(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】予測装置、学習装置および学習方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20240708BHJP
G06Q 50/12 20120101ALI20240708BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/12
(21)【出願番号】P 2023516239
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2022047266
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2022152725
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立道 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】東原 美穂
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-102688(JP,A)
【文献】特開2016-153931(JP,A)
【文献】特開2014-241044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材および調味料の情報を入力する入力部と、
食材
に含まれる香気成分の濃度を第1閾値で除算した値である第1指標、および、調味料
に含まれる香気成分の濃度を第2閾値で除算した値である第2指標に基づく指標スコア
を、前記入力部に入力された情報
と前記指標スコアとを予め関連付けたデータ構造に基づいて抽出する処理部と、
前記処理部により抽出された指標スコア
を入力
とし、かつ、入力された指標スコアに基づく食材および調味料の組み合わせに対応する相性スコアを出力とするように学習された相性予測モデルから出力された相性スコアを、前記食材と前記調味料との相性予測値として出力する出力部と、
を備え
、
前記指標スコアは、前記第1指標と前記第2指標との加算値である第1スコアと、前記第1指標と前記第2指標との差分の絶対値である第2スコアとの少なくとも1つを含み、
前記相性スコアは、複数人により複数段階のスコアをつけることにより予め行われた前記食材と前記調味料との相性の評価における評価を行った人によりつけられたスコアに基づく値である、
予測装置。
【請求項2】
前記指標スコアは、前記第1スコアと、前記第2スコアと、前記第2指標
と、第3スコア
であって、前記第2指標を、前記第2指標にかかる調味料に含まれる物質のオフフレーバーである香気成分の濃度を第3閾値で除算した値と食材に含まれる香気成分の濃度を第4閾値で除算した値との加算値で除算した値である第3スコアと、の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記第1指標は、複数の食材のそれぞれに対応して複数算出され、
前記第2指標は、複数の調味料のそれぞれに対応して複数算出され、
前記指標スコアは、各食材の第1指標と、各調味料の第2指標との組み合わせに対応して、複数算出される、
請求項1に記載の予測装置。
【請求項4】
前記複数の食材は、各第1指標に基づいて、
階層的クラスター分析の手法によりグループ分けされており、
前記複数の調味料は、各第2指標に基づいて、
階層的クラスター分析の手法によりグループ分けされており、
前記相性予測モデルは、前記食材のグループと、前記調味料のグループとの組み合わせに対応して、複数生成される、
請求項
3に記載の予測装置。
【請求項5】
食材
に含まれる香気成分の濃度を第1閾値で除算した値である第1指標、および、調味料
に含まれる香気成分の濃度を第2閾値で除算した値である第2指標に基づく指標スコアを算出する算出部と、
前記指標スコアと、
相性スコアとに基づいて学習し、
前記指標スコアを入力とし、かつ、入力された指標スコアに基づく食材および調味料の組み合わせに対応する相性スコアを出力とする相性予測モデルを生成する生成部と、
を備え
、
前記指標スコアは、前記第1指標と前記第2指標との加算値である第1スコアと、前記第1指標と前記第2指標との差分の絶対値である第2スコアとの少なくとも1つを含み、
