(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】融着接続機及び光ファイバの回転調心方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/255 20060101AFI20240708BHJP
G02B 6/26 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
G02B6/255
G02B6/26
(21)【出願番号】P 2020150439
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】田邉 明夫
(72)【発明者】
【氏名】服部 真樹
(72)【発明者】
【氏名】細井 英昭
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/017585(WO,A1)
【文献】特表2005-518566(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103592722(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/255-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光ファイバと第2光ファイバとを融着接続する融着接続機であって、
前記第1光ファイバを周方向に回転させる第1駆動部と、
前記第2光ファイバを周方向に回転させる第2駆動部と、
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバを径方向から撮影する撮影部と、
前記第1光ファイバが前記第1駆動部により所定角度で回転する毎に、前記撮影部が撮影した第1光ファイバの画像の輝度の総和を演算し、前記第2光ファイバが前記第2駆動部により前記所定角度で回転する毎に、前記撮影部が撮影した第2光ファイバの画像の輝度の総和を演算する画像処理部と、
前記所定角度毎に演算された前記第1光ファイバの画像の輝度の総和において、所定の条件に合致する総和を特定し、特定した総和となる画像を撮影したときの前記第1光ファイバの回転角度を特定し、前記所定角度毎に演算された前記第2光ファイバの画像の輝度の総和において、所定の条件に合致する総和を特定し、特定した総和となる画像を撮影したときの前記第2光ファイバの回転角度を特定し、特定した各回転角度に基づいて、前記第1光ファイバの周方向の回転位置と前記第2光ファイバの周方向の回転位置とが予め定められた位置関係となるように、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を駆動する駆動制御部と、
を備える融着接続機。
【請求項2】
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバは、Nを2以上の整数とした場合、N回の回転対称性を有するN回回転対称光ファイバである
請求項1に記載の融着接続機。
【請求項3】
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバは、偏波保持光ファイバである
請求項2に記載の融着接続機。
【請求項4】
前記条件は、前記総和の最大値である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の融着接続機。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記所定角度の間の角度に回転したときの第1光ファイバの画像の輝度の総和を補間し、前記所定角度の間の角度に回転したときの第2光ファイバの画像の輝度の総和を補間する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の融着接続機。
【請求項6】
第1光ファイバと第2光ファイバとを回転調心する光ファイバの回転調心方法であって、
前記第1光ファイバを周方向に回転させる第1駆動ステップと、
前記第2光ファイバを周方向に回転させる第2駆動ステップと、
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバを径方向から撮影する撮影ステップと、
前記第1光ファイバが前記第1駆動ステップにより所定角度で回転する毎に、前記撮影ステップで撮影した第1光ファイバの画像の輝度の総和を演算し、前記第2光ファイバが前記第2駆動ステップにより前記所定角度で回転する毎に、前記撮影ステップで撮影した第2光ファイバの画像の輝度の総和を演算する画像処理ステップと、
前記所定角度毎に演算された前記第1光ファイバの画像の輝度の総和において、所定の条件に合致する総和を特定し、特定した総和となる画像を撮影したときの前記第1光ファイバの回転角度を特定し、前記所定角度毎に演算された前記第2光ファイバの画像の輝度の総和において、所定の条件に合致する総和を特定し、特定した総和となる画像を撮影したときの前記第2光ファイバの回転角度を特定し、特定した各回転角度に基づいて、前記第1光ファイバの周方向の回転位置と前記第2光ファイバの周方向の回転位置とが予め定められた位置関係となるように、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバを周方向に回転させる調心ステップと、
を備えることを特徴とする光ファイバの回転調心方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融着接続機及び光ファイバの回転調心方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コア部と、クラッド部と、当該コア部を光ファイバの径方向の両側から挟む2つの応力付与部とを備えるPANDA型の偏波保持光ファイバ同士を融着接続する場合、融着接続の対象とする一対の偏波保持光ファイバ間で、径方向の断面におけるコア部、クラッド部及び2つの応力付与部の各構造が揃うように、周方向の回転位置調整(回転調心)等の位置合わせを行う必要がある。
【0003】
このような回転対称性を有する光ファイバ同士の融着接続に用いられる装置として、例えば特許文献1に開示された接続装置がある。この接続装置は、接続する一対の光ファイバの端部を光源とカメラとの間に配置する。接続装置は、配置された光ファイバが半回転するまで所定の角度で光ファイバを回転させ、所定の角度で回転させる毎に光ファイバの透過光をカメラで撮影し、透過光像の輝度情報を角度に対応してプロットしたグラフを作成する。接続装置は、予め各種光ファイバの輝度情報のグラフを記憶しており、光ファイバを撮影して得たグラフと、予め記憶している輝度情報のグラフとの相関係数を演算する。接続装置は、しきい値以上の値となる相関係数を有した光ファイバを特定し、特定した光ファイバに対応する回転調心方法をROMから読み出し、読み出した方法で回転調心を行った後、ファイバの接続を行う。なお、同様の回転調心を行う必要がある光ファイバとしては、クラッド内に複数のコアを有するマルチコアファイバ等、長手方向断面形状がN回対称性を有するものが挙げられ、回転調心によって接続する一対のファイバのコア部の位置等を一致させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された接続装置においては、例えば、接続する光ファイバが新規の光ファイバである場合、予め輝度情報グラフ及び回転調心方法がROMに記憶されていない。近年、光ファイバによる通信網の拡充のため世界的に光ファイバを供給する企業が増加している。それに伴い、上記のような新規の光ファイバが敷設されていることから、このような新規の光ファイバと既知の光ファイバ、或いは新規の光ファイバ同士を低損失に(偏波保持ファイバの場合は、消光比劣化を抑制しながら)接続できる必要がある。