(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】マイクロドージング
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20240708BHJP
F04B 43/12 20060101ALI20240708BHJP
G01F 11/02 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61M5/142 502
F04B43/12 Z
F04B43/12 T
G01F11/02
(21)【出願番号】P 2021520552
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2019078397
(87)【国際公開番号】W WO2020079236
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アドラー, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ルーエムケマン, イェルク
(72)【発明者】
【氏名】マーラー, ハンス-クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】リュートリンガー, デニス
(72)【発明者】
【氏名】マイアー, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ブイヨン, アドリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ドルン, アンケ
(72)【発明者】
【氏名】ベヒトホルド-ピータース, キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】ドレックマン, ティム
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト, アンドレアス
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-521190(JP,A)
【文献】特開2015-163192(JP,A)
【文献】特表2016-534141(JP,A)
【文献】特開2016-214793(JP,A)
【文献】特開2015-163193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
F04B 43/12
G01F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌流体(4)を投与量で容器(3)に移すための投与システム(2)であって、蠕動ポンプ(1;18;19)、
単一または2つの液体流量測定センサ(27)および制御ユニット(26)を備え、
前記蠕動ポンプ(1;18;19)は、ID=1.6から0.8mmの間、特に1.6又は0.8mmの配管を有し、無菌流体の充填体積<100μLについての充填正確度が±3μLであるように構成され、
前記
単一または2つの液体流量測定センサ(27)は、前記蠕動ポンプ(1;18;19)に接続され、前記蠕動ポンプ(1;18;19)を通過した流体の体積を報告するように構成され、
前記
単一の液体流量測定センサ(27)は、
相対容量性圧力測定のための単一の静電容量型圧力センサであり、
前記2つの液体流量測定センサ(27)は、差動容量型圧力測定のための2つの静電容量型圧力センサであり、
前記制御ユニット(26)は、前記蠕動ポンプ(1;18;19)に接続され、かつ、前記
単一または2つの液体流量測定センサ(27)に接続され、
前記制御ユニット(26)は、前記
単一または2つの液体流量測定センサ(27)からのデータ信号を受け取り、受け取ったデータ信号を評価し、評価したデータ信号に従って前記蠕動ポンプ(1;18;19)を適合させるように構成される、投与システム(2)。
【請求項2】
無菌流体(4)が、液体溶液である、請求項1に記載の投与システム(2)。
【請求項3】
液体溶液が、液体mAbs溶液である、請求項2に記載の投与システム(2)。
【請求項4】
無菌流体の充填体積<50μLについての充填正確度が、±1.5μLである、請求項1から3のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項5】
無菌流体の充填体積<30μLについての充填正確度が、±1.0μLである、請求項1から4のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項6】
無菌流体の充填体積<20μLについての充填正確度が、±0.5μLである、請求項1から5のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項7】
無菌流体の充填体積<12μLについての充填正確度が、±0.05μLである、請求項1から6のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項8】
滅菌可能な材料から製造された表面を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項9】
無菌流体が、<15cP±2cPの粘度を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項10】
無菌流体が、16cP±1cPの粘度を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項11】
無菌流体が、<1500cP±20cPの粘度を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項12】
無菌流体が、1480cP±1cPの粘度を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項13】
蠕動ポンプ(1;18;19)が、可撓管(13;138;139)と、対向圧力要素(12;128;129)と、複数の作用部(11;118;119)と、駆動部(17;178;179)とを備え、ここで、
可撓管(13;138;139)が、対向圧力要素に沿って配置され、
作用部(11;118;119)が、可撓管(13;138;139)に対して、駆動部(17;178;179)によって移動可能であり、
可撓管(13;138;139)が、作用部(11;118;119)を移動させることによって、作用部(11;118;119)と対向圧力要素(12;128;129)との間で圧縮可能であり、
可撓管(13;138;139)が、対向圧力要素(12;128;129)に沿って本質的に直線的に配置され、それによって長手方向軸を形成し、
作用部(11;118;119)が、可撓管(13;138;139)の長手方向軸に沿って互いに平行に配置され、
作用部(11;118;119)の各々が、独立して、可撓管(13;138;139)の長手方向軸に本質的に垂直な作動軸に沿って、可撓管(13;138;139)が流体を通過させるために開放されている定位置から、可撓管(13;138;139)が圧縮されてシールされる端位置まで、駆動部(17;178;179)によって直線的に移動可能である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項14】
複数の作用部(11;118;119)のうちの全ての作用部(11;118;119)がそれらの定位置にあるとき、蠕動ポンプ(1;18;19)の可撓管(13;138;139)が複数の作用部(11;118;119)と対向圧力要素(12;128;129)との間で部分的に事前圧縮されている、請求項13に記載の投与システム(2)。
【請求項15】
蠕動ポンプ(1;18;19)を適合させることが、蠕動ポンプ(1;18;19)によって分配される体積を調整することを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の投与システム(2)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の投与システム(2)の正確度を制御するためのプロセスであって、
蠕動ポンプ(1;18;19)による、無菌流体の分配体積が、蠕動ポンプ(1;18;19)を通過した流体(4)の体積を報告するための、蠕動ポンプ(1;18;19)に接続された、
前記単一または2つの静電容量型圧力センサである液体流量測定センサ(27)によって測定され、
前記蠕動ポンプ(1;18;19)は、ID=1.6から0.8mmの間、特に1.6又は0.8mmの配管を有し、評価したデータ信号に従って充填正確度を制御するように適合される、プロセス。
【請求項17】
前記単一または2つのセンサ(27)が、電極間に流体があるときに、空気の静電容量と比較して、キャパシタのオリフィス内の静電容量の変化を測定する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
50μL±3μLの体積が以下の設定:
・ 6±1サイクル、特に2±1サイクル、
・ 30Hz±10ピエゾ周波数、特に30Hz±1ピエゾ周波数
に従って分配される、請求項16又は17に記載のプロセス。
【請求項19】
1.6mmの壁厚を有する配管を有する、請求項16から18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
蠕動ポンプ(1;18;19)が、
前記単一または2つの液体流量測定センサ(27)によって報告される流体(4)の体積に従って制御される、請求項16から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
蠕動ポンプ(1;18;19)を制御することが、蠕動ポンプ(1;18;19)によって分配される体積を調整することを含む、請求項20に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マイクロドージングシステムの正確度を制御するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬学的用途の流体は、100μL未満の容量のように非常に小体積で投与する必要があり得る。このような投与は、しばしば無菌条件下で行われなければならない。製薬業界における力価の増加とより高濃度の薬物製品の製剤化は、50-100μLの範囲でのこのような低充填体積をもたらしている。
【0003】
さらに、治療上の理由から、投与量のわずかな逸脱はしばしば防止されるべきである。ラジアル蠕動ポンプや回転式ピストンポンプのように、液体を比較的小体積で投与するための従来の投与システムは、充填体積が100μL未満、又は50μL未満でも、用量の正確性と一貫性を欠いている(Grebら参照)。これらの従来の投与システムは、CromwelらやThomasらによって説明されているように、液体に比較的高い応力を加えるため、デリケートなバイオテクノロジー製品に損傷を与える可能性さえある。
【0004】
小体積の流体を穏やかかつ正確に投与することができる蠕動ポンプは、国際公開第2016012567号に記載されている。測定チャンバ内の流体の流体圧力を測定するための圧力センサは、国際公開第2014048911号に記載されている。
【0005】
したがって、非経口剤の低体積で高精度の無菌充填のための信頼性の高い工程内制御(IPC)を備えた投与システムを特定し、特徴づける必要性がある。
【発明の開示】
【0006】
発明の開示
本発明は、線形蠕動ポンプと、有利には、分配された体積を測定するためのセンサとを備える投与システムを使用して、流体のマイクロ投与システムの正確度を制御するためのプロセスに関する。本発明は、蠕動ポンプ及び有利には圧力センサを使用して、非経口剤の低体積で高精度の無菌充填のための信頼できる工程内制御を備えた投与システムを提供する。
【0007】
「蠕動」という用語は、要素に沿って波を伝播することを可能にする、可撓管などの中空の可撓性長手方向要素の横断方向又は半径方向の収縮及び弛緩に関する。
【0008】
本明細書で使用される「投与量」という用語は、正確に事前定義された量の流体の提供に関連し得る。それは、例えば50μl、30μl、20μl、12μlなどの100マイクロリットル(μl又はμL)未満の小体積の供給に特に関連し得る。
【0009】
x±yのような数値(x)に関連する「±」という用語には、x+y、x+yとx-yの間、及びx-yを含む任意の値が含まれる。
【0010】
「流体」という用語は、加えられたせん断応力の下で継続的に変形又は流動する任意の物質に関する。特に、この用語は液体に関するものである。
【0011】
「モノクローナル抗体」(mAB)という用語は、全てが固有の親細胞のクローンである同一の免疫細胞によって作られる抗体である。
【0012】
「無菌性」という用語は、病原性微生物が存在しないことを意味する。
【0013】
「界面活性剤」という用語は、液体に添加されたときに表面張力を低下させる添加物、特に薬学的添加物に関する。これらは、例えば、タンパク質の分解及び凝集を防止することによってmAB製剤を安定化することができる。
【0014】
「右」、「左」、「上」、「下」、「上部」及び「底部」という用語、並びにそれらの派生語及び同様の意味を有する用語は、図中の方向を指す。
【0015】
本明細書で使用される「容器」という用語は、無菌流体を受け入れるのに適した格納容器に関する。特に、容器は、バイアル、注射器、又はカートリッジであり得る。
【0016】
より具体的には、非経口剤の低体積で高精度の無菌充填のための信頼性の高い工程内制御(IPC)を備えた投与システム及びプロセスを同定及び特徴づけるための先行技術の必要性は、独立請求項1の特徴によって定義され、かつ独立請求項14の特徴によって定義されるプロセスによって定義されるような投与システムによって解決される。好ましい実施態様は、従属請求項の対象である。
【0017】
一態様では、本発明は、無菌流体を投与量で容器に移すための投与システムである。無菌流体の充填体積<100μLについての充填正確度が±3μLであるように構成された蠕動ポンプを備える投与システム。蠕動ポンプを備えた投与システムを提供することにより、意図された投与正確度を達成することが可能である。特に、100μL未満の充填体積の場合、多くの無菌流体について±3μLの正確度が適切であることがわかっている。
【0018】
好ましくは、無菌流体は、医薬又は薬物溶液などの液体溶液であり、より好ましくは、液体mAb溶液である。
【0019】
本明細書で使用される「薬物」という用語は、一般に有効活性成分(API)とも呼ばれる治療的活性剤、並びに複数のこのような治療的活性物質の組み合わせに関する。この用語はまた、例えば造影剤(例えば、MRI造影剤)、トレーサー(例えば、PETトレーサー)及びホルモンのような、患者に液体の形で投与される必要がある診断薬又は造影剤を包含する。
【0020】
本明細書で使用される「原体」という用語は、患者への投与に適した形態で製剤化又は再構成された上記で定義された薬物に関する。例えば、薬物の他に、原体は、添加物及び/又は他の補助成分をさらに含み得る。本発明の文脈において特に好ましい原体は、薬物溶液、特に経口投与、注射又は注入のための溶液である。
【0021】
本明細書で使用される「薬物製品」という用語は、原体又は複数の原体を含む完成した最終製品に関する。特に、薬物製品は、適切な投与量及び/又は投与のための適切な形態の原体を有するすぐに使用できる製品であり得る。例えば、薬物製品は、予め充填された注射器などの投与装置を含み得る。
【0022】
好ましくは、無菌流体の充填体積<50μLについての充填正確度は±1.5μLであり、無菌流体の充填体積<30μLについての充填正確度は±1.0μLであり、無菌流体の充填体積<20μLについての充填正確度は±0.5μLであり、かつ/又は無菌流体の充填体積<12μLについての充填正確度は±0.05μLである。特に薬物溶液又はmAb溶液が含まれる場合、このような正確度は所定の充填体積に適している。
【0023】
好ましくは、投与システムは、滅菌可能な材料から製造された表面を有する。より具体的には、外部から、又は蠕動ポンプの外面などの外部からアクセス可能である投与システムの全ての表面は、有利には滅菌可能である。このように、投与システムは、無菌流体を充填するために効率的に適用できるように効率的に滅菌することができる。
【0024】
好ましくは、無菌流体は、<15cP±2cPの粘度を有し、無菌流体は、16cP±1cPの粘度を有し、無菌流体は、<1500cP±20cPの粘度を有し、及び/又は無菌流体は、1480cP±1cPの粘度を有する。投与システムは、特に、このような粘度を有する流体に適している可能性がある。
【0025】
蠕動ポンプは、定義された充填正確度を達成するように構成されるのに適した任意の蠕動ポンプとすることができる。例えば、蠕動ポンプは、ラジアル蠕動ポンプであり得る。
【0026】
しかしながら、好ましくは、蠕動ポンプは、可撓管と、対向圧力要素と、複数の作用部と、駆動部とを備え、ここで、可撓管は、対向圧力要素に沿って配置され、作用部は、可撓管に関連して駆動部によって移動可能であり、可撓管は、作用部を移動させることによって、作用部と対向圧力要素との間で圧縮可能であり、可撓管は、本質的に、対向圧力要素に沿って直線的に配置され、それによって、長手方向軸を形成し、作用部は、可撓管の長手方向軸に沿って互いに平行に配置され、作用部の各々は、可撓管の長手方向軸に本質的に垂直な作動軸に沿って、流体が通過するために可撓管が開放される定位置から、可撓管が圧縮されてシールされる端位置まで、駆動部によって独立して直線的に移動可能である。
【0027】
蠕動ポンプの対向圧力要素は、可撓管のための案内部を有する固定要素とすることができる。特に、可撓管は、対向圧力要素の案内部の中に又は案内部に沿って配置することができる。案内部は、可撓管に面する平坦面であるか又はそれを備えることができ、可撓管を直線的に配置することを可能にする。可撓管を直線状に配置することにより、蠕動ポンプは線形蠕動ポンプとすることができる。作用部のいずれかが可撓管に作用するか又はそれを押すと、対向圧力要素はその元の位置に固定されたままになり、可撓管は作用部と対向圧力要素との間で圧縮される。
【0028】
可撓管は、約200μmから約1000μm、又は約300μmから約900μm、又は約500μmから約800μmの内径を有することができる。このような管は、意図された体積で蠕動ポンプに投与量を提供するのに適切であり得る。
【0029】
蠕動ポンプの作用部は、可撓管に作用するための面を有する立方体ブロック又は他の同様の物体であり得る。面は平らであり、50マイクロメートル(μm)から1000μmの範囲、又は100μmから700μmの範囲、又は200μmから500μmの範囲の幅を有することができる。作用部は、最大ストローク、すなわち、その定位置とその端位置との間の長さを、約800μm、又は約600μm、又は約500μm、又は約400μm、又は約300μmにすることができる。このような作用部は、本発明によるシステムにおいて、意図された体積で投与量を提供するのに適切であり得る。
【0030】
本明細書で使用される「圧縮」という用語は、管の弾性変形に関することができる。特に、それは、可撓管の側壁を互いの方向に、すなわち横断方向又は半径方向に弾性的に移動させ、それによって可撓管の内側ダクトを狭くするか又は閉じることに関することができる。この文脈において、「シール」という用語は、本質的に流体が可撓管の内部ダクトを通過することができない程度に可撓管を圧縮することに関することができる。
【0031】
作用部の定位置に関連して、可撓管は、流体が可撓管の内側ダクトを流れることができるという意味で、流体が通過するために開いている。これは、可撓管の圧縮が最小になるように、それぞれのアクチュエータが対向圧力要素から可能な最大距離まで移動されている状況において最良であり得る。
【0032】
線形アクチュエータを有する投与システムの特定の蠕動ポンプは、無菌環境において、比較的小体積の投与量を正確かつ反復的に提供することを可能にする。それは、工業的投与量又は充填プロセスラインで使用するのに特に適している。それは、例えば、薬学的充填プロセスにおいて、最大25μl又は50μlまで、さらには10μlなど、1ml未満の体積で非経口薬を無菌的に投与するために使用され得る。ラジアル蠕動ポンプのような他の蠕動投与システムと比較して、このような蠕動装置は、各目標充填体積に対して意図された充填正確度を達成するように効率的に構成することができる。例えば、線形アクチュエータは、管の圧縮、したがって、投与又は充填体積を微調整できるように非常に正確に移動させることができる。
【0033】
さらに、可撓管は、ポンピングされるときに直線的に配置されるので、この蠕動ポンプは、広範囲の粘度を有する流体に適している。特に、mAb溶液のような比較的高い粘度を有する流体も、蠕動ポンプで投与することができる。
【0034】
蠕動ポンプの駆動部は、作用部を精密に前進又は移動させることを可能にするステッピングモーター又はサーボモータとすることができる。あるいは、駆動部は、圧電駆動を備える。圧電駆動により、様々な投与計画を蠕動ポンプに実装できるように、作用部を精密かつ柔軟に動かすことができる。圧電駆動を備えた駆動部の配置は、駆動部が比較的少数の単純な部品で具現化されることを可能にする。したがって、それは、比較的堅牢であり、メンテナンス労力を比較的少なくすることができる。
【0035】
可撓管は、好ましくは、複数の作用部のうちの全ての作用部がそれらの定位置にあるときに、複数の作用部と対向圧力要素との間で部分的に事前圧縮されている。このような事前圧縮は、可撓管が実質的な長さにわたって固定されることを可能にする。特に、作用部が適用される区分において、可撓管が長手方向に移動することを防止することができる。このように、可撓管の精密な圧縮が可能であり、可撓管の長手方向の側壁の応力を低減又は防止することができる。さらに、このような事前圧縮は、充填体積並びに充填正確度の事前定義及び調整を可能にする。それにより、充填体積は、作用部と対向圧力要素との間にある可撓管の内部空間によって定義することができる。また、充填体積のこのような調整は、例えば、流体を加熱することによって、又は機械的応力によって引き起こされる可撓管若しくは配管の軟化によって引き起こされる、充填体積のその設定点からの偏差の増大を補償することを可能にする。
【0036】
好ましくは、投与システムは、蠕動ポンプを通過した流体の体積を報告するように構成された、蠕動ポンプに接続された液体流量測定センサを備える。
【0037】
適切なセンサには、流量センサ、静電容量型圧力センサなどの圧力センサ、及びカメラベースのセンサなどの光学センサが含まれる。特定の適切なセンサは、静電容量型圧力センサである。
【0038】
このようなセンサは、充填された体積に関するフィードバックを提供することを可能にする。例えば、電子信号をフィードバックとして生成することができる。次いで、フィードバックを使用して、その充填体積に関して蠕動ポンプを制御することができる。例えば、センサは、充填体積についてのフィードバックを提供することができ、目標の体積が達成されると、蠕動ポンプは停止又は中断される。このように、意図された充填正確度は、完全に自動化された方法で効率的に達成することができる。特に、静電容量型圧力センサは、充填体積が実行時間において多かれ少なかれ決定され得るように、比較的迅速なフィードバックを提供することを可能にする。このように、特に高度な充填正確度を達成することができる。特に、上で説明したような線形アクチュエータを有する蠕動ポンプと組み合わせた場合、センサの迅速なフィードバックが、アクチュエータの動きによって迅速に、確実に、精密に行われ、充填量を定義することができる。
【0039】
差動容量型圧力測定のために、投与システムは、静電容量型圧力センサのような2つの類似又は同一のセンサを備えることができる。このような投与システムは、2つのセンサの間に流体抵抗を有する設定を可能にし、その結果、流体抵抗を通る任意の流れが、抵抗の前後の圧力差を変化させる。測定されるのは、電極間の管の機械的膨張によって静電容量が変化している圧力センサの信号である。このような配置は、達成された充填体積を特に正確かつ効率的に決定することができる。
【0040】
相対容量性圧力測定のために、単一センサを流体抵抗の一方の側に配置することができ、一方、分配手順全体を通して抵抗の他方の側の周囲圧力が保証され、流体抵抗を通る流れによって引き起こされるセンサ内の圧力の相対的変化が測定される。
【0041】
蠕動ポンプを制御するために、投与システムは、可撓管に作用する圧縮力を制御するように適合された制御ユニットを備えることができる。制御ユニットは、例えば、蠕動ポンプの可撓管の事前圧縮を調節することによって、アクチュエータの経路の長さを調整するように適合させることができる。このような力の制御により、流体の投与量を長期間にわたって精密に一定のレベルに保つことができる。特に、可撓管の材料の経時的な特性の変化を補償することができる。例えば、時間の経過とともに、アクチュエータのミルキング動作の機械的ストレスによって可撓管の材料が摩耗する可能性がある。このような状況では、圧縮率は減少し得る。可撓管の事前圧縮を調節することによってアクチュエータの経路を増加させることによって、このような減少は、力を一定に保つことができるように補償することができる。また、このような制御ユニットは、比較的高い充填正確度を達成できるように、センサのフィードバックを効率的に評価することを可能にする。
【0042】
好ましくは、投与システムは、蠕動ポンプに連結又は接続され、液体流量測定センサに連結又は接続された制御ユニットを備え、制御ユニットは、液体流量測定センサからのデータ信号を受け取り、受け取ったデータ信号を評価し、評価したデータ信号に従って蠕動ポンプを適合させるように構成される。このような制御ユニットは、投与システム、特にその蠕動ポンプを完全に自動化された様式で効率的に制御することを可能にする。
【0043】
それにより、蠕動ポンプを適合させることは、好ましくは、蠕動ポンプによって分配される体積を調整することを含む。例えば、調整された体積は、蠕動ポンプによって提供される1回分の投与量の体積であり得る。より具体的には、体積を調整することは、蠕動ポンプのアクチュエータの移動量を変化させること、蠕動ポンプにおける管の内部空間を縮小又は拡大するために蠕動ポンプの管のプレテンショニングを変化させること、及び/又は分配される体積又は投与量あたりの作動のサイクル数を指定することを含むことができる。
【0044】
別の態様では、本発明は、上述の投与システムの正確度を制御するためのプロセスであり、ここで、蠕動ポンプによる無菌流体の分配量は、蠕動ポンプを通過する流体の体積を報告するための、蠕動ポンプに接続された液体流量測定センサによって測定される。
【0045】
このようなプロセス及び以下に記載されるその好ましい実施態様は、投与システム及び上述されるその好ましい実施態様の効果及び利益を効率的に達成することを可能にする。
【0046】
好ましくは、プロセスの中で、センサは、電極間に流体があるときに、空気の静電容量と比較して、キャパシタのオリフィス内の静電容量の変化を測定する。
【0047】
好ましくは、50μL±3μLの体積は、以下の設定:6±1サイクル、特に2±1サイクル、及び30Hz±10ピエゾ周波数、特に30Hz±1ピエゾ周波数に従って分配される。このような設定は、意図された充填体積において適切な充填正確度を効率的に達成することを可能にする。
【0048】
好ましくは、このプロセスは、ID=1.6-0.8mm、特に1.6又は0.8mmの間の配管を含む。そのため、略語IDは配管の内径に関連する。配管は、投与システムによって構成することができ、特に、蠕動ポンプの可撓管とすることができる。
【0049】
好ましくは、このプロセスは、1.6mmの壁厚を有する配管を含む。この場合も、配管は、投与システムによって構成することができ、特に、蠕動ポンプの可撓管とすることができる。
【0050】
好ましくは、蠕動ポンプは、液体流量測定センサによって報告される流体の体積に従って制御される。特に、液体流量測定センサは、測定される流体の体積を表すデータ信号を提供することができる。このデータ信号は、データ信号を評価し、評価されたデータ信号に従って蠕動ポンプの設定を調整する制御ユニットに転送することができる。
【0051】
そのため、蠕動ポンプを制御することは、好ましくは、蠕動ポンプによって分配される体積を調整することを含む。
【0052】
本開示のさらなる実施態様を以下に列挙する:
【0053】
E1:無菌流体を投与量で移送するための投与システムであって、特に、無菌流体が液体溶液、特に液体mAbs溶液であり、<100μLの流体の充填体積に対する充填正確度が±3μLであり、特に<50μLの充填体積に対する充填正確度が±1.5μLである、投与システム。
【0054】
E2:特に無菌流体が液体mAbs溶液である、無菌流体を投与量で移送するための、本明細書に記載の投与システム。
