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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240705BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240705BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240705BHJP
   B26D 7/14 20060101ALI20240705BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20240705BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
C09J7/38
B26D7/14
B26D3/00 601A
B26F1/40 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023190692
(22)【出願日】2023-11-08
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2023051205
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】松本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 到
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹士
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-115468(JP,A)
【文献】特許第3523118(JP,B2)
【文献】特開2021-120437(JP,A)
【文献】特開2011-020200(JP,A)
【文献】特開2008-200788(JP,A)
【文献】特開2012-051061(JP,A)
【文献】特開2004-170907(JP,A)
【文献】特開昭61-071998(JP,A)
【文献】特開2017-171798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 50/86
C09J 7/38
B26D 7/14
B26D 3/00
B26F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学積層体の製造方法であって、
前記光学積層体は、
2つの光学フィルムと、当該2つの光学フィルムに挟まれた粘着剤層とを含む光学積層体であって、
前記2つの光学フィルムの少なくとも一方が偏光板であり、
前記2つの光学フィルムの側面には前記光学積層体の積層方向において互いに向かい合う位置に、当該光学フィルムの面方向に突出する凸部が設けられており、
前記凸部の先端の位置に対応する位置の前記粘着剤層の側面は、当該凸部の先端の位置よりも内側に位置し、
前記粘着剤層を構成する粘着剤の70℃におけるtanδが0.30~0.80であり、かつ当該粘着剤の25℃における貯蔵弾性率が0.05~0.40MPaであり、
前記粘着剤層の厚みが50μm以上であり、
2つの光学フィルムと、当該2つの光学フィルムに挟まれた粘着剤層とを含む長尺状光学積層体を、切断辺近傍のみを加圧した状態で、前記凸部に対応する形状を有する刃で長尺状光学積層体の積層方向に切断し、
前記長尺状光学積層体に、切断辺と略垂直かつ当該長尺状光学積層体の面方向に沿った方向に張力を付した状態で切断し、
前記刃の両側に設けられた弾性体であると共に、当該刃側の面が当該刃の先端に向かうにつれて当該刃とは離れる形状の加圧用部材を長尺状光学積層体に押し付けることで、加圧及び張力の付与を行い、
前記長尺状光学積層体から、互いに隣接する複数の光学積層体を切り出す製造方法。
【請求項2】
前記刃の刃先の角度は、40°以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記長尺状光学積層体を、略平行な2枚の刃で第1方向に切断し、第1方向の切断の後、第1方向の切断面と交差する切断面ができるように第2の方向に切断する請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体の製造方法及び光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、凹凸の繰り返し構造を有する切断刃による切断によって、粘着剤層を含む光学積層体の側面を凹凸の繰り返し構造とすることが示されている。これによって、側面で露出する粘着剤が引き出されることを防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3523118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光学積層体の側面を単に凹凸とするだけでは、必ずしも粘着剤が光学積層体からはみ出すことを適切に防止することができない。例えば、光学積層体に含まれる粘着剤層を構成する粘着剤として、OCA(Optical Clear Adhesive)等の厚みのある粘着剤を用いる場合、粘着剤のはみ出しを適切に防止することが困難である。光学積層体の粘着剤層として含まれるOCAは、通常、柔らかく厚いため、光学積層体の側面を単に凹凸とするだけでは、長尺状の光学積層体から複数の製品(チップ)を切り出した際に、隣接する製品に接着するため製品を個々に分離できなかったり、搬送時に搬送ベルトガイドに接着したり、こすれに伴い糊汚れ等が起こったりする。