一方で、この様な場合、相関係数がしきい値以上となる輝度情報グラフがROMになく、光ファイバを特定できないため、回転調心方法をROMから読み出せず、所望の回転調心を行うことができないおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回転対称性を有する新規の光ファイバであっても所望の回転調心を行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る融着接続機は、第1光ファイバと第2光ファイバとを融着接続する融着接続機であって、前記第1光ファイバを周方向に回転させる第1駆動部と、前記第2光ファイバを周方向に回転させる第2駆動部と、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバを径方向から撮影する撮影部と、前記第1光ファイバが前記第1駆動部により所定角度で回転する毎に、前記撮影部が撮影した第1光ファイバの画像の輝度の総和を演算し、前記第2光ファイバが前記第2駆動部により前記所定角度で回転する毎に、前記撮影部が撮影した第2光ファイバの画像の輝度の総和を演算する画像処理部と、前記所定角度毎に演算された前記第1光ファイバの画像の輝度の総和において、所定の条件に合致する総和を特定し、特定した総和となる画像を撮影したときの前記第1光ファイバの回転角度を特定し、前記所定角度毎に演算された前記第2光ファイバの画像の輝度の総和において、所定の条件に合致する総和を特定し、特定した総和となる画像を撮影したときの前記第2光ファイバの回転角度を特定し、特定した各回転角度に基づいて、前記第1光ファイバの周方向の回転位置と前記第2光ファイバの周方向の回転位置とが予め定められた位置関係となるように、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を駆動する駆動制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る融着接続機は、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバは、Nを2以上の整数とした場合、N回の回転対称性を有するN回回転対称光ファイバであることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る融着接続機は、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバは、偏波保持光ファイバであることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る融着接続機は、前記条件は、前記総和の最大値であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る融着接続機は、前記画像処理部は、前記所定角度の間の角度に回転したときの第1光ファイバの画像の輝度の総和を補間し、前記所定角度の間の角度に回転したときの第2光ファイバの画像の輝度の総和を補間することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る光ファイバの回転調心方法は、第1光ファイバと第2光ファイバとを回転調心する光ファイバの回転調心方法であって、前記第1光ファイバを周方向に回転させる第1駆動ステップと、前記第2光ファイバを周方向に回転させる第2駆動ステップと、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバを径方向から撮影する撮影ステップと、前記第1光ファイバが前記第1駆動ステップにより所定角度で回転する毎に、前記撮影ステップで撮影した第1光ファイバの画像の輝度の総和を演算し、前記第2光ファイバが前記第2駆動ステップにより前記所定角度で回転する毎に、前記撮影ステップで撮影した第2光ファイバの画像の輝度の総和を演算する画像処理ステップと、前記所定角度毎に演算された前記第1光ファイバの画像の輝度の総和において、所定の条件に合致する総和を特定し、特定した総和となる画像を撮影したときの前記第1光ファイバの回転角度を特定し、前記所定角度毎に演算された前記第2光ファイバの画像の輝度の総和において、所定の条件に合致する総和を特定し、特定した総和となる画像を撮影したときの前記第2光ファイバの回転角度を特定し、特定した各回転角度に基づいて、前記第1光ファイバの周方向の回転位置と前記第2光ファイバの周方向の回転位置とが予め定められた位置関係となるように、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバを周方向に回転させる調心ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転対称性を有する新規の光ファイバであっても所望の回転調心を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る融着接続機の一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る融着接続機における一対の光ファイバの長手方向及び径方向の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における光ファイバの径方向の断面と、光源、第1撮像部及び第2撮像部の位置関係を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る回転調心に用いられる第1方向画像と輝度プロファイルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、光ファイバのslow軸と第1方向画像の輝度値の総和との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本実施形態における光ファイバの回転調心の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態における回転調心を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0016】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る融着接続機の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る融着接続機1は、径方向の断面構造について互いに同種の回転対称性を有する一対の光ファイバF1、F2同士を融着接続するものであり、
図1に示すような各構成部を備える。
【0017】
図1に示すように、融着接続機1は、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2を位置合わせ等ができるように融着接続機1にセットするためのホルダ2a、2b、可動ステージ3a、3b及び光ファイバクランプ4a、4bと、これらの光ファイバF1、F2同士を融着接続するための放電部5a、5b及び放電制御部6と、を備える。また、融着接続機1には、開閉可能な風防カバー(図示せず)が設けられており、ホルダ2a、2b、可動ステージ3a、3b、光ファイバクランプ4a、4b、及び放電部5a、5bは、この風防カバーに覆われるように配置されている。
【0018】
また、融着接続機1は、光ファイバF1、F2の位置合わせ等に必要な画像を得るための光源17a、17bと、第1撮像部7a及び第2撮像部7bを備え、融着接続機1は、光ファイバF1、F2の長手方向の位置を調整するための搬送駆動部9a、9bと、光ファイバF1の径方向の位置を調整(調心)するための第1径方向駆動部10及び第2径方向駆動部11と、光ファイバF1、F2の周方向における回転位置を調整(回転調心)するための回転駆動部12a、12bと、第1撮像部7a及び第2撮像部7bのフォーカスを調整するための第1フォーカス駆動部13a及び第2フォーカス駆動部13bとを備える。さらに、融着接続機1は、画像を表示する表示部としての機能と融着接続機1を操作するための操作部としての機能とを兼ね備えるタッチパネル14と、融着接続機1の各構成部を制御するための制御部16とを備える。
【0019】
