(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】ポスト端子接続構造
(51)【国際特許分類】
H01M 50/543 20210101AFI20240708BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20240708BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
H01M50/543
H01M50/569
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2020187699
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】本椙 憲仁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】東海 啓之
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 純
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-161292(JP,A)
【文献】特開2020-173917(JP,A)
【文献】特開平11-026054(JP,A)
【文献】特開2011-113669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー状態検知装置のポスト接続端子と、前記ポスト接続端子をバッテリーポストに取り付けるための取付構造と、を備えるポスト端子接続構造であって、
前記ポスト接続端子には、前記バッテリーポストに接続される環状の把持部、及び、前記把持部を締め付けるための締付部が形成され
ており、
前記取付構造は、
ベース部材と、
ネジ構造により前記ベース部材に連結されるとともに前記締付部に接触するホルダと、
を備え、
前記締付部には、前記ネジ構造の軸方向に対して傾斜した第1締付面及び第2締付面が形成されており、
前記ホルダには、前記第1締付面に接触する第1ホルダ面と、前記第2締付面に接触する第2ホルダ面と、が形成されており、
前記第1締付面と前記第2締付面が互いに近づく方向に押圧されていることにより前記把持部が締め付けられており、
前記第1締付面と前記第1ホルダ面が接触している部分を第1接触面とし、前記第2締付面と前記第2ホルダ面が接触している部分を第2接触面としたときに、
前記把持部の軸と前記ネジ構造の軸の両方を通る仮想面を基準として前記第1接触面と前記第2接触面が非対称であることを特徴とする
ポスト端子接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の
ポスト端子接続構造であって、
前記ネジ構造はネジ軸とナットとを含んでおり、
前記ナットは前記ネジ軸に挿入されるとともに、前記ナットが前記ホルダに接触しており、
前記ナットが前記ホルダを押圧するために当該ナットを回転させる方向を締付方向と称し、
前記第1締付面から前記第2締付面へ前記把持部を前記締付方向に沿うようにして、前記第1締付面、前記把持部、及び前記第2締付面が接続されており、
前記ネジ構造の軸方向の位置において、前記第1接触面は、前記第2接触面よりも前記ナットに近い部分を含むことを特徴とする
ポスト端子接続構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の
ポスト端子接続構造であって、
前記第1締付面と前記第1ホルダ面は、前記ネジ構造の軸方向の一端において接触しており、
前記第2締付面と前記第2ホルダ面は、前記ネジ構造の軸方向の一端において非接触であることを特徴とする
ポスト端子接続構造。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の
ポスト端子接続構造であって、
前記ホルダには、前記締付部に接触する一対のホルダ面が複数組形成されており、最も把持部に近い組のホルダ面が前記第1ホルダ面と前記第2ホルダ面に相当することを特徴とする
