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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20240708BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240708BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20240708BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240708BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K7/14
C08K3/16
C08K3/22
C08G69/26
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021532222
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2019084017
(87)【国際公開番号】W WO2020115292
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】18306626.5
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ランゲル デ オリヴェイラ ジュニオール、アダイル
(72)【発明者】
【氏名】ザネラート クワジマ,ファビアナ
(72)【発明者】
【氏名】ダ シルヴァ,アントニオ セザール
(72)【発明者】
【氏名】タイクサイラ,カロリナ
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524016(JP,A)
【文献】特表2015-514849(JP,A)
【文献】特表2001-505246(JP,A)
【文献】特開2017-014387(JP,A)
【文献】特開平03-017156(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191269(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 69/00-69/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド組成物であって、
(a)ポリアミド組成物の総質量に基づいて20~60質量%の、2種以上の二酸に由来する繰り返し単位及び1種以上のジアミンに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミドであって、
(i)前記第1半結晶性ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、20モル%以上~40モル%未満の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)前記第1半結晶性ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、60モル%超~80モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有し、
30Pa・s~80Pa・sの、ISO 11443に従って290℃で1/2500秒のせん断速度で測定した溶融粘度を有する、少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミド、
(b)ポリアミド組成物の総質量に基づいて5~30質量%の、2種以上の二酸に由来する繰り返し単位及び1種以上のジアミンに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミドであって、
(i)前記第2半結晶性ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、40モル%以上~90モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)前記第2半結晶性ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、10モル%以上~60モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有し、290℃超の溶融温度を有する、少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミド、
(c)ポリアミド組成物の総質量に基づいて10~70質量%の、円形断面積を有する少なくとも1種のガラス繊維、及び
(d)任意に少なくとも1種のさらなる添加剤
を含む、ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミドが、280℃~300℃の溶融温度を有する、請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミドが、245℃~260℃の結晶化温度(Tc1)を有する、請求項1又は2に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミドが55Pa・s~65Pa・sの溶融粘度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミドが、295℃~315℃の溶融温度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミドが、250℃~270℃の結晶化温度(Tc2)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミドが、80Pa・s~100Pa・sの、ISO 11443に従って325℃で1/2500秒のせん断速度で測定された溶融粘度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項8】
0.01~1.0質量%の少なくとも1種の熱安定剤を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
前記ポリアミド組成物の総質量に基づいて50質量%の量の少なくとも1種のガラス繊維を含み、260℃以上の、DIN EN ISO 75規格に従って1.8MPaの荷重下で決定された熱変形温度を有する、請求項1からのいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の熱安定剤が、銅塩又は銅酸化物、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項11】
前記熱安定剤が、前記ポリアミド組成物の総質量に基づいて0.01~0.10質量%の量の少なくとも1種の銅塩を含む、請求項10に記載のポリアミド組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の少なくとも1種を含む、成形品。
【請求項13】
請求項12に記載の成形品を製造する方法であって、射出成形プロセス、押出プロセス又はブロー成形プロセスを含む、方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載のポリアミド組成物、又は請求項12に記載の成形品を、高温での高い寸法安定性を必要とする用途に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種の異なるポリアミド及び少なくとも1種のガラス繊維を含むポリアミド組成物に関し、これにより、温度に対する高い寸法安定性(すなわち、熱変形温度)と高い流動性(すなわち、低い溶融粘度)の優れた組み合わせを提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド組成物は、良好な靭性、剛性、及び耐熱性、すなわち、引張破断強度及びシャルピー衝撃強度などの機械的特性の高い保持性能、高い熱変形温度(HDT)、及び射出成形時の最小変形を示すため、技術的な構造材料としてよく使用されている。これらのポリアミド組成物の利用分野には、例えば、自動車分野及び他の輸送手段の分野における内外装部品、電気通信用器具のハウジング材、娯楽用電子機器、家庭用電化製品、機械工学機器、加熱分野の機器、及び設置用の留め具部品が含まれる。
【0003】
優れた機械的特性、すなわち良好な耐熱性に加えて高い剛性及び優れた靭性を示すために、ポリアミド組成物は、典型的に、ポリアミド樹脂に加えてガラス繊維(GF)などの補強フィラーを含んでいる。
【0004】
しかしながら、高い熱安定性(すなわち、高い熱変形温度)を有する補強したポリアミド組成物は、典型的に高い溶融粘度を示し、したがって低いメルトフローレートを有する。したがって、高い熱安定性を有する補強したポリアミド組成物は、加工が困難であり、高い加工温度を必要とする。
【0005】
CN102952391は、基本的に窒素含有化合物を含有しない難燃性ポリアミド組成物に関する。この組成物は、基本的に以下の成分からなる:(a)少なくとも1種の芳香族ポリアミド、(b)約5~30質量%の少なくとも1種のハロゲンフリー難燃剤、(c)約0.1~10質量%のマイカシート、及び任意に(d)約45質量%以下の、ガラス繊維、ガラスシート及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の補強剤。組成物のすべての成分の質量パーセンテージの合計は100質量%である。少なくとも1種の芳香族ポリアミドは、ポリアミド66/6T、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/DT、ポリアミド6I/6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド12T、及びこれらのうちの2種以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0006】
US 2013/0281589は、a)ポリアミド樹脂;b)1種以上の多価アルコール;c)ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)ジエステル、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ジエステル、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の白化防止剤、d)潤滑剤、e)1種以上の補強剤、及び任意に、f)反応性官能基及び/又はカルボン酸の金属塩を含むポリマー強化剤を含む熱可塑性ポリアミド組成物を開示している。このポリアミド組成物は、2種以上のポリアミドのブレンドを含有することができる。
【0007】
US 2016/168381は、特定の割合の、(A)テレフタル酸及びアジピン酸を含むジカルボン酸成分と、4~10個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンを有するジアミン成分とを含む半芳香族ポリアミド、(B)イソフタル酸を有するジカルボン酸成分と、4~15個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンを有するジアミン成分とを含む半芳香族ポリアミド、(C)特定量の官能基構造単位を含有するオレフィンポリマー、及び(D)繊維状フィラーを含有する半芳香族ポリアミド樹脂組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】CN102952391
【文献】US 2013/0281589
【文献】US 2016/168381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、
(a)2種以上の二酸に由来する繰り返し単位及び1種以上のジアミンに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミドであって、
(i)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて20モル%以上~40モル%未満の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて60モル%超~80モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する、少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミド、
(b)2種以上の二酸に由来する繰り返し単位及び1種以上のジアミンに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミドであって、
(i)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて40モル%以上~90モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて10モル%以上~60モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する、少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミド、
(c)少なくとも1種のガラス繊維、及び
(d)任意に少なくとも1種のさらなる添加剤
を含む(又はからなる)ポリアミド組成物に関する。
【0010】
驚いたことには、本発明者らが、低いモル量の芳香族二酸に由来する繰り返し単位を含む第1半結晶性ポリアミドを、大量の芳香族二酸に由来する繰り返し単位を含む第2半芳香族ポリアミド及び少なくとも1種のガラス繊維と組み合わせることにより、温度に対する高い寸法安定性(すなわち、高い熱変形温度)及び良好な加工性(すなわち、低い溶融粘度)を有することを特徴とするポリアミド組成物が得られることを見出した。本発明によるポリアミド組成物は、温度に対する高い寸法安定性(すなわち、熱変形温度)及び高い流動性(すなわち、低い溶融粘度)の優れた組み合わせを提供する。さらに、本発明のポリアミド組成物は、低い吸水性及び高い機械的耐性などのさらなる有利な特性を付与する。このユニークな特性の組み合わせにより、低減した処理サイクル時間及び低い処理温度で成形品を調製することができる。同時に、成形した部品は優れた機械的特性を有する。
【0011】
本発明者らは、本発明による第1半結晶ポリアミドと第2半結晶ポリアミドの組み合わせが、本明細書に記載のユニークな特性の組み合わせを提供する相乗効果をもたらすことを見出した。理論に拘束されることなく、この相乗効果は、第2半結晶ポリアミドによって第1半結晶ポリアミドの、又は第1半結晶ポリアミドによって第2半結晶ポリアミドの核生成及び結晶化プロセスを誘導し、したがってポリアミド組成物の結晶化レベルを高めることにより達成されると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、以下の定義を適用する。
【0013】
一般に、ポリアミドは、ジカルボン酸、ジアミン、アミノカルボン酸及び/又はラクタムに由来するポリマーを意味すると理解されるべきである。それらは、ホモポリマー又はコポリマーである。さらに、ホモポリマー及び/又はコポリマーのブレンドも包含される。
【0014】
「半結晶ポリアミド」という用語の意味は当業者に知られている。通常、この用語は、骨格に結晶可能な部分及び非晶質部分、すなわち、ランダムに絡み合った鎖を含有する非晶質ポリマー材料及びポリマー鎖が規則的な配列で詰め込まれたドメインを含有する結晶性材料を含むポリアミドを示すことを意図し、ここで、これらの結晶性ドメインが非晶質ポリマーマトリックス部分に埋め込まれている。特に、固体状態の半結晶ポリアミドは、ポリマー鎖が規則的な配列で詰め込まれている規則的に組織化された結晶性ポリマードメイン(例えば、ラメラ、スフェルライト)の部分を含有する。結晶性ドメインは、非晶質の非結晶ポリマードメインの部分と共存している。半結晶部分は、融点及び結晶化点の範囲、及び融解エンタルピー及び結晶化エンタルピーを示している。このような値は、例えばDSC分析又はX線回折により、その分野の専門家が容易に検出することができる。非晶質相は、融点又は結晶化点を示さない。
【0015】
本明細書で使用される単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに他の指示がない限り、単数形と複数形の両方の参照語を含む。例として、「an additive」は、1種の添加剤又は複数種の添加剤を意味する。
【0016】
本明細書で使用される「含む」、「含み」及び「含まれる」という用語は、「含む」、「含み」又は「含有する」、「含有し」と同義であり、包括的又は開放式(オープンエンド、open-ended)であり、追加の、非言及の部材、要素又は方法工程を除外するものではない。本明細書で使用される「含む」、「含み」及び「含まれる」という用語は、「からなる」、「なる」及び「からなり」という用語を含むことが理解されるであろう。
【0017】
本明細書で使用される「質量%」、「wt.-%」、「質量パーセンテージ」、又は「質量パーセント」という用語が互換的に使用される。
【0018】
「に由来する繰り返し単位」という表現は、表示されたモノマーから重合反応によって得られる繰り返し単位、及びそれらのモノマーから誘導可能であるが、他のモノマーからも得られる繰り返し単位を指す。
【0019】
エンドポイントによる数値範囲の記載には、すべての整数と、必要に応じてその範囲に含まれる分数が含まれる(例えば、1~5には、例えば要素の数を指す場合には1、2、3、4を含むことができ、例えば測定値を指す場合には1.5、2、2.75、3.80も含むことができる)。また、エンドポイントの記載には、エンドポイント値自体も含む(例えば、1.0~5.0には、1.0と5.0の両方とも含む)。本明細書に記載されている任意の数値範囲は、そこに包含されるすべてのサブレンジを含むことが意図されている。
【0020】
以下の文章では、本発明の異なる代替態様、実施態様、及び変形態様がより詳細に定義されている。このように定義された各代替態様及び実施態様は他の任意の代替態様及び実施態様と組み合わせることができ、明確に反対のことが示されていない限り、又は同じパラメータの値範囲が切り離されているときに明らかに互換性がない場合に、これは各変形態様についても同様である。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0021】
さらに、本明細書に記載されている特定の特徴、構造又は特性は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかになるように、任意の好適な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載されているいくつかの実施態様は、他の実施態様に含まれるいくつかの特徴を含むが、他の特徴を含まないが、異なる実施態様の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内にあることを意味し、当業者に理解されるように、異なる実施形態を形成する。
【0022】
本発明によれば、ポリアミド組成物は、少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド、及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドを含む。
【0023】
少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドは、好ましくは、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、20~60質量%の量で、好ましくは22~50質量%の量で、特に25~40質量%の量でポリアミド組成物に存在する。
【0024】
少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドは、好ましくは280℃~300℃、特に285℃~295℃の溶融温度を有する。溶融温度は、DIN EN ISO 11357に従って示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0025】
少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドは、好ましくは245℃~260℃、特に245℃~255℃の結晶化温度(Tc1)を有する。結晶化温度は、DIN EN ISO 11357に従って示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0026】
少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドは、好ましくは、290℃で1/2500秒のせん断速度で測定された、30Pa・s~80Pa・s、より好ましくは55Pa・s~65Pa・sの溶融粘度を有する。溶融粘度は、ISO 11443に従って決定される。
【0027】
少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドは、好ましくは、2種以上の二酸に由来する繰り返し単位及び1種以上のジアミンに由来する繰り返し単位を含み(又はからなり)、
(i)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、20モル%以上~40モル%未満、好ましくは25モル%以上~35モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、60モル%超~80モル%以下、好ましくは65モル%以上~75モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する。
【0028】
本発明の一実施態様において、少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドは、1種以上の二酸及び1種以上のジアミンで作られ、
(i)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、20モル%以上~40モル%未満、好ましくは25モル%以上~35モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、60モル%超~80モル%以下、好ましくは65モル%以上~75モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する。
【0029】
少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、好ましくは5~30質量%の量で、より好ましくは10~25質量%の量で、特に10~20質量%の量で、ポリアミド組成物に存在する。
【0030】
少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、好ましくは290℃超、特に295℃~315℃の溶融温度を有する。溶融温度は、DIN EN ISO 11357に従って示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0031】
少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、好ましくは250℃~270℃、特に255℃~265℃の結晶化温度(Tc2)を有する。結晶化温度は、DIN EN ISO 11357に従って示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0032】
少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、好ましくは、80Pa・s~100Pa・s、より好ましくは85Pa・s~95Pa・sの、325℃で1/2500秒のせん断速度で測定された溶融粘度を有する。溶融粘度は、ISO 11443に従って決定される。
【0033】
少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、好ましくは2種以上の二酸に由来する繰り返し単位及び1種以上のジアミンに由来する繰り返し単位を含み(又はからなり)、
(i)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、40モル%以上~90モル%以下、好ましくは50モル%以上~80モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、10モル%以上~60モル%以下、好ましくは20モル%以上~50モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する。
【0034】
本発明の一実施態様において、少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、2種以上の二酸及び1種以上のジアミンで作られ、
(i)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、40モル%以上~90モル%以下、好ましくは50モル%以上~80モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、10モル%以上~60モル%以下、好ましくは20モル%以上~50モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する。
【0035】
本発明の一実施態様において、少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドは、少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドと少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドの総質量の5~94質量%、好ましくは60~86質量%を構成する。
【0036】
少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドは、低い溶融粘度を有することを特徴とする。溶融粘度は、重合中に得られる分子量によって決定され、また、特定のポリマー組成に、特に少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドにおける芳香族二酸と脂肪族二酸の比に依存する。
【0037】
本発明によれば、第1半結晶ポリアミド及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、半芳香族ポリアミドである。
【0038】
少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、高い溶融温度、及び第1半結晶ポリアミドよりも高い熱変形温度を有することを特徴とする。これは、少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドにおける芳香族二酸と脂肪族二酸の特定の比によって達成される。さらに、第2半結晶ポリアミドの結晶化温度(Tc2)は、好ましくは、第1半結晶ポリアミドの結晶化温度(Tc1)よりも高い。
【0039】
少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、少なくとも1種の芳香族二酸に由来する繰り返し単位を含む。少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドに含まれる芳香族二酸(単数又は複数)は、互いに同じであっても異なってもよい。
【0040】
少なくとも1種の芳香族二酸は、好ましくは、一般にポリアミドの調製に使用される芳香族ジカルボン酸から選択される。好ましい芳香族ジカルボン酸には、一般式(I)のジカルボン酸が含まれる:
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、単結合、又は1~20個、好ましくは2~10個、特に3~6個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族の、飽和若しくは不飽和の、直鎖、分岐状若しくは環状の炭化水素基を表し、
は、水素原子、ヒドロキシル基、スルホイソフタル酸基及びその塩、又は1~3個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を表し、
nは、0~4の整数を表す)。
【0041】
好ましい実施態様において、R及びRはそれぞれ単結合を表し、カルボン酸基は芳香環に直接結合している。
【0042】
さらに好ましい実施態様において、Rは、水素原子、ヒドロキシル基又はスルホイソフタル酸塩、最も好ましくは水素原子を表す。
【0043】
及びRは、芳香環において、互いのオルト位、メタ位、又はパラ位の位置にあってもよい。基R及びRがメタ位又はパラ位の位置にあることが特に好ましい。
【0044】
特に好ましい実施態様において、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸及びイソフタル酸(両方とも任意に芳香環でヒドロキシル基に置換されている)から選択される。このような置換された芳香族カルボン二酸(carboxylic diacid)の好ましい例として、5-ヒドロキシイソフタル酸が挙げられる。
【0045】
最も好ましくは、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸である。
【0046】
少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、少なくとも1種の脂肪族二酸に由来する繰り返し単位を含む。少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドに含まれる脂肪族二酸(単数又は複数)は、互いに同じであっても異なってもよい。
【0047】
少なくとも1種の芳香族二酸は、好ましくは、一般にポリアミドの調製に使用される脂肪族ジカルボン酸から選択される。好ましい脂肪族ジカルボン酸には、一般式(II)のジカルボン酸が含まれる:
【化2】
(式中、Rは、1~20個、好ましくは2~10個、特に3~6個の炭素原子を有する脂肪族の、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の炭化水素基を表す)。
【0048】
特に好ましい実施態様において、アジピン酸を脂肪族ジカルボン酸として使用する。
【0049】
少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、少なくとも1種のジアミンに由来する繰り返し単位をさらに含む。一般に、当該技術分野で知られている任意の既知のジアミンを使用することができる。好ましくは、使用されるジアミンは、脂肪族ジアミン及び/又は脂環式ジアミンである。好ましい実施態様において、少なくとも1種の第1半結晶ポリアミドは、脂肪族ジアミンに由来するジアミン繰返し単位のみを含む。さらに好ましい実施態様において、少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、脂肪族ジアミン及び/又は脂環式ジアミンに由来するジアミン繰返し単位を含む。特に好ましい実施態様において、少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、脂肪族ジアミンに由来するジアミン繰り返し単位のみを含む。
【0050】
好適な脂肪族ジアミンは、一般にポリアミドの調製に使用されるすべての脂肪族ジアミンを含む。好ましい脂肪族ジカルボン酸には、一般式(III)のジカルボン酸が含まれる:
【化3】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は1~5個、好ましくは1~3個の炭素原子を有する脂肪族の、飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐状の炭化水素基を表し、
は、1~20個、好ましくは2~10個、特に3~6個の炭素原子を有する脂肪族の、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の炭化水素基を表す)。
【0051】
好ましい実施態様において、R及びRは水素原子を表す。
【0052】
好ましい脂肪族ジアミンには、ヘキサメチレンジアミン及び/又は5-メチルペンタメチレンジアミンが含まれる。特に好ましい実施態様において、ヘキサメチレンジアミンを使用する。
【0053】
好適な脂環式ジアミンは、一般にポリアミドの調製に使用されるすべての脂環式ジアミンを含む。好ましい芳香族ジアミンには、一般式(IV)のジアミンが含まれる:
【化4】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は1~5個、好ましくは1~3個の炭素原子を有する脂肪族の、飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐状の炭化水素基を表し、
10及びR11は、それぞれ独立して、単結合、又は1~20個、好ましくは1~10個、特に1~6個の炭素原子を有する脂肪族の、飽和若しくは不飽和の、直鎖、分岐状若しくは環状の炭化水素基を表し、
12は、水素原子、ヒドロキシル基又は1~3個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を表し、
rは0~3の整数を表し、
lはr+3である)。
【0054】
一実施態様において、R10及びR11はそれぞれ単結合を表し、アミン基は芳香環に直接結合している。代替の一実施態様において、R10及びR11は、それぞれ1~20個、好ましくは1~10個、特に1~6個の炭素原子を有する脂肪族の、飽和の、直鎖の炭化水素基を表す。
【0055】
好ましい実施態様において、R及びRは水素原子を表す。
【0056】
さらに好ましい実施態様において、R12は、水素原子又はヒドロキシル基を表す。
【0057】
10及びR11は、脂環式の環において、互いのオルト位、メタ位、又はパラ位の位置にあってもよい。基R10及びR11がメタ位又はパラ位にあることが特に好ましい。
【0058】
さらに好ましい実施態様において、rは1である。
【0059】
好ましい脂環式ジアミンには、イソホロンジアミン(3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン)、1,2-ジアミンシクロヘキサン、及び1,3-ジアミノシクロヘキサンが含まれる。
【0060】
さらに、少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、アミノ酸及び/又はラクタムに由来する繰り返し単位を含んでもよい。好適なモノマーは当技術分野で知られている。特に好ましいアミノカルボン酸には、ε-アミノカプロン酸が含まれる。特に好ましいラクタムには、ε-カプロラクタムが含まれる。少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミド中のアミノ酸及び/又はラクタムに由来する繰り返し単位の量は、少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド及び/又は少なくとも1種の第2半結晶ポリアミド中の繰り返し単位の総モルの0~30モル%の範囲内であってもよい。
【0061】
少なくとも1種の第1半結晶ポリアミド及び少なくとも1種の第2半結晶ポリアミドは、任意の既知の重合方法、特に、既定のモル量の少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の混合物と、ジカルボン酸に対して化学量論的に使用される少なくとも1種のジアミンとの溶融重縮合反応によって得ることができる。あるいは、当技術分野でよく知られている技術の1つ(例えば、Nylon Plastics Handbook,Melvin Kohan編,Hanser Verlag,1995年に記載されている)に従って、少なくとも1種のジカルボン酸の塩と少なくとも一部のジアミンを第1工程で調製し、次にこれを重縮合装置に投入して、それぞれのポリアミドを得ることができる。アミノ酸及び/又はラクタムは、同じプロセスで組み込むことができる。
【0062】
第1半結晶ポリアミドの特に好ましい例には、ポリアミド66/6T、ポリアミド6/6T、ポリアミド66/6I及びポリアミド66/6T/6Iが含まれ、最も好ましい例はポリアミド66/6Tである。
【0063】
第2半結晶ポリアミドの特に好ましい例には、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/6、ポリアミド6I/66及びポリアミド6T/6I/66が含まれ、最も好ましい例はポリアミド6T/66である。
【0064】
本発明の一つの好ましい実施態様において、第1半結晶ポリアミドはポリアミド66/6Tであり、第2半結晶ポリアミドはポリアミド6T/66である。
【0065】
ホモポリマー及びコポリマーは、本明細書ではそれらのそれぞれの繰り返し単位によって識別されることに留意されたい。本明細書で開示されているコポリマーについて、繰り返し単位は、コポリマー中に存在する繰り返し単位のモル%の減少順に記載されている。当技術分野において、「6」という用語がテレフタル酸(一般にTと略される)又はイソフタル酸(一般にIと略される)などの二酸に由来する繰り返し単位と組み合わせて使用される場合、例えば6Tの場合、「6」は、ヘキサメチレンジアミン(HMD)に由来する繰り返し単位を指す。ジアミン及び二酸に由来する繰り返し単位では、ジアミンが最初に示される。さらに、「6」をジアミンと組み合わせて使用する場合、例えば66の場合、第1の「6」はジアミンHMDに由来する繰り返し単位を指し、第2の「6」はアジピン酸である二酸に由来する繰り返し単位を指す。同様に、アミノ酸又はラクタムに由来する繰り返し単位は、炭素原子の数を示す単一の数字として示される。
【0066】
したがって、ポリアミド66/6T及びポリアミド6T/66は、同じ繰り返し単位を含むが、ポリアミド66/6Tは、テレフタル酸(T)に由来する繰り返し単位と比較して、アジピン酸(6)に由来する繰り返し単位が多く含まれている点が異なり、一方、ポリアミド6T/66は、アジピン酸(6)に由来する繰り返し単位と比較して、テレフタル酸(T)に由来する繰り返し単位が多く含まれている。
【0067】
ポリアミド組成物は、少なくとも1種のガラス繊維をさらに含む。少なくとも1種のガラス繊維は、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、好ましくは10~70質量%の量で、より好ましくは20~60質量%の量で、特に30~55質量%の量で、ポリアミド組成物に存在する。
【0068】
ポリアミド組成物が適切に押出及び注入可能であることを確保するために、本発明のポリアミド組成物は、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、70質量%以下、好ましくは60質量%以下のガラス繊維を含むべきであることが見出された。
【0069】
本発明のポリアミド組成物のガラス繊維を構成するガラスの性質は、特に限定されず、Eガラス、ホウ素を含まないガラス繊維、Tガラス、NEガラス、Cガラス、Sガラス、S2ガラス、Rガラスなどを含むことができる。ガラス繊維は、連続ストランド及びチョップドストランドの形態での接着性を確保するために、特にポリアミドマトリックスとの界面での接着性を付与するために、その表面にサイジング剤を含有してもよい。特に好ましいのは、Eガラス繊維及びホウ素を含まないガラス繊維である。
【0070】
ガラス繊維は、連続したロービングバンドルの形態で、又はチョップドストランドの形態でポリアミド組成物に含まれることができる。ガラス繊維が、混合装置、例えば押出機で、少なくとも1種の第1ポリアミド及び第2ポリアミドと混合されると、ガラス繊維は、ガラス繊維の種類及び量、押出機のスクリュープロファイル、及び処理条件によって決定される所定の長さ分布を有するより短いフィブリルに分解される。
【0071】
本発明の一実施態様において、少なくとも1種のガラス繊維は、少なくとも1種のチョップドガラス繊維、特に0.1~10mm、特に0.5~5mmの初期数平均繊維長さを有するチョップドガラス繊維の形態でポリアミド組成物中に導入される。最終的なポリアミド組成物中の(すなわち、配合工程後の)少なくとも1種のガラス繊維の数平均繊維長さは、典型的には200~1000μmの範囲である。
【0072】
少なくとも1種のガラス繊維は、(本明細書ではさらに円形ガラス繊維とも呼ばれる)実質的に円形の断面を有する少なくとも1種のガラス繊維、及び/又は(本明細書ではさらにフラットガラス繊維とも呼ばれる)実質的に非円形の断面を有する少なくとも1種のガラス繊維を含んでもよい。
【0073】
本発明の一実施態様において、ポリアミド組成物は少なくとも1種の円形ガラス繊維を含む。
【0074】
本発明のポリアミド組成物に使用されるガラス繊維は、典型的に円形の断面積を有するガラス繊維である。それらは、典型的に、その繊維直径(D)、及びその初期繊維長さ(L)によって定義される。本発明による円形ガラス繊維は、好ましくは6.5~17μmの範囲、より好ましくは7~13μmの範囲の平均繊維直径(D)を有する。典型的には、10μmの直径を有する円形ガラス繊維が使用される。初期繊維長さ(L)は、配合前のチョップドストランドの長さに対応する。通常、初期繊維長さ(L)は、2~10mm、好ましくは3~6mmの範囲である。典型的には、チョップドストランドの繊維長さは、供給先により、3又は4.5mmである。
【0075】
本発明の一実施態様において、ポリアミド組成物は、少なくとも1種の(非円形の)フラットガラス繊維を含む。
【0076】
本発明のポリアミド組成物に使用するのに適したフラットガラス繊維は、任意の非円形断面、例えば楕円形断面、長円形断面、長方形断面、半円形が長方形の両短辺に接続された断面、繭形断面を有していてもよい。
【0077】
フラットガラス繊維の前記非円形断面の扁平率(=主断面軸の長さ/副断面軸の長さ)は、有利に1:1.5~1:5、好ましくは1:2~1:4である。
【0078】
さらに、本発明のフラットガラス繊維は、好ましくは6~40μm、特に10~30μm、より好ましくは16~28μmの範囲の主断面軸の長さを有する。また、副断面軸の長さは、好ましくは1~20μmの範囲、特に2~10μmの範囲、より好ましくは3~8μmの範囲である。
【0079】
さらに、本発明のポリアミド組成物は、少なくとも1種のさらなる添加剤をさらに含んでもよい。少なくとも1種のさらなる添加剤は、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、0~5質量%、好ましくは0.01~2質量%、特に0.01~1質量%の量で存在してもよい。
【0080】
本明細書で使用される「添加剤」という用語は、本発明によるポリアミド組成物に適したあらゆる化合物を指すが、ポリアミド樹脂を指すものではない。特に、ポリアミド組成物に有利に使用することができる添加剤には、熱安定剤、光安定剤、潤滑剤、核剤、顔料及び/又は染料などの着色剤、鎖延長剤、衝撃調整剤、難燃剤、触媒、酸化防止剤、可塑剤、核剤、帯電防止剤、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0081】
好ましい実施態様において、ポリアミド組成物は、少なくとも1種の熱安定剤を含む。好ましくは、熱安定剤は、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、0.01~1.0質量%、特に0.05~0.5質量%の量でポリアミド組成物に存在する。
【0082】
本発明において、「熱安定剤」という用語は、特に、処理中の熱酸化劣化を防止することによって熱安定性を向上させるためにポリマー組成物に添加される材料を示すことを意図している。
【0083】
本発明において、少なくとも1種の熱安定剤は、好ましくは、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、リン化合物、銅含有化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはヒンダードフェノール化合物とリン化合物の組み合わせであり、より好ましくは銅含有化合物である。
【0084】
「ヒンダードフェノール化合物」という用語は、この分野での慣用的な意味に従って使用され、一般に、当技術分野でよく知られているオルト置換フェノールの誘導体、特にジ-tert-ブチル-1-フェノール誘導体(これに限定されない)を表すことを意図している。
【0085】
「ヒンダードアミン化合物」という用語は、この分野での慣用的な意味に従って使用され、一般に、当該分野でよく知られている2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの誘導体を表すことを意図している(例えば、Plastics Additives Handbook,第5版,Hanser,2001年を参照)。本発明による組成物のヒンダードアミン化合物は、低分子量又は高分子量のいずれであってもよい。
【0086】
低分子量のヒンダードアミン化合物は、典型的に最大900g/mol、好ましくは最大800g/mol、より好ましくは最大700g/mol、なお好ましくは最大600g/mol、最も好ましくは最大500g/molの分子量を有する。
【0087】
高分子量のヒンダードアミン化合物は、典型的にポリマーであり、典型的に少なくとも1000g/mol、好ましくは少なくとも1100g/mol、より好ましくは少なくとも1200g/mol、なおより好ましくは少なくとも1300g/mol、最も好ましくは少なくとも1400g/molの分子量を有する。
【0088】
本発明において、少なくとも1種の熱安定剤は、アルカリ又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩、亜リン酸エステル、ホスホナイト及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のリン化合物であってもよい。次亜リン酸ナトリウム及び次亜リン酸カルシウムは、好ましいアルカリ又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩である。
【0089】
亜リン酸エステルは式P(OR)で表されてもよく、ホスホナイトは式P(OR)Rで表されてもよく、ここで、それぞれのRは、同一又は異なることができ、典型的に独立して、C1~20アルキル、C3~22アルケニル、C6~40シクロアルキル、C7~40シクロアルキレン、アリール、アルカリール又はアリールアルキル部分からなる群から選択される。
【0090】
本発明によるポリアミド組成物に使用することができる銅含有安定剤は、さらに、ポリアミド及びアルカリ金属ハロゲン化物に可溶な銅化合物を含むことを特徴とする。より具体的には、銅含有安定剤は、本質的に、銅(I)酸化物、銅(II)酸化物、銅(I)塩、例えば酢酸第一銅、ステアリン酸第一銅、第一銅有機複合化合物、例えば銅アセチルアセトナート、ハロゲン化第一銅などからなる群から選択される銅化合物;及びハロゲン化アルカリ金属からなる。特定の好ましい実施態様によれば、銅含有安定剤は、本質的に、ヨウ化銅及び臭化銅から選択されるハロゲン化銅と、Li、Na、K及びMgのヨウ化物及び臭化物からなる群から選択されるアルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物とからなる。ヨウ化銅(I)及びヨウ化カリウムを含む安定化製剤は、ポリアミドの安定化に使用されることがよく知られており、市販されている。
【0091】
本発明の特に好ましい実施態様において、ポリアミド組成物は、少なくとも1種の銅塩を含む少なくとも1種の熱安定剤を含む。
【0092】
特に好ましい組み合わせは、CuIとKIの組み合わせである。別の非常に有利な組み合わせは、CuOとKBrの混合物である。
【0093】
本発明において、ハロゲン化銅(I)とアルカリ金属ハロゲン化物の質量比は、約1:2.5~約1:20、好ましくは約1:3~約1:10、より好ましくは約1:5~1:6の範囲である。
【0094】
本発明の好ましい実施態様において、ポリアミド組成物は、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、0.01~0.10質量%、好ましくは0.01~0.05質量%の量の少なくとも1種の銅塩を含む。
【0095】
本発明のこの実施態様のさらなる態様において、ポリアミド組成物は、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、0.05~0.50質量%、好ましくは0.1~0.3質量%の量の少なくとも1種のカリウム塩を含む。
【0096】
したがって、本発明の一態様において、ポリアミドは、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、0.01~0.10質量%、好ましくは0.0.~0.05質量%の量の少なくとも1種の銅塩、好ましくはCuIと、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、0.05~0.50質量%、好ましくは0.1~0.3質量%の量の少なくとも1種のカリウム塩、好ましくはKIとの組み合わせを熱安定剤として含む。
【0097】
熱安定剤以外の上述した添加剤、すなわち光安定剤、潤滑剤、核剤、顔料及び/又は染料などの着色剤、鎖延長剤、衝撃調整剤、難燃剤、触媒、酸化防止剤、可塑剤、核剤、帯電防止剤、及びそれらの任意の組み合わせは、ポリアミド組成物の総質量に基づいて、典型的に0.01~4.0質量%の量で、より好ましくは0.05~3.0質量%の量で、特に0.1~2.0質量%の量で、本発明によるポリアミド組成物に存在することができる。
【0098】
好適な光安定剤、潤滑剤、核剤、顔料及び/又は染料などの着色剤、鎖延長剤、衝撃調整剤、難燃剤、触媒、酸化防止剤、可塑剤、核剤の例として、以下が挙げられる。
【0099】
好ましい光安定剤には、特に、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、カーボンブラック、ベンゾトリアゾール、ヒンダードフェノール、(無機)ホスファイト、ZnO、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0100】
好ましい潤滑剤には、特に、長鎖脂肪酸及びその塩(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸Na、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Al、ステアリン酸Ca)、長鎖脂肪酸アミド、例えばエチレンビス-ステアルアミド、モンタンワックス(montanic waxes)、ベヘンワックス(behenic waxes)、又はパラフィン及び酸化パラフィン、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0101】
好ましい核剤には、特に、タルク、ポリアミド2.2、(無機)ステアリン酸塩、フェニルホスフィン酸塩など、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0102】
好ましい着色剤又は染料には、特に、カーボンブラック、ニグロシンクロリドレート及びニグロシンベース(nigrosine base)が含まれる。
【0103】
好ましい鎖延長剤には、特に、ジエポキシ樹脂、二無水物、ビスオキサゾリン、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/(メタ)アクリレート/(グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーなど、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0104】
好ましい衝撃改質剤には、特に、グラフト化ポリオレフィン、例えば無水マレイン酸グラフト化エチレン/プロピレンコポリマー(EP-g-MA)、無水マレイン酸グラフト化エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー(EPDM-g-MA)、無水マレイン酸グラフト化スチレン/エチレン/1-ブテン/スチレンブロックコポリマー(SEBS-g-MA)などの化合物、及び他のポリオレフィンコポリマー、例えばアクリル酸又はメタクリル酸又はそれらの塩が含まれる。
【0105】
好ましい難燃剤には、特に、アルミニウムホスフィネート、メラミンポリホスフェート(MPP)、有機リン化合物、メラミンシアヌレート、赤リン、ハロゲン化ポリスチレンなどの化合物、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0106】
好ましい触媒には、特に、HPO、HPO、NaHPOなどの化合物、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0107】
好ましい酸化防止剤には、特に、ヒンダードフェノール、半芳香族アミン又はアミド、有機ホスファイト、NaHPOなどの化合物、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0108】
好ましい可塑剤には、スルホンアミドのような化合物、例えばN-ブチルベンゼンスルホンアミド(例えばBBSA)が含まれる。
【0109】
好ましい実施態様において、本発明は、
(a)ポリアミド組成物の総質量に基づいて、20~60質量%、好ましくは22~50質量%、特に25~40質量%の、2種以上の二酸に由来する繰り返し単位及び1種以上のジアミンに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミドであって、
(i)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、20モル%以上~40モル%未満、好ましくは25モル%以上~35モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、60モル%超~80モル%以下、好ましくは65モル%以上~75モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する、少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミド、
(b)ポリアミド組成物の総質量に基づいて、5~30質量%、好ましくは10~25質量%、特に10~20質量%の、2種以上の二酸に由来する繰り返し単位及び1種以上のジアミンに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミドであって、
(i)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、40モル%以上~90モル%以下、好ましくは50モル%以上~80モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、10モル%以上~60モル%以下、好ましくは20モル%以上~50モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する、少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミド、
(c)ポリアミド組成物の総質量に基づいて、10~70質量%、好ましくは20~60質量%、特に30~55質量%の少なくとも1種のガラス繊維、及び
(d)ポリアミド組成物の総質量に基づいて、0~5質量%、好ましくは0.01~2質量%、特に0.01~1質量%の、少なくとも1種のさらなる添加剤
を含む(又はからなる)ポリアミド組成物に関する。
【0110】
本発明の別の態様において、本発明は、
(a)2種以上の二酸及び1種以上のジアミンで作られた少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミドであって、
(i)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて20モル%以上~40モル%未満の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて60モル%超~80モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する、少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミド
(b)2種以上の二酸及び1種以上のジアミンで作られた少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミドであって、
(i)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて40モル%以上~90モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて10モル%以上~60モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する、少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミド、
(c)少なくとも1種のガラス繊維、及び
(d)任意に少なくとも1種のさらなる添加剤
を含む(又はからなる)ポリアミド組成物に関する。
【0111】
この態様のさらに好ましい実施態様において、本発明は、
(a)ポリアミド組成物の総質量に基づいて、20~60質量%、好ましくは22~50質量%、特に25~40質量%の、2種以上の二酸及び1種以上のジアミンで作られた少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミドであって、
(i)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、20モル%以上~40モル%未満、好ましくは25モル%以上~35モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第1ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、60モル%超~80モル%以下、好ましくは65モル%以上~75モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する、少なくとも1種の第1半結晶性ポリアミド、
(b)ポリアミド組成物の総質量に基づいて、5~30質量%、好ましくは10~25質量%、特に10~20質量%の、2種以上の二酸及び1種以上のジアミンで作られた少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミドであって、
(i)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、40モル%以上~90モル%以下、好ましくは50モル%以上~80モル%以下の少なくとも1種の芳香族二酸、
(ii)第2ポリアミドに存在する二酸の総モル量に基づいて、10モル%以上~60モル%以下、好ましくは20モル%以上~50モル%以下の少なくとも1種の脂肪族二酸、
を含有する、少なくとも1種の第2半結晶性ポリアミド、
(c)ポリアミド組成物の総質量に基づいて、10~70質量%、好ましくは20~60質量%、特に30~55質量%の少なくとも1種のガラス繊維、及び
(d)ポリアミド組成物の総質量に基づいて、0~5質量%、好ましくは0.01~2質量%、特に0.01~1質量%の、少なくとも1種のさらなる添加剤
を含む(又はからなる)ポリアミド組成物に関する。
【0112】
ポリアミド組成物の総質量に基づいて50質量%の量の少なくとも1種のガラス繊維を含む本明細書に記載のポリアミド組成物は、好ましくは、260℃以上、好ましくは265℃以上の、ASTM D648/DIN EN ISO 75規格に従って1.8MPaの荷重下で決定された熱変形温度を有する。さらに好ましくは、ASTM D648/DIN EN ISO 75規格に従って1.8MPaの荷重下で決定された熱変形温度は、275℃以下、より好ましくは270℃以下である。
【0113】
本発明のさらなる態様において、ポリアミド組成物は、23℃でDIN EN DIN EN ISO 178に従って決定された13,000MPa超の曲げ弾性率を有することを特徴とする。
【0114】
本発明のさらなる態様において、ポリアミド組成物は、100Pa・s未満の溶融粘度(ISO 11443に従って、310℃で1/2500秒のせん断速度で毛細管レオメトリーにより測定される)を有することを特徴とする。
【0115】
本発明によるポリアミド組成物のさらに有利な特性は、低い吸水率である。特に、ポリアミド組成物は、0.7質量%未満、特に0.6質量%未満の、DIN EN ISO 62に従って決定された吸水率を示す。この態様は射出加工において重要であり、射出加工では、高い含水量によって処理工程中でポリマーが分解する可能性が高くなり、したがって射出加工の前に時間のかかる乾燥工程が必要となる。
【0116】
さらに、本発明によるポリアミド組成物の機械的特性は、優れており、改善された溶融流動性によって実質的に悪い影響を受けない。
【0117】
本発明のポリアミド組成物は、繊維強化ポリアミド組成物を製造するための任意の既知の方法によって製造することができる。これに限定されるものではないが、典型的には、特に、ガラス繊維及び任意の添加剤をポリマー溶融物と均質に混合し、続いて冷却してカットする押出法によって、顆粒を製造する。
【0118】
このようにして得られたポリアミド顆粒は、好ましくは1~10mm、特に2~5mm、より好ましくは2~4mmの顆粒の長さを有し、さらに通常の処理方法(例えば、押出成形、射出成形及び/又はブロー成形)で処理して成形品を形成することができ、この成形品の特に良好な特性が穏やかな処理方法によって達成される。好ましくは、成形品は射出成形によって製造される。この文脈において、穏やかとは、何よりも、過度の繊維破壊及びそれに伴う繊維長さの大幅な減少を避けることを意味する。射出成形では、これは大きな直径を有するねじを使用することを意味する。
【0119】
本発明のポリアミド組成物は、高温での高い寸法安定性を必要とする用途に有利に使用することができる。
【0120】
特に、本発明のポリアミド組成物は、高温での高い寸法安定性を必要とする熱水と接触する用途に有利に使用される。これらの用途の例には、電気シャワーのハウジング、より正確には、加熱要素として知られる金属片のプラスチック支持体が含まれる。
【0121】
本発明によれば、ポリアミド組成物は、好ましくは射出成形プロセス、押出プロセス又はブロー成形プロセス、特に射出成形プロセスによって成形品を製造するために使用される。ポリアミド組成物は、これらの成形プロセスにおいて改善された処理特性、特に高い流動性(すなわち、高いメルトフローレート、低い溶融粘度)を示すことを特徴とする。その結果、成形プロセス、特に射出成形プロセスのサイクル時間が大幅に短縮される。同時に、より低い処理温度を使用することができる。
【0122】
本発明はまた、少なくとも1種の本発明によるポリアミド組成物を含む、成形品にも関する。
【0123】
本発明の他の詳細又は利点は、以下に示す実施例を通じてより明確に明らかになるであろう。本発明は、本発明を実証することを意図しているが、制限することを意図していない、以下の実施例によって解明されるであろう。
【実施例
【0124】
化合物
以下の物質を実施例の調製に使用した。
【0125】
PA66/6T:Stabamid 26 UD1、Solvay Performance Polyamides製のPA66/6T部分芳香族ポリアミド。PA66/6Tは、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸(T)及びアジピン酸をベースとする。ポリマーにおけるテレフタル酸とアジピン酸のモル相対パーセンテージは35:65mol/molである。PA66/6Tは、285℃の溶融温度、245℃の結晶化温度、及び60Pa・sの290℃で1/2500秒の剪断速度で測定した溶融粘度を有する。
【0126】
PA6T/66:Amodel A-6000、Solvay Specialty Polymers製の6T/66ポリフタルアミド(PPA)。PA6T/66は、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸(T)及びアジピン酸をベースとする。鎖におけるテレフタル酸とアジピン酸のモル相対パーセンテージは55:45mol/molである。PA6T/66は、310℃の融点、260℃の結晶化温度、及び90Pa・sの325℃で1/2500秒のせん断速度で測定した溶融粘度を有する。
【0127】
PA66:Stabamid 38 AP、Solvay Performance Polyamidesから購入でき、258℃の溶融温度及び217℃の結晶化温度を有する脂肪族ポリアミド6.6。
【0128】
ガラス繊維:日本電気硝子(Nippon Electric Glass)から購入できるECS03T 292HRであり、7~13μmの範囲の円径(circular diameter)を有する。
【0129】
熱安定剤:INCASA S/Aから購入できるヨウ化銅(CuI)、Microserviceから購入できるヨウ化カリウム(KI)。
【0130】
ポリアミド組成物
表1で定義された組成を有するポリアミド組成物を、実施例及び比較例として調製した。すべての量は質量%で表示する。
【0131】
【表1】
【0132】
二軸押出機ZSK-26 Mega Compounderを用いて、250rpmのスクリュー速度及び20kg/hの供給速度で溶融混練によって、比較例1、2、3、並びに実施例1及び2を処理した。バレル温度プロファイルは280~310℃であった。スクリュー側のフィーダーによって、ガラス繊維を溶融物に添加した。
【0133】
押出の後、比較例1、2、3、並びに実施例1及び2の試験試料を、表2に記載のパラメータに従って射出した。
【0134】
【表2】
【0135】
比較例2のベース樹脂の溶融温度が高いため、他の比較例及び実施例よりも高い処理温度プロファイルを使用することが必要であり、推奨された。そうしないと、このサンプルは、推奨される処理パラメーターで得られたものよりも劣る特性を示す可能性があった。
【0136】
試験方法
以下の試験方法を使用して、実施例1及び2、並びに比較例1、2及び3によるポリアミド組成物の特性を評価した。
【0137】
DIN EN ISO 178に従って、23℃で曲げ強度を決定した。
【0138】
DIN EN ISO 179 1eUに従って、23℃でシャルピーノッチなし耐衝撃性を決定した。
【0139】
DIN EN ISO 179 1eAに従って、23℃でシャルピーノッチ付き耐衝撃性を決定した。
【0140】
ISO 2577(2.0mm)に従って、成形収縮率を決定した。
【0141】
DIN EN ISO 75に従って、1.80MPaの荷重下で熱変形温度(HDT)を決定した。
【0142】
DIN EN ISO 11357に従って、示唆操作熱量計(DSC)を用いて溶融温度を決定した。
【0143】
IEC 60695-2-12に従って、グローワイヤー燃焼性試験(GWFI)を行った。
【0144】
Underwriters LaboratoriesがUL 94として発行した「Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances」に従って燃焼性を試験した。
【0145】
DIN EN ISO 62に従って吸水率を決定した。
【0146】
ISO 11443に従って、310℃で1/2500秒のせん断速度で毛細管レオメトリーにより、高せん断速度での溶融粘度を決定した。
【0147】
以下の手順に従って、スパイラルフローを決定した。DEMAG SUMITOMO SYSTEC 60-430射出成形装置を、以下のバレル温度プロファイルに設定した:300℃(ゾーン1)、305℃(ゾーン2)、315℃(ゾーン3)、320℃(ノズル)。鋳型温度は110℃であった。適用した射出圧力は700バールであった。このような条件をすべての実施例のスパイラル射出に使用した。
【0148】
ISO 2577に従って、60/60/2(長さ/幅/厚さ)ミリメートルの寸法を有する射出プレート上で収縮挙動を決定した。
【0149】
試験結果
比較例1、2及び3、並びに実施例1及び2の機械的特性及び熱変形温度を表3に示している。比較例1、2及び3と比較して、実施例1及び2の機械的特性だけでなく、熱変形温度も優れていることがわかる。
【0150】
比較例2と比較して、実施例2では、より高い熱変形温度及びより高い曲げ弾性率が達成できることは予想外であった。第1半結晶ポリアミドと第2半結晶ポリアミドの組み合わせにより、このようなユニークな有利な特性の組み合わせを提供する相乗効果が得られると考えられる。
【0151】
【表3】
【0152】
比較例1、2及び3、並びに実施例1及び2の熱的特性及びレオロジー特性を表4にまとめている。実施例1及び2の冷却時間は、比較例1、2及び3の冷却時間よりも短かったことに留意しなければならない。本発明によるポリアミド組成物のこの挙動により、本明細書に開示されたポリアミド組成物から成形品を調製する際のサイクル時間を大幅に短縮することができる。
【0153】
本発明によるポリアミド組成物の別の利点は、その高い流動性である。本発明によれば、比較例2よりも高いHDT性能を達成しつつ、比較例1と同様の流動性を達成することができる。これらの現象は、スパイラルフロー及び溶融粘度の試験結果で観察することができる。本発明による2種の異なる芳香族ポリアミドのブレンドは、それぞれの芳香族ポリマーの利点を満たし、それぞれの芳香族ポリマーの欠点を克服することができる。
【0154】
【表4】
【0155】
比較例1、2、3、並びに実施例1及び2の難燃性を表5に示している。実施例1及び2は、比較例1、2及び3よりも高いグローワイヤー燃焼性温度を達成した。UL-94による燃焼性等級についても同様の結果が得られた(等級V-2が等級HBより優れている)。特に、実施例1及び2は、比較例1及び2よりも改善されたUL-94試験における難燃性を示した。
【0156】
【表5】
【0157】
さらに、比較例及び実施例の吸水特性を試験した。表6に見られるように、実施例1及び2は、比較例1、2及び3よりも低い吸水性を示すことが観察された。低い吸水性に加えて、本発明によるポリアミド組成物は、比較例1、2及び3と比較してより低い収縮挙動を示している(表6を参照)。
【0158】
【表6】