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特許7516281サイリウム種皮造粒物及びその製造方法、並びにサイリウム種皮造粒物を含む粉末飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】サイリウム種皮造粒物及びその製造方法、並びにサイリウム種皮造粒物を含む粉末飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240708BHJP
   A23L 2/39 20060101ALI20240708BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L2/00 Q
A23L2/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021011598
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022007958
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2020053483
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020120996
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】児玉 翔希
(72)【発明者】
【氏名】井池 信子
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴人
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特表平8-504593(JP,A)
【文献】特開平02-200167(JP,A)
【文献】特表2001-522614(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105796662(CN,A)
【文献】特表2018-514233(JP,A)
【文献】特開2015-212258(JP,A)
【文献】特開2006-158333(JP,A)
【文献】特開2013-010799(JP,A)
【文献】特開平11-240841(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0880650(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
120~280メッシュのタイラー篩を通過した粉糖を用いて造粒した、サイリウム種皮造粒物。
【請求項2】
請求項1に記載のサイリウム種皮造粒物を含有する、粉末飲料。
【請求項3】
サイリウム種皮と120~280メッシュのタイラー篩を通過した粉糖を含む混合物を流動状態とし、次いで水を噴霧し、最後に乾燥させることで顆粒化を行う、サイリウム種皮造粒物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイリウム種皮造粒物及びその製造方法に関する。より詳しくは、水に対する親和性が改善されたサイリウム種皮含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の変化に伴い、食物繊維の摂取量が減ってきている。日本人の食事摂取基準(2015年版)における食物繊維の摂取目標量は,成人男性19g以上,成人女性17g以上と設定されている。しかし,平成29年国民健康・栄養調査では、成人1日当たりの食物繊維摂取量は男性15.2g,女性14.8gと報告されており、摂取目標量に足りていない。
【0003】
食物繊維の摂取目標量は、食物繊維の摂取不足が生活習慣病の発症に関連するという報告が多いことから設定されている。また食物繊維には、整腸作用等の効果が知られ、整腸作用と保水性は正の相関を示すことも知られている。このため、食物繊維を強化した食品を日常の食生活に取り入れることは,食生活の乱れや食生活の欧米化、更にはストレスの増加等に伴い、便秘や下痢で悩む人にとって有益であると考えられる。
【0004】
食物繊維を摂取するための供給源の一つとして、サイリウム種皮が挙げられる。サイリウム種皮を摂取するには、水に溶解させて摂取するのが一般的である。しかし、サイリウム種皮を水に加えると継粉(ダマ)ができやすい。また、継粉の表面は水和してゲル化しているため、いったん継粉ができてしまうと継粉を破壊することも難しくなる。そのため、サイリウム種皮を水溶液中に分散させるためには、蓋つきの容器に水とサイリウム種皮を入れて激しく振盪するか、容器内をスターラーなどで攪拌する必要があり、手軽に摂取しやすいとは言い難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、サイリウム種皮含有組成物が少しでも水に分散しやすくなるように造粒などの様々な工夫を施し、分散性が改善されたことを謳っている商品も登場している。しかしながら、これらの商品は従来品に比べればいくらか改善されているかもしれないが、劇的に改善されているわけではない。そのため、より水への分散性が改善されたサイリウム種皮造粒物が待ち望まれている。
【0006】
本願発明は、水への親和性が大幅に改善されたサイリウム種皮造粒物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のため、本発明は、120~280メッシュのタイラー篩を通過した粉糖を用いて造粒した、サイリウム種皮造粒物を提供する。また、当該造粒物を用いた粉末飲料とすることが好ましい。ここで、120~280メッシュのタイラー篩とは、JIS規格に換算すると、篩の目開きが53~125μmの篩に相当する。したがって、120~280メッシュのタイラー篩を通過した粉糖の粒径は53~125μm相当である。以下についても同じである。
