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  • 特許-半導体装置及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20240708BHJP
   H01L 25/04 20230101ALI20240708BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240708BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L23/12 Q
H01L25/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020217444
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102611
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西原 洋一
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004905(JP,A)
【文献】国際公開第2000/014802(WO,A1)
【文献】特開昭56-070655(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0107110(US,A1)
【文献】特開2020-013877(JP,A)
【文献】特開平07-007134(JP,A)
【文献】米国特許第05353498(US,A)
【文献】特開2010-027825(JP,A)
【文献】特開2019-016683(JP,A)
【文献】特開2015-088544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基板と、
前記フィルム基板の一方の面に設けられた接着剤と、
前記接着剤の一方の面に設けられた電子部品と、
前記フィルム基板の他方の面に設けられ、前記フィルム基板に形成されたビアホールを通じて前記電子部品に接続された配線層と、
前記接着剤の一方の面において、前記電子部品の周囲に設けられた補強部材と、
を有し、
前記補強部材の材料は、前記フィルム基板の材料と同じであり、
前記補強部材の厚さは、前記電子部品の厚さよりも小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記補強部材の厚さは前記フィルム基板の厚さ以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記一方の面に垂直な方向からの平面視で、前記補強部材は前記電子部品を取り囲むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記一方の面に前記電子部品が複数設けられており、
前記一方の面に垂直な方向からの平面視で、前記補強部材は複数の前記電子部品を取り囲むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
フィルム基板の一方の面に接着剤が設けられ、前記フィルム基板と前記接着剤を厚さ方向に貫通するビアホールを形成する工程と、
前記接着剤の一方の面に電子部品を設ける工程と、
前記接着剤の一方の面において、前記電子部品の周囲に、厚さが前記電子部品の厚さよりも小さい補強部材を設ける工程と、
前記フィルム基板の他方の面に、前記ビアホールを通じて前記電子部品に接続される配線層を形成する工程と、
を有し、
前記配線層を形成する工程は、
前記電子部品の周囲に前記補強部材の一方の面に接するスペーサを配置する工程と、
前記スペーサを配置する工程の後に、前記フィルム基板の他方の面と、前記ビアホールの側面と、前記電子部品の電極の前記ビアホールから露出した面とにシード層を形成する工程と、
前記シード層の上にめっき層を形成する工程と、
前記めっき層及び前記シード層をエッチングする工程と、
前記めっき層及び前記シード層をエッチングする工程の後に、前記スペーサを取り外す工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム基板の一方の面の上に半導体素子等の電子部品が搭載された半導体装置においては、他方の面の上に配線層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8049338号明細書
【文献】特開2020-155640号公報
【文献】特開2019-114759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の半導体装置では、フィルム基板の厚さが薄いため、電子部品が搭載されていない領域(以下、非搭載領域ということがある)では、非搭載領域の剛性が低く、自重だけでも反りが生じやすい。非搭載領域が反ることで配線に過剰な応力が作用し、配線にクラックが生じるおそれがある。
【0005】
本開示は、このような観点からも、フィルム基板の反りが抑制された半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、フィルム基板と、前記フィルム基板の一方の面に設けられた接着剤と、前記接着剤の一方の面に設けられた電子部品と、前記フィルム基板の他方の面に設けられ、前記フィルム基板に形成されたビアホールを通じて前記電子部品に接続された配線層と、前記接着剤の一方の面において、前記電子部品の周囲に設けられた補強部材と、を有し、前記補強部材の材料は、前記フィルム基板の材料と同じであり、前記補強部材の厚さは、前記電子部品の厚さよりも小さい半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、半導体装置のフィルム基板の反りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る半導体装置を示す図である。