前記相性スコアは、複数人により複数段階のスコアをつけることにより予め行われた前記食材と前記調味料との相性の評価における評価を行った人によりつけられたスコアに基づく値である、
学習装置。
【請求項6】
コンピューターが実行する学習方法であって、
食材
に含まれる香気成分の濃度を第1閾値で除算した値である第1指標、および、調味料
に含まれる香気成分の濃度を第2閾値で除算した値である第2指標に基づく指標スコアを算出するステップと、
前記指標スコアと、
相性スコアとに基づいて学習し、
前記指標スコアを入力とし、かつ、入力された指標スコアに基づく食材および調味料の組み合わせに対応する相性スコアを出力とする相性予測モデルを生成するステップと、
を有
し、
前記指標スコアは、前記第1指標と前記第2指標との加算値である第1スコアと、前記第1指標と前記第2指標との差分の絶対値である第2スコアとの少なくとも1つを含み、
前記相性スコアは、複数人により複数段階のスコアをつけることにより予め行われた前記食材と前記調味料との相性の評価における評価を行った人によりつけられたスコアに基づく値である、
学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予測装置、学習装置および学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
料理に用いられる調味料は、料理の仕上がりへの影響を考慮して、相性の良い食材に合わせて選択されることが好ましい。
【0003】
相性は、食材と調味料との組み合わせを考えるうえで、当業者にとって非常に重要な概念である。一般に、相性が良い場合に、良い風味が新たに生まれる、増強される、あるいは悪い風味が抑制されるとされている。一方、相性が悪い場合には、良い風味が抑制される、あるいは悪い風味が新たに生まれる、増強されるとされている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0004】
なお、調味料に関連する技術ではないが、専門的な知識や経験がなくても日本酒と料理の相性を判定できる方法として、予め専門家がその酒の特性を4種類の味と香りのレベルで評価し、その判定結果を商品のラベルに表示する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】田村 隆幸, 「料理とワインのマリアージュの科学」, 化学と生物, 2010, 48 巻, 10 号, p. 668-670, 公開日 2011/10/03, Online ISSN 1883-6852, Print ISSN 0453-073X, https://doi.org/10.1271/kagakutoseibutsu.48.668, https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/48/10/48_10_668/_article/-char/ja
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、食事をする人には、例えば、肉食主義、菜食主義等、様々な嗜好を有する人が存在する。例えば、インドのように、牛肉を食べる文化がなく、メインの食材が野菜、豆類、魚等である国も存在する。そのため、食事をする人の嗜好を考慮せずに、食材と調味料と共通する特性のみで相性を予測した場合、正確な相性予測ができない可能性があった。
【0008】
本開示の目的は、食事をする人の嗜好を考慮した食材と調味料との相性を予測可能な予測装置、学習装置および学習方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の予測装置は、
食材および調味料の情報を入力する入力部と、
食材に含まれる香気成分の濃度を第1閾値で除算した値である第1指標、および、調味料に含まれる香気成分の濃度を第2閾値で除算した値である第2指標に基づく指標スコアを、前記入力部に入力された情報と前記指標スコアとを予め関連付けたデータ構造に基づいて抽出する処理部と、
前記処理部により抽出された指標スコアを入力とし、かつ、入力された指標スコアに基づく食材および調味料の組み合わせに対応する相性スコアを出力とするように学習された相性予測モデルから出力された相性スコアを、前記食材と前記調味料との相性予測値として出力する出力部と、
を備え、
前記指標スコアは、前記第1指標と前記第2指標との加算値である第1スコアと、前記第1指標と前記第2指標との差分の絶対値である第2スコアとの少なくとも1つを含み、