本実施形態において、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2は、径方向の断面構造について互いに同種の回転対称性を有するN回回転対称光ファイバである。N回回転対称光ファイバは、Nを2以上の整数とした場合、N回の回転対称性を有する光ファイバである。例えば、N回回転対称光ファイバとして、偏波保持光ファイバが挙げられる。偏波保持光ファイバの種類としては、PANDA型、楕円ジャケット型、D型及びBow-tie型等が挙げられる。また、N回回転対称光ファイバは、多角形光ファイバであってもよい、多角形光ファイバの種類としては、コアの外形が楕円形のもの、クラッドの外形が多角形のもの、これらを組み合わせたもの等が挙げられる。また、N回回転対称光ファイバは、径方向の断面に複数のコアがN回回転対称に配置されたマルチコアファイバでもよい。光ファイバF1は、第1光ファイバの一例であり、光ファイバF2は、第2光ファイバの一例である。
【0020】
なお、ここでいう「同種」とは、径方向の断面構造及び回転対称の回数の双方について互いに同じ分類に分けられるN回回転対称光ファイバ同士を意味する。例えば、PANDA型の偏波保持光ファイバ同士は、互いに同種の回転対称性を有するN回回転対称光ファイバの一例である。即ち、たとえ偏波保持光ファイバ同士であっても、偏波保持光ファイバである光ファイバF1、F2の種類が異なれば、互いに種類が異なるN回回転対称光ファイバである。
【0021】
また、本実施形態では、一対の光ファイバF1、F2の位置合わせとしては、例えば、各光ファイバF1、F2の長手方向の端面位置を調整する端面位置調整、各光ファイバF1、F2の径方向の位置を調整する調心、各光ファイバF1、F2の周方向における回転位置を調整する回転調心等が挙げられる。
【0022】
ホルダ2a、2bは、融着接続機1にセットする一対の光ファイバF1、F2を各々把持するものである。特に詳細な構造は図示しないが、ホルダ2a、2bは、例えば、V溝等を備える土台部、この土台部に対して開閉可能な蓋部等によって各々構成される。本実施形態において、ホルダ2aは、先端側の被覆が剥がされてガラス部分を露出させた状態の光ファイバF1を、ホルダ2b側の端からガラス部分を延出させ且つホルダ2bとは反対側の端から被覆部分を延出させた状態で蓋部と土台部のV溝とによって挟むようにして把持する。ホルダ2bは、このホルダ2aと同様に、先端側の被覆が剥がされてガラス部分を露出させた状態の光ファイバF2を把持する。
【0023】
なお、光ファイバF1、F2において、先端側は、互いに融着接続されるガラス部分の端面側である。この先端側とは反対の端面(被覆部分の端面)側は、基端側とする。また、光ファイバF1、F2のガラス部分(先端部分とも適宜いう)は、被覆が剥がされた光ファイバ部分である。
【0024】
可動ステージ3a、3bは、光ファイバF1、F2の位置合わせのために光ファイバF1、F2を移動及び回転させる可動なステージである。本実施形態において、可動ステージ3aには、例えば
図1に示すように、光ファイバF1を保持した状態のホルダ2aが、光ファイバF1の先端側のガラス部分を放電部5a、5b側へ向けるように取り付けられる。可動ステージ3aは、後述する搬送駆動部9a、第1径方向駆動部10、第2径方向駆動部11又は回転駆動部12aの作用により、光ファイバF1の長手方向又は径方向に移動し、或いは、光ファイバF1の長手方向の中心軸回りに回転する。一方、可動ステージ3bには、例えば
図1に示すように、光ファイバF2を保持した状態のホルダ2bが、光ファイバF2の先端側のガラス部分を放電部5a、5b側へ向けるように取り付けられる。可動ステージ3bは、後述する搬送駆動部9b又は回転駆動部12bの作用により、光ファイバF2の長手方向に移動し、或いは、光ファイバF2の長手方向の中心軸回りに回転する。光ファイバF1、F2の各ホルダ2a、2bが上述したように可動ステージ3a、3bに各々取り付けられ、可動ステージ3a、3bが駆動されることにより、融着接続機1における光ファイバF1、F2の長手方向の位置、径方向の位置及び周方向の位置が設定される。
【0025】
光ファイバクランプ4a、4bは、光ファイバF1、F2の各ガラス部分の位置を可動ステージ3a、3bに対して各々相対的に固定するためのものである。
図1に示すように、光ファイバクランプ4aは、右側の可動ステージ3a上に取り付けられたホルダ2aから先端側に延出する光ファイバF1のガラス部分を、可動ステージ3aに対して解除可能に留める。これにより、光ファイバクランプ4aは、光ファイバF1のガラス部分の位置を可動ステージ3aに対して相対的に固定する。また、光ファイバクランプ4bは、左側の可動ステージ3b上に取り付けられたホルダ2bから先端側に延出する光ファイバF2のガラス部分を、可動ステージ3bに対して解除可能に留める。これにより、光ファイバクランプ4bは、光ファイバF2のガラス部分の位置を可動ステージ3bに対して相対的に固定する。なお、光ファイバクランプ4a、4bによって光ファイバF1、F2をクランプした状態で光ファイバF1、F2をZ軸中心に回転させてしまうと、光ファイバF1、F2のガラス部分が傷つく等のダメージを受け、この結果、光ファイバF1、F2同士の融着接続の強度が低下する恐れがある。この事態を回避するために、光ファイバクランプ4a、4bは、制御部16の制御に基づき、光ファイバF1、F2の回転調心が行われるに際して光ファイバF1、F2のクランプを各々解除する。
【0026】
図2は、本実施形態に係る融着接続機1における一対の光ファイバF1、F2の長手方向及び径方向の一例を示す図である。本実施形態では、
図2に示すように、光ファイバF1、F2の長手方向としてZ軸方向が設定される。Z軸は、XYZの3軸直交座標系の一軸であり、光ファイバF1、F2の各長手方向中心軸に対して平行な軸である。また、光ファイバF1、F2については、互いに異なる複数(本実施形態では2つ)の径方向が設定される。例えば、
図2に示すように、光ファイバF1、F2の径方向としてX軸方向及びY軸方向が設定される。X軸及びY軸は、各々、XYZの3軸直交座標系の一軸である。X軸は、光ファイバF1、F2の互いに異なる第1径方向及び第2径方向のうち、水平方向である第1径方向に対して平行な軸であり、Y軸は、垂直方向である第2径方向に対して平行な軸である。すなわち、本実施形態において、光ファイバF1、F2の第1径方向及び第2径方向は、互いに垂直な径方向である。
【0027】
放電部5a、5bは、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の各ガラス部分に対して放電するためのものである。
図1に示すように、放電部5a、5bは、右側の可動ステージ3a上のホルダ2aと左側の可動ステージ3b上のホルダ2bとが対向する方向に対して垂直な方向で対向するように、これらの可動ステージ3a、3b間に配置される。放電部5a、5bは、可動ステージ3a、3b上のホルダ2a、2bから各々延出する光ファイバF1、F2の各ガラス部分に対して、光ファイバF1、F2の径方向から放電する。この放電の強さの違いにより、光ファイバF1、F2の各ガラス部分(先端部分)は、クリーニング及び/又は融着接続される。
【0028】
なお、本実施形態では、説明の便宜上、
図1に示すように放電部5a、5bを境にして、右側に設けられた可動ステージ3a上のホルダ2aの光ファイバF1は「右側の光ファイバ」と称し、左側に設けられた可動ステージ3b上のホルダ2bの光ファイバF2は「左側の光ファイバ」と称する。
【0029】
放電制御部6は、放電部5a、5bによる放電の電流量等を制御するものである。放電制御部6は、後述する制御部16の制御に基づいて、放電部5a、5bに給電する放電電流及び印加する放電電圧の少なくとも一つの値を変化させ、これにより、放電部5a、5bから光ファイバF1、F2の各ガラス部分に加えられる放電のエネルギー量を制御する。例えば、放電制御部6は、光ファイバF1、F2の各ガラス部分を放電によってクリーニングする場合、このクリーニングに適したエネルギー量の放電(以下、クリーニング放電と適宜いう)を放電部5a、5bに行わせる。また、放電制御部6は、光ファイバF1、F2の各ガラス部分の端面同士を放電によって融着接続する場合、この融着接続に必要なエネルギー量の放電(以下、本放電と適宜いう)を放電部5a、5bに行わせる。