ポスト端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ポスト端子接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バッテリーポスト端子をバッテリーポストに固定する構造を開示する。具体的には、バッテリーポスト端子は、バッテリーポストを把持する把持部と、把持部を締め付ける締付部と、を備える。締付部には、ネジ部が形成されたベース部材が差し込まれている。ベース部材にホルダを差し込んでベース部材にナットを入れて締め付けることで、ホルダが締付部を押圧して把持部がバッテリーポストを把持する。
【0003】
特許文献2は、特許文献1と同様の把持部及び締付部を備え、締付部に直接的にボルト及びナットを取り付けることにより、把持部が締め付けられてバッテリーポストが保持される。この把持部には、上側縁部を下側縁部に近づくように傾斜させた傾斜エッジ部が形成されている。傾斜エッジ部を形成することにより、把持部からバッテリーポストを抜けにくくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-142993号公報
【文献】特開2011-113669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリーポストからバッテリーポスト端子を抜けにくくする技術は多数存在し、バッテリーポスト端子の構成や要求される仕様に応じて選択される。従って、特許文献2以外の構成で、バッテリーポストからバッテリーポスト端子を抜けにくくする技術も求められる。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ホルダを用いて把持部を締め付けるタイプのポスト端子接続構造において、バッテリーポストからバッテリーポスト端子を抜けにくくする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成のポスト端子接続構造が提供される。即ち、ポスト端子接続構造は、バッテリー状態検知装置のポスト接続端子と、前記ポスト接続端子をバッテリーポストに取り付けるための取付構造と、を備える。前記ポスト接続端子には、前記バッテリーポストに接続される環状の把持部、及び、前記把持部を締め付けるための締付部が形成されている。前記取付構造は、ベース部材と、ホルダと、を備える。前記ホルダは、ネジ構造により前記ベース部材に連結されるとともに前記締付部に接触する。前記締付部には、前記ネジ構造の軸方向に対して傾斜した第1締付面及び第2締付面が形成されている。前記ホルダには、前記第1締付面に接触する第1ホルダ面と、前記第2締付面に接触する第2ホルダ面と、が形成されている。前記第1締付面と前記第2締付面が互いに近づく方向に押圧されていることにより前記把持部が締め付けられている。前記第1締付面と前記第1ホルダ面が接触している部分を第1接触面とし、前記第2締付面と前記第2ホルダ面が接触している部分を第2接触面としたときに、前記把持部の軸と前記ネジ構造の軸の両方を通る仮想面を基準として前記第1接触面と前記第2接触面が非対称である。
【0009】
これにより、第1接触面と第2接触面とが非対称となるので、把持部とバッテリーポストの接触箇所が螺旋状になる(即ち、接触箇所は円周方向だけでなく軸方向の位置も変化する)。従って、接触箇所の長さを長くすることができる。従って、接触面積が大きくなるので、把持部によるバッテリーポストの保持力を高くすることができる。
【0010】
前記のポスト端子接続構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ネジ構造はネジ軸とナットとを含んでいる。前記ナットは前記ネジ軸に挿入されるとともに、前記ナットが前記ホルダに接触している。前記ナットが前記ホルダを押圧するために当該ナットを回転させる方向を締付方向と称する。前記第1締付面から前記第2締付面へ前記把持部を前記締付方向に沿うようにして、前記第1締付面、前記把持部、及び前記第2締付面が接続されている。前記ネジ構造の軸方向の位置において、前記第1接触面は、前記第2接触面よりも前記ナットに近い部分を含む。
【0011】
これにより、バッテリーポストへの取付後にナットの締付けによる回転トルクが掛かった際に、バッテリーポストの基端側(下側)に力が掛かるので、ポスト接続端子が抜けにくくなる。
【0012】
前記のポスト端子接続構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1締付面と前記第1ホルダ面は、前記ネジ構造の軸方向の一端において接触している。前記第2締付面と前記第2ホルダ面は、前記ネジ構造の軸方向の一端において非接触である。
