IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星エスディアイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-全固体二次電池 図1
  • 特許-全固体二次電池 図2
  • 特許-全固体二次電池 図3
  • 特許-全固体二次電池 図4
  • 特許-全固体二次電池 図5
  • 特許-全固体二次電池 図6A
  • 特許-全固体二次電池 図6B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240708BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240708BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240708BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240708BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/1395
H01M10/0585
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022566219
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 KR2021001147
(87)【国際公開番号】W WO2021221272
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0051825
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 敏規
(72)【発明者】
【氏名】セボム・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンファン・ク
(72)【発明者】
【氏名】ヨンイル・キム
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-096610(JP,A)
【文献】特開2016-201310(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189311(WO,A1)
【文献】特開2019-197728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層を含む正極層と、
負極集電体と、前記負極集電体上に配され、負極活物質と非晶質炭素とを含む負極活物質層とを含む負極層と、
前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配された固体電解質層と、を含み、
前記負極活物質と前記非晶質炭素との重量比は、1:3ないし1:1であり、前記負極層の表面抵抗値が0.5mΩcm以下であり
前記負極活物質は、少なくともチタン(Ti)を含む、全固体二次電池。
【請求項2】
前記負極活物質層の全体重量を基準に、前記負極活物質は、1wt%ないし50wt%の比率で含まれる、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項3】
前記負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)、または亜鉛(Zn)のうち少なくとも1以上をさらに含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項4】
前記非晶質炭素は、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック(FB)のうち1以上を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項5】
前記負極活物質層は、バインダをさらに含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項6】
前記バインダの含量は、前記負極活物質の総重量を基に、0.3重量%ないし15重量%である、請求項5に記載の全固体二次電池。
【請求項7】
前記負極活物質層の厚みは、1μm~20μmである、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項8】
前記負極集電体と前記負極活物質層との間に配された金属層をさらに含み、前記金属層は、リチウムまたはリチウム合金のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項9】
前記金属層は、全固体二次電池が充電される前、前記負極集電体と前記負極活物質層との間に配される、請求項8に記載の全固体二次電池。
【請求項10】
前記金属層の厚みは、1μm~200μmである、請求項9に記載の全固体二次電池。
【請求項11】
前記負極集電体上に、リチウムと合金を形成することができる元素を含む薄膜がさらに具備され、
前記薄膜は、前記負極集電体と前記負極活物質層との間に配される、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項12】
前記薄膜の厚みは、1nm~500nmである、請求項11に記載の全固体二次電池。
【請求項13】
前記負極集電体、前記負極活物質層、及びそれら間の領域は、前記全固体二次電池の初期状態または放電後状態において、リチウム(Li)を含まないLiフリー領域である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項14】