【0030】
撮影部の一例である第1撮像部7a及び第2撮像部7bは、例えば撮像素子やレンズを有するカメラであり、融着接続機1における調整空間領域19内に位置する光ファイバ(例えば一対の光ファイバF1、F2)を、当該光ファイバの径方向から撮影する。なお、調整空間領域19は、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の位置合わせが行われる所定空間領域である。光源17a及び光源17bは、例えばLED(Light Emitting Diode)であり、光源17aは、調整空間領域19を挟んで第1撮像部7aに対向し、光源17bは、調整空間領域19を挟んで第2撮像部7bに対向している。光源17a及び光源17bは、調整空間領域19内に位置する光ファイバ(例えば一対の光ファイバF1、F2)に対し、当該光ファイバの径方向から光を照射する。
【0031】
図3は、光ファイバF1、F2の径方向に沿った断面と、第1撮像部7a、第2撮像部7b、光源17a及び光源17bの位置関係を示す図である。
図3には、光ファイバF1、F2の一例として、PANDA型の偏波保持光ファイバの径方向の断面が図示されている。
図3に示す例において、光ファイバF1は、コア部F1aと、コア部F1aの外周に形成されたクラッド部F1bと、コア部F1aに応力を付与する応力付与部F1c、F1dと、クラッド部F1bの外周を覆う被覆部(図示せず)とを備える。コア部F1aは、クラッド部F1bに比べて屈折率が高い石英ガラスからなり、光ファイバF1の径方向の断面において、クラッド部F1bの径方向の中心部分に配置されている。2つの応力付与部F1c、F1dは、光ファイバF1の径方向においてコア部F1aを挟むように、クラッド部F1bのうちコア部F1aを中心として対称となる部分に配置されている。この光ファイバF1と同様に、光ファイバF2は、コア部F2aと、コア部F2aの外周に形成されたクラッド部F2bと、コア部F2aに応力を付与する応力付与部F2c、F2dと、クラッド部F2bの外周を覆う被覆部(図示せず)とを備える。すなわち、これらの光ファイバF1、F2は、径方向の断面構造について互いに同種の回転対称性を有するN回回転対称光ファイバ(
図3では2回回転対称光ファイバ)である。
【0032】
第1撮像部7aと光源17aは、
図3に示す第1光軸ax1を光軸とし、調整空間領域19を撮像領域とするように配置される。本実施形態においては、第1光軸ax1の方向(第1光軸方向)は、
図1の左側からZ軸を見たときに、Z軸を中心としてX軸から時計回りに45°の角度の方向である。また、第2撮像部7bと光源17bは、
図3に示す第2光軸ax2を光軸とし、調整空間領域19を撮像領域とするように配置される。第2光軸ax2の方向(第2光軸方向)は、
図1の左側からZ軸を見たときに、Z軸を中心としてX軸から反時計回りに45°の角度の方向であり、第1光軸ax1に直交する方向である。
【0033】
第1撮像部7aは、調整空間領域19内に位置する光ファイバF1、F2を、光ファイバF1、F2の径方向に沿った方向である第1光軸方向に撮影する。これにより、第1撮像部7aは、画像の左右方向をZ軸方向とし、画像の上下方向を第2光軸方向として、光ファイバF1、F2の各々の状態を示す画像を生成する。第1撮像部7aは、光ファイバF1、F2を撮影する都度、この生成した画像の画像データを制御部16に送信する。
【0034】
第2撮像部7bは、調整空間領域19内に位置する光ファイバF1、F2を、光ファイバF1、F2の径方向に沿った方向である第2光軸方向に撮影する。これにより、第2撮像部7bは、画像の左右方向をZ軸方向とし、画像の上下方向を第1光軸方向として、光ファイバF1、F2の各々の状態を示す画像を生成する。第2撮像部7bは、光ファイバF1、F2を撮影する都度、この生成した画像の画像データを制御部16に送信する。
【0035】
搬送駆動部9a、9bは、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整を行うための駆動部である。詳細には、搬送駆動部9aは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aをZ軸方向に移動(
図2に示すZ軸の太線矢印参照)させ得るように設けられる。搬送駆動部9aは、Z軸方向への可動ステージ3aの移動を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の長手方向に搬送する。これにより、搬送駆動部9aは、右側の光ファイバF1の長手方向における端面位置、即ち、Z軸方向の位置を調整する。
【0036】
また、搬送駆動部9bは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって左側の可動ステージ3bをZ軸方向に移動させ得るように設けられる。搬送駆動部9bは、Z軸方向への可動ステージ3bの移動を通じて、可動ステージ3b上の左側の光ファイバF2を、光ファイバF2の長手方向に搬送する。これにより、搬送駆動部9bは、左側の光ファイバF2の長手方向における端面位置、即ち、Z軸方向の位置を調整する。
【0037】
第1径方向駆動部10及び第2径方向駆動部11は、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の調心を行うための駆動部である。詳細には、第1径方向駆動部10は、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aをX軸方向に移動(
図2に示すX軸の太線矢印参照)させ得るように設けられる。第1径方向駆動部10は、X軸方向への可動ステージ3aの移動を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の第1径方向に移動させる。これにより、第1径方向駆動部10は、右側の光ファイバF1の第1径方向(X軸方向)の位置を左側の光ファイバF2に合わせる調心(第1径方向の調心)を行う。
【0038】
また、第2径方向駆動部11は、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aをY軸方向に移動(
図2に示すY軸の太線矢印参照)させ得るように設けられる。第2径方向駆動部11は、Y軸方向への可動ステージ3aの移動を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の第2径方向に移動させる。これにより、第2径方向駆動部11は、右側の光ファイバF1の第2径方向(Y軸方向)の位置を左側の光ファイバF2に合わせる調心(第2径方向の調心)を行う。
【0039】
回転駆動部12a、12bは、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の回転調心を行うための駆動部である。詳細には、回転駆動部12aは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aを、Z軸を中心として時計回り(
図2に示すZ軸周りの矢印A方向)又は反時計回り(
図2に示すZ軸周りの矢印B方向)に回転させ得るように設けられる。回転駆動部12aは、Z軸を中心とする可動ステージ3aの回転を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の長手方向の中心軸回りに回転(すなわち周方向回転)させる。このような回転駆動部12aは、Z軸を中心として、即ち光ファイバF1の径方向の断面の中心軸を中心として光ファイバF1の回転調心を行う。回転駆動部12aは、光ファイバF1を周方向に回転させる第1駆動部の一例である。
【0040】