図2】参考例に係る半導体装置を示す断面図である。
図3】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図4】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図5】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図6】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図7】実施形態の変形例に係る半導体装置を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。本開示では、便宜上、フィルム基板の電子部品が搭載される側を一方の側又は下側、その反対側を他方の側又は上側とする。また、フィルム基板の電子部品が搭載される面を一方の面又は下面、その反対側の面を他方の面又は上面とする。但し、半導体装置は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。
【0010】
[半導体装置の構造]
まず、半導体装置の構造について説明する。図1は、実施形態に係る半導体装置を示す図である。図1(a)は断面図であり、図1(b)は下面図である。図1(a)は図1(b)中のIa-Ia線に沿った断面図に相当する。
【0011】
実施形態に係る半導体装置1では、フィルム基板10の一方の面11に接着剤20が設けられている。フィルム基板10の材料は、例えばポリイミド、エポキシ又はアクリル等を用いることができる。フィルム基板10の厚さは、例えば50μm~100μm程度である。接着剤20の材料は熱硬化性樹脂であり、例えばエポキシを主成分とする。フィルム基板10及び接着剤20の積層体にビアホール21が形成されている。例えば、ビアホール21の径は、フィルム基板10の端部(上端)において、接着剤20側の端部(下端)よりも大きくなっており、ビアホール21の側面はテーパ状の傾斜面となっている。複数のビアホール21が形成されていてもよい。
【0012】
電子部品30が接着剤20によりフィルム基板10に固定されている。電子部品30は、例えば、能動素子としての半導体素子(例えば、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)等のシリコンチップ)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やダイオード等を用いることができる。本実施形態の電子部品30は、表裏面に電極が設けられた半導体素子である。電子部品30の一方の面に電極31が設けられ、他方の面に電極32が設けられている。複数の電極32が形成されていてもよく、電極32はビアホール21に対応するように配置されている。
【0013】
電子部品30に加えて補強部材40が接着剤20によりフィルム基板10に固定されている。補強部材40は、例えば電子部品30に対応する開口が形成された絶縁フィルムである。補強部材40は、フィルム基板10の一方の面11に垂直な方向からの平面視で、電子部品30を取り囲んでいる。補強部材40の外縁はフィルム基板10の外縁と略一致している。補強部材40の材料は、フィルム基板10と同じ材料を用いることができる。補強部材40の材料は、例えばポリイミド、エポキシ又はアクリル等を用いることができる。補強部材40の厚さは、フィルム基板10の厚さと同等の厚さでも良い。また、補強部材40の厚さは、フィルム基板10の厚さよりもの厚くても良い。補強部材40の厚さは、例えば100μm~150μm程度である。フィルム基板10の材料と補強部材40の材料とを同じにすることで、熱収縮等に起因する反が生じるとこを低減することができる。
【0014】
なお、補強部材40の厚さは、電子部品30の高さよりも小さいことが好ましい。半導体装置1は、例えば、電極31を配線基板等の実装基板に対向させ、はんだを介して実装基板の配線と電極31とを接続する。このため、補強部材40の下面が電子部品30の下面よりも上方(配線層53が形成される側)にあることが好ましい。
【0015】
ビアホール21内と、フィルム基板10の他方の面12の上に配線層53が形成されている。配線層53は、シード層51と、シード層51の上に形成されためっき層52とを有する。シード層51及びめっき層52は、例えば銅層である。配線層53の表面に表面処理層が施されていてもよい。表面処理層の例としては、金(Au)層、ニッケル(Ni)層/Au層(Ni層とAu層をこの順番で積層した金属層)、Ni層/パラジウム(Pd)層/Au層(Ni層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属層)などを挙げることができる。
【0016】
ここで、実施形態に係る半導体装置1の効果について、参考例と比較しながら説明する。図2は、参考例に係る半導体装置を示す断面図である。参考例に係る半導体装置9は、補強部材40が設けられていない点を除いて、実施形態に係る半導体装置1と同様の構成を備える。
【0017】
半導体装置1と半導体装置9とを比較すると、半導体装置1において、補強部材40が設けられていることで高い剛性を得ることができる。このため、図2に示すように、半導体装置9では熱収縮等により非搭載領域に反りが生じやすいが、半導体装置1では反りを抑制することができる。
【0018】
そして、反りの抑制により、配線層53のクラックを抑制し、優れた信頼性を得ることができる。また、反りの抑制により、半導体装置1を実装基板に実装する際に高精度で位置合わせしやすく、実装基板の小型化に対応しやすい。更に、反りの抑制により、半導体装置の端部の実装基板の配線への不要な接触を回避することができる。
【0019】
なお、本実施形態には1つの配線層53が設けられているが、フィルム基板10の上方に2つ以上の配線層が設けられていてもよい。つまり、多層配線が設けられていてもよい。