前記全固体二次電池は、リチウム電池である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電解質として、固体電解質を利用した全固体二次電池が注目されている。そのような固体二次電池のエネルギー(energy)密度を高めるために、負極活物質として、リチウム(lithium)を使用することが提案されている。例えば、リチウムの容量密度(単位質量当たり容量)は、負極活物質として、一般的に使用される黒鉛の容量密度の10倍ほどであると知られている。従って、負極活物質としてリチウムを使用し、固体二次電池を薄型化させながら、出力を高めることができる。
【0003】
リチウムを負極活物質として使用する場合、充電時、負極側にリチウム(金属リチウム)が析出されうる。全固体二次電池の充放電を反復することにより、負極側に析出されたリチウムは、固体電解質の隙間を介し、枝状に成長しうる。枝状に成長したリチウムは、リチウムデンドライト(dendrite)とも称され、成長したリチウムデンドライト(dendrite)は、二次電池の短絡の原因にもなる。また、容量低下の原因にもなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、リチウムを負極活物質として使用する全固体二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様による全固体二次電池は、正極活物質層を含む正極層;負極集電体と、前記負極集電体上に配され、負極活物質と非晶質炭素とを含む負極活物質層と、を含む負極層;及び前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配された固体電解質層;を含み、前記負極活物質と前記非晶質炭素との重量比は、1:3ないし1:1でもあり、前記負極層は、板状に設けられ、前記負極層の表面抵抗値が0.5mΩcm以下でもある。
【0006】
前記負極活物質層の全体重量を基準に、前記負極活物質は、1wt%ないし50wt%の比率にも含まれる。
【0007】
前記負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)、チタン(Ti)または亜鉛(Zn)のうち少なくとも一つ以上を含むものでもある。
【0008】
前記非晶質炭素は、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック(FB)、ケッチェンブラック(KB)、グラフェンのうち1以上を含むものでもある。
【0009】
前記負極活物質層は、バインダ(binder)をさらに含むものでもある。
【0010】
前記バインダの含量は、前記負極活物質の総重量を基に、0.3重量%ないし15重量%でもある。
【0011】
前記負極活物質層の厚みは、1μm~20μmでもある。
【0012】
前記負極集電体と前記負極活物質層との間に配された金属層をさらに含み、前記金属層は、リチウムまたはリチウム合金のうち少なくとも一つを含むものでもある。
【0013】
前記金属層は、全固体二次電池が充電される前、前記負極集電体と前記負極活物質層との間にも配される。
【0014】
前記金属層の厚みは、1μm~200μmでもある。
【0015】
前記負極集電体上に、リチウムと合金を形成することができる元素を含む薄膜がさらに具備され、前記薄膜は、前記負極集電体と前記負極活物質層との間にも配される。
【0016】
前記薄膜の厚みは、1nm~500nmでもある。
【0017】
前記負極集電体、前記負極活物質層、及びそれら間の領域は、前記全固体二次電池の初期状態または放電後状態において、リチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域でもある。
【0018】
前記全固体二次電池は、リチウム電池でもある。
【発明の効果】
【0019】
開示された実施例によれば、適正混合量で混合された負極活物質と非晶質炭素との混合物を含む負極活物質層を具備する全固体二次電池を提供することができる。
【0020】
また、開示された実施例によれば、負極活物質層と負極集電体との結着力が強化される全固体二次電池を提供することができる。
【0021】
また、開示された実施例によれば、放電容量が増大された全固体二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施例による全固体二次電池の概略的な構成を示す断面図である。
図2】負極活物質層を過充電した後、負極層の断面を観察して得たSEM(scanning electron microscope)写真である。
図3】負極層の表面抵抗を測定する例示を示す概路図である。
図4】全固体二次電池の変形例を示す断面図である。
図5】他の実施例による全固体二次電池の概略的な構成を示す断面図である。
図6A】実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2による第1サイクルにおける充放電特性を示すグラフである。
図6B】実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2による第2サイクルにおける放電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例による全固体二次電池について、添付図面を参照して詳細に説明する。添付図面に図示された層や領域の幅及び厚みは、明細書の明確性、及び説明の便宜性のために若干誇張されてもいる。詳細な説明全体にわたり、同一参照番号は、同一構成要素を示す。
