KED Tech(ミシシッピー州オリーブブランチ)、LAM Research(カリフォルニア州フリーモント)、PicoTrack USA(カリフォルニア州サンタクララ)、SCREEN Semiconductor Solutions(日本、京都)、Tazmo Co,Ltd.(カリフォルニア州フリーモント)、およびVeeco(ニューヨーク州プレインビュー)が挙げられる。エッチングプロセスは、表面上のボイドのHFアンダーカットを促進することなく、SOI構造の上面から酸化物を除去するのに十分な条件下で実施されてもよい。例えば、および本開示のいくつかの実施形態に従って、SOI構造は、300~2500RPMで、350~2500ml/分の酸分配速度で回転してもよい。本開示のいくつかの実施形態に従って、酸化物除去プロセスは、マスキングステップを伴わず、および/またはSOI構造の浸漬を伴わない。
【0039】
上述のエッチングプロセスは、シリコンオンインシュレータ構造31の上面32上の酸化物の少なくとも一部を除去する。いくつかの実施形態では、酸化物は、構造の上面32全体から除去される(すなわち、テラスエッジ酸化物が除去される)。また、エッチングプロセスは、構造31の側面(例えば、ハンドル上斜面、頂点、下斜面)から酸化物の全てまたは一部を除去してもよい。構造の側面の酸化物は、スピンエッチ中にエッチング液がウエハの側面を流れた結果として除去されてもよい。エッチング液が構造31の側面を流れる際、一部は構造31の裏面にも接触し(例えば、毛細管現象によって)、ウエハの裏面のエッジ領域(例えば、裏面の0~1mm)の酸化物の一部を除去してもよい。
【0040】
シリコンオンインシュレータエピタキシ
酸化物が構造31の上面32から少なくとも部分的に除去されると、シリコンデバイス層の厚さを増加させるために、構造31の上面32にシリコンエピタキシャル層が堆積されてもよい。シリコンは、当業者に利用可能な任意のエピタキシャルプロセスによって堆積されてもよい。いくつかの実施形態では、エピタキシャルプロセスは、シリコン層25の厚さを1μm以上に増加させる。
【0041】
一般に、シリコンは、当業者が利用できる既知の方法のいずれかによって堆積させることができる。例えば、シリコンは、有機金属化学気相成長(MOCVD)、物理気相成長(PVD)、化学気相成長(CVD)、低圧化学気相成長(LPCVD)、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)、または分子線エピタキシ(MBE)を使用して堆積されてもよい。LPCVDまたはPECVD用のシリコン前駆体としては、メチルシラン、四水酸化シリコン(シラン)、トリシラン、ジシラン、ペンタシラン、ネオペンタシラン、テトラシラン、ジクロルシラン(SiH2Cl2)、トリクロルシラン(SiHCl3)、四塩化シリコン(SiCl4)等がある。例えば、約550℃~約690℃、例えば約580℃~約650℃の温度範囲でシラン(SiH4)を熱分解することにより、表面酸化層上にシリコンを堆積させることができる。チャンバ圧力は、約70~約400mTorrの範囲であってよい。
【0042】
シリコンオンインシュレータ構造を準備するための従来の方法と比較して、本開示の方法はいくつかの利点を有する。スピンエッチプロセスは、裏面酸化物を維持しながら、SOI構造の上面および側面の酸化物を除去することを可能にする。裏面酸化物は、SOI構造が取り扱われる際のスクラッチおよび損傷からSOI構造の底面を保護し、エピタキシ中のSOI構造の汚染またはオートドーピングを防止するための裏面シールとして機能することができる。中心-エッジ(center-to-edge)スピンエッチングは、SOI構造のエッジ付近のテラス酸化物を除去し、エッジに向かうエピタキシャル成長を改善することができる。エピタキシャル成長したシリコン層は、均一性が向上し、微粒子欠陥が減少することが特徴である。例えば、上部シリコン層のエッジに形成されるポリシリコンノジュールは、低減または防止され得る。そのようなノジュールは、美容的に見える霞んだ(上部シリコン)エッジを付与し、これは、前面検査で欠陥(汚染)として認識される可能性がある。シリコンエピタキシャル層の堆積中、ノジュールまたはグレインは、構造から剥がれ落ち、SOI構造の内部で上部シリコン層上に落ち、LLS欠陥または場合によっては上部シリコン表面上のポリシリコン形成につながる可能性がある。