また、回転駆動部12bは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって左側の可動ステージ3bを、Z軸を中心として時計回り又は反時計回りに回転させ得るように設けられる。回転駆動部12bは、Z軸を中心とする可動ステージ3bの回転を通じて、可動ステージ3b上の左側の光ファイバF2を、光ファイバF2の長手方向の中心軸回りに回転(すなわち周方向回転)させる。このような回転駆動部12bは、Z軸を中心として、即ち、光ファイバF2の径方向の断面の中心軸を中心にして回転調心を行う。回転駆動部12bは、光ファイバF2を周方向に回転させる第2駆動部の一例である。以下、回転調心といえば、特に説明がない限り、一対の光ファイバF1、F2のZ軸を中心とした回転調心を意味する。
【0041】
第1フォーカス駆動部13a及び第2フォーカス駆動部13bは、第1撮像部7a及び第2撮像部7bの各フォーカス調整を各々行うための駆動部である。詳細には、第1フォーカス駆動部13aは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって第1撮像部7aの撮像素子(図示せず)を調整空間領域19内の光ファイバF1、F2に対して近接または離間させる方向に移動させ得るように設けられる。第1フォーカス駆動部13aは、この撮像素子の移動を通じて、第1撮像部7aのフォーカスを調整する。第2フォーカス駆動部13bは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって第2撮像部7bの撮像素子(図示せず)を調整空間領域19内の光ファイバF1、F2に対して近接または離間させる方向に移動させ得るように設けられる。第2フォーカス駆動部13bは、この撮像素子の移動を通じて、第2撮像部7bのフォーカスを調整する。
【0042】
タッチパネル14は、融着接続機1を操作するためのGUI(Graphical User Interface)や融着接続に係る情報等を表示する機能と、表示画面の押下に応じて各種操作のための信号を出力する機能とを兼ね備える入出力インターフェースである。詳細には、タッチパネル14は、制御部16の制御に基づいて、融着接続機1を操作するための各種GUIと、調整空間領域19内の光ファイバF1、F2の各画像とを表示画面内に表示する。例えば、タッチパネル14は、制御部16から時系列に沿って画像信号を順次受信し、受信した画像信号をもとに、第1撮像部7a及び第2撮像部7bが撮影した光ファイバF1、F2の画像を表示する。また、タッチパネル14は、GUIや画像等を表示する表示画面に対して操作者が押下した位置及び押下した長さに応じた信号を、制御部16に対して出力する。
【0043】
制御部16は、演算部と、記憶部とを備えている。制御部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)やFPGA(field-programmable gate array)、又はCPUとFPGAの両方で構成される。記憶部は、例えばROM(Read Only Memory)で構成される部分とRAM(Random Access Memory)で構成される部分とを備えている。ROMで構成される部分には、演算部が演算処理を行うために使用するプログラムが格納される。また、RAMは、演算部が演算処理を行う際の作業スペースや演算部の演算処理の結果などを記憶するために使用される。
【0044】
演算部がROMに格納されているプログラムを実行すると、第1撮像部7aが生成した画像データと、第2撮像部7bが生成した画像データを画像処理する機能を有する画像処理部161と、放電制御部6、第1撮像部7a、第2撮像部7b、搬送駆動部9a、9b、第1径方向駆動部10、第2径方向駆動部11、回転駆動部12a、12b、第1フォーカス駆動部13a、第2フォーカス駆動部13b、及び光源17a、17bを駆動する機能を有する駆動制御部162とが実現し、制御部16は、融着接続機1の各構成部を制御する。
【0045】
駆動制御部162は、タッチパネル14から出力される信号に基づいて、タッチパネル14の表示を制御する。また、駆動制御部162は、操作者の操作に応じてタッチパネル14から出力される信号に基づいて、光ファイバF1、F2を接続する処理を開始し、光ファイバF1、F2の第1、第2径方向の調心及び回転調心を行い、光ファイバF1、F2を接続するために、放電制御部6、第1撮像部7a、第2撮像部7b、搬送駆動部9a、9b、第1径方向駆動部10、第2径方向駆動部11、回転駆動部12a、12b、第1フォーカス駆動部13a、第2フォーカス駆動部13b、及び光源17a、17b等を制御する。駆動制御部162は、回転駆動部12a、12bを駆動する駆動制御部の一例である。
【0046】
画像処理部161は、第1撮像部7a及び第2撮像部7bによって撮像された各画像の画像データに対する画像処理を行う画像処理部の一例である。詳細には、画像処理部161は、第1撮像部7aから画像データを受信し、受信した画像データに対して光ファイバF1の部分の画像を抽出する画像処理を行う。これにより、画像処理部161は、例えば、縦方向を第2光軸方向とし且つ横方向をZ軸方向とする光ファイバF1の第1方向画像P1を生成する。本実施形態において、第1方向画像P1は、光源17aから出射されて光ファイバF1を透過した光の第2光軸方向における輝度分布を示す画像である。回転駆動部12aにより光ファイバF1を回転させると、Z軸を中心にして応力付与部F1c、F1dの位置が変化する。このため、光ファイバF1を透過して第1撮像部7aに到達する光が変化し、第1方向画像P1は、光ファイバF1を回転させたときの応力付与部F1c、F1dの位置に応じて変化する。
【0047】
また、画像処理部161は、第2撮像部7bから画像データを受信し、受信した画像データに対して光ファイバF2の部分の画像を抽出する画像処理を行う。これにより、画像処理部161は、例えば、縦方向を第1光軸方向とし且つ横方向をZ軸方向とする光ファイバF2の第2方向画像P2を生成する。本実施形態において、第2方向画像P2は、光源17bから出射されて光ファイバF2を透過した光の第1光軸方向における輝度分布を示す画像である。回転駆動部12bにより光ファイバF2を回転させると、Z軸を中心にして応力付与部F2c、F2dの位置が変化する。このため、光ファイバF2を透過して第2撮像部7bに到達する光が変化し、第2方向画像P2は、光ファイバF2を回転させたときの応力付与部F2c、F2dの位置に応じて変化する。
【0048】
図4に第1方向画像P1の一例を示す。
図4に示すように、第1方向画像P1において光ファイバF1に相当する部分は、応力付与部F1cの中心とコア部F1aの中心と応力付与部F1dの中心とを結ぶslow軸であるslow軸ax3(
図3参照)と、第1光軸ax1とがなす角度α1(
図3参照)に応じて変化する。なお、第2方向画像P2において光ファイバF2に相当する部分は、第1方向画像P1と同様に、応力付与部F2cの中心とコア部F2aの中心と応力付与部F2dの中心とを結ぶslow軸であるslow軸ax4(
図3参照)と第2光軸ax2とがなす角度α2(
図3参照)に応じて変化する。
【0049】
また、画像処理部161は、第1方向画像P1の各画素の輝度を数値化し、横軸を輝度値とし、縦軸を第2光軸方向の位置として、第2光軸方向に並んだ画素の輝度値のグラフ(輝度プロファイルpf1)を生成する。第1方向画像P1から生成する輝度プロファイルpf1については、例えば、Z軸方向の任意の位置において第2光軸方向に並んだ画素の輝度値から生成してもよい。また、画像処理部161は、第2方向画像P2の各画素の輝度を数値化し、横軸を輝度値とし、縦軸を第1光軸方向として、第1光軸方向に並んだ画素の輝度値のグラフ(輝度プロファイルpf2)を生成する。第2方向画像P2から生成する輝度プロファイルpf2については、例えば、Z軸方向の任意の位置において第1光軸方向に並んだ画素の輝度値から生成してもよい。また、画像処理部161は、輝度プロファイルpf1、pf2を生成する毎に、生成した輝度プロファイルpf1の輝度値を積算して輝度値の総和を演算し、生成した輝度プロファイルpf2の輝度値を積算して輝度値の総和を演算する。