このように光学積層体では、加工性及び搬送性に問題が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、加工性及び搬送性に優れた光学積層体の製造方法及び光学積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学積層体の製造方法は、光学積層体の製造方法であって、光学積層体は、2つの光学フィルムと、当該2つの光学フィルムに挟まれた粘着剤層とを含む光学積層体であって、2つの光学フィルムの少なくとも一方が偏光板であり、2つの光学フィルムの側面には光学積層体の積層方向において互いに向かい合う位置に、当該光学フィルムの面方向に突出する凸部が設けられており、凸部の先端の位置に対応する位置の粘着剤層の側面は、当該凸部の先端の位置よりも内側に位置し、粘着剤層を構成する粘着剤の70℃におけるtanδが0.30~0.80であり、かつ当該粘着剤の25℃における貯蔵弾性率が0.05~0.40MPaであり、粘着剤層の厚みが50μm以上であり、2つの光学フィルムと、当該2つの光学フィルムに挟まれた粘着剤層とを含む長尺状光学積層体を、切断辺近傍のみを加圧した状態で、凸部に対応する形状を有する刃で長尺状光学積層体の積層方向に切断する。
【0007】
本発明に係る光学積層体の製造方法によって製造される光学積層体では、粘着剤層の側面は、光学フィルムの凸部の先端の位置よりも内側に位置しているため、光学積層体からの粘着剤のはみ出しを適切に防止することができる。従って、本発明に係る光学積層体の製造方法によれば、加工性及び搬送性に優れた光学積層体を提供することができる。
【0008】
上記の光学積層体を適切かつ確実に製造するため、光学積層体の製造方法は以下の構成としてもよい。
【0009】
長尺状光学積層体に、切断辺と略垂直かつ当該長尺状光学積層体の面方向に沿った方向に張力を付した状態で切断する。刃の両側に設けられた弾性体であると共に、当該刃側の面が当該刀の先端に向かうにつれて当該刃とは離れる形状の加圧用部材を長尺状光学積層体に押し付けることで、加圧及び張力の付与を行う。長尺状光学積層体から、互いに隣接する複数の光学積層体を切り出す。
【0010】
刃の刃先の角度は、40°以上であることとしてもよい。
【0011】
長尺状光学積層体を、略平行な2枚の刃で第1方向に切断し、第1方向の切断の後、第1方向の切断面と交差する切断面ができるように第2の方向に切断することとしてもよい。
【0012】
また、本発明に係る光学積層体は、2つの光学フィルムと、当該2つの光学フィルムに挟まれた粘着剤層とを含む光学積層体であって、2つの光学フィルムの少なくとも一方が偏光板であり、2つの光学フィルムの側面には互いに向かい合う位置に、当該光学フィルムの面方向に突出する凸部が設けられており、凸部の先端の位置に対応する位置の粘着剤層の側面のみが、当該凸部の先端の位置よりも内側に位置し、粘着剤層を構成する粘着剤の70℃におけるtanδが0.30~0.80であり、かつ当該粘着剤の25℃における貯蔵弾性率が0.05~0.40MPaであり、粘着剤層の厚みが50μm以上である。
【0013】
光学積層体の加工性及び搬送性をより優れたものとするため、光学積層体は以下の構成としてもよい。
【0014】
2つの光学フィルムの側面の凸部に隣接して凹部が設けられている。
【0015】
凸部と凹部とが連続的に設けられていることとしてもよい。
【0016】
凸部の先端と当該凸部の両端とを結ぶそれぞれの線がなす凸部角度が170°~120°、かつ凸部の突出している長さである凸部突出長が0.1~0.5mmであることとしてもよい。
【0017】
凸部が突出する方向における、凸部の先端と粘着剤層の側面との最大の差分が20~100μmであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加工性及び搬送性に優れた光学積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る光学積層体を側面から見た端部を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る光学積層体を積層方向から見た端部を示す図である。
図3】長尺状光学積層体からの光学積層体の切断(製造)を模式的に示す図である。
図4】長尺状光学積層体の切断に用いられる切断用刃の刃先の一部を示す図である。
図5】長尺状光学積層体の切断時の切断用刃を模式的に示す図である。
図6】長尺状光学積層体の切断に用いられる加圧用部材の種々の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面と共に本発明に係る光学積層体の製造方法及び光学積層体の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0021】
図1及び図2に本実施形態に係る光学積層体10を示す。光学積層体10は、複数の光学フィルムが積層されたものである。光学積層体10は、複数の光学フィルムのうちの2つの光学フィルムに挟まれた粘着剤層を含む。2つの光学フィルムの少なくとも一方が偏光板である。図1及び図2に示す光学積層体10は、2つの光学フィルム11,12と、当該2つの光学フィルム11,12に挟まれた粘着剤層13とを含んでいる。光学積層体10は、例えば、光学フィルムの積層方向から見て概ね矩形となっている。即ち、光学積層体10は、概ね矩形の主面を有している。但し、光学積層体10の主面の形状は、必ずしも概ね矩形である必要はない。
【0022】
図1は、光学積層体10の側面の端部を示す図、即ち、積層方向と垂直な方向から光学積層体10の端部を見た図である。図2は、光学積層体10の主面の1つである光学フィルム11の主面の端部を示す図、即ち、光学フィルムの積層方向から光学積層体10の端部を見た図である。図2では、(光学フィルム11で隠れている)粘着剤層13の部分を網掛けで示している。
【0023】