【0043】
テラス酸化物は、ポリシリコンの核生成と成長、粒子の脱落を可能にする。この効果は温度の上昇に伴って増大するため、テラス酸化物を低減または除去することにより、より高い温度のエピタキシを使用することができ、これはまたエピタキシャル層の品質を向上させる。
【0044】
センタートゥエッジプロセスでは、エッチング液との接触時間が短くなるため、HFアンダーカットの程度も低減される。HFアンダーカットは、より低いエッチング液速度(例えば、600ml/分未満または500ml/分未満)および/または比較的低い酢酸濃度(例えば、1:1未満、3:2未満、2:1未満、3:1未満または6:1未満)の使用によってさらに低減され得る。センターエッチング時に比較的低い流量を使用すると、膜厚が減少し、ディウェッティング時間が短くなるため、HFが表面を濡らす接触時間が短縮される。酢酸濃度の低減は、界面活性剤濃度が低下するため、HFとベアシリコンの接触角を大きくし(HFと酸化シリコンとの接触角を小さくし)、アンダーカット領域の毛細管圧を増加させるため、ボイド領域でのHFのアンダーカットを低減すると考えられる。
【0045】
比較的短い時間(例えば、10秒未満または5秒未満)酸を中央領域に向け、その後、テラス酸化物を除去するためにエッジ領域ディスペンスに移行する中心-エッジ間酸処分プロセスの実施形態は、エッジディスペンス中のエッチング液の飛散を低減または排除する。中央領域分配からエッジ領域分配の間でエッチング液を一時停止させると、飛散がさらに減少する場合がある。このエッチング液の一時停止はまた、HFアンダーカットをさらに減少させるエッジ領域の内部であるウエハ上面のディウェッティングを促進し得る。飛散は、排気によって巻き込まれる可能性のあるエッチングのエアロゾルを形成し、煙霧の増加を引き起こすので、飛散の減少または排除は有利である。このような煙霧は、通常、大気中に放出する前に除去されなければならない。エッチングのエアロゾルは、排気の流れの外でツールに入り込み、ツールの部品を損傷させ、ツールの寿命を縮める可能性がある。また、自動表面検査で見たときに、エアロゾルがウエハの表面欠陥の原因となることもある。飛沫はまた、回収された酸の量を減少させ、それによってウエハあたりの酸の消費量を増加させる。
【0046】
実施例
本開示のプロセスは、以下の実施例によってさらに説明される。これらの実施例は、限定的な意味で見るべきではない。
【0047】
実施例1:テラス酸化物を有するおよび有しない場合の膜厚均一性およびシリコンエッジ品質
構造表面にテラス酸化物を含むシリコンオンインシュレータ構造のシリコン層上に成長したエピタキシャル層の膜厚均一性と、テラス酸化物を含まないシリコンオンインシュレータ構造のシリコン層上に成長したエピタキシャル層の膜厚均一性を
図8に示す。テラス酸化物をなくすことで、シリコン吸着原子が表面拡散し、単結晶格子構造中により容易に取り込み、または同化できる高温でエピタキシャル成長を行うことができる。
図8に示すように、テラスのない高温エピタキシャルプロセス(「テラス酸化物なし」)は、テラス酸化物を有する低温エピタキシャルプロセス(「テラス酸化物あり」)よりも均一である。
【0048】
図9は、エピタキシャル成長後の上部シリコンのエッジを示す図である。左のパネルは、酸化物テラスエッジを有する低温での上部シリコンであり、右の2つのパネルは、酸化物テラスエッジを有しない高温のエピでの上部シリコンである。テラスエッジのあるSOI構造の上部シリコンは、上部シリコン層のエッジに向かってグレインやノジュールを含んでいることがわかる。
【0049】
実施例2:エッチャント溶液の中心のみの配布のないHFアンダーカット
酸化物エッチ液(3:4のHF:酢酸の体積比(80%酢酸)であって、HF:氷酢酸:水の比が3.5:3.8:1と等価)をスピニングSOI構造の中央部に配布した。SOI構造は、SEZ223スピンエッチツール上で、1500ml/分の酸ディスペンス速度で、1900RPMで回転させた。
