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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
G02B6/44 366
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020215759
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101280
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】安冨 徹也
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009922(JP,A)
【文献】特開昭61-294716(JP,A)
【文献】特開2001-051168(JP,A)
【文献】特開平08-262295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線からなる光ファイバケーブルであって、
複数の前記光ファイバ心線が撚り合わせられて光ファイバユニットが構成され、複数の前記光ファイバユニットが複数層に撚り合わせられ、
室温において各層における前記光ファイバユニットの撚り込み率が、各層における前記光ファイバユニットの撚りピッチと層心径から計算される基準撚り込み率よりも大きく、
各層における前記光ファイバユニットの撚り込み率と、各層における基準撚り込み率との差が、外層から内層に行くにつれて大きくなることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
最内層の前記光ファイバユニットの撚り込み率と、最内層の基準撚り込み率の差が0.04%以上であることを特徴とする請求項記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
最外層の前記光ファイバユニットの撚り込み率と、最外層の基準撚り込み率の差が0.015%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高温時の伝送損失増加を抑制可能な光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及に伴い、光ファイバを一般家庭に直接引き込んで高速通信サービスを実現するFTTH(Fiber To The Home)が急速に拡大している。一般に、FTTHに用いられる光ファイバケーブルには、大容量のデータ通信に対応すべく光ファイバの集合体が収容されている。
【0003】
このような光ファイバケーブルとしては、間欠テープ心線を撚って光ファイバユニットを構成し、その光ファイバユニットをさらに撚ってケーブルコアとして、テンションメンバを埋め込んだ外被を被せるケーブルがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-109400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、一般的な光ファイバケーブルでは、光ファイバ心線同士を撚り合わせて光ファイバユニットを構成し、複数の光ファイバユニットが揃えられて、内側から外側に向けて層を形成しながら同心円状に撚り合わせられる。さらに、最外層の光ファイバユニットの外側には押さえ巻きが巻きつけられ、その外周に外被が押し出される。
【0006】
このような光ファイバケーブルが屋外環境に敷設されると、光ファイバケーブルの構成材の線膨張により、高温時には光ファイバケーブルは伸ばされ、低温時では光ファイバケーブルは収縮する。この際、一般にはポリエチレン等のプラスチックからなる外被と、鋼線やFRPからなるテンションメンバとの複合体である外被部の方が、ガラスと紫外線硬化樹脂からなる光ファイバよりも線膨張係数が大きい。このため、温度変化での伸縮が外被部と光ファイバとで異なり、高温環境下では光ファイバが引張歪みを受け、低温環境下では光ファイバが圧縮歪みを受ける。
【0007】
図5は、複数の光ファイバユニット100が撚り合わせられた状態を示す概念図である。図示した例では、光ファイバユニット100が撚り合わせピッチpで撚り合わせられた状態を示す。また、図6(a)は、撚り合わせられた光ファイバユニットを展開した状態を示す図である。図示したように、光ファイバユニットの層心径(断面における、その光ファイバユニットが巻き付けられる層の中心径)をdとすると、1ピッチの光ファイバユニットの長さはlで表される。この際、ピッチpに対して、光ファイバユニットの長さlがどれくらい長いかを、撚り込み率と定義する。すなわち、撚り込み率(%)=((l/p)-1)×100と定義される。
