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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
F16K27/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020133404
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2021167660
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2020070263
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】赤土 和也
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-083282(JP,A)
【文献】特開2017-015167(JP,A)
【文献】特開2016-014483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って所定幅で延びるブロックと、
前記ブロック内に形成され、前記長手方向に沿って延びる内部流路と、
前記ブロックに取り付けられた第1制御バルブと、
前記第1制御バルブと並列に接続された第2制御バルブと、を備え、
前記内部流路が、
前記第1制御バルブに流体が流入する第1流入口に接続される第1流入流路と、
前記第1制御バルブから流体が流出する第1流出口に接続される第1流出流路と、
前記第2制御バルブに流体が流入する第2流入口に接続される第2流入流路と、
前記第2制御バルブから流体が流出する第2流出口に接続される第2流出流路とを有し、
前記第1流入流路及び前記第2流入流路の上流側に設けられている分岐前流路の分岐点から前記第1流入流路及び前記第2流入流路に分岐し、前記第1流出流路及び前記第2流出流路は、前記第1流出流路及び前記第2流出流路の下流側に設けられている合流後流路の合流点に合流しており、
前記ブロックを幅方向に沿って透視した場合に、前記第1流出流路と前記第2流入流路とが、1点で重なるように配置されている流体制御装置。
【請求項2】
長手方向に沿って所定幅で延びるブロックと、
前記ブロック内に形成され、前記長手方向に沿って延びる内部流路と、
前記ブロックに取り付けられた第1制御バルブと、
前記第1制御バルブと並列に接続された第2制御バルブと、を備え、
前記内部流路が、
前記第1制御バルブから流体が流出する第1流出口に接続される第1流出流路と、
前記第2制御バルブに流体が流入する第2流入口に接続される第2流入流路と、を備え、
前記ブロックを幅方向に沿って透視した場合に、前記第1流出流路と前記第2流入流路とが、1点で重なるように配置されており、
前記ブロックが、
流体制御機器が取り付けられる取付面と、
前記取付面に対して所定量だけ突出した突出部と、を具備し、
前記第1制御バルブ、又は、前記第2制御バルブの少なくとも一方が、前記取付面に取り付けられる流体制御装置。
【請求項3】
前記第2制御バルブが、前記突出部に設けられた請求項2記載の流体制御装置。
【請求項4】
長手方向に沿って所定幅で延びるブロックと、
前記ブロック内に形成され、前記長手方向に沿って延びる内部流路と、
前記ブロックに取り付けられた第1制御バルブと、
前記第1制御バルブと並列に接続された第2制御バルブと、を備え、
前記内部流路が、
前記第1制御バルブから流体が流出する第1流出口に接続される第1流出流路と、
前記第2制御バルブに流体が流入する第2流入口に接続される第2流入流路と、を備え、
前記ブロックを幅方向に沿って透視した場合に、前記第1流出流路と前記第2流入流路とが、1点で重なるように配置されており、
前記第1制御バルブが、前記ブロックの表面に対して接触する第1接触面が形成された第1バルブブロックを具備し、前記第1バルブブロックに流体が流入する第1流入口、及び、前記第1バルブブロックから流体が流出する前記第1流出口が前記第1接触面に開口しており、
前記第2制御バルブが、前記ブロックの表面に対して接触する第2接触面が形成された第2バルブブロックを具備し、前記第2バルブブロックに流体が流入する前記第2流入口、及び、前記第2バルブブロックから流体が流出する第2流出口が前記第2接触面に開口する流体制御装置。
【請求項5】
長手方向に沿って所定幅で延びるブロックと、
前記ブロック内に形成され、前記長手方向に沿って延びる内部流路と、
前記ブロックに取り付けられた第1制御バルブと、
前記第1制御バルブと並列に接続された第2制御バルブと、を備え、
前記内部流路が、
前記第1制御バルブから流体が流出する第1流出口に接続される第1流出流路と、
前記第2制御バルブに流体が流入する第2流入口に接続される第2流入流路と、を備え、
前記ブロックを幅方向に沿って透視した場合に、前記第1流出流路と前記第2流入流路とが、1点で重なるように配置されており、
前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブが、前記ブロックと同じ幅寸法を有する流体制御装置。
【請求項6】
長手方向に沿って所定幅で延びるブロックと、
前記ブロック内に形成され、前記長手方向に沿って延びる内部流路と、
前記ブロックに取り付けられた第1制御バルブと、
前記第1制御バルブと並列に接続された第2制御バルブと、を備え、
前記内部流路が、
前記第1制御バルブから流体が流出する第1流出口に接続される第1流出流路と、
前記第2制御バルブに流体が流入する第2流入口に接続される第2流入流路と、を備え、
前記ブロックを幅方向に沿って透視した場合に、前記第1流出流路と前記第2流入流路とが、1点で重なるように配置されており、
前記内部流路が、
前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブを通過した流体が合流して流れる合流後流路と、
前記第2制御バルブから流体が流出する第2流出口と、前記合流後流路との間を接続する第2流出流路と、をさらに備え、前記第1流出流路の下流側が前記合流後流路に接続されており、
前記合流後流路を流れる流体の流量を測定する流量センサと、
前記流量センサが測定する流量に少なくとも基づいて、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの少なくとも一方を制御する流体制御器をさらに備えた流体制御装置。
【請求項7】
