(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】光ファイバの状態検知システム
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
G01M11/00 R
(21)【出願番号】P 2021511871
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013355
(87)【国際公開番号】W WO2020203559
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019065799
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 義樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健吾
(72)【発明者】
【氏名】松下 俊一
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-154001(JP,A)
【文献】特開2019-023580(JP,A)
【文献】特表2018-534110(JP,A)
【文献】特開2017-213444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/079718(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/285017(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/141969(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/354465(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-11/08
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの状態をモニタするモニタ用光を出力する第一の光源と、
前記光ファイバを伝搬した前記モニタ用光を反射する反射機構と、
前記反射機構によって反射された反射光を受光する受光部と、
前記第一の光源および前記受光部と前記反射機構との間に設けられ、前記第一の光源および前記受光部が接続されたタップカプラと、
焼灼用光を出力する第二の光源と、
前記モニタ用光と前記焼灼用光を合波する合波器と、
制御部と、を備え、
前記第一の光源および前記第二の光源は、前記合波器に接続され、
前記合波器および前記受光部は、前記タップカプラに接続され、
前記モニタ用光と前記焼灼用光とは、異なる波長を有し、
前記反射機構は、前記焼灼用光を透過し、
前記制御部は、前記反射光の受光強度が0より大きく所定の閾値を下回ったことを検知した場合、前記第二の光源をシャットダウンする
ことを特徴とする光ファイバの状態検知システム。
【請求項2】
前記モニタ用光の波長は、可視光波長帯域の波長である
ことを特徴とする請求項
1に記載の光ファイバの状態検知システム。
【請求項3】
前記モニタ用光は、フラットトップビームである
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の光ファイバの状態検知システム。
【請求項4】
前記モニタ用光および前記焼灼用光は、同じビーム形状である
ことを特徴とする請求項
1~3のいずれか1項に記載の光ファイバの状態検知システム。
【請求項5】
前記受光部の手前側に、前記焼灼用光の波長をカットする機構が設けられている
ことを特徴とする請求項
1~4のいずれか1項に記載の光ファイバの状態検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの状態検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバが挿入されたカテーテルを患者の体内に挿入し、治療を行う技術が知られている。このような医療用の光ファイバプローブ等では、カテーテルの細径化に伴って光ファイバの径も細くなるため、患者の体内に挿入する際に光ファイバが強く曲げられたり、折れたりする危険がある。
【0003】
例えば特許文献1,2には、体内に挿入する内視鏡等の管状体の湾曲を検知したり、湾曲形状を推定したりする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-169998号公報