図10に示すように、得られた構造は、シリコン層内のボイドにおけるHFアンダーカットを含んでいた。
【0050】
酸化物エッチング液(体積比で6:1のHF:酢酸(氷酢酸、100%))を、スピンしているSOI構造の中央に配布した。SOI構造は、NexGen MG22スピンエッチャーを用いて、酸のディスペンス速度を2000ml/分として、700rpmで回転させた。
図11に示すように、得られた構造は、シリコン層のボイドにHFアンダーカットを含んでいた。
図11に示すように、アンダーカットは非常に深刻であり、上部シリコンはもはや十分に支持されず、剥がれ始めている。画像上では、アンダーカットはボイド(暗色)の周りに明るい色の帯のように見える。また、アンダーカットのエッジは、ボイドのエッジが粗くギザギザしているのに比べ、滑らかでより拡散しているように見える。
【0051】
実施例3:エッチング剤溶液の中央のみの分布および中央からエッジへの分布によるHFアンダーカットの比較
SOI構造(直径200mm)から、酸が構造の中央にのみ分配され以下の表1の上パネルに示されるステップに従って、酸化物を剥離した。HF:酢酸エッチング(280秒)の後、構造をオゾン脱イオン水でリンスし、窒素に曝した。これらのサイクルは、SOI構造について(ステップ1~3を2回実行)、560秒の総酸ディスペンス時間で繰り返された。
【0052】
別のSOI構造(直径200mm)から、表1の下パネルのステップに従って、酸化物を剥離した。構造の中央に酸を分配した3秒間のHF:酢酸エッチングの後、ブームを構造の中央から90mm(エッジから10mm)に移動させ、280秒間酸を分配した。オゾン脱イオン水リンス後、構造中央から90mmの位置でのHF:酢酸エッチングを繰り返した(総酸分布時間563秒)。その後、再度水洗いを行い、窒素に曝露した。
【0053】
表1:エッチング液の中央のみの分配(上図)およびエッチング液の中央からエッジへの分配(下図)を伴うエッチングレシピ
【0054】
アンダーカットは、それぞれの顕微鏡写真(
図12Aおよび
図12B)において、アンダーカットの面積(すなわち、上部シリコンのエッジとBOXがアンダーカットされていない点アンダーカットの内部-との間)を測定するImageJのようなソフトウェア処理ツールによって決定された。線の平均長さ(上部シリコンの端の長さとアンダーカット領域の内部の長さの間の平均値)を測定する。面積を平均長さで割ると、平均的なアンダーカットが得られる。
図12Aに中央のみ分配によるアンダーカットを、
図12Bに中央からエッジまでの分配によるアンダーカットを示す。中央ディスペンスで発生したHFのアンダーカットは18.9μm、中央からエッジディスペンスで発生したアンダーカットは2.6μmであった。
【0055】
実施例4:中央-エッジプロセスにおける流量の減少
SOI構造(200mm)を、700ml/分の流量で60秒間、HF:酢酸溶液エッジディスペンス(中心から90mm、すなわち端から10mm)しながら、400rpmで回転させた。別のSOI構造(200mm)は、流速400ml/分で60秒間、HF:酢酸溶液エッジディスペンス(中心から90mm、すなわち端から10mm)をしながら、400rpmで回転させた。画像マップ(KLA-Tencor SPI-TBIマップ)を
図13(400ml/分)および
図14(700ml/分)に示す。SOI構造はセンターエッチングされていない。
【0056】
図13および
図14の最も左の画像は、エッジ酸化膜剥離前のウエハのSP1マップである。左から2番目の画像は、エッジ酸化物剥離処理した後のSP1マップである。左から3番目の画像は、SC1およびSC2洗浄後のSP1マップである。4枚目(右端)の画像は、除去不可能な欠陥を示す2回目の洗浄後のマップである。400ml/分で処理したウエハのSP1マップ(
図14)は、欠陥が少ないことがわかる。
【0057】
実施例5:中央からエッジのスピンエッチと浸漬ウエットベンチの比較