前記相性スコアは、複数人により複数段階のスコアをつけることにより予め行われた前記食材と前記調味料との相性の評価における評価を行った人によりつけられたスコアに基づく値である。
【0010】
本開示の学習装置は、
食材に含まれる香気成分の濃度を第1閾値で除算した値である第1指標、および、調味料に含まれる香気成分の濃度を第2閾値で除算した値である第2指標に基づく指標スコアを算出する算出部と、
前記指標スコアと、相性スコアとに基づいて学習し、前記指標スコアを入力とし、かつ、入力された指標スコアに基づく食材および調味料の組み合わせに対応する相性スコアを出力とする相性予測モデルを生成する生成部と、
を備え、
前記指標スコアは、前記第1指標と前記第2指標との加算値である第1スコアと、前記第1指標と前記第2指標との差分の絶対値である第2スコアとの少なくとも1つを含み、
前記相性スコアは、複数人により複数段階のスコアをつけることにより予め行われた前記食材と前記調味料との相性の評価における評価を行った人によりつけられたスコアに基づく値である。
【0011】
本開示の学習方法は、
コンピューターが実行する学習方法であって、
食材に含まれる香気成分の濃度を第1閾値で除算した値である第1指標、および、調味料に含まれる香気成分の濃度を第2閾値で除算した値である第2指標に基づく指標スコアを算出するステップと、
前記指標スコアと、相性スコアとに基づいて学習し、前記指標スコアを入力とし、かつ、入力された指標スコアに基づく食材および調味料の組み合わせに対応する相性スコアを出力とする相性予測モデルを生成するステップと、
を有し、
前記指標スコアは、前記第1指標と前記第2指標との加算値である第1スコアと、前記第1指標と前記第2指標との差分の絶対値である第2スコアとの少なくとも1つを含み、
前記相性スコアは、複数人により複数段階のスコアをつけることにより予め行われた前記食材と前記調味料との相性の評価における評価を行った人によりつけられたスコアに基づく値である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、食事をする人の嗜好を考慮した食材と調味料との相性を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る学習装置を示すブロック図である。
【
図2】食材および調味料のそれぞれにおけるOAV変換スコアの算出結果の一例を示す図である。
【
図3】本開示の第1の実施の形態に係る予測装置を示すブロック図である。
【
図4】学習装置における学習制御の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の第2の実施の形態に係る学習装置を示すブロック図である。
【
図6】階層的クラスター分析における樹形図を説明するための図である。
【
図7】グループ分けした食材および調味料の一覧表を示す図である。
【
図8】第1の実施の形態と第2の実施の形態との相性予測精度の実験における比較結果を示す表である。
【
図9】第3の実施の形態における相性予測精度の実験結果を示す表である。
【
図10】変形例に係る相性予測精度の実験結果を示す図である。
【
図11A】(1)のアンケート調査の結果を示す図である。
【
図11B】(2)のアンケート調査の結果を示す図である。
【
図11C】(3)のアンケート調査の結果を示す図である。
【
図12A】(1)で第3炒飯を選択したインド人シェフが、(2)で選択した各炒飯の人数の内訳を示す図である。
【
図12B】(1)で第1炒飯を選択したインド人シェフが、(2)で選択した各炒飯の人数の内訳を示す図である。
【
図13】各グループで選択された炒飯のスコアの集計結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の第1の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る学習装置を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、学習装置10は、食材および調味料のフレーバーに関する指標スコアと、予め集計された食材と調味料との相性の評価に基づく食材および調味料の相性スコアとに基づいて学習を行い、食材と調味料との相性予測モデルを生成する装置(例えば、パーソナルコンピュータ等の端末装置)である。
【0016】
