(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】コールドプレートおよびコールドプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240708BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2023124339
(22)【出願日】2023-07-31
【審査請求日】2023-08-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】町田 雄気
(72)【発明者】
【氏名】引地 秀太
(72)【発明者】
【氏名】青木 博史
(72)【発明者】
【氏名】川畑 賢也
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-027159(JP,U)
【文献】特開平11-314131(JP,A)
【文献】実開昭63-059393(JP,U)
【文献】特開平10-117077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に放出するコールドプレートであって、
冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面が一方の面に設けられ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に前記吸熱面において吸収した熱を放出する放熱面が他方の面に設けられたベースプレートと、
前記ベースプレートの前記放熱面を覆うカバープレートと、を備え、
前記熱媒体流通空間は、前記ベースプレートの前記放熱面と前記カバープレートとの間に形成され、
前記ベースプレートは、前記放熱面から前記カバープレートに向かって突出するように設けられ、前記放熱面から放出される熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部を有し、
複数の前記伝熱部の一部の先端部と前記カバープレートにおける前記熱媒体流通空間側の面との間には、前記伝熱部の先端部と前記カバープレートとを接合する伝熱接合部が形成され、
前記伝熱接合部によって、前記熱媒体流通空間における熱媒体の流路が設定される
コールドプレート。
【請求項2】
複数の前記伝熱部は、それぞれ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体の流通方向に沿って延在するフィンである
請求項1に記載のコールドプレート。
【請求項3】
前記ベースプレートは、外周側の周方向にわたって延在するように設けられたベース側接合部を有し、
前記カバープレートは、外周側の周方向にわたって延在するように設けられたカバー側接合部を有し、
前記ベース側接合部と前記カバー側接合部との間には、前記熱媒体流通空間を封止する封止接合部が形成されている
請求項1に記載のコールドプレート。
【請求項4】
前記ベースプレートおよび前記カバープレートは、それぞれ、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスまたはステンレス合金からなる
請求項1に記載のコールドプレート。
【請求項5】
内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に放出するコールドプレートの製造方法であって、
冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面が一方の面に設けられ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に前記吸熱面において吸収した熱を放出する放熱面が他方の面に設けられ、前記放熱面から放出される熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部が前記放熱面から突出するように設けられたベースプレートに対して、前記放熱面を覆うカバープレートを積層するプレート積層工程と、
前記プレート積層工程によって、前記ベースプレートに対して前記カバープレートを積層した状態で、溶接によって、複数の前記伝熱部の一部の先端部を、前記カバープレートにおける前記熱媒体流通空間側の面に接合させる伝熱接合工程と、を含み、
前記伝熱接合工程において、前記熱媒体流通空間における熱媒体の流路が設定される
コールドプレートの製造方法。
【請求項6】
前記伝熱部を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体の流通方向に沿って延びるフィン形状に形成する伝熱部形成工程を含む
請求項5に記載のコールドプレートの製造方法。
【請求項7】
前記ベースプレートの外周側の周方向にわたって延在するように設けられたベース側接合部を形成するベース側接合部形成工程と、
前記カバープレートの外周側の周方向にわたって延在するように設けられたカバー側接合部を形成するカバー側接合部形成工程と、
前記ベース側接合部形成工程によって形成された前記ベース側接合部と、前記カバー側接合部形成工程によって形成された前記カバー側接合部と、を互いに接合することによって、前記熱媒体流通空間を封止する封止接合工程と、を含む
請求項5に記載のコールドプレートの製造方法。
【請求項8】
前記封止接合工程において、前記ベース側接合部と前記カバー側接合部とを、ロウ付け、拡散接合、摩擦攪拌接合または圧接によって接合する
請求項
