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特許7516451pKal関連疾病の評価、アッセイおよび治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】pKal関連疾病の評価、アッセイおよび治療
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20240708BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240708BHJP
   A61K 38/55 20060101ALN20240708BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20240708BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 1/00 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 1/02 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 7/02 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 7/10 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 17/02 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 19/06 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 25/04 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 27/02 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 37/02 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 37/06 20060101ALN20240708BHJP
   A61P 37/08 20060101ALN20240708BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240708BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALN20240708BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/543 545A
A61K38/55 ZNA
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P1/00
A61P1/02
A61P1/04
A61P7/02
A61P7/10
A61P9/00
A61P9/10
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/02
A61P19/02
A61P19/06
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/28
A61P27/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P31/04
A61P37/02
A61P37/06
A61P37/08
C12N15/12
C12Q1/37
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022059994
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2020018105の分割
【原出願日】2014-01-17
(65)【公開番号】P2022106720
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】61/754,600
(32)【優先日】2013-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ,クスマム
(72)【発明者】
【氏名】カプラン,アレン,ピー.
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】日本補体学会ホームページ[オンライン],遺伝性血管性浮腫 (HAE) ガイドライン 2010,2010年,[検索日2023.10.09],インターネット<URL:https://square.umin.ac.jp/compl/common/images/disease-information/hae/HAEGuideline2010.pdf>
【文献】Nuijens JH,et al.,Detection of activation of the contact system of coagulation in vitro and in vivo:quantitation of ac,Thrombosis and Haemostasis,1987年08月04日,58(2),P778-785
【文献】J.W.P.Govers-Riemslag,et al.,The plasma kalikrein-kinin system and risk of cardiovascular disease in men,Journal of Thrombosis and Haemostasis,2007年,5,P1896-1903
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
G01N 33/543
A61K 38/55
A61K 39/395
A61K 45/00
A61P 1/00
A61P 1/02
A61P 1/04
A61P 7/02
A61P 7/10
A61P 9/00
A61P 9/10
A61P 11/00
A61P 13/12
A61P 17/00
A61P 17/02
A61P 19/02
A61P 19/06
A61P 25/00
A61P 25/04
A61P 25/28
A61P 27/02
A61P 29/00
A61P 31/04
A61P 37/02
A61P 37/06
A61P 37/08
C12N 15/12
C12Q 1/37
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象がII型遺伝性血管性浮腫(HAE)を有するかどうか決定するための方法であって、
前記対象から得られた検体における、捕捉試薬に結合する機能的血漿プロテアーゼC1インヒビター(C1-INH)のレベルを測定するステップと、
前記検体における総C1-INHレベルを測定するステップと、
前記機能的C1-INHのレベルを基準値、および前記総C1-INHレベルを総C1-INH基準値比較するステップと
を含み、
基準値以下の機能的C1-INHのレベルおよび総C1-INH基準値以上の総C1-INHレベルが、前記対象がII型HAEを有することを示し、
前記捕捉試薬は、
i)活性型第XII因子もしくはそのC1-INH結合断片、
ii)活性型血漿カリクレイン(pKal)もしくはそのC1-INH結合断片、または
iii)i)およびii)の組み合わせ
を含み、
前記捕捉試薬は、基材に固定化される
方法。
【請求項2】
前記対象から得られた検体は、血液検体または血漿検体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機能的C1-INHのレベルは、前記対象から得られた検体を前記捕捉試薬と接触させることを含むプロセスによって測定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記機能的C1-INHのレベルは、C1-INHに結合する検出薬、活性型第XII因子または活性型血漿カリクレインを用いて測定される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出薬は、C1-INHに結合する抗体である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記捕捉試薬は、活性型第XII因子、活性型血漿カリクレイン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記機能的C1-INHのレベルは、酵素結合免疫吸着法(ELISA)により測定される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2013年1月20日出願の米国仮出願第61/754,600号の出願日の利益を主張する。同参照出願の全体が参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
血漿カリクレイン(pKal)は、血液循環における主要なブラジキニン生成酵素である。pKalの活性化は、この接触系(contact system)を介して生じ、これが遺伝性血管性浮腫(HAE)に関連する疾患に関係している。ブラジキニンは、痛み、炎症、浮腫、および血管新生の重要な媒介物質である。
【0003】
血漿プロテアーゼC1インヒビター(C1-インヒビターまたはC1-INHとしても知られる)は、セルピンサブファミリーに属するプロテアーゼインヒビターである。その主な機能は、補体系を抑制し、自然活性化を阻止することにある。I型およびII型の遺伝性血管性浮腫は、ブラジキニンの過産生を引き起こすC1-INHの遺伝的な欠乏症により生じる。
【発明の概要】
【0004】
現在利用されている、C1-INHを調べる診断アッセイは、活性化されたC1、すなわち補体系の抑制を使用する。本開示は、PKal、FXII、またはその両方、すなわち、PKal関連のシグナル経路の抑制を使用する新たな診断アッセイの開発に基づく。驚くべきことに、本明細書に記載の診断アッセイは、対照患者と、I型およびII型HAEに罹患している患者とを100%区別することに成功している。
【0005】
よって、本開示の一態様は、(a)血漿プロテアーゼC1インヒビター(C1-INH)を含有する検体を捕捉試薬と接触させることと、(b)捕捉試薬と結合した検体中のC1-INHレベルを測定することとを含む方法を特徴とする。捕捉試薬は、i)活性型第XII因子もしくはそのC1-INH結合断片、ii)活性型血漿カリクレインもしくはそのC1-INH結合断片、またはiii)i)およびii)の組み合わせを含む。例えば、捕捉試薬は、活性型第XII因子、活性型血漿カリクレイン、またはその組み合わせであってよい。本明細書に記載のアッセイで使用される捕捉試薬のうちいずれかは、基材に固定化され得る。
【0006】
一部の実施形態において、捕捉薬に結合したC1-INHレベルは、C1-INHに結合する検出薬、例えば、C1-INHに結合する抗体を用いて測定される。一部の実施形態において、捕捉薬に結合したC1-INHレベルは、ELISA(酵素結合免疫吸着法)により測定される。
【0007】
C1-INHを含有する検体(例えば、血液検体または血漿検体)は、対象から得ることができる。一部の実施形態において、対象は、pKal関連疾病の症状を有し、pKal関連疾病は、浮腫、腫脹の再発発作;全体または大部分が末梢にある腫脹;蕁麻疹;感染症の確証がない発赤、痛み、および腫脹;または非ヒスタミン関連浮腫であってよい。他の例において、対象は、抗ヒスタミン療法、コルチコステロイド療法またはその両方に耐性を有する。さらに他の例において、検体を収集した際、対象には、pKal関連疾病の症状がない、pKal関連疾病の症状の病歴がない、またはpKal関連疾病の病歴がない。
【0008】
一部の実施形態において、本明細書に記載の方法は、検体中の捕捉試薬に結合するC1-INHレベルが基準値と比較して、減少した場合に、対象が、pKal関連疾病のおそれがあるかまたはpKal関連疾病に罹患していると判断することをさらに含む。pKal関連疾病は、ヒスタミン依存性突発血管性浮腫(histamine-dependent idiopathic angioedema)、関節リウマチ、クローン病、狼瘡、アルツハイマー病、敗血症性ショック、熱傷、脳虚血再灌流傷害、脳浮腫、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、黄斑浮腫、血管炎、動脈または静脈血栓症、補助人工心臓またはステントに関連する血栓症、血栓症、血栓塞栓症、および不安定狭心症を伴う冠動脈疾患を伴うヘパリン起因性血小板減少症、浮腫、眼疾患、痛風、炎症性腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症変性脊椎疾患(spinal stenosis-degenerative spine disease)、術後腸閉塞、大動脈瘤、変形性関節症、遺伝性血管性浮腫(HAE)、静脈血栓症、脳卒中、頭部外傷または腫瘍周辺脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血(脳卒中)、再狭窄、全身性エリテマトーデス腎炎、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、神経疾患、タンパク質のミスフォールディングに関連する疾患、血管新生に関連する疾患、高血圧性腎症および糖尿病腎症、アレルギー性呼吸器疾患、もしくは組織損傷であってよい。一部の実施形態において、pKal関連疾病は、HAEである。
【0009】
対象がpKal関連疾病(例えば、HAE)のおそれがあるかまたはpKal関連疾病に罹患していると判断された場合、本明細書に記載の方法は、有効量の治療薬を対象に投与することをさらに含んでよく、上記治療薬は、カリクレイン結合薬、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、およびC1-INH置換薬からなる群より選択される。一部の例において、治療薬は、DX-88、DX-2930、またはEPIKAL-2である。
【0010】
本開示の別の態様は、pKal関連疾病(例えば、HAE)に罹患している対象(例えば、ヒト患者)を治療するための方法であって、上記方法は、カリクレイン結合薬、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、またはC1-INH置換薬である有効量の治療薬を対象に投与することを含むことを特徴とする。この方法により治療される対象は、基準値と比較して、捕捉試薬に結合可能なC1-INHレベルが減少していた。捕捉試薬は、i)活性化第XII因子もしくはそのC1-INH結合断片、ii)活性型カリクレインもしくはそのC1-INH結合断片、またはiii)i)およびii)の組み合わせを含む。対象のC1-INHレベルは、本明細書に記載のアッセイ法のうちいずれかにより決定することができる。
【0011】
一部の実施形態において、治療薬は、DX-88、DX-2930、またはEPIKAL-2である。
【0012】
また、pKal関連疾病(例えば、HAE)を患い、捕捉試薬と結合可能なC1-INHレベルが基準値よりも低下した対象(例えば、ヒト患者)の治療に使用するための医薬組成物も本開示の範囲に包含される。医薬組成物は、疾病を治療する治療薬を含み、上記治療薬は、カリクレイン結合薬、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、またはC1-INH置換薬、およびそれらの薬学的に許容可能な担体であってよい。また、本開示は、HAE等のPKal関連疾病の治療に使用される、薬品を製造する際の、本明細書に記載の医薬組成物の使用をも提供する。別の態様において、本開示は、捕捉試薬と結合可能な血漿プロテアーゼC1インヒビター(C1-INH)を検出するキットを提供する。同キットは、
a)i)活性型第XII因子もしくはそのC1-INH結合断片、
ii)活性型カリクレインもしくはそのC1-INH結合断片、または
iii)i)およびii)の組み合わせ
を含む捕捉試薬と、
b)C1-INHに結合する検出試薬と
任意にc)C1-INHと
を含む。
【0013】
一部の実施形態において、FXIIa、活性型PKal、またはその組み合わせであってよい捕捉試薬が基材に固定化されている。一部の実施形態において、検出試薬は、抗C1-INH抗体である。
【0014】
さらに、本開示は、対象(例えば、ヒトHAE患者)のpKal関連疾病の治療を評価するための方法であって、(a)治療の前後、または治療中に、対象から収集した検体中の血漿カリクレイン、第XII因子、またはその両方を抑制可能な血漿プロテアーゼC1インヒビター(C1-INH)レベルを測定することと、(b)C1-INHレベルに基づき、治療の有効性を評価することとを含み、治療後、または治療期間にわたる、C1-INHレベルの増加は、対象において治療が有効であることを示す方法を提供する。
【0015】
一部の実施形態において、治療は、カリクレイン結合薬、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、またはC1-INH置換薬を含む。例えば、治療は、DX-88、DX-2930、またはEPIKAL-2を含む。あるいは、またさらに、対象から収集された検体は、血液検体または血漿検体である。
【0016】
一部の実施形態において、C1-INHレベルは、本明細書に記載のアッセイ法により測定することができる。例えば、C1-INHレベルは、(a)対象から収集された検体を(例えば、基材に固定化された)捕捉試薬と接触させることと、(b)i)活性型第XII因子もしくはそのC1-INH結合断片、ii)活性型血漿カリクレインもしくはそのC1-INH結合断片、またはiii)i)およびii)の組み合わせを含んでよい捕捉試薬に結合した検体中のC1-INHレベルを測定することとを含む過程により測定することができる。一部の例において、捕捉試薬は、活性型第XII因子、活性型血漿カリクレイン、またはその組み合わせを含む。本明細書に記載のアッセイのうちいくつかにおいて、C1-INHレベルは、C1-INHに結合する検出薬、例えば、C1-INHに結合する抗体を使用して測定することができる。一部の例において、C1-INHレベルは、ELISA(酵素結合免疫吸着法)により測定される。
【0017】
以下の実施形態も、本開示の範囲に包含される。
【0018】
本開示は、対象、例えば、pKal関連疾病またはブラジキニン関連疾病のおそれがあるかまたはそれらに苦しむ(例えば、それらに罹患している)対象を評価(例えば、判断)する方法を提供する。本発明の方法は、評価および治療に有用な血漿カリクレイン関連血管性浮腫(KMA)、またはpKalに関連する他の疾患に罹患している患者の分析を可能にする。
【0019】