【文献】特開2015-181643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カテーテルの挿入時に光ファイバが強く曲げられた場合、湾曲部で光が漏れ出してしまう。そのため、例えばレーザ光による焼灼治療を行う際に、所望の部位に到達する光パワーが低下したり、湾曲部における光の漏れ出しによって不必要な部位の焼灼が行われたりする可能性がある。
【0006】
そのため、カテーテルの挿入時、すなわち光ファイバを動作させている際の曲げロスを正確に測定し、光ファイバの曲がりの有無を判定する技術が求められていた。しかしながら、前記した特許文献1,2には、このような技術は開示されていなかった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光ファイバを動作させている際の曲げロスを正確に測定し、光ファイバの曲がりの有無を判定することができる光ファイバの状態検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る光ファイバの状態検知システムは、光ファイバの状態をモニタするモニタ用光を出力する第一の光源と、前記光ファイバを伝搬した前記モニタ用光を反射する反射機構と、前記反射機構によって反射された反射光を受光する受光部と、前記第一の光源および前記受光部と前記反射機構との間に設けられ、前記第一の光源および前記受光部が接続されたタップカプラと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記反射光の受光強度が0より大きく所定の閾値を下回ったことを検知した場合、受光強度が低下した情報を外部に出力することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る光ファイバの状態検知システムは、光ファイバの状態をモニタするモニタ用光を出力する第一の光源と、前記光ファイバを伝搬した前記モニタ用光を反射する反射機構と、前記反射機構によって反射された反射光を受光する受光部と、前記第一の光源および前記受光部と前記反射機構との間に設けられ、前記第一の光源および前記受光部が接続されたタップカプラと、焼灼用光を出力する第二の光源と、前記モニタ用光と前記焼灼用光を合波する合波器と、制御部と、を備え、前記第一の光源および前記第二の光源は、前記合波器に接続され、前記合波器および前記受光部は、前記タップカプラに接続され、前記モニタ用光と前記焼灼用光とは、異なる波長を有し、前記反射機構は、前記焼灼用光を透過し、前記制御部は、前記反射光の受光強度が0より大きく所定の閾値を下回ったことを検知した場合、前記第二の光源をシャットダウンすることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る光ファイバの状態検知システムは、前記モニタ用光の波長が、可視光波長帯域の波長であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る光ファイバの状態検知システムは、前記モニタ用光が、フラットトップビームであることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る光ファイバの状態検知システムは、前記モニタ用光および前記焼灼用光が、同じビーム形状であることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る光ファイバの状態検知システムは、前記受光部の手前側に、前記焼灼用光の波長をカットする機構が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光ファイバを動作させている際の曲げロスを正確に測定し、光ファイバの曲がりの有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る光ファイバの状態検知システムの構成例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、光ファイバの曲げロス特性の一例を説明するための図であり、光の波長と光ファイバの曲げロスとの関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る光ファイバの状態検知システムにおいて、モニタ用光をフラットトップビームにするための第1の構成例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る光ファイバの状態検知システムにおいて、モニタ用光をフラットトップビームにするための第2の構成例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、光ファイバのコア径に応じた光ファイバの曲げロス特性の一例を説明するための図であり、光ファイバの曲げ半径と曲げロスとの関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る光ファイバの状態検知システムの構成例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施形態に係る光ファイバの状態検知システムにおいて、モニタ用光および焼灼用光を同じビーム形状にするための構成例を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3実施形態に係る光ファイバの状態検知システムの第1の構成例を示す概略図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3実施形態に係る光ファイバの状態検知システムの第2の構成例を示す概略図である。
【
図12】
図12は、本発明の第3実施形態に係る光ファイバの状態検知システムの第3の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る光ファイバの状態検知システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
(第1実施形態)
本実施形態に係る光ファイバの状態検知システム(以下、単に「状態検知システム」という)1は、
図1に示すように、レーザ装置10と、反射機構31を備える光ファイバプローブ30と、レーザ装置10および光ファイバプローブ30を接続するコネクタ40と、光ファイバ50と、制御部60と、表示部70と、を備えている。なお、コネクタ40は必須ではなく、省略してもよい。また、同図において、光ファイバ50は実線で示している。
【0018】
レーザ装置10は、モニタ用LD11と、モニタPD12と、タップカプラ13と、これらを接続する光ファイバ50と、を備えている。なお、「LD」はレーザダイオードのことを示し、「PD」はフォトダイオードのことを示している。
【0019】
モニタ用LD11は、光ファイバ50の状態をモニタするためのモニタ用光TLを出力する光源(第一の光源)である。モニタ用LD11は、光ファイバ50を介してタップカプラ13の入力側に接続されている。
【0020】
レーザ装置10では、波長の異なる光を出力する複数のモニタ用LD11を配置してもよい。また、モニタ用LD11として、波長の異なる光を出力する複数のLDをまとめたものを用いてもよい。また、モニタ用LD11の出力は、例えば1mW以下に設定する。また、モニタ用光TLの波長は、可視光波長帯域~近赤外波長帯域(400nm~1500nm)の波長とし、好ましくは可視光波長帯域(400nm~700nm)の波長とする。
【0021】
ここで、
図2は、光ファイバ50の曲げロス特性の一例を説明するための図であり、光の波長と光ファイバ50の曲げロスとの関係を示すグラフである。なお、曲げロス(曲げ損失)とは、例えば所定の曲げ半径で光ファイバ50を曲げた場合の伝送損失の増加量で定義される。
【0022】
図2に示すように、光ファイバ50の曲げロスは、短波長側では小さく、長波長側では大きい。これは、例えば短波長(可視光波長帯域)のモニタ用光TLによって光ファイバ50の曲げロスを測定し、「曲がりあり」と判定された場合、長波長(可視光波長帯域よりも長い波長帯)のモニタ用光TLを用いたとしても、「曲がりあり」と判定されるということを意味する。
【0023】
そのため、前記したように、モニタ用光TLとして可視光波長帯域の光を用いることにより、それよりも長い波長帯域のモニタ用光TLを用いた場合の光ファイバ50の曲がりの有無についても判定することが可能となる。なお、例えば可視光波長帯域のモニタ用光を用いた場合は「曲がりなし」、それよりも長い波長帯域のモニタ用光を用いた場合は「曲がりあり」と判定されるような場合は、モニタ用光TLとして可視光波長帯域よりも長い波長帯域の光を用いることにより、曲げロスを過大に見積もってもよい。
【0024】
モニタ用光TLは、フラットトップビーム(トップハットビーム)で構成する。モニタ用光TLをフラットトップビームにするには、例えば
図3に示すように、モニタ用LD11とタップカプラ13との間にコンバイナ14を配置する方法や、
図4に円で示すように、光ファイバ50に曲げを付与してモードミキシングを行う方法、あるいは光ファイバ50に振動を加える方法等を用いる。
【0025】
なお、
図3および
図4では、光ファイバプローブ30、コネクタ40、制御部60および表示部70の図示を省略している。また、
図3に示したコンバイナ14の数は特に限定されず、2つ以上であってもよい。また、
図4に示した光ファイバ50の曲げ半径は、光ファイバ50の長期曲げ半径(Long Term Bend Radius:LTBR)の値(例えばr=10mm)等に設定する。
図1に戻って残りの構成について説明する。
【0026】
モニタPD12は、反射機構31によって反射された反射光RLを受光してモニタするための受光部である。モニタPD12は、光ファイバ50を介してタップカプラ13の入力側に接続されている。また、モニタPD12は、モニタ用LD11と同様に複数配置してもよく、例えば複数のモニタ用LD11から出力された波長の異なる光を、複数のモニタPD12によって受光するように構成してもよい。
【0027】
タップカプラ13は、モニタ用LD11およびモニタPD12と、反射機構31との間に配置されている。タップカプラ13の入力側には、光ファイバ50を介してモニタ用LD11およびモニタPD12が接続されている。また、タップカプラ13の出力側には、コネクタ40が接続されている。タップカプラ13は、好ましくは非対称タップカプラであり、その合成比は、例えば99:1、95:5、90:10、75:25等に設定することができる。また、
図1では、タップカプラ13の入力ポートと出力ポートの比が2:1であるが、2:2であってもよい。
【0028】
反射機構31は、光ファイバ50を伝搬したモニタ用光TLを反射する。反射機構31は、例えばFBG(ファイバブラッググレーティング)や反射膜により構成されており、光ファイバプローブ30における光ファイバ50の先端側に設けられている。なお、反射機構31が反射膜により構成されている場合、当該反射機構31は、光ファイバ50の先端に設けることが好ましい。また、反射機構31がFBGにより構成されている場合、当該反射機構31は、光ファイバ50の先端よりもやや内側に設けることが好ましい。
【0029】
光ファイバ50の先端側に向かって伝搬し、反射機構31によって反射されたモニタ用光TLは、反射光RLとして光ファイバ50の基端側に向かって戻るように伝搬する。そして、反射光RLは、コネクタ40およびタップカプラ13を介してモニタPD12に入力される。
【0030】
光ファイバ50は、例えばマルチモード光ファイバである。この光ファイバ50は、例えばコア径105μm/クラッド径125μmであり、アクリレート被膜やポリイミド被膜等の被覆を備えるステップインデックス型光ファイバにより構成される。
【0031】
なお、レーザ装置10側(以下、「装置側」という)の光ファイバ50のコア径と、光ファイバプローブ30側(以下、「プローブ側」という)の光ファイバ50のコア径とがそれぞれ異なっていてもよい。この場合、装置側の光ファイバ50のコア径を、プローブ側の光ファイバ50のコア径よりも小さくすることが好ましい。
【0032】
ここで、
図5は、光ファイバ50のコア径に応じた光ファイバ50の曲げロス特性の一例を説明するための図であり、光ファイバ50の曲げ半径と曲げロスとの関係を示すグラフである。同図の例1は、例えば
図6に示すように、装置側に光源が、プローブ側にパワーメータが設けられており、装置側の光ファイバ50のコア径が105μm、プローブ側の光ファイバ50のコア径が150μmである装置構成を想定している。この例1は、例えば
図1におけるモニタ用LD11の代わりに後記する焼灼用LDを配置した、焼灼系のラインを想定している。
【0033】
図5の例2は、例えば
図7に示すように、装置側に光源が、プローブ側にパワーメータが設けられており、装置側の光ファイバ50のコア径が105μm、プローブ側の2つのコネクタ40間の光ファイバ50のコア径が150μm、プローブ側のコネクタ40およびパワーメータ間の光ファイバ50のコア径が105μmである装置構成を想定している。この例2は、
図1に示した反射モニタ系のラインを想定している。また、同図の例3は、例えば
図6において、装置側とプローブ側の光ファイバ50のコア径がともに105μmである装置構成を想定している。
【0034】
図5に示すように、装置側の光ファイバ50のコア径とプローブ側の光ファイバ50のコア径とが異なる場合(例1,2参照)、両者のコア径が同じ場合(例3参照)と比較して、曲げロスがより大きくなり、曲げロスに対して敏感になることがわかる。従って、装置側とプローブ側とで光ファイバ50のコア径を変えることにより、見かけ上の曲げロスを増加し、光ファイバ50の曲がりの発生をより検知しやすくなる。なお、装置側とプローブ側とで光ファイバ50のコア径が異なる場合、例えば対応表等を用いることにより、実際の曲げロスの値に対する見かけ上の曲げロスの差を補正する必要がある。
【0035】