学習装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力回路を備えており、予め設定されたプログラムに基づいて、上記の相性予測モデルを生成する。学習装置10は、記憶部11と、算出部12と、生成部13とを有する。
【0017】
記憶部11は、学習対象の相性予測モデルと、教師データとしての上記の指標スコアおよび上記の相性スコアとを記憶する。
【0018】
相性スコアは、複数の食材のうちの1つと、複数の調味料のうちの1つとの、予め集計された食材と調味料との相性の評価に基づく相性のスコアである。
【0019】
複数の食材は、任意に設定可能であっても良く、例えば、本実施の形態では、カッテージチーズ、カリフラワー、マッシュルーム、ピーマン、トマト、ココナッツ、鶏肉、ほうれん草、香り米、たまねぎ、モッザレラチーズ、マンゴーの、12種類が食材として設定されている。
【0020】
複数の調味料は、任意に設定可能であっても良く、例えば、本実施の形態では、トマトペースト、黒胡椒、バター、にんにく、クミン、ギー、ターメリック、しょうが、醤油、ディル、ローリエ、牛乳、クローブ、ナツメグ、白ワイン、レモン汁、バターミルクの、17種類が調味料として設定されている。
【0021】
予め集計された食材と調味料との相性の評価は、食材と調味料との相性における複数人の視点に基づく評価であり、例えば、複数の食品産業関係者から取得したアンケートによるものであっても良い。複数の食品産業関係者は、例えば、特定の国(例えば、インド、ブラジル、アメリカ等)全体、または、特定の地域(例えば、日本の場合、関東、関西等)全体の、料理人、料理の研究者等、料理に関する知見を有する者であっても良い。
【0022】
予め集計された食材と調味料との相性の評価は、例えば、複数の食材および複数の調味料の組み合わせ毎に、複数段階のスコアをつけることにより行われても良い。
【0023】
複数段階のスコアは、例えば、評価が良くなるにつれ高くなるようなスコアであっても良いし、評価が悪くなるにつれ高くなるようなスコアであっても良い。本実施の形態では、複数段階のスコアは、1:Worst pair、2:Terrible pair、3:Bad pair、4:Weak pair、5:Can’t say、6:Fair pair、7:Good pair、8:Great pair、9:Perfect pairの、評価が良くなるにつれ高くなる9段階のスコアで例示される。
【0024】
このような予め集計された食材と調味料との相性の評価を行った人全員による、食材および調味料の組み合わせ毎の各スコアの平均値が、食材および調味料の組み合わせにおける相性スコアとされても良い。
【0025】
記憶部11には、複数の食材と、複数の調味料との全通りの組み合わせの各相性スコアが記憶されている。本実施の形態では、12種類の食材と、17種類の調味料との、合計204の組み合わせに係る相性スコアが記憶されている。
【0026】
算出部12は、複数の食材および複数の調味料の各指標スコアを算出する。
【0027】
指標スコアは、食材または調味料のフレーバーに関する指標である第1指標および第2指標に基づくスコアである。第1指標は、食材のフレーバーに関するデータに基づいて算出される指標であり、第2指標は、調味料のフレーバーに関するデータに基づいて算出される指標である。第1指標および第2指標は、例えば、香気成分の重要性を示す指標として知られているOAV(Odor Activity Values)であっても良い。
【0028】
OAVは、食材または調味料に含まれる香気成分の濃度(ppm)を閾値(ppm)で除算した値である。香気成分の濃度は、食材または調味料から実測された値であっても良いし、香気成分の濃度に関する論文やデータベースを有する機関から取得した値であっても良い。閾値は、例えば、香気成分を人が感じられなくなる程度の濃度等、任意の値に設定されても良いし、上記の論文やデータベースを有する機関から取得した値であっても良い。
【0029】
例えば、上記の香気成分の濃度および閾値は、所定のデータベース(Pub Chem:https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/、ChemSpider:http://www.chemspider.com/)より取得した値であっても良い。
【0030】