【0013】
これにより、把持部とバッテリーポストの接触箇所がより一層螺旋状になり易くなるので、接触箇所の長さをより確実に長くすることができる。
【0014】
前記のポスト端子接続構造においては、前記ホルダには、前記締付部に接触する一対のホルダ面が複数組形成されており、最も把持部に近い組のホルダ面が前記第1ホルダ面と前記第2ホルダ面に相当することが好ましい。
【0015】
これにより、把持部の締付けに最も寄与するホルダ面において、第1接触面と第2接触面が非対称となるので、把持部の保持力を一層高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバッテリー状態検知装置の斜視図。
【
図2】ポスト接続端子、ホルダ、ネジ軸、及びナットの分解斜視図。
【
図3】ポスト接続端子、ホルダ、ネジ軸、及びナットを組み付けた状態を示す斜視図。
【
図4】比較例の第1接触面及び第2接触面を概念的に示す断面図。
【
図5】比較例におけるバッテリーポストと把持部の接触箇所を示す斜視図及び展開図。
【
図6】本実施形態の第1接触面及び第2接触面を概念的に示す断面図。
【
図7】本実施形態におけるバッテリーポストと把持部の接触箇所を示す斜視図及び展開図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、バッテリー状態検知装置1の概要について説明する。
図1は、バッテリー状態検知装置1の斜視図である。
【0018】
バッテリー状態検知装置1は、例えば、自動車等に搭載されたバッテリーのバッテリーポストに取り付けられる。バッテリー状態検知装置1は、バッテリーポストを流れる電流の大きさ等を検出することにより、バッテリーの状態を検知する。バッテリー状態検知装置1は、電流の検出結果を、図示しない外部装置に出力する。出力先の外部装置としては、例えば、自動車のエンジンを制御するエンジンコントロールユニット(ECU)を挙げることができる。
【0019】
図1に示すように、バッテリー状態検知装置1は、ポスト接続端子2と、ハーネス接続端子3と、コネクタ4と、ケーシング5と、シャント抵抗6と、回路基板7と、を主要な構成として備える。
【0020】
ポスト接続端子2は、図示しないバッテリーのバッテリーポストに接続される。ポスト接続端子2は、金属板をプレス、折曲げ加工、又は鍛造加工することにより形成されている。ポスト接続端子2の詳細な構造は後述する。
【0021】
ハーネス接続端子3は、導電性を有するボルト(例えば、スタッドボルト)から構成されている。ハーネス接続端子3は、図略のハーネスに電気的に接続される。ハーネス接続端子3は、その軸方向を上下方向に向けて配置され、下側でシャント抵抗6に取り付けられる。また、ハーネス接続端子3は、上側でハーネスと接続される。
【0022】
コネクタ4は、バッテリー状態検知装置1の検知結果をECU等へ出力するためのインタフェースとして構成されている。コネクタ4の内部には、回路基板7と接続された出力端子が設けられている。
【0023】
ケーシング5は、細長い略直方体状に形成された部材である。ケーシング5は、例えば合成樹脂から構成される。ケーシング5には、回路基板7等が設けられる。本実施形態では、ケーシング5は、下側が開放された中空状に形成されている。そして、ケーシング5の内部に、シャント抵抗6の一部及び回路基板7等が収容されている。シャント抵抗6には、ケーシング5からポスト接続端子2側へ突出する突出部6aが備えられている。突出部6aは、ポスト接続端子2と接続されている。
【0024】
シャント抵抗6は、2つの導体と、抵抗値が既知である抵抗体と、から構成されている。シャント抵抗6の2つの導体のそれぞれには、基板接続端子が設けられている。これらの基板接続端子を介して、シャント抵抗6は、回路基板7に対して機械的及び電気的に接続される。
【0025】
回路基板7は、ケーシング5の内部においてシャント抵抗6の下方に配置されている。回路基板7には、電子回路が実装されている。この電子回路により、前記の基板接続端子を介してシャント抵抗6の2つの導体の電位差を測定することができる。測定された電位差の情報は、シャント抵抗6の抵抗体に流れる電流の大きさ等を取得するために用いられる。
【0026】
回路基板7は、コネクタ4の内部に備えられた出力端子に接続されている。回路基板7は、シャント抵抗6に発生する電位差に基づいて、抵抗体における電流の大きさを計算する。回路基板7は、電位差及び電流の大きさ等に基づいて、バッテリーの状態を検知する。回路基板7は、得られた検知結果を、コネクタ4の出力端子を介してECU等へ出力する。