【0008】
かかる構成によれば、粒径の細かい粉糖を用いて造粒することで、水への親和性が著しく改善することができる。また、水への親和性が良いことから結果として分散性に優れ、粉末飲料として手軽に用いることができる。
【0009】
上記課題解決のため、本発明は、サイリウム種皮と120~280メッシュのタイラー篩を通過した粉糖を含む混合物を流動状態とし、次いで水を噴霧し、最後に乾燥させることで顆粒化を行う、サイリウム種皮造粒物の製造方法を提供する。
【0010】
かかる構成によれば、粉糖の粒径を変えるだけで、既存の設備を用いて簡単に親水性が改善されたサイリウム種皮造粒物を製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粒径の細かい粉糖を用いて造粒することで、水への親和性が著しく改善されたサイリウム種皮造粒物を得ることができる。また、水への親和性が改善されたことで、シェーカーを用いることなく水溶液中に分散させることができる。これにより、水さえあれば手軽にサイリウム種皮を摂取することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。
【0013】
<サイリウム種皮>
サイリウム種皮は、高度に分岐した構造を有する多糖類をその主成分とした食物繊維素材である。本発明で用いられるサイリウム種皮としては、オオバコ科の植物プランタゴオバタ(Plantago ovata)の種子から得られる種皮(ハスク)またはその粉砕物が挙げられる。ここで、サイリウム種皮またはその粉砕物としては、サイリウム、サイリウムハスク、サイリウム種皮末、サイリウムシードガム、イサゴールなど(以下、「サイリウム種皮末」という。)として市販されているものが挙げられる。本発明において、サイリウム種皮末は、いかなる粒度、グレードのものを用いても構わないが、夾雑物が少なく、純度が高いものが好ましい。
【0014】
上記サイリウム種皮は安全性が高く、無味無臭であることから、長期間の継続的摂取が容易である。本発明においては、顆粒剤、粉末飲料としては摂取することが好ましい。また、造粒する際に、必要に応じて各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤をさらに配合してもよい。
【実施例
【0015】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本実施例に用いるガラス器具類は日本工業規格を満たすものを用いた。
【0016】
<サイリウム種皮造粒物>
(実施例)
本実施形態においては、サイリウム種皮42kgと120~280メッシュのタイラー篩を通過した粉糖1.5kgを混合した。次に、混合物を流動層造粒機に入れ、水で造粒した。これによりサイリウム種皮造粒物を得た。
【0017】
(比較例)
メッシュ120未満、つまり篩を通過したグラニュー糖の粒径が125μmより大きいものを用いたこと以外は、実施例と同じである。
【0018】
<水に対する親和性確認試験>
水に対する親和性の確認試験は次のようにして行った。
まず、0.01重量%濃度の青色1号色素水を用意した。次に、300mlビーカーに先ほど用意した青色色素水を180mLと、長さ3cmのスターラーバーを入れてから、ビーカーをマグネチックスターラーの上にセットした。続いて、水面から高さ8cmのところに開口部が来るよう、ステンレス製スタンドとクランプを用いて50mLチューブをセットした。チューブの開口部を上に向け、サイリウム種造粒物をチューブ内に入れた。このとき、チューブ内に入れたサイリウム種皮造粒物量は、サイリウム種皮由来の食物繊維含量が3.6gとなる量を加えた。開口部をアルミホイルで塞ぎ、スターラーバーを100rpmで回転させた。チューブを180度回転させ、アルミ蓋の一端がチューブに固定された状態で、サイリウム種皮造粒物をビーカー内に投下した。投下後30秒攪拌してからスターラーバーの回転を止め、平面視におけるビーカー表面をカメラで撮影した。撮影した画像を、画像解析ソフトImageJを用いてグレースケールに変換し、ビーカー表面の面積値および非沈降粉末部分の面積値を求め、ビーカー表面に占める非沈降粉末部分の割合を算出した。
【0019】
ここで、本実施形態においては青色1号色素を用いたが、色素は画像解析を行う際にサイリウム種皮との識別を容易にするために用いているに過ぎない。したがって、サイリウム種皮との識別が容易な色であれば、赤色であっても緑色であっても特に限定されない。また、色素水の温度は常温(23±2度)のものを用いた。
【0020】
さらに、本発明において、100rpmでの回転はスプーンで緩やかにかき混ぜた際の速度とほぼ同じである。
【0021】
実施例及び比較例について、上記試験方法を用いて測定を行った。試験は5回行い、平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1から明らかなように、各サンプルについては、各回似た数値となっていることから、試験方法によるバラツキはほぼないものと考えられる。したがって、実施例及び比較例の数値の差は、同じサイリウム種皮を用いていていることからも、改良によってどの程度親水性が改善されたかを示した数値と言える。すなわち、粉糖の粒径を小さくすることで水に対する親和性が改善できることが示唆された。
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、120~280メッシュのタイラー篩を通過した粉糖を用いることで、水に対する親和性を著しく改善することができる。これにより、水への分散性が良くなるため、手軽に摂取することができる。