光学積層体10は、例えば、ディスプレイに用いられる部品である。この場合、光学フィルム11は、偏光板であり、光学フィルム12は、プロテクトフィルム又セパレートフィルムである。粘着剤層13を構成する粘着剤は、OCAである。光学積層体10(の一部)が、カバーガラス及びOLED(有機発光ダイオード)と組み合わせられてディスプレイが構成される。ディスプレイが構成される際には、OCAによって構成される粘着剤層13は、偏光板(光学フィルム11)と、カバーガラスとの接着に用いられる。
【0024】
なお、粘着剤層13を構成する粘着剤は、OCA以外のものであってもよい。
【0025】
偏光板は、少なくとも偏光子を含み、通常はその片面又は両面に貼合される熱可塑性樹脂フィルムを更に含む。また、偏光板は粘着剤層13が積層された面とは反対の面にプロテクトフィルム又セパレートフィルムを含んでいてもよい。
【0026】
熱可塑性樹脂フィルムは、偏光子を保護する保護フィルム等であることができる。この保護フィルムは、位相差フィルムであってもよく、反射防止処理層等の下記樹脂層が設けられてもよい。
【0027】
熱可塑性樹脂フィルムは、それぞれ独立して、透光性を有する熱可塑性樹脂で構成されるフィルムである。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、光学的に透明な熱可塑性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等であることができる。
【0028】
熱可塑性樹脂フィルムは、その表面に積層される樹脂層を備えていてもよい。樹脂層の例は、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層等である。熱可塑性樹脂フィルムは、接着剤層又は粘着剤層を介して偏光子に貼合することができる。
【0029】
偏光板の厚みは、通常25μm以上500μm以下である。
【0030】
プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは、偏光板の表面を保護するためのフィルムであり、偏光板の表面に剥離可能に貼合されている。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは、基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とで構成することができる。プロテクトフィルムを偏光板から剥離する場合は、基材フィルムと粘着剤層は共に偏光板から剥離される。セパレートフィルムを偏光板から剥離する場合は、基材フィルムのみ剥離され、粘着剤層は偏光板の表面に残る。
【0031】
基材フィルムは、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂などで構成することができる。基材フィルムは、単層構造であってもよいし多層構造であってもよい。粘着剤層は、(メタ)アクリル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等で構成することができる。また、プロテクトフィルムは、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂等の自己粘着性を有する樹脂フィルムであってもよい。この場合、プロテクトフィルムは、粘着剤層を有しない。
【0032】
粘着剤層13を挟む2つの光学フィルム11,12の側面には互いに向かい合う位置に、当該光学フィルムの面方向に突出する凸部(山部)が設けられている。2つの光学フィルム11,12の側面の凸部に隣接して凹部(谷部)が設けられていてもよい。凸部と凹部とが連続的に設けられていてもよい。
【0033】
図2に示すように積層方向から見ると、光学フィルム11の側面は、光学フィルムの面方向に突出する凸部11aが設けられている。凸部11aは、先端が曲線状になっている。凸部11aは、連続的かつ周期的に設けられており、凸部11aの間の部分は凹部となっている。凹部も、曲線状になっている。このように光学フィルム11の側面は、波型の形状となっている。また、光学フィルム11と向かい合う光学フィルム12の端部も、光学フィルム11の端部と同様の形状となっている。
【0034】
凸部11aの先端と当該凸部11aの両端とを結ぶそれぞれの線がなす凸部角度(図2に示す角度θ1)は170°~120、かつ凸部11aの突出している長さである凸部突出長は0.1~0.5mm(図2に示す長さL1)であってもよい。
【0035】
粘着剤層13を構成する粘着剤の70℃におけるtanδ(粘弾性に係る損失係数)は0.30~0.80であり、かつ当該粘着剤の25℃における貯蔵弾性率は0.05~0.40MPaである。当該粘着剤の70℃におけるtanδは0.30~0.60であってもよく、0.30~0.50であってもよい。当該粘着剤の25℃における貯蔵弾性率は0.05~0.30MPaであってもよく、0.05~0.20MPaであってもよい。粘着剤層13の厚みは、50μm以上である。粘着剤層13の厚みは、75μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。
【0036】
粘着剤の70℃におけるtanδは、測定対象の粘着剤からなる直径8mm×厚み600μmの円柱状の試験片を作製し、動的粘弾性測定装置(Dynamic Analyzer RDA II:REOMETRIC株式会社製)を用いて、周波数1Hzの捻りせん断法で初期歪み1Nとし、温度70℃の条件で測定を行なう。
【0037】
通常、粘着剤層13の厚みが50μm以上である場合、長尺状の光学積層体から複数の製品(チップ)を切り出した際に、隣接する製品に接着するため製品を個々に分離できなかったり、搬送時に搬送ベルトガイドに接着したり、こすれに伴い糊汚れが起こる等、加工性及び搬送性に関わる不具合が発生するが、本実施形態によれば、粘着剤層13の厚みが50μm以上であっても加工性及び搬送性に優れた光学積層体を提供することができる。特に、粘着剤層13の厚みが100μm以上である場合、上記不具合はより顕著に発生するが、本実施形態によれば、粘着剤層13の厚みが100μm以上であっても加工性及び搬送性に優れた光学積層体を提供することができる。
【0038】
図1及び図2に示すように光学フィルム11,12の凸部の先端の位置に対応する位置の粘着剤層13の側面は、当該凸部の先端の位置よりも内側に位置している。即ち、光学フィルム11,12の凸部に対応する部分では、粘着剤層13は光学フィルム11,12よりも凹んでいる。図1に示す光学積層体10の側面は、光学フィルム11,12の凸部の先端の側面(断面)である。図1(a)に示すように、当該部分での粘着剤層13の側面は、光学フィルム11,12の積層方向において、光学フィルム11,12から離れるに従って凸部の突出方向から曲線的に凹んでいてもよい。あるいは、図1(b)に示すように、当該部分での粘着剤層13の側面は、光学フィルム11,12の積層方向において、光学フィルム11,12の先端の位置から凹んだ位置で直線状になっていてもよい。
【0039】
光学フィルム11,12の凸部が突出する方向における、当該凸部の先端と粘着剤層13の側面との最大の差分は20~100μmであってよい。長尺状の光学積層体から複数の製品(チップ)を切り出した際に、隣接する製品に接着するため製品を個々に分離しやすくなる観点から、上記の最大の差分は60~100μmであることが好ましい。
【0040】
当該部分での粘着剤層13の側面は、光学フィルム11,12の積層方向全体にわたって、光学フィルム11,12の凸部の先端の位置よりも内側に位置している。例えば、図1(c)に示すように、粘着剤層13の側面に光学フィルム11,12の凸部の先端の位置よりも内側に位置している部分があったとしても、粘着剤層13の側面に、光学フィルム11,12の凸部の先端と面一の部分又は当該先端よりも突出している部分がある場合には、本実施形態に係る光学積層体10ではない。
【0041】
光学積層体10の側面における上記の構成は、側面全体にわたってのものである。但し、光学積層体10の側面における上記の構成は、側面の一部のみのものであってもよい。
【0042】
光学積層体10の側面における上記の構成は、粘着剤層13から粘着剤がはみ出すことを適切に防止するためのものである。本実施形態に係る光学積層体10は、後述するように長尺状の光学積層体からの切り出しによって製造される。光学積層体10は、大判シートである長尺状の光学積層体から切り出される枚葉状のチップであってもよい。
【0043】
上述したように光学積層体から粘着剤がはみ出すと、上記の切り出しの際に、隣接する光学積層体に接着して光学積層体を個々に分離できなかったり、搬送時に搬送ベルトガイドに接着したり、こすれに伴い糊汚れ等が起こったりする。光学積層体10の側面における上記の構成によれば、そのような加工性及び搬送性の問題が生じることを防止することができる。上述した光学積層体10に係る数値は、上記の観点から適切な光学積層体10にするものである。
【0044】
偏光板用の粘着剤層が50μm以上であっても、上記の問題が生じ得る。即ち、光学積層体において、一層でも50μm以上の粘着剤層を含むと、上記の問題が生じ得る。
【0045】
本実施形態に係る光学積層体10の側面には凹凸があるため、光学積層体10を用いて製造する製品によっては、光学積層体10の側面を平坦にする必要がある。その場合、光学積層体10の側面を研磨すればよい。この場合、光学積層体10のサイズは、研磨代(例えば、1mm)を含めたものとすればよい。
【0046】
光学積層体10の側面における上記の構成は、本実施形態に係る製造方法によって実現される。引き続いて、本実施形態に係る光学積層体10の製造方法を説明する。本製造方法では、予め光学積層体10を切り出すことができる長尺状光学積層体が用意される。長尺状光学積層体は、光学積層体10と同じ積層構造を有する。即ち、本実施形態では、長尺状光学積層体は、部材としては、2つの光学フィルムと、当該2つの光学フィルムに挟まれた粘着剤層とを含んでいる。長尺状光学積層体を構成する2つの光学フィルム及び粘着剤層はそれぞれ、材質としては光学積層体10を構成する2つの光学フィルム11,12及び粘着剤層13と同じものである。長尺状光学積層体は、積層方向から見た際に(積層方向と垂直な面において)、光学積層体10を切り出すことができる大きさを有している。
【0047】
本実施形態に係る製造方法では、長尺状光学積層体から光学積層体10が切り出されて、光学積層体10が製造される。例えば、長尺状光学積層体から、概ね矩形の主面の光学積層体10の4辺が切り出される。また、長尺状光学積層体からは、複数の光学積層体10が切り出されてもよい。切り出される複数の光学積層体10は、互いに隣接していてもよい。
【0048】
長尺状光学積層体からの光学積層体10の切り出しは、切断用刃で長尺状光学積層体から光学積層体10の各辺の部分を切断することで行われる。例えば、図3に示すように、長尺状光学積層体20(原反)を搬送しながら、長尺状光学積層体20に切断用刃100を取り付けた板状部材110を押し付けることで光学積層体10を切り出す。図3に示す例では、2つの光学積層体10が隣接して切り出される。
【0049】
長尺状光学積層体20に対する光学積層体10の各辺の切断は、全ての辺で同時に行われる必要はない。図3に示す例では、まず、搬送方向と平行な2つの辺を切断し、その後、搬送方向と垂直な2つの辺を切断する。図3に示すように、板状部材110には、切断する辺に応じた位置に切断用刃100が取り付けられればよい。図3に示すように、板状部材110に、搬送方向と平行な2つの辺を切断する切断用刃100と、搬送方向と垂直な2つの辺を切断する切断用刃100との両方を取り付けておくことで、別々の光学積層体10に係る切断を同時に行うことができる。
【0050】
このように、本実施形態に係る製造方法では、長尺状光学積層体20を、略平行な2枚の切断用刃100で第1方向(例えば、搬送方向と平行な方向)に切断し、第1方向の切断の後、第1方向の切断面と交差する切断面ができるように第2の方向(例えば、搬送方向と垂直な方向)に切断してもよい。
【0051】
光学積層体10の辺の切断に用いられる切断用刃100は、光学積層体10の2つの光学フィルム11,12の凸部に対応する形状を有する刃である。例えば、切断用刃100はウェーブ刃である。図4に、長尺状光学積層体20に押し付けられる方向から見た、ウェーブ刃である切断用刃100の刃先の一部を示す。図4に示すように、切断用刃100の刃先は、上述した光学積層体10の2つの光学フィルム11,12の凸部及び凹部に対応する凹凸を繰り返す構造となっている。例えば、図4に示すように、切断用刃100における、繰り返しのピッチPは2mmであり、凸部の凹部に対する突出長さL2は0.3mmである。
【0052】
図5に長尺状光学積層体20の切断時の切断用刃100を模式的に示す。長尺状光学積層体20は、光学積層体10の光学フィルム11,12及び粘着剤層13となる光学フィルム21,22及び粘着剤層23の積層体である。図5は、切断用刃100の長手方向から見た図であり、切断される辺は図面の奥行方向となる。図5に示す切断用刃100の刃先の角度θ2は、40°以上としてもよい。また、当該角度は、45°以上、50°以上及び60°以上の何れかであってもよい。図5の矢印で示すように、切断用刃100による長尺状光学積層体20の切断の際には、切断用刃100のテーパー(刃先の角度)によって長尺状光学積層体20に横方向(面方向)の応力がかかる。
【0053】
本実施形態に係る製造方法では、切断用刃100による長尺状光学積層体20の切断は、長尺状光学積層体20の切断辺近傍を加圧した状態で行われる。長尺状光学積層体20の切断辺近傍の加圧は、例えば、図5に示すように切断用刃100の両端において2つの加圧用部材120が長尺状光学積層体20に押し付けられることで行われる。加圧用部材120は、例えば、スポンジ等の弾性体である。加圧用部材120は、切断用刃100よりも長い(図5における奥行方向の長さ)部材である。長尺状光学積層体20の切断は、長尺状光学積層体20の切断辺近傍の周囲を加圧していない状態で行われてもよい。例えば、長尺状光学積層体20の切断は、長尺状光学積層体20の切断辺近傍のみを加圧した状態で行われてもよい。
【0054】
加圧に用いられる弾性体の硬度は、日本ゴム協会標準規格のSRIS-0101物理試験方法準拠のゴム硬度計測定で20~60、更には20~35としてもよい。
【0055】
加圧用部材120は、切断用刃100と同様に予め板状部材110に取り付けられていればよい。例えば、切断用刃100毎に、2つの加圧用部材120が切断用刃100を挟んで板状部材110に取り付けられる。切断用刃100が長尺状光学積層体20に押し付けられる際に、加圧用部材120は切断辺の両端を押し付けるようにされる。なお、切断辺近傍の加圧は、加圧用部材120の押し付け以外の方法で行われてもよい。
【0056】
加圧する領域は、切断辺の両側各15mm以下としてもよい。更には、加圧する領域は、切断辺の両側各10mm以下としてもよい。また、加圧する領域(の下限)は、切断辺の両側3mm以上としてもよい。更には、加圧する領域(の下限)は、切断辺の両側5mm以上としてもよい。なお、上記の距離は、切断辺からの距離ではなく、長尺状光学積層体20に接触する切断用刃100の長辺(図4に示す切断用刃100の刃先の長辺)からの距離であってもよい。上記の加圧する領域は、切断辺近傍の領域であってもよく、その周囲の領域は加圧しない領域としてもよい。
【0057】
このように長尺状光学積層体20から光学積層体10の各辺が切断されることで、切断されて切り出された光学積層体10(の各側面)は上述した構成となる。
【0058】
本実施形態に係る製造方法では、長尺状光学積層体20に、切断辺と略垂直かつ当該長尺状光学積層体20の面方向に沿った方向に張力を付した状態で切断してもよい。張力の付与は、切断用刃100によって粘着剤層23が適切に切断されるようにすると共に、切り出した光学積層体10の長尺状光学積層体20又は別の光学積層体10への再付着を防止するためのものである。張力が付与される方向は、切断される長尺状光学積層体20が互いに離れる方向である。例えば、図5では、左右方向に張力が付される。張力の付与は、例えば、長尺状光学積層体20において張力を付与する方向の両端を保持し、保持した部分の一方又は両方を引っ張ることで行われる。また、張力の付与は、それ以外の従来の任意の方法によって行われればよい。
【0059】
粘着剤層23が適切に切断されるようにすると共に、切り出した光学積層体10の再付着を防止するための、長尺状光学積層体20に対する力の付与は、長尺状光学積層体20の切断辺近傍を加圧するための加圧用部材120(例えば、上述した弾性体)によって行われてもよい。例えば、上記を可能とするため、図6(a)~図6(d)示すように加圧用部材120の形状を、切断用刃100の根本と比べて切断用刃100から離れるようにする。なお、図6は、図5と同様に、切断用刃100の長手方向から見た図である。
【0060】
例えば、図6(a)に示すように加圧用部材120の切断用刃100側の面を、切断用刃100の先端に向かうにつれて切断用刃100から離れるように傾斜させてもよい。また、図6(b)に示すように加圧用部材120の切断用刃100側の先端の角を、C面取りしてもよい。また、図6(c)に示すように加圧用部材120の切断用刃100側の先端の角を、R面取りしてもよい。また、加圧用部材120の切断用刃100側の形状に加えて、図6(d)に示すように切断用刃100とは逆側の面を切断用刃100の先端に向かうにつれて切断用刃100から離れるように傾斜させてもよい。
【0061】
加圧用部材120を上記の形状とすることで、図6(e)に示すように、切断用刃100による長尺状光学積層体20の切断時に加圧用部材120が長尺状光学積層体20に押し付けられると、加圧用部材120は切断用刃100から離れるように変形する。この変形によって、加圧用部材120から長尺状光学積層体20に対して切断辺から外側に向かう力が付与される。これによって、粘着剤層23が適切に切断されるようにすると共に、切り出した光学積層体10の再付着を防止することができる。
【0062】
図6(d)等に示す加圧用部材120の切断用刃100側の面が、切断用刃100の先端に向かうにつれて切断用刃100から離れる角度(刃先から真下方向の直線と、加圧用部材120の上記の面との角度)は、適切な切断を行うために0°~30°としてもよい。あるいは、適切な切断を行うために、更には、当該角度は、5°~20°としてもよい。加圧用部材120としてスポンジを用いた場合、当該角度が、30°を超えると、加圧用部材120が長尺状光学積層体20を加圧する力が弱まってしまう。
【0063】
上述した光学積層体10の製造方法に係る数値は、適切に光学積層体10を製造するためのものである。以上が、本実施形態に係る光学積層体10の製造方法である。
【0064】
本実施形態に係る光学積層体10では、粘着剤層13の側面は、光学フィルム11,12の凸部の先端の位置よりも内側に位置しているため、光学積層体10からの粘着剤のはみ出しを適切に防止することができる。従って、本実施形態に係る光学積層体10は、加工性及び搬送性に優れている。例えば、光学積層体10の製造時に、光学積層体10を個々に容易に分離することができる。また、搬送時の搬送ベルトガイドへの接着、及び糊汚れ等の発生を防止することができる。また、光学積層体10のハンドリング時のベタツキ感をなくすことができる。
【0065】
光学積層体10の加工性及び搬送性をより優れたものとするため、上述した実施形態のように光学積層体10は以下の構成としてもよい。
【0066】
2つの光学フィルム11,12の側面の凸部に隣接して凹部が設けられていてもよい。また、光学フィルム11,12において、凸部と凹部とが連続的に設けられていてもよい。即ち、光学フィルム11,12の側面は、凸部と凹部とが連続した波型の形状となっていてもよい。但し、光学積層体10の2つの光学フィルム11,12は、少なくとも1つの凸部が設けられた構成であってもよい。
【0067】
光学フィルム11,12における、凸部の先端と当該凸部の両端とを結ぶそれぞれの線がなす凸部角度が170°~120、かつ凸部の突出している長さである凸部突出長が0.1~0.5mmであってもよい。但し、凸部角度及び凸部突出長は、上記の範囲に含まれてなくてもよい。
【0068】
光学フィルム11,12の凸部が突出する方向における、凸部の先端と粘着剤層の側面との最大の差分が20~100μmであってもよい。但し、最大の差分は、上記の範囲に含まれてなくてもよい。
【0069】
また、本実施形態に係る光学積層体10の製造方法によれば、本実施形態に係る光学積層体10を製造することができる。
【0070】
光学積層体10を適切かつ確実に製造するため、上述した実施形態のように光学積層体10の製造方法は以下の構成としてもよい。
【0071】
長尺状光学積層体20に、切断辺と略垂直かつ当該長尺状光学積層体20の面方向に沿った方向に張力を付した状態で切断することとしてもよい。この構成によれば、長尺状光学積層体20の切断時に切断辺を切り離しやすくし、長尺状光学積層体20からの光学積層体10の分離をより適切に行うことができる。但し、切断時の張力の付与は、必ずしも行われる必要はない。
【0072】
切断用刃100の刃先の角度は、40°以上であることとしてもよい。この構成によれば、適切かつ確実に長尺状光学積層体20を切断することができる。但し、切断用刃100の刃先の角度は、上記の範囲に含まれてなくてもよい。
【0073】
長尺状光学積層体20を、略平行な2枚の切断用刃100で第1方向に切断し、第1方向の切断の後、第1方向の切断面と交差する切断面ができるように第2の方向に切断することとしてもよい。この構成によれば、適切かつ確実に長尺状光学積層体20から光学積層体10を切り出すことができる。但し、切断用刃100による切断は、必ずしも上記のように行われる必要はない。
【0074】
引き続いて、本実施形態に係る実施例及び比較例を説明する。実施例及び比較例では、長尺状光学積層体を複数の略矩形の枚葉状の光学積層体に切断用刃を使用して切断する。続いて、先端に緩衝ゴムと両面テープとを貼り付けたペンを、切断後の枚葉状の光学積層体の主面に粘着させ、垂直方向に持ち上げて別の場所へ移動させる。その際に、移動させた枚葉状の光学積層体が、隣接する枚葉状の光学積層体と結合したままにならずに、1枚1枚が分離した状態で移動できるかを確認する。
【0075】
枚葉状の光学積層体における、光学フィルムの凸部が突出する方向における、凸部の先端と粘着剤層の側面との最大の差分、即ち、粘着剤層の凹み量を測定した。測定は、マイクロスコープ(VHX-5000、キーエンス社製)を用いて行った。
【0076】
粘着剤層の貯蔵弾性率は、直径8mm、厚み1mmの円柱形状の片を試験片とし、動的粘弾性測定装置(Dynamic Analyzer RDA II:REOMETRIC株式会社製)を用いて、周波数1Hzの捻りせん断法により、温度23℃及び温度80℃において測定した。
【0077】
まず、以下のように長尺状光学積層体を作製した。水100部に対して、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレ製のKL-318〕を3部溶解し、その水溶液に、水溶性エポキシ化合物であるポリアミドエポキシ系添加剤〔住化ケムテックス(株)製のスミレーズレジン650(30)、固形分濃度30%の水溶液〕を1.5部添加して、水系接着剤(水溶性接着剤)とした。
【0078】
厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、更に緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚み12μmの偏光子を得た。
【0079】