【0027】
次に、
図2及び
図3を参照して、ポスト接続端子2の構造及びポスト接続端子2をバッテリーポストに取り付けるための構造について説明する。
図2は、ポスト接続端子2、ホルダ50、ベース部材30、ネジ軸40、及びナット60の分解斜視図である。
図3は、それらを組み付けた状態の斜視図である。また、以下では、ネジ軸40の軸方向を単に軸方向と称することがある。
【0028】
ポスト接続端子2は、接触部11と、把持部12と、締付部13と、を備える。
【0029】
接触部11は、
図1に示すように、把持部12の外周面下端部から把持部12と離れる向きに延びるように設けられている。接触部11は、シャント抵抗6(突出部6a)に電気的及び機械的に接続されている。
【0030】
把持部12は、環状に形成されている。詳細には、把持部12は、環状の一部が途切れた形状(言い換えれば、円弧状)に形成されており、その内側にバッテリーポストを差し込むことができるように構成されている。また、把持部12の内壁にはバッテリーポストからポスト接続端子2を外れにくくするための溝が形成されている。把持部12の軸方向(環状の把持部12の中心を通る線の方向)は、バッテリーポストの軸方向と一致し、ネジ軸の軸方向と平行である。また、本実施形態の把持部12は軸方向の何れの位置においても径が同じであるが、軸方向の位置に応じて径が変化する形状(例えば円錐台状)であってもよい。
【0031】
締付部13は、円弧状の把持部12の両端(即ち、環状が途切れている部分)から延びるように配置され、把持部12と一体的に形成されている。締付部13は枠状に構成されており、枠で覆われる空間を小さくするように締付部13を変形させることで、把持部12の内径が減少する。これにより、ポスト接続端子2がバッテリーポストを締め付ける結果、ポスト接続端子2をバッテリーポストに取り付けることができる。
【0032】
締付部13には、第1締付面21、第2締付面22、第3締付面23、第4締付面24、ネジ軸挿入部25、及び閉鎖部26が形成されている。
【0033】
第1締付面21及び第2締付面22は、把持部12の端部と繋がる位置に形成されている。上述したように把持部12は環状の一部が途切れた形状であるため、2つの端部を有している。把持部12の一方側の端部に第1締付面21が接続されており、その反対側の端部に第2締付面22が接続されている。第1締付面21及び第2締付面22は対向するように位置している。第1締付面21及び第2締付面22は、軸方向に対して傾斜する面である。詳細には、第1締付面21及び第2締付面22は、軸方向に沿ってベース部材30に近づくにつれて(バッテリーポストの基端に近づくにつれて)、第1締付面21と第2締付面22の間隔が広くなる向きに傾斜している。
【0034】
第3締付面23及び第4締付面24は、ネジ軸挿入部25を挟んで把持部12の反対側に位置している。言い換えれば、2組の締付面のうち、第1締付面21及び第2締付面22が把持部12に近い側であり(最も近い側であり)、第3締付面23及び第4締付面24が把持部12から遠い側である。第3締付面23及び第4締付面24は、位置以外は第1締付面21及び第2締付面22と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0035】
また、
図3に示すように、ネジ軸40の軸方向を軸101とし、把持部12の軸方向を軸102としたときにおいて、軸101及び軸102の両方を通る面を仮想面103とする。第1締付面21及び第2締付面22は仮想面103を基準面として対称である。第3締付面23及び第4締付面24は、仮想面103を基準として対称である。
【0036】
ネジ軸挿入部25は、第1締付面21と第3締付面23を接続する第1部分25aと、第2締付面22と第4締付面24を接続する第2部分25bと、を有する。第1部分25a及び第2部分25bは対向して配置されており、その間隔は、第1締付面21と第2締付面22の間隔よりも大きい。第1部分25aと第2部分25bの間には、ネジ軸40が挿入される。また、第1部分25aは第1締付面21と同じ向きに傾斜する傾斜面を有し、第2部分25bは第2締付面22と同じ向きに傾斜する傾斜面を有する。ただし、ネジ軸挿入部25はネジ軸40を挿入可能であれば異なる形状であってもよい。
【0037】
閉鎖部26は、第4締付面24から略垂直に折れ曲がって、他方の第3締付面23に向かって延びており、締付部13で覆われている空間を閉鎖するように配置されている。
【0038】
ベース部材30は、締付部13に対して、バッテリーポストの根元側に位置している。ベース部材30は、ホルダ50を取り付けるための台座(土台)としての機能を有する。本実施形態のベース部材30は平板状であるが、異なる形状であってもよい。ベース部材30には、ネジ軸40が取り付けられている。ネジ軸40は、ベース部材30から垂直に立ち上がるように配置されている。ネジ軸40はスタッドボルトであってもよいし、頭部付きのボルトであってもよい。
【0039】
ホルダ50は、締付部13を挟んでベース部材30の反対側に配置されている。ホルダ50は、ネジ構造(詳細にはネジ軸40及びナット60)によりベース部材30に取り付けられる。また、ホルダ50がベース部材30に取り付けられることで、ホルダ50が締付部13を押圧し、それによって把持部12がバッテリーポストを締め付ける。これにより、把持部12がバッテリーポストを保持することとなる。
【0040】
以下、ホルダ50の構成及びホルダ50が締付部13に及ぼす作用について説明する。ホルダ50は、本体部50aを備える。本体部50aは、平板状の部分として形成され、その厚み方向が軸方向と平行となるように配置されている。本体部50aには、4つの脚部(具体的には、第1脚部51、第2脚部52、第3脚部53、及び第4脚部54)が接続されている。本体部50aは4つの脚部が接続される構成であれば、平板状以外の形状であってもよい。また、本体部50aは細長い矩形状に形成されている。本体部50aの中央には、ネジ軸40を差し込むことが可能な貫通状の円形孔55が形成されている。
【0041】
4つの脚部は、本体部50aからベース部材30側(バッテリーポストの基端側)に延出するように形成されている。また、第1脚部51には第1ホルダ面51aが形成されており、第2脚部52には第2ホルダ面52aが形成されており、第3脚部53には第3ホルダ面53aが形成されており、第4脚部54には第4ホルダ面54aが形成されている。
【0042】
第1ホルダ面51aと第2ホルダ面52aは対向するように配置されている。第1ホルダ面51aは軸方向に対して傾斜している(詳細には第1締付面21と同じ向きに傾斜している)。一方、第2ホルダ面52aは、軸方向に平行な部分である垂直面と、軸方向に対して傾斜している部分である傾斜面(詳細には第2締付面22と同じ向きに傾斜している面)と、を含んでいる。言い換えれば、第1ホルダ面51aと第2ホルダ面52aは、仮想面103を基準面として非対称である。ホルダ50をベース部材30に取り付けることにより、第1ホルダ面51aが第1締付面21に接触し、第2ホルダ面52aが第2締付面22に接触する。
【0043】
第3ホルダ面53aと第4ホルダ面54aは対向するように配置されている。第3ホルダ面53aは軸方向に対して傾斜している(詳細には第3締付面23と同じ向きに傾斜している)。第4ホルダ面54aは軸方向に対して傾斜している(詳細には第4締付面24と同じ向きに傾斜している)。第3ホルダ面53aと第4ホルダ面54aは、仮想面103を基準面として対称である。ホルダ50をベース部材30に取り付けることにより、第3ホルダ面53aが第3締付面23に接触し、第4ホルダ面54aが第4締付面24に接触する。なお、第4ホルダ面54aを第2ホルダ面52aと同じ形状としてもよい(つまり、第3ホルダ面53aと第4ホルダ面54aが非対称であってもよい)。
【0044】
2組のホルダ面のうち、第1ホルダ面51a及び第2ホルダ面52aが把持部12に近い側であり(最も近い側であり)、第3ホルダ面53a及び第4ホルダ面54aが把持部12から遠い側である。
【0045】
ホルダ50の円形孔55にネジ軸40を挿入した後に、ネジ軸40にナット60を取り付けて締め付けることにより、ナット60がホルダ50を軸方向にベース部材30に近づく方向に押圧する。これにより、第1ホルダ面51a及び第2ホルダ面52aは、第1締付面21及び第2締付面22の距離が近くなるように、これらの面を押圧する。第3ホルダ面53a及び第4ホルダ面54aは、第3締付面23及び第4締付面24の距離が近くなるように、これらの面を押圧する。これらの結果(特に第1締付面21と第2締付面22の距離が近くなることが寄与して)、把持部12の径が小さくなるため、把持部12が締め付けられてバッテリーポストが保持される。