【0008】
このような状態の光ファイバユニットを有する光ファイバケーブルを低温環境下に配置すると、前述したように外被部が収縮する。図6(b)は、外被部が収縮し、ピッチがpからpに変化した状態を示す展開図である。この場合、光ファイバユニット(内部の光ファイバ)が圧縮されるが、光ファイバがうねるように曲がることで圧縮歪が開放される。この際、外被の内部の空間が狭いと、光ファイバが均一に曲がることができず、局所的に小さい曲げ径で光ファイバが曲げられ、マクロベンドロス増の要因となる。これに対し、外被の内側に、ある一定の空隙を確保することで、低温時の伝送損失の増加を少なくすることができる。
【0009】
一方で、光ファイバケーブルを高温環境下に配置すると、前述したように外被部が膨張する。図7(a)は、外被部が膨張し、ピッチがpからpに変化した状態を示す展開図である。この場合、光ファイバユニット(内部の光ファイバ)が引っ張られる。この場合、図7(b)に示すように、光ファイバユニットの層心径が小さくなることで(すなわち、層心径dからdに巻き締まることで)、光ファイバの引張歪が開放される。しかし、層心径が大きく変化すると、隣の光ファイバやバンドルテープから側圧を受け、マイクロベンドロス増を引き起こすおそれがある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、特に高温時における伝送損失の増加を抑制することが可能な光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達するために本発明は、複数の光ファイバ心線からなる光ファイバケーブルであって、複数の前記光ファイバ心線が撚り合わせられて光ファイバユニットが構成され、複数の前記光ファイバユニットが複数層に撚り合わせられ、室温において各層における前記光ファイバユニットの撚り込み率が、各層における前記光ファイバユニットの撚りピッチと層心径から計算される基準撚り込み率よりも大きく、各層における前記光ファイバユニットの撚り込み率と、各層における基準撚り込み率との差が、外層から内層に行くにつれて大きくなることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0013】
最内層の前記光ファイバユニットの撚り込み率と、最内層の基準撚り込み率の差が0.04%以上であることが望ましい。
【0014】
最外層の前記光ファイバユニットの撚り込み率と、最外層の基準撚り込み率の差が0.015%以下であることが望ましい。
【0015】
本発明によれば、予め、各層における光ファイバユニットの撚りピッチと層心径から計算される基準撚り込み率よりも、実際の光ファイバユニットの撚り込み率を大きくしておくことで、高温時においても、光ファイバユニットの撚りピッチの増加に追従させることができる。このため、光ファイバユニットの引張歪や、巻き締まりによる側圧等の増加に伴う損失増加を抑制することができる。
【0016】
また、光ファイバユニットの撚り込み率と、各層における基準撚り込み率との差を、外層から内層に行くにつれて大きくすることで、より厳しい条件である内層側の光ファイバユニットの損失増加に対して効果的である。
【0017】
特に、最内層の光ファイバユニットの撚り込み率と、最内層の基準撚り込み率の差を0.04%以上とすることで、より確実に損失増加を抑制することができる。
【0018】
また、最外周は外被で押さえられるため、最外周の撚り込み率を大きくすると、外被からの側圧によって伝送損失の増加の恐れがあるが、最外層の光ファイバユニットの撚り込み率と、最外層の基準撚り込み率の差を0.015%以下とすることで、その影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特に高温時における伝送損失の増加を抑制することが可能な光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】光ファイバケーブル1の断面図。
図2】光ファイバケーブル1の断面図であり、各部寸法を示す図。
図3】(a)は、光ファイバユニット5の撚り合わせ状態を示す図、(b)は、光ファイバユニットの展開図。
図4】750mmピッチの場合における、層心径と理想状態の撚り込み率(基準撚り込み率)の関係を示す図。
図5】光ファイバユニット100の撚り合わせ状態を示す図。
図6】(a)は、光ファイバユニットの展開図、(b)は、低温時における光ファイバユニットの展開図。