作製した偏光子の一方の面に、トリアセチルセルロースからなる透明保護フィルム〔コニカミノルタ(株)製のKC2UA、厚さ25μm〕を、もう一方の面に、シクロオレフィンポリマーからなる透明保護フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名“ZF14”、厚さ23μm〕を、上記の水系接着剤を用いて積層した後、80℃で5分間乾燥することにより偏光板を得た。なお、積層する前にトリアセチルセルロースからなる透明保護フィルムはケン化処理を行い、シクロオレフィンポリマーからなる透明保護フィルムは偏光子との貼合面にコロナ処理を実施した。
【0080】
続いて、市販の粘着剤を用意した。市販の粘着剤は、厚み100μmの離型処理したプロテクトフィルムの離型処理面に220μmの粘着剤層が形成されたものである。上記の粘着剤層は、作製される長尺状光学積層体において、2つの光学フィルムに挟まれる粘着剤層である。上記のプロテクトフィルムは、作製される長尺状光学積層体において、上記の偏光板と共に粘着剤層を挟む光学フィルムである。
【0081】
作製した偏光板のトリアセチルセルロースからなる透明保護フィルム面に、プロテクトフィルム付の粘着剤層を積層して、長尺状光学積層体を作製した。作製された長尺状光学積層体は、偏光板/粘着剤層/プロテクトフィルム(それぞれ図1の光学フィルム11/粘着剤層13/光学フィルム12に相当する)の積層体となる。
【0082】
なお、市販の粘着剤の25℃における貯蔵弾性率は0.06MPaであり、70℃におけるtanδ(損失正接)は0.36であった。このようにして幅600mm、長さ100mの長尺状光学積層体を作製した。
【0083】
実施例及び比較例において、長尺状光学積層体から枚葉状の光学積層体を切り出す切断用刃として、以下の刃型を準備した。
刃型A:波型凹凸の繰り返し構造を有する刃(株式会社ナカヤマ製のNCEW07、商品コード338216)を153mm間隔で4本平行に並べた刃型を準備した。長尺状光学積層体を加圧する構成として、刃の両端には、断面が矩形形状でありスポンジ硬度35(日本ゴム協会標準規格のSRIS-0101物理試験方法準拠のゴム硬度計測定での硬度、以下についても同様)、スポンジ幅7mmのスポンジを配置した。なおスポンジは、刃の先端より1.4mm突出しているようにセットした。
刃型B:波型凹凸の繰り返し構造を有する刃(株式会社ナカヤマ製のNCEW07、商品コード338216)を168mm間隔で8本平行に並べた刃型を準備した。長尺状光学積層体を加圧する構成として、刃の両端には、断面が矩形形状でありスポンジ硬度35、スポンジ幅7mmのスポンジを配置した。なおスポンジは、刃の先端より1.4mm突出しているようにセットした。
【0084】
刃型C:波型凹凸の繰り返し構造を有する刃(株式会社ナカヤマ製のNCEW07、商品コード338216)を153mm間隔で4本平行に並べた刃型を準備した。長尺状光学積層体を加圧する構成として、刃の両端には、図6(d)に示すように断面が刃先に向け外側に傾斜した、スポンジ硬度35、スポンジ幅7mmのスポンジを配置した。なおスポンジは、刃の先端より1.4mm突出しているようにセットした。刃先から真下方向の直線と刃先に向け外側に傾斜したスポンジの断面の直線がなす角度は10°であった。
刃型D:波型凹凸の繰り返し構造を有する刃(株式会社ナカヤマ製のNCEW07、商品コード338216)を168mm間隔で8本平行に並べた刃型を準備した。長尺状光学積層体を加圧する構成として、刃の両端には、図6(d)に示すように断面が刃先に向け外側に傾斜した、スポンジ硬度35、スポンジ幅7mmのスポンジを配置した。なおスポンジは、刃の先端より1.4mm突出しているようにセットした。刃先から真下方向の直線と刃先に向け外側に傾斜したスポンジの断面の直線がなす角度は10°であった。
【0085】
刃型E:波型凹凸の繰り返し構造を有する刃(株式会社ナカヤマ製のNCEW07、商品コード338216)を153mm間隔で4本平行に並べた刃型を準備した。長尺状光学積層体を加圧する構成として、刃の無い領域には、断面が矩形でありスポンジ硬度35のスポンジを隙間なく配置した。なおスポンジは、刃の先端より1.4mm突出しているようにセットした。
刃型F:波型凹凸の繰り返し構造を有する刃(株式会社ナカヤマ製のNCEW07、商品コード338216)を168mm間隔で8本平行に並べた刃型を準備した。長尺状光学積層体を加圧する構成として、刃の無い領域には、断面が矩形でありスポンジ硬度35のスポンジを隙間なく配置した。なおスポンジは、刃の先端より1.4mm突出しているようにセットした。
【0086】
刃型G:波型凹凸の繰り返し構造を有する刃(株式会社ナカヤマ製のNCEW07、商品コード338216)を168mm間隔で4本平行に並べた刃型を準備した。
刃型H:波型凹凸の繰り返し構造を有する刃(株式会社ナカヤマ製のNCEW07、商品コード338216)を168mm間隔で8本平行に並べた刃型を準備した。
刃型G及び刃型Hには、スポンジ等の長尺状光学積層体を加圧する構成が設けられていない。
【0087】
実施例1として、作製した長尺状光学積層体を搬送し停止させた状態で、刃型Aを用いて長尺状光学積層体を裁断した。刃型Aの刃は長尺状光学積層体の搬送方向に平行になるように配置したものを使用した。次いで、刃型Bを用いて長尺状光学積層体を裁断した。刃型Bの刃は長尺状光学積層体の搬送方向に垂直になるように配置したものを使用した。こうして裁断した光学積層体は153mm×168mmの略矩形の光学積層体であり、21枚の光学積層体を得ることができた。裁断後の全ての光学積層体は、隣接する光学積層体に付着しておらず、作製した光学積層体の分離性は良好であった。光学フィルムの凸部が突出する方向における粘着剤層の凹み量は、20~50μmであった。
【0088】
