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特許7515820コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法、及び、コンクリート又はモルタル二次製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法、及び、コンクリート又はモルタル二次製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 40/02 20060101AFI20240708BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240708BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240708BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C04B40/02
C04B28/02
C04B18/08 Z
B28B11/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020107754
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022003002
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-04-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和元年8月1日、公益社団法人 土木学会発行の土木学会全国大会in四国 第74回 年次学術講演会[講演概要集]V-262及びV-263に掲載(2)2019年9月4日、土木学会全国大会in四国 第74回 年次学術講演会にて公開(V-262公開者:本田和也、中上明久、上原伸郎、橋場正明、V-263公開者:中上明久、本田和也、齋藤尚、橋場正明)
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592263506
【氏名又は名称】株式会社ホクエツ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西山 沙友里
(72)【発明者】
【氏名】中上 明久
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】橋場 正明
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-043351(JP,A)
【文献】特開2018-027867(JP,A)
【文献】特開2018-035007(JP,A)
【文献】特開2018-127390(JP,A)
【文献】特開2016-124717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
B28B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート又はモルタル二次製品の明度を低下させる方法であって、
フライアッシュを含むコンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して温度が0℃以上で、かつ、一日の平均温度が10℃以下であり、一日の平均湿度が75.0%以上で、かつ、湿度が100%以下である環境下に暴露し、
前記コンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して前記環境下に暴露するまでの積算温度を200℃・h以上950℃・h以下とする、コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法。
【請求項2】
前記フライアッシュの心理計測明度Lが65.0以下である、請求項1に記載のコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法。
【請求項3】
明度を低下させたコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法であって、
フライアッシュを含むコンクリート又はモルタル材料を型枠に打設する工程(第一工程)と、
打設後、脱型して温度が0℃以上で、かつ、一日の平均温度が10℃以下であり、一日の平均湿度が75.0%以上で、かつ、湿度が100%以下である環境下に暴露する工程(第二工程)と、
を含み、
前記コンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して前記環境下に暴露するまでの積算温度を200℃・h以上950℃・h以下とする、コンクリート又はモルタル二次製品の製造方法。
【請求項4】
前記フライアッシュの心理計測明度Lが65.0以下である、請求項に記載のコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法、及び、コンクリート又はモルタル二次製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート又はモルタルは、河川工事、護岸工事、波消しブロック等の国土の保全工事、土木工事等において、人目に触れる箇所で盛んに利用されている。特に、コンクリート又はモルタル二次製品は、現場打ちのコンクリート又はモルタルに比べて品質が安定していること、工期が短縮できること、施工時の人員削減が可能であること等の利点があるため、これらの工事で多用されている。
【0003】
近年、美観及び景観の観点から、コンクリート又はモルタルの色に関心が高まる傾向にある。特に、護岸で使用されるコンクリート又はモルタルブロックは、滑面のマンセルバリュー明度が9~10であり、護岸の背景となる森林、草木等のマンセルバリュー明度(6程度)に比べて高い。そのため、コンクリート又はモルタルブロックと周辺景観との間に生じる明度差が問題となっている。例えば、「美しい山河を守る災害復旧基本方針」(国土交通省)では、コンクリート又はモルタルブロックのマンセルバリュー明度を6以下にするとよいことが記されている。
【0004】
従来、マンセルバリュー明度が6以下のコンクリート又はモルタルブロックを製造するため、例えば、黒色顔料をコンクリート又はモルタル材料に添加する(特許文献1参照)、作製したコンクリート又はモルタルブロックを割裂して凹凸面を表面とする等の方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-124717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、黒色顔料を用いてコンクリート又はモルタルブロックを製造する場合、他製品を製造する際にミキサの洗浄が必要となり、また、護岸材以外の白色の方が好まれるコンクリート又はモルタル二次製品を製造する際に誤って黒色顔料を添加してしまう虞もある。さらに、作製したコンクリート又はモルタルブロックを割裂する場合、製造工程が増え、かつ、割裂するための機材が必要となる。このように、従来の方法では作業性に劣り、効率的とは言い難い。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下を効率的に行うことが可能なコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法、及び、コンクリート又はモルタル二次製品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、コンクリート又はモルタル二次製品の明度を低下させる方法であって、フライアッシュを含むコンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露する。
【0009】
前記コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、脱型したコンクリート又はモルタル二次製品を低温高湿度環境下に暴露することで明度を低下させることができるため、作業性に優れる。これにより、コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下を効率的に行うことができる。
【0010】
本発明に係るコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、前記コンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露するまでの積算温度を950℃・h以下としてもよい。
【0011】
前記コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、斯かる構成により、コンクリート又はモルタル二次製品の明度をより低下させることができる。
【0012】
本発明に係るコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、前記フライアッシュの心理計測明度Lが65.0以下であってもよい。
【0013】
前記コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、斯かる構成により、コンクリート又はモルタル二次製品の明度をより低下させることができる。
【0014】
本発明に係るコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法は、明度を低下させたコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法であって、フライアッシュを含むコンクリート又はモルタル材料を型枠に打設する工程(第一工程)と、打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露する工程(第二工程)と、を含む。
【0015】
前記コンクリート又はモルタル二次製品の製造方法は、脱型したコンクリート又はモルタル二次製品を低温高湿度環境下に暴露することで明度を低下させることができるため、作業性に優れる。これにより、明度を低下させたコンクリート又はモルタル二次製品を効率的に製造することができる。
【0016】
本発明に係るコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法において、前記コンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露するまでの積算温度を950℃・h以下としてもよい。
【0017】
前記コンクリート又はモルタル二次製品の製造方法は、斯かる構成により、明度をより低下させたコンクリート又はモルタル二次製品を製造することができる。
【0018】
本発明に係るコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法は、前記フライアッシュの心理計測明度Lが65.0以下であってもよい。
【0019】
前記コンクリート又はモルタル二次製品の製造方法は、斯かる構成により、明度をより低下させたコンクリート又はモルタル二次製品を製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下を効率的に行うことが可能なコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法、及び、コンクリート又はモルタル二次製品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法について説明する。
【0022】
本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、フライアッシュを含むコンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露する。
【0023】
ここで、低温高湿度環境とは、コンクリート又はモルタル二次製品の明度を低下させる観点から、一日の平均温度が10℃以下であることが好ましく、7℃以下であることがより好ましく、一日の平均湿度が75.0%以上であることが好ましく、85.0%以上であることがより好ましく、90.0%以上であることがさらに好ましく、95.0%以上であることが特に好ましく、99.0%以上であることが最も好ましい。また、凍結防止の観点から、温度が0℃以上であることが好ましく、3℃以上であることがより好ましく、白華防止の観点から、湿度が100%以下であることが好ましい。このような低温高湿度環境下としては、例えば、温度及び湿度を一定に保つことが可能な恒温恒湿室内、冬期の降雪が多い地方の屋外等が挙げられる。