【0024】
図1は、一実施例による全固体二次電池の概略的な構成を示す断面図である。図2は、負極活物質層を過充電した後、負極層の断面を観察して得たSEM(scanning electron microscope)写真である。図3は、負極層の表面抵抗を測定する例示を示す概路図である。図4は、全固体二次電池の変形例を示す断面図である。
【0025】
図1を参照すれば、一実施例による全固体二次電池10は、正極層100、負極層200及び固体電解質層300を含むものでもある。一例示による正極層100は、正極集電体101及び正極活物質層102を含むものでもある。
【0026】
正極集電体101は、板状、または薄膜状にも設けられる。また、正極集電体101は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)、またはそれらの合金を含むものでもある。一例示によれば、正極集電体101は、必要によっては、省略することもできる。
【0027】
正極活物質層102は、正極活物質及び固体電解質物質を含むものでもある。正極活物質層102に含まれた固体電解質物質は、後述することになる固体電解質層300に含まれる固体電解質物質と実質的に同一でもある。説明の便宜上、該固体電解質物質と係わる事項は、固体電解質層300において、詳細に敍述する。
【0028】
正極活物質層102に含まれる正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することができる。例えば、該正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(以下、「LCO」とする)、ニッケル酸リチウム(lithium nickel oxide)、ニッケルコバルト酸リチウム(lithium nickel cobalt oxide)、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(以下、「NCA」とする)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(以下、「NCM」とする)、マンガン酸リチウム(lithium manganate)、リン酸鉄リチウム(lithium iron phosphate)のようなリチウム塩;硫化ニッケル;硫化銅;硫化リチウム硫黄;酸化鉄;または酸化バナジウム(vanadium oxide)のうち1以上を含むものでもある。
【0029】
また、該正極活物質は、前述のリチウム塩において、層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含むものでもある。ここで、「層状岩塩型構造」は、立方晶岩塩型構造の<111>方向に、酸素原子層と金属原子層とが交互に規則配列され、その結果、それぞれの原子層が、二次元平面を形成している構造でもある。また、「立方晶岩塩型構造」は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型構造を示す。一例示による層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩は、例えば、LiNiCoAl(NCA)またはLiNiCoMn(NCM)(ここで、0<x<1、0<y<1、0<z<1、なお、x+y+z=1である)のような三元系遷移金属酸化物のリチウム塩を含むものでもある。前述のように、正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系遷移金属酸化物のリチウム塩を含む場合、一例示による全固体二次電池10のエネルギー(energy)密度及び熱安定性を向上させることができる。また、一例示による正極活物質は、被覆層によっても覆われている。一例として、本実施例の被覆層は、LiO-ZrOを含むものでもある。
【0030】
本開示は、それらに制限されるものではなく、一例示による正極活物質層102は、前述の正極活物質及び固体電解質だけではなく、例えば、導電助剤、バインダ、フィラ(filler)、分散剤、イオン伝導性補助剤のような添加剤を含むものでもある。一例示による導電助剤は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェン(ketjen)ブラック、炭素ファイバ、金属粉末などを含むものでもある。また、一例示によるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などを含むものでもある。
【0031】
一例示による負極層200は、負極集電体201及び負極活物質層202を含むものでもある。負極集電体201は、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない物質を含むものでもある。例えば、負極集電体201は、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち1または2種以上の合金を含むものでもある。一例示による負極集電体201は、例えば、板状、または薄膜状にも設けられる。
【0032】
ここで、図4に示されているように、負極集電体201の表面に、薄膜204が形成されうる。薄膜204は、リチウムと合金を形成することができる元素を含むものでもある。リチウムと合金を形成することができる元素としては、例えば、金、銀、亜鉛、スズ、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビズマスでもある。薄膜204は、それら金属のうち1種で構成されていてもよく、さまざまな種類の合金で構成されていてもよい。薄膜204が存在することにより、金属層203の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池10の特性がさらに向上しうる。