7に記載のコールドプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の冷却対象物の冷却に用いられるコールドプレートおよびコールドプレートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコールドプレートとしては、例えば、特許文献1に示すように、内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間が形成され、冷却対象物から放出された熱を、熱媒体流通空間を流通する熱媒体に放出するものであって、冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面が一方の面に設けられ、熱媒体流通空間を流通する熱媒体に吸熱面において吸収した熱を放出する放熱面が他方の面に設けられたベースプレートと、ベースプレートの放熱面を覆うカバープレートと、を備え、ベースプレートが、放熱面からカバープレートに向かって突出するように設けられ、放熱面から放出される熱を、熱媒体流通空間を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部を有するものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のコールドプレートは、複数の伝熱部の先端部とカバープレートにおける熱媒体流通空間側の面との間に隙間が形成されている場合に、熱媒体流通空間を流通する熱媒体が、伝熱部と伝熱部との隙間よりも、複数の伝熱部の先端部とカバープレートとの隙間を流れやすくなる。このため、特許文献1に記載のコールドプレートは、熱媒体流通空間を流通する熱媒体が、伝熱部から十分に熱を吸収することなく、熱媒体流通空間から流出することとなり、冷却効率の向上を図ることが出来ない。
【0004】
そこで、特許文献2に記載のコールドプレートは、複数の伝熱部の先端部とカバープレートにおける熱媒体流通空間側の面との間に接合部材を配置することで、複数の伝熱部の先端部とカバープレートにおける熱媒体流通空間側の面との隙間の熱媒体の流通を規制し、冷却効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-506996号公報
【文献】特開2019-186297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のコールドプレートは、複数の伝熱部の先端部とカバープレートにおける熱媒体流通空間側の面との間に接合部材を配置しているため、複数の伝熱部の高さ寸法が小さく、伝熱部と熱媒体流通空間を流通する熱媒体との接触面積が小さくなるため、冷却能力が低下する可能性がある。また、特許文献2に記載のコールドプレートは、必要な冷却能力を発揮することが可能な伝熱部の高さ寸法とした場合に、コールドプレート全体の厚さ方向の寸法が大きくなる。
【0007】
本発明の目的とするところは、厚さ方向の大型化の抑制と同時に、冷却効率の向上を図ることのできるコールドプレートおよびコールドプレートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコールドプレートは、内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に放出するコールドプレートであって、冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面が一方の面に設けられ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に前記吸熱面において吸収した熱を放出する放熱面が他方の面に設けられたベースプレートと、前記ベースプレートの前記放熱面を覆うカバープレートと、を備え、前記熱媒体流通空間は、前記ベースプレートの前記放熱面と前記カバープレートとの間に形成され、前記ベースプレートは、前記放熱面から前記カバープレートに向かって突出するように設けられ、前記放熱面から放出される熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部を有し、複数の前記伝熱部の一部の先端部と前記カバープレートにおける前記熱媒体流通空間側の面との間には、前記伝熱部の先端部と前記カバープレートとを接合する伝熱接合部が形成され、前記伝熱接合部によって、前記熱媒体流通空間における熱媒体の流路が設定される。
【0009】
また、本発明に係るコールドプレートは、複数の前記伝熱部が、それぞれ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体の流通方向に沿って延在するフィンである、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るコールドプレートは、前記ベースプレートが、外周側の周方向にわたって延在するように設けられたベース側接合部を有し、前記カバープレートが、外周側の周方向にわたって延在するように設けられたカバー側接合部を有し、前記ベース側接合部と前記カバー側接合部との間には、前記熱媒体流通空間を封止する封止接合部が形成されている、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るコールドプレートは、前記ベースプレートおよび前記カバープレートが、それぞれ、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスまたはステンレス合金からなる、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るコールドプレートの製造方法は、内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に放出するコールドプレートの製造方法であって、冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面が一方の面に設けられ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に前記吸熱面において吸収した熱を放出する放熱面が他方の面に設けられ、前記放熱面から放出される熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部が前記放熱面から突出するように設けられたベースプレートに対して、前記放熱面を覆うカバープレートを積層するプレート積層工程と、前記プレート積層工程によって、前記ベースプレートに対して前記カバープレートを積層した状態で、溶接によって、複数の前記伝熱部の一部の先端部を、前記カバープレートにおける前記熱媒体流通空間側の面に接合させる伝熱接合工程と、を含み、前記伝熱接合工程において、前記熱媒体流通空間における熱媒体の流路が設定される。
【0013】
また、本発明に係るコールドプレートの製造方法は、前記伝熱部を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体の流通方向に沿って延びるフィン形状に形成する伝熱部形成工程を含む、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るコールドプレートの製造方法は、前記ベースプレートの外周側の周方向にわたって延在するように設けられたベース側接合部を形成するベース側接合部形成工程と、前記カバープレートの外周側の周方向にわたって延在するように設けられたカバー側接合部を形成するカバー側接合部形成工程と、前記ベース側接合部形成工程によって形成された前記ベース側接合部と、前記カバー側接合部形成工程によって形成された前記カバー側接合部と、を互いに接合することによって、前記熱媒体流通空間を封止する封止接合工程と、を含む、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るコールドプレートの製造方法は、前記封止接合工程において、前記ベース側接合部と前記カバー側接合部とを、ロウ付け、拡散接合、摩擦攪拌接合または圧接によって接合する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、伝熱部の先端部とカバープレートにおける熱媒体流通空間側の面との隙間をなくすことが可能となるので、熱媒体流通空間におけるカバープレート側の熱媒体の流通量を低下させて隣り合う伝熱部と伝熱部との間の熱媒体の流通量を増加させることが可能となり、冷却効率の向上を図ることが可能となる。また、厚さ方向の大型化を抑制することが可能となるので、設置スペースの省スペース化、使用材料の低減および軽量化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの全体斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るカバープレート側から見たコールドプレートの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るベースプレート側から見たコールドプレートの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るベースプレートの要部側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの底面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの製造方法を説明する側面断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの製造方法を説明するコールドプレートの側面断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの製造方法を説明するコールドプレートの正面断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの製造方法を説明するコールドプレートの側面断面図である。
【
図11】
図11(a)乃至
図11(c)は、伝熱接合部の配置のその他の例を示すコールドプレートの平面図である。
【
図12】
図12は、伝熱部のその他の例を示すコールドプレートの側面断面図である。
【
図13】
図13(a)および
図13(b)は、熱媒体流通空間に形成された熱媒体の流路のその他の例を説明するコールドプレートの平面図である。
【
図14】
図14(a)乃至
図14(e)は、伝熱接合部の形状のその他の例を示すコールドプレートの側面断面図である。
【
図15】
図15(a)および
図15(b)は、伝熱部の先端側の形状のその他の例を示すベースプレートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至
図10は、本発明の一実施形態を示すものである。
図1はコールドプレートの全体斜視図であり、
図2はカバープレート側から見たコールドプレートの分解斜視図であり、
図3はベースプレート側から見たコールドプレートの分解斜視図であり、
図4はベースプレートの要部側面図であり、
図5はコールドプレートの平面図であり、
図6はコールドプレートの底面図であり、
図7はコールドプレートの製造方法を説明する側面断面図であり、
図8はコールドプレートの製造方法を説明するコールドプレートの側面断面図であり、
図9はコールドプレートの製造方法を説明するコールドプレートの正面断面図であり、
図10はコールドプレートの製造方法を説明するコールドプレートの側面断面図である。