図7】(a)は、高温時における光ファイバユニットの展開図、(b)は、巻き締まった状態の光ファイバユニットの展開図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、光ファイバケーブル1の断面図である。光ファイバケーブル1は、スロットを用いないスロットレス型ケーブルであり、主にテンションメンバ9、外被13、ケーブルコア15等により構成される。
【0022】
ケーブルコア15は、複数の光ファイバユニット5が撚り合わせられて形成される。光ファイバユニット5は、例えば、複数本の光ファイバ心線3が撚り合わせられて形成される。すなわち、光ファイバケーブル1は、複数の光ファイバ心線3からなる。なお、光ファイバ心線3は、例えば、長手方向に対して間欠的に接着された、間欠接着型の光ファイバテープ心線である。
【0023】
ケーブルコア15の外周には、押さえ巻き7が設けられる。押さえ巻き7は、テープ状の部材や不織布等であり、例えば縦添えによってケーブルコア15の外周を一括して覆うように配置される。すなわち、押さえ巻き7の長手方向が光ファイバケーブル1の軸方向と略一致し、押さえ巻き7の幅方向が光ファイバケーブル1の周方向となるようにケーブルコア15の外周に縦添えされる。
【0024】
光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面図において、ケーブルコア15(押さえ巻き7)の両側方にはテンションメンバ9が設けられる。すなわち、一対のテンションメンバ9がケーブルコア15を挟んで対向する位置に設けられる。また、テンションメンバ9の対向方向と略直交する方向に、ケーブルコア15(押さえ巻き7)を挟んで対向するように引き裂き紐11が設けられる。
【0025】
ケーブルコア15の外周には、外被13が設けられる。テンションメンバ9および引き裂き紐11は、外被13に埋設される。すなわち、ケーブルコア15及びテンションメンバ9等を覆うように外被13が設けられる。外被13の外形は略円形である。外被13は、例えばポリオレフィン系の樹脂である。なお、テンションメンバ9、引き裂き紐11及び外被13を合わせて外被部と呼ぶ場合がある。
【0026】
次に、ケーブルコア15について詳細に説明する。前述したように、複数の光ファイバ心線3が撚り合わせられて光ファイバユニット5が構成される。また、複数の光ファイバユニット5が撚り合わせられてケーブルコア15が構成される。この際、複数の光ファイバユニット5は、複数層に撚り合わせられる。
【0027】
図2は、複数層に形成されるケーブルコア15の概念図である。図示した例では、ケーブルコア15は、第1層17a、第2層17b、第3層17c、第4層17dの4層構造である。なお、ケーブルコア15が複数層に形成されれば、ケーブルコア15の層数は特に限定されない。
【0028】
各層において、複数の光ファイバユニット5が撚り合わせられる。この際、各層同士の境界を円形に近似して区切り、区切られた各層の中心線を各層の層心径とする。図示した例では、第1層17aの層心径はD1であり、第2層17bの層心径はD2であり、第3層17cの層心径はD3であり、第4層17dの層心径はD4である。すなわち、各層の層心径は、各層の(外径+内径)/2で算出される(但し、最内層である第1層17aの内径は0とする)。また、各層の厚みは光ファイバユニットの径と略一致する(但し最内層の外径は、光ファイバユニットの径×2と略一致する)。
【0029】
図3(a)は、光ファイバユニット5の撚り合わせ状態を示す図であり、図3(b)は、光ファイバユニット5の展開図である。図示した例において、光ファイバユニット5の撚り合わせピッチをP、層心径をDとする。この際、理想状態においては、1ピッチにおける光ファイバユニット5の長さは、底辺P、高さπDの直角三角形の斜辺の長さLとなる。この際の撚り込み率は、撚り込み率(%)=((L/P)-1)×100=(√(P+π・D)/P-1)×100となる。すなわち、各層ごとに、理想的な撚り込み率が単純に算出される。
【0030】
図4は、一例として、750mmピッチの場合における、層心径と理想状態の撚り込み率の関係を示す図である。ここで、理想状態の撚り込み率とは、撚り合わせピッチと撚り合わせ径(層心径)にばらつきがなく一定あり、全く弛みなどがなく巻き付けられた場合における撚り込み率であり、以下、基準撚り込み率と称する。
【0031】
図4に示すように、例えば層心径4mmの場合の基準撚り込み率は約0.014%であり、層心径3mmの場合の基準撚り込み率は約0.008%であり、層心径2mmの場合の基準撚り込み率は約0.0035%である。ここで、本発明では、ケーブルコアの各層における実際の光ファイバユニット5の撚り込み率が、各層における光ファイバユニットの撚りピッチPと層心径Dから計算される基準撚り込み率よりも大きい。具体的には、図3(b)に示す点線Aのように、直角三角形の斜辺の長さLよりも、光ファイバユニット5の長さを長く設定し、光ファイバユニット5に若干の弛みを形成する。