【0033】
ここで、薄膜204の厚みは、特別に制限されるものではないが、1nm~500nmほどでもある。薄膜204の厚みが1nm未満になる場合、薄膜204による機能を十分に発揮することができない可能性がある。薄膜204の厚みが500nmを超えれば、薄膜204自体がリチウムを吸蔵し、負極において、リチウムの析出量が低減され、全固体二次電池10の特性が低下される可能性がある。薄膜204は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などにより、負極集電体201上にも形成される。
【0034】
負極活物質層202は、非晶質炭素と、リチウムと合金または化合物を形成する負極活物質と、を含むものでもある。一例示による負極活物質は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)、チタン(Ti)及び亜鉛(Zn)のうち1以上を含むものでもある。また、一例示による非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(CB:carbon black)、アセチレンブラック(AB:acetylene black)、ファーネスブラック(FB:furnace black)、ケッチェンブラック(KB:ketjen black)、グラフェン(graphene)のうち1以上を含むものでもある。
【0035】
一例として、負極活物質層202は、非晶質炭素と、金、白金、パラジウム、シリコン、銀、アルミニウム、ビズマス、スズ、チタン及び亜鉛からなる群のうちから選択されるいずれか1種以上の負極活物質と、を含む混合物によっても形成される。一例として、負極活物質層202は、非晶質炭素によって形成された第1パーティクル(particles)と、負極活物質によって形成された第2パーティクルとの混合物を含むものでもある。このとき、第2パーティクルに含まれた負極活物質と、第1パーティクルに含まれた非晶質炭素との混合比(質量比)は、例えば、1:3ないし1:1でもある。また、このとき、該負極活物質は、負極活物質層202の全体重量を基準に、1wt%ないし50wt%の比率にも含まれる。
【0036】
前述のように、負極活物質層202が、負極活物質と非晶質炭素とが適正比率で混合された混合物を含むことにより、負極層200の抵抗値が低減されうる。一例として、負極活物質層202が、非晶質炭素、例えば、カーボンブラックのみを含む場合、負極活物質層202と負極集電体201との結着力が低下され、負極層200の表面抵抗値(sheet resistance)が増大されてしまう。また、負極活物質層202が金属からなる負極活物質、例えば、銀(Ag)のみを含む場合、負極活物質層202に含まれた銀(Ag)とリチウム(Li)との挿入(insertion)量が増大され、充放電の反応速度が低下されてしまう。従って、前述の実施例のように、負極活物質と非晶質炭素とからなる混合物が、適正比率で混合される場合、負極活物質層202と負極集電体201との結着力を増大させることができるだけではなく、負極層200の表面抵抗値が低減されうる。また、全固体二次電池10の充放電反応速度を向上させることができる。
【0037】
一例として、板状、または薄膜状に設けられた負極集電体201上に、負極活物質と非晶質炭素とからなる混合物を含む負極活物質層202が配される場合、負極層200の表面抵抗値は、0.5mΩcm以下にも低減される。このとき、負極層200の表面抵抗値は、図3に図示されているような4ポイントプローブを利用しても測定される。
【0038】
ここで、負極活物質として、金、白金、パラジウム、シリコン、銀、アルミニウム、ビズマス、スズ、チタン及び亜鉛のうち1以上を使用する場合、該負極活物質の粒子サイズ(例えば、平均粒径)は、約4μm以下でもある。ここで、該負極活物質の粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)直径(いわゆる、D50)を使用することができる。一例示による粒径の下限は、特別に制限されるものではないが、約10nmでもある。
【0039】
また、一例示による負極活物質層202は、バインダを含むものでもある。一例として、該バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンのうち1以上を含むものでもある。該バインダは、そのような1種で構成されていても、2種以上によって構成されていてもよい。
【0040】
負極活物質層202にバインダを含め、負極活物質層202を負極集電体201上に安定化させることができる。例えば、負極活物質層202は、負極活物質層202を構成する材料が分散されたスラリーを負極集電体201上に塗布して乾燥させても作製される。該バインダを負極活物質層202に含め、スラリー内に負極活物質を安定的に分散させることができる。この結果、例えば、スクリーン印刷法でもって、スラリーを負極集電体201上に塗布する場合、スクリーンの詰まり(例えば、負極活物質の凝集体による詰まり)を抑制することができる。
【0041】
一例として、負極活物質層202にバインダを含める場合、該バインダの含量は、負極活物質の総重量を基準に、0.3ないし15重量%ほどでもある。該バインダの含量が0.3重量%未満になる場合、膜強度が十分ではなく、特性が低下されるだけではなく、処理/取り扱いが困難にもなる。該バインダの含量が20重量%を超えれば、全固体二次電池10の特性が低下されうる。該バインダの含有量の下限値は、約3重量%ほどでもある。また、負極活物質層202には、従来の固体二次電池に使用される添加剤、例えば、フィラ、分散剤、イオン導電材などが適切に配合されても含まれる。