【0019】
本実施形態のコールドプレート1は、例えば、発熱する電子部品等の冷却対象物を冷却するために用いられるものである。コールドプレート1は、
図1および
図9に示すように、内部に形成された熱媒体流通空間2に対して熱媒体を流入させる熱媒体流入口2aと、熱媒体流通空間2を流通した熱媒体を流出させる熱媒体流出口2bと、が設けられている。コールドプレート1は、熱媒体流入口2aに図示しない熱媒体供給管が接続され、熱媒体流出口2bに図示しない熱媒体排出管が接続された状態で使用される。コールドプレート1は、冷却された熱媒体を、熱媒体流入口2aを介して熱媒体流通空間2に流入させて、熱媒体流通空間2において熱媒体に冷却対象物から放出された熱を吸収させ、熱媒体流通空間2において熱を吸収した熱媒体を、熱媒体流出口2bを介して熱媒体流通空間2から流出させる。ここで、熱媒体としては、例えば、水が用いられる。
【0020】
コールドプレート1は、
図2および
図3に示すように、ベースプレート10と、カバープレート20と、を備えている。
【0021】
ベースプレート10は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ステンレス合金等の熱伝導率の高い金属からなる略矩形状の板状部材である。ベースプレート10は、
図2および
図3に示すように、カバープレート20が接合されるベース側接合部11と、冷却対象物から放出される熱を吸収する吸熱面12と、吸熱面12において吸収した熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に放出する放熱面13と、放熱面13から突出するように設けられ、放熱面13から放出される熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に対して伝えるための複数の伝熱部14と、を有している。
【0022】
ベース側接合部11は、ベースプレート10におけるカバープレート20側の面の外周側に沿って周方向にわたって形成されている。
【0023】
吸熱面12は、冷却対象物が設置される面であり、ベースプレート10における積層方向の外側に設けられている。
【0024】
放熱面13は、ベース側接合部11の内周側に位置する平面であり、全面にわたってベース側接合部11よりもカバープレート20側に張り出している。
【0025】
複数の伝熱部14は、ベースプレート10におけるカバープレート20側の面を、例えば、スカイブ加工を施すよって、放熱面13とともに形成される。複数の伝熱部14は、それぞれ、放熱面13から突出するとともに、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体の流通方向に延在するフィンである。複数の伝熱部14は、
図4に示すように、それぞれ、例えば、高さ寸法Hが3mm、厚さ寸法Tが0.1mm、隣り合う伝熱部14と伝熱部14との間隔Gが0.1mm、である。
【0026】
カバープレート20は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ステンレス合金等の熱伝導率の高い金属からなる板状部材からなる。カバープレート20は、外周側に沿って周方向にわたって延在するように設けられ、ベースプレート10に重ね合わされた状態でベースプレート10に接合されるカバー側接合部21を有し、カバー側接合部21の内側が凹形状に形成されている。ベース側接合部11およびカバー側接合部21を互いに接合すると、ベースプレート10の放熱面13とカバープレート20との間には、熱媒体流通空間2が形成される。また、カバープレート20には、長手方向の一方側に熱媒体流入口2aが形成され、長手方向の他方側に熱媒体流出口2bが形成されている。
【0027】
ここで、ベースプレート10のベース側接合部11と、およびカバープレート20のカバー側接合部21と、の間には、熱媒体流通空間2を封止する封止接合部31が形成されている。封止接合部31は、ベースプレート10およびカバープレート20を互いに積層した状態において、
図6および
図8に示すように、ベースプレート10側からベース側接合部11に沿ってレーザ溶接を施すことによって形成される。
【0028】
また、複数の伝熱部14の少なくとも一部の先端部と、カバープレート20における熱媒体流通空間2側の面と、の間には、伝熱部14の先端部とカバープレート20とを接合する伝熱接合部32が形成されている。伝熱接合部32は、ベースプレート10およびカバープレート20を互いに積層した状態において、
図5、
図9および
図10に示すように、カバープレート20側からレーザ溶接を施すことによって形成される。本実施形態では、
図5に示すように、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体の流通方向に対して直交する方向に熱媒体流通空間2の幅方向にわたって直線的に延在する伝熱接合部32が、熱媒体の流通方向に間隔をおいた5個所に形成されている。尚、伝熱接合部32は、例えば
図5に示すように、直線状に延在するように形成した場合においても、その熱媒体流通空間2側に位置する伝熱部14の先端部の全ての部分とベースプレート20とが接合されることなく、直線状の部分に対応する伝熱部14の先端部のうちの一部分がベースプレート20に接合され、その他の部分がベースプレート20に接触している状態も含まれる。
【0029】
以上のように構成されたコールドプレート1は、ベースプレート10の吸熱面12に冷却対象物を設置した状態で、熱媒体流入口2aを介して熱媒体を熱媒体流通空間2に流入させ、熱媒体流出口2bを介して熱媒体流通空間2を流通した熱媒体を熱媒体流通空間2から流出させる。
【0030】
このとき、冷却対象物から放出された熱は、ベースプレート10の吸熱面12において吸収され、吸熱面12から放熱面13および複数の伝熱部14に伝わって、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に放出される。これにより、冷却対象物は、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に熱を放出することが可能となり、継続的に冷却される。
【0031】
また、熱媒体流通空間2に流入した熱媒体は、熱媒体の流通方向に対して直交する方向に幅方向にわたって直線的に延在する複数の伝熱接合部32と放熱面13との間を順次流通して、熱媒体流通空間2から流出する。熱媒体流通空間2に流入した熱媒体は、複数の伝熱部14の先端部とカバープレート20との隙間を流通することなく、伝熱部14と伝熱部14との間を流通することになり、伝熱部14から放出される熱を効率的に吸収する。
【0032】
また、上述のコールドプレート1の製造方法においては、以下に示す工程を含んでいる。
【0033】
ベース側接合部形成工程として、切削加工等によって、ベースプレート10の外周側に沿って周方向にわたって延在するとともに、放熱面13よりも張り出し量が小さくなるように、ベース側接合部11を形成する。
【0034】
カバー側接合部形成工程として、切削加工等によって、カバープレート20の外周側に沿って周方向にわたって延在するカバー側接合部21を形成する。
【0035】
伝熱部形成工程として、スカイブ加工によってベースプレートの放熱面13と共に複数の伝熱部14を形成する。伝熱部形成工程では、複数の伝熱部14のそれぞれを、熱媒体流通空間を流通する熱媒体の流通方向に沿って延在するフィン形状に形成する。
【0036】
プレート積層工程として、ベース側接合部形成工程においてベース側接合部11が形成されるとともに、伝熱部形成工程において放熱面13と共に複数の伝熱部14が形成されたベースプレート10に対してカバープレート20を積層する。
【0037】
プレート押圧工程として、
図7に示すように、プレート積層工程において積層されたベースプレート10およびカバープレート20を互いに積層方向に押圧することによって、複数の伝熱部14の先端部を、カバープレート20における放熱面13に対向する面に当接させる。
【0038】
封止接合工程として、
図8に示すように、ベースプレート10およびカバープレート20を互いに積層した状態において、ベース側接合部11側からレーザ溶接を施すことによって、ベースプレート10のベース側接合部11とカバープレート20のカバー側接合部21との間に周方向にわたって封止接合部31を形成する。
【0039】
伝熱接合工程として、
図9および
図10に示すように、封止接合工程によってベースプレート10およびカバープレート20を互いに接合した状態において、カバープレート20側からレーザ溶接を施すことによって、複数の伝熱部14の一部分の先端部とカバープレート20における熱媒体流通空間2側の面との間に伝熱接合部32を形成する。
【0040】
このように、本実施形態のコールドプレートによれば、内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間2が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に放出するコールドプレート1であって、冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面12が一方の面に設けられ、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に吸熱面12において吸収した熱を放出する放熱面13が他方の面に設けられたベースプレート10と、ベースプレート10の放熱面13を覆うカバープレート20と、を備え、熱媒体流通空間2は、ベースプレート10の放熱面13とカバープレート20との間に形成され、ベースプレート10は、放熱面13からカバープレート20に向かって突出するように設けられ、放熱面13から放出される熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部14を有し、複数の伝熱部14の少なくとも一部の先端部とカバープレート20における熱媒体流通空間2側の面との間には、伝熱部14の先端部とカバープレート20とを接合する伝熱接合部32が形成されている。
【0041】
また、本実施形態のコールドプレートの製造方法によれば、内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間2が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に放出するコールドプレート1の製造方法であって、冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面12が一方の面に設けられ、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に吸熱面12において吸収した熱を放出する放熱面13が他方の面に設けられ、放熱面13から放出される熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部14が放熱面13から突出するように設けられたベースプレート10に対して、放熱面13を覆うカバープレート20を積層するプレート積層工程と、プレート積層工程によって、ベースプレート10に対してカバープレート20を積層した状態で、レーザ溶接によって、複数の伝熱部14の少なくとも一部の先端部を、カバープレート20における熱媒体流通空間2側の面に接合させる伝熱接合工程と、を含む。
【0042】
これにより、伝熱部14の先端部とカバープレート20における熱媒体流通空間2側の面との隙間をなくすことが可能となるので、熱媒体流通空間2におけるカバープレート20側の熱媒体の流通量を低下させて隣り合う伝熱部14と伝熱部14との間の熱媒体の流通量を増加させることが可能となり、冷却効率の向上を図ることが可能となる。また、厚さ方向の大型化を抑制することが可能となるので、設置スペースの省スペース化、使用材料の低減および軽量化を図ることが可能となる。また、伝熱接合部32をレーザ溶接によって形成する場合には、焼き鈍しによる軟化が生じることがないため、カバープレート20の板厚を小さくすることが可能となり、熱抵抗の低減による冷却性能の向上、使用材料の低減による製造コストの低減および軽量化を図ることが可能となる。また、伝熱接合部32をレーザ溶接によって形成する場合には、ロウ材を必要としないため、より製造コストの低減を図ることが可能となる。さらに、伝熱接合部32をレーザ溶接によって形成する場合には、ベースプレート10およびカバープレート20の材料のみが熔融することになるため、ロウ材を使用する場合と比較して、伝熱部14と伝熱部14との隙間に溶融した材料が浸入することによる詰まりの発生を抑制することができるとともに、異種材料を含むことによる腐食を防止することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態のコールドプレートによれば、複数の伝熱部14は、それぞれ、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体の流通方向に沿って延在するフィンである、ことが好ましい。
【0044】
また、本実施形態のコールドプレートの製造方法によれば、伝熱部14を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体の流通方向に沿って延びるフィン形状に形成する伝熱部形成工程を含む、ことが好ましい。
【0045】
これにより、熱媒体流通空間2における熱媒体の流通方向の全体にわたって伝熱部14が配置することが可能になるため、伝熱部14から熱媒体に対してより効率的に熱を伝えることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態のコールドプレートによれば、ベースプレート10は、外周側の周方向にわたって延在するように設けられたベース側接合部11を有し、カバープレート20は、外周側の周方向にわたって延在するように設けられたカバー側接合部21を有し、ベース側接合部11とカバー側接合部21との間には、熱媒体流通空間2を封止する封止接合部31が形成されている、ことが好ましい。
【0047】
また、本実施形態のコールドプレートの製造方法によれば、ベースプレート10の外周側の周方向にわたって延在するように設けられたベース側接合部11を形成するベース側接合部形成工程と、カバープレート20の外周側の周方向にわたって延在するように設けられたカバー側接合部21を形成するカバー側接合部形成工程と、ベース側接合部形成工程によって形成されたベース側接合部11とカバー側接合部形成工程によって形成されたカバー側接合部21とを互いに接合することによって、熱媒体流通空間2を封止する封止接合工程と、を含む、ことが好ましい。
【0048】
これにより、ベース側接合部11およびカバー側接合部21を互いに接合することによって、熱媒体流通空間2を確実に封止することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態のコールドプレートによれば、ベースプレート10およびカバープレート20が、それぞれ、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスまたはステンレス合金からなる、ことが好ましい。
【0050】
また、本実施形態のコールドプレートの製造方法によれば、前記封止接合工程において、ベース側接合部11とカバー側接合部21とを、ロウ付け、拡散接合、摩擦攪拌接合または圧接によって接合する、ことが好ましい。
【0051】
尚、前記実施形態では、例として、複数の伝熱部14のそれぞれを、高さ寸法が3mm、厚さ寸法が0.1mm、隣り合う伝熱部14と伝熱部14との間隔が0.1mm、としたフィンを示したが、これに限られるものではない。複数の伝熱部としては、それぞれ、高さ寸法、厚さ寸法、隣り合う伝熱部と伝熱部との間隔を、任意に設定することが可能である。
【0052】
また、前記実施形態では、伝熱接合部32を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体の流通方向に対して直交する方向に熱媒体流通空間2の幅方向にわたって直線的に延在するように形成し、熱媒体の流通方向に間隔をおいて5個所に形成したものを示したが、これに限られるものではない。例えば、
図11(a)に示すように、熱媒体の流通方向の上流側および下流側のそれぞれに、熱媒体の流通方向に対して直交する方向に延在するように伝熱接合部32を配置するとともに、熱媒体の流通方向の中流側において、熱媒体流通空間2の幅方向の中央側および両側に熱媒体の流通方向に延在する伝熱接合部32を形成してもよい。また、例えば、
図11(b)に示すように、熱媒体の流通方向の上流側、中流側および下流側のそれぞれに、熱媒体の流通方向に対して直交する方向に延在するように伝熱接合部32を配置してもよい。さらに、