本発明の実施形態は、患者、例えば、血漿カリクレイにより生成されるブラジキニンにより生じる浮腫に苦しむ患者の特定および治療における、バイオマーカーおよびその使用を提供する。本明細書に開示される方法、組成物および装置は、多くの手段で有用である。例えば、pKalマーカーレベルを使用して、段階的な接触系の活性化を判断することができる。最初のスクリーニングに続き、例えば、疾患の前臨床モデルにおいて、血漿カリクレインインヒビター(例えば、DX-88、EPI-KAL2、またはDX-2930)を用いた、in vitroまたはin vivoの検査を行った。本明細書に開示されるマーカーは、薬力学的なバイオマーカーとして、あるいは、カリクレインインヒビターへの対称の反応を監視するためにも使用することができる。本明細書に開示されるマーカーは、コンパニオン診断に使用し、血漿カリクレインに関連する疾患を治療することができ、pKal関連疾病またはブラジキニン関連疾病、例えば、HAE、非ヒスタミン依存性突発血管性浮腫(non-histamine-dependent idiopathic angioedema)、関節リウマチ、クローン病、狼瘡、アルツハイマー病、敗血症性ショック、熱傷、脳虚血再灌流傷害、脳浮腫、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、黄斑浮腫、血管炎、補助人工心臓に関連する血栓症、血栓症、血栓塞栓症、および不安定狭心症を伴う冠動脈疾患を伴うヘパリン起因性血小板減少症の予防的治療の間の用量を管理することができる。
【0020】
一態様において、本発明は、対象、例えば、pKal関連疾病、ブラジキニン関連疾病、例えば、抗ヒスタミン耐性浮腫またはHAEのおそれがある対象を評価するための方法であって、a)対象組織、例えば、血液、血漿、または涙を含む検体を得ることと、b)上記検体を、例えば、in vitroにて、1種以上の捕捉試薬と、C1-INHと上記1種以上の捕捉試薬との複合体の形成に十分な条件下で、接触させることであって、上記捕捉試薬は、i)活性型第XII因子もしくはそのC1-INH結合断片を含む成分、またはii)活性型カリクレインもしくはそのC1-INH結合断片を含む部分、の一方または両方を含み、c)CI-INHがその捕捉試薬と結合するレベルを評価することとを含む方法を提供する。
【0021】
一部の実施形態において、当該評価することは、決定したCI-INHが上記捕捉試薬と結合するレベルを基準値と比較することを含み、所定の基準に適合するレベル、例えば、基準値以下である場合、pKalインヒビターによる治療の影響を受けやすい疾病を示す。基準値は、例えば、pKal関連疾病を患っていないヒト、例えば、HAEまたは本明細書に記載の他の疾病を患っていない、またはそのような疾病の症状の病歴がないヒトにおけるレベルであってよい。
【0022】
一部の実施形態において、pKal関連疾病は、HAE、非ヒスタミン依存性突発血管性浮腫、関節リウマチ、クローン病、狼瘡、アルツハイマー病、敗血症性ショック、熱傷、脳虚血再灌流傷害、脳浮腫、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、黄斑浮腫、血管炎、動脈または静脈血栓症、補助人工心臓またはステントに関連する血栓症、血栓症、血栓塞栓症、および不安定狭心症を伴う冠動脈疾患を伴うヘパリン起因性血小板減少症、浮腫、眼疾患、痛風、炎症性腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症変性脊椎疾患、術後腸閉塞、大動脈瘤、変形性関節症、遺伝性血管性浮腫、静脈血栓症、脳卒中、頭部外傷または腫瘍周辺脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、神経疾患、タンパク質のミスフォールディングに関連する疾患、血管新生に関連する疾患、高血圧性腎症および糖尿病腎症、アレルギー性呼吸器疾患(例えば、アナフィラキシー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、急性呼吸窮迫症候群、嚢胞性線維症、持続性鼻炎)、および組織損傷(例えば、熱傷または化学損傷)から選択される。
【0023】
一部の実施形態において、上記対象は、pKal関連疾病への罹患性を評価される。特定の実施形態において、上記対象は、pKal関連疾病、例えば、浮腫の症状、例えば、それらと同じ症状を有する。特定の実施形態において、上記対象は、不要なpKalの活性化を特徴とする疾病の症状があり、上記対象は、抗抗ヒスタミン療法またはコルチコステロイド療法を施されており、症状は、それらに耐性を有する。一部の実施形態において、上記対象は、腫脹の再発発作、全てまたは大部分が末梢にある腫脹(例えば、対象に著しい腹部および気道の腫脹がない)、蕁麻疹、感染症の確証がない発赤、痛み、および腫脹、抗ヒスタミン療法またはコルチコステロイド療法への反応がない、または非ヒスタミン関連浮腫があるといった症状および特徴のうち1つ以上または全てがある。
【0024】
一部の実施形態において、上記対象は、持続的または繰り返し発生する浮腫があり、抗ヒスタミン療法およびステロイド療法の一方または両方に反応がない。
【0025】
一部の実施形態において、対象は、pKal関連疾病、例えば、HAE、IAE、IBD、またはIBSの病歴がない。一部の実施形態において、対象は、pKal関連疾病、例えば、HAE、IAE、IBD、またはIBSの病歴がある。一部の実施形態において、対象は、HAEの病歴がない。一部の実施形態において、対象は、HAEの病歴がある。一部の実施形態において、IAEの病歴がない。一部の実施形態において、対象は、IAEの病歴がある。一部の実施形態において、対象は、IBDまたはIBSの病歴がある。一部の実施形態において、対象は、ヒスタミン関連疾病、例えば、食物アレルギーの病歴がない。一部の実施形態において、対象は、pKal関連疾病、例えば、HAE、IAE、IBD、またはIBSの病歴がなく、ヒスタミン関連疾病、例えば、食物アレルギーの病歴がない。一部の実施形態において、対象は、pKal関連疾病、例えば、HAE、IAE、IBD、またはIBSの病歴がなく、ヒスタミン関連疾病、例えば、食物アレルギーの病歴がある。一部の実施形態において、対象は、pKal関連疾病、例えば、HAE、IAE、IBD、またはIBSの病歴があり、ヒスタミン関連疾病、食物アレルギーの病歴がある。一部の実施形態において、対象は、pKal関連疾病、例えば、HAE、IAE、IBD、またはIBSの病歴があり、ヒスタミン関連疾病、例えば、食物アレルギーの病歴がある。
【0026】
特定の実施形態において、上記対象は、血管性浮腫の病歴がある。特定の実施形態において、上記対象は、血管性浮腫の病歴がない。特定の実施形態において、上記対象は、pKal関連疾病またはブラジキニン関連疾病、例えば、浮腫に特徴的な症状に苦しんでいない。特定の実施形態において、上記対象は、その組織を対象の身体から取り除いた際に、血管性浮腫の発症を経験している。
【0027】
一部の実施形態において、上記1種以上の捕捉試薬は、基材に配置される。特定の実施形態において、基材は、不溶性基材である。一部の実施形態において、上記1種以上の捕捉試薬は、活性型第XII因子、またはそのC1-INH結合断片を含む。特定の実施形態において、上記1種以上の捕捉試薬は、活性型カリクレイン、またはそのC1-INH結合断片を含む。特定の実施形態において、上記1種以上の捕捉試薬は、活性型第XII因子またはそのC1-INH結合断片および活性型カリクレインまたはそのC1-INH結合断片を含む。
【0028】
一部の実施形態において、上記方法は、活性化C1、例えば、C1sへのC1-INHの結合を評価することを含まない。
【0029】
一部の実施形態において、上記1種以上の捕捉試薬は、その基材に配置された第2の特異的結合成分と共に複合体を形成する第1の特異的結合成分を含む。特定の実施形態において、上記第1および第2の結合成分は、ビオチンおよびアビジンから選択される。
【0030】
一部の実施形態において、上記方法は、例えば、その評価において、その複合体と検出試薬の結合、例えば、複合体化したC1INH、例えば高C1INH抗体に結合する検出試薬を評価することを含み、例えば、検出試薬は、C1INHと捕捉試薬との複合体を形成する前または後に、C1INHと結合することができる。特定の実施形態において、方法は、C1INHと検出試薬との複合体を形成するのに十分な条件下で検出試薬を供給することを含む。一部の実施形態において、上記C1-INHは、捕捉試薬で複合体化される。特定の実施形態において、上記方法は、検出試薬、C1-INH、および捕捉試薬を含む複合体を形成することを含み、上記検出試薬は、C1-INHで複合体化され、上記CI-INHは、捕捉試薬で複合体化される。
【0031】
一部の実施形態において、捕捉試薬は、活性型第XII因子、またはそのC1-INH結合断片を含む成分を含む。一部の実施形態において、捕捉試薬は、活性型カリクレイン、またはそのC1-INH結合断片を含む成分を含む。一部の実施形態において、捕捉試薬は、i)活性型第XII因子もしくはそのC1-INH結合断片を含む成分、またはii)活性型カリクレインまたはそのC1-INH結合断片を含む成分のうち、1つまたは両方を含む。特定の実施形態において、捕捉試薬は、活性型第XII因子またはそのC1-INH結合断片を含む成分を含む。特定の実施形態において、捕捉試薬は、活性型カリクレインまたはそのC1-INH結合断片を含む成分を含む。特定の実施形態において、捕捉試薬は、活性型第XII因子またはそのC1-INH結合断片を含む成分、および活性型第XII因子またはそのC1-INH結合断片を含む成分の両方を含む。
【0032】
一部の実施形態において、捕捉試薬は、その複合体を基材と結合する成分をさらに含む。特定の実施形態において、上記成分は、第1および第2の結合パートナーを含み、一方は、上記捕捉試薬に結合され、他方は、上記基材に結合される。
【0033】
一部の実施形態において、同方法は、本明細書において開示される治療薬をその対象に投与することをさらに含む。特定の実施形態において、上記治療薬は、カリクレイン結合薬、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、またはC1-INH置換薬から選択される。特定の実施形態において、上記治療薬は、DX-88を含む。特定の実施形態において、上記治療薬は、DX-2930を含む。特定の実施形態において、上記治療薬は、EPIKAL-2を含む。一部の実施形態において、方法は、第2の療法を施すことをさらに含む。
【0034】
一部の実施形態において、同方法は、上記対象がHAEに罹患しているかどうかを決定することを含む。
【0035】
別の態様において、本発明は、HAE型について対象を評価するための方法であって、(i)本明細書に開示される方法により、対象のC1-INH機能についての値を得ること(例えば、捕捉試薬に結合する検体中のC1-INHレベルを測定すること)と、(ii)総C1-INHタンパク質レベルについての値を得ること(例えば、総C1-INHレベルを測定すること)とを含み、(i)により得られたC1-INH機能についての値が、予め選択された基準に適合する場合(例えば、基準値以下の場合)、(ii)により得られたC1-INHタンパク質レベルについての値が、予め選択された基準に適合する場合(例えば、基準値以上の場合)、対象を、II型HAEに罹患していると分類する、方法を提供する。一部の実施形態において、(i)および(ii)のうち少なくとも1つは、直接的に得られる。
【0036】
別の態様において、本発明は、対象を治療するための方法であって、本明細書に開示される方法による作成されたその対象の評価およびそれに対する反応性を得ることと、上記患者の療法を選択すること、または上記患者に対し療法を施すこととを含む方法を提供する。一部の実施形態において、方法は、本明細書に開示される治療薬を上記対象に投与することをさらに含む。特定の実施形態において、上記治療薬は、カリクレイン結合薬、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、またはC1-INH置換薬から選択される。特定の実施形態において、上記治療薬は、DX-88を含む。特定の実施形態において、上記治療薬は、DX-2930を含む。特定の実施形態において、上記治療薬は、EPIKAL-2を含む。
【0037】
別の態様において、本発明は、対象を治療するための方法であって、本明細書に開示される方法により評価されている対象および対象に対する反応性を提供することと、上記患者の療法を選択すること、または上記患者へ療法を施すこととを含む方法を提供する。一部の実施形態において、方法は、本明細書に開示される治療薬を、上記対象に投与することをさらに含む。特定の実施形態において、上記治療薬は、カリクレイン結合薬、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、またはC1-INH置換薬から選択される。特定の実施形態において、上記治療薬は、DX-88を含む。特定の実施形態において、上記治療薬は、DX-2930を含む。特定の実施形態において、上記治療薬は、EPIKAL-2を含む。
【0038】
更に別の態様において、本発明は、任意に、C1-IHNで複合体化され、任意に検出試薬で複合体化された、本明細書に記載の捕捉試薬を含む反応混合物を提供する。実施形態において、反応混合物は、対象の血漿を含む。一部の実施形態において、検体の複合体化されていない要素は、例えば、洗浄により、除去されている。
【0039】
更に別の態様において、本発明は、本明細書に記載の1つ以上の捕捉薬、例えば、i)活性型第XII因子もしくはそのC1-INH結合断片を含む成分、またはii)活性型カリクレインもしくはそのC1-INH結合断片を含む成分の一方または両方、を含む基材を提供する。一部の実施形態において、上記基材は、個別に位置を特定可能な領域に配置される、成分iおよびiiを含む。
【0040】
また別の態様において、本発明は、本明細書に開示される捕捉試薬の少なくとも1つおよび実施形態によっては両方を配置する基材を含む装置を提供する。実施形態において、第1の捕捉試薬は、第1の領域に配置され、第2の捕捉試薬は、上記基材の第2の領域、例えば、異なるウェルに配置される。
【0041】
別の態様において、本発明は、任意に基材に配置される、本明細書に記載の捕捉試薬の一方または両方、検出試薬、例えば、抗C1-INH抗体、および標準物質、例えばC1-INHのうち1つ以上を含むキットを提供する。
【0042】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明で明らかとなる、本発明の他の特徴、目的および利点は、明細書および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかであるだろう。
【0043】
以下に列挙される文献はもちろん、本願全体にわたって引用される、学術文献、登録特許、公開または非公開特許出願を含む全ての引用文献の内容は、本明細書で言及される目的または主題のため、その全体が参照により、例示的に本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】ELISAによるカリクレイン-C1-INH複合体形成の例示的な検出を示す図であり、左から右の順に、正常対照、I型HAE、II型HAEおよびIII型HAE患者の血漿検体をそれぞれ示す。
図2】ELISAによる活性化第XII因子-C1-INH複合体形成の例示的な検出を示す図であり、左から右の順に、正常対照、I型HAE、II型HAEおよびIII型HAE患者の血漿検体をそれぞれ示す。
図3】ELISAアッセイを介する、FXIIaの抑制に基づき、C1-INHレベルを測定する例示的な方法を示す概略図である。
図4A図4A~4Cは、対照検体およびHAE検体における例示的な機能的ELISAからのデータを示すグラフである。図4Aは、C1sの抑制に基づき、C1-INHを測定する、市販の機能的ELISAからのデータを示す。
図4B】カリクレインの抑制に基づき、C1-INHを測定する、例示的な機能的ELISAからのデータを示す。
図4C】FXIIの抑制に基づき、C1-INHを測定する、例示的な機能的ELISAからのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
血漿カリクレイン(PKal)は、接触系のセリンプロテアーゼ成分であり、血液の循環における主要なブラジキニン生成酵素である。接触系は、外部のもしくは負に荷電した表面に晒され、第XIIa因子(活性型第XII因子またはFXII)により、または内皮細胞表面でプロピルカルボキシペプチダーゼより、のいずれかで活性化される(Sainz I.M.ら「Thromb Haemost 98」,77-83,2007)。血漿カリクレインの活性化は、第XII因子のフィードバック活性を介して、内因性凝固を促進し、炎症誘発性ノナペプチドブラジキニンの生成を介した炎症を強める。血液の循環における主要なキニノゲナーゼとして、血漿カリクレインは、血管系におけるブラジキニンの生成に大きく関わっている。C1-インヒビタータンパク質(C1-INH)の遺伝的欠乏は、遺伝性血管性浮腫(HAE)を導く。HAEに罹患している患者は、未知の誘因により突然引き起こされることがある痛みのある浮腫の突然の発症に苦しむ(Zuraw B.L.ら,N Engl J Med 359,1027-1036,2008)。動物モデルにおける薬物の使用および遺伝学的研究により、血漿カリクレイン-キニンシステム(血漿KKS)は、様々な疾患に関係している。
【0046】
遺伝性血管性浮腫(HAE)、I型およびII型は、四肢、顔、胃腸管または上気道における腫脹を特徴とする常染色体優性遺伝疾患である(1)。2~5日後、および適切に治療されていない場合の発症、特に咽頭の腫脹は、致命的となり得る。これが、可変の症状を伴う稀な疾病(1:20,000~1:50,000人に影響がある)、診断を誤ることがある。HAEは、通常、C1-INH遺伝子におけるヘテロ接合変異により生じ、タンパク質レベルの減少(I型HAE、症例数の85%)または機能の低下(II型HAE、15%)を引き起こす(2)。I型HAEにおいて、C1-INHタンパク質レベルは、低下し、機能レベルは、それに比例して低いが、II型HAEにおいては、タンパク質レベルは、正常または上昇するが、機能レベルは低い。従って、HAEの診断を確認するためだけでなく、それだけでは診断できないII型疾患を診断するために、機能的アッセイが必要である。
【0047】
C1 INHは、補体の活性化タンパク質、凝固、およびキニン形成カスケードを抑制するセリンプロテアーゼ酵素である。C1-INHの機能的レベルを評価するため、現在利用可能なアッセイは、化学発色法または複合体ELISA法のいずれかを利用して、C1-INHによる補体カスケードのC1の抑制を測定する。化学発色法が、一般的に、好ましいと考えられるが(3)、両方法には限界がある。複合体ELISAの陰性的中率が62%しかない一方、化学発色法は、時折、偽陽性を示す可能性が高い。
【0048】
当該技術分野において公知の、複合体ELISAおよび化学発色法の両方の限界は、それらアッセイが、HAE等のPKal関連疾患の発生ではなく、補体カスケードの酵素におけるC1-INHの活性を測定することである。実際、機能不全のC1-INHは、キニン形成カスケードにおいて正常な活性を有すると報告されており、従って、血管性浮腫は生じないが、C1の抑制はできず、C1は、異常に活性化し、C4は枯渇する(7)。従って、現在利用可能技術では、キニン形成カスケードを抑制する(例えば、PKalおよび/またはFXIIaを抑制する)機能があるC1-INHレベルを測定することができない。
【0049】
本開示は、I型およびII型HAEの診断のため、ELISA方法論を採用して、活性化第XII因子または血漿カリクレインのいずれかの抑制に基づき、機能的C1-INHを測定する新規のアッセイの開発に基づく。これらアッセイは、特にPKalシグナル伝達回路に関係する疾患/疾病との生理的関連性を有し、そのため、当技術分野において既知の方法を超えて大きく進歩したものであるであろう。
【0050】
本明細書は、PKalおよび/またはFXII(例えば、活性型タンパク質)の抑制に基づき、C1-INHレベルを測定する新規のアッセイ法、およびアッセイ法を実行するキットを記載する。本明細書は、そのようなアッセイ法を、HAE等のPKalに関連する疾患/疾病に罹患している、またはそれらのおそれがある患者の診断、または疾患/疾病の治療の評価への適用をも記載する。
【0051】
定義
便宜上、本発明の更なる説明の前に、明細書、実施例、添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語を以下に定義する。他の用語は、明細書で用いた際に定義する。
【0052】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確に異なる指示がある場合を除き、複数表示(plural references)を含む。
【0053】
本明細書において使用される場合、物理的実体または値を「直接的に得ること」または「間接的に得ること」により、「得る」または「得ること」は、物理的実体または値、例えば、数値の取得所持を指す。「直接的に得る」とは、物理的実体または値を取得する過程を実行すること(例えば、本明細書でこの用語を定義する場合、検体でアッセイまたは試験を行うこと、または「検体を分析すること」)を意味する。「間接的に得る」とは、別の団体または情報源(例えば、物理的実体または値を直接的に得た第3者の研究所)から、物理的実体または値を受け取ることを指す。物理的実体を直接的に得ることは、物質、例えば、開始物質における物理的変化を含む、過程、例えば、検体を分析すること、を実行することを含む。例示的な変化としては、2つ以上の開始物質から物理的実体を作製することと、物質をせん断または断片化することと、物質を分離または精製することと、2つ以上の個別の実体を合わせ混合物にすることと、共有結合または非共有結合を破壊または形成することを含む化学反応を行うこととを含む。値を直接的に得ることとしては、検体または別の物質における物理的変化を含む過程を実施すること、例えば、物質、例えば、検体、分析物、または試薬における物理的変化を含む分析過程(本明細書において、「物理分析」とも呼ぶことがある)を実施することと、分析法、例えば、物質、例えば、分析物もしくは断片、またはその他の誘導体を別の物質から分離または精製すること、分析物もしくは断片、またはその他の誘導体を別の物質、例えば、バッファ、溶媒、または反応物質と合わせること、または、例えば、分析物の第1および第2の原子間の共有結合または非共有結合を破壊または形成することにより、または試薬もしくは断片、またはその他の誘導体の構造を変化させること、例えば、試薬の第1および第2の原子間の共有結合または非共有結合を破壊または形成することにより、分析物もしくは断片、またはその他の誘導体の構造を変化させることのうち、1つ以上を含む方法を実施することとを含む。
【0054】
本明細書において使用される場合、検体を「分析すること」は、検体または別の物質、例えば、開始物質における物理的変化を要する過程を実施することを含む。例示的な変化としては、2つ以上の開始物質から物理的実体を作製することと、物質をせん断もしくは断片化することと、物質を分離もしくは精製することと、2つ以上の個別の実体を合わせ混合物とすることと、共有結合もしくは非共有結合を破壊もしくは形成することを含む化学反応を実施することとを含む。検体を分析することは、物質、例えば、検体、分析物、または試薬における物理的変化を含む分析過程(本明細書において、「物理分析」とも呼ぶことがある)を実施すること、分析法、例えば、物質、例えば、分析物もしくは断片、またはその他の誘導体を別の物質から分離または精製すること、分析物もしくは断片、またはその他の誘導体を別の物質、例えば、バッファ、溶媒、または反応物質と合わせること、または、例えば、分析物の第1および第2の原子間の共有結合または非共有結合を破壊または形成することにより、または試薬もしくは断片、またはその他の誘導体の構造を変化させること、例えば、試薬の第1および第2の原子間の共有結合または非共有結合を破壊または形成することにより、分析物もしくは断片、またはその他の誘導体の構造を変化させることのうち、1つ以上を含む方法を実施することとを含む。
【0055】
用語「アゴニスト」は、本明細書において使用される場合、タンパク質の生理活性を模倣または上方制御する(例えば、増強するまたは補充する)薬剤を指す意味を持つ。アゴニストは、野生型タンパク質または野生型タンパク質の少なくとも1つの生理活性を有するその誘導体であってよい。アゴニストは、タンパク質の少なくとも1つの生理活性を増加させる化合物であってもよい。アゴニストは、別の分子、例えば、ターゲットペプチドまたは核酸とのポリペプチドの相互作用を増加させる化合物であってもよい。
【0056】
用語「拮抗薬(アンタゴニスト)」は、本明細書において使用される場合、タンパク質の少なくとも1つの生理活性を下方制御(例えば、抑止または抑制)する薬剤を指す意味を持つ。拮抗薬は、タンパク質と別の分子、例えば、ターゲットペプチドまたは酵素基質との間の相互作用を抑制または減少させる化合物であってよい。拮抗薬は、発現し存在するタンパク質の量を減少または抑制する化合物であってもよい。通常、タンパク質または遺伝子を抑制するとは、タンパク質または遺伝子の発現またはその活性を、少なくとも10%またはそれ以上、例えば、20%、30%、40%、または50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上低下させること、または、本明細書に記載の、または当技術分野において認知されている、1つ以上の方法で測定した場合に、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍、またはそれ以上、発現またはその活性が減少することを指す。
【0057】
本明細書において使用される場合、「結合親和性」は、見かけの会合定数またはKを指す。Kは、解離定数(K)の逆数である。結合タンパク質は、例えば、特定のターゲット分子に対し、少なくとも10、10、10、10、10、1010および1011-1の結合親和性を有していてもよい。第2ターゲットに対して、第1ターゲットへのタンパク質の結合親和性が高いことは、第2ターゲットに結合するK(または数値K)よりも、第1ターゲットに結合するKが大きい(または数値Kが小さい)ことを示し得る。このような場合、結合タンパク質は、第2ターゲット(例えば、第2の立体構造の同様なタンパク質もしくはその模態、または第2のタンパク質)に対し、第1ターゲット(例えば、第1の立体構造のタンパク質またはその模態)への特異性を有する。結合親和性の相違(例えば、特異性または他の比較)は、は、少なくとも、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、37.5倍、50倍、70倍、80倍、91倍、100倍、500倍、1000倍、または10倍であってよい。
【0058】
結合親和性は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、表面プラズモン共鳴、または分光(例えば、蛍光アッセイを用いて)を含む様々な方法により決定することができる。結合親和性を評価する例示的な条件は、TRIS-バッファ(pH7.5で、50mM TRIS、150mM NaCl、5mM CaCl)中であることである。それら技術は、結合タンパク質(またはターゲット)濃度の機能として、拘束結合タンパク質(bound binding protein)または自由結合タンパク質(free binding protein)の濃度を測定するために使用することができる。結合拘束結合タンパク質([Bound])の濃度は、自由結合タンパク質([Free])の濃度、およびターゲットにおける結合タンパク質の結合部位の濃度と関連し、ここで、(N)は、以下の式
[Bound]=N・[Free]/((1/Ka)+[Free])
のように、ターゲット分子に対する結合部位の数である。
【0059】
必ずしもKを正確に決定することはできないが、例えば、ELISAまたはFACS分析法等の方法を用いて決定される、Kに比例する親和性の量的な測定を得ることは十分であるため、親和性が高い、例えば2倍高いかどうかを決定する等、比較のために使用され、例えば、機能的アッセイ、例えば、in vitroまたはin vivoアッセイにおける活性、親和性を量的に測定するまたは親和性を推定することができる。
【0060】
用語「結合タンパク質」は、ターゲット分子と相互に作用することができるタンパク質を指す。この用語は、「リガンド」とほぼ同義に用いられる。「血漿カリクレイン結合タンパク質」は、血漿カリクレインと相互に作用(例えば、結合)することができるタンパク質を指し、特に、優先的または特異的に、血漿カリクレインと相互に作用および/または血漿カリクレインを抑制するタンパク質を含む。同一の条件下で、タンパク質がない場合の血漿カリクレインの活性と比較して、血漿カリクレインの活性の減少が生じた場合に、タンパク質は、血漿カリクレインを抑制する。一部の実施形態において、血漿カリクレイン結合タンパク質は、抗体である。
【0061】
用語「捕捉試薬」は、そのリガンドと特異的に結合する成分を指す。
【0062】
本明細書において使用される場合、用語「複合体」または「複合体形成」は、互いに特異的親和性を有する要素間の複合体を指す。
【0063】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のグループは当技術分野において定義されている。それらグループは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギングルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0064】
バイオポリマーのモチーフ配列は、アミノ酸を変位させることができる位置を含んでよい。例えば、このような状況において、記号「X」は、一般的に、例えば、システイン以外のアミノ酸を指すなどの別段の定めがない限り、任意のアミノ酸(例えば、20個の天然アミノ酸のうちいずれか)を指す。他の許容されたアミノ酸は、例えば、括弧およびスラッシュを用いて示されてもよい。例えば、「(A/W/F/N/Q)」は、アラニン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン、およびグルタミンが、特定の位置において許容されることを意味する。
【0065】
本明細書において使用される場合、「検出試薬」は、検出される成分に結合する成分を指す。通常、それは、シグナル、例えば、蛍光を生じるかまたは測定可能な化合物を生成する。
【0066】
「エピトープ」は、結合タンパク質(例えば、Fabまたは完全長抗体等の抗体)により結合されるターゲット化合物の部位を指す。ターゲット化合物がタンパク質である場合、部位は、アミノ酸成分を全成分とする、タンパク質の化学的に変化したアミノ酸(例えば、グルコシル部分)を全成分とする、または、その組み合わせを成分とする。重複するエピトープは、少なくとも1つの共通のアミノ酸残基、グリコシル基、リン酸基、硫酸基、または他の分子的特徴を含む。
【0067】
第1の結合タンパク質(例えば、抗体)が、第2の結合タンパク質が結合するターゲット化合物の同一の部位に結合する、または第2の結合タンパク質が結合する部位と重複する部位(例えば、アミノ酸配列に関して、または他の分子的特徴(例えば、グリコシル基、リン酸基、または硫酸基)に関して、例えば、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の重複)に結合する場合、第1の結合タンパク質(例えば、抗体)は、第2の結合タンパク質(例えば、抗体)と、「同一のエピトープに結合する」。
【0068】
そのエピトープとの第1の結合タンパク質の結合が、そのエピトープと結合する第2の結合タンパク質の量を減少させる場合(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはそれ以上)、第1の結合タンパク質(例えば、抗体)は、第2の結合タンパク質(例えば、抗体)と「結合を競合する」。競合は、直接的(例えば、第1の結合タンパク質が、第2の結合タンパク質と同一または重複するエピトープに結合する)、または間接的(例えば、そのエピトープとの第1の結合タンパク質の結合が、そのエピトープと結合する第2の結合タンパク質の機能を減少させる、ターゲット化合物における立体構造の変化を生じる)であってよい。
【0069】
本明細書において使用される場合、「機能的な」生体分子は、特徴となる特性および/または活性を表す形態の生体分子である。
【0070】
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」(これら用語は、本明細書においてほとんど同じ意味で使用される)の計算は、以下のように行われる。配列は、最適な比較(例えば、差が、第1および第2のアミノ酸のうち一方または両方にもたらされ得る、または最適な配置のための核酸配列および非相同配列を比較のため無視することができる)のために、配置される。最適な配置は、ギャップペナルティが12、ギャップエクステンドペナルティが4およびフレームシフトギャップペナルティが5のBlossum 62スコアリングマトリックスであるGCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを用いて最良のスコアとして決定される。その後、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。そして、第1配列の位置が第2配列において対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、その位置における分子は同一である(本明細書において使用される場合、アミノ酸またはヌクレオチドの「同一性」は、アミノ酸またはヌクレオチドの「相同性」と同義である)。2つの配列間の同一性の割合は、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0071】
好ましい実施形態において、比較のため、配置された基準配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、またさらに好ましくは少なくとも70%、80%、90%、92%、95%、97%、98%、または100%である。例えば、基準配列は、免疫グロブリン可変ドメイン配列の長さであってよい。
【0072】
本明細書において使用される場合、用語「低ストリンジェント、中ストリンジェント、高ストリンジェント、超高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を述べる。ハイブリダイゼーション反応を行う指針は、「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley&Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6にある。水性および非水性の方法は、その文献に記載され、いずれも使用することができる。本発明に関係する特定のハイブリダイゼーション条件は、(1)約45℃で、6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、続いて少なくとも50℃、0.2XSSC、0.1%SDSで2回の洗浄(洗浄温度は、低ストリンジェントな条件において55℃まで上げることができる)の低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、(2)約45℃で、6XSSC、続いて60℃、0.2XSSC、0.1%SDSで1回以上の洗浄の中ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、(3)約45℃で、6XSSC、続いて、65℃、0.2XSSC、0.1%SDSで1回以上の洗浄の高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、および(4)65℃で、0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS、続いて、65℃、0.2XSSC、1%SDSで1回以上の洗浄の超高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件がある。超高ストリンジェンシー条件(4)は、好ましい条件であり、別段の定めがない限り、使用されるべき条件である。本開示は、低、中、高、または超高ストリンジェントに、本明細書に記載の核酸またはその補体、例えば、本明細書に記載の結合タンパク質をコードする核酸にハイブリダイズされる核酸を含む。核酸は、基準となる核酸の長さと同じ長さまたは、それらのm30、20、または10%以内であってよい。核酸は、本明細書に記載の免疫グロブリン可変ドメイン配列をコードする領域に対応し得る。
【0073】
「単離された組成物」は、単離された組成物を得ることができる天然検体のうち少なくとも90%の少なくとも1つの成分から除去される組成物を指す。人工的または自然に生成される組成物は、対象となる種の種または数が質量基準で、純度が少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、80%、90%、92%、95%、98%または99%である場合、特定の純度の組成物であってよい。
【0074】
本明細書において使用される場合、用語「in vitro」は、多細胞生物内ではなく、例えば、テストチューブまたは反応容器中、細胞培養等、人工的な環境下で生じる現象を指す。
【0075】
本明細書において使用される場合、用語「in vivo」は、ヒトまたはヒト以外の動物等、多細胞生物内で生じる現象を指す。
【0076】
「単離された組成物」は、単離された組成物を得ることができる天然検体のうち少なくとも90%の少なくとも1つの成分から除去される組成物を指す。人工的または自然に生成される組成物は、対象となる種の種または数が質量基準で、純度が少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、80%、90%、92%、95%、98%または99%である場合、特定の純度の組成物であってよい。
【0077】
「単離された」タンパク質は、単離されたタンパク質を得ることができる天然検体のうち少なくとも90%の少なくとも1つの成分から除去される組成物を指す。タンパク質は、対象となる種の種または数が質量基準で、純度が少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、80%、90%、92%、95%、98%または99%である場合、少なくとも特定の純度であってよい。
【0078】
用語「カリクレイン」(例えば、血漿カリクレイン)は、ペプチダーゼ(タンパク質のペプチド結合を切断する酵素)、セリンプロテアーゼファミリーのサブグループを指す。血漿カリクレインは、キニノーゲンを切断し、強力な前炎症性ペプチドであるキニンを生成する。
【0079】
用語「カリクレインインヒビター」は、カリクレインを抑制する任意の薬剤または分子を指す。例えば、DX-88(本明細書においては、「PEP-1」ともいう)は、協力(Ki<1nM)であり、血漿カリクレインの特異的なインヒビター(NP_000883)である(例えば、国際公報第95/21601号、または国際公報2003/103475号も参照)。