【0042】
また、負極活物質層202の厚みは、例えば、1μm~20μmでもある。負極活物質層202の厚みが1μm未満になる場合、全固体二次電池10の特性が十分に改善されないのである。負極活物質層202の厚みが20μmを超える場合、負極活物質層202の抵抗値が高く、結果として、全固体二次電池10の特性が十分に改善されないのである。
【0043】
一例示による固体電解質層300は、正極活物質層102と負極活物質層202との間に形成された固体電解質物質を含むものでもある。該固体電解質物質は、例えば、硫化物系固体電解質物質を含むものでもある。該硫化物系固体電解質物質は、例えば、LiS-P、LiS-P-Li(Xは、ハロゲン元素であり、例えば、I、Clである)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのうち一つである)などを含むものでもある。ここで、該硫化物系固体電解質物質は、出発原料(例えば、LiS、Pなど)を溶融急冷法や機械的ミリング(mechanical milling)法を利用して加工することによって作製することができる。また、前述の加工工程後、該硫化物系固体電解質物質に対する熱処理固定が行われうる。一例示による固体電解質は、非晶質または結晶質でもあり、非晶質と結晶質とが混合された状態でもある。一例として、固体電解質物質に含まれた硫化物系固体電解質物質がLiS-Pを含む場合、LiSとPとの混合モル比は、例えば、LiS:P=50:50ないし90:10ほどの範囲によっても選択される。
【0044】
また、一例示による固体電解質層300は、バインダをさらに含むものでもある。固体電解質層300に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどを含むものでもある。固体電解質層300のバインダは、正極活物質層102と負極活物質層202とのバインダと実質的に同一でもあり、あるいは異なってもいる。
【0045】
一実施例による全固体二次電池10は、負極活物質層202の充電容量を超えて充電することができる。すなわち、負極活物質層202を過充電する。充電初期には、負極活物質層202にリチウムが吸蔵される。負極活物質層202の充電容量を超えて充電を行う場合、図2のように、負極活物質層202の裏、すなわち、負極集電体201と負極活物質層202との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムにより、金属層203が形成される。放電時には、負極活物質層202及び金属層203のリチウムがイオン化され、イオン化されたリチウムが正極層100側に移動する。従って、全固体二次電池10において、リチウムを負極活物質として使用することができる。また、負極活物質層202は、金属層203を被覆するために、金属層203の保護層の役目を行うと共に、デンドライト(dendrite)の析出成長を抑制することができる。それは、全固体二次電池10の短絡及び容量低下を抑制し、さらには、全固体二次電池10の特性を向上させることができる。また、一実施例においては、金属層203が事前に形成されていないために、全固体二次電池10の製造コストを減らすことができる。その場合、負極集電体201、負極活物質層202、及びそれら間の領域(界面)は、全固体二次電池10の初期状態または放電後状態において、リチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域でもある。
【0046】
図5は、他の実施例による全固体二次電池の概略的な構成を示す断面図である。
【0047】
図5を参照すれば、他の実施例による全固体二次電池11は、正極層100、負極層210及び固体電解質層300を含むものでもある。正極層100及び固体電解質層300と係わる事項は、図1に図示された正極層100及び固体電解質層300と実質的に同一であるので、ここでは、敍述を省略する。
【0048】
他の実施例による負極層210は、負極集電体211、負極活物質層212及び金属層213を含むものでもある。すなわち、図1に図示された一実施例においては、負極活物質層202の過充電により、負極集電体201と負極活物質層202との間に金属層が形成されうる。しかし、他の実施例においては、そのような金属層213が、事前に(すなわち、最初の充電前)、負極集電体211と負極活物質層212との間にも形成される。
【0049】
負極集電体211及び負極活物質層212の構成は、図1に図示された負極集電体201及び負極活物質層202の構成と同一である。他の実施例による金属層213は、リチウムまたはリチウム合金を含むものでもある。すなわち、金属層213は、リチウムリザーバ(reservoir)として機能する。リチウム合金としては、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などを挙げることができる。金属層213は、それらの合金のうち1種、またはリチウムで構成されるか、あるいはさまざまな種類の合金によっても構成される。他の実施例において、金属層213がリチウムリザーバになるので、全固体二次電池11の特性がさらに向上される。
【0050】