【0046】
次に、
図4から
図7を参照して、ホルダ50(特に第1脚部51及び第2脚部52)から締付部13に作用する力について詳細に説明する。また、
図4及び
図6は、第1締付面21及び第2締付面22を含むようにそれらを垂直に切った断面図である。言い換えれば、第1締付面21の法線及び第2締付面22の法線を含む平面で切った断面図である。更に言い換えれば、第1ホルダ面51aの法線及び第2ホルダ面52aの法線を含む平面で切った断面図である。以下の説明では、
図4及び
図6に示すように、第1締付面21と第1ホルダ面51aが接触している部分を第1接触面と称し、第2締付面22と第2ホルダ面52aが接触している部分を第2接触面と称する。
【0047】
図4には、第1締付面21と第2締付面22が仮想面103を基準面として対称であり、かつ、第1ホルダ面51aと第2ホルダ面52aが仮想面103を基準面として対称である形状の比較例が示されている。
図4に示すように、この比較例では、第1接触面と第2接触面は仮想面103を基準面として対称となる。比較例では、ホルダ50が締付部13を押圧する力は、軸方向において均等である。その結果、把持部12は軸方向において均等に締め付けられることとなる。
【0048】
これにより、
図5に示すように、把持部12とバッテリーポストの接触箇所も軸方向の位置が変化しない構成となる。なお、把持部12とバッテリーポストの接触箇所は、軸方向の一側又は他側に寄ることもある。ただし、把持部12とバッテリーポストの接触箇所の軸方向の位置は変化しない。
【0049】
これに対し、
図6に示すように、本実施形態では、第2ホルダ面52aが軸方向に平行な垂直面と、軸方向に対して傾斜する傾斜面と、を有する。傾斜面は垂直面よりもベース部材30に近い。そして、第2締付面22は、垂直面とは接触せずに傾斜面と接触する。以上により、本実施形態では第1接触面と第2接触面は仮想面103を基準面として非対称となる。別の観点で言い表すと、軸方向においてベース部材30から遠い側の端部(ナット60に近い側の端部、
図6の上端)において第1締付面21と第1ホルダ面51aが接触している一方で、この端部において、第2締付面22と第2ホルダ面52aは接触していない。
【0050】
これにより、
図7に示すように、把持部12とバッテリーポストの接触箇所は、把持部12の内壁を辿るにつれて軸方向の位置が変化する。言い換えれば、把持部12とバッテリーポストの接触箇所の位置が把持部12の内壁に沿って螺旋状に変化する。従って、比較例と比較して、把持部12とバッテリーポストの接触面積が大きくなる。これにより、把持部12がバッテリーポストを保持する力を強くすることができる。比較例と比較して本実施形態の方が保持力が強くなることは、出願人が行った実験によっても示されている。
【0051】
更に、本実施形態では、
図7に示すように、ナット60の締付方向に沿って把持部12の内壁を辿った際に、接触箇所が下方(ベース部材30やバッテリー)に近くなるように、当該接触箇所が変化している。構成の観点から説明すると、第1締付面21は把持部12を介して第2締付面22に接続されており、更に詳細には第1締付面21は、把持部12を締付方向に沿うように第2締付面22に接続される。言い換えれば、第1締付面21を起点として把持部12を締付方向に沿って辿ることで第2締付面22に到達する。また、軸方向の位置において、第1接触面は、第2接触面よりもナット60に近い部分を含んでいる。その結果、締付けのトルクが把持部12に掛かった場合において、その力が、下側(バッテリーポストの基端側)に作用し易くなるので、バッテリーポストから把持部12が抜けにくくなる。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態のバッテリー状態検知装置1は、ポスト接続端子2と、ベース部材30と、ホルダ50と、を備える。ポスト接続端子2には、バッテリーポストに接続される環状の把持部12、及び、把持部12を締め付けるための締付部13が形成される。ホルダ50は、ネジ構造によりベース部材30に連結されるとともに締付部13に接触する。締付部13には、ネジ構造の軸方向に対して傾斜した第1締付面21及び第2締付面22が形成されている。ホルダ50には、第1締付面21に接触する第1ホルダ面51aと、第2締付面22に接触する第2ホルダ面52aと、が形成されている。第1締付面21と第2締付面22が互いに近づく方向に押圧されていることにより把持部12が締め付けられている。第1締付面21と第1ホルダ面51aが接触している部分を第1接触面とし、第2締付面22と第2ホルダ面52aが接触している部分を第2接触面としたときに、把持部12の軸とネジ構造の軸の両方を通る仮想面103を基準として第1接触面と第2接触面が非対称である。