【0032】
前述したように、高温時に外被部が膨張すると、ピッチPが大きくなるため、光ファイバユニット5には引張力が付与される。また、この引張力を緩和するために、光ファイバユニット5の層心径が小さくなろうとする(図7(a)、図7(b)参照)。
【0033】
これに対し、室温において、予め光ファイバユニット5に弛みを形成して、基準の撚り込み率よりも実際の撚り込み率を大きくしておくことで、高温時に、仮にピッチPが大きくなっても、光ファイバユニット5にかかる引張力の増加を抑制することができる。このため、わずかな層心径の変化でも、引張歪を緩和することができる。
【0034】
ここで、図4に示すように、層心径が4mmの場合には、層心径が1mm変化すると基準撚り込み率が約0.006%下がるが、層心径が3mmの場合には、層心径が1mm変化しても基準撚り込み率は約0.0045%しか下がらない。すなわち、ピッチを一定とすれば、層心径が大きい場合(すなわち、外層側の場合)には、わずかな層心径の変化でも、基準撚り込み率(すなわち、必要な光ファイバユニットの長さ)を低下させられるが、層心径が小さい場合(すなわち、内層側の場合)には、層心径が変化しても基準撚り込み率(すなわち、必要な光ファイバユニットの長さ)の変化量は小さい。
【0035】
言い換えれば、外層側の光ファイバユニットは、層心径を小さくするようにケーブルコア15の中心側に光ファイバユニットがわずかに移動することで引張歪が緩和される。一方、内側の光ファイバユニットは、層心径を小さくするようにケーブルコア15の中心側に光ファイバユニットがわずかに移動しても、引張歪の緩和量が小さい。このため、ケーブルコア15の中心側に光ファイバユニットが大きく移動しなければ引張歪が緩和されない。
【0036】
すなわち、外層側の光ファイバユニットは、実際の撚り込み率と基準撚り込み率との差が小さくても、光ファイバユニットの層心径がわずかに変化することで、引張歪が緩和される。これに対し、内層側の光ファイバユニットは、実際の撚り込み率と基準撚り込み率との差が小さいと、光ファイバユニットの層心径がわずかに変化しただけでは引張歪が緩和されない。このため、内層側の光ファイバユニットは、実際の撚り込み率と基準撚り込み率との差を大きくすることが望まれる。
【0037】
このように、層心径が小さいほど、実際の撚り込み率と基準撚り込み率との差を大きくすることが望ましい。すなわち、各層における光ファイバユニットの撚り込み率と、各層における基準撚り込み率との差が、外層から内層に行くにつれて大きくなるように構成することが望ましい。
【0038】
また、最内層の光ファイバユニットの撚り込み率と、最内層の基準撚り込み率の差が0.04%以上であることが望ましく、さらに好ましくは、最内層の光ファイバユニットの撚り込み率と、最内層の基準撚り込み率の差が0.09%以上である。最内層の光ファイバユニットの撚り込み率と、最内層の基準撚り込み率の差が小さすぎると、損失増加抑制効果が小さい。
【0039】
一方で、実際の撚り込み率と基準撚り込み率との差を大きくすると、光ファイバユニットの基準状態からの弛み量が大きくなる。通常、この弛みは、長手方向の弛みと、隣り合う外層側への弛みで吸収される。しかし、最外層の光ファイバユニットは、外層側が外被13となるため、外被13によって弛みが押さえられるため、特に低温時における損失増大の要因となる。このため、最外層は、実際の撚り込み率と基準撚り込み率との差は小さいことが望ましい。
【0040】
このため、最外層の光ファイバユニットの撚り込み率と、最外層の基準撚り込み率の差が0.015%以下であることが望ましく、さらに好ましくは、最外層の光ファイバユニットの撚り込み率と、最外層の基準撚り込み率の差が0.010%以下である。最外層の光ファイバユニットの撚り込み率と、最外層の基準撚り込み率の差が大きいと、外被による側圧が増加し、伝送損失が増大する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、各層の光ファイバユニット5の撚り込み率を、各層の基準撚り込み率よりも大きくしておくことで、特に高温時における伝送損失の増大を抑制することができる。この際、各層における光ファイバユニットの撚り込み率と、各層における基準撚り込み率との差が、外層から内層に行くにつれて大きくなるように構成することで、各層に適切な弛み量を確保することができる。
【実施例
【0042】
各種の光ファイバケーブルを作成し、高温時及び低温時の伝送損失の増加を確認した。まず、直径200umの光ファイバ12本を間欠的に接着し、12心の間欠テープ心線を作成した。また、得られた間欠テープ心線を12本撚り合わせ、2mm幅のプラスチックテープを巻付けて、144心の光ファイバユニットを構成した。