ここで、金属層213の厚みは、特別に制限されるものではないが、例えば、約1μm~200μmほどでもある。金属層213の厚みが1μm未満になる場合、金属層213によるリザーバ機能を十分に発揮することができないのである。金属層213の厚みが200μmを超える場合、全固体二次電池11の質量及び体積が増大し、特性がかえって低下されてしまう。金属層213は、例えば、前述の範囲の厚みを有する金属ホイル(foil)によっても構成される。
【0051】
図6Aは、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2による第1サイクルにおける充放電特性を示すグラフである。図6Bは、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2による第2サイクルにおける放電特性を示すグラフである。
【0052】
下記においては、実施例と比較例とについて敍述する。
【0053】
-実施例1
実施例1による正極層100に含まれる正極活物質は、LiNi0.9Co0.07Mn0.03(NCM)を含むものでもある。また、固体電解質として、アルジロダイト(argyrodite)型結晶体であるLiCl-LiS-LiPSを含むものでもある。また、バインダとして、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)バインダ(デュポン社))を含むものでもある。また、導電助剤として、炭素ナノファイバ(CNF)を含むものでもある。実施例1によれば、正極活物質:固体電解質:導電助剤:バインダ=83.8:14.8:0.2:1.2の重量比で混合し、混合物をシート形態に大きく成形し、正極シートを作製することができる。また、該正極シートを、18μm厚のアルミニウムホイルの正極集電体に圧着させ、正極層を作製することができる。
【0054】
実施例1による負極層200は、厚み10μmのNi薄膜形態の負極集電体を含むものでもある。また、負極活物質層202は、負極活物質としての銀(Ag)と、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)との混合物を使用することができる。このとき、負極活物質としての銀(Ag)と、非晶質炭素としてもカーボンブラック(CB)との混合比(質量比)は、1:3でもある。次に、2gのFB-Aを容器に入れ、そこにバインダ(#9300(クレハ社))を含むN-メチルピロリドン(NMP)溶液(負極層に対し、バインダが6.5質量%である)を追加する。次に、前記混合溶液を撹拌し、スラリーを製造した。該スラリーを、Niホイルに、ブレードコータ(blade coater)を利用して塗布し、空気中で80℃温度で20分間乾燥させた。それによって得られた積層体を、100℃で12時間真空乾燥させた。以上の工程により、負極層を作製する。
【0055】
実施例1による固体電解質層300は、前記LiCl-LiS-LiPS固体電解質とアクリル系バインダを含むものでもある。実施例1によれば、固体電解質:アクリル系バインダ=98.5:1.5の重量比で混合することができる。前述の混合物に、キシレン(xylene)とジエチルベンゼン(diethylbenzene)とを加えながら撹拌し、スラリーを製造する。該スラリーを不織布上に、ブレードコータを利用して塗布し、空気中で40℃温度で乾燥させる。それによって得られた積層体を、40℃で12時間真空乾燥させる。以上の工程により、固体電解質層を作製することができる。
【0056】
前述の正極層100、固体電解質層300及び負極層200を順次に積層し、真空状態でラミネーティングフィルムに封印し、第1実施例による全固体二次電池10を作製する。ここで、正極集電体と負極集電体との各部分を、バッテリの真空を破損させないように、ラミネートフィルムで外に突出させる。そのような突出部が、正極層端子及び負極層端子でもある。また、第1実施例による全固体二次電池10を500MPa、85℃で30分間水圧処理する。
【0057】
-実施例2
実施例2の場合、負極活物質層202に含まれた、負極活物質としての銀(Ag)と、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)との混合比(質量比)が1:1であるという点を除いた残り事項は実施例1と同一である。
【0058】
-比較例1
比較例1の場合、負極活物質層202に、別途の負極活物質なしに、非晶質炭素としてカーボンブラック(CB)だけが含まれる点を除いた残り事項は、実施例1と同一である。
【0059】
-比較例2
比較例2の場合、負極活物質層202に含まれた、負極活物質としての銀(Ag)と、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)の混合比(質量比)が25:1であるという点を除いた残り事項は、実施例1と同一である。
【0060】
-比較例3
比較例3の場合、負極活物質層202に含まれた、負極活物質としての銀(Ag)と、黒鉛(graphite)との混合比(質量比)が1:3という点を除いた残り事項は、実施例1と同一である。
【0061】
-充放電特性比較
第1実施例及び第2実施例、並びに比較例1ないし比較例3によって作製された全固体二次電池の充放電特性を、次の充放電試験によって評価することができる。該充放電試験は、全固体二次電池を60℃の恒温槽に入れて遂行することができる。第1サイクルは、バッテリ電圧が4.25Vになるまで、0.62mA/cmの定電流で充電し、電流が0.31mA/cmになる時まで、4.25Vの定電圧充電を実施した。その後、バッテリ電圧が2.5Vになるまで、0.62mA/cmの定電流で放電を実施した。第2サイクルは、バッテリ電圧が4.25Vになるまで、0.62mA/cm2の定電流で充電し、電流が0.31mA/cmになるまで、4.25Vの定電圧充電を実施した。その後、バッテリ電圧が2.5Vになるまで、6.2mA/cmの定電流で放電を実施した。