香気成分は、例えば、複数のフレーバータイプに分類される。学習装置10は、各食材および各調味料のOAVを、複数のフレーバータイプ毎に算出する。言い換えると、第1指標は、複数の食材のそれぞれに対応して複数算出され、第2指標は、複数の調味料のそれぞれに対応して複数算出され、指標スコアは、複数のフレーバータイプのそれぞれに対応して複数算出される。
【0031】
複数のフレーバータイプは、香気成分を香りの質で複数に分類したものである。複数のフレーバータイプは、例えば、Fruit、Floral、Green、Herb、Sulfur、Caramel、Roast、Nut、Wood、Spice、Cheese、Animal、Chemicalの13種類に分類されても良い。
【0032】
例えば、所定の食材における所定のフレーバータイプ(例えば、Fruit)の香気成分の濃度がA1であり、閾値がB1である場合、所定の食材における所定のフレーバータイプに係るOAV(第1指標)は、A1/B1である。また、所定の調味料における所定のフレーバータイプの香気成分の濃度がA2であり、閾値がB2である場合、所定の調味料における所定のフレーバータイプに係るOAV(第2指標)は、A2/B2である。
【0033】
なお、上記の各フレーバータイプは、例えば、アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁のデータベースおよびThe Good Scents Company社のデータベースから取得した記述子に基づいて分類された例が示されているが、本開示はこれに限定されず、上記以外の方法で分類されても良い。
【0034】
具体的には、算出部12は、食材または調味料に含まれる各物質のOAVをフレーバータイプ毎に算出し、各物質のOAVを合算する。このOAVの合算値を、食材または調味料の各フレーバータイプのOAVとする。食材または調味料に含まれる物質は、例えば、酢酸、酢酸エチル、ヘキサナール、HEMF等、食材または調味料に含まれる全ての物質を示す。例えば、所定の調味料にM1~M9が含まれている場合、フレーバータイプ毎に、M1~M9のOAVをそれぞれ算出し、フレーバータイプ毎のOAVの合算値が、所定の調味料のフレーバータイプ毎のOAVとなる。
【0035】
本実施の形態では、フレーバータイプが13種類あるので、1つの食材または調味料において、13個のOAVが得られる。つまり、12種類の食材と17種類の調味料との合計29種類の食材または調味料のそれぞれが、13個のOAVを有することになる。
【0036】
また、フレーバータイプ毎のOAVとは別に、オフフレーバーである香気成分に関するOAVが算出されても良い。
【0037】
オフフレーバーは、人が異臭と感じる割合が比較的高い香気成分であり、例えば、肉または魚の生臭い匂い、酢の酸っぱい匂い、ピーマンの苦みのある匂い等、任意に設定可能である。
【0038】
なお、オフフレーバーに設定された香気成分は、上記のフレーバータイプに分類された香気成分に含まれた成分であっても良いし、なくても良い。
【0039】
算出部12は、食材または調味料に含まれる各物質のオフフレーバーのOAVも上記と同様に算出し、食材または調味料に含まれる各物質のOAVのそれぞれの合算値を、食材または調味料のオフフレーバーのOAVとしても良い。
【0040】
例えば、所定の食材におけるオフフレーバーに係る物質の香気成分の濃度がA3であり、閾値がB3である場合、所定の食材におけるオフフレーバーに係る物質のOAVは、A3/B3である。そして、物質毎にOAVが算出され、これらの合算値が、所定の食材におけるオフフレーバーのOAVとなる。
【0041】
算出部12は、例えば、食材および調味料のそれぞれの13個のOAVと、オフフレーバーのOAVとを、対数(例えば、常用対数)に変換し、その値が-1以下となるものはすべて-1に変換して、1を加算する処理を施す。各OAVの合算値を常用対数に変換する処理は、1,2,3等の単純な数字(スコア)にするための処理である。例えば、所定の食材または調味料の香気成分の濃度が閾値より大きくなるほど、OAVが大きくなり、変換後のスコアが大きくなる。また、変換後の数字が-1以下となる場合、所定の食材または調味料の香気成分の濃度が閾値の1/10以下であるので、すべて-1に変換して1を加算することで、スコアを0、つまり、香気成分の重要度が低い場合のスコアを0とすることが可能となる。
【0042】
このようにして、算出部12は、複数の食材および複数の調味料のそれぞれにおいて、13種類のOAV変換スコアを算出する。具体的には、
図2に示すように、食材および調味料のそれぞれにおいて、13個のOAV変換スコアが算出される。