【0024】
コンクリート又はモルタル二次製品を低温高湿度環境下に暴露する時間は、後述する積算温度を所定の範囲とする観点から、3日間以上であることが好ましく、6日間以上であることがより好ましく、13日間以上であることが特に好ましい。
【0025】
コンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露するまでの積算温度は、コンクリート又はモルタル二次製品の明度をより低下させる観点から、950℃・h以下であることが好ましく、600℃・h以下であることがより好ましく、500℃・h以下であることがさらに好ましく、300℃・h以下であることが特に好ましい。また、前記積算温度は、脱型を可能にする観点から、200℃・h以上であることが好ましい。
【0026】
ここで、積算温度とは、下記(1)式で示されるコンクリート又はモルタルの表面温度と時間との積の積算値をいう。
M=Σ(θ・T) ・・・(1)
M:積算温度(℃・h)
θ:コンクリート又はモルタルの表面温度(℃)
T:時間(h)
【0027】
コンクリート又はモルタルの表面温度θは、例えば、型枠内面に取り付けた熱電対により測定することができる。
【0028】
また、時間Tは、1/4h(すなわち、15min)以上であることが好ましく、1h以下であることが好ましい。例えば、時間Tが1hの場合、打設後、1h経過ごとにコンクリート又はモルタルの表面温度θを測定する。そして、測定された表面温度θと時間T(1h)との積を積算して、積算温度を算出する。
【0029】
本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法において用いられるコンクリート又はモルタル材料は、フライアッシュを含む。フライアッシュの心理計測明度Lは、コンクリート又はモルタル二次製品の明度をより低下させる観点から、65.0以下であることが好ましく、60.0以下であることがより好ましい。
【0030】
ここで、心理計測明度Lとは、CIE1976(国際照明委員会)で定義される明度であり、マンセルバリュー明度の約10倍に対応する。心理計測明度Lは、例えば、色彩色差計(コニカミノルタ社製)を用いて測定することができる。
【0031】
コンクリート材料は、さらに、セメントと、粗骨材と、細骨材と、水とを含んでいてもよい。また、モルタル材料は、さらに、セメントと、細骨材と、水とを含んでいてもよい。
【0032】
セメント(C)としては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS R 5210で規定される普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、ポルトランドセメントにフライアッシュ、高炉スラグ等を混合した混合セメント等を用いることができる。セメントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
セメントの配合量は、特に限定されるものではなく、例えば、250~450kg/mとすることができる。セメントが2種以上含まれる場合、前記配合量は、セメントの合計配合量である。また、セメントに対する水の比(W/C)は、特に限定されるものではなく、例えば、35~55質量%とすることができる。
【0034】
粗骨材(G)としては、特に限定されるものではなく、例えば、川砂利、山砂利、海砂利等の天然骨材、砂岩、硬質石灰岩、玄武岩、安山岩等の砕石等の人工骨材、再生骨材等が挙げられる。粗骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。粗骨材の配合量は、特に限定されるものではなく、例えば、700~1200kg/mとすることができる。粗骨材が2種以上含まれる場合、前記配合量は、粗骨材の合計配合量である。
【0035】
細骨材(S)としては、特に限定されるものではなく、例えば、川砂、山砂、海砂、天然軽量細骨材(パーライト、ヒル石等)等の天然細骨材;砕砂、人工軽量細骨材、高炉スラグ細骨材等の人工細骨材;副産軽量細骨材等が挙げられる。細骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。細骨材の配合量は、特に限定されるものではなく、例えば、500~900kg/mとすることができる。細骨材が2種以上含まれる場合、前記配合量は、細骨材の合計配合量である。
【0036】
水(W)としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。水の配合量は、特に限定されるものではなく、例えば、140~190kg/mとすることができる。
【0037】
コンクリート又はモルタル材料は、さらに、混和材を含んでいてもよい。混和材としては、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、セメントキルンダスト、高炉フューム、高炉水砕スラグ微粉末、高炉除冷スラグ微粉末、転炉スラグ微粉末、半水石膏、膨張材、石灰石微粉末、生石灰微粉末、ドロマイト微粉末等の無機質微粉末、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、活性白土、酸性白土、アロフェン、イモゴライト、シラス(火山灰)、シラスバルーン、カオリナイト、メタカオリン(焼成粘土)、合成ゼオライト、人造ゼオライト、人工ゼオライト、モルデナイト、クリノプチロライト等の無機物系フィラーが挙げられる。混和材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
コンクリート又はモルタル材料は、さらに、混和剤を含んでいてもよい。混和剤としては、例えば、AE剤、AE減水剤、流動化剤、分離低減剤、収縮低減剤等が挙げられる。混和剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、特に限定されるものではないが、例えば、護岸工事に用いられるコンクリートブロック等のコンクリート又はモルタル二次製品に用いることができる。
【0040】
本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、フライアッシュを含むコンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露することで明度を低下させることができるため、作業性に優れる。これにより、コンクリート又はモルタル二次製品の明度低下を効率的に行うことができる。
【0041】
本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、コンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露するまでの積算温度を950℃・h以下とすることにより、コンクリート又はモルタル二次製品の明度をより低下させることができる。
【0042】
本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の明度低下方法は、フライアッシュの心理計測明度Lが65.0以下であることにより、コンクリート又はモルタル二次製品の明度をより低下させることができる。
【0043】
以下、本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法について説明する。
【0044】
本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法は、フライアッシュを含むコンクリート又はモルタル材料を型枠に打設する工程(第一工程)と、打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露する工程(第二工程)と、を含む。
【0045】
前記第一工程は、前記明度低下方法で述べたコンクリート又はモルタル材料を混錬し、型枠に打設することにより行う。練り混ぜ温度は、特に限定されるものではなく、例えば、5~35℃で行うことができる。
【0046】
前記第二工程は、打設後、脱型して前記明度低下方法で述べた低温高湿度環境下に暴露することにより行う。コンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露するまでの積算温度は、前記明度低下方法で述べた範囲とすることができる。
【0047】
本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法は、脱型したコンクリート又はモルタル二次製品を低温高湿度環境下に暴露することで明度を低下させることができるため、作業性に優れる。これにより、明度を低下させたコンクリート又はモルタル二次製品を効率的に製造することができる。
【0048】
本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法は、コンクリート又はモルタル材料を型枠に打設後、脱型して低温高湿度環境下に暴露するまでの積算温度を950℃・h以下とすることにより、明度をより低下させたコンクリート又はモルタル二次製品を製造することができる。
【0049】
本実施形態に係るコンクリート又はモルタル二次製品の製造方法は、フライアッシュの心理計測明度Lが65.0以下とすることにより、明度をより低下させたコンクリート又はモルタル二次製品を製造することができる。
【実施例
【0050】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
表1に示す配合のモルタルを、ホバードミキサ(HOBART社製)を用いて練り混ぜた。なお、フライアッシュとしては、明度Lの異なる5種類のフライアッシュを用いた。明度Lの測定は、色彩色差計(コニカミノルタ社製)を用いて行った。練り混ぜたモルタルは、φ50×100mmの型枠内に打設し、表2に示す養生温度条件でそれぞれ養生を行った。なお、養生期間中は、熱電対(T-G-0.32、東京測器研究所社製)を用いて、15分ごとに試験体表面の温度を測定した。そして、前記(1)式に基づき、積算温度を算出した。また、試験体は、各養生温度条件につき2体作製した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す成分の詳細を下記に示す。
水(W):上水道水(密度=1.00g/cm
セメント(C) 普通:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製、密度=3.15g/cm
フライアッシュ(FA):JIS II種(北陸電力社製)
細骨材(S):陸砂(静岡県掛川産、密度=2.59g/cm
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示す冷却方法のうち、「急冷」とは、保持時間終了時に蒸気養生槽から試験体を取り出し、恒温室で静置したことを意味し、「徐冷」とは、保持時間終了後も蒸気養生槽内で静置したことを意味する。
【0056】
各試験体を材齢1日で脱型し、表3に示す「20℃気中」又は「5℃湿空」環境下に暴露した。なお、それぞれの環境下において、気温は、恒温恒湿室内の温度を5℃又は20℃に設定することで、それぞれ5±2℃、20±2℃に制御した。湿度は、恒温恒湿室内の湿度を60%に設定することで、60±5%に制御した。すなわち、これらの温度及び湿度は、JIS Z 8703-1983に基づき、それぞれ温度2級、湿度5級の許容差を含むものである。また、「5℃湿空」における「湿度99%以上」の環境は、恒温室にて密閉容器の底に水を張り、試験体を水に接触しない状態で設置することにより達成した。その後、色彩色差計(コニカミノルタ社製)を用いて明度Lの測定を行った。明度Lの測定は、気温20±2℃、湿度60±5%の環境下に7日間暴露した後に行った。結果を表4に示す。なお、表4に示す判定は、下記基準に基づき行った。また、表4中の明度Lは、2体の試験体の底面において測定した各5箇所の明度の平均値(2体×5箇所=10点の平均値)を示す。
◎◎:Lが54未満である。
◎:Lが54以上57未満である。
○:Lが57以上60未満である。
×:Lが60以上である。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
表4の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす「5℃湿空」環境下に暴露した各実施例の試験体は、明度Lを60.0未満に低下させることができる。すなわち、優れた作業性で、明度低下を効率的に行うことができる。
【0060】
一方、「20℃気中」環境下に暴露した各比較例の試験体は、明度Lが60.0以上であり、護岸材等に適した明度に低下させることができない。