制御部60は、図示しない演算部および記憶部を備えている。演算部は、制御部60が実行する制御や制御部60の機能の実現のための各種演算処理を行うものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはCPUおよびFPGAの両方で構成される。また、記憶部は、例えば演算部が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータ等が格納されるROM(Read Only Memory)で構成される部分と、演算部が演算処理を行う際の作業スペースや演算部の演算処理の結果等を記憶するために使用されるRAM(Random Access Memory)で構成される部分と、を備えている。
【0036】
また、制御部60は、モニタPD12からの電流信号等の入力を受け付ける入力部(図示せず)と、各種演算処理の結果に基づいて、モニタ用LD11への駆動電流や、表示部70への指示信号や各種情報を出力する出力部(図示せず)と、を備えている。
【0037】
表示部70は、制御部60からの指示信号に応じて、レーザ装置10のオペレータに対して、各種情報を出力して外部に報知するための文字や記号などの表示、またはアラームによる警告等を行う部分であり、例えば液晶ディスプレイで構成されている。
【0038】
以上のような構成を備える光ファイバの状態検知システム1において、制御部60は、モニタPD12によって受光した反射光RLの受光強度が0より大きく所定の閾値を下回ったことを検知した場合、受光強度が低下した情報を外部に出力する。具体的には、制御部60は、表示部70に対して受光強度が低下したという情報を出力する。この場合、制御部60は、光ファイバプローブ30における光ファイバ50に曲がりが発生していると判定できる。制御部60は、表示部70によってアラーム等を鳴らすことにより、受光強度の低下、すなわち光ファイバ50の曲がりの発生を外部(オペレータ)に報知してもよい。なお、上述した所定の閾値としては、正常時の受光強度の値から、10%または1dB減衰した時の受光強度の値を設定できる。
【0039】
また、制御部60は、例えば短い時間内で反射光RLの受光強度が急激に減少した場合等、一定時間内における反射光RLの受光強度の変化率が大きい場合、反射光RLの受光強度が前記した所定の閾値を下回っていないとしても、光ファイバプローブ30における光ファイバ50に曲がりが発生していると判定してもよい。
【0040】
以上説明した第1実施形態に係る光ファイバの状態検知システム1によれば、光ファイバ50を動作させている際の曲げロスを正確に測定し、反射光の受光光度が低下した場合に、受光強度の低下の情報を出力できるので、光ファイバ50の曲がりの有無を判定できる。
【0041】
(第2実施形態)
本実施形態に係る光ファイバの状態検知システム1は、
図8に示すように、レーザ装置10Aと、光ファイバプローブ30Aと、レーザ装置10Aおよび光ファイバプローブ30Aを接続するコネクタ40と、光ファイバ50と、制御部60と、表示部70と、を備えている。なお、同図におけるコネクタ40、光ファイバ50、制御部60および表示部70の構成は、前記した第1実施形態(
図1参照)と同様である。
【0042】
レーザ装置10Aは、モニタ用LD11と、焼灼用LD15と、合波器16と、モニタPD12と、タップカプラ13と、これらを接続する光ファイバ50と、を備えている。また、光ファイバプローブ30Aは、反射機構31を備えている。なお、光ファイバプローブ30Aは、反射機構31を透過した焼灼用光TL2の進行方向を、反射機構31を透過する前の進行方向に対して異なる方向に変更して照射する側面照射機構を更に備えていてもよい。
【0043】
モニタ用LD11は、光ファイバ50の状態をモニタするためのモニタ用光TL1を出力する光源(第一の光源)である。モニタ用LD11は、光ファイバ50を介して合波器16の入力側に接続されている。また、モニタPD12は、光ファイバ50を介してタップカプラ13の入力側に接続されている。
【0044】
レーザ装置10では、波長の異なる光を出力する複数のモニタ用LD11を配置してもよい。また、例えば2つのモニタ用LD11を用いる場合、一方のモニタ用LD11からは焼灼用光TL2の波長帯域のよりも短い波長帯域の光を出力し、他方のモニタ用LD11からは焼灼用光TL2の波長帯域のよりも長い波長帯域の光を出力するように構成することが好ましい。このように、一方のモニタ用LD11から焼灼用光TL2よりも短波長の光を出力し、他方のモニタ用LD11から焼灼用光TL2よりも長波長の光を出力することにより、曲げロスの推定精度がより向上する。
【0045】
焼灼用LD15は、焼灼用光TL2を出力する光源(第二の光源)である。焼灼用LD15は、光ファイバ50を介して合波器16の入力側に接続されている。ここで、レーザ装置10Aを医療用カテーテルによるレーザ治療に用いる場合、焼灼用LD15から出力される焼灼用光TL2は、いわゆる「生体の窓」と呼ばれる波長帯域の光、すなわち600nm~1500nmの波長帯域の光である。また、焼灼用光TL2は、モニタ用光TL1とは異なる波長を有している。また、焼灼用LD15の出力は、例えば0.1W以上に設定する。
【0046】
ここで、モニタ用光TL1および焼灼用光TL2は、同じビーム形状であることが好ましい。これは、光ファイバ50の曲げロスにはモード依存性があるため、異なるビーム形状の光源によって曲げロスを測定すると値が変わる場合があるためである。
【0047】
モニタ用光TL1のビーム形状と焼灼用光TL2のビーム形状とを同じにするには、例えば
図9に示すレーザ装置10Bのように、レーザ装置10Bにおける上流側でモニタ用光TL1と焼灼用光TL2とを合波(合成)させる。なお、同図に示した光学部品17の具体的構成は特に限定されず、例えばアイソレータやフィルタ、その他光ファイバからなる部品等であってもよい。このように、モニタ用光TL1および焼灼用光TL2を同じビーム形状とすることにより、曲げロスの測定誤差を小さくすることができる。
【0048】
合波器16は、モニタ用光TL1と焼灼用光TL2とを合波する。合波器16は、例えばWDM(波長分割多重)カプラ、コンバイナ、タップカプラ、空間結合光学系等により構成されている。合波器16は、光ファイバ50を介してタップカプラ13の入力側に接続されている。
【0049】
反射機構31は、例えばFBGや反射膜により構成されており、モニタ用光TL1を反射し、焼灼用光TL2を透過し、当該焼灼用光TL2を外部へと照射する。
【0050】
以上のような構成を備える光ファイバの状態検知システム1Aにおいて、制御部60は、モニタPD12によって受光した反射光RLの受光強度が0より大きく所定の閾値を下回ったことを検知した場合、受光強度が低下した情報を外部に出力する。具体的には、制御部60は、表示部70に対して受光強度が低下したという情報を出力する。この場合、制御部60は、光ファイバプローブ30Aにおける光ファイバ50に曲がりが発生していると判定できる。制御部60は、表示部70によりアラーム等を鳴らすことにより、受光強度が低下、すなわち、光ファイバ50の曲がりの発生を外部(オペレータ)に報知してもよい。または、制御部60は、焼灼用LD15をシャットダウンすることにより、焼灼用光TL2の出力を停止してもよい。なお、上述した所定の閾値は、第1実施形態と同様の方法で設定できる。
【0051】
以上説明した第2実施形態に係る光ファイバの状態検知システム1Aによれば、光ファイバ50を動作させている際の曲げロスを正確に測定し、反射光の受光光度が低下した場合に受光強度が低下した情報を出力できるので、光ファイバ50の曲がりの有無を判定できる。また、状態検知システム1Aによれば、光ファイバ50に曲がりが発生している場合、焼灼用LD15をシャットダウンして、焼灼用光TL2の出力を停止することにより、不必要な部位の焼灼が行われることを抑制することができる。
【0052】
(第3実施形態)
本実施形態に係る光ファイバの状態検知システムでは、モニタPD12の手前側に、焼灼用光TL2の波長をカットする機構が設けられている。以下、
図10~
図12を参照しながら、本実施形態の3つの構成例について説明する。なお、同図では、光ファイバプローブ30Aおよびコネクタ40の図示を省略している。
【0053】
<第1の構成例>
第1の構成例である光ファイバの状態検知システム1Cのレーザ装置10Cは、
図10に示すように、光源18と、モニタPD12と、焼灼用光カット機構19と、タップカプラ13と、を備えている。なお、同図におけるモニタPD12およびタップカプラ13の構成は、前記した第1実施形態(
図1参照)と同様である。
【0054】
光源18は、モニタ用光TL1および焼灼用光TL2を出力する。光源18は、光ファイバ50を介してタップカプラ13の入力側に接続されている。また、モニタPD12は、光ファイバ50を介して焼灼用光カット機構19に接続されている。
【0055】
焼灼用光カット機構19は、モニタPD12とタップカプラ13との間に配置されている。焼灼用光カット機構19は、例えばフィルタやWDMカプラ等により構成される。ここで、例えば光源18からモニタ用光TL1と焼灼用光TL2とを同時に出力しながら光ファイバプローブ30Aの光ファイバ50を動かす場合に、焼灼用光TL2の一部がモニタPD12に向かって伝搬してしまう場合がある。モニタPD12が焼灼用光TL2の波長でも受光感度を有していると、焼灼用光TL2がモニタ用光TL1にかぶってモニタPD12に入力してしまったときに、モニタPD12で、モニタ用光TL1に起因する反射光RLのみを適切に受光できないこととなり、曲げロスに測定誤差が生じる。そこで、モニタPD12の手前側に焼灼用光カット機構19を配置することにより、特定の波長の光(モニタ用光TL1に起因する反射光RL)のみをモニタPD12に入力することが可能となる。
【0056】
<第2の構成例>
第2の構成例である光ファイバの状態検知システム1Dのレーザ装置10Dは、
図11に示すように、光源18と、モニタPD12と、焼灼PD20と、焼灼用光カット機構19と、タップカプラ13A,13Bと、を備えている。なお、同図における光源18、モニタPD12および焼灼用光カット機構19の構成は、前記した第1の構成例(
図10参照)と同様である。
【0057】
光源18は、光ファイバ50を介してタップカプラ13Bに接続されている。また、モニタPD12は、光ファイバ50を介して焼灼用光カット機構19に接続されている。また、焼灼PD20は、光ファイバ50を介してタップカプラ13Aに接続されている。
【0058】
タップカプラ13Aは、タップカプラ13B側から来た戻り光を、第一戻り光RL1および第二戻り光RL2に分岐する。ここで、戻り光とは、図示しない反射機構31によって反射されたモニタ用光TL1の反射光と、焼灼用光TL2の一部とを含むものである。タップカプラ13Aは、光ファイバ50を介して、第一戻り光RL1を焼灼用光カット機構19に出力し、第二戻り光RL2を焼灼PD20に出力する。タップカプラ13Aの出力側は、光ファイバ50を介してタップカプラ13Bの入力側に接続されている。
【0059】
以上のように、モニタPD12の手前側に焼灼用光カット機構19を配置することにより、特定の波長の光(第一戻り光RL1)のみを、モニタPD12に入力することが可能となる。なお、焼灼PD20の受光強度は、焼灼用光TL2の強度の測定に使用できる。
【0060】
<第3の構成例>
第3の構成例である光ファイバの状態検知システム1Eのレーザ装置10Eは、
図12に示すように、光源18と、モニタPD12と、焼灼PD20と、WDMカプラ21と、タップカプラ13Bと、を備えている。なお、同図における光源18、モニタPD12、焼灼PD20およびタップカプラ13Bの構成は、前記した第2の構成例(
図11参照)と同様である。
【0061】
光源18は、光ファイバ50を介してタップカプラ13Bに接続されている。また、モニタPD12は、光ファイバ50を介してWDMカプラ21に接続されている。また、焼灼PD20は、光ファイバ50を介してWDMカプラ21に接続されている。
【0062】
WDMカプラ21は、第一戻り光RL1および第二戻り光RL2を分波する。そして、WDMカプラ21は、光ファイバ50を介して、第一戻り光RL1をモニタPD12に出力し、第二戻り光RL2を焼灼PD20に出力する。WDMカプラ21の出力側は、光ファイバ50を介してタップカプラ13Bの入力側に接続されている。
【0063】
以上のように、モニタPD12および焼灼PD20の手前側にWDMカプラ21を配置することにより、特定の波長の光(第一戻り光RL1、第二戻り光RL2)のみを、モニタPD12および焼灼PD20に入力することが可能となる。
【0064】
以上、本発明に係る実施形態に係る光ファイバの曲げ検知システムについて、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【0065】
例えば、前記した実施形態では、レーザ装置10,10A,10B,10C,10D,10Eを、医療用カテーテル等で使用することを想定して説明したが、レーザ装置10,10A,10B,10C,10D,10Eの用途は医療用に限定されない。
【0066】
また、前記した実施形態では、光ファイバプローブ30における光ファイバ50の先端に反射機構31が設けられている例について説明したが、反射機構31は光ファイバプローブ30における光ファイバ50の先端と基端の間(途中)に設けられていてもよい。これにより、反射機構31が設けられた先の光ファイバ50で曲がりが発生しているか否かを判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、医療用の光ファイバプローブに用いられる光ファイバの曲がり検知に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0068】
1,1A,1C,1D,1E 状態検知システム
10,10A,10B,10C,10D,10E レーザ装置
11 モニタ用LD
12 モニタPD
13,13A,13B タップカプラ
14 コンバイナ
15 焼灼用LD
16 合波器
17 光学部品
18 光源
19 焼灼用光カット機構
20 焼灼PD
21 WDMカプラ
30,30A 光ファイバプローブ
31 反射機構
40 コネクタ
50 光ファイバ
60 制御部
70 表示部