実施例2として、作製した長尺状光学積層体を搬送し停止させた状態で、刃型Cを用いて長尺状光学積層体を裁断した。刃型Cの刃は長尺状光学積層体の搬送方向に平行になるように配置したものを使用した。次いで、刃型Dを用いて長尺状光学積層体を裁断した。刃型Dの刃は長尺状光学積層体の搬送方向に垂直になるように配置したものを使用した。こうして裁断した光学積層体は153mm×168mmの略矩形の光学積層体であり、21枚の光学積層体を得ることができた。裁断後の全ての光学積層体は、隣接する光学積層体に付着しておらず、作製した光学積層体の分離性はより良好であった。光学フィルムの凸部が突出する方向における粘着剤層の凹み量は、60~100μmであった。
【0089】
比較例1として、作製した長尺状光学積層体を搬送し停止させた状態で、刃型Eを用いて長尺状光学積層体を裁断した。刃型Eの刃は長尺状光学積層体の搬送方向に平行になるように配置したものを使用した。次いで、刃型Fを用いて長尺状光学積層体を裁断した。刃型Fの刃は長尺状光学積層体の搬送方向に垂直になるように配置したものを使用した。こうして裁断した光学積層体は153mm×168mmの略矩形の光学積層体であり、21枚の光学積層体を得ることができた。裁断後の全ての光学積層体は、隣接する光学積層体と再付着し連なった状態となっており、作製した光学積層体の分離性は良好でなかった。光学フィルムの凸部が突出する方向における粘着剤層の凹みは確認できなかった。上記の通り、複数の光学積層体が連なった状態であることから、凸部の粘着剤層は、面一又は突出していると考えられる。
【0090】
比較例2として、作製した長尺状光学積層体を搬送し停止させた状態で、刃型Gを用いて長尺状光学積層体を裁断した。刃型Gの刃は長尺状光学積層体の搬送方向に平行になるように配置したものを使用した。次いで、刃型Hを用いて長尺状光学積層体を裁断した。刃型Hの刃は長尺状光学積層体の搬送方向に垂直になるように配置したものを使用した。こうして裁断した光学積層体は裁断後、刃型から離れなかったため、153mm×168mmの略矩形の光学積層体を回収することはできなかった。
【0091】
本開示の光学積層体の製造方法及び光学積層体は、以下の構成を有する。
[1] 光学積層体の製造方法であって、
前記光学積層体は、
2つの光学フィルムと、当該2つの光学フィルムに挟まれた粘着剤層とを含む光学積層体であって、
前記2つの光学フィルムの少なくとも一方が偏光板であり、
前記2つの光学フィルムの側面には互いに向かい合う位置に、当該光学フィルムの面方向に突出する凸部が設けられており、
前記凸部の先端の位置に対応する位置の前記粘着剤層の側面は、当該凸部の先端の位置よりも内側に位置し、
前記粘着剤層を構成する粘着剤の70℃におけるtanδが0.30~0.80であり、かつ当該粘着剤の25℃における貯蔵弾性率が0.05~0.40MPaであり、
前記粘着剤層の厚みが50μm以上であり、
2つの光学フィルムと、当該2つの光学フィルムに挟まれた粘着剤層とを含む長尺状光学積層体を、切断辺近傍を加圧した状態で、前記凸部に対応する形状を有する刃で長尺状光学積層体の積層方向に切断する製造方法。
[2] 前記長尺状光学積層体に、切断辺と略垂直かつ当該長尺状光学積層体の面方向に沿った方向に張力を付した状態で切断する[1]に記載の製造方法。
[3] 前記刃の刃先の角度は、40°以上である[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記長尺状光学積層体を、略平行な2枚の刃で第1方向に切断し、第1方向の切断の後、第1方向の切断面と交差する切断面ができるように第2の方向に切断する[1]~[3]の何れかに記載の製造方法。
[5] 2つの光学フィルムと、当該2つの光学フィルムに挟まれた粘着剤層とを含む光学積層体であって、
前記2つの光学フィルムの少なくとも一方が偏光板であり、
前記2つの光学フィルムの側面には互いに向かい合う位置に、当該光学フィルムの面方向に突出する凸部が設けられており、
前記凸部の先端の位置に対応する位置の前記粘着剤層の側面は、当該凸部の先端の位置よりも内側に位置し、
前記粘着剤層を構成する粘着剤の70℃におけるtanδが0.30~0.80であり、かつ当該粘着剤の25℃における貯蔵弾性率が0.05~0.40MPaであり、
前記粘着剤層の厚みが50μm以上である光学積層体。
[6] 前記2つの光学フィルムの側面の凸部に隣接して凹部が設けられている[5]に記載の光学積層体。
[7] 前記凸部と前記凹部とが連続的に設けられている[6]に記載の光学積層体。
[8] 前記凸部の先端と当該凸部の両端とを結ぶそれぞれの線がなす凸部角度が170°~120、かつ前記凸部の突出している長さである凸部突出長が0.1~0.5mmである[5]~[7]の何れかに記載の光学積層体。
[9] 前記凸部が突出する方向における、前記凸部の先端と前記粘着剤層の側面との最大の差分が20~100μmである[5]~[8]の何れかに記載の光学積層体。
【符号の説明】
【0092】
10…光学積層体、11,12…光学フィルム、13…粘着剤層、20…長尺状光学積層体、21,22…光学フィルム、23…粘着剤層、100…切断用刃、110…板状部材、120…加圧用部材。
【要約】
【課題】 加工性及び搬送性に優れた光学積層体を提供する。
【解決手段】 光学積層体10は、2つの光学フィルム11,12と、当該2つの光学フィルム11,12に挟まれた粘着剤層13とを含む光学積層体であって、2つの光学フィルム11,12の少なくとも一方が偏光板であり、2つの光学フィルム11,12の側面には、面方向に突出する凸部が設けられており、凸部の先端の位置に対応する位置の粘着剤層13の側面は、当該凸部の先端の位置よりも内側に位置し、粘着剤層13を構成する粘着剤の70℃におけるtanδが0.30~0.80であり、かつ当該粘着剤の25℃における貯蔵弾性率が0.05~0.40MPaであり、粘着剤層13の厚みが50μm以上であり、光学積層体10の製造方法は、長尺状光学積層体を、切断辺近傍を加圧した状態で、凸部に対応する形状を有する刃で切断する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6