SOI構造は、標準的な洗浄操作(線形、液浸ウエットベンチにおけるSC1、SC2およびオゾン浴洗浄)(「QEE(EOS+HTE)」)でテラス酸化物を除去するために中央から端までの酸分布で処理された。SOI構造は、線形、浸漬ウエットベンチでアニール酸化物を除去し(テラス酸化物除去なし)、その後、同じ標準洗浄操作で処理した(「QEB(POR)」)。
【0058】
両方のセットのSOI構造の確率分布を
図15および
図16に示す。統計的仮説検定、例えばルビーン検定(Leven's test)を用いると、粒子数(複合、正規モード、LPD-N)>1μm(CNL>1)(
図15)または総面積数(CNTRAEA)(
図16)に対する分布は、2セットの構造について異ならないことが示される。これは、テラス酸化物剥離プロセスが表面に影響を与えないはずであるため、予想されたことである。
【0059】
比較的高い温度で中央からエッジまでの酸化物剥離を受けたSOI構造上に、エピタキシャル層を堆積させた。また、従来の方法によって酸化膜剥離した(すなわち、テラス酸化膜を含む)SOI構造上にエピタキシャル層を堆積させた。各構造の上部シリコン層は0.15μmから1.0μmに増加した。KLA Tencor SP1を用いて欠陥マップを作成した.
図17は、0.2μmを超える欠陥(複合斜線、粒子)の比較(COP>0.2)であり、
図18は、2つのセットの構造の総傷長(mm)の比較(COSCRLEN)である。
図17および
図18において、低い値(0に近い値)は、欠陥(粒子)が少ないことを示す。
【0060】
同じ2セットのウエハを、様々な計測および検査を用いた最終洗浄と、最終SP1表面検査に付した。サイズ0.16μm以上の粒子を用いた最終SP1表面検査を
図19に、0.5μm以上を
図20に、0.8μm以上を
図21に示す。すべての場合において、中央からエッジまでの酸分布(EOS+HTE)処理構造(すなわち、テラス酸化物を除去したウエハ)は、より低いカウントを示し、これらの差は、95%の信頼水準で統計的に有意である。
【0061】
図22および
図23は、ウエハのカウントにわたって、中央からエッジまでの酸分布を有するSOIウエハ(EOS+HTE)および従来のSOIウエハ(POR)を比較するボックスプロットである。
図22は、ウエハのセットについて、ウエハあたりの欠陥の総面積を示し、
図23は、ウエハのセットについて、0.8μm以上の欠陥のウエハあたりの欠陥カウントを示す。
【0062】
高温エピタキシにおける低ディスペンス速度(例えば、500ml/分以下)で中央からエッジへの酸分布は、低い表面欠陥率で4~6%の歩留まりを改善することが実証されている。
【0063】
本明細書で使用されるように、寸法、濃度、温度または他の物理的若しくは化学的特性若しくは特性の範囲と関連して使用される場合の用語「約(about)」、「実質的に(substantially)」、「本質的に(essentially)」および「約(approximately)」は、例えば丸め、測定方法または他の統計的変動から生じる変動を含む、特性または特徴の範囲の上限および/または下限に存在し得る変動をカバーすることが意図されている。
【0064】
本開示の要素またはその実施形態を紹介する場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および「該(said)」は、その要素が1つ以上存在することを意味することを意図している。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、および「有する(having)」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。特定の向きを示す用語(例えば、「上(top)」、「下(bottom)」、「横(side)」等)の使用は、説明の便宜のためであり、説明される項目の特定の向きを必要とするものではない。
【0065】
開示の範囲から逸脱することなく、上述の構造および方法において様々な変更がなされ得るので、上述の説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は、例示的なものとして解釈され、限定的な意味ではないことが意図される。