【0062】
【表1】
【0063】
第1実施例及び第2実施例、並びに比較例1ないし比較例3の充放電特性結果が、表1、並びに図6A及び図6Bに図示される。実施例1、比較例1及び比較例3を参照する場合、負極活物質としての銀(Ag)と、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)とを混合した実施例1において、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)のみを含む比較例1、または負極活物質としての銀(Ag)と黒鉛(graphite)とを混合した比較例3より、負極層の表面抵抗が低減されることを確認することができる。また、実施例1と比較例1との負極活物質層と負極集電体との剥離試験(peel test)を進めた表2を参照すれば:
【0064】
【表2】
【0065】
実施例1の負極活物質層と負極集電体との結着力が、比較例1の負極活物質層と負極集電体との結着力より50倍以上強いといういことを確認することができる。また、表1を参照すれば、負極活物質としての銀(Ag)と、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)との混合の比率が異なる実施例1、実施例2及び比較例2を参照する場合、負極活物質層に、負極活物質としての銀(Ag)の比率が増大する場合、1回目0.62mA/cmの定電流充電容量に対する2回目サイクルの定電流放電容量(Q3/Q1)が低減されることを確認することができる。
【0066】
前述のように、負極活物質層に非晶質炭素だけが含まれる場合、負極活物質層と負極集電体との結着力が弱化されるだけではなく、放電容量も低減されることを確認することができる。従って、負極活物質層に、負極活物質としての銀(Ag)と、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)との混合物が含まれなければならないが、負極活物質が一定レベル、すなわち、負極活物質としての銀(Ag)の比率が50%以上増大する場合、放電容量が低減されることを確認することができる。従って、本開示によれば、負極活物質層に含まれる負極活物質と非晶質炭素との適正比率を確認し、剥離強度を強化させながらも、放電容量を増大させることができる全固体二次電池を提供することができる。
【0067】
前述の実施例1及び実施例2においては、負極活物質層に含まれる負極活物質としての銀(Ag)を含むが、前述のように、負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、ビズマ(Bi)、スズ(Sn)、チタン(Ti)または亜鉛(Zn)のうち少なくとも一つ以上を含むものでもある。
【0068】
一例として、実施例3の場合、負極活物質層202に含まれた負極活物質としてのシリコン(Si)と、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)との混合比(質量比)が1:3という点を除いた残り事項は、実施例1と同一である。実施例4の場合、負極活物質層202に含まれた負極活物質としての亜鉛(Zn)と、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)との混合比(質量比)が1:3という点を除いた残り事項は、実施例1と同一である。実施例5の場合、負極活物質層202に含まれた負極活物質としてのチタン(Ti)と、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)との混合比(質量比)が1:3という点を除いた残り事項は、実施例1と同一である。
【0069】
【表3】
【0070】
表3を利用し、負極活物質として、銀(Ag)ではない他の物質を含む実施例3ないし実施例5の充放電結果を参照することができる。実施例3ないし実施例5の場合、負極活物質としての銀(Ag)と、非晶質炭素としてのカーボンブラック(CB)とが1:3の比率で混合された実施例1と比較し、負極層の表面抵抗は、0.5mΩcm以下であり、Q3/Q1の比率が80%以上維持され、放電容量(Q3)が低減しない特性を確認することができる。
【0071】
前述の説明において、多くの事項が具体的に記載されているが、それらは、発明の範囲を限定するというより、具体的な実施例の例示として解釈されなければならない。例えば、当該技術分野において当業者であるならば、図面を参照して説明した全固体二次電池及びその充電方法は、多様に変化されうるということを知ることができるであろう。具体的な例として、全固体二次電池ではない部分固体二次電池を構成するか、あるいは部分的に液体電解質を使用する二次電池を構成することができ、リチウム電池ではない他の電池にも、本願の思想及び原理を適用することができるということを知ることができるであろう。従って、発明の範囲は、説明された実施例によって定められるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想によって定められるものである。
【符号の説明】
【0072】
10 全固体二次電池
11 全固体二次電池
100 正極層
101 正極集電体
102 正極活物質層
200 負極層
201 負極集電体
202 負極活物質層
203 金属層
204 薄膜
210 負極層
211 負極集電体
212 負極活物質層
213 金属層
300 固体電解質層
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B