【0080】
本明細書において使用される場合、用語「DX-2922」は、用語「X101-A01」と同じ意味で使用される。この抗体の様々な変種を以下に記載する。
【0081】
【表1】
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「DX-2930」は、用語「X124-G01」と同じ意味で使用される。この抗体の他の変種を以下に記載する。
【0083】
【表2】
【0084】
用語「調節剤」は、調節(modulation)を生じさせることが可能な、ポリペプチド、核酸、巨大分子、複合体、分子、小分子、化合物、または種等(自然に存在するまたは自然に存在しない)、バクテリア、植物、真菌、または動物細胞もしくは組織等の生物学的物質から作られる抽出物を指す。調節剤は、アッセイに加えることにより、(直接または間接的な)インヒビターまたは活性化物質としての機能特性の潜在的な活性、生物学的活性またはプロセス、またはそれらの組み合わせ(例えば、アゴニスト、パーシャルアンタゴニスト、パーシャルアゴニスト、インバースアゴニスト、アンタゴニスト、抗菌物質、および微生物感染または増殖のインヒビター等)を評価され得る。そのようなアッセイにおいて、多くの調整剤は、一度スクリーニングされ得る。調製剤の活性は、既知であっても、未知であっても、部分的に既知であってもよい。
【0085】
「非必須」アミノ酸残基は、「必須」アミノ酸残基を変化させ、活性を十分に失いつつ、生物学的活性をなくすことなく、より好ましくは、生物学的活性を実質的に変化させることなく、結合薬、例えば、抗体の野生型配列から変更することができる残基である。
【0086】
対象の方法により治療される「患者」、「対象」または「宿主」(それら用語は同じ意味で使用される)は、ヒトまたはヒト以外の動物のいずれかを意味し得る、一部の実施形態において、対象は、カリクレイン関連疾病、例えば、ブラジキニン関連疾病、例えば、遺伝性血管性浮腫(HAE)、非ヒスタミン依存性突発血管性浮腫、関節リウマチ、クローン病、狼瘡、アルツハイマー病、敗血症性ショック、熱傷、脳虚血再灌流傷害、脳浮腫、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、黄斑浮腫、血管炎、動脈または静脈血栓症、補助人工心臓またはステントに関連する血栓症、血栓症、血栓塞栓症、および不安定狭心症を伴う冠動脈疾患を伴うヘパリン起因性血小板減少症、浮腫、眼疾患、痛風、炎症性腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症変性脊椎疾患、術後腸閉塞、大動脈瘤、変形性関節症、遺伝性血管性浮腫、静脈血栓症、脳卒中、頭部外傷または腫瘍周辺脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、神経疾患、タンパク質のミスフォールディングに関連する疾患、血管新生に関連する疾患、高血圧性腎症および糖尿病腎症、アレルギー性呼吸器疾患(例えば、アナフィラキシー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、急性呼吸窮迫症候群、嚢胞性線維症、持続性鼻炎)および組織損傷(例えば、熱傷または化学損傷)の疑いまたはおそれがある。
【0087】
用語「プレカリクレイン」および「血漿プレカリクレイン」は、本明細書において同じ意味で使用され、プレカリクレインとしても知られる、活性型血漿カリクレインの酵素前駆体を指す。
【0088】
用語 対象における疾患を「防ぐこと」または「防ぐ」は、薬学的治療、例えば、疾患の少なくとも1つの症状を防ぐような、つまり、望まれない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望まれない様子)の臨床症状の前に投与され、その結果、望まれない状態の進行から宿主を保護する薬の投与を対象に施すことを指す。また、疾患を「防ぐこと」は、「予防」または「予防治療」とも呼ぶことがある。
【0089】
本明細書において使用される場合、用語「実質的に同一(または実質的に相同)」は、第1および第2のアミノ酸または核酸配列が、同様の活性、例えば、結合活性、結合能、または生物学的活性を有する(それらを有するタンパク質をエンコードする)ような、第2のアミノ酸または核酸配列と同一または等価な(例えば、アミノ酸置換を保つ、同様の側鎖を有する)非常に多くのアミノ酸残基またはヌクレオチドを含有する第1アミノ酸または核酸配列を指すとして本明細書において使用される。抗体の場合、第2の抗体は、同一の特異性を有し、同一の抗原に対して、少なくとも50%、少なくとも25%、または少なくとも10%の親和性を有する。
【0090】
本明細書に開示される配列と同様のまたは相同的な(例えば、少なくとも約85%の配列同一性)配列も、本願の一部である。一部の実施形態において、配列同一性は、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上であってよい。
【0091】
また、核酸セグメントが、選択的ハイブリダイゼーション条件(例えば、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で、ストランドの補体にハイブリダイズされる場合、かなりの同一性がある。
【0092】
バイオポリマーのモチーフ配列は、アミノ酸を変位させることができる位置を含んでよい。例えば、このような状況において、記号「X」は、一般的に、例えば、システイン以外のアミノ酸を指すなどの別段の定めがない限り、任意のアミノ酸(例えば、20個の天然アミノ酸のうちいずれか)を指す。他の許容されたアミノ酸は、例えば、括弧およびスラッシュを用いて示されてもよい。例えば、「(A/W/F/N/Q)」は、アラニン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン、およびグルタミンが特定の位置において許容されることを意味する。
【0093】
統計的有意性は、当技術分野において既知の任意の方法により決定することができる。例示的な統計試験としては、スチューデントのt検定、マン・ホイットニーのU検定、およびウィルコクソンのノンパラメトリック統計的検定を含む。例えば、2つの状態間の区別可能な質的または量的な違いを定義する用語「導く」「阻害する」「増強する」「上昇する」「増加する」または「低下する」等は、2つの状態間の違い、例えば、統計学的に有意な違いを指してもよい。
【0094】
本明細書において使用される場合、「検体」は、対象からの、組織、例えば血液、血漿、またはタンパク質を含む組成物を指す。検体は、後に処理された、例えば、部分的に精製された保存された形態同様、対象から採取し最初の未処理の検体も両方を含む。例示的な検体としては、血液、血漿、涙、または粘液を含む。一部の実施形態において、検体は、血液または血漿である。
【0095】
好ましくは、「治療有効用量」は、測定可能なパラメータ、例えば血漿カリクレイン活性を、統計学的に有意な量、または未治療の対象に対して、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらに好ましくは少なくとも約60%、またさらい好ましくは少なくとも約80%、に調整する。測定可能なパラメータ、例えば、疾患に関連するパラメータを調整する化合物の性能は、ヒトの疾病または状態における効能が予測可能な動物モデルシステムにおいて、評価することができる。あるいは、組成物のこの特性は、in vitroにてパラメータを調整する化合物の性能を実験することにより評価することができる。
【0096】
対象において疾患(または状態)を「治療すること」または疾患に罹患している対象を「治療すること」は、薬学的治療、例えば、疾患の少なくとも1つの症状を治癒する、緩和する、または軽減させるような薬の投与を対象に施すことを指す。
【0097】
用語 対象における疾患を「防ぐこと」は、薬学的治療、例えば、疾患の少なくとも1つの症状を防ぐような、つまり、望まれない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望まれない様子)の臨床症状の前に投与され、その結果、望まれない状態の進行から宿主を保護する薬の投与を対象に施すことを指す。また、疾患を「防ぐこと」は、「予防」または「予防処置」とも呼ぶことがある。
【0098】
「予防有効量」は、所望な予防的結果を得るために、必要な用量および時間で、有効な量を指す。通常、予防有効量は、疾患前または疾患の早い段階で対象に使用されるため、予防有効量は、治療有効量よりも少なくなるであろう。
【0099】
アルファベットまたは数字の見出しを含み、見出しは、異なる指示がない限りは、理解および読解を容易にすることを目的としているに過ぎず、時間的順序や、優先順位を課されてはいない。
【0100】
PKalおよび/またはFXIIの阻害に基づき、C1-INHを測定するアッセイ法またはキット
活性カリクレインおよび/または活性FXIIに結合し、阻害するC1-INHの性能に基づき、機能的C1-INHレベルを測定する方法およびキットを本明細書において提供する。当該方法は、本明細書に記載の捕捉試薬と、C1-INHを含有する検体を接触させ、捕捉試薬に結合するものにおけるC1-INHレベルを測定することにより、行ってもよい。一部の実施形態において、総C1-INHレベル(例えば、C1-INHが本明細書に記載の捕捉試薬に結合するかどうかは別として、検体中のC1-INHタンパク質レベル)も測定される。
【0101】
血漿プロテアーゼC1インヒビター(C1-INH)は、一般的に、補体の活性化(例えば、C1の補体におけるC1rおよびC1sプロテアーゼの阻害)、血液凝固、線溶、およびキニンの産生を含む様々な生理学的経路を調整する重要な役割を担う。C1-INHは、第XIIa因子、第XIIf因子、およびカリクレインと結合および阻害する。C1-INHは、タンパク質のセルピンスーパーファミリーの一因であり、2ドメイン構造を有する。C1-INHのC末端セルピンドメインは、タンパク質の阻害活性を提供する。ヒトC1-INHの例示的なアミノ酸配列を以下に示す(寄託番号:NP_000053.2)
【0102】
【表3】
【0103】
「活性」または「機能的」C1-INHは、成熟型を含む、天然由来のC1-INHと必ずしも同一ではないが、同様の生物活性および/または免疫活性を保持するC1-INHポリペプチドまたはC1-INHポリペプチド断片を指す。一部の実施形態において、活性または機能的C1-INHは、第XIIa因子、第XIIf因子、またはカリクレインのうち1つ以上と結合することで、FXIIaおよび/またはPKalの活性を抑制し、キニン形成過程を調整するC1-INHポリペプチドまたはC1-INHポリペプチド断片である。
【0104】
一部の実施形態において、本明細書に記載のアッセイ方法で検査される検体は、生体検体、例えば、本明細書に記載の対象から得られた生体検体、例えば血液検体または血漿検体等の体液検体である。例えば、適切なC1-INHタンパク質は、生体組織検体(例えば、血液、血漿、涙、粘液)、組織抽出物または調剤、または多細胞生物(例えば、ex vivoの処置)から直接得られた固形組織において提供され得る。従って、他のもののうち、本発明によるアッセイは、診断またはバイオマーカー測定のため、ヒトまたは他の多細胞生物に内在するC1-INHを監視または特徴付けるために使用することができる。
【0105】
A.アッセイ形式
本明細書に記載のアッセイ方法は、本明細書に記載の捕捉試薬と結合するC1-INHレベルの評価(例えば、測定)を可能にする。捕捉試薬と結合するC1-INHレベル(例えば、量)は、本明細書に記載のアッセイおよび/または当技術分野において既知のアッセイを用いて測定することができる。捕捉試薬と結合するC1-INHレベルを査定するために使用することができるアッセイは、限定するものではないが、ウェスタンブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着法、例えば、サンドイッチELISA)、放射免疫測定、電気化学発光に基づく検出アッセイおよびそれらに関連する技術等の免疫測定法を含む。これら例示的なアッセイ法を実施する方法は、当技術分野において既知であり、市販されている(例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」(現行版、Wiley Online Library)参照)。
【0106】
一部の実施形態において、捕捉試薬と結合するC1-INHレベルは、ELISAを用いて決定される。ELISAは、当技術分野において既知である(例えば、Crowther,John R(2009).「The ELISA Guidebook.」(第2版 Humana Press and Lequin R(2005))参照)。「Enzyme immunoassay(EIA)/enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)」(Clin.Chem.51(12):2415-8))および例示的なELISAは、本明細書に記載される。ELISAを実施するキットも、当技術分野において既知であり、市販されている(例えば、Life Technologies社やBD Biosciences社のELISAキット参照)。
【0107】
一部の実施形態において、本発明のアッセイは、シングルアッセイ形式を含む低スループットプラットフォームで行われる。例えば、低スループットプラットフォームは、診断またはバイオマーカー測定のため、生体検体(例えば、生体組織、組織抽出物)におけるC1-INH活性レベルを測定するために使用してもよい。
【0108】
一部の実施形態において、本発明のアッセイは、高スループットプラットフォームにおいて行うことができる。一部の実施形態において、マルチウェルプレート、例えば、24個、48個、96個、384個またはそれ以上の数のウェルプレートは、高スループットアッセイに使用されてもよい。それぞれのアッセイは、各ウェルで並行して行うことができる。そのため、一般的には、マルチウェルを並行に測定し、アッセイのスループットを向上させるため、プレートリーダーを使用することが望ましい。一部の実施形態において、マルチウェル(例えば、4個、16個、24個、48個、96個、384個またはそれ以上のウェル)を並行に撮像することができるプレートリーダーはこのプラットフォームのために使用することができる。例えば、市販のプレートリーダー(例えば、Perkin Elmer社(マサチューセッツ州ウォルサム)から市販されているplate::vision system)を使用してもよい。このプレートリーダーは、動的な蛍光分析を可能とする。plate::vision systemは、集光効率が高く、96個のウェルを並行して分析するために設計された特別な光学系を有する。別の、適切な並行プレートリーダーとしては、限定するものではないが、SAFIRE(Tecan社(カリフォルニア州サンノゼ))、FLIPRTETRA(登録商標、Molecular Devices社(カリフォルニア州ユニオンシティ))、FDSS7000(Hamamatsu社(ニュージャージー州ブリッジウォーター))、およびCellLux(Perkin Elmer社(マサチューセッツ州ウォルサム))を含む。一部の実施形態において、本発明の高スループットスクリーニングアッセイは、自動化される(例えば、ロボットアッセイを適用される)。
【0109】
B.捕捉試薬
本明細書に記載のアッセイ法で使用される捕捉試薬は、キニン形成カスケードを抑制する機能、例えば、PKal、FXII、またはその両方を抑制する機能のあるC1-INで補体を形成することができる。一部の実施形態において、捕捉試薬は、活性型第XII因子もしくはそのC1-INH結合断片を含む成分、または活性型カリクレインもしくはそのC1-INH結合断片を含む成分のうち一方または両方を含んでもよい。一部の実施形態において、本発明の捕捉試薬は、天然資源から単離および/または精製される。一部の実施形態において、本発明の捕捉試薬は、組み換えまたは合成により生成される。一部の実施形態において、捕捉試薬は、基材、例えば、不溶性基材に配置(例えば、それらと結合)される。捕捉試薬は、共有結合または非共有結合により基材と結合してもよい。捕捉試薬は、基材と直接結合してもよいし、基材と間接的に、例えばリンカーを介して結合してもよい。リンカーの例としては、限定するものではないが、炭素含有鎖、ポリエチレングリコール(PEG)、核酸、単糖単位、ビオチン-アビジンおよびペプチドを含む。一部の実施形態において、基材は、1つ以上のウェルを含む容器、例えばマイクロタイタープレートである。活性型第XII因子またはカリクレインのC1-INH結合断片は、完全長の捕捉試薬の断片を生成し、断片がC1-INHと結合するかどうかと決定することにより作製することができる。
【0110】
一部の実施形態において、捕捉試薬は、第1の特異的結合成分、例えばビオチンまたはアビジンを含み、基材、例えば、不溶性基材に配置(例えば、それと結合)される第2の結合成分、例えば、ビオチンまたはアビジンと複合体を形成する。
【0111】
一部の実施形態において、捕捉試薬は、血漿カリクレインもしくはその機能的断片、FXIIもしくはその機能的断片、またはそれらの組み合わせを含んでよい。
【0112】
(i)血漿カリクレイン
血漿カリクレインは、接触系(Sainz I.Mら、Thromb Haemost 98,77-83,2007)のセリンプロテアーゼ成分である。接触系は、外部のもしくは負に荷電した表面に晒され、第XIIa因子により、または内皮細胞表面でプロピルカルボキシペプチダーゼにより、のいずれかで活性化される(Sainz I.M.ら、hromb Haemost 98,77-83,2007)。血漿カリクレインの活性化は、第XII因子のフィードバック活性を介して、内因性凝固を促進し、炎症誘発性ノナペプチドブラジキニンの生成を介した炎症を強める。血液の循環における主要なキニノゲナーゼとして、血漿カリクレインは、血管系におけるブラジキニンの生成に大きく関わっている。
【0113】
例示的な血漿カリクレイン配列としては、ヒト、マウスまたはラットの血漿カリクレインアミノ酸配列を含んでよく、その配列は、それら配列、例えば、以下に示す配列のもののうちの1つと80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。一部の実施形態において、血漿カリクレインは、天然から単離される。一部の実施形態において、血漿カリクレインは、組み換え法または合成法により生成される。
【0114】
ヒト血漿カリクレインの例示的な配列を以下に示す(寄託番号:NP_000883.2)。ヒト血漿カリクレイン(86kDa)は、ヒト血漿から精製され、第XIIa因子で活性化された。第XIIa因子は、1つの部位(Arg371-Ile372の間、以下の配列において、「/」で標識された切断部位)で、ポリペプチド配列を切断し、活性血漿カリクレインを生成することによりプレカリクレインを活性化し、それは、約52kDaの重鎖および約34kDaの触媒ドメインの2つの二硫化物結合ポリペプチドからなる[Colman and Schmaier,(1997)「Contact System:A Vascular Biology Modulator With Anticoagulant,Profibrinolytic,Antiadhesive,and Proinflammatory Attributes」Blood,90,3819-3843]。
【0115】
【表4】
【0116】
ヒト、マウス、およびラットのプレカリクレインアミノ酸配列、およびそれらをコードするmRNA配列を以下に示す。プレカリクレインの配列は、活性血漿カリクレインが2つの鎖を生じる1つの位置(「/」で示される)で切断される単一のポリペプチド鎖を有すること以外は、血漿カリクレインと同一である。以下に示す配列は、シグナル配列を含む完全な配列である。発現細胞からの分泌において、シグナル配列が除去されることが予想される。
【0117】
【表5】
【0118】
【表6】
【0119】
【表7】
【0120】
「活性」または「機能的」血漿カリクレインは、成熟型を含む、天然由来の血漿カリクレインと必ずしも同一ではないが、同様の生物活性および/または免疫活性を保持する血漿カリクレインポリペプチドまたは血漿カリクレインポリペプチド断片を指す。一部の実施形態において、活性または機能的血漿カリクレインは、C1-INHと結合する血漿カリクレインポリペプチドまたは血漿カリクレインポリペプチド断片である。
【0121】
(ii)第XII因子
第XII因子は、血液凝固の抑制、線溶、ならびにブラジキニンおよびアンギオテンシンの生成に関係する血清グリコプロテインである。プレカリクレインは、第XII因子により切断され、カリクレインを形成し、その後、第XII因子を活性化し、第XIIa因子および第XII因子断片(第XIIf因子)を形成こととなる(「Histidine-rich glycoprotein binds factor XIIa with high affinity and inhibits contact-initiated coagulation」Macquarrieら、Blood 117:4134-4141 2011)。C1インヒビター(C1-INH)は、第XIIa因子および第XIIf因子の両方の重要な血漿インヒビターであるとして、示されている(「Effect of negatively charged activating compounds on inactivation of factor XIIa by C1 inhibitor」Pixleyら、Arch Biochem Biophys 256(2):490-8 1987)。
【0122】
活性型第XIIa因子と共に、ヒト第XII因子の前駆タンパク質配列およびmRNA配列を以下に示す(寄託番号:NM_000505.3およびNP_000496.2)。
【0123】
【表8】
【0124】
「活性」または「機能的」第XII因子は、成熟型を含む、天然由来の第XII因子と必ずしも同一ではないが、同様の生物活性および/または免疫活性を保持する第XII因子ポリペプチドまたは第XII因子ポリペプチド断片を指す。一部の実施形態において、活性または機能的第XII因子は、C1-INHと結合する第XII因子ポリペプチドまたは第XII因子ポリペプチド断片である。一部の実施形態において、活性または機能的第XII因子は、C1-INHと結合する第XIIa因子ポリペプチドまたは第XIIa因子ポリペプチド断片である。一部の実施形態において、活性または機能的第XII因子は、C1-INHと結合する第XIIf因子ポリペプチドまたは第XIIf因子ポリペプチド断片である。
【0125】
C.検出薬
本発明の方法は、捕捉試薬、例えば、本明細書に開示される捕捉試薬とC1-INHとの間の複合体形成の検出を可能とする。複合体の検出は、任意の利用可能な方法、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着法)により行うことができる。例えば、一部の実施形態において、C1-INHとの抗体が使用される。一部の実施形態において、二次抗体、例えば抗C1-INH抗体が使用される。1つ以上の抗体は、検出成分と結合してもよい。一部の実施形態において、検出成分は、蛍光体であるか、または蛍光体を含む。本明細書において使用される場合、用語「蛍光体(「蛍光ラベル」または「蛍光色素」とも呼ぶ)は、所定の励起波長において光エネルギーを吸収し、異なる波長の光エネルギーを発散する成分を指す。一部の実施形態において、検出成分は、酵素であるか、または酵素を含む。一部の実施形態において、酵素は、色素のない基質から染色された生成物を生成するもの(例えば、β-ガラクトシダーゼ)である。
【0126】
本明細書において使用される場合、用語「測定すること」もしくは「測定」、またあるいは「検出すること」もしくは「検出」は、物質の質的濃度レベルの導出を含む、検体中の物質の存在、有無、分量、または量(有効量であってもよい)を査定すること、またあるいは、対象の値または分類を評価することを意味する。
【0127】
一部の実施形態において、試験は、基材、例えば反応容器に、例えば、捕捉薬が基材と結合するような条件下で、例えばELISAを使用して、捕捉薬を添加することにより行われる。検体、例えば対象からの組織検体、例えば、血液、血漿または涙は、捕捉薬を含む基材(例えば反応容器)に添加されてもよい。任意に存在する捕捉薬結合分子は、固定化捕捉薬分子と結合してもよい。抗体または抗体-検出薬抱合体は、反応混合物に添加されてもよい。抱合体の抗体部分は、予め結合した任意の抗原分子(例えば、C1-INH)と結合し、抗体-抗原-抗体の「サンドウィッチ」を生じる。未結合の抱合体を洗い流した後、検出を助けるために基質溶液が添加されてもよい。例えば、設定された間隔後、反応を停止してもよく(例えば、1N NaOHを添加することにより)、形成され、染色された生成物の濃度を分光光度計で測定してもよい。色素の強度は、結合した抗原の濃度に比例する。
【0128】
(i)抗体
抗体は、本発明の方法において使用されてもよい。一部の実施形態において、捕捉薬は、抗体であるか、または抗体を含む。一部の実施形態において、検出薬は、抗体であるか、または抗体を含む。一部の実施形態において、pKal関連疾病Mまたはブラジキニン関連疾病の治療のための治療用組成物は、抗体であるか、または抗体を含む。
【0129】
一部の実施形態において、抗体は、標的抗原またはエピトープ、例えばC1-INHと特異的に結合する。抗原またはエピトープと「特異的に結合する」抗体とは、当該技術分野において公知の用語であり、そのような特異的な結合を判断する方法も、当該技術分野において公知である。抗体は、別のターゲットとの場合よりも、より頻繁に、より素早く、より長期で、および/またはより大きな親和性をもって、特定の標的抗原と反応するまたはそれに結合する場合に、関連特異的な結合を表すと言われる。抗体は、他の基質と結合する場合よりも、より大きな親和性および結合力、より素早く、および/またはより長期で結合する場合に、標的抗原またはエピトープと「特異的に結合する」。例えば、抗原(例えば、C1-INH)またはそれらの抗原エピトープと特異的に(または優先的に)結合する抗体は、他の抗原または同じ抗原における他のエピトープと結合する場合よりも、より大きな親和性および結合力、より素早く、および/またはより長期で当該標的抗原と結合する抗体である。第1標的抗原に特異的に結合する抗体が、第2標的抗原と特異的にまたは優先的に結合してもよいし、しなくてもよいことも本定義を読むことにより理解されるであろう。このように、「特異的な結合」または「優先的な結合」は、独占的な結合を必ずしも必要としない(それらを含んでいてもよいが)。必ずしもそうではないが、一般的に、結合の意味するところは、優先的結合である。一部の実施形態において、標的抗原またはそのエピトープに「特異的に結合する」抗体は、他の抗原または同じ抗原における他のエピトープに結合しない。
【0130】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗体は、標的抗原または抗原エピトープ(例えば、C1-INH)への適切な結合親和性を有する。本明細書において使用される場合、「結合親和性」は、見かけの会合定数またはKAを指す。KAは、解離定数の逆数(KD)である。本明細書に記載の抗体は、少なくとも10~5M、10~6、10~7M、10~8M、10~9M、10~10Mまたはそれ以下の結合親和性(KD)を有する。結合親和性が高まると、対応して、KDは減少する。第2抗原に対して、第1抗原の抗体の結合親和性が高いことは、第2抗原に結合するKA(または数値KD)よりも、第1抗原に結合するKAが高い(または数値KDが小さい)ことを指し得る。このような場合、抗体は、第2抗原に対して、第1抗原への特異性を有する、結合親和性の違い(例えば、特異性または他の比較)は、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、37.5倍、50倍、70倍、80倍、91倍、100倍、500倍、1000倍、10,000倍、または105倍であってよい。
【0131】
結合親和性(または結合特異性)は、本明細書に記載の様々な方法により決定することができる。
【0132】
本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列のうちの少なくとも1つを含むタンパク質を指す。例えば、高体は、重鎖(H)可変領域(本明細書において略してVH)および、軽鎖(L)可変領域(本明細書において略して、VL)を含んでよい。別の例としては、抗体は、2つの重鎖(H)可変領域と2つの軽鎖(L)可変領域とを含む。用語「抗体」は、完全な抗体だけでなく、抗体の抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、FabおよびsFab断片、F(ab′)2、Fd断片、Fv断片、scFv、およびドメイン抗体(dAb)断片(de Wildtら、Eur J Immunol.1996;26(3):629-39.))を包括する。抗体は、構造的特徴IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(そのサブタイプも含む).を有し得る。抗体は、任意の原料由来であってよいが、霊長類(ヒトおよびヒト以外の霊長類)および霊長類化物が好ましい。
【0133】
VHおよびVL領域は、さらに、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変性の領域に細分することができ、「フレームワーク領域」(「FR」)と呼ばれるより保存された領域で散在する。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、正確に定義されている(Kabat,E.A.ら、(1991)「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版(U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)およびChothia,Cら、(1987)J.Mol.Biol.196:901-917参照、www.hgmp.mrc.ac.ukも参照)。Kabatの定義は本明細書において使用される。通常、VHおよびVLは、それぞれ、3つのCDRおよび4つのFRからなり、アミノ末端から炭素末端に、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で配置される。
【0134】
抗体のVHまたはVL鎖は、さらに、重鎖または軽鎖定常領域の全てまたは一部を含み、これにより、それぞれ、免疫グロブリン重鎖または軽鎖を形成する。一実施形態において、抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖の四量体であり、免疫グロブリン重鎖および軽鎖は、例えば、ジスルフィド結合により、互いに結合される。IgGsにおいて、重鎖定常領域は、2つの免疫グロブリンドメインCH1、CH2およびCH3を含む。軽鎖定常領域は、CLドメインを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互に作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、通常、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む、抗体の宿主組織または因子との結合を媒介する。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ型またはラムダ型のものであってもよい。一実施形態において、抗体は、グリコシル化される。抗体は、抗体依存の細胞毒性および/または補体関連の細胞毒性の機能を有し得る。
【0135】
抗体の1つ以上の領域は、ヒトまたは実質的にヒトであってよい。例えば、1つ以上の可変領域は、ヒトまたは実質的にヒトであってよい。例えば、1つ以上のCDRは、ヒト、例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3であってよい。各軽鎖CDRは、ヒトであってよい。HC CDR3は、ヒトであってよい。1つ以上のフレームワーク領域は、ヒト、例えば、HCまたはLCのFR1、FR2、FR3、およびFR4であってよい。例えば、Fc領域は、ヒトであってよい。一実施形態において、全てのフレームワーク領域は、ヒトであり、例えばヒト体細胞、例えば、免疫グロブリンを産生する造血細胞または非造血細胞により生成される抗体のフレームワーク配列を有する。一実施形態において、ヒト配列は、生殖細胞系配列であり、例えば、生殖細胞系核酸がコードする。一実施形態において、選択されたFabのフレームワーク(FR)残基は、最も類似した霊長類生殖細胞系遺伝子、特にヒト生殖細胞系遺伝子における対応する残基のアミノ酸型に変換することができる。1つ以上の定常領域は、ヒトまたは実質的にヒトであってよい。例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、または100%の免疫グロブリン可変ドメイン、定常領域、定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、CL1)、または前抗体は、ヒトまたは実質的にヒトであってよい。
【0136】
抗体の全てまたは一部は、免疫グロブリン遺伝子またはそのセグメントがコードし得る。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子は、多くの免疫グロブリン加減領域遺伝子以外にも、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、エプシロン、およびミューの定常領域遺伝子を含む。完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25 KDaまたは約214個のアミノ酸)は、NH2末端における可変領域遺伝子(約110個のアミノ酸)およびCOOH末端におけるカッパまたはラムダ定常領域がコードする。完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50KDaまたは約446個のアミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116個のアミノ酸)、および前述した他の定常領域遺伝子のうち1つ例えば、ガンマ(約330個のアミノ酸をコードする)が同様にコードする。HC CDR3が、約3個のアミノ酸残基から、35個を超えるアミノ酸残基まで変化するため、ヒトHCの長さは、かなり変化する。
【0137】
完全長抗体の用語「抗原結合断片」は、目的となるターゲットに特異的に結合する能力を保持した完全長抗体の1つ以上の断片を指す。完全長抗体の用語「抗原結合断片」に含まれる結合断片の例としては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる1価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合された2つのFab断片を含む2価断片であるF(ab′)断片、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)単一群の抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、(1989)ature 341:544-546)、および(vi)機能性を保持する単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは、個別の遺伝子によりコードされるが、それらは、組み換え法を使用して、VLおよびVH領域が、単鎖Fv(scFv)として既知の1価の分子を形成するために1組にされる、単一タンパク質鎖として、それらを作製することが可能な合成リンカーにより、組み合わせることができる。例えば、米国特許第5,260,203号、米国特許第4,946,778号、および米国特許第4,881,175号、Birdら、(1988)Science 242:423-426、およびHustonら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照。
【0138】
抗体断片は、当業者にとって既知の従来の技術を含む任意の適切な技術を使用して得ることができる。用語「単独特異性のある抗体(monospecific antibody)」は、特定のターゲット、例えばエピトープへの単結合特異性および親和性を表す抗体を指す。この用語は、抗体が生成される方法に関係なく、単一分子組成物の抗体またはその断片の調合剤を指すとして本明細書で使用される、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」を含む。
【0139】
本明細書において使用される場合、「ヒト化」免疫グロブリン可変領域は、免疫グロブリン可変領域が、正常なヒトの免疫反応を誘発しないような多くのヒトフレームワークアミノ酸位置を含むように修飾される免疫グロブリン可変領域を指す。「ヒト化」免疫グロブリンの記載は、例えば、米国特許第6,407,213号および米国特許第5,693,762号に記載されている。
【0140】
阻害定数(Ki)は、阻害能の測定を提供し、酵素活性を半分に低下させる必要があるインヒビターの濃度であり、酵素または基質の濃度に依存しない。見かけのKi(Ki,app)は、反応の範囲(例えば、酵素活性)において、異なる濃度のインヒビター(例えば、インヒビター結合タンパク質)の阻害効果を測定することにより異なる基質濃度において得ることができ、インヒビター濃度関数として、擬1次速度定数の変化をモリソン式(式1)に合わせることにより見かけのKi値の推定値を得る。Kiは、基質濃度に対する、Ki,appのプロットの線形回帰分析から抽出されたy切片から得られる。
【0141】
【数1】
【0142】
D.キット
本開示は、PKalおよび/またはFXIIを阻害する機能のあるC1-INHを評価するために使用するキットも提供する。そのようなキットは、(a)本明細書に記載の捕捉試薬、および(b)こちらも本明細書に記載の、C1-INHと結合する検出試薬、例えば、抗C1-INH抗体、ならびに、場合によっては(c)C1-INHを含んでよい。一部の実施形態において、捕捉試薬は、(i)活性型第XII因子もしくはそのC1-INH結合断片、(ii)活性型カリクレインもしくはそのC1-INH結合断片、または(iii)(i)および(ii)の組み合わせを含む。一部の実施形態において、捕捉試薬は、マイクロプレート等の基材に固定化される。
【0143】