【0020】
また、補強部材40は電子部品30に接している必要はなく、平面視で補強部材40と電子部品30との間に隙間があってもよい。
【0021】
[半導体装置の製造方法]
次に、実施形態に係る半導体装置1の製造方法について説明する。図3図6は、実施形態に係る半導体装置1の製造方法を示す断面図である。
【0022】
まず、図3(a)に示すように、フィルム基板10を準備する。ここで準備するフィルム基板10のサイズは、複数の半導体装置1に対応する大判のサイズとし、このフィルム基板10は、最終的に切断ラインCに沿って切断されて個片化される。次いで、フィルム基板10の一方の面11に未硬化の接着剤20Aを設ける。接着剤20Aは、例えば回転塗布により設けることができる。接着剤20Aとしてフィルム状の接着剤を貼り付けてもよい。
【0023】
次いで、図3(b)に示すように、フィルム基板10と接着剤20Aとの積層体にビアホール21を形成する。ビアホール21は、例えば、積層体にフィルム基板10側からレーザ光を照射することにより形成することができる。
【0024】
次いで、図3(c)に示すように、電子部品30を接着剤20Aに貼り付ける。電子部品30は、一方の面に電極31を、他方の面に電極32を有しており、貼り付けの際には、電極32をビアホール21に位置合わせする。
【0025】
次いで、図4(a)に示すように、電子部品30の周囲において、絶縁性の補強部材40を接着剤20Aに貼り付ける。補強部材40は、例えば電子部品30に対応する開口が形成された絶縁フィルムである。
【0026】
次いで、図4(b)に示すように、図4(a)に示す構造体の加圧ベークを行うことにより、接着剤20Aから、硬化した接着剤20を得る。接着剤20Aの硬化に伴って、電子部品30及び補強部材40がフィルム基板10に強固に固定される。
【0027】
次いで、図4(c)に示すように、フィルム基板10の他方の面12と、ビアホール21の側面と、電子部品30の電極32のビアホール21から露出した面とにシード層51を形成する。シード層51は、例えばスパッタ法により形成することができる。
【0028】
次いで、図5(a)に示すように、電子部品30の周囲に補強部材40の下面に接するスペーサ91を配置する。スペーサ91は、電子部品30を収納可能な凹部構造であってもよい。また、複数積層した構造でもよい。スペーサ91の材料は、例えばポリイミド、エポキシ又はアクリル等の樹脂材料でもよい。スペーサ91は、樹脂材料や金属材料をそれぞれ単体で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。スペーサ91として、補強部材40と同様の絶縁フィルムを用いてもよい。
【0029】
更に、スペーサ91の下方に保護フィルム92を配置する。保護フィルム92の材料は、例えばポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルである。
【0030】
次いで、図5(b)に示すように、シード層51を給電経路として電解銅めっきを行うことで、シード層51の上にめっき層52を形成する。このとき、フィルム基板10の下側にスペーサ91及び保護フィルム92が設けられているため、電極31を含む電子部品30が電解液から保護される。
【0031】
次いで、配線パターンが形成されたレジスト層(図示せず)をめっき層52の上に形成する。レジスト層としては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができ、露光及び現像によりレジスト層に配線パターンを形成できる。次いで、レジスト層をマスクとしてめっき層52及びシード層51をエッチングする。この結果、図5(c)に示すように、めっき層52及びシード層51から配線層53が得られる。このように、配線層53は、例えばセミアディティブ法により形成することができる。配線層53に、表面処理層を形成してもよい。他のめっき処理を配線層53に施してもよい。エッチング及びめっき処理の際にも、電子部品30がスペーサ91及び保護フィルム92により保護される。
【0032】
次いで、図6(a)に示すように、スペーサ91及び保護フィルム92を取り外す。
【0033】
次いで、切断ラインCに沿って図6(a)に示す構造物を切断して個片化する。この結果、図6(b)に示すように、半導体装置1が得られる。図6(b)には1個の半導体装置1が図示されているが、図6(a)に示す構造物からは複数個の半導体装置1が得られる。
【0034】
なお、フィルム基板10の一方の面11に複数の電子部品30が設けられてもよい。図7は、実施形態の変形例に係る半導体装置を示す下面図である。
【0035】
図7(a)に示す第1変形例に係る半導体装置2では、フィルム基板10の一方の面11の略中央に4個の電子部品30が格子状に設けられている。そして、平面視で4個の電子部品30を取り囲むように補強部材40が設けられ、更に、補強部材40は隣り合う電子部品30の間にも設けられている。
【0036】
図7(b)に示す第2変形例に係る半導体装置3では、フィルム基板10の一方の面11の略中央に4個の電子部品30が格子状に設けられている。そして、平面視で4個の電子部品30を取り囲むように補強部材40が設けられ、隣り合う電子部品30の間からは接着剤20が露出している。
【0037】
これらの半導体装置2及び3によっても、実施形態に係る半導体装置1と同様の効果を得ることができる。
【0038】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0039】
1、2、3、4 半導体装置
10 フィルム基板
11、12 面
20 接着剤
21 ビアホール
30 電子部品
40 補強部材
53 配線層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7