【0043】
合計48本の144心の光ファイバユニットを内層側から順に、2本-9本-15本-22本の配列となるように、4層で撚り合わせた。なお、各層の光ファイバユニットの撚りピッチは750mmとした。ここで、光ファイバユニットを撚り合わせる際に、各光ファイバユニットのサプライ張力のバランスを変えることで各層の撚り込み率を調整した。48本の光ファイバユニットをサプライする部位で、吸水性不織布を縦添えし、フォーミング治具で丸めた上に、ナイロン製の押え糸を巻付け、6912心のケーブルコアを作成した。
【0044】
こうして作成したケーブルコアと、φ2.0mmのガラス繊維強化樹脂を使用したテンションメンバと、外被を切裂く切裂き紐を外被材にて円筒状にシースし光ファイバケーブルを作成した。外被材はLLDPEとした。なお、光ファイバケーブルの外径は29mm、外被の内径は22mmとした。
【0045】
製造されたそれぞれ光ファイバケーブルについて、20mを沿線し、外被を除去して各光ファイバユニットを取り出し、長さを実測してケーブル長20mとの差を実測し、層ごとの平均値を算出した。撚り込み率は、光ファイバユニットの撚りピッチをP、ユニットの層心径をDとした際に、(√(P+π・D)/P-1)×100(%)で算出した。
【0046】
撚り込み率の基準値は、光ファイバユニットの外径を2.85mmとし、1層目の層心径を2.85mm、2層目の層心径を2.85+2.85×2=8.55mm、3層目の層心径を8.55+2.85×2=14.25mm、最外層の層心径を14.25+2.85×2=19.95mmとした。
【0047】
それぞれの光ファイバケーブルの温度特性について測定した。温度特性は、光ファイバケーブルを胴径1800mmのドラムに巻いて、ドラムごと大型の恒温槽にいれ、恒温槽内の温度を変化させ、伝送損失をOTDRにて1550nmの波長で測定し、常温時の測定値との差分を算出した。各光ファイバユニットの撚り込み率と、伝送損失の温度特性の評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1~実施例4は、基準値に対して各層の撚り込み率が大きく、高温時(70℃)及び低温時(-30℃)における最大損失増加を0.15dB/km以下とすることができた。これに対し、略基準値通りで製造した比較例は、高温時(70℃)における最大損失増加が0.15dB/kmを超える結果となった。
【0050】
より詳細には、実施例1~3は、各層における光ファイバユニットの撚り込み率の基準値との差が、外層から内層に行くにつれて大きくなるように構成した。これに対し、実施例4は、基準値と比べて、全体的に約0.05%撚り込み率を上げたものである。実施例4では、高温及び低温での損失増加は0.15dB/km以下に抑えることができたが、低温(-30度)での損失増加は比較例よりも上がり、0.10dB/kmを超えた。
【0051】
実施例3は、最内層から最外層まで0.001~0.046%の勾配をつけて撚り込み率を上げたものである。実施例3は、比較例に対し高温での損失増加は減少したが、0.10dB/kmを下回ることができなかった。しかし、最外層の基準撚り込み率との差が0.001%と、0.01%以下であるため、低温での損失増加は、比較例に対してわずかな上昇にとどまった。
【0052】
実施例2は、最内層の基準撚り込み率との差を0.09%以上とすることで、高温での損失増加を0.10dB/km以下に抑えることができた。最外層の基準撚り込み率の差も0.01%以下であるため、低温での損失増加は、比較例に対してわずかな上昇にとどまった。
【0053】
実施例1は、最内層の基準撚り込み率の差を0.1%以上とすることで、実施例2よりもさらに高温での損失増加を抑制することができた。一方、最外層の基準撚り込み率との差が0.01%を超えているため、実施例2と比較して、低温での損失増加はわずかに上昇したが、最外層の基準撚り込み率との差が0.015%以下であるため、低温での損失増加を0.10dB/km以下に抑えることができた。
【0054】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0055】
1………光ファイバケーブル
3………光ファイバ心線
5………光ファイバユニット
7………押さえ巻き
9………テンションメンバ
11………引き裂き紐
13………外被
15………ケーブルコア
17a………第1層
17b………第2層
17c………第3層
17d………第4層
100………光ファイバユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7