(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】給電構造、及び給電構造の設計方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20240708BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240708BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240708BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/12
H02J50/40
(21)【出願番号】P 2020139577
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 直幹
(72)【発明者】
【氏名】緑川 浩史
(72)【発明者】
【氏名】松岡 信仁
(72)【発明者】
【氏名】宇治川 智
(72)【発明者】
【氏名】小谷 宏己
(72)【発明者】
【氏名】川原 圭博
(72)【発明者】
【氏名】成末 義哲
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 拓也
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-023397(JP,A)
【文献】特開2008-039229(JP,A)
【文献】特開2014-150619(JP,A)
【文献】国際公開第2010/079768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 -50/90
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受電部を用いた無線給電を行う給電構造であって、
前記給電構造は、密閉空間を画成する壁、天井及び床を備えており、
前記給電構造は、前記天井を介して外部から前記密閉空間に給電を行う天井給電部と、前記壁を介して外部から前記密閉空間に給電を行う壁給電部と、床を介して外部から前記密閉空間に給電を行う床給電部と、の少なくともいずれか1つを備え、
前記天井は、天井材と、前記天井材が固定される第1下地材とを備え、
前記第1下地材は、第1方向に延びる複数の野縁受けと、前記第1方向に交差する第2方向に延びる複数の野縁とを含んでおり、
前記送受電部は、前記天井材の一方側及び他方側のそれぞれに固定される一対の第1コイルを含んでおり、
前記第1コイルのコイルサイズは、前記第1方向に沿って並ぶ一対の前記野縁の間隔よりも小さく、
前記壁給電部は、第1壁材と、第2壁材と、前記第1壁材及び前記第2壁材の間に設けられる第2下地材とを備え、
前記壁給電部は、前記送受電部として一対の第2コイルを備え、
一対の前記第2コイルのうちの一方は前記第1壁材の内面に固定されており、一対の前記第2コイルのうちの他方は前記第2壁材の前記第2下地材とは反対側の面に固定されている、
給電構造。
【請求項2】
前記
第1下地材
及び前記第2下地材は金属製であり、
前記
第1下地材から前記送受電部までの距離が25mm以上であ
り、
前記第2下地材から前記送受電部までの距離が25mm以上である、
請求項1に記載の給電構造。
【請求項3】
前記送受電部は、プリント基板コイルである、
請求項1又は2に記載の給電構造。
【請求項4】
密閉空間を画成する仕切り材に設けられる送受電部を用いた給電構造の設計方法であって、
前記送受電部を介して前記密閉空間の外部から前記密閉空間の内部に供給する電力の効率に基づいて前記送受電部の配置を設計する工程を備え
、
前記給電構造は、前記密閉空間を画成する壁、天井及び床を備えており、
前記給電構造は、前記天井を介して外部から前記密閉空間に給電を行う天井給電部と、前記壁を介して外部から前記密閉空間に給電を行う壁給電部と、床を介して外部から前記密閉空間に給電を行う床給電部と、の少なくともいずれか1つを備え、
前記天井は、天井材と、前記天井材が固定される第1下地材とを備え、
前記第1下地材は、第1方向に延びる複数の野縁受けと、前記第1方向に交差する第2方向に延びる複数の野縁とを含んでおり、
前記送受電部は、前記天井材の一方側及び他方側のそれぞれに固定される一対の第1コイルを含んでおり、
前記第1コイルのコイルサイズは、前記第1方向に沿って並ぶ一対の前記野縁の間隔よりも小さく、
前記壁給電部は、第1壁材と、第2壁材と、前記第1壁材及び前記第2壁材の間に設けられる第2下地材とを備え、
前記壁給電部は、前記送受電部として一対の第2コイルを備え、
一対の前記第2コイルのうちの一方は前記第1壁材の内面に固定されており、一対の前記第2コイルのうちの他方は前記第2壁材の前記第2下地材とは反対側の面に固定されている、
給電構造の設計方法。
【請求項5】
前記効率に基づくQ値が50以上である、
請求項4に記載の給電構造の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電構造、及び給電構造の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010-63324号公報には、無線誘電手段を介して空間を超えて給電を行う誘導電力伝送回路が記載されている。誘導電力伝送回路は銅の配線が巻かれて形成されたコイル状の送信アンテナ及び受信アンテナを備えており、コイル状の送信アンテナとコイル状の受信アンテナとは互いに対向するように配置される。上記の公報には、送信アンテナと受信アンテナとのアンテナ間隔と、送信アンテナ及び受信アンテナのそれぞれのコイル径との関係において、アンテナ間隔が約10μmである場合には電力伝送効率が約80%であり、アンテナ間隔が約20μmである場合には電力伝送効率が約60%であると記載されている。また、上記の公報には、当該アンテナ間隔が数倍大きい場合には、当該コイル径を数倍大きくすることで、効率よく電力を伝送すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、密閉空間を画成する仕切り材を備えた箇所における給電構造では、仕切り材を含む建築条件等を考慮してコイル等の送受電部の配置を行わなければならないことがある。建築条件を十分に考慮できていない場合、密閉空間の内部への電力の伝送効率が低下する懸念がある。しかしながら、前述した誘導電力伝送回路では、仕切り材を含む建築条件等が考慮されていない。従って、仕切り材を含む構造物及び建物に適用でき、且つ伝送効率を低下させないことが求められる。
【0005】
本開示は、高い伝送効率を維持すると共に構造物及び建物に適用することができる給電構造、及び給電構造の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る給電構造は、送受電部を用いた無線給電を行う給電構造であって、密閉空間を画成する仕切り材と、仕切り材が固定される下地材と、を備え、一対の送受電部が、仕切り材の密閉空間側、及び仕切り材の密閉空間の反対側のそれぞれに設けられている。
【0007】
この給電構造では、仕切り材が密閉空間を画成し、仕切り材の密閉空間側、及び仕切り材の密閉空間との反対側のそれぞれに一対の送受電部が設けられている。従って、一対の送受電部及び仕切り材を介して密閉空間の外部から密閉空間の内部に給電を行うので、密閉空間の密閉性を維持することができると共に、仕切り材の仕様等に基づいて送受電部の配置を設計することができる。よって、仕切り材を含む建築条件等を考慮して送受電部の配置を行うことができるので、伝送効率の低下を回避して高い伝送効率を維持することができる。更に、下地材によって固定された仕切り材の両側のそれぞれに一対の送受電部が設けられるので、下地材を考慮した送受電部の配置設計を行うことができる。従って、高い伝送効率を維持すると共に種々の構造物及び建物に適用することができる。
【0008】
前述した下地材は金属製であり、下地材から送受電部までの距離が25mm以上であってもよい。この場合、下地材から送受電部までの離隔距離を確保することができるので、金属製の下地材の影響を受けて伝送効率が低下する事態を確実に回避することができる。
【0009】
前述した送受電部は、プリント基板コイルであってもよい。この場合、仕切り材と下地材とを備えた無線給電用の給電構造において、送受電部をコンパクトにできる。その結果、送受電部の設置を容易に行うことができると共に、送受電部の収まりを良好にすることができる。
【0010】
本開示に係る給電構造の設計方法は、密閉空間を画成する仕切り材に設けられる送受電部を用いた給電構造の設計方法であって、送受電部を介して密閉空間の外部から密閉空間の内部に供給する電力の効率に基づいて送受電部の配置を設計する工程を備える。
【0011】
この給電構造の設計方法では、密閉空間の外部から密閉空間の内部に供給される電力の効率に基づいて仕切り材に設けられる送受電部の配置を設計する。従って、仕切り材の仕様等に基づいて送受電部の配置を設計することができる。その結果、仕切り材を含む建築条件等を考慮して送受電部の配置を行うことができるので、伝送効率の低下を回避して高い伝送効率を維持することができる。また、電力の効率に基づいて仕切り材に設けられる送受電部の配置を設計するので、効率の値を考慮した送受電部の配置が可能となる。従って、高い伝送効率を維持すると共に構造物及び建物に適用することができる。
【0012】
前述した効率に基づくQ値が50以上であってもよい。送受電部の伝送効率である所望の効率からQ値を逆算すると、そのときのQ値は50以上となる。よって、Q値が50以上であることにより、伝送効率を確実に所望の値以上とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、高い伝送効率を維持すると共に構造物及び建物に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る密閉空間の例を模式的に示す図である。
【
図2】
図1の密閉空間の天井に設けられた給電構造の例を示す平面図である。
【
図4】
図3の給電構造の例示的なコイルを示す図である。
【
図5】
図1の密閉空間の壁に設けられた給電構造の例を示す側断面図である。
【
図6】(a)は、コイル間隔が50mmである場合におけるコイルサイズと効率との関係を示すグラフである。(b)は、コイル間隔が20mmである場合におけるコイルサイズと効率との関係を示すグラフである。
【
図7】実施形態に係る給電構造の天井給電部における設計方法の各工程の例を示すフローチャートである。
【
図8】
図4のコイルの大きさ及び間隔を模式的に示す図である。
【
図9】
図4のコイルにおける各種計算の前提となる等価回路を示す図である。
【
図10】
図4のコイルのパターンを模式的に示す図である。
【
図11】
図6(a)及び
図6(b)のそれぞれのグラフを考慮して定められたコイルサイズ及びコイル間隔の範囲の例を示すグラフである。
【
図12】(a)は、コイルサイズが150mmである場合におけるコイル間隔と効率との関係を示すグラフである。(b)は、コイルサイズが200mmである場合におけるコイル間隔と効率との関係を示すグラフである。
【
図13】実施形態に係る給電構造の壁給電部における設計方法の各工程の例を示すフローチャートである。
【
図14】
図12(a)及び
図12(b)のそれぞれのグラフを考慮して定められたコイルサイズ及びコイル間隔の範囲の例を示すグラフである。
【
図15】変形例に係る給電構造の構成の例を示す図である。
【
図17】
図15の給電構造における各種計算の前提となる等価回路を示す図である。
【
図18】(a)は、
図15の給電構造における金属平板の離隔距離と効率との関係を示すグラフである。(b)は、
図15の給電構造における金属平板の面積と効率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る給電構造、及び給電構造の設計方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0016】
本開示において、「送受電部」は、電力を送信又は受信する部位を示しており、例えば、一対の送受電部のうち一方が電力を送信し他方が当該電力を受信する金属製のコイル、板状部材、送信アンテナ及び受信アンテナ等を含んでいる。「無線給電」は、ワイヤレス給電方式によって所定の箇所に給電を行うことを示しており、磁界結合方式、電界結合方式及び電波受信方式を含んでいる。磁界結合方式は、例えば、電磁誘導方式、及び磁界共鳴方式(磁気共鳴方式)を含んでいる。本実施形態では、無線給電において磁界結合方式を用いる例について説明する。「給電構造」とは、給電される構造体等の全部又は一部の構造を示しており、例えば、給電される建物を示している。「仕切り材」は、所定の空間を仕切る部材を示しており、例えば、密閉空間と密閉空間以外の空間とを仕切る部材(一例として、天井、壁及び床)を含んでいる。本実施形態では、「仕切り材」が天井材又は壁材である例について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る給電構造1の一例を示している。
図1に示されるように、給電構造1は密閉空間2を備えており、例えば、密閉空間2はクリーンルームである。給電構造1は、密閉空間2を画成する壁3、天井4及び床5を備えており、例えば、壁3、天井4及び床5のいずれにも電線を通すための孔は空いていない。従って、外部から密閉空間2への粉塵及び害虫等の侵入を抑制することができる。
【0018】
給電構造1は、例えば、密閉空間2において天井4に固定された第1機器6と、密閉空間2において床5に配置された可動式の第2機器7と、壁3の密閉空間2側に固定された第3機器8と、天井4に固定された第4機器9とを備える。第1機器6、第2機器7、第3機器8及び第4機器9は、密閉空間2の外部から給電されて作動する機器である。
【0019】
但し、第1機器6、第2機器7、第3機器8及び第4機器9は一例である。よって、密閉空間2には、第1機器6、第2機器7、第3機器8及び第4機器9の少なくともいずれかのみが配置されていてもよいし、第1機器6、第2機器7、第3機器8及び第4機器9以外の機器が配置されていてもよい。
【0020】
給電構造1は、例えば、天井4を介して外部から密閉空間2に給電を行う天井給電部10と、壁3を介して外部から密閉空間2に給電を行う壁給電部20A,20Bと、床5を介して外部から密閉空間2に給電を行う床給電部30とを備える。但し、給電構造1は、天井給電部10、壁給電部20A,20B及び床給電部30のいずれかのみを備えていてもよい。例えば、床給電部30は、壁給電部20Bと同様の構成を備えている。
【0021】
図2は、天井4の例を示す平面図である。
図2に示されるように、天井4は、天井材11(仕切り材)と、天井材11が固定される下地材12とを備える。一例として、下地材12は棒状部材が格子状に配置された軽鉄下地である。例えば、天井材11は金属を有しない。下地材12は、例えば、第1方向D1に延びる複数の野縁受け13と、第1方向D1に交差(一例として直交)する第2方向D2に延びる複数の野縁14とを含んでいる。
【0022】
天井給電部10は、例えば、第4機器9と、天井材11に固定される送受電部としてのコイル15b,15c及び制御装置16とを備える。第4機器9は、例えば、照明装置(一例として蛍光灯)である。例えば、第4機器9は野縁14に沿って延びており、第4機器9の一部は野縁受け13の下方に設けられている。野縁受け13は、複数の野縁14に載せられた状態で複数の野縁14を跨ぐように延びている。制御装置16は、第4機器9の長手方向の一端に設けられており、第4機器9とコイル15b,15cとの間に介在している。制御装置16は、コイル15bから電力を受けて当該電力を第4機器9に供給すると共に第4機器9を制御する。
【0023】
図3は、天井給電部10の例示的な構成を示す縦断面図である。
図3に示されるように、下地材12には、天井材11の外面11bが固定されており、例えば、下地材12は天井材11を補強する。例えば、天井材11は、第1板材17と、第1板材17とは異なる第2板材18とを含んでおり、第1板材17が下地材12(一例として野縁14)に固定されている。第1板材17は密閉空間2の外側に向けられており、第2板材18は密閉空間2側に向けられている。第1板材17の厚さT1は、例えば、第2板材18の厚さT2よりも厚い。
【0024】
一例として、第1板材17は石膏ボードであり、第2板材18は化粧ケイカル板である。例えば、第1板材17の厚さT1は10mm以上且つ15mm以下であり、第2板材18の厚さT2は3mm以上且つ10mm以下である。一例として、第1板材17の厚さT1は12.5mmであり、第2板材18の厚さT2は6mmであってもよい。
【0025】
コイル15bは、例えば、一対の野縁14の間に設けられている。コイル15bは天井材11の外面11bに固定されており、コイル15cは天井材11の内面11cに固定されている。一対のコイル15b,15cは、天井材11の一方側及び他方側のそれぞれに固定されており、例えば、平面視におけるコイル15b,15cの位置は互いに一致している。この場合、コイル15bはコイル15cに鉛直方向に沿って対向している。
【0026】
コイル15b,15cは、例えば、磁界結合方式によって外部から密閉空間2の内部に電力供給を行う。この場合、コイル15bは送電側コイルであり、コイル15cは受信側コイルである。コイル15b,15cの平面形状は、例えば、矩形状とされており、一例として矩形枠状とされている。コイル15bの平面形状が矩形状であることにより、コイル15bのコイルサイズを大きく確保しつつ、コイル15bから金属製の下地材12までの距離(例えば後述するへりあきA1,A2)を確保することができる。
【0027】
コイル15b,15cのコイルサイズC1は、例えば、第1方向D1に沿って並ぶ一対の下地材12(野縁14)の間隔L1よりも小さい。本開示において、「コイルサイズ」は、コイルの大きさを示しており、例えば、コイル幅、及びコイルの一辺の長さ、を含んでいる。
【0028】
具体例として、一対の下地材12の間隔L1の値は300mmであり、コイル15b,15cのコイルサイズC1は50mm以上且つ200mm以下である。コイルサイズC1が200mm以下であることにより、コイル15bと下地材12のへりあきA1,A2のそれぞれを25mm以上(例えば25mm以上且つ100mm以下)とすることが可能となり、金属製の下地材12からのコイル15b,15cへの影響を抑えることが可能となる。
【0029】
具体的には、下記の論文に、下地材12の間隔が300mmである場合、コイルサイズC1が250mmを超える(へりあきA1,A2が25mm未満になる)と、金属製の下地材12の影響を受けてコイル15b,15cによる電力の伝送効率が急激に低下すると記載されている。
論文:Z. Li, T. Sasatani, Y. Nishizawa, Y. Kawahara, “Coil Design forWireless Power Transfer through Walls with Metallic Lattice,” IEICE SocietyConference 2018, B-21-9, Sept. 2018
なお、上記の論文では、金属平板を用いた場合の解析結果が記載されているが、本実施形態では、金属平板ではなく矩形枠状のコイル15b,15cを採用するため、金属平板よりも下地材12からの影響を受けにくいという利点がある。本実施形態では、コイルサイズC1を200mm以下として、コイル15bと下地材12のへりあきA1,A2のそれぞれを25mm以上(例えば25mm以上且つ100mm以下)とすることにより、金属製の下地材12からコイル15b,15cへの干渉を回避している。
【0030】
一例として、コイル15bが一対の下地材12の中間に配置される場合、コイル15bと下地材12のへりあきA1,A2のそれぞれは50mmである。例えば、平面視において、コイル15b,15cの位置は第4機器9に収まっている。一例として、第4機器9の第1方向D1の長さL2(幅)が250mmであり、コイル15b,15cの第1方向D1の長さ(コイルサイズC1)が200mmであってもよい。
【0031】
例えば、コイル15bとコイル15cのコイル間隔は、20mm以上且つ50mm以下であってもよい。本開示において、「コイル間隔」は、一対のコイルの間の距離を示しており、例えば、コイル間距離を含んでいる。「コイル間距離」としては、一方のコイルの芯から他方のコイルの芯までの芯々間距離が用いられてもよいし、一方のコイルの表面から他方のコイルの表面までの表面間距離が用いられてもよい。コイル15bとコイル15cのコイル間隔が20mm以上であることにより、天井材11の厚さを考慮したコイル15b,15cの配置が可能となる。
【0032】
図4は、例示的なコイル15bを示している。なお、コイル15cの構成は、コイル15bの構成と同様とすることが可能であるため、以下ではコイル15cの詳細な説明を省略する。
図4に示されるように、例示的なコイル15bはプリント基板コイルである。コイル15bは、例えば、プリント基板(PCB)15dと、コイル15bのパターンを形成する銅箔15fと、複数のビア15gと、一対の端子15hとを備える。一対の端子15hのそれぞれには、例えば、厚さが2mm以上且つ3mm以下の同軸コネクタ15kが接続されている。
【0033】
例えば、プリント基板15dは、四角形状(一例として長方形状又は正方形状)を呈する。銅箔15fは、プリント基板15dの外縁15jに沿うように配置されており、例えば、外縁15jからプリント基板15dの中央側に向かって複数(一例として6個)の四角形状の銅箔15fが並ぶように配置されている。一例として、コイル15bは6周分の巻線を有する。この場合、コイル15bの巻数は6である。複数の四角形状の銅箔15fのそれぞれは、例えば、矩形枠状を呈する。複数の銅箔15fは、例えば、同心角状に配置されている。
【0034】
前述したように、コイル15bは複数のビア15gを有し、複数のビア15gの一部は銅箔15fの四隅のそれぞれに配置されている。例えば、銅箔15fの一の隅部に位置するビア15gから他の隅部に位置するビア15gまでの距離X1は、120mm以上且つ170mm以下であり、一例として146mmである。銅箔15fの幅X2は、例えば、2mm以上且つ6mm以下であり、一例として4mmである。2つの銅箔15fの間隔X3は、例えば、0.5mm以上且つ2mm以下であり、一例として1mmである。例えば、銅箔15fの厚さは、10μm以上且つ105μm以下である。銅箔15fの厚さの下限は、18μm、25μm又は35μmであってもよい。銅箔15fの厚さの上限は70μm又は50μmであってもよい。一例として、銅箔15fの厚さは、18μmである。コイル15bの厚さは、例えば、2mm以上且つ10mm以下である。但し、コイル15bの厚さは、10mm以上であってもよい。また、コイル15bの厚さは、野縁14の高さと野縁受け13の高さとの合計以下であってもよい。この場合、コイル15bが他の設備と干渉する可能性を低減させることができる。また、平面視における第4機器9(照明機器)の内側にコイル15bを設置することが可能となる。
【0035】
次に、壁給電部20A,20Bの例について説明する。例えば、壁給電部20Bの構成は、前述した天井給電部10の構成と同様である。
図5は、壁給電部20Aの例示的な構成を示す側断面図である。
図5に示されるように、壁給電部20Aは、壁材21,22(仕切り材)と、壁材21,22の間に設けられる下地材23とを備える。壁材21,22及び下地材23は、密閉空間2と、部屋Hの空間とを画成する壁を構成していてもよい。部屋Hは、密閉空間2と同様、クリーンルームであってもよいし、クリーンルームとは異なる部屋であってもよい。一例として、下地材23は棒状部材が鉛直方向に沿って並ぶ軽鉄下地である。例えば、壁材21,22は金属を有しない。
【0036】
壁給電部20Aは、例えば、第3機器8と、壁材21に固定される送受電部としてのコイル25b,25cとを備える。例えば、下地材23には壁材21及び壁材22が固定されており、下地材23は壁材21、22の補強のために設けられる。壁材22から見て密閉空間2の反対側には、前述したように、密閉空間2とは別の部屋Hが設けられていてもよい。
【0037】
壁材21は、第3板材26と、第3板材26とは異なる第4板材27とを含んでおり、第4板材27が下地材23に固定されている。下地材23に壁材21の外面21dが固定されている。第3板材26は密閉空間2側に向けられており、第4板材27は密閉空間2の反対側に向けられている。第3板材26の厚さT3は、例えば、第4板材27の厚さT4よりも薄い。なお、第3板材26は省略されてもよい。
【0038】
例えば、第3板材26は化粧ケイカル板であり、第4板材27は石膏ボードである。一例として、第3板材26の厚さT3は5mm以上且つ15mm以下であり、第4板材27の厚さT4は9mm以上且つ15mm以下である。例えば、第3板材26の厚さT3は9.5mmであり、第4板材27の厚さT4は9.5mm以上且つ15mm以下であってもよい。
【0039】
コイル25bは、壁材21の内面21cに固定されており、コイル25cは壁材22の下地材23との反対側の面に固定されている。一対のコイル25b,25cは壁材21,22の一方側及び他方側のそれぞれに固定されている。例えば、側面視(第1方向D1に沿った見た場合)におけるコイル25b,25cの位置は互いに一致している。この場合、コイル25bはコイル25cに第1方向D1に沿って対向している。
【0040】
例えば、コイル25b,25cは、磁界結合方式によって外部から密閉空間2の内部に電力供給を行う。この場合、コイル25cは送信側コイルであり、コイル25bは受信側コイルである。コイル25b,25cの側面形状は、例えば、矩形状とされており、一例として矩形枠状とされている。コイル25b,25cのそれぞれの構成は、前述したコイル15b,15cの構成と同様であってもよい。
【0041】
コイル25b,25cのコイルサイズC3は、例えば、鉛直方向に沿って並ぶ一対の下地材23の間隔L3よりも小さい。間隔L3に対するコイルサイズC3の割合の下限は、例えば、35%又は40%であり、間隔L3に対するコイルサイズC3の割合の上限は、85%又は75%である。具体例として、一対の下地材23の間隔L3の値は300mmであり、コイル25b,25cのコイルサイズC3は150mm以上且つ200mm以下である。
【0042】
コイルサイズC3が200mm以下であることにより、コイル25cと下地材23のへりあきA3,A4(側面視におけるコイル25cと一方の下地材23との距離、及び、側面視におけるコイル25cと他方の下地材23との距離)のそれぞれを25mm以上(例えば25mm以上且つ100mm以下)とすることが可能となる。よって、前述したコイル15b,15cの場合と同様、金属製の下地材23からのコイル25b,25cへの影響を抑えることが可能となる。一例として、コイル25cと下地材23のへりあきA3,A4のそれぞれは50mmである。例えば、側面視において、コイル25b,25cの位置は第3機器8の位置に収まっている。
【0043】
例えば、コイル25bとコイル25cのコイル間隔は、70mm以上且つ200mm以下であってもよい。コイル25bとコイル25cのコイル間隔が70mm以上であることにより、壁材(壁材21,22)の厚さを考慮したコイル25b,25cの配置が可能となる。
【0044】
次に、本実施形態に係る給電構造の設計方法の例について
図6(a)、
図6(b)及び
図7を参照しながら説明する。
図6(a)はコイル間隔を50mmとした場合におけるコイルサイズと効率との関係を示す例示的なグラフであり、
図6(b)はコイル間隔を20mmとした場合におけるコイルサイズと効率との関係を示す例示的なグラフである。
図7は、天井越しの無線給電を行う場合、すなわち、天井給電部10の場合におけるコイル15b,15cのコイルサイズC1及びコイル間隔を算出するまでの各工程の一例を示すフローチャートである。
【0045】
まず、金属製の下地材12からの影響を抑えるためコイルサイズの上限を定めると共に目的とする効率を設定する(金属製の下地材からの干渉を回避するために下地材からの離隔を確保する工程、ステップS1)。ステップS1では、例えば、コイルサイズを200mm以下にすると共に効率を70%以上に設定する。
【0046】
次に、コイルサイズの範囲を設定する(機器に収めるためにコイルサイズの範囲を設定する工程、ステップS2)。例えば、ステップS2は、クリーンルームである密閉空間2に配置される機器の収納の制約に基づいてコイルサイズの範囲を設定する工程に相当する。一例として、第4機器9(例えば照明機器)に収まるコイル15b,15cのコイルサイズC1について検討すると、コイル15b,15cのコイルサイズC1が230mm以下であれば、第4機器9に収まる。しかしながら、ステップS1においてコイルサイズC1の上限が200mmとされているため、ステップS2では、コイルサイズC1の範囲を200mm以下に設定する。
【0047】
次に、コイル15b,15cのコイル間隔の設定を行う(仕切り材の厚さに基づいてコイル間隔を設定する工程、ステップS3)。ステップS3では、例えば、天井材の厚さと第4機器9の仕様を考慮してコイル15b,15cのコイル間隔を20mm以上且つ50mm以下に設定する。具体例として、第1板材17の厚さT1と第2板材18の厚さT2との和からコイル間隔の最低値を20mmとし、コイル15b,15cのプリント基板15dの端子15hの仕様からコイル間隔の最大値を50mmとする。
【0048】
続いて、求める効率との関係からコイルサイズC1の設定を行う(ステップS4)。ステップS4は、例えば、Q値を算出する工程に相当する。具体例として、
図6(a)及び
図6(b)に示される効率とコイルサイズとの関係から上記の設定を行う。
図6(a)及び
図6(b)は、Q値が50である場合におけるコイルサイズと効率との関係を示すグラフである。Q値は振動の状態を示す無次元の指標値であり、Q値が大きいときに振動が安定しており、Q値が小さいときに振動が安定していないことを示している。
【0049】
以下では、Q値と効率との関係の例について説明する。
図8は、配置される一対のコイルCのコイルサイズa、コイルサイズb及びコイル間隔dを模式的に示す図である。
図9は、各種計算の前提となる等価回路を示す図である。
図10は、コイルCのパターン(銅箔)を模式的に示す図である。
【0050】
図8及び
図9に示されるように、コイルサイズa及びコイルサイズbは、矩形状のコイルCの一辺の長さを示しており、一対のコイルCが並ぶことによって相互インダクタンスが生じる。計算によって得られる計算相互インダクタンスMは以下の式(1)によって算出される。
【0051】
【数1】
一例として、コイルサイズa及びコイルサイズbの値を146mm、コイル間隔dの値を50mmとすると、計算相互インダクタンスMは2.664μHとなる。
【0052】
続いて、
図4に示されるコイルのモデルにおいて、設定周波数f
cを6.78MHz、計算キャパシタンスCを77pFとすると、式(2)によって推定自己インダクタンスLが算出される。
【数2】
【0053】
計算相互インダクタンスMと推定自己インダクタンスLから、式(3)によって結合係数kが求められる。
【数3】
【0054】
また、
図10に示されるように、パターン(銅箔)の厚さtを18μm、パターンの幅wを4mm、パターンの全体の長さL(6周分の長さ)を3.5mとすると、以下の式(4)から、推定パターン抵抗Rが求められる。
【数4】
【0055】
以下の式(5)及び式(6)から推定Q値が求められる。
【数5】
【数6】
【0056】
また、前述した結合係数kと推定Q値から後述の式(7)及び式(8)によって最大伝送効率η
maxが求められる。
【数7】
【数8】
【0057】
以上の式(6)~式(8)により、推定Q値が371であるときに最大伝送効率ηmaxが98.6%と算出される。これに対し、実際のコイルの伝送効率である電力の実測効率ηを90%として、前述した各式を用いてQ値を逆算すると、そのときのQ値は50程度(50以上)となる。本実施形態において、電力の実測効率が本開示における「効率に基づいて」の「効率」に相当する。この「効率」は、例えば、予め想定される想定効率である。「想定効率」は、一例として、予め実際に測定して得られた電力の実測効率を含んでいる。電力の実測効率は、一例として、有線の電力ケーブルで照明機器に電力供給を行う場合を基にしつつ、無線給電による照明機器への電力の供給量を得ることによって算出されてもよい。
【0058】
前述したように各式を用いて実測効率を90%としたときのQ値を50として算出すると、Q値を50と算出した結果得られた効率とコイルサイズとの関係が
図6(a)及び
図6(b)のように示される。
図6(a)及び
図6(b)は、所定の効率からQ値を求め、当該Q値から得られたコイルサイズと効率との関係を示す特性曲線を示している。この特性曲線は、例えば、前述した式(1)~式(8)から求められる。なお、実測効率に基づくQ値は、例えば、50以上且つ100未満であるが、実測効率に基づくQ値の下限は60、65、70又は75であってもよい。例えば、実測効率に基づくQ値の上限は95、90、85又は80であってもよい。本実施形態では、Q値を100未満としてQ値を低い値にした場合であっても、確実に天井4に送受電部(コイル15b,15c)を収めることができると共に高い伝送効率を実現できる。なお、上記の例では実測効率を90%としたときのQ値を算出し、その結果得られた効率とコイルサイズとの関係を示している。しかしながら、「実測効率を90%としたときのQ値」に限られず、例えば、前述した想定効率を所定値としたときのQ値を算出してもよい。
【0059】
例えば、ステップS4では、
図6(a)及び
図6(b)に示される特性曲線からコイル15b,15cのコイルサイズを設定する。具体例として、コイル間隔が20mmであって且つ効率が70%以上であるときのコイルサイズの値を50mm以上と定め、コイル間隔が50mmであって且つ効率が70%以上であるときのコイルサイズの値は100mm以上と定める。ここで、「70%」は実現可能効率の例示となる値である。実現可能効率は、例えば、LED照明機器に給電を行う場合と、蛍光灯(紫外線を蛍光体に当てて可視光線に変換する一般蛍光灯)に給電を行う場合とを考慮して定められる。具体例として、LED照明機器に有線給電を行う場合に当該LED照明機器から照射される光束(ルーメン)を「1」とすると、蛍光灯に有線給電を行う場合に当該蛍光灯から照射される光束は「0.7」程度となる。前述した実現可能効率は、LED照明機器に無線給電を行う場合に当該LED照明機器から照射される光束が、蛍光灯に有線給電を行う場合に当該蛍光灯から照射される光束以上となる効率を示しており、前述の例では0.7(70%)となる。以下では、求める効率を当該実現可能効率(70%)とする例について説明する。
【0060】
前述した例では、コイル間隔が50mmであって且つ効率が70%以上であるときのコイルサイズの値を100mm以上と定める。このように、
図6(a)及び
図6(b)に例示される所定条件(例えば、実測効率90%、Q値50)での特性曲線において境界値となる実現可能効率からコイルサイズを定める。
【0061】
以上、ステップS1~S4の各工程を経て得られたコイル15b,15cのコイルサイズとコイル間隔の関係の例を
図11に示す。例えば、
図11に示されるコイルサイズとコイル間隔の関係からコイル15b,15cのコイルサイズC1とコイル間隔とを確定する(ステップS5)。前述した例では、コイルサイズC1の下限は50mm、コイルサイズC1の上限は200mm、コイル間隔の下限は20mm、コイル間隔の上限は50mmと定められる。以上のように、コイル15b,15cのコイルサイズC1及びコイル間隔が定められた後に一連の工程が完了する。
【0062】
例えば、コイル間隔が35mmである場合、70%以上の効率を得ようとすると、コイルサイズを70mm以上とする必要がある。例えば、
図11のグラフの斜線部分の範囲内でコイルサイズ及びコイル間隔を設定することが可能である。よって、コイルサイズ及びコイル間隔の境界値を容易に設定できると共に、例えば、効率が70%より高くなるようにコイルサイズ及びコイル間隔の設定を行うことが可能となる。
【0063】
具体的には、
図11のグラフの斜線部分の右下の点(コイル間隔50mm、コイルサイズ100mmの点)と、当該斜線部分の左下の点(コイル間隔20mm、コイルサイズ50mmの点)の場合、効率を70%以上とすることが可能である。また、コイル間隔が35mmであって効率が70%であるときのコイルサイズは70mmとなる。従って、当該斜線部分の右下の点と左下の点とを直線補完した線分よりも上側のコイル間隔及びコイルサイズの場合には70%以上の効率を確保することが可能である。
図11のグラフにおけるコイル間隔35mmコイルサイズ70mmを示す点は、コイル間隔の中間点(20mmと50mmの中間点)における効率とコイルサイズとの関係を示した点である。このコイル間隔35mmコイルサイズ70mmを示す点よりも、
図11の斜線部分の下側の線分が上方に位置するため、当該線分(当該斜線部分の下側の線分、当該直線補完した線分)は、効率を70%以上とすることが可能なコイル間隔及びコイルサイズの下限境界に相当しうる。すなわち、当該線分は、所定値以上の効率が得られるコイル間隔及びコイルサイズの関係を示す効率の特性直線(本実施形態では、効率70%を確保可能な近似直線)に相当しうる。
【0064】
図11のグラフの斜線部分の上側の線分は、コイルサイズの上限(例えば200mm)を示す線分であり、当該上限以下のコイルサイズであれば、下地材からの影響を回避することができる。当該斜線部分の上側の線分は、例えば、金属製の下地材12からのへりあきA1,A2を考慮した線分に相当する。また、当該斜線部分の右側で上下方向に延びる線分、及び当該斜線部分の左側で上下方向に延びる線分は、仕切り材の寸法(例えば仕切り材の厚さ、仕切り材の外形の寸法上の制約)によって定まるコイル間隔の上限値(例えば50mm)及び下限値(例えば20mm)を示している。
【0065】
以上のように、天井越しの無線給電を行う場合では、仕切り材の寸法に基づいてコイル間隔の上限及び下限を定め、下地材からの影響を回避可能なコイルサイズの上限を定め、更に、所定値以上の効率が得られるコイル間隔及びコイルサイズの特性直線を定めることにより、所望の効率が得られるコイル間隔及びコイルサイズを容易に且つ確実に算出することができる。
【0066】
すなわち、磁界結合方式によって天井越しの無線給電を行う場合には、寸法上の制約、及び求める効率に基づいてコイルの配置設計を行うことが可能である。具体的には、寸法上の範囲の境界において効率範囲の境界値をプロットすることによってコイルの配置設計を行う。例えば、寸法上の制約、及び求める効率に基づいて、コイルサイズ及びコイル間隔を定める。このとき、一例として、コイルサイズの範囲(例えば、上限値及び下限値の少なくともいずれか)、並びにコイル間隔の範囲(例えば、上限値及び下限値の少なくともいずれか)を定める。本実施形態では、金属製の下地材からの影響を抑えるためのコイルサイズの値(上限値)を定め、仕切り材の制約(厚さ等)に基づいてコイル間隔を定め、効率との関係からコイルサイズを設定する。これにより、所望の効率を実現させるコイル間隔及びコイルサイズを容易に設計することができる。
【0067】
次に、
図12(a)、
図12(b)及び
図13を参照しながら壁越しの無線給電を行う場合、すなわち、壁給電部20Aの設計方法の例について説明する。
図12(a)はコイルサイズを150mmとした場合におけるコイル間隔と効率との関係を示す例示的なグラフであり、
図12(b)はコイルサイズを200mmとした場合におけるコイル間隔と効率との関係を示す例示的なグラフである。
図13は、壁給電部20の場合におけるコイル25b,25cのコイルサイズC3及びコイル間隔を算出するまでの各工程の一例を示すフローチャートである。以下では、壁給電部20におけるコイル25b,25cのコイルサイズC3及びコイル間隔を算出する例について説明する。
【0068】
まず、金属製の下地材23からの影響を抑えるためコイルサイズC3の範囲を定めると共に目的とする効率を設定する(金属製の下地材からの干渉を回避するために下地材からの離隔を確保する工程、ステップS11)。ステップS11では、例えば、コイルサイズC3を150mm以上且つ200mm以下にすると共に効率を70%(実現可能効率)以上に設定する。
【0069】
次に、コイル25b,25cのコイル間隔の範囲を設定する(仕切り材及び下地材の厚さに基づいてコイル間隔を設定する工程、ステップS12)。一般的に、壁材21、壁材22及び下地材23の厚さは70mm以上であるため、例えば、最小壁厚におけるコイル間隔を70mm以上とする。
【0070】
続いて、求める効率との関係からコイル間隔の設定を行う(ステップS13)。ステップS13は、前述したステップS4と同様、例えば、Q値を算出する工程に相当する。具体例として、
図12(a)及び
図12(b)に示される効率とコイル間隔との関係から上記の設定を行う。
図12(a)及び
図12(b)は、
図6(a)及び
図6(b)と同様、Q値が50である場合におけるコイル間隔と効率との関係を示すグラフである。すなわち、
図12(a)及び
図12(b)は、実測効率を90%としたときのQ値を50として算出し、Q値を50と算出した結果得られた効率とコイル間隔との関係を示している。
図12(a)及び
図12(b)は、所定の効率からQ値を算出し、当該Q値から得られたコイル間隔と効率との関係を示す特性曲線を示している。この特性曲線は、前述した天井越しの無線給電の場合と同様、例えば、前述した式(1)~式(8)から求められる。
【0071】
例えば、ステップS13では、
図12(a)及び
図12(b)に示される関係からコイル25b,25cのコイル間隔を設定する。具体的には、コイルサイズが150mmであって且つ効率が70%以上であるときのコイル間隔の値を100mm以下と定め、コイルサイズが200mmであって且つ効率が70%以上であるときのコイル間隔を200mm以下と定める。このように、
図12(a)及び
図12(b)に例示される所定効率での特性曲線において境界値となる効率からコイル間隔を定める。
【0072】
以上、ステップS11~S13の各工程を経て得られたコイル25b,25cのコイルサイズとコイル間隔の関係を
図14に示す。例えば、
図14に示されるコイルサイズとコイル間隔の関係からコイル25b,25cのコイルサイズC3とコイル間隔とを確定する(ステップS14)。上記の例では、コイルサイズC3の下限は150mm、コイルサイズC3の上限は200mm、コイル間隔の下限は70mm、コイル間隔の上限は200mmと定められる。以上のように、コイル25b,25cのコイルサイズC3及びコイル間隔が定められた後に一連の工程が完了する。
【0073】
例えば、コイルサイズが175mmである場合、70%以上の効率を得ようとすると、コイル間隔を157mm以下とする必要がある。従って、
図14のグラフの斜線部分の範囲内でコイル間隔及びコイルサイズを設定することが可能である。よって、コイル間隔及びコイルサイズの境界値を容易に設定できると共に、例えば、効率が70%より高くなるようにコイル間隔及びコイルサイズの設定を行うことが可能となる。
【0074】
図14のグラフの斜線部分の右上の点(コイル間隔200mm、コイルサイズ200mmの点)と、当該斜線部分の右下の点(コイル間隔100mm、コイルサイズ150mmの点)の場合、効率を70%以上とすることが可能である。また、コイル間隔が157mmであって効率が70%であるときのコイルサイズは175mmとなる。従って、当該斜線部分の右上の点と当該斜線部分の右下の点とを直線補完した線分よりも上側又は左側のコイル間隔及びコイルサイズの場合には70%以上の効率を確保することが可能である。このコイル間隔157mmコイルサイズ175mmを示す点よりも、
図14の斜線部分の右下の線分が上方に位置するため、当該線分(当該斜線部分の右下側の線分、当該直線補完した線分)は、効率を70%以上とすることが可能なコイル間隔及びコイルサイズの下限境界に相当しうる。すなわち、当該線分は、所定値以上の効率が得られるコイル間隔及びコイルサイズの関係を示す効率の特性直線(本実施形態では、効率70%を確保可能な近似直線)に相当しうる。
【0075】
図14のグラフの斜線部分の上側の線分は、コイルサイズの上限(例えば200mm)を示す線分であり、当該上限以下のコイルサイズであれば、下地材からの影響を回避することができる。当該斜線部分の上側の線分は、金属製の下地材23からのへりあきA3,A4を考慮した線分に相当する。また、当該斜線部分の左下で左右方向に延びる線分は、より確実に効率70%以上を確保可能なコイルサイズの下限値(例えば150mm)を示しており、当該斜線部分の左側で上下方向に延びる線分は、仕切り材の寸法(例えば仕切り材の厚さ、仕切り材の外形の寸法上の制約)によって定まるコイル間隔の下限値(例えば70mm)を示している。
【0076】
以上のように、壁を介して無線給電を行う場合には、仕切り材の寸法に基づいてコイル間隔の下限を定め、下地材からの影響を回避可能なコイルサイズの上限を定め、更に、所定値以上の効率が得られるコイル間隔及びコイルサイズの特性直線を定めることにより、所望の効率が得られるコイル間隔及びコイルサイズを容易に且つ確実に算出することができる。
【0077】
すなわち、磁界結合方式によって壁越しの無線給電を行う場合には、寸法上の制約、及び求める効率に基づいてコイルの配置設計を行うことが可能である。具体的には、寸法上の範囲の境界において効率範囲の境界値をプロットすることによってコイルの配置設計を行う。例えば、寸法上の制約、及び求める効率に基づいて、コイルサイズ及びコイル間隔を定める。このとき、一例として、コイルサイズの範囲(例えば、上限値及び下限値の少なくともいずれか)、並びにコイル間隔の範囲(例えば、上限値及び下限値の少なくともいずれか)を定める。本実施形態では、金属製の下地材からの影響を抑えるためのコイルサイズの値(上限値)を定め、仕切り材の制約(厚さ等)に基づいてコイル間隔を定め、効率との関係からコイルサイズを設定することにより、所望の効率を実現させるコイル間隔及びコイルサイズを容易に設計することができる。
【0078】
次に、本実施形態に係る給電構造、及び給電構造の設計方法から得られる作用効果について詳細に説明する。例えば
図3に示されるように、給電構造1では、天井材11が密閉空間2を画成し、天井材11の密閉空間2側にコイル15cが設けられ、天井材11の密閉空間2の反対側にコイル15bが設けられる。従って、一対のコイル15b,15c及び天井材11を介して密閉空間2の外部から密閉空間2の内部に給電を行うので、クリーンルームにおける密閉空間2の密閉性を維持することができると共に、天井材11の仕様等に基づいてコイル15b,15cの配置を設計することができる。
【0079】
よって、天井材11を含むクリーンルームの建築条件等を考慮してコイル15b,15cの配置を行うことができるので、伝送効率の低下を回避して高い伝送効率を維持することができる。更に、下地材12によって固定された天井材11の両側(外面11b及び内面11c)のそれぞれに一対のコイル15b,15cが設けられるので、下地材12を考慮したコイル15b,15cの配置の設計を行うことができる。従って、高い伝送効率を維持すると共に、クリーンルームだけでなく種々の構造物及び建物に適用することができる。
【0080】
下地材12は金属製であり、下地材12からコイル15bまでの距離(例えば前述したへりあきA1,A2)が25mm以上であってもよい。この場合、下地材12からコイル15bまでの離隔距離を確保することができるので、金属製の下地材12の影響を受けて伝送効率が低下する事態を確実に回避することができる。
【0081】
コイル15b,15cは、プリント基板コイルであってもよい。この場合、天井材11と下地材12とを備えた無線給電用の給電構造1において、コイル15b,15cをコンパクトにできる。ところで、従来、無線給電のコイル等を設置するときには、前述した推定パターン抵抗Rを小さくしてQ値を高くするために、電力ケーブルが用いられることがあった。しかしながら、電力ケーブルを用いる場合、推定パターン抵抗Rを小さくするために太いケーブルを用いる必要があり小型化及び軽量化が難しく、収まりが良くないという問題があった。
【0082】
本来、電力の効率の観点では、Q値は高い方が好ましい。例えば、磁界結合方式のワイヤレス給電で用いられるコイルでは、Q値が高い場合に、電力の伝送効率を上げると共に電力伝送距離を伸ばすことも可能である。Q値を高くすれば電力伝送距離が伸びることについては以下の文献1に記載がある。文献1には、送受電コイル間の距離が離れても(結合係数kが小さくなっても)、共振器のQ値を高くできれば、高い電力伝送効率を実現できることが記載されている。また、文献2には、伝送効率を高めるためには、送受信コイル間の結合係数kを大きくすると共に、コイルのQ値を高くすることが必要であると記載されている。文献2には、検証結果として、Q値が921、854、997、1128又は1251であることが記載されている。
文献1:日本電子情報通信学会通信ソサイエティマガジン No.25夏号2013 pp13-18 "ワイヤレス電力伝送技術が社会を変える"
(URL)https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/7/1/7_13/_pdf
文献2:昭和電線レビューVol.62(2016) pp30-39 "ワイヤレス給電用コイルの最適化検討"
(URL)https://www.swcc.co.jp/hd/company/review/62/A6_62.pdf
【0083】
以上のように、効率を高めるためには、一般的にQ値を高くすること(例えば3桁以上の値にすること)が望まれる。しかしながら、Q値を高くするためには、インダクタンスを大きくすること、又は抵抗を小さくすることが必要となる。また、Q値が高い場合には、周波数帯域のずれに伴って効率が著しく変化することがあり、周波数帯域のずれによって効率が変化しやすいという問題がある。周波数帯域のずれは、金属製の下地材からの影響によって生じることがあるため、Q値が高い場合には、金属製の下地材の存在に伴う周波数帯域の変動によって効率が低下する可能性が高いという懸念がある。
【0084】
これに対し、本実施形態では、仕切り材、下地材、及びその他の機器等の設置による寸法的な制約を考慮しつつ、敢えて、高抵抗なプリント基板コイルを用いて且つQ値をある程度小さくしても高い電力の効率を実現可能である。前述したように、電力の実測効率を90%としてQ値を逆算したときにそのときのQ値は50程度となるため、Q値が50程度であれば、所望の高い効率を得られる(例えば照明器具である第4機器9に十分な電力を供給できる)。更に、Q値を小さくすることにより、下地材からの影響を受けにくくすることができるので、周波数帯域のずれに伴う効率の低下を抑制することができ、高い効率を安定して実現させることができる。
【0085】
ところで、具体例として、金属製の下地材12からコイル15bまでの距離(例えば前述したへりあきA1,A2)が25mm以上であって、コイル間隔が仕切り材の厚さ程度であって、プリント基板コイルであるコイル15bを用いる場合には、LEDの照明機器に無線給電によって十分に電力供給できることが分かっている。更に、プリント基板コイルであるコイル15b,15cの場合、小型化及び軽量化を実現できると共に、伝送効率を確実に所望の値以上とすることができる。従って、コイル15b,15cの設置を容易に行うことができると共に、コイル15b,15cの収まりを良好にすることができる。
【0086】
コイル15b,15cの厚さが2mm以上且つ10mm以下であってもよい。この場合、コイル15b,15cの厚さが10mm以下であることにより、コイル15b,15cと他の部材との干渉を回避することができると共に、より確実にコイル15b,15cを収めることができる。そして、コイル15b,15cの設置を容易に行うことができる。
【0087】
本実施形態に係る給電構造1の設計方法では、密閉空間2の外部から密閉空間2の内部に供給される電力の効率に基づいて天井材11(仕切り材)に設けられるコイル15b,15cの配置(又は壁材21及び壁材22に設けられるコイル25b,25cの配置)を設計する。従って、天井材11等の仕切り材の仕様等に基づいてコイルの配置を設計することができる。その結果、天井材11等の仕切り材を含む建築条件等を考慮してコイルの配置を行うことができるので、伝送効率の低下を回避して高い伝送効率を維持することができる。また、電力の実測効率に基づいて仕切り材に設けられるコイルの配置を設計する場合には、実測値を考慮したコイルの配置が可能となる。従って、高い伝送効率を維持すると共に構造物及び建物に適用することができる。
【0088】
前述した効率に基づくQ値(例えば実測効率に基づくQ値)が50以上であってもよい。本実施形態において、コイル15b,15cの伝送効率である所望の実測効率を90%としてQ値を逆算すると、そのときのQ値は50以上となる。よって、Q値が50以上であることにより、伝送効率を確実に所望の値以上とすることができる。
【0089】
以上、本開示は、前述した実施形態に限定されることはなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能であり、例えば、給電構造の各部の構成及び配置態様、並びに、給電構造の設計方法の各工程の内容及び順序は、前述した要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0090】
例えば、前述の実施形態では、電力の送信又は受信を行う送受電部がコイル15b,15c,25b,25cである例について説明した。しかしながら、送受電部は、コイル以外のものであってもよく、例えば、電界結合方式で用いられる金属製の板状部材であってもよい。前述の実施形態では、コイル15b,15cの平面形状が矩形状である例について説明した。しかしながら、コイルの平面形状は、矩形状に限られず、例えば、円形状であってもよく、適宜変更可能である。
【0091】
前述の実施形態では、式(1)~式(8)を用いて給電構造の各種パラメータを算出する種々の例について説明した。しかしながら、給電構造の設計のときに用いる各種パラメータの種類、及び各種パラメータの値は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0092】
次に、電界結合方式を用いた給電構造50の例について説明する。
図15に示されるように、給電構造50は、仕切り材51の一方側及び他方側のそれぞれに設けられた送受電部として金属製の板状部材52,53,54,55を備える。仕切り材51は、例えば、石膏ボード(一例としてケイカル板)を含む。電界結合方式を用いた給電構造50の場合において、例えば、板状部材52,53,54,55の周囲には金属製の下地材が設けられている。板状部材52,53,54,55から当該下地材までの距離(例えば「へりあき」に相当)は25mm以上であってもよい。この場合、当該下地材から板状部材52,53,54,55までの離隔距離を確保することができるので、金属製の下地材からの影響を受けて伝送効率が低下する事態を確実に回避することができる。
【0093】
板状部材52及び板状部材54は、仕切り材51の一方側において互いに隣接するように配置される。板状部材53は仕切り材51から見て板状部材52の反対側に配置され、板状部材55は仕切り材51から見て板状部材54の反対側に配置される。例えば、給電構造50からの電力はLED照明機器56に供給される。
【0094】
板状部材52、板状部材53、板状部材54及び板状部材55(送受電部)は、給電構造50の電極として機能する。
図16に示されるように、板状部材52及び板状部材54は、長さがLmmであって幅がWmmの金属平板が2分割されることによって作製される。例えば、Lの値は1200以上且つ2400以下であり、Wの値は60以上且つ230以下である。
【0095】
図17は、後述する計算の前提となる給電構造50の等価回路を示す図である。仕切り材51の比誘電率をε
r、真空の透磁率をε
0、板状部材52及び板状部材53の離隔距離(例えば仕切り材51の厚さ)をd、板状部材52,53,54,55のそれぞれの面積をS、とすると、相互キャパシタンスC
mは、以下の式(10)で表される。一例として、ε
0の値を8.85×10
-12[F/m]、ε
rの値を3とすると以下の式(9)及び式(10)によってC
mが求められる。ここで、C
2は平行平板キャパシタンスの容量である。
【0096】
【0097】
【数10】
次に、以下の式(11)及び式(12)によりQ値と結合係数kが求められる。
【数11】
【数12】
【0098】
ここで、R=2.8[kΩ]、f
c=6.78[MHz]とすると、式(13)により結合係数kとQ値の積が算出される。
【数13】
【0099】
そして、後述の式(14)及び式(15)によって最大伝送効率η
maxが求められる。
【数14】
【数15】
【0100】
また、前述した各式を用いて、板状部材52,53,54,55のそれぞれの面積Sを276000mm
2(2400mm×230mmを均等分割)とした場合における離隔距離dと効率との関係を
図18(a)に示している。なお、
図18(a)は、離隔距離dを20mmとして効率が90%となるように仮定したときの特性曲線(所定効率での特性曲線)を示すグラフである。この特性曲線は、例えば、前述した式(9)~式(15)から求められる。本実施形態の電界結合方式において「90%」は低めの想定効率を示している。
【0101】
図18(a)に示されるグラフでは、離隔距離dが70mm以下であれば70%以上の効率を確保できることが分かる。一方、離隔距離dを20mmとした場合における面積Sと効率との関係を
図18(b)に示している。
図18(b)に示されるグラフでは、面積Sが0.07m
2以上であれば70%以上の効率を確保できることが分かった。
【0102】
以上、電界結合方式の場合であっても、磁界結合方式の場合と同様、仕切り材の制約(厚さ等)に基づいて離隔距離dの上限及び下限を定め、下地材からの影響を回避可能な面積Sの上限を定め、更に、所定値以上の効率が得られる離隔距離d及び面積Sの特性曲線(例えば
図18(a)又は
図18(b)に示される特性曲線)を定めることにより、所望の効率を得られる離隔距離d及び面積Sを容易に且つ確実に算出することができる。
【0103】
すなわち、電界結合方式によって無線給電を行う場合には、寸法上の制約、及び求める効率に基づいて板状部材の配置設計を行うことが可能である。具体的には、寸法上の範囲の境界において効率範囲の境界値をプロットすることによって板状部材の配置設計を行う。例えば、寸法上の制約、及び求める効率に基づいて、板状部材の面積及び離隔距離を定める。このとき、一例として、板状部材の面積の範囲(例えば、上限値及び下限値の少なくともいずれか)、及び離隔距離の範囲(例えば、上限値及び下限値の少なくともいずれか)を定める。前述した例では、金属製の下地材からの影響を抑えるための板状部材の面積の値(一例として、上限値)を定め、仕切り材の制約(厚さ等)に基づいて板状部材の離隔距離を定めて、効率との関係から板状部材の面積を設定することにより、所望の効率を実現する板状部材の面積及び離隔距離を容易に設計することができる。
【0104】
このように、電界結合方式を用いた給電構造50であっても、電力の効率(例えば低めの想定効率)に基づいて仕切り材51に設けられる電極である板状部材52,53,54,55の配置を設計することが可能である。従って、仕切り材51の仕様に基づいて板状部材52,53,54,55の配置を設計することができる。よって、仕切り材51を含む建築条件等を考慮して板状部材52,53,54,55の配置を行うことができるので、伝送効率の低下を回避して高い伝送効率を維持することができ、磁界結合方式の場合と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0105】
1,50…給電構造、2…密閉空間、3…壁、4…天井、5…床、6…第1機器、7…第2機器、8…第3機器、9…第4機器、10…天井給電部、11…天井材(仕切り材)、11b…外面、11c…内面、12…下地材、13…野縁受け、14…野縁、15b,15c…コイル(送受電部)、15d…プリント基板、15f…銅箔(パターン)、15g…ビア、15h…端子、15j…外縁、15k…同軸コネクタ、16…制御装置、17…第1板材、18…第2板材、20…壁給電部、21…壁材(仕切り材)、21c…内面、21d…外面、22…壁材(仕切り材)、23…下地材、25b,25c…コイル(送受電部)、26…第3板材、27…第4板材、30…床給電部、51…仕切り材、52,53,54,55…板状部材(送受電部)、56…LED照明機器、A1,A2,A3,A4…へりあき、C…コイル、C1,C3…コイルサイズ、D1…第1方向、D2…第2方向、H…部屋、L1…間隔、L3…間隔。