【0050】
図4に、第1方向画像P1から生成した輝度プロファイルpf1の一例を示す。
図4に示すように、第1方向画像P1から生成した輝度プロファイルpf1は角度α1に応じて異なるものとなる。なお、第2方向画像P2から生成した輝度プロファイルpf2は、角度α2に応じて異なるものとなる。
【0051】
図5に光ファイバF1を6°回転させる毎に撮影したときの角度α1の値と、撮影に応じて生成された第1方向画像P1から演算した輝度値の総和との関係を示す。
図5に示すように、輝度値の総和は、角度α1が0°の場合に最大となり、角度α1が90°に向かうにつれて小さくなり、角度α1が-90°に向かうにつれて小さくなる。光ファイバF2を6°回転させる毎に撮影したときの角度α2の値と、撮影に応じて生成された第2方向画像P2から演算した輝度値の総和との関係についても、輝度値の総和は、角度α2が0°の場合に最大となり、角度α2が90°に向かうにつれて小さくなり、角度α2が-90°に向かうにつれて小さくなる。
【0052】
次に本発明の実施形態に係る光ファイバの回転調心方法について説明する。
図6は、制御部16が偏波保持光ファイバである光ファイバF1、F2の回転調心を行うときに行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7は、本実施形態に係る光ファイバの回転調心を具体的に説明するための図である。
【0053】
本実施形態に係る融着接続機1では、一対の光ファイバF1、F2の回転調心を行うにあたり、
図1に示すように、光ファイバF1を把持した状態のホルダ2aと光ファイバF2を把持した状態のホルダ2bとが、融着接続機1の可動ステージ3a、3bに各々セットされ、その後、風防カバー(図示せず)が閉じられる。
図7の(a)は、回転調心を開始する前の光ファイバF1、F2の状態の一例を示す図である。この段階において、ホルダ2a、2bから各々延出する光ファイバF1、F2の各ガラス部分は、粗調整により調整空間領域19の内部に位置しており、光ファイバF1の応力付与部F1c、F1dと、光ファイバF2の応力付与部F2c、F2dとが対向していない。
【0054】
融着接続機1では、一対の光ファイバF1、F2の回転調心を開始するための操作として、例えば、タッチパネル14に表示されるGUIの操作が行われる。融着接続機1は、この操作をトリガーとして、光ファイバF1、F2の長手方向の端面同士が対向するように、第1径方向駆動部10、第2径方向駆動部11、搬送駆動部9a、9bを制御し、径方向の調心を行う。その後、融着接続機1は、
図6に示すステップS101~S116の各処理を順次行い、これにより、一対の光ファイバF1、F2に対する回転調心を行う。
【0055】
具体的には、ステップS101~ステップS108は、左側の光ファイバF2の回転位置を制御する処理であり、ステップS109~ステップS116は、右側の光ファイバF1の回転位置を制御する処理である。まず制御部16は、左側の光ファイバF2の累積回転角度θ1を初期化し、累積回転角度θ1=0°とする(ステップS101)。累積回転角度θ1は、光ファイバF2の回転角度の一例であり、光ファイバF2の回転調心のために光ファイバF2を回転させた角度を累積した角度である。
【0056】
制御部16は、ステップS101を実行した後、第2撮像部7b、光源17b、第2フォーカス駆動部13bを制御し、光ファイバF1、F2を撮影する(ステップS102:撮影ステップ)。制御部16は、第2撮像部7bが撮影した光ファイバF1、F2の画像データを取得し、光ファイバF2の第2方向画像P2を生成する(ステップS103)。制御部16は、生成した第2方向画像P2の画素の輝度を数値化して第1光軸方向に並んだ画素の輝度値のグラフ(輝度プロファイルpf2)を生成し、輝度プロファイルpf2の輝度値の総和を演算する(ステップS104:画像処理ステップ)。制御部16は、ステップS104を実行した後、ステップS104で演算した輝度値の総和と、この時点の累積回転角度θ1とを対応付けて記憶する(ステップS105)。例えば、この時点の累積回転角度θ1が0°である場合、θ1=0°と、演算した総和の組が記憶部に記憶される。
【0057】
制御部16は、ステップS105を実行した後、累積回転角度θ1が180°以上であるか判断する(ステップS106)。制御部16は、累積回転角度θ1が180°未満である場合(ステップS106でNO)、回転駆動部12bを制御し、左側の光ファイバF2を
図2に示す矢印A方向へ所定の角度で回転させる(ステップS107:第1駆動ステップ)。制御部16は、ここで累積回転角度θ1に所定の角度を加算する。ここで回転させる所定の角度は、例えば6°であるが、6°に限定されるものではなく、他の角度であってもよい。制御部16は、ステップS107を実行した後、処理の流れをステップS102に戻し、累積回転角度θ1が180°以上となるまでステップS102~S107の処理を繰り返す。
【0058】
ステップS107で左側の光ファイバF2を繰り返し矢印A方向へ回転させていくと、累積回転角度θ1が90°である
図7の(b)に示す状態を経て、累積回転角度θ1が180°である
図7の(c)に示す状態となる。制御部16は、累積回転角度θ1が180°となるまで、左側の光ファイバF2を所定の角度で回転させる毎に、ステップS102~ステップS105の処理を実行し、累積回転角度θ1と、ステップS104で演算した輝度値の総和の組を記憶している。これにより、本実施形態においては、0°から6°毎に180°まで、第2方向画像P2から演算した輝度値の総和が記憶される。
【0059】
制御部16は、累積回転角度θ1が180°以上と判断した場合(ステップS106でYES)、左側の光ファイバF2を回転調心する(ステップS108:調心ステップ)。具体的には、制御部16は、ステップS105で記憶した輝度値の総和の最大値を特定し、特定した最大値と組みで記憶されている累積回転角度θ1を取得する。最大値は、所定の条件の一例である。制御部16は、180°-(取得した累積回転角度θ1)の演算を行い、回転駆動部12bを制御して、左側の光ファイバF2を矢印B方向に演算結果の角度で回転させる。ステップS108を実行した後の光ファイバF1、F2の状態を
図7の(d)に示す。この回転後の光ファイバF2の周方向位置は、ステップS105で記憶した輝度値の総和が最大となったときの位置であり、このときのslow軸ax4と第2光軸ax2とのなす角度α2は、
図5に示す輝度値の総和が最大となる角度である0°となるため、応力付与部F2c、コア部F2a、応力付与部F2dが第2光軸ax2に沿って並ぶ状態となる。
【0060】
制御部16は、ステップS108を実行した後、右側の光ファイバF1の回転調心を開始する。まず制御部16は、右側の光ファイバF1の累積回転角度θ2を初期化し、累積回転角度θ2=0°とする(ステップS109)。累積回転角度θ2は、光ファイバF1の回転角度の一例であり、光ファイバF1の回転調心のために光ファイバF1を回転させた角度を累積した角度である。
【0061】
制御部16は、ステップS109を実行した後、第1撮像部7a、光源17a、第1フォーカス駆動部13aを制御し、光ファイバF1、F2を撮影する(ステップS110:撮影ステップ)。制御部16は、第1撮像部7aが撮影した光ファイバF1、F2の画像データを取得し、光ファイバF1の第1方向画像P1を生成する(ステップS111)。制御部16は、生成した第1方向画像P1の画素の輝度を数値化して第2光軸方向に並んだ画素の輝度値のグラフ(輝度プロファイルpf1)を生成し、輝度プロファイルpf1の輝度値の総和を演算する(ステップS112:画像処理ステップ)。制御部16は、ステップS112を実行した後、ステップS112で演算した輝度値の総和と、この時点の累積回転角度θ2とを対応付けて記憶する(ステップS113)。例えば、この時点の累積回転角度θ2が0°である場合、θ2=0°と、演算した総和の組が記憶部に記憶される。
【0062】
制御部16は、ステップS113を実行した後、累積回転角度θ2が180°以上であるか判断する(ステップS114)。制御部16は、累積回転角度θ2が180°未満である場合(ステップS114でNO)、回転駆動部12aを制御し、右側の光ファイバF1を
図2に示す矢印A方向へ所定の角度で回転させる(ステップS115:第2駆動ステップ)。制御部16は、ここで累積回転角度θ2に所定の角度を加算する。ここで回転させる所定の角度は、例えば6°であるが、6°に限定されるものではなく、他の角度であってもよい。制御部16は、ステップS115を実行した後、処理の流れをステップS110に戻し、累積回転角度θ2が180°以上となるまでステップS110~S115の処理を繰り返す。
【0063】
ステップS115で右側の光ファイバF1を矢印A方向へ繰り返し回転させていくと、累積回転角度θ2が90°である
図7の(e)に示す状態を経て、累積回転角度θ2が180°である
図7の(f)に示す状態となる。制御部16は、累積回転角度θ2が180°となるまで、右側の光ファイバF1を所定の角度で回転させる毎に、ステップS110~ステップS113の処理を実行し、累積回転角度θ2と、ステップS112で演算した輝度値の総和の組を記憶している。これにより、本実施形態においては、0°から6°毎に180°まで、第1方向画像P1から演算した輝度値の総和が記憶される。
【0064】
制御部16は、累積回転角度θ2が180°以上と判断した場合(ステップS114でYES)、右側の光ファイバF1を回転調心する(ステップS116:調心ステップ)。具体的には、制御部16は、ステップS113で記憶した輝度値の総和の最大値を特定し、特定した最大値と組みで記憶されている累積回転角度θ2を取得し、180°-(取得した累積回転角度θ2)の演算を行う。制御部16は、回転駆動部12aを制御して、右側の光ファイバF1を矢印B方向に演算結果の角度で回転させる。この回転後の光ファイバF1の周方向位置は、ステップS113で記憶した輝度値の総和が最大となったときの位置であり、このときのslow軸ax3と第1光軸ax1とのなす角度α1は、
図5に示す輝度値の総和が最大となる角度である0°となるため、応力付与部F12c、コア部F1a、応力付与部F1dが第1光軸ax1に沿って並ぶ状態となる。次に制御部16は、さらに右側の光ファイバF1を矢印B方向に90°回転させる。これにより、
図7の(g)に示すように、光ファイバF1のslow軸ax3は、第2光軸ax2に平行となり、右側の光ファイバF1の応力付与部F1c、F1dの周方向位置は、第2光軸ax2とslow軸ax4が平行となっている光ファイバF2の応力付与部F2c、F2dの周方向位置と一致する。slow軸ax3とslow軸ax4とが揃っている状態は、光ファイバF1、F2の径方向の断面が揃っている状態であり、光ファイバF1、F2の周方向の位置関係が所望の位置関係である所望の回転調心の一例である。
【0065】
なお、特に図示しないが、融着接続機1は、上述したステップS116を完了した後、一対の光ファイバF1、F2に対する融着接続等を行う。例えば、制御部16は、放電部5a、5bに本放電を行わせるように放電制御部6を制御し、光ファイバF1、F2の長手方向の端面同士を突き合せるように、搬送駆動部9a、9bを制御する。この結果、光ファイバF1、F2同士の融着接続が完了し、これらの光ファイバF1、F2同士は、互いの径方向の断面構造を最も揃えた所望の周方向位置に調整された状態で融着接続されている。
【0066】
以上、説明したように、本発明の実施形態では、径方向の断面構造について互いに同種の回転対称性を有する一対の光ファイバ(Nが2以上の整数であるN回回転対称光ファイバ)である光ファイバF1と光ファイバF2とを、第1撮像部7a及び第2撮像部7bで得た画像に基づいて相対的に周方向へ回転させる。
【0067】
これにより、光ファイバF1のslow軸ax3の方向を光ファイバF2のslow軸ax4の方向に略一致させることができ、この結果、新規の光ファイバF1、F2であっても、融着接続の対象とする一対のN回回転対称光ファイバ間で径方向の断面構造をより揃えることができる。このように互いの周方向位置が調整されたN回回転対称光ファイバ同士を融着接続することにより、当該N回回転対称光ファイバ同士の融着接続損失を低減して、融着接続後のN回回転対称光ファイバのより良好な光伝送特性を得ることができる。
【0068】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0069】
本発明においては、記憶部は、累積回転角度θ1(θ2)と輝度プロファイルpf1(輝度プロファイルpf2)から演算した輝度値の総和とを対応付けて記憶しているが、記憶した累積回転角度θ1(θ2)の間の角度のときの輝度値の総和を、記憶した総和から補間してもよい。また、この構成においては、記憶部は、ステップS108と、ステップS116において、補間後に総和が最大となった角度を特定し、特定した角度に基づいて回転調心を行ってもよい。
【0070】
上述した実施形態においては、制御部16は、輝度プロファイルpf1(pf2)から演算した輝度値の総和が最大であるときの累積回転角度θ1(θ2)を特定し、特定した累積回転角度θ1(θ2)に基づいて回転調心を行っているが、回転調心を行う構成は、実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、制御部16は、輝度プロファイルpf1(pf2)から演算した輝度値の総和が最小値であるときの累積回転角度θ1(θ2)を特定し、特定した角度に基づいて回転調心を行ってもよい。最小値は、所定の条件の一例である。
【0071】
この場合、制御部16は、180°-(取得した累積回転角度θ2)の演算を行い、回転駆動部12bを制御して、左側の光ファイバF2を矢印B方向に演算結果の角度で回転させる。この回転調心を行うと、光ファイバF2のslow軸ax4は、第1光軸方向と平行になる。また、制御部16は、180°-(取得した累積回転角度θ1)の演算を行い、回転駆動部12aを制御して、右側の光ファイバF1を矢印B方向に演算結果の角度で回転させた後、さらに右側の光ファイバF1を矢印B方向に90°回転させる。これにより、光ファイバF1のslow軸ax3は、第1光軸ax1に平行となり、右側の光ファイバF1の応力付与部F1c、F1dの周方向位置は、slow軸ax4が第1光軸ax1と平行となっている光ファイバF2の応力付与部F2c、F2dの周方向位置と一致する。
【0072】
上述した融着接続機1は、マルチコアファイバである光ファイバF1、F2の回転調心を行い、光ファイバF1、F2を接続してもよい。輝度プロファイルから求めた輝度値の総和の極値は、光ファイバF1、F2の回転対称性に応じて表れる。上述したPANDA型の光ファイバF1、F2について、輝度プロファイルから求めた輝度値の総和の極大は、180°回転させる間に一回表れるが、マルチコアファイバの場合、輝度プロファイルから求めた輝度値の総和の極値は、180°回転させる間にマルチコアファイバの回転対称性に応じて周期的に表れる。このため、マルチコアファイバの回転調心を行う場合、記憶した輝度値の総和において周期的に表れる極値のときの角度を特定し、特定した角度に基づいて回転調心を行ってもよい。周期的に表れる極値は、所定の条件の一例である。
【0073】
上述した実施形態においては、ステップS101~ステップS108の処理を実行した後、ステップS101~ステップS116の処理を行っているが、ステップS101~ステップS107の処理と、ステップS109~ステップS115の処理を並行して行い、これらの処理が終わった後でステップS108の処理を実行し、その後にステップS116の処理を行ってもよい。また、ステップS108とステップS116の処理を同時に行っても良い。
【0074】