長手方向に沿って所定幅で延びるブロックと、
前記ブロック内に形成され、前記長手方向に沿って延びる内部流路と、
前記ブロックに取り付けられた第1制御バルブと、
前記第1制御バルブと並列に接続された第2制御バルブと、を備え、
前記内部流路が、
前記第1制御バルブから流体が流出する第1流出口に接続される第1流出流路と、
前記第2制御バルブに流体が流入する第2流入口に接続される第2流入流路と、を備え、
前記ブロックを幅方向に沿って透視した場合に、前記第1流出流路と前記第2流入流路とが、1点で重なるように配置されており、
前記内部流路が、
前記第1制御バルブに流体が流入する第1流入口に接続される第1流入流路と、
下流側が前記第1流入流路及び前記第2流入流路に接続される分岐前流路と、をさらに備え、
前記分岐前流路を流れる流体の流量を測定する流量センサと、
前記流量センサが測定する流量に少なくとも基づいて、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの少なくとも一方を制御する流体制御器をさらに備えた流体制御装置。
【請求項8】
前記流体制御器が、
設定流量の所定倍だけ小さい分担目標流量が流れるように前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブのいずれか一方の開度を制御する開度制御部と、
前記設定流量と、前記流量センサが測定する流量との偏差が小さくなるように、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの他方を制御する流量フィードバック制御部と、を備えた請求項6又は7記載の流体制御装置。
【請求項9】
前記開度制御部が、
前記第1制御バルブの上流側の圧力に基づいて、前記分担目標流量に相当する目標開度を算出する目標開度算出部と、
前記目標開度に相当する電圧を前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの他方に印加する電圧制御部と、を備えた請求項8記載の流体制御装置。
【請求項10】
前記分担目標流量が前記設定流量の1/2倍に設定されている請求項8又は9記載の流体制御装置。
【請求項11】
前記流体制御器が、
前記第1制御バルブの開度と、前記第2制御バルブの開度が同期するように制御する同期制御部を備えた請求項6又は7記載の流体制御装置。
【請求項12】
前記第1制御バルブと前記第2制御バルブが同型のものであり、
前記同期制御部が、前記流量センサで測定される流量との偏差が小さくなるように、前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブのそれぞれに同一の電圧を印加する請求項11記載の流体制御装置。
【請求項13】
前記流体制御器が、
設定流量と、前記流量センサが測定する流量との偏差が小さくなるように、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブのいずれか一方を制御する流量フィードバック制御部と、
前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブにおける異常を検知するバルブ異常検知部と、
前記バルブ異常検知部が、前記流量フィードバック制御部によって制御されている前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの異常を検知した場合に、前記流量フィードバック制御部の制御対象となる制御バルブを切り替えさせる制御対象切替部と、を備えた請求項6記載の流体制御装置。
【請求項14】
前記流量フィードバック制御部が、初期状態では前記第2制御バルブを制御しており、
前記バルブ異常検知部が、前記第2制御バルブに異常を検知した場合に、前記制御対象切替部は、前記流量フィードバック制御部の制御対象を前記第1制御バルブに切り替えさせるように構成された請求項13記載の流体制御装置。
【請求項15】
前記バルブ異常検知部が、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブに印加されている電圧に基づいて、絶縁状態の異常を検知するように構成された請求項13又は14記載の流体制御装置。
【請求項16】
前記バルブ異常検知部が、前記設定流量と前記流量センサで測定される流量との偏差の絶対値に基づいて、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの異常を検知するように構成された請求項13乃至15いずれかに記載の流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス等の流体の流量や圧力を制御する流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造プロセスにおいてガスの流量を制御するためにマスフローコントローラが用いられる。従来のマスフローコントローラには、内部流路が形成されたブロックに圧力センサや制御バルブ等の流体制御機器が取り付けられたものがある。複数のマスフローコントローラをコンパクトに並列させるため、前述したブロックは長手方向に所定幅で延びる細長い直方体形状をなしている(特許文献1参照)。
【0003】
より具体的には、ブロックの幅寸法は規格によって例えば10mmに定められている。また、ブロックの長手方向と平行な一面である取付面には、このブロックの幅寸法とほぼ同じ幅寸法を有する複数の流体制御機器が長手方向に並べて取り付けられる。
【0004】
ところで、近年マスフローコントローラはコンパクトに構成されているだけでなく、従来よりもさらに大流量を流せることが求められている。マスフローコントローラの最大流量は、制御バルブが流す事ができる流量でほぼ制限される。このため、例えば特許文献2に示されるようにブロック内に幅方向に対して並列に内部流路を2本形成しておき、それぞれの内部流路に制御バルブを設けて流せる流量を約2倍にすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記のような構成では最大流量は大きくできるものの、ブロックの幅方向に対して制御バルブ等の流体制御機器を2つ並べなくてはならず、マスフローコントローラをさらにコンパクトにすることは難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2011/040270号公報
【文献】特開2014-32635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような問題を一挙に解決するためになされたものであり、幅寸法を小さく保ちながら、最大流量を従来よりも大きくできる流体制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る流体制御装置は、長手方向に沿って所定幅で延びるブロックと、前記ブロック内に形成され、前記長手方向に沿って延びる内部流路と、前記ブロックに取り付けられた第1制御バルブと、前記ブロックにおいて前記第1制御バルブよりも下流側に取り付けられた第2制御バルブと、を備え、前記内部流路が、前記第1制御バルブから流体が流出する第1流出口に接続される第1流出流路と、前記第2制御バルブに流体が流入する第2流入口に接続される第2流入流路と、を備え、前記ブロックを幅方向に沿って透視した場合に、前記第1流出流路と前記第2流入流路とが、1点で重なるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、前記第1制御バルブと前記第2制御バルブを長手方向に沿って並べて配置して、前記ブロックの幅寸法を小さくするとともに、各制御バルブから流出する流体を合流させて流すことができる。このため、流体制御装置の幅寸法をコンパクトにしながら、2つの制御バルブを用いることで最大流量は従来の約2倍にできる。
【0010】
前記ブロックの幅寸法が小さくても、前記第1流出流路と前記第2流入流路とを前記ブロック内で干渉しないようにねじれの位置に配置しやすくするには、前記ブロックが、流体制御機器が取り付けられる取付面と、前記取付面に対して所定量だけ突出した突出部と、を具備し、前記第1制御バルブ、又は、前記第2制御バルブのいずれか一方が、前記取付面に取り付けられるものであればよい。
【0011】
前記ブロック内に形成される内部流路の長さをできるだけ短くして、内部容積を小さくし、制御の応答性を良くするには、前記第2制御バルブが、前記突出部に設けられたものであればよい。このようなものであれば、前記ブロックの端面又は取付面の対面から流体が導入される場合に、上流側にある前記第1制御バルブに流体を流入させるための流路の長さを短くしやすい。
【0012】
前記ブロックの幅寸法を小さくしながら、前記第1流出流路と前記第2流入流路をねじれの位置に配置させてやすくするための別の態様としては、前記第1制御バルブが、前記ブロックの表面に対して接触する第1接触面が形成された第1バルブブロックを具備し、前記第1バルブブロックに流体が流入する第1流入口、及び、前記第1バルブブロックから流体が流出する前記第1流出口が前記第1接触面に開口しており、前記第2制御バルブが、前記ブロックの表面に対して接触する第2接触面が形成された第2バルブブロックを具備し、前記第2バルブブロックに流体が流入する前記第2流入口、及び、前記第2バルブブロックから流体が流出する第2流出口が前記第2接触面に開口するものであればよい。このようなものであれば、各制御バルブの全体を前記ブロックの外側に配置して、ブロック内に各制御バルブの一部を収容するための凹部等を形成しなくてもよい。この結果、前記ブロック内に内部流路を形成するためのスペースを確保しやすくなり、前記第1流出流路と前記第2流入流路の配置の自由度を高めることができる。
【0013】
前記ブロックの幅寸法を最も小さくしても、コンパクトでありながら大流量を実現できる具体的な構成例としては、前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブが、前記ブロックと同じ幅寸法を有するものが挙げられる。
【0014】
前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブを通過した流体の全体の流量を正確に所望の値となるように制御できるようにするには、前記内部流路が、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブを通過した流体が合流して流れる合流後流路と、前記第2制御バルブから流体が流出する第2流出口と、前記合流後流路との間を接続する第2流出流路と、をさらに備え、前記第1流出流路の下流側が前記合流後流路に接続されており、前記合流後流路を流れる流体の流量を測定する流量センサと、前記流量センサが測定する流量に少なくとも基づいて、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの少なくとも一方を制御する流体制御器をさらに備えたであればよい。
【0015】
各制御バルブにより全体として所望の流量を実現するための別の態様としては、前記内部流路が、前記第1制御バルブに流体が流入する第1流入口に接続される第1流入流路と、下流側が前記第1流入流路及び前記第2流入流路に接続される分岐前流路と、をさらに備え、前記分岐前流路を流れる流体の流量を測定する流量センサと、前記流量センサが測定する流量に少なくとも基づいて、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの少なくとも一方を制御する流体制御器をさらに備えたものが挙げられる。
【0016】
前記第1制御バルブと前記第2制御バルブによる流体の制御がお互いに干渉して制御性能が低下するのを防ぎつつ、所望の大流量を正確に実現できるようにするには、前記流体制御器が、設定流量の所定倍だけ小さい分担目標流量が流れるように前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブのいずれか一方の開度を制御する開度制御部と、前記設定流量と、前記流量センサが測定する流量との偏差が小さくなるように、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの他方を制御する流量フィードバック制御部と、を備えたものであればよい。
【0017】
例えば供給圧の変動があった場合でも、前記開度制御部の制御により前記分担目標流量に近い流量が一方の制御バルブで実現され、流量フィードバック制御される他方の制御バルブへの負担を低減できるようにするには、前記開度制御部が、前記第1制御バルブの上流側の圧力に基づいて、分担目標流量に相当する目標開度を算出する目標開度算出部と、前記目標開度に相当する電圧を前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの他方に印加する電圧制御部と、を備えたものであればよい。
【0018】
前記第1制御バルブと前記第2制御バルブの双方でほぼ同じ流量が実現され、結果として流体制御装置全体では従来の2倍程度の最大流量を可能にするには、前記分担目標流量が前記設定流量の1/2倍に設定されていればよい。
【0019】
簡単な制御則で各制御バルブにより全体として所望の流量が得られるようにするには、前記流体制御器が、前記第1制御バルブの開度と、前記第2制御バルブの開度が同期するように制御する同期制御部を備えたものであればよい。
【0020】
前記第1制御バルブと前記第2制御バルブの両方が同じように動作するようにして制御則を簡素化しつつ、外乱があっても流体制御装置から出力される流量が設定流量で保たれるようにするには、前記第1制御バルブと前記第2制御バルブが同型のものであり、前記同期制御部が、前記流量センサで測定される流量との偏差が小さくなるように、前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブのそれぞれに同一の電圧を印加するものであればよい。
【0021】
通常時においては前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブのいずれか一方による流量制御を行うようにしておき、流量制御を行っている制御バルブに異常が発生した場合でも別の制御バルブに流量制御が切り替わることで異常から自己復帰できるようにするには、前記流体制御器が、設定流量と、前記流量センサが測定する流量との偏差が小さくなるように、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブのいずれか一方を制御する流量フィードバック制御部と、前記第1制御バルブ、又は、前記第2制御バルブにおける異常を検知するバルブ異常検知部と、前記バルブ異常検知部が、前記流量フィードバック制御部によって制御されている前記第1制御バルブ、又は、前記第2制御バルブの異常を検知した場合に、前記前記流量フィードバック制御部の制御対象となる制御バルブを切り替えさせる制御対象切替部と、を備えたものであればよい。
【0022】
このようなものであれば、例えばオペレータが特殊な復帰操作や修復操作等を行わなくても流量制御を行っている制御バルブに異常が発生した場合には自動的に別の制御バルブが切り替えられて、流量制御を継続できる。したがって、このような流体制御装置であれば片方の制御バルブが故障したとしても自己復帰、自己修復が可能となり、流量制御の信頼性を向上させることができる。また、例えば前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブがノーマルオープンタイプのものであれば、最初に流量制御を行っていた制御バルブに故障したとしても、その制御バルブは全開状態となり、制御が切り替えられた制御バルブによる流量制御の妨げにはなりにくい。
【0023】
各制御バルブに故障等が生じていない通常時には、前記流量センサで測定される測定点と、制御バルブによる流量の制御点との間の距離を短くして、応答性を良くするには、前記流量フィードバック制御部が、初期状態では前記第2制御バルブを制御しており、前記バルブ異常検知部が、前記第2制御バルブに異常を検知した場合に、前記制御対象切替部は、前記流量フィードバック制御部の制御対象を前記第1制御バルブに切り替えさせるように構成されたものであればよい。
【0024】
各制御バルブにおける異常を検知するための具体的な構成例としては、前記バルブ異常検知部が、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブに印加されている電圧に基づいて、絶縁状態の異常を検知するように構成されたものが挙げられる。
【0025】
各制御バルブにおける異常を検知するための別の構成例としては、前記バルブ異常検知部が、前記設定流量と前記流量センサで測定される流量との偏差の絶対値に基づいて、前記第1制御バルブ又は前記第2制御バルブの異常を検知するように構成されたものが挙げられる。
【発明の効果】
【0026】
このように本発明に係る流体制御装置によれば、前記ブロックを幅方向に沿って透視した場合に、前記第1流出流路と前記第2流入流路とが、1点で重なるように配置されているので、前記第1制御バルブと前記第2制御バルブを前記ブロックの長手方向に並べて配置し、前記ブロックの幅寸法を小さくしながら、各制御バルブを通過した流体を前記合流後流路で合流させることができる。この結果、流体制御装置をコンパクトに構成しながら、従来よりも最大流量は大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態における流体制御装置のハードウェア構成を示す模式図。
図2】第1実施形態における流体制御装置の流体制御器の構成を示す模式図。
図3】第1実施形態における流体制御装置の模式的流体回路図。
図4】本発明の第2実施形態における流体制御装置のハードウェア構成を示す模式図。
図5】本発明の第3実施形態における流体制御装置の構成を示す模式図。
図6】本発明の第4実施形態における流体制御装置の模式的流体回路図。
図7】本発明の第5実施形態における通常時の流体制御装置の構成を示す模式図。
図8】本発明の第5実施形態における異常発生時の流体制御装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1実施形態の流体制御装置100について図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0029】
この流体制御装置100は、例えば半導体製造プロセスにおいて、流体として各種ガスをチャンバに所望の設定流量で供給するために用いられる。また、複数の流体制御装置100を幅方向に複数並列に並べてガス供給システムが構成される。
【0030】
図1及び図2に示すように流体制御装置100は、長手方向を有し、一端部から他端部に向かってガスが流れる内部流路Lが形成されたブロックBと、ブロックBに対して取り付けられた第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2と、第1制御バルブV1又は第2制御バルブV2を通過し、合流した後のガスの流量を測定する圧力式の流量センサFMと、流量センサFMの測定値に基づいて第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2を制御する流体制御器CBと、を備えている。各部について詳述する。
【0031】
図1に示すようにブロックBは、細長い直方体の1つの側面の中央部に直方体形状の突出部B1が形成されたものである。この突出部B1のある側面が流体制御機器である第1制御バルブV1、及び、流量センサFMを構成する第1圧力センサP1、第2圧力センサP2が取り付けられる取付面ASとして設定してある。また、突出部B1には第2制御バルブV2が設けられる。すなわち、内部流路Lに対して上流側から順番に第1制御バルブV1、第2制御バルブV2、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2がブロックBに対して取り付けられている。図1(b)に示されるようにブロックBは一定の幅寸法を有しており、第1制御バルブV1、第2制御バルブV2、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2もブロックBの幅寸法と略同じ寸法を有している。
【0032】
第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2は同種、同型の例えばピエゾバルブであって、取付面AS又は突出部B1に形成された中空円筒状の凹部に、弁座及び弁体からなる円筒状の弁構造体が挿入され、弁体を駆動するピエゾアクチュエータはその外側に突出するように設けられる。弁構造体の下面側に形成されている流入口からガスが制御バルブ内へと流入し、弁体と弁座との隙間を通過したガスは弁構造体の側面に形成されている流出口から下流側へと流れる。以下の説明では、第1制御バルブV1の流入口及び流出口は第1流入口11及び第1流出口12と呼称し、第2制御バルブV2の流入口及び流出口は第2流入口21及び第2流出口22と呼称する。
【0033】
第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2は、同種、同型のものであり、取付面ASに取り付けられる直方体形状をなす固定部と、固定部の上側において扁平な円盤状をなす本体部とからなる。本体部の内部には圧力の感圧面が取付面ASに対して垂直となるように設けられている。また、第1圧力センサP1は、固定部の下面によって取付面ASに形成された凹部内に収容された流体抵抗である層流素子Rを押さえつけて固定する。この層流創始は微小流路が形成された層流素子板を複数積層したものであり、層流素子板の間をガスが通過することで層流素子Rの前後に差圧を発生させる。層流素子Rの中央部に層流素子板間を通過する前のガスを第1圧力センサP1内に導くための貫通穴が設けられており、第1圧力センサP1は層流素子Rの上流側の圧力を測定する。また、第2圧力センサP2は層流素子Rを通過した後のガスの圧力を測定する。
【0034】
また、ブロックBにおいて取付面ASの対向面である底面には、内部流路Lにガスが導入される導入ポートCIPと、第1制御バルブV1又は第2制御バルブV2を通過したガスが内部流路Lから外部へと導出される導出ポートCOPと、が形成されている。
【0035】
内部流路LにおいてブロックBの一端側に形成されている部分は2つの並列な流路として形成されている。並列な各流路にはそれぞれ第1制御バルブV1と第2制御バルブV2が設けられている。また、内部流路LにおいてブロックBの他端側に形成されている部分は、第1制御バルブV1又は第2制御バルブV2を通過したガスが合流する1つの合流後流路CLとして形成されている。
【0036】
すなわち、1つのブロックBに対して各流体制御機器を取り付けることで図3に示すような流体回路が形成される。より具体的には内部流路Lは、図1及び図3に示すように、導入ポートCIPから流体が流入する分岐前流路BBLと、分岐前流路BBLの下流端にある分岐点BPから分岐し、第1制御バルブV1の第1流入口11との間を接続する第1流入流路SL1と、分岐前流路BBLの下流端にある分岐点BPから分岐し、第2制御バルブV2の第2流入口21に終端部が接続される第2流入流路SL2と、第1制御バルブV1の第1流出口12と合流後流路CLの上流端である合流点CPとの間を接続する第1流出流路EL1と、第2制御バルブV2の第2流出口22と合流後流路CLの上流端である合流点CPとの間を接続する第2流出流路EL2と、をさらに備えている。ここで、第2流入流路SL2と第1流出流路EL1とはブロックB内においてそれぞれねじれの位置にある。
【0037】
図1(a)に示すようにブロックBを幅方向に沿って透視した場合、第2流入流路SL2と、第1流出流路EL1は1点で重なるように配置されている。すなわち、第1流出流路EL1と第2流入流路SL2の一部は幅方向に沿って視た場合に、十字をなすように配置されている。より具体的には、第1流入流路SL1はブロックBにおいて幅方向の中央部に形成されているが、第2流入流路SL2は幅方向の中央部から紙面奥方向へと斜めに進行している。また、第2制御バルブV2は突出部B1上に設けられているので、第2流入流路SL2は図1(a)における紙面奥方向に進行しながら、合わせてブロックBの底面側から取付面AS側へと進行している。言い換えると、第2流入流路SL2の流れ方向はブロックB内を紙面斜め奥方向へと進行している。
【0038】
また、第1流出流路EL1はブロックBの図1(a)における紙面手前側から幅方向の中央部に向かって進行するとともに、取付面AS側から底面側に進行して第2流出流路EL2とともに層流素子Rの上流側にある合流流路の先端部に至る。
【0039】
次に流体制御器CBについて図2を参照しながら説明する。
【0040】
流体制御器CBは、CPU、メモリ、I/Oチャネル、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、その他アナログ乃至デジタル回路から構成された制御回路である。流体制御器CBはメモリに格納されているプログラムがCPUにより実行され、各種機器が協業することにより、少なくとも図2に示すように開度制御部2、流量算出部3、流量フィードバック制御部4としての機能を発揮する。本実施形態の流体制御器CBは、第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2においてそれぞれ同じ程度の流量が通過し、合流後流路CLにおいてユーザにより設定される設定流量とほぼ同じ流量が流れるように第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2を制御する。つまり、第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2からほぼ同じ量のガスを流すことで、1つの制御バルブしかない場合と比較して約2倍の最大流量を実現できるようにしてある。以下に各部の詳細について説明する。
【0041】
開度制御部2は、設定流量と、流体制御装置100の導入ポートCIPに接続されている流路に設けられた図示しない供給圧センサで測定されるガスの供給圧とに基づいて、第1制御バルブV1の開度を制御する。すなわち、開度制御部2は、第1制御バルブV1を通過するガスの流量が設定流量の1/2倍となるように開度を制御する。ここで、開度制御部2には流量センサFMで測定される合流後流路CLを流れるガスの流量である合流後流量はフィードバックされない。
【0042】
より具体的には開度制御部2は、設定流量と供給圧とに基づいて第1制御バルブV1の目標開度を算出する目標開度算出部21と、目標開度算出部21で算出された目標開度に相当する電圧を第1制御バルブV1に印加する電圧制御部22と、を備えている。
【0043】
目標開度算出部21は、第1制御バルブV1のコンダクタンスに関する情報を保持しており、このコンダクタンスから現在の供給圧において設定流量の1/2の流量を実現できる目標開度を算出する。
【0044】
電圧制御部22は、第1制御バルブV1の電圧―開度特性に関する情報を保持しており、目標開度に対応する電圧を第1制御バルブV1に印加する。
【0045】
このように第1制御バルブV1の制御では、第1制御バルブV1により実現される流量に関する情報はフィードバックされておらず、供給圧と設定流量に基づいて流量については開ループ制御が行われる。したがって、第1制御バルブV1から出力されるガスの流量は設定流量の1/2に近い値となるが、流量誤差は補正されずに保たれたままとなる。
【0046】
流量算出部3は、第1圧力センサP1で測定される第1圧力と、第2圧力センサP2で測定される第2圧力に基づいて、合流後流路CLを流れるガスの流量である合流後流量を算出する。流量算出部3で使用される流量の算出式は例えば第1圧力と第2圧力の差圧や、第1圧力の二乗と第2圧力の二乗の差に基づく既知のものが使用される。
【0047】
流量フィードバック制御部4は、設定流量と流量算出部3で算出される合流後流量との偏差が小さくなるように第2制御バルブV2の開度を流量フィードバック制御する。すなわち、第1制御バルブV1で実現される流量の誤差と、第2制御バルブV2で実現される流量の誤差の両方を第2制御バルブV2の制御によって小さくなるように構成されている。
【0048】
このように構成された流体制御装置100であれば、ブロックB内に形成されている第1制御バルブV1からガスが流出する第1流出流路EL1と第2制御バルブV2にガスを流入させる第2流入流路SL2がねじれの位置に配置されているとともに、幅方向に沿って視た場合に1点で重なるように配置されているので、第1流出流路EL1と第1制御バルブV1と第2制御バルブV2を長手方向に沿って並べて配置して、前記ブロックBの幅寸法を小さくしつつ、第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2から流出する流体を合流後流路CLに流すことができる。このため、流体制御装置100の幅寸法をコンパクトにしながら、2つの制御バルブを用いることで最大流量は従来の約2倍にできる。
【0049】
また、流体制御器CBによって第1制御バルブV1は供給圧に基づいて開度が制御されて、流量については開ループで制御される。また、第2制御バルブV2は流量センサFMで測定される合流後流量がフィードバックされて、流量について閉ループで制御される。このように第2制御バルブV2のみに流量フィードバック制御が行われるので各制御バルブ同士が相互に制御が干渉しあうのを防ぐことができる。
【0050】
さらに、第1制御バルブV1は設定流量の1/2倍に相当する流量を流すように開度が制御されるので、第1制御バルブV1と第2制御バルブV2を通過するガスの流量はほぼ同じ値にできる。したがって、1つの制御バルブによりガスの流量を制御している場合と比較して、最大流量を約2倍に正確に制御することが可能となる。
【0051】
次に本発明の第2実施形態における流体制御装置100について図4を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0052】
第2実施形態の流体制御装置100は、ブロックB内には第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2の弁体及び弁座等の挿入されておらず、それぞれが別々に分離する構造として構成されている。
【0053】
具体的には、第1制御バルブV1は弁体や弁座が内部に形成された第1バルブブロックVB1を備えており、この第1バルブブロックVB1の下面がブロックBの取付面ASに対して取り付けられて、内部流路Lと連通するように構成されている。すなわち、第1バルブブロックVB1は、下面に形成された接続面CSに、内部に流体であるガスが流入する第1流入口11と内部からガスが流出する第1流出口12が開口させてある。このため、取付面ASに対して接続面CSを接触させることにより、図4(a)に示すように取付面ASに開口する第1流入流路SL1の下流端開口と第1流入口11とが連通し、取付面ASに開口する第1流出流路EL1の上流端開口と第1流出口12とが連通する。図4(b)に示すように第1流出口12は、第1流入口11の中心に対して幅方向にずらして配置されており、ブロックB内を斜めに延びる第1流出流路EL2と接続される。
【0054】
また、第2制御バルブV2も第1制御バルブV1と同様の構造を有している。第2制御バルブV2は、弁体や弁座が内部に形成された第2バルブブロックVB2を備えており、この第2バルブブロックVB2の下面がブロックBの取付面ASに対して取り付けられて、内部流路Lと連通するように構成されている。すなわち、第2バルブブロックVB2は、下面に形成された接続面CSに、内部に流体であるガスが流入する第2流入口21と内部からガスが流出する第2流出口22が開口させてある。このため、取付面ASに対して接続面CSを接触させることにより、図4(a)に示すように取付面ASに開口する第2流入流路SL2の下流端開口と第2流入口21とが連通し、取付面ASに開口する第2流出流路EL2の上流端開口と第1流出口22とが連通する。図4(b)に示すように第2流出口22は、第1流出口12の中心に対して幅方向に中央側へずらして配置されている。この第2流出口22に接続される第2流出流路EL2は、ブロックBの高さ方向に伸びており、第1流出流路12に対して交差するように形成されている。
【0055】
第2流入流路SL2は、ブロックBの中央部から幅方向奥側へと斜めに延びており、幅方向手前側へと斜めに延びる第1流出流路EL2とねじれの位置に配置されるようにしてある。また、図4(a)に示すようにブロックBを幅方向に透視した場合に、第1流出流路EL1と第2流入流路SL2は1点で重なるように構成されている。
【0056】
このように構成された第2実施形態の流体制御装置100であれば、ブロックBの取付面ASに対して第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2の一部を内部に収容するための凹部を形成する必要がなく、各制御バルブV1、V2の全体をブロックBの外側に配置し、分離した状態にできる。したがって、ブロックB内において第1流入流路SL1、第2流入流路SL2、第1流出流路EL1、第2流出流路EL2を形成できるスペースを大きくとることができる。このため、シンプルな形状であっても第1流出流路EL1と第2流入流路SL2とをねじれの位置に配置しやすくしやすい。
【0057】
次に本発明の第3実施形態における流体制御装置100について図5を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0058】
第3実施形態の流体制御装置100は、流体制御器CBの構成が第1実施形態とことなっている。すなわち、第1実施形態の流体制御器CBは第1制御バルブV1と第2制御バルブV2をそれぞれ異なる制御則で独立に制御していたが、第3実施形態の流体制御器CBは、第1制御バルブV1と第2制御バルブV2の開度を同期させて変化させる。
【0059】
具体的には流体制御器CBは、第1制御バルブV1の開度と、第2制御バルブV2の開度が同期するように制御する同期制御部5を備えている。
【0060】
同期制御部5は、流量センサFMで測定される合流後流量との偏差が小さくなるように、第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2のそれぞれに同一の電圧を印加する。ここで、第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2は同種、同型のものであるので、同一の電圧を印加すればほぼ同じ開度となる。また、同期制御部5は設定流量と測定される流量の偏差に応じて各制御バルブV1に印加する電圧を変化させるが、各時刻において印加されている電圧の値はほぼ同じ値になるように構成されている。すなわち、同期制御部5に対して第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2は例えば並列に接続されており、それぞれに印加される電圧値は常に同じ値となるように構成されている。また、同期制御部5は供給圧に応じて印加する電圧の大きさについても補正するように構成されている。
【0061】
このような第3実施形態の流体制御装置100であれば、簡単な制御則でありながら、各制御バルブV1及びV2に偏りなくガスを流すことができ、大流量を精度よく実現できる。
【0062】
次に本発明の第4実施形態における流体制御装置100について図6を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0063】
第4実施形態の流体制御装置100は、各制御バルブV1、V2の上流側にある分岐前流路BBL上に流量センサFMが設けられているとともに、流量センサFMが圧力式ではなく、熱式の流量センサを用いている。この流量センサFMは、分岐前流路BBLに設けられた流体抵抗Rと、流体抵抗RをバイパスするU字状の細管TPと、細管TPの外側に巻回された第1コイルC1と、第1コイルC1の下流側に設けられ、細管TPの外側に巻回された第2コイルC2と、を備えている。流体制御器CBは、例えば各コイルC1、C2の温度が一定に保たれるようにそれぞれ電圧を印加し、各コイルC1、C2に印加されている電圧の差に基づいて流量が算出される。
【0064】
このような第4実施形態の流体制御装置100であっても、第1実施形態の流体制御装置100とほぼ同様の効果を享受することができる。
【0065】
次に本発明の第5実施形態における流体制御装置100について図7及び図8を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0066】
第5実施形態の流体制御装置100は、第1制御バルブV1又は第2制御バルブV2のいずれか一方に故障等が発生したとしても、流量制御が自動的に継続されるものである。すなわち、この流体制御装置100は流量制御に関して自己復帰、自己修復機能を有するものである。
【0067】
具体的にはこの流体制御装置100における第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2はノーマルオープンタイプのバルブとして構成されている。言い換えると、第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2は、電圧が印加されていない場合やピエゾアクチュエータにおいて絶縁破壊が発生した場合には全開の状態となるように構成されたものである。加えて、第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2は同型の制御バルブであり、ほぼ同じ制御特性を有している。
【0068】
また、流体制御器CBは図7に示すように通常時には第2制御バルブV2のみで流量制御を行うとともに、図8に示すように異常発生時には第1制御バルブV1のみによる流量制御に自動的に切り替わるように構成されている。すなわち、通常時においては第2制御バルブV2の開度が適宜変更されるのに対して、第1制御バルブV2は例えば全開の状態に保たれる。
【0069】
具体的には流体制御器CBは、流量算出部3、流量フィードバック制御部4、バルブ異常検知部6、流量制御切替部7、としての機能を発揮するように構成されている。
【0070】
流量算出部3は第1実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。流量フィードバック制御部4は、基本的な制御則は第1実施形態と同様であるが、流量制御切替部7により制御対象となる制御バルブが切り替えられる。また、この実施形態では流量フィードバック制御部4は、通常時には第2制御バルブV2を制御し、異常発生時には第1制御バルブV1を制御する。