【0053】
これにより、第1接触面と第2接触面とが非対称となるので、把持部12とバッテリーポストの接触箇所が螺旋状になる(即ち、接触箇所は円周方向だけでなく軸方向の位置も変化する)。従って、接触箇所の長さを長くすることができる。従って、接触面積が大きくなるので、把持部12によるバッテリーポストの保持力を高くすることができる。
【0054】
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置1において、ネジ構造はネジ軸40とナット60とを含んでいる。ナット60はネジ軸40に挿入されるとともに、ナット60がホルダ50に接触している。ナット60がホルダ50を押圧するために当該ナット60を回転させる方向を締付方向と称する。第1締付面21から第2締付面22へ把持部12を締付方向に沿うようにして、第1締付面21、把持部12、及び第2締付面22が接続されている。ネジ構造の軸方向の位置において、第1接触面は、第2接触面よりもナット60に近い部分を含む。
【0055】
これにより、バッテリーポストへの取付後にナット60の締付けによる回転トルクが掛かった際に、バッテリーポストの基端側(下側)に力が掛かるので、ポスト接続端子2が抜けにくくなる。
【0056】
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置1において、第1締付面21と第1ホルダ面51aは、ネジ構造の軸方向の一端において接触している。第2締付面22と第2ホルダ面52aは、ネジ構造の軸方向の一端において非接触である。
【0057】
これにより、把持部12とバッテリーポストの接触箇所がより一層螺旋状になり易くなるので、接触箇所の長さをより確実に長くすることができる。
【0058】
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置1において、ホルダ50には、締付部13に接触する一対のホルダ面が複数組形成されており、最も把持部12に近い組のホルダ面が第1ホルダ面51aと第2ホルダ面52aである。
【0059】
これにより、把持部12の締付けに最も寄与するホルダ面において、第1接触面と第2接触面が非対称となるので、把持部12の保持力を一層高くすることができる。
【0060】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0061】
上記実施形態では、把持部12とバッテリーポストの接触箇所は、締付方向に沿って辿った場合に下側(バッテリーポストの基端側)に近づくように変化するが、その反対側(上側)に近づくように変化する構成であってもよい。
【0062】
上記実施形態では、第1締付面21の略全体が第1ホルダ面51aと接触する構成であるが、第1締付面21の一部のみ(特にナット60に近い側の端部のみ)が第1ホルダ面51aと接触する構成であってもよい。言い換えれば、第1接触面がナット60に近い側の端部に位置し、第2接触面がベース部材30に近い側の端部に位置していてもよい。
【0063】
上記実施形態では、第1締付面21と第2締付面22が対称であり、第1ホルダ面51aと第2ホルダ面52aが非対称である結果、第1接触面と第2接触面が非対称となっている。これに代えて、上記実施形態では、第1締付面21と第2締付面22が非対称であり、第1ホルダ面51aと第2ホルダ面52aが対称であってもよい。また、上記実施形態では、第1締付面21と第2締付面22が非対称であり、更に、第1ホルダ面51aと第2ホルダ面52aが非対称であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 バッテリー状態検知装置
2 ポスト接続端子
12 把持部
13 締付部
21 第1締付面
22 第2締付面
23 第3締付面
24 第4締付面
30 ベース部材
40 ネジ軸
50 ホルダ
51 第1脚部
51a 第1ホルダ面
52 第2脚部
52a 第2ホルダ面
53 第3脚部
53a 第3ホルダ面
54 第4脚部
54a 第4ホルダ面
60 ナット