上述した実施形態においては、まず光ファイバF2のslow軸ax4を第2光軸方向と平行になるように回転調心し、次に光ファイバF1のslow軸ax3を第2光軸方向と平行となるように回転調心しているが、回転調心を行う構成は実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、制御部16は、まず、ステップS109~ステップS115の処理を実行し、記憶した輝度値の総和が最大となったときの累積回転角度θ2に基づいて、slow軸ax3が第1光軸ax1と平行となるように回転調心し、次にステップS101~ステップS107の処理を実行し、記憶した輝度値の総和が最大となったときの累積回転角度θ1に基づいて、slow軸ax4が第1光軸ax1と平行となるように回転調心してもよい。
【0075】
上述した実施形態においては、融着接続機1は、撮像部として第1撮像部7aと第2撮像部7bを備える構成となっているが、第1撮像部7aと第2撮像部7bのいずれか一方を備えている構成であってもよく、例えば、融着接続機1が第1撮像部7aのみを備えている構成である場合、以下のように光ファイバF1、F2の回転調心を行ってもよい。
【0076】
融着接続機1が第1撮像部7aのみを備えている構成である場合、制御部16は、ステップS102で第1撮像部7a、光源17a、第1フォーカス駆動部13aを制御し、光ファイバF1、F2を撮影する。制御部16は、第1撮像部7aが撮影した光ファイバF1、F2の画像データを取得し、ステップS103で第2方向画像P2に替えて、光ファイバF2の第1方向画像P1を生成する。
【0077】
制御部16は、この第1方向画像P1から輝度プロファイルpf2を生成し、輝度プロファイルpf2の輝度値の総和を演算し、累積回転角度θ1と対応付けて記憶する。制御部16は、輝度値の総和が最大となったときの累積回転角度θ1を特定し、180°-(取得した累積回転角度θ1)の演算を行い、回転駆動部12bを制御して、左側の光ファイバF2を矢印B方向に演算結果の角度で回転させる。この結果、光ファイバF2のslow軸ax4は、第1光軸ax1と平行となる。
【0078】
次に制御部16は、ステップS110で第1撮像部7a、光源17a、第1フォーカス駆動部13aを制御し、光ファイバF1、F2を撮影する。制御部16は、第1撮像部7aが撮影した光ファイバF1、F2の画像データを取得し、ステップS113で光ファイバF1の第1方向画像P1を生成する。制御部16は、この第1方向画像P1から輝度プロファイルpf1を生成し、輝度値の総和を演算し、累積回転角度θ2と対応付けて記憶する。制御部16は、輝度値の総和が最大となったときの累積回転角度θ2を特定し、180°-(取得した累積回転角度θ2)の演算を行い、回転駆動部12aを制御して、右側の光ファイバF1を矢印B方向に演算結果の角度で回転させる。この結果、光ファイバF1のslow軸ax3は、第1光軸ax1と平行となり、右側の光ファイバF1の応力付与部F1c、F1dの周方向位置は、第1光軸ax1とslow軸ax4が平行となっている光ファイバF2の応力付与部F2c、F2dの周方向位置と一致する。
【0079】
上述した実施形態においては、所望の状態を、応力付与部F1c、F1dと応力付与部F2c、F2dが対向する状態とし、この状態となるように回転調心を行っているが、回転調心における所望の状態は、実施形態の状態に限定されるものではない。例えば、各光ファイバF1、F2のslow軸ax3、ax4を第1光軸ax1又は第2光軸ax2と平行になるように回転調心する場合について説明したが、これに限らず、それぞれの回転角度が最小となるようにslow軸ax3、ax4の中間位置に回転調心しても良い。
【0080】
具体的には、輝度値の総和の最大値と組みで記憶されている累積回転角度θ1は、slow軸ax4が第2光軸ax2と一致したときの角度である。よって、ステップS106でYESと判断した時点では、slow軸ax4の角度は、第2光軸ax2の角度+(180°-輝度値の総和が最大のときの累積回転角度θ1)となり、第2光軸ax2の角度が既知であれば、slow軸ax4の角度が分かる。また、輝度値の総和の最大値と組みで記憶されている累積回転角度θ2は、slow軸ax3が第1光軸ax1と一致したときの角度である。よって、ステップS114でYESと判断した時点では、slow軸ax3の角度は、第1光軸ax1の角度+(180°-輝度値の総和が最大のときの累積回転角度θ2)となり、第1光軸ax1の角度が既知であれば、slow軸ax3の角度が分かる。例えば制御部16は、ステップS108に替えて、ステップS106でYESと判断した時点のslow軸ax4の角度を演算し、ステップS116に替えて、ステップS114でYESと判断した時点のslow軸ax3の角度を演算する。そして、制御部16は、演算したslow軸ax3の角度と演算したslow軸ax4の角度の中間の角度に光ファイバF1、F2を回転させることにより、slow軸ax3とslow軸ax4を揃えるようにしてもよい。また、制御部16は、演算したslow軸ax3の角度にslow軸ax4がそろうように光ファイバF2のみを回転させてもよく、演算したslow軸ax4の角度にslow軸ax3が一致するように光ファイバF1のみを回転させてもよい。
【0081】
本発明においては、制御部16は、slow軸ax4と第2光軸ax2を揃えるために、ステップS108で光ファイバF2を調心した後、さらに微調心の処理を行うようにしてもよい。また、制御部16は、slow軸ax3と第1光軸ax1を揃えるために、ステップS116で光ファイバF1についてさらに微調心の処理を行うようにしてもよい。
【0082】
具体的には、制御部16は、ステップS108の後、ステップS108の粗調心の位置を中心に所定の範囲内で、A方向とB方向へステップS107の回転角度より小さい角度(例えば0.5°~2°)で光ファイバF2を複数回回転させる。この際、制御部16は、回転させる毎に光ファイバF2を撮影し、回転角度と、輝度プロファイルpf2の輝度値の総和とを対応付けて記憶する。制御部16は、輝度値が最大となったときの角度に光ファイバF2を回転させる。また、制御部16は、ステップS116において、180°-(取得した累積回転角度θ2)で矢印B方向へ光ファイバF1を回転させた後、回転後の位置を中心に所定の範囲内で、A方向とB方向へステップS115の回転角度より小さい角度(例えば0.5°~2°)で光ファイバF1を複数回回転させる。この際、制御部16は、回転させる毎に光ファイバF1を撮影し、回転角度と、輝度プロファイルpf1の輝度値の総和とを対応付けて記憶する。制御部16は、輝度値が最大となったときの角度に光ファイバF1を回転させる。この変形例によれば、前述の実施形態の構成と比較すると、輝度値が最大となる角度を精度よく取得することが可能となり、融着接続の対象とする一対のN回回転対称光ファイバ間で径方向の断面構造をより揃えることができる。
【0083】
上述した実施形態においては、ステップS106で累積回転角度θ1が180°以上であるか判断し、ステップS114で累積回転角度θ1が180°以上であるか判断しているが、判断の値は180°に限定されるものではない。例えば、制御部16は、光ファイバF1、F2の種別に応じて判断の値を変更し、ステップS106で累積回転角度θ1が360°以上であるか判断し、ステップS114で累積回転角度θ1が360°以上であるか判断する構成としてもよい。また、この判断の値は、ファイバの種別に応じて180°未満の値や、180°~360°の間の値であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 融着接続機
2a、2b ホルダ
3a、3b 可動ステージ
4a、4b 光ファイバクランプ
5a、5b 放電部
6 放電制御部
7a 第1撮像部
7b 第2撮像部
9a、9b 搬送駆動部
10 第1径方向駆動部
11 第2径方向駆動部
12a、12b 回転駆動部
13a 第1フォーカス駆動部
13b 第2フォーカス駆動部
14 タッチパネル
16 制御部
19 調整空間領域
161 画像処理部
162 駆動制御部
ax1 第1光軸
ax2 第2光軸
F1、F2 光ファイバ
F1a、F2a コア部
F1b、F2b クラッド部
F1c、F1d、F2c、F2d 応力付与部
P1 第1方向画像
P2 第2方向画像
pf1、pf2 輝度プロファイル