【0043】
また、
図2に示す例とは別に、算出部12は、オフフレーバーのOAV変換スコアも算出される。そのため、上記の13種類のOAV変換スコアと合わせて、合計14のOAV変換スコアが算出される。
【0044】
また、算出部12は、複数の食材と、複数の調味料との任意の組み合わせにおいて、第1スコア、第2スコアおよび第3スコアを指標スコアとして算出する。つまり、指標スコアは、第1スコア、第2スコアおよび第3スコアを含んでも良い。
【0045】
第1スコアは、任意の組み合わせに係る食材および調味料の各OAV変換スコアの加算値である。例えば、食材のOAV変換スコアがD1、調味料のOAV変換スコアがD2である場合、第1スコアは、D1+D2となる。具体的に、
図2において、食材をカッテージチーズ、調味料をギーとした場合、フレーバータイプがFruitでは、カッテージチーズのOAV変換スコアが、0であり、ギーのOAV変換スコアが、3であるので、フレーバータイプがFruitのときのカッテージチーズとギーとの組み合わせにおける第1スコアは3となる。第1スコアは、フレーバータイプ毎に算出される。
【0046】
第2スコアは、任意の組み合わせに係る食材および調味料の各OAV変換スコアの差分値の絶対値である。例えば、食材のOAV変換スコアがD1、調味料のOAV変換スコアがD2である場合、第2スコアは、D1-D2の絶対値となる。具体的に、
図2において、食材をカッテージチーズ、調味料をギーとした場合、フレーバータイプがGreenでは、カッテージチーズのOAV変換スコアが、4であり、ギーのOAV変換スコアが、3であるので、フレーバータイプがGreenのときのカッテージチーズとギーとの組み合わせにおける第2スコアは1となる。第2スコアは、フレーバータイプ毎に算出される。
【0047】
第3スコアは、任意の組み合わせに係る調味料のOAV変換スコアを、任意の組み合わせに係る食材および調味料の各オフフレーバーOAV変換スコアの加算値で除算した値である。例えば、調味料のOAV変換スコアがD2、食材のオフフレーバーのOAV変換スコアがD3、調味料のオフフレーバーのOAV変換スコアがD4である場合、第3スコアは、D2/(D3+D4)となる。具体的に、
図2において、調味料をギーとした場合、フレーバータイプがCaramelでは、ギーのOAV変換スコアが、4である。また、食材をカッテージチーズ、調味料をギーとした場合の各オフフレーバーのOAV変換スコアのそれぞれが、1、3であった場合、フレーバータイプがCaramelのときの任意の食材とギーとの組み合わせにおける第3スコアは4/(1+3)で1となる。第3スコアは、フレーバータイプ毎に算出される。
【0048】
算出部12は、任意の組み合わせにおける第1スコア、第2スコアおよび第3スコアを複数のフレーバータイプ毎に算出する。つまり、第1スコア、第2スコアおよび第3スコアのそれぞれが、食材と調味料との組み合わせ毎に13個ずつの合計39個算出される。言い換えると、指標スコアは、各食材の第1指標と、各調味料の第2指標との組み合わせに対応して複数算出される。
【0049】
本実施の形態では、12種類の食材と17種類の調味料とで、204通りの組み合わせとなるので、204通りの組み合わせ毎に、合計39個のスコア(指標スコア)が算出される。
【0050】
生成部13は、記憶部11に記憶された相性スコアと、算出部12により算出された指標スコアとに基づいて学習を行い、食材と調味料との相性予測モデルを生成する。
【0051】
生成部13は、例えば、部分的最小二乗法を用いて、食材と調味料との相性予測モデルを生成する。具体的には、生成部13は、指標スコアを説明変数とし、相性スコアを目的変数として回帰式を生成する。
【0052】
説明変数として用いられる指標スコアは、食材と調味料との全204通りの組み合わせに係る、第1スコア、第2スコアおよび第3スコアである。合計39×204=7956のスコアである。
【0053】
目的変数として用いられる相性スコアは、食材と調味料との全204通りの相性スコアである。
【0054】
生成部13は、例えば、説明変数を他の空間に射影することで潜在変数を抽出し、抽出した潜在変数と目的変数との誤差を最小化するようにして回帰式を生成する。潜在変数は、目的変数との内積が最大になるように抽出される。
【0055】