【0071】
バルブ異常検知部6は、通常時においては流量フィードバック制御部4による制御対象となっている第2制御バルブV2を少なくともモニタリングしている。すなわち、バルブ異常検知部6は、第2制御バルブV2に印加されている電圧の値をモニタリングするとともに、流量フィードバック制御部4で算出される設定流量と合流後流量との偏差の絶対値についてもモニタリングしている。バルブ異常検知部6は、例えば第2制御バルブV2に印加されている電圧が所定値以下となった場合には、ピエゾアクチュエータに絶縁破壊が生じていると判定する。また、バルブ異常検知部6は、前述した偏差の絶対値が所定値以上となり、その状態が所定期間維持された場合には、第2制御バルブV2の異常のために流量制御が行えないと判定する。
【0072】
流量制御切替部7は、バルブ異常検知部6が第2バルブV2の異常を検知した場合には、図8に示すように第2制御バルブV2から第1制御バルブV1による流量制御に切り替える。すなわち、流量フィードバック制御部4によって第1制御バルブV1にのみ電圧が印加され、流量制御が継続される。また、電圧が印加されなくなった第2制御バルブV2はノーマルオープンタイプであるので、全開の状態が維持される。
【0073】
このように第5実施形態の流体制御装置100であれば、第2制御バルブV2単独での流量制御中に当該第2制御バルブV2に異常が検知された場合には、自動的に第1制御バルブV2での流量制御に切り替えることができる。したがって、第2制御バルブV2の異常によって流量制御が継続できなくなり、設定流量を維持できなくなっても、第1制御バルブV1による流量制御が開始されて設定流量に自己復帰させることができる。
【0074】
また、第1制御バルブV1による流量制御が開始されてからは、第2制御バルブV2は全開状態で維持されるので、第2制御バルブV2自体による流路抵抗は最小化できる。したがって、第1制御バルブV1による流量制御は、第2制御バルブV2とほぼ同等の条件で行うことができ、流量制御精度等を一定に保つ事が可能となる。
【0075】
その他の実施形態について説明する。
【0076】
ブロックは取付面に対して突出する突出部を備えていないものであってもよい。すなわち、第1制御バルブと第2制御バルブがそれぞれ同じ高さの取付面上に取り付けられていてもよい。このような場合でも第1流出流路と第2流入流路とがねじれの位置となり、幅方向に沿って視た場合に1点で交差するように配置すればよい。
【0077】
また、突出部の設けられる位置は前記実施形態に示したものに限られない。例えば第1制御バルブが設けられる位置に突出部を設けて、第2制御バルブよりも第1制御バルブがブロックにおいて高い位置に配置されるようにしてもよい。
【0078】
流量センサについては圧力式の流量センサに限られるものではなく、熱式や超音波式等のその他の測定原理に基づくものであっても構わない。また、内部流路を流れる流体はガスだけでなく、液体であっても構わない。
【0079】
開度制御部が制御対象とする制御バルブは第1制御バルブに限られず、第2制御バルブであってもよい。このような場合には、流量フィードバック制御部が第1制御バルブを制御するように構成すればよい。加えて、開度制御部において用いられる圧力は供給圧に限られない。例えば圧力式の流量センサを構成する第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて開度制御部が第1制御バルブ又は第2制御バルブの開度を制御するものであってもよい。
【0080】
開度制御部は、設定流量の1/2倍の流量を実現するように動作するものに限られない。例えば設定流量の所定倍だけ小さい流量を実現するように第1制御バルブ又は第2制御バルブを制御するものであってもよい。
【0081】
流体制御装置は、流量を制御するものに限られず、圧力を制御するものであってもよい。本発明に係る流体制御装置であれば圧力を制御する場合でも最大流量を従来よりも大きくできる。
【0082】
第2流入流路は第1流入流路から分岐するものに限られず、導入ポートと第2流入口との間を接続するように形成されてもよい。また、導入ポートは2つ設けられていて、第1流入流路と第2流入流路がそれぞれ別々の流体供給源から流体の供給を受けるようにしてもよい。
【0083】
第5実施形態では、通常時には第2制御バルブのみで流量制御を行い、異常が検知されてからは第1制御バルブのみで流量制御を行うように構成されていたが、通常時に第1制御バルブのみで流量制御を行って、異常が検知されてからは第2制御バルブのみで流量制御を行うように構成してもよい。また、通常時において流量制御を行っていない制御バルブについては、切り替え後すぐに動作できるように動作維持電圧を印加してもよい。また、通常時に流量制御を行っていない制御バルブについては例えば圧力制御を行わせておき、異常が検知されてからは流量制御を行うように構成してもよい。
【0084】
加えて、第5実施形態の流体制御装置は、第1制御バルブ及び第2制御バルブの両方がノーマルオープンタイプとして構成されたものに限られず、第1制御バルブ及び第2制御バルブが、電圧が印加されていない場合には全閉状態に保たれるノーマルクローズタイプとして構成されたものであってもよい。また、第1制御バルブ又は第2制御バルブの一方がノーマルオープンタイプで他方がノーマルクローズタイプとして構成しても構わない。これらのように構成された場合でも、流量制御を行っていた制御バルブにおいて異常が発生した場合には自動的に別の制御バルブでの流量制御を継続できる。したがって、第5実施形態で説明したのと同様に流量制御について自己復帰、自己修復機能を実現できる。
【0085】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、各実施形態の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0086】
100・・・流体制御装置
V1 ・・・第1制御バルブ
V2 ・・・第2制御バルブ
SL1・・・第1流入流路
SL2・・・第2流入流路
EL1・・・第1流出流路
EL2・・・第2流出流路
FM ・・・流量センサ
CB ・・・流体制御器
2 ・・・開度制御部
21 ・・・目標開度算出部
22 ・・・電圧制御部
3 ・・・流量算出部
4 ・・・流量フィードバック制御部
5 ・・・同期制御部
6 ・・・バルブ異常検知部
7 ・・・流量制御切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8