【0055】
E3:無菌mAbs溶液を投与量で移送するための、本明細書に記載の投与システム。
【0056】
E4:無菌流体が界面活性剤を含む、本明細書に記載の投与システム。
【0057】
E5:無菌流体を投与量で移送するための投与システム。
【0058】
E6:無菌流体を投与量で移送するための投与システムであって、特に、無菌流体が液体溶液、特に液体mAbs溶液であり、<100μLの流体の充填体積に対する充填正確度が±3μLである、投与システム。
【0059】
E7:無菌流体を投与量で移送するための投与システムであって、特に、無菌流体が液体溶液、特に液体mAbs溶液であり、<50μLの流体の充填体積に対する充填正確度が±1.5μLである、投与システム。
【0060】
E8:無菌流体を投与量で移送するための投与システムであって、特に、無菌流体が液体溶液、特に液体mAbs溶液であり、100-20μLの間の充填体積に対する充填正確度が±1.0μLである、投与システム。
【0061】
E9:無菌流体の充填体積<30μLについての充填正確度が±1.0μLであり、特に、流体の充填体積<20μLについての充填正確度が±0.5μLである、本明細書に記載の投与システム。
【0062】
E10:無菌流体の充填体積<30μLについての充填正確度が±1.0μLである、本明細書に記載の投与システム。
【0063】
E11:無菌流体の充填体積<20μLについての充填正確度が±0.5μLである、本明細書に記載の投与システム。
【0064】
E12:無菌流体の充填体積<12μLについての充填正確度が±0.05μLである、本明細書に記載の投与システム。
【0065】
E13:滅菌可能な材料から製造された表面を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0066】
E14:無菌流体が1500から15cPの間の粘度を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0067】
E15:無菌流体が、<15cP±2cP、特に16cP±1cPの粘度を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0068】
E16:無菌流体が、<15cP±2cPの粘度を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0069】
E17:無菌流体が、16cP±1cPの粘度を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0070】
E18:無菌流体が、16cPの粘度を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0071】
E19:無菌流体が、<1500cP±20cP、特に1480cP±1cPの粘度を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0072】
E20:無菌流体が、<1500cP±20cPの粘度を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0073】
E21:無菌流体が、1480cP±1cPの粘度を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0074】
E22:無菌流体が、1480cPの粘度を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0075】
E23:蠕動ポンプ(1;18;19)が、可撓管(13;138;139)と、対向圧力要素(12;128;129)と、複数の作用部(11;118;119)と、駆動部(17;178;179)とを備え、ここで、
可撓管(13;138;139)が、対向圧力要素に沿って配置され、
作用部(11;118;119)が、可撓管(13;138;139)に対して、駆動部(17;178;179)によって移動可能であり、
可撓管(13;138;139)が、作用部(11;118;119)を移動させることによって、作用部(11;118;119)と対向圧力要素(12;128;129)との間で圧縮可能であり、
可撓管(13;138;139)が、対向圧力要素(12;128;129)に沿って本質的に直線的に配置され、それによって長手方向軸を形成し、
作用部(11;118;119)が、可撓管(13;138;139)の長手方向軸に沿って互いに平行に配置され、
作用部(11;118;119)の各々が、独立して、可撓管(13;138;139)の長手方向軸に本質的に垂直な作動軸に沿って、可撓管(13;138;139)が流体を通過させるために開放されている定位置から、可撓管(13;138;139)が圧縮されてシールされる端位置まで、駆動部(17;178;179)によって直線的に移動可能であり、かつ
複数の作用部(11;118;119)のうちの全ての作用部(11;118;119)がそれらの定位置にあるとき、可撓管(13;138;139)が複数の作用部(11;118;119)と対向圧力要素(12;128;129)との間で部分的に事前圧縮されている、
本明細書に記載の投与システム。
【0076】
E24:本明細書に記載の蠕動ポンプが圧電駆動を備える、本明細書に記載の投与システム。
【0077】
E25:本明細書に記載の蠕動ポンプであって、複数の作用部(11;118;119)が、一連の3から15又は5から13又は7から11の平行な作用部(11;118;119)である、本明細書に記載の投与システム。
【0078】
E26:本明細書に記載の蠕動ポンプであって、可撓管(13;138;139)を対向圧力要素(12;128;129)に沿って本質的に直線的な位置に解放可能に固定するための管固定構造(14)を備える、本明細書に記載の投与システム。
【0079】
E27:本明細書に記載の蠕動ポンプであって、管固定構造(14)が、延長ジャケット(14)を備え、可撓管(13;138;139)の長手方向端部の一方が、延長ジャケット(14)に固定されている、本明細書に記載の投与システム。
【0080】
E28:本明細書に記載の蠕動ポンプであって、可撓管(13;138;139)が、使い捨て材料から製造される、本明細書に記載の投与システム。
【0081】
E29:本明細書に記載の蠕動ポンプであって、可撓管(13;138;139)の長手方向端部の一方に接続された流体リザーバ(188;189)と、可撓管(13;138;139)の長手方向端部の他方に接続された充填針(15;158;159)とを備える、本明細書に記載の投与システム。
【0082】
E30:本明細書に記載の蠕動ポンプが、1ミリリットル未満の体積の流体の投与量を容器に自動的に充填するための充填装置(2)であって、
充填するために複数の容器を配置可能である容器ホルダ、
本明細書に記載の蠕動ポンプ(1;18;19)の組、及び
蠕動ポンプ(1;18;19)の組の各々の蠕動ポンプ(1;18;19)が、充填するために容器ホルダ内に配置された複数の容器のうちの1つに隣接して配置されるように、蠕動ポンプの組を位置決めし、かつ容器ホルダから蠕動ポンプ(1;18;19)の組を取り出すように配置された投与システムポジショナ
を備える充填装置(2)を備える、本明細書に記載の投与システム。
【0083】
E31:本明細書に記載の蠕動ポンプであって、請求項9又は10に記載の充填装置が、容器ホルダをラインに沿って運搬するための運搬装置を備えており、蠕動ポンプ(1;18;19)の組の各蠕動ポンプ(1;18;19)が、容器ホルダ内に配置された複数の容器のうちの1つに隣接して位置決めされるときに、ポンプ(1;18;19)ポジショナが容器ホルダに隣接する蠕動ポンプの組を運搬するように配置されている、本明細書に記載の投与システム。
【0084】
E32:ID=1.6-0.8mmの間の配管を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0085】
E33:ID=1.6mmの配管を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0086】
E34:ID=0.8mmの配管を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0087】
E35:1.6mmの壁厚を有する配管を有する、本明細書に記載の投与システム。
【0088】
E36:管によって接続された、リザーバ、線形蠕動ポンプ、及び分配針を備える、本明細書に記載の投与システム。
【0089】
E37:蠕動ポンプによる、無菌流体の分配体積が、ポンプを通過した流体の体積を報告するための、蠕動ポンプに接続された液体流量測定センサによって測定される、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0090】
E38:センサが圧力センサである、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0091】
E39:センサが静電容量型圧力センサである、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0092】
E40:本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するプロセスであって、センサが、電極間に流体があるときに、空気の静電容量と比較して、キャパシタのオリフィス内の静電容量の変化を測定するプロセス。
【0093】
E41:センサが分配針のオリフィスに設置され、それによって分配針から実際に放出された体積を測定する、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0094】
E42:単一の圧力センサを使用して、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0095】
E43:流体抵抗として分配針を使用する、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0096】
E44:本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセスであって、50μL±3μLの体積が以下の設定:
・ 6±1サイクル、特に2±1サイクル、
・ 30Hz±10ピエゾ周波数、特に30Hz±1ピエゾ周波数
に従って分配されるプロセス。
【0097】
E45:50μL±3μLの体積が6±1サイクルで分配される、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0098】
E46:50μL±3μLの体積が6サイクルで分配される、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0099】
E47:50μL±3μLの体積が2±1サイクルで分配される、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0100】
E48:50μL±3μLの体積が2サイクルで分配される、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0101】
E49:50μL±3μLの体積が1サイクルで分配される、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0102】
E50:50μL±3μLの体積が、30Hz±10ピエゾ周波数で分配される、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0103】
E51:50μL±3μLの体積が、30Hz±1ピエゾ周波数で分配される、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0104】
E52:50μL±3μLの体積が、30Hzピエゾ周波数で分配される、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0105】
E53:ラジアルポンプ充填を用いて、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【0106】
E54:線形蠕動ポンプ充填を用いて、本明細書に記載の投与システムの正確度を制御するためのプロセス。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【
図3】プロセス内の第1の状態にある蠕動ポンプの概略図。
【
図4】
図3のプロセス内の第2の状態にある
図3の蠕動ポンプの概略図。
【
図5】
図3のプロセス内の第3の状態にある
図3の蠕動ポンプの概略図。
【
図6】
図3のプロセス内の第4の状態にある
図3の蠕動ポンプの概略図。
【
図7】低充填体積のための信頼性の高い工程内制御方法のセンサコンセプト。
【
図8】3x50の単回投与の投与正確度、測定点の上の線は脱気水の正確度を示し、測定点の下の線は高粘度モデルのグリセロール水溶液(16.49cP)の正確度を示す。
【
図9】2つの異なる配管の充填体積範囲の直線性。三角形は、ID=1.6mm、壁厚1.6mmを有する配管の体積範囲を示す。四角は、ID=0.8mm、壁厚1.6mmを有する配管の体積範囲を示す。
【
図10】異なるポンプの比較。2つの異なる液体流体を、3つの異なるポンプ中で15回まで再循環させた。濃い灰色の列は、界面活性剤を含まない液体流体を表し、薄い灰色の列は、界面活性剤を含む液体流体を表す。ピストンポンプ再循環後に最も高い粒子数を見出した。ラジアル蠕動ポンプ充填は、線形蠕動ポンプ充填よりも、肉眼では見ることができない粒子数が多かった。
【発明を実施するための形態】
【0108】
実施態様の説明
以下の説明において、特定の用語は、便宜上使用され、限定として解釈されるべきではない。用語「右」、「左」、「上」、「下」、「上部」及び「底部」は、図中の方向を指す。用語法は、明示的に言及された用語と、それらの派生語及び同様の意味を持つ用語を含む。
【0109】
図1は、本発明による投与システムの線形蠕動ポンプ1の第1の実施態様を示す。蠕動ポンプ1に加えて、投与システムは、
図7に関連して以下に記載されるように、制御ユニット26及び静電容量型圧力センサ27を備える。蠕動ポンプ1は、可撓管13、管固定構造としての管延長ジャケット14、対向圧力要素としての対向圧力板12、10個の平行な圧電作用部11の組、充填針としての分配針15、及び駆動部としての作用部11を収容する圧電駆動ユニット17を備える。管延長ジャケット14は、2つのストラップ141及び管状網状部分142を有する。可撓管13の固定区分131は、管延長ジャケット14の網状部分142を通して突出している。例えばストラップ141を引っ張ることによって網状部分142を拡張すると、その内部を狭め、可撓管13を固定する。
【0110】
管延長ジャケット14の右側に続く可撓管13は、対向圧力板12の平坦面と作用部11の作動面との間を通過する。対向圧力板12の平坦面は、可撓管13が直線的に配置される案内部を形成する。したがって、可撓管13は、流体を前進させる方向と同一である長手方向135に延びる長手方向軸を有する。対向圧力板12は、可撓管13、分配針15及び駆動ユニット17に対して固定的に又は移動可能に配置される。
【0111】
作用部11は、それらの作動面が、可撓管13に向いた本質的に連続した前面を構成するように、隣接して平行に配置されている。圧電駆動ユニット17は、長手方向135に垂直なストローク方向に、作用部11の各々を互いに独立して直線的に移動させることができる。可撓管13は、対向圧力板12と作用部11との間で事前圧縮されている。このために、可撓管は、管延長ジャケット14と対向圧力板12との間に狭窄区分132を、対向圧力板12と対向圧力板12の右側に続く袋ナット16との間に拡幅区分134を、それぞれ有する。このように、可撓管13は、対向圧力板12及び作用部11に対してクランプされて、固定的に位置合わせされる。
【0112】
図1では、左端の4つの作用部11及び右端の3つの作用部11は、それらが対向圧力板12に対して最大距離にある定位置にある。左から数えて6番目の作用部11、つまり右から数えて5番目の作用部11は、駆動ユニット17によって、作用部11に接触する可撓管13の壁の側面が、対向圧力板12に接触する可撓管13の壁の側面に横断方向又は半径方向に押し付けられるその端位置へと移動している。これにより、可撓管13が弾性的に圧縮されてその内部ダクトがシールされるため、流体は作用部11を通過できない。端位置にある作用部11に隣接する2つの作用部11は、駆動ユニット17によって、それらの定位置と端位置の間の位置に移動される。これにより、移動した作用部が、可撓管13に波形部133を生じさせる。
【0113】
可撓管13の拡幅区分134は、袋ナット16を介して圧電駆動ユニット17及び対向圧力板12に固定されている分配針15に渡る。分配針15は、近位側、すなわち左側の本体部分151と、遠位側、すなわち右側の筒状部分152とを有する。
【0114】
使用時には、投与システムの蠕動ポンプ1は、分配針15の筒状部分152の開放端部から流体の投与量を提供するための2つのモード又はスキームで動作させることができる。第1の経路制御モードでは、アクタ11は、同じように順々に移動される。第1の工程では、左端の作用部11がその端位置に移動し、右側に隣接する作用部11が部分的にその端位置の方向に移動する。他の全ての作用部11はそれぞれの定位置にある。第2の工程では、左から2番目の作用部11がその端位置に移動し、隣接する2つの作用部11がそれらの端位置の方向へと部分的に移動する。他の全ての作用部11はそれぞれの定位置にある。第3の工程では、左から3番目の作用部11がその端位置に移動し、隣接する2つの作用部11がそれらの端位置の方向へと部分的に移動する。他の全ての作用部11はそれぞれの定位置にある。作用部11のこのような段階的な移動は、第10の工程において、一番右の作用部11がその端位置に移動し、左側の隣接する作用部11がその端位置の方向に部分的に移動するまで続けられる。他の全ての作用部11はそれぞれの定位置にある。第10工程の後、このプロセスは第1の工程から再度開始される。
【0115】
上述のように作用部を移動させることにより、可撓管13の側壁に波が生成される。この波は、正確に事前定義された体積の流体を長手方向135に右に押し出す。これにより、事前定義された流体の体積が分配針15を通過し、筒状部分152の開放端から出る。1回の投与量の全体積は、作用部11により波を生成するサイクルの数によって定義することができる。サイクル数は、複数のオフセットサイクルを同時に実行することにより、完全な1サイクル未満にすることもできる。
【0116】
蠕動ポンプ1を作動させる第2の時間-圧力制御モードでは、1つ又は複数の作用部11が端部位置に移動され、それによって可撓管13をシールする。作用部11の上流において、流体は圧力下に置かれる。1つ又は複数の作用部11を移動させて定位置に戻すことにより、流体は、過圧力により長手方向135に右へと前進し、分配針15の筒状部分152の開放端から出る。特定の時間後、1つ又は複数の作用部11は再び端位置に移動し、可撓管13が再びシールされる。
【0117】
時間-圧力モードでは、分配される体積は、可撓管13が開放される時間と、作用部11の上流の流体内の圧力によって事前に定義される。可撓管13の所与の直径において、圧力が高いほど、及び/又は時間が長いほど、流体の分配体積は大きくなる。
【0118】
制御ユニット26では、投与システム、特にその蠕動ポンプ1の動作の様々なパラメータを設定することができる。一般的な動作パラメータは、作用部11の数、作用部11を前進させる工程の速度に対応する波の速度、及び同時に移動する作用部11の数及びストローク(例えば定位置と端位置の間の経路のパーセンテージ)によって決定される波の寸法を含むことができる。経路制御モードに特異的なパラメータは、波が移動しなければならない経路長(例えば0.1ミリメートル(mm)から1000mm)、波が経路長を移動する時間(例えば、1ミリ秒(ms)から10000ms)を含むことができる。時間-圧力モードに特異的なパラメータは、可撓管をシールする作用部11の識別、1回の単一投与量のために可撓管13が開放される時間、及び作用部11の上流の流体の圧力を含むことができる。制御ユニットは、パラメータを監視し、それにより駆動ユニットを介して圧力及び作用部11を制御する。
【0119】
図2には、蠕動ポンプ18の第2の実施態様を有する本発明による投与システム2の実施態様が示されている。蠕動ポンプ18に加えて、投与システムは、
図7に関連して以下に記載されるように、制御ユニット26及び静電容量型圧力センサ27を備える。蠕動ポンプ18は、
図1に示す蠕動ポンプ1と同様に具現化される。それは、分配針158、可撓性管138、対向圧力要素としての対向圧力板128、及び駆動部として6つの平行な圧電作用部118を収容する圧電駆動ユニット178を有する。蠕動ポンプ18は、可撓管138の右手又は上流端に接続されている流体リザーバとしてのタンク188をさらに備える。
【0120】
投与システム2は、タンク188に接続する圧力制御因子21をさらに備える。圧力調整器21によって、タンク188内部の流体の圧力を調整することができる。タンク188は、タンク188の充填レベルを感知するレベルセンサ22に接続されている。レベルセンサ22によって、タンク188の流体レベルを監視し、制御ユニット26によって制御することができる。
【0121】
分配針158は、温度計24及び凝縮トラップ25が接続された針容器23内部に配置される。針容器23により、蒸気滅菌用の加圧ユニットが構築される。それによって、例えば121℃を超える温度の清浄な蒸気が、タンク188から分配針158の開放端まで、微生物を死滅させるための充填装置2の完全な流体経路を通過することができる。分配針158を出た後、蒸気は針容器158を満たし、分配針158の外表面も滅菌する。蒸気から発生する凝縮物は、針容器23から凝縮物トラップ25に向かって排出され、そこで廃棄される。このように、蒸気を適用することにより、例えば15分間にわたって、2バールの圧力が構築され、満足な滅菌条件が提供され得ることを確実にすることができる。
【0122】
投与システム2はまた、容器ホルダとしてのバイアルホルダ及び投与システムポジショナとしてのリニアロボットを備える。リニアロボットは、針容器23を、蠕動ポンプ18と共に、バイアルホルダにより保持されるバイアルに隣接して位置決めするように配置される。このように、リニアロボットは、投与地点を充填地点の近くに位置させることを可能にし、これにより、非常に精密な充填又は投与が可能になる。
【0123】
図3は、本発明によるプロセスの一実施態様において動作する、本発明による投与システムの蠕動ポンプ19の第3の実施態様を示す。蠕動ポンプ19は、
図1に示す蠕動ポンプ1及び
図2に示す蠕動ポンプ18と同様に具現化される。下流又は上から下へ向かう方向に、蠕動ポンプ19は、可撓管139の上部長手方向端部に接続されている流体リザーバ189を備える。リザーバ189は、高圧で投与するための流体を保持する。可撓管139は、対向圧力板129と10個の平行な作用部119との間に延在し、可撓管139は、対向圧力板129と作用部119との間で事前に圧縮される。10個の作用部は、圧電駆動ユニット179内に収容されている。その底部又は下流の長手方向端部において、可撓管139は分配針159に接続される。10個の作用部119は、
図3では、上部又は上流の第1作用部119から底部又は下流の第10作用部119まで番号が付されている。
【0124】
図3には、第5及び第6作用部119が圧電駆動ユニット179によってそれらの端位置へと移動している、プロセスの初期段階にある蠕動ポンプ19が示されている。それによって、これら2つの作用部119は、上部矢印によって示されるように、流体が第5の作用部11までしか前進できないように、可撓管139をシールする。さらに、第9作用部119が駆動ユニット179によって、定位置と端位置との間にある中間位置に移動している。中間位置では、第9作用部119は、流体が通過することを妨げることなく、可撓管139をわずかに圧縮している。
【0125】
以下は、この説明の残りの部分に適用される。図面を明確にするために、図面が、説明の直接関連する部分において説明されていない参照符号を含む場合、以前の説明部分を参照されたい。
【0126】
図4は、プロセスの次の段階における蠕動ポンプ19を示す。
図3に示される初期段階と比較して、第5及び第6作用部119は、駆動ユニット179によりそれらの定位置に移動している。第9作用部11は、依然としてその中間位置にある。これにより、加圧された流体は、右側の矢印によって示されるように、可撓管139及び分配針159を通過して充填されるべき容器中に入ることができる。蠕動ポンプ19は、前述したような時間-圧力モードで動作する。
【0127】
図5に示されるように、事前に定義された量の流体を分配針159から分配することを可能にする事前に定義された時間の後、第5及び第6作用部119はそれらの端位置へと再び移動する。第9作用部11は、依然としてその中間位置にある。これにより、可撓管139は再びシールされて、流体は第5作用部119までしか前進できない。
【0128】
図6では、プロセスのさらなる段階における蠕動ポンプ19が示されている。この段階では、第9作用部119が駆動ユニット117によりその定位置に戻る。第5及び第6作用部119は、依然としてそれらの端位置にあって可撓管139をシールする。第9作用部を元に戻すことにより、可撓管139の下部に負圧が誘導される。この結果、可撓管139の下部に逆方向の吸引効果が生じ、これにより、流体の漏れ及び損失を防ぐことができる。流体の次の投与量を提供するために、プロセスが繰り返される。
【0129】
図7は、
図1-7に記載された投与システムの制御ユニット26及び静電容量型圧力センサ27を示している。より具体的には、
図7Aは、動作前の制御ユニット26及び静電容量型圧力センサ27を示し、
図7Bは、動作中の制御ユニット26及び静電容量型圧力センサ27を示す。
【0130】
静電容量型圧力センサ27は、無菌流体としてのmAb溶液4で満たされた容器としてのバイアル3に向けられている。さらに、静電容量センサ27は、データ通信ケーブルによって制御ユニット26に接続されている。静電容量センサ27は、バイアル3に充填されたmAb溶液4の体積に関するフィードバックとして、制御ユニット26にデータ信号を提供する。制御ユニット26は、フィードバックを使用して、その充填体積に関して蠕動ポンプ1、18、19を制御する。
【0131】
蠕動ポンプ1、18、19を制御するために、制御ユニット26は、可撓管13、138、139に作用する圧縮力を制御する。それにより、制御ユニット26は、可撓管13、138、139の事前圧縮を調整することによって、アクチュエータ11、118、119の経路の長さを調整する。このような力の制御により、流体の投与量が長期間にわたって精密に一定のレベルに保たれる。
【0132】
本発明は、図面及び上記の記載において詳細に例示及び説明されてきたが、そのような例示及び説明は、説明的又は例示的なものであって、限定的なものではないと考えられるべきである。以下の特許請求の範囲及び精神の範囲内で、当業者によって変更及び修正を行うことができることが理解されるであろう。特に、本発明は、上記及び以下に記載される異なる実施態様からの特徴の任意の組み合わせを含むさらなる実施態様を含む。
【0133】
本発明はまた、図面に個別に示されるさらなる特徴を全て含むが、それらの中には上記又は以下に記載されていないものもあり得る。また、図面及び明細書に記載された実施態様の単一の代替例、並びにその特徴の単一の代替例は、本発明の主題又は開示された主題から削除することができる。本開示は、特許請求の範囲又は例示的な実施態様において定義された特徴からなる主題、並びに前記特徴を含む主題を含む。
【0134】
さらに、特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という単語は、他の要素又は工程を除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数形を除外しない。単一のユニット又は工程は、特許請求の範囲に記載されたいくつかの特徴の機能を満たすことができる。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。属性又は値に関連する「本質的に(essentially)」、「約(about)」、「およそ(approximately)」などの用語は、特に、それぞれ、厳密に属性又は厳密に値も定義する。所与の数値又は範囲の文脈における「約(about)」という用語は、例えば、所与の値又は範囲の20%以内、10%以内、5%以内、又は2%以内の値又は範囲を指す。特許請求の範囲における参照記号は、範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。