図11(c)に示すように、熱媒体流通空間2の幅方向の中央部において屈曲し、中央部から両側に向かってそれぞれ熱媒体の流通方向の下流側に斜めに延在するように形成した伝熱接合部32を、熱媒体の流通方向の複数個所に配置してもよい。伝熱接合部32は、熱媒体流通空間2における配置、延在方向、延在長さおよび配置する数を調整することによって、熱媒体の流路の設定、熱媒体の流量の調整が可能である。伝熱接合部32は、熱媒体の流通方向に直交する方向に延在するものであれば、熱媒体流通空間2に1つのみ配置しても、冷却能力の向上を図ることが可能である。
【0053】
また、前記実施形態では、放熱面13に対して垂直方向に延在する伝熱部14を示したが、これに限られるものではない。伝熱部14は、放熱面からカバープレート20側に向かって延在するものであれば、例えば、
図12に示すように、放熱面13からカバープレート20に向かって斜めに延在するものであってもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、カバープレート20の長手方向の一端側に設けられた熱媒体流入口2aから熱媒体流通空間2に熱媒体を流入させ、熱媒体流通空間2を流通した熱媒体を他端側に設けられた熱媒体流出口2bから流出させるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、
図13(a)に示すように、カバープレート20の長手方向の中央部側に熱媒体流入口2aを設け、長手方向の両端側のそれぞれに熱媒体流出口2bを設け、熱媒体流通空間2の長手方向の中央部側に流入した熱媒体の流れを分岐させて長手方向の両側から流出させるようにしてもよい。また、例えば、
図13(b)に示すように、カバープレート20の長手方向の一端側において、熱媒体流入口2aおよび熱媒体流出口2bを短手方向に並べて配置し、長手方向の他端側を除く短手方向の中央部を長手方向に延在するように伝熱接合部32を配置することで、熱媒体流通空間2を仕切ることによって、熱媒体流通空間2の長手方向一端側から流入した熱媒体を、長手方向の他端側に流通させ、長手方向他端側に流通した熱媒体を、長手方向他端側から一端側に流通させることが可能となる。
【0055】
また、伝熱接合部32は、
図14(a)に示すように、熱媒体流通空間2側に張り出す断面半円形状に形成されていてもよいし、
図14(b)に示すように、熱媒体流通空間2側に張り出す断面矩形状に形成されていてもよい。また、伝熱接合部32は、
図14(c)および
図14(d)に示すように、熱媒体流通空間2側に張り出す断面三角形状に形成されていてもよい。さらに、伝熱接合部32は、
図14(e)に示すように、熱媒体の流通方向の全体にわたって熱媒体流通空間2側に張り出すように形成されていてもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、伝熱部14を、基端部から先端部まで同一の幅寸法に形成し、先端部にカバープレート20における熱媒体流通空間2側に対向する平面を有するものを示したが、これに限られるものではない。例えば、伝熱部14は、
図15(a)に示すように、先端側が先端部に向かって先細りとなる形状に形成されていてもよいし、
図15(b)に示すように、先端部が厚さ方向の中央部に向かって張り出す曲面形状に形成されていてもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、熱媒体の例として、水を示したが、これに限られるものではない。例えば、エチレングリコールを含む不凍液、ハイドロフルオロカーボン(HFC)等の冷媒ガスを、熱媒体として利用してもよい。
【0058】
また、前記実施形態では、複数の伝熱部14のそれぞれを、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体の流通方向に延在するフィンとしたものを示したが、これに限られるものではない。伝熱部は、熱媒体流通空間において放熱面からカバープレート側に張り出す形状を有していればよく、例えば、放熱面からカバープレート側に張り出す円錐形状の突起であってもよい。
【0059】
また、前記実施形態では、ベースプレート10に対するカバープレート20の接合を、レーザ溶接によって行うようにしたものを示したが、これに限られるものではない。ベースプレート10に対するカバープレート20の接合は、ロウ付け、拡散接合、摩擦攪拌接合(FSW)、圧接によって行ってもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、伝熱接合部32をレーザ溶接によって形成したものを示したが、これに限られるものではない。伝熱接合部32は、拡散接合、摩擦攪拌接合(FSW)、圧接によって行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 コールドプレート
2 熱媒体流通空間
10 ベースプレート
11 ベース側接合部
12 吸熱面
13 放熱面
14 伝熱部
20 カバープレート
31 封止接合部
32 伝熱接合部
【要約】
【課題】厚さ方向の大型化の抑制と同時に、冷却効率の向上を図ることのできるコールドプレートを提供する。
【解決手段】熱媒体流通空間2は、ベースプレート10の放熱面13とカバープレート20との間に形成され、ベースプレート10は、放熱面13からカバープレート20に向かって突出するように設けられ、放熱面13から放出される熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部14を有し、複数の伝熱部14の少なくとも一部の先端部とカバープレート20における熱媒体流通空間2側の面との間には、伝熱部14の先端部とカバープレート20とを接合する伝熱接合部32が形成されている。
【選択図】
図9