一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載の方法のうちいずれかに従い使用する使用説明書を含んでよい。含まれる使用説明書は、ヒト患者から収集された生体検体であってよい検体中の機能的C1-INHレベルを測定するキットに含有される成分を使用する方法についての記載を含んでよい。
【0144】
キットの使用に関する使用説明書は、一般に、各成分の量、および本明細書に記載のアッセイ方法を行うために適切な条件についての情報を含む。キットの成分は、単位用量、大量放送(例えば、多回投与容器)、またはサブユニット用量であってもよい。本発明のキットに提供される使用説明書は、通常、ラベルまたは包装内容物に書かれた使用説明書であるが、機械が解読可能な使用説明書(例えば、磁気または光記憶ディスクで行われる使用説明書)であってもよい。
【0145】
ラベルまたは包装内容物は、キットがPKalおよび/またはFXIIの阻害に基づき、機能的C1-INHレベルを評価するために使用されることを指示する。使用説明書は、本明細書に記載の方法のうちいずれかを実施するために提供され得る。
【0146】
本発明のキットは、適切に包装される。適切な梱包は、限定するものではないが、バイアル、ボトル、ジャー、およびフレキシブル包装等(例えば、密封されたマイラーまたはビニール袋)を含む。また、吸入器、鼻噴投与装置(例えば、アトマライザー)またはミニポンプ等の注入器等の特定の装置との組み合わせで使用される包装も、考えられる。キットは、滅菌アクセスポート(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)を有する。容器は、滅菌アクセスポート(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)を有する。
【0147】
キットは、バッファなどの別の成分および解釈情報を任意に提供してもよい。通常、キットは、容器と、容器にまたは容器に関連しやラベルまたは包装内容物を含む。一部の実施形態において、本開示は、上記のキットの内容を含む製造物の物品を提供する。
【0148】
疾患診断および予後におけるアッセイ法の適用
本明細書に記載のアッセイ法およびキットは、疾患の評価、例えば、疾患の診断および予後に適用することができる。評価が、本明細書に記載の疾患、例えば、HAE(I型および/またはII型HAE)等のpKal関連疾病のおそれがあるかまたはそれに罹患している対象を判断することを含んでもよい。評価は、疾患の治療を監視すること、例えば、HAE(I型および/またはII型HAE)等のpKal関連疾病の治療の有効性を評価することも、含んでもよい。
【0149】
A.診断
一部の実施形態において、アッセイ法およびキットは、候補となる対象(例えば、HAE等のPKal関連疾病に罹患している疑いのあるヒト患者)から収集された生体検体(例えば、血液検体または血漿検体)におけるC1-INHレベルを決定するために行われる。その後、C1-INHレベルは、基準値と比較され、対象が、PKal関連疾病に罹患しているまたはPKal関連疾病の疑いがあるかどうかを決定する。基準値は、本明細書に記載の捕捉試薬(例えば、pKalまたはFXII)と結合可能なC1-INHの対照レベルであってよい。一部の実施形態において、対照レベルは、好ましくは、候補となる対象と同一の種である健康な対象または健康な対象の集団から得られた検体(例えば、血液または血漿検体)等の捕捉試薬と結合可能な対照検体におけるC1-INHレベルである。本明細書において使用される場合、健康な対象は、C1-INHレベルが測定された時点で、明らかに標的疾患(例えば、HAE等のPKal関連疾病)でない、または疾患の病歴がない対象である。
【0150】
対照レベルは、所定のレベルであってもよい。そのような所定のレベルは、標的疾患を患っていないまたは標的疾患の疑いがない対象の集団における(捕捉試薬と結合可能な)機能的C1-INHレベルを表し得る。また、pKalインヒビターによる治療の恩恵を得る可能性がないかもしれない対象の集団における機能的C1-INHレベルをも表す。
【0151】
所定のレベルは、様々な形態を取ることができる。例えば、中央値または平均値等のシングルカットオフ値であってもよい。一部の実施形態において、そのような所定のレベルは、一方のとある群は、標的疾患に罹患していることが知られており、別のとある群は、標的疾患を患っていないことが知られているというような比較群に基づき、確立されてもよい。あるいは、所定のレベルは、範囲、例えば、所定の割合内で、対照集団における機能的C1-INHレベルを表す範囲であってもよい。
【0152】
本明細書に記載の標的レベルは、通例の技術により決定することができる。一部の例において、対照レベルは、本明細書にも記載の対照検体において、従来の方法(例えば、試験検体において、捕捉試薬と結合可能なC1-INHレベルを得る本明細書に記載のものと同じアッセイ)を行うことにより得ることができる。他の例において、C1-INHレベルは、対照集団のメンバーから得ることができ、結果は、例えばコンピュータプログラムによって分析することができ、対照集団におけるC1-INHレベルを表す対照レベル(所定のレベル)を得る。
【0153】
候補となる対象から得られた検体における捕捉試薬と結合可能なC1-INHレベルを、本明細書に記載の基準値と比較することにより、候補となる対象がPKal関連疾患(例えば、HAE)に罹患しているまたはその疑いがあるかどうかを決定することができる。例えば、候補となる対象の捕捉試薬と結合するC1-INHレベルが、基準値から外れている(例えば、基準値よりも低下している)場合、候補となる対象は、疾患、例えばHAEに罹患しているまたはその疑いがあると判断されてもよい。
【0154】
本明細書において使用される場合、「高いレベルまたは基準値を上回るレベル」は、捕捉試薬と結合するC1-INHレベルが、所定の閾値または対照検体において捕捉試薬と結合するC1-INHのレベル等の基準値よりも高いことを意味する。対照レベルは、本明細書において詳説する。捕捉試薬と結合するC1-INHレベルが高いとは、基準値よりも、例えば、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、またはそれ以上上回るC1-INHレベルを含む。捕捉試薬と結合するC1-INH レベルが高いことは、現象が、ゼロ状態(例えば、検体において捕捉試薬と結合するC1-INHがない、または検出されない)からゼロでない状態(例えば、検体において捕捉試薬と結合するC1-INHがいくらかある、または検出可能である)まで増加することをも含む。
【0155】
本明細書において使用される場合、「低いレベルまたは基準値以下のレベル」は、捕捉試薬と結合するC1-INHレベルが、所定の閾値または対照検体における捕捉試薬と結合するC1-INH等の基準値よりも低いことを意味する。対照レベルは、本明細書において詳説する。捕捉試薬と結合するC1-INHレベルが低いことは、基準値よりも、例えば、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、またはそれ以下、下回るC1-INHレベルを含む。C1-INHレベルが低いことは、現象が、ゼロでない状態(例えば、検体において捕捉試薬と結合するC1-INHがいくらかある、または検出可能である)からゼロ状態(例えば、検体において捕捉試薬と結合するC1-INHがない、または検出されない)まで低下することも含む。
【0156】
一部の実施形態において、候補となる対象は、pKal関連疾病、例えば、HAEなどの本明細書において開示されるものの症状を有するヒト患者である。例えば、対象は、浮腫、全体または大部分が末梢にある腫脹;蕁麻疹;感染症の確証がない発赤、痛みおよび腫脹;非ヒスタミン関連浮腫、腫脹の再発発作、またはその組み合わせに罹患している。他の実施形態において、対象は、検体が収集された時点でpKal関連疾病の症状がない、pKal関連疾病の症状の病歴がない、またはHAE等のpKal関連疾病の病歴がない。さらに他の実施形態において、対象は、抗ヒスタミン療法、コルチコステロイド療法、またはその両方に耐性を有する。
【0157】
一部の実施形態において、血漿カリクレイン活性に関する疾患または状態は、遺伝性血管性浮腫(HAE)である。遺伝性血管性浮腫(HAE)は、「クインケ浮腫」、「C1エステラーゼインヒビター欠乏症(C1 esterase inhibitor deficiency)」、「C1インヒビター欠乏症(C1 inhibitor deficiency)」、および遺伝性血管神経症性浮腫(HANE)としても知られる。HAEは、例えば、手足、顔、性器、消化管、および気道に影響し得る重度の腫脹の再発(血管性浮腫)を特徴とする。HAEの症状は、例えば、腕、脚、唇、目、舌、および/または喉の腫脹;喉の腫れや突然の嗄声を伴い得る閉塞気道;明確な原因のない、繰り返し発症する腹部痙攣;および/または重症な、または腹部痙攣、嘔吐、脱水、下痢、痛み、および/またはショックを導き得る腸の腫れこのHAEに罹患している個人の約3分の1では、発作中にかゆみのない発疹と呼ばれる有縁性紅斑が進行している。
【0158】
気道の腫脹は、生命を脅かすことがあり、一部の患者を死亡させる。死亡率は、15~33%と推定される。HAEによる救急診療は、年間約15,000~30,000件ある。
【0159】
外傷やストレス、例えば、歯科治療、病気(例えば、風邪やインフルエンザなどのウイルス性疾患)、月経および手術は、血管性浮腫の発作を誘発することがある。HAEの急性発作を防ぐため、患者は、以前に発作の原因となった特定の刺激を避けようとすることができる。しかし、多くの場合、既知の誘因なしに発作は起こる。通常、HAEの症状は、まず、小児期に現れ、思春期に悪化する。平均的に、未治療の個人は、1または2週間おきに発作があり、多くの発症は、3~4日間続く(ghr.nlm.nih.gov/condition/hereditary-angioedema)。発作の頻度および期間は、同じ家族でも遺伝性血管性浮腫の患者間で大きく変化する。
【0160】
I型、II型、およびIII型で知られる3つの種類のHAEがある。HAEは、50,000人に影響を及ぼし、うち、I型は全体の約85%を占め、II型は全体の約15%を占め、III型は、極めて稀である。III型は、最も新たに報告された形態であり、以前は女性にのみ起こると考えられていたが、男性患者がいる家族も同定されている。一部の実施形態において、本明細書に記載のアッセイ法は、I型HAEまたはII型HAEの診断に適用することができる例については以下を参照のこと。
【0161】
HAEは、常染色体優性パターンで遺伝し、患者は、1人の患者である親からの変異が遺伝されることがある。遺伝子における新たな変異も生じることがあり、そのため、HAEは、その家族に疾病の病歴がない人にも起こり得る。全体の20~25%が、新たな自然突然変異によるものと推定される。
【0162】
SERPING1遺伝子の変異は、I型およびII型の遺伝性血管性浮腫を引き起こす。SERPING1遺伝子は、炎症制御に重要なC1インヒビタータンパク質を産生するための指示を与える。C1インヒビターは、炎症を促進する特定のタンパク質を阻害する。I型遺伝性血管性浮腫を引き起こす変異は、血液中のC1インヒビターレベルを減少させる。一方、II型を引き起こす変異により、異常な機能として、C1インヒビターが産生される。機能的C1インヒビターレベルが適切でないと、過剰な量のブラジキニンが生成される。ブラジキニンは、血管壁を通る体細胞内への流体の洩れを増加させることにより炎症を促進する。体組織における流体の過剰な蓄積は、I型およびII型遺伝性血管性浮腫の患者で見られる腫脹の発症を引き起こす。
【0163】
F12遺伝子における変異は、一部の場合のIII型遺伝性血管性浮腫と関連する。F12遺伝子は第XII凝固因子を産生する指示を与える。血液凝固(凝固)における重要な役割に加えて、第XII因子は、炎症の重要な刺激因子でもあり、ブラジキニンの産生に関係する。F12遺伝子における特定の変異により、活性の増加を伴う、第XII因子の産生が起こる。結果として、ブラジキニンがより生成され、血管壁は、よりもろくなり、腫脹の発症を導く。他の場合のIII型遺伝性血管性浮腫の原因は、知られていない。1つ以上の未だ特定されていない遺伝子における変異が、この場合の疾病に関係し得る。
【0164】
HAEは、アレルギーや他の病状に起因する血管性浮腫の他の形態と同様に存在することができるが、原因や治療の点で大きく異なる。遺伝性血管性浮腫が、アレルギーと誤診された場合、最も一般的には、通常HAEに効果がないヒスタミン薬、ステロイド、および/またはエピネフリンで治療されるが、エピネフリンは、生命を脅かす反応に使用され得る。また、誤診は、腹部腫脹に罹患している患者への不必要な診査手術にもつながり、一部のHAE患者において、腹痛が、誤って心身症と診断されている。
【0165】
HAEの症状は、例えば、質問紙、例えば、患者、臨床医、または家族により完成された質問紙を用いて、査定することができる。そのような質問紙は、当技術分野において既知であり、例えば、視覚的アナログスケールを含む。例えば、McMillan,C.V.ら、Patient.2012;5(2):113-26参照。
【0166】
血漿カリクレイン活性に関連する他の例示的な疾患または状態としては、非ヒスタミン依存性突発血管性浮腫、関節リウマチ、クローン病、狼瘡、アルツハイマー病、敗血症性ショック、熱傷、脳虚血再灌流傷害、脳浮腫、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、黄斑浮腫、血管炎、動脈または静脈血栓症、補助人工心臓またはステントに関連する血栓症、血栓症、血栓塞栓症、および不安定狭心症を伴う冠動脈疾患を伴うヘパリン起因性血小板減少症、浮腫、眼疾患、痛風、炎症性腸疾患、口腔粘膜炎、神経因性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄症変性脊椎疾患、術後腸閉塞、大動脈瘤、変形性関節症、遺伝性血管性浮腫、静脈血栓症、脳卒中、頭部外傷または腫瘍周辺脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、神経疾患、タンパク質のミスフォールディングに関連する疾患、血管新生に関連する疾患、高血圧性腎症および糖尿病腎症、アレルギー性呼吸器疾患(例えば、アナフィラキシー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、急性呼吸窮迫症候群、嚢胞性線維症、持続性鼻炎)、および組織損傷(例えば、熱傷または化学損傷)を含む。
【0167】
PKal関連疾病に罹患しているか、またはその疑いがあると同定された対象は、本明細書に記載されるもののような治療を受けることができる。
【0168】
B.治療有効性の評価
本明細書に記載のアッセイ法は、PKal関連疾病(例えば、HAE)の治療の有効性の評価にも適用することができる。例えば、複数の生体サンプル(例えば、血液または血漿検体)は、治療前および治療後または治療間のいずれかで治療を行う対象から収集することができる。(PKalおよび/またはFXIIを抑制可能な)機能的C1-INHレベルは、本明細書に記載のアッセイ法のうちいずれかにより測定することができる。機能的C1-INHレベルが、治療後または治療期間にわたって増加する(以前に収集したものと比較して、後に収集された検体における機能的C1-INHレベルが同一または増加する)場合、治療が有効であることを示している。一部の例において、治療は、本明細書に記載のカリクレイン結合薬、本明細書に記載のブラジキニンB2受容体拮抗薬、または本明細書に記載のC1-INH置換薬等の治療薬を含む。治療薬の例としては、限定するものではないが、DX-2930またはDX88を含む。
【0169】
対象が治療に反応しないと判断された場合、判断された対象に対し、治療薬をより多くの腹用量および/または高頻度で投与する。一部の実施形態において、治療薬の服用量または服用頻度は、治療に反応するかまたはさらなる治療の必要がないと判断された対象において、維持、低下、または中止される。あるいは、異なる治療は、第1の治療に反応しないと判明した対象に対し適用され得る。
【0170】
治療
HAE等のPKal関連疾病に罹患しているまたはその疑いがある対象を治療するための方法も、本明細書に記載される。対象は、基準値(例えば、本明細書に記載するもの)と比較して、(PKalまたはFXIIを阻害可能な)機能的C1-INHレベルが低下することがあり、それは本明細書に記載のアッセイ法のいずれかにより決定することができる。
【0171】
PKal関連疾病またはブラジキニン関連疾病の疑いがあるかまたはそれに苦しむ(例えば、この疾患を有する)対象は、任意の適切な治療薬で治療されてもよい。一部の実施形態において、本発明の方法は、アッセイのアウトプットに基づき、対象の治療を選択することを含む。本発明のアッセイは、検体に存在する機能的C1-INHとブラジキニン経路の活性化成分、例えば、他のもののうち、血漿カリクレイン、第XIIa因子、および第XIIa因子との間の相互作用の検出を可能にする。そのような相互作用のレベルが低いことは、検体における機能的C1-INHのレベルが低いことを示す。一部の実施形態において、例えば、カリクレイン結合薬、例えば、C1-INH置換治療薬での治療は、対照検体または基準と比較して、機能的CI-INHが、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、または5%以下の検体の対象のために選択される
【0172】
一部の実施形態において、方法は、アッセイのアウトプットに基づき、対象への投与のために、治療薬、例えば本明細書に記載のカリクレイン結合薬 、例えば本明細書に記載のブラジキニンB2受容体拮抗薬、例えば本明細書に記載のC1-INH置換薬を選択または投与するうち一方または両方を含む。
【0173】
一部の実施形態において、血漿カリクレイン結合タンパク質またはポリペプチドは、対象に投与される。一部の実施形態において、カリクレイン結合薬は、カリクレインインヒビター、例えば、ペプチド、小分子インヒビター、カリクレイン抗体、またはその断片である。一部の実施形態において、ブラジキニンB2受容体拮抗薬は、対象に投与される。一部の実施形態において、C1-INH置換治療薬は、対象に投与される。
【0174】
治療薬、例えばカリクレインインヒビター、例えば、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、例えばC1-INH置換薬は、血漿カリクレインおよび/またはブラジキニン活性に関する疾患または状態の治療のための併用療法の一部として別の両方と共に投与されてもよい。例えば、カリクレインインヒビター、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、またはC1-INH置換薬のうち1つ以上と別の両方と共にある併用療法は、複数の異なる構成で提供されてもよい。第1薬は、他の両方の投与の前または後に投与されてもよい。一部の状況において、第1剤および別の両方(例えば、治療薬)は、同時または非常に近い時間的間隔(例えば、同一の治療セッション間等、注入の間の時間間隔が短い)で投与される。第1薬および別の両方は、より長い時間的間隔で投与されてもよい。
【0175】
血漿カリクレイン結合薬
血漿カリクレイン結合薬(例えば結合タンパク質、例えばポリペプチド、例えばインヒビターポリペプチド、例えば抗体、例えばインヒビター抗体、または他の結合薬、例えば小分子)は、様々な疾患および状態、例えば、血漿カリクレイン活性に関する疾患および状態に有用な治療薬である。例えば、一部の実施形態において、血漿カリクレイン活性に関する疾患または状態は、遺伝性血管性浮腫(HAE)である。一部の実施形態において、血漿カリクレイン結合タンパク質またはポリペプチドは、pKal関連疾病またはブラジキニン関連疾病の疑いがあるか、またはそれに苦しむ患者に投与される。
【0176】
多くの有用なカリクレイン(組織カリクレインおよび/または血漿カリクレインのいずれか)のたんぱく質インヒビターは、Kunitzドメインを含む。本明細書において使用される場合、「Kunitzドメイン」は、少なくとも2つ、好ましくは3つの二硫化物を含有する少なくとも51個のアミノ酸を有するポリペプチドドメインである。第1および第6番目のシステイン、第2および第4番目、ならびに第3および第5番目のシステインが、ジスルフィド結合を形成し(例えば、58個のアミノ酸を有するKunitzドメインにおいて、以下に提供するBPTI相同配列の数で、システインは、アミノ酸 5、14、30、38、51、および55に対応する位置に存在することがあり、二硫化物は、5および55、14および38、30および51の位置で形成され得る)、または、2つの二硫化物が存在する場合、それらは、そのシステインの対応するサブセット刊で形成され得るように、ドメインは、折り畳まれる。それぞれのシステイン間の空間は、以下に提供するBPTI相同配列の符号で、5~55、14~38、および30~51に対応する位置間の間隔の、7、5、4、3、2、1または0個のアミノ酸内であってよい。BPTI配列は、任意の一般的なKunitzドメインにおける特定の位置を指す基準として使用することができる。BPTIと着目したKunitzドメインとの比較は、配置したシステインの数が最大化される最良に適した配置を特定することにより行うことができる。
【0177】
BPTIのKunitzドメインの3D構造(高解像度)は、既知である。X線構造のうちの1つは、Brookhaven Protein Data Bankに、「6PTI」として蓄積される。一部のBPTIホモローグの 3D構造(Eigenbrotら、(1990)Protein Engineering,3(7):591-598;Hynesら、(1990)Biochemistry,29:10018-10022)は、既知である。少なくとも81のKunitzドメイン配列は、既知である。既知のヒトホモローグは、組織因子経路インヒビター(TFPI)としても知られるLACIの3つのKunitzドメイン(Wunら、(1988)J.Biol. Chem.263(13):6001-6004;Girardら、(1989)Nature,338:518-20;Novotnyら、(1989)J.Biol. Chem.,264(31):18832-18837)、インター-α-トリプシンインヒビター、APP-Iの2つのKunitzドメイン(Kidoら、(1988)J.Biol. Chem.,263(34):18104-18107)、コラーゲン由来のKunitzドメイン、TFPI-2の3つのKunitzドメイン(Sprecherら、(1994)PNAS USA,91:3353-3357)、hepatocyte growth factor activator inhibitor type 1のKunitzドメイン、Hepatocyte growth factor activator inhibitor type 2のKunitzドメイン、および米国特許公報第2004-0152633号に記載されているKunitzドメインを含む。LACIは、3つのKunitzドメインを含有する、分子量39kDaのヒト血清ホスホグリコプロテイン(human serum phosphoglycoprotein、表1のアミノ酸配列)である。
【0178】
【表9】
【0179】
上記Kunitzドメインは、LACI-K1(残基 50~107)、LACI-K2(残基121~178)、およびLACI-K3(213~270)としても知られる。LACIのcDNA配列は、Wunら(J.Biol.Chem.,1988,263(13):6001-6004)に報告される。Girardら(Nature,1989,338:518-20)は、3つのKunitzドメインそれぞれのP1残基が変化したという変異についての研究を報告する。F.VIIaが組織因子およびLACI-K2インヒビターに複合体化された場合のLACI-K1 inhibits Factor VIIa(F.VIIa)は、第Xa因子を抑制する。
【0180】
例示的なKunitzドメインを含有するタンパク質は、括弧内にSWISS-PROT寄託番号を付して、以下のものを含む。
【0181】
【表10】
【0182】
様々な方法が、配列データベースからKunitzドメインを特定するために使用され得る。例えば、Kunitzドメインの既知のアミノ酸配列、コンセンサス配列、またはモチーフ(例えば、ProSiteモチーフ)は、例えば、BLASTを用いて、GenBank配列データベース(国立バイオテクノロジー情報センター、国立衛生研究所メリーランド州ベセスダ)に対して、HMM(隠れマルコフモデル)のPfamデータベース)(例えば、Pfam サーチングのデフォルトパラメータを使用して)、SMARTデータベースに対して、またはProDomデータベースに対して、探索することができる。例えば、Pfam Release 9のPfam寄託番号PF00014は、多くのKunitzドメインおよびKunitzドメインを特定するHMMを提供する。Pfamデータベースの説明は、Sonhammerら(1997)Proteins 28(3):405-420において見ることができ、HMMの詳細な説明は、例えば、Gribskovら、(1990)Meth.Enzymol.183:146-159;Gribskovら、(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4355-4358;Kroghら、(1994)J.Mol.Biol.235:1501-1531;およびStultzら、(1993)Protein Sci.2:305-314において見ることができる。HMMのSMARTデータベース(Simple Modular Architecture Research Tool,EMBL,ドイツハイデルベルク州)は、Schultzら、(1998),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:5857、およびSchultzら、(2000)Nucl.Acids Res 28:231に記載されている。SMARTデータベースは、HMMer2サーチプログラムの隠れマルコフモデルを用いてプロファイルされることにより特定されるドメインを含有する(R.Durbinら、(1998)Biological sequence analysis:probabilistic models of proteins and nucleic acids.Cambridge University Press)。また、データベースは、注釈を付け監視される。ProDomタンパク質ドメインデータベースは、相同性のあるドメインの自動編集からなる(Corpetら、(1999),Nucl.Acids Res.27:263-267)。現行の「ProDomは、SWISS-PROT 38の再帰的なPSI-BLASTサーチ(Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Gouzyら、(1999)Computers and Chemistry 23:333-340.)およびTREMBLタンパク質データベースを用いて、構築される。データベースは、自動的に各ドメインの一致する配列を生じさせる。Prositeは、モチーフとしてKunitzドメインを列挙し、Kunitzドメインを含むタンパク質を特定する。例えば、Falquetら、Nucleic Acids Res.30:235-238(2002)参照。
【0183】
Kunitzドメインは、主として、2つのループ領域(「結合ループ」)にあるアミノ酸を用いて、標的プロテアーゼと作用する。第1のループ領域は、おおよそ、BPTIのアミノ酸13~20に対応する残基間にある。第2のループ領域は、おおよそ、BPTIのアミノ酸31-39に対応する残基間にある。Kunitzドメインの例示的なライブラリは、第1および/または第2ループ領域において、1つ以上のアミノ酸を変化させる。カリクレインで作用するKunitzドメインをスクリーニングする場合、または親和性を改善した変種を選択する場合に変化する特定の有用な位置は、BPTI配列に対して、位置 13、15、16、17、18、19、31、32、34、および39を含む。それら位置の少なくとも一部は、標的プロテアーゼと略接触していると予想される。他の位置、例えば、3D構造において前述の位置に隣接する位置を変化させることも有用である。
【0184】
Kunitzドメインの「フレームワーク領域」は、特に、第1および第2結合ループ領域(すなわち、ほぼ、BPTIのアミノ酸13-20および31-39).を除いて、Kunitzドメインの一部である残基のものと定義される。逆に、結合ループにない残基は、より広い範囲のアミノ酸置換(例えば、保存的および/または非保存的置換)を許容することができる。
【0185】
一実施形態において、それらKunitzドメインは、ヒトリポタンパク質関連凝固インヒビター(LACI)タンパク質のKunitzドメイン1を含むループ構造の変種体である。LACIは、パラダイムKunitzドメインである、周知の、3つの内部のペプチドループ構造を含有する(Girard,T.ら、1989.Nature,338:518-520)。本明細書に記載のLACIのKunitzドメイン1の変種は、スクリーニングされ、単離されており、強い親和性と特異性を持ってカリクレインと結合する(例えば、米国特許第5,795,865号、および米国特許第 6,057,287号)。それら方法は、他のKunitzドメインフレームワークにも適用でき、カリクレイン、例えば、血漿カリクレインと作用する他のKunitzドメインを得ることができる。カリクレインの機能の有用な調節剤は、通常、カリクレイン結合および抑制アッセイを使用して決定されるように、カリクレインと結合および/またはそれを抑制する。
【0186】
一部の態様において、カリクレイン結合薬(例えば結合タンパク質、例えばポリペプチド、例えば、インヒビターポリペプチド、例えば抗体、例えば、インヒビター抗体、または他の結合薬、例えば小分子)は、活性型血漿カリクレインと結合する。一部の実施形態において、カリクレイン結合薬は、血漿カリクレイン、例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはネズミ科血漿カリクレインと結合しそれを阻害する。
【0187】
血漿カリクレイン結合タンパク質は、完全長(例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、およびIgE)であってよいか、または抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab′)2、またはscFv断片)のみを含んでよい。結合タンパク質は、2つの重鎖免疫グロブリンおよび2つの軽鎖免疫グロブリンを含んでよいか、または単鎖抗体であってよい。血漿カリクレイン結合タンパク質は、ヒト化、CDR移植された、キメラの、非免疫化された、またはin vitroで生成された抗体等の組み換えタンパク質あってよく、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の定常領域を任意に含んでもよい。一実施形態において、血漿カリクレイン結合タンパク質は、モノクローナル抗体である。
【0188】
一部の実施形態において、カリクレイン結合タンパク質は、血漿カリクレイン、例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはネズミ科カリクレインと結合およびそれを阻害する。例示的な血漿カリクレイン結合タンパク質としては、米国特許公報第20120201756号に開示され、その全体の内容が本明細書に参照により組み込まれる。一部の実施形態において、カリクレイン結合タンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01(本明細書において、DX-2922ともいう)、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X124-G01(本明細書において、DX-2930ともいう)、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群から選択される抗体の軽鎖および/または重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。一部の実施形態において、血漿カリクレイン結合タンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01(本明細書において、DX-2922ともいう)、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X124-G01(本明細書において、DX-2930ともいう)、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04と同一のエピトープと競合またはそれらに結合する。一部の実施形態において、血漿カリクレイン結合タンパク質は、DX-2930である。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第20120201756号も参照のこと。
【0189】
DX-2930の重鎖および軽鎖可変領域配列を以下に示す。
【0190】
【表11】
【0191】
一部の態様において、カリクレイン結合ポリペプチド(例えば、インヒビターポリペプチド)は、活性型血漿カリクレインと結合する。例示的なポリペプチド血漿カリクレイン薬は、米国特許第5,795,865号、米国特許第5,994,125号、米国特許第6,057,287号、米国特許第6,333,402号、米国特許第7,628,983、および米国特許第8,283,321号、米国特許第7,064,107号、米国特許第7,276,480号、米国特許第7,851,442号、米国特許第8,124,586号、米国特許第7,811,991、ならびに米国特許公報第20110086801号に開示され、そのそれぞれの内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態において、カリクレイン結合ポリペプチドは、DX-88(天然由来でないインヒビター、「KALBITOR(登録商標、エカランチド)としても知られる、配列番号11)である。一部の実施形態において、カリクレインインヒビターは、配列番号11のアミノ酸3-60の約58個のアミノ酸配列、または配列番号11の60個のアミノ酸配列を有するDX-88ポリペプチドを含むまたはそれからなる。
【0192】
【表12】
【0193】
一部の実施形態において、血漿カリクレイン結合タンパク質は、58の残基アミノ酸配列(配列番号11の残基3-60)を有し、残基34にあるIleをSerに、残基39にあるGluをGlyにアミノ酸置換した天然由来でないカリクレインインヒビターである、EPIKAL-2(配列番号12)である。EPIKAL-2の配列を以下に示す。
【0194】
【表13】
【0195】
一部の実施形態において、血漿カリクレイン結合タンパク質は、本明細書に記載の結合タンパク質と、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有し得る。一部の実施形態において、血漿カリクレイン結合タンパク質は、HCおよび/LCフレームワーク領域(例えば、HCおよび/またはLC FR1、2、3、および/または4)において、本明細書に記載の結合タンパク質と、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有し得る。一部の実施形態において、血漿カリクレイン結合タンパク質は、定常領域(例えば、CH1、CH2、CH3、および/またはCL1)において、本明細書に記載の結合タンパク質と、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有し得る。
【0196】
ブラジキニンB2受容体拮抗薬
一部の実施形態において、ブラジキニンB2受容体拮抗薬は、対象に投与される。例示的なブラジキニンB2受容体拮抗薬としては、天然ブラジキニンのブラジキニンB2受容体との結合を阻害する、10個のアミノ酸を含有するペプチド模倣薬である、Incatibant(Firazyr(登録商標))を含む。
【0197】
C1-INH置換薬
一部の実施形態において、C1-INH置換薬は、対象に投与される。例示的なC1-INH置換薬は、市販されており、例えば、精製されたヒト低温殺菌ナノ濾過C1-INH濃縮物である、Berinert(登録商標)を含む。
【0198】
他のHAE治療薬とともにC1インヒビター治療薬は、Kaplan,A.P.,J Allergy Clin Immunol,2010,126(5):918-925に記載されている。
【0199】
HAE発作の急を要する治療は、可能な限り素早く浮腫の進行を停止させるために提供される。静脈内投与される、ドナーの血液からのC1インヒビター濃縮物は、1つの緊急治療であるが、この治療は多くの国で利用できない。C1インヒビター濃縮物が利用できない緊急の状況において、新鮮凍結血漿(FFP)は、C1インヒビターを含有するため、代替物として使用することができる。
【0200】
ヒト血液由来の精製されたC1インヒビターは、欧州において、1979年から使用されている。今や、いくつかのC1インヒビター治療は、米国で利用可能であり、今や、2つのC1インヒビター生成物が、カナダにおいて利用可能である。低温殺菌されたBerinert P(CSL Behring)は、2009年に急性発作用として、F.D.A.に承認された。ナノ濾過されたCinryze(ViroPharma)は、2008年に、予防用として、F.D.A.に承認された。Rhucin(Pharming)は、ヒト血液媒介性病原体による感染症の伝播の危険を有していない開発中の組み換えC1インヒビターである。
【0201】
急性HAE発作の治療は、痛みの軽減のための薬品および/またはIV流体含んでよいも含んでよい。
【0202】
他の治療方式は、C1インヒビターの合成を刺激するか、またはC1インヒビターの消費を低下させることができる。ダナゾール等のアンドロゲン薬は、C1インヒビターの産生を刺激することにより、発作の頻度および重症度を低下させることができる。
【0203】
ヘリコバクター・ピロリは、腹部の発作を誘発することがある。ヘリコバクター・ピロリを治療する抗生物質は、腹痛発作(abdominal attack)を減少させる。
【0204】
新たな治療は、接触カスケードを攻撃する。エカランチド(KALBITOR(登録商標)、DX-88、Dyax)は、血漿カリクレインを抑制し、米国において承認されている。イカチバント(FIRAZYR(登録商標、Shire)は、ブラジキニンB2受容体を抑制し、欧州および米国において承認されている。
【0205】
HAEの診断は、例えば、家族の病歴および/または血液検査に依存し得る。I型、II型、III型HAEに関連する研究所の発見は、例えば、Kaplan,A.P.,J Allergy Clin Immunol,2010,126(5):918-925に記載されている。I型HAEにおいて、C1インヒビターレベルは、C4レベルのように減少し、一方、C1qレベルは、正常である。II型HAEにおいて、C1インヒビターレベルは、正常か上昇するが、C1インヒビターの機能は、異常である。C4レベルは、減少し、C1qレベルは正常である。III型において、C1インヒビター、C4、およびC1qレベルは、全て正常であってよい。
【0206】
他のHAE治療薬とともにC1インヒビター治療薬は、Kaplan,A.P.,J Allergy Clin Immunol,2010,126(5):918-925に記載されている。
【0207】
HAEの例示的な治療は、以下に提供される。HAE発作の急を要する治療は、可能な限り素早く浮腫の進行を停止させるために提供される。静脈内投与される、ドナーの血液からのC1インヒビター濃縮物は、1つの緊急治療であるが、この治療は多くの国で利用できない。C1インヒビター濃縮物が利用できない緊急の状況において、新鮮凍結血漿(FFP)は、C1インヒビターを含有するため、代替物として使用することができる。
【0208】
ヒト血液由来の精製されたC1インヒビターは、欧州において、1979年から使用されている。今や、いくつかのC1インヒビター治療は、米国で利用可能であり、今や、2つのC1インヒビター生成物が、カナダにおいて利用可能である。低温殺菌されたBerinert P(CSL Behring)は、2009年に急性発作用として、F.D.A.に承認された。ナノ濾過されたCinryze(ViroPharma)は、2008年に、予防用として、F.D.A.に承認された。Rhucin(Pharming)は、ヒト血液媒介性病原体による感染症の伝播の危険を有していない開発中の組み換えC1インヒビターである。
【0209】
急性HAE発作の治療は、痛みの軽減のための薬品および/またはIV流体含んでよいも含んでよい。
【0210】
他の治療方式は、C1インヒビターの合成を刺激するか、またはC1インヒビターの消費を低下させることができる。ダナゾール等のアンドロゲン薬は、C1インヒビターの産生を刺激することにより、発作の頻度および重症度を低下させることができる。
【0211】
ヘリコバクター・ピロリは、腹部の発作を誘発することがある。ヘリコバクター・ピロリを治療する抗生物質は、腹痛発作(abdominal attack)を減少させる。
【0212】
新たな治療は、接触カスケードを攻撃する。エカランチド(KALBITOR(登録商標)、DX-88、Dyax)は、血漿カリクレインを抑制し、米国において承認されている。イカチバント(FIRAZYR(登録商標、Shire)は、ブラジキニンB2受容体を抑制し、欧州および米国において承認されている。
【0213】
HAEの診断は、例えば、家族の病歴および/または血液検査に依存し得る。I型、II型、III型HAEに関連する研究所の発見は、例えば、Kaplan,A.P.,J Allergy Clin Immunol,2010,126(5):918-925に記載されている。I型HAEにおいて、C1インヒビターレベルは、C4レベルのように減少し、一方、C1qレベルは、正常である。II型HAEにおいて、C1インヒビターレベルは、正常か上昇するが、C1インヒビターの機能は、異常である。C4レベルは、減少し、C1qレベルは正常である。III型において、C1インヒビター、C4、およびC1qレベルは、全て正常であってよい。
【0214】
以下の実施例は、さらなる説明を提供するものであり、限定ではない。
【0215】
実施例
実施例1.血漿における機能的Cl-INHの定量のための活性化第XII因子 および/または血漿カリクレインを用いた複合体ELISA
C1インヒビター、C1-INHの機能異常が、II型遺伝性血管性浮腫(HAE)に存在し、それがインヒビターを無効にすることが実証されている。I型HAEは、総C1-INHタンパク質レベルが低い。III型HAEは、正常なレベルのC1-INHに関連している(「Enzymatic pathways in the pathogenesis of hereditary angioedema:The role of C1 inhibitor therapy.」 Kaplan,A.,The Journal of Allergy and Clinical Immunology 126(5):918-25 2010)。C1-INHは、第XIIa因子、第XII因子断片(XIIf)、カリクレイン、およびプラスミンを抑制する。C1-INHの機能がない場合、重篤な血管性浮腫を引き起こす、ブラジキニン形成カスケードの著しい活性化が起こる。I型HAEは、一般的に、総C1-INHレベルを減少させることを特徴とする。II型HAEは、一般的に、正常なC1-INHレベルを増加させることを特徴とするが、C1-INHレベルの機能は以上である。III型HAEを起こす機構は、十分には分かっていないが、III型HAEは、主に、女性患者について記載されている。
【0216】
遺伝性血管性浮腫(HAE)は、補体の活性化第1成分の、アッセイ(C1インヒビターの機能的アッセイ)、例えば、化学発色法またはELISA法を使用して、診断することができる。一部の場合、C1INHのC1s捕捉に基づくアッセイが、使用される。現在の化学発色HAE診断アッセイは、一般的に、好ましいと考えられているが、両方法には限界がある。複合体ELISAの陰性的中率が62%しかない一方、化学発色法は、時折、偽陽性を示す可能性が高い。さらに、現在の化学発色法の理論限界は、補体の活性化第1成分におけるC1-INのインヒビター活性は、HAE疾患の病因とほとんど関係がない点にある。
【0217】
本発明者らは、血管性浮腫の発生時に、C1インヒビターの病原的役割に直接関係する、ブラジキニン形成経路におけるインヒビターとしての、C1インヒビターの機能を検出する方法論を開発している。本発明のアッセイは、活性化第XII因子および血漿カリクレインを抑制し、ブラジキニンの過産生を生じ、続いて血管性浮腫を生じさせる、C1-INHの能力または能力の欠如の分析を可能にする。本実施例は、活性化第XII因子、血漿カリクレイン、またはその両方のいずれかの抑制を試験するための、複合体ELISAによる機能的C1-INHのアッセイについて記載する。これらアッセイは、I型およびII型HAEへの優れた感度を有する。
【0218】
本発明者らの手法は、活性酵素をビオチン化し、それをアビジンコーティングプレートに結合させ、血漿(対照用の正常、未知のものとしての推定HAE血漿)でインキュベートし、酵素-C1-INH複合体を測定することである。本発明者らは、結合C1-INHを検出するため、アルカリホスファターゼに標識を付したC1-INHへの抗体を採用した。C1-INHの定量のため、血漿の代わりに、バッファにおいて、既知の量のC1-INHを代わりに用いることにより、標準曲線を作成した。重要なことに、他の種類の血管性浮腫(例えば、III型HAE)が、活性化第XII因子またはカリクレインではなく、C1sを抑制する変異C1-INHを有する場合、診断に、現在利用可能なアッセイのいずれかを採用できなかったために、本発明のアッセイは、異常性を検出することができるであろう。例え、C1-INHが異常であったとしても、約5%の患者において、C4レベルは正常である。II型において、C1-INHタンパク質レベルが正常であるため、本発明の機能的アッセイは、診断のために重要である。本発明の方法は、特に、このような状況に有用であるであろう。図1および図2は、診断の容易さを検証するため、2つの正常対照を用いて、I型およびII型HAEを比較する。機能的C1-INHは、ブラジキニン形成酵素に基づき、III型HAEに罹患している患者において測定されることはなく、本発明者らは、それが正常(~40%)であることを検証する。
【0219】
Immulon 2HBプレートで、4℃で一晩、コーティングバッファ(100μl)中で、5μg/mlのアビジンを用いてコーティングした。プレートをPBS-Tween(200μl/回)を用いて3回洗浄した。続いて、PBS中の200μl 1%BSAを添加し、未使用部位を保護した。プレートを、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tween(200μl/回)を用いて3回洗浄した。プレートに、25μl標準物質または検体、25μlビオチン化第XII1因子および/またはビオチン化カリクレイン(1μg/ml)、および50μl結合バッファを添加した。プレートを混合し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tween(200μl/回)を用いて3回洗浄した。C1-INHとのポリクローナル抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tween(200μl/回)を用いて3回洗浄した。アルカリホスファターゼ抱合二次抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tween(200μl/回)を用いて3回洗浄した。色素発現用基質を添加し、室温で10分間インキュベートした。450nmにおける光学濃度を読み、標準曲線を用いて計算を行った。
【0220】
図1および図2に示すように、複合体ELISAアッセイは、正常対照と比較して、機能的C1-INHの低いI型およびII型HAE患者を正確に特定した。アッセイの開発における検討事項の1つとしては、ブラジキニン形成に必須な酵素に基づき、機能的C1-INHを定量するアッセイを採用することに利点があることである。アッセイは、活性型第XII因子(第XIIa因子もしくは第XIIf因子)、または血漿カリクレインのうち1つを採用してもよい。C1-INHの他、第XIIa因子は、血漿における他の優れたインヒビターを有していない。C1-INHによる抑制に加えて、血漿カリクレインは、α2マイクログロブリンによっても抑制される。とは言え、C1-INHにより抑制されるカリクレインの分画(~60%)のみが検出されるため、C1-INHと、第XIIa因子またはカリクレインのいずれかとの間の機能的相互作用を検出する複合体ELISAアッセイは、十分に機能した。
【0221】
実施例2.活性化第XII因子および/または血漿カリクレインの抑制に基づく、遺伝性血管性浮腫の診断アッセイ
方法
患者および検体収集:HAEの診断は、(市販のアッセイを用いて)C1-INHタンパク質および/または機能的レベルの低さといった臨床症状により確認される。42人のHAE患者および23の健康な対照由来のクエン酸血漿を、新たに収集した血液の、4℃、2000rpmで、10分間の遠心分離により分離した。全てのサンブルをすぐに分取し、-80℃で保存した。検体を全ての参加拠点(オーデンセ、デンマーク、ブダペスト、ハンガリー)で同様に取り扱い、ドライアイス上で一晩輸送した。手順は、倫理委員会(Ethics Committee)およびデータ保護局(Data Protection Agency)によって、両参加拠点において、承認された。
【0222】
精製されたヒト第XIIa因子およびカリクレインをEnzyme Research Laboratories(インディアナ州サウスベンド)から得、ビオリン標識試薬をThermo Scientific(イリノイ州ロックフォード)から得、全ての試薬をSigma chemical company(ミズーリ州セントルイス)から得た。
【0223】
タンパク質のビオチン標識:タンパク質を製造業者の推奨に従い、ビオチン化した。簡潔に記載すると、1mgのタンパク質(カリクレインまたは第XII因子)を0.5mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させた。約27μlの新たに調製した10mM Sulfo-NHS-LC-ビオチンをタンパク質溶液に添加し、氷上で2時間インキュベートした。過剰な未反応および加水分解ビオチンを、スピン脱塩カラムを用いて除去した。タンパク質のラベリングをELISAで確認し、タンパク質濃度をBradfordアッセイ(8)で決定した。
【0224】
血漿中のC1-INHの定量分析のためのELISA:Immulon 2HBプレートを5μg/ml C1-INHとのポリクローナル抗体でコーティングした。PBS中の1%BSAで保護した後、検体および標準物質を添加し、室温で1時間インキュベートした。結合C1-INHをC1-INHとのアルカリホスファターゼ抱合モノクローナル抗体で探索し、続いて、5-ブロモ-4-クロロインドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)を用いて色素を発現させた。
【0225】
カリクレインおよび第XII因子の抑制に基づく、血漿における機能的C1-INHの定量:Immulon 2HBプレートをコーティングバッファ(100μl)中で、5μg/mlのアビジンを用いて、4℃で一晩コーティングした。プレートをPBS-Tween(200μl/回)を用いて3回洗浄した。続いて、PBS中、200μlの1%BSAを添加し、未使用の部位を保護した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、PBS-Tween(200μl/回)を用いて3回洗浄した。検体または標準物質をビオチン化タンパク質(25μl標準物質または検体、25μlビオチン化第XII因子またはビオチン化カリクレイン(1μg/ml)、および50μl結合バッファ)と共に、プレートに添加し、混合し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBS-Tween(200μl/回)を用いて、再度3回洗浄し、C1-INHとのポリクローナル抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを再度洗浄し、アルカリホスファターゼ抱合二次抗体を添加し、室温で1時間インキュベートし、続いて、ホスファターゼ基質BCIP/NBTを用いて色素を発現させた。450nmにおける光学濃度を読み、標準曲線を用いて、計算を行った。方法は、図1に、過程毎にまとめられる。
【0226】
補体の抑制に基づく機能的ELISA:機能的C1-INHレベルを測定するため、ELISAキットを.Quidel Corporationから購入した。このアッセイは、活性化C1sを抑制する血漿C1-INHの能力に基づく(複合体ELISA)。製造業者の手順に従って、アッセイを行った。
【0227】
結果
C1s抑制によりHAEの診断:正常対照の23個の検体およびI型またはII型HAEのいずれかに罹患している患者の42個の検体を現在市販されているアッセイ(複合体ELISA)を用いて検査した。アッセイの判断によると、「正常」は、68~100%C1-INH、一方、「異常」は、67%以下であった。使用説明書は、それらが疑わしいと思われるため、41%と67%との間の検体を繰り返すべきと支持したが、繰り返した値が、それら2つの図内にある場合には、異常であると報告した。標準物質を、一定の割合の正常として供給した、すなわち標準物質は、0%、23%、44%、66%および88%であり、未知のものは、曲線から外れて読み取られた。正常対照検体は、80%~100%の間を変化する一方、HAE検体は、0~81%の間を変化した。HAE検体の平均標準偏差は、38±17%であった。本アッセイを使用する2つのHAE患者における診断は、失敗した。
【0228】
カリクレインまたは第XIIa因子の抑制によりHAEの診断:mg/mlの複合体形成として表される血漿カリクレインの抑制または第XIIa因子の抑制を採用した結果を図4Bおよび4Cにそれぞれ示し、図中、正常対照は、I型およびII型HAEに罹患している患者から得られた検体と比較された。μg/mでの第XIIa因子-C1-INHの平均標準偏差は、正常では、63.1+12.4、ならびに、I型およびII型HAEでは、6.1+5.4であった。I型およびII型HAEと正常対照とを比較する「P」値は、<0.0001であった。カリクレイン-C1-INH複合体のアッセイにより得られた結果は、HAEおよび対照群との間の重複がなく、著しく類似した。
【0229】
本明細書における結果は、カリクレインまたは第XIIa因子の抑制に基づくアッセイが、検査したI型およびII型HAE患者を正確に判定したことを示し、正常対照と比べて、機能的C1-INHレベルが低いことを示した(図3および4)。従って、本明細書に記載されるアッセイ法は、機能的C1-INHレベルを決定し、PKalおよび/またはFXIIを抑制する機能があるC1-INHレベルに基づきPKal関連疾患(例えば、HAE)に罹患している患者を特定する上で、従来の方法と比較して、非常に高感度である。
【0230】
本明細書で使用される手法は、活性酵素をビオチン化し、それをアビジンコーティングプレートに結合させ、血漿(対照用の正常、未知のものとしての推定HAE血漿)でインキュベートし、酵素-C1-INH複合体を測定することである。本発明者らは、結合C1-INHの検出のため、アルカリホスファターゼに標識を付したC1-INHへの抗体を使用した。C1-INHの定量のため、血漿の代わりに、バッファにおいて、既知の量のC1-INHを代わりに用いることにより、標準曲線を作成した。さらに、他の種類の血管性浮腫(例えば、III型HAE)が、活性化第XII因子またはカリクレインではなく、C1sを抑制する変異C1-INHを有する場合、診断に、現在利用可能なアッセイのいずれかを採用できなかったために、この異常性は、本方法を用いて検出することができるであろう。両アッセイが、C1sの抑制よりも機能障害性のC1-INHの検出により高感度であるようであるため、本明細書に記載のアッセイは、I型およびII型HAEの診断のための現在市販の方法に取って代わる可能性があり、他の方法論を採用して、曖昧な結果を得た場合に患者を評価するためにも使用することができるであろう。約5%の患者は、C1-INHが異常でも無症候性時にはC4レベルが正常であり、II型HAE患者では、タンパク質レベルが、通常は正常であるかまたは高いため、診断は機能的アッセイに依存するであろう。本明細書に記載のアッセイは、特に、このような状況で有用であろう。要するに、診断が、血管性浮腫に直接関係する機能的評価によって作られるため、I型およびII型HAEの診断は、ブラジキニン形成カスケードの酵素を抑制することによって確認することができる。
【0231】
【表14】
【0232】
他の実施形態
本明細書に開示される特徴は全て、任意に組に組み合わされてもよい。本明細書に開示される特徴は、それぞれ、同一、均等、または同様の目的に供する別の特徴に置換されてもよい。従って、明示的に別段の定めがある場合を除き、開示した特徴は、単に、それぞれ、等価または同様の特徴の総称的な系列のうちの一例である。
【0233】
前述の記載から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更例および変形例を想到し、それを様々な用法および状態に適合させることができる。従って、他の実施形態も、特許請求の範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
【配列表】
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