例えば、食材と調味料との組み合わせのそれぞれにおいて、39個の説明変数(指標スコア)と、その組み合わせに対応する1個の目的変数(相性スコア)とがあるので、1つの組み合わせにおける39個の説明変数および対応する目的変数から潜在変数を抽出していき、抽出した潜在変数および目的変数からy=f(x)の回帰式が生成される。yは目的変数(相性スコア)であり、xは潜在変数(指標スコア)である。
【0056】
このようにして生成された回帰式(相性予測モデル)は、例えば、予測装置20に格納されて用いることができる。
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る予測装置を示すブロック図である。なお、相性予測モデルは、上述した回帰式に限定されず、食材と調味料との組み合わせから相性スコアを予測する他の何れかのタイプの機械学習モデルであってもよい。
【0057】
図3に示すように、予測装置1は、上記の指標スコアと相性スコアとに基づき学習された相性予測モデルに基づいて食材と調味料との相性予測値を出力する装置(例えば、パーソナルコンピュータ等の端末装置)である。予測装置1は、記憶部2と、入力部3と、処理部4と、出力部5とを有する。
【0058】
記憶部2には、上記の相性予測モデルが記憶されている。相性予測モデルは、学習装置10によって学習された学習済みのモデルである。
【0059】
入力部3は、相性を予測する食材および調味料の情報をユーザが入力可能に構成されている。
【0060】
処理部4は、図示しないCPU、ROM、RAMおよび入出力回路を備えており、予め設定されたプログラムに基づいて、入力された食材および調味料の情報を処理して相性予測値を抽出するように構成されている。
【0061】
処理部4は、例えば、入力された食材および調味料の情報を相性予測モデルに当てはめて、食材と調味料との組み合わせに対応する相性予測値を抽出する。
【0062】
具体的には、食材と調味料との組み合わせと、その組み合わせに対応する上記の潜在変数とを関連付けたテーブルを処理部4が参照し、入力された食材および調味料に対応する潜在変数を抽出する。そして、処理部4は、上記のy=f(x)の回帰式に、抽出した潜在変数をxに代入して、目的変数であるyを算出して、相性予測値を抽出する。
【0063】
出力部5は、処理部4によって抽出された相性予測値を出力する。
【0064】
なお、相性予測値は、予め算出されていても良く、例えば、食材と調味料との組み合わせと、相性予測値とを関連付けたテーブルが生成されていても良い。
【0065】
次に、学習装置10の動作例について説明する。
図4は、学習装置10における学習制御の動作例を示すフローチャートである。
【0066】
図4に示すように、学習装置10は、食材および調味料の指標スコアを算出する(ステップS101)。ステップS101の後、学習装置10は、食材および調味料の相性スコアを取得する(ステップS102)。
【0067】
相性スコアを取得後、学習装置10は、指標スコアと相性スコアとに基づいて相性予測モデルを生成する(ステップS103)。その後、本制御は終了する。
【0068】
以上のように構成された本実施の形態によれば、食材および調味料のフレーバーに関する指標に基づく指標スコアと、予め集計された食材と調味料との相性の評価結果に基づく食材および調味料の相性スコアとに基づいて学習して、相性予測モデルを生成する。そして、相性予測モデルに基づいて食材および調味料の相性予測値を算出する。
【0069】
そのため、本実施の形態では、食材と調味料との相性予測に、予め集計された食材と調味料との相性の評価の要素を盛り込むことができるので、食事をする人の嗜好を考慮した相性予測を行うことができる。
【0070】
これにより、本実施の形態では、例えば、ある特定の地域の人の評価結果に基づいた学習結果を相性予測モデルに盛り込むことにより、その地域の人の嗜好に合わせた相性予測を行うことができる。
【0071】
また、複数のフレーバータイプ毎に指標スコアを算出するので、より詳細な相性予測を行うことができる。
【0072】
また、食材と調味料との組み合わせによって、第1スコア(OAVの加算値)が相性に関係性が最も高くなる場合がある。また、食材と調味料との組み合わせによって、第2スコア(OAVの差分の絶対値)が相性に関係性が最も高くなる場合もある。また、食材と調味料との組み合わせによって、第3スコア(オフフレーバーを除外した値)が相性に関係性が最も高くなる場合もある。
【0073】
本実施の形態では、指標スコアとして、第1スコア、第2スコアおよび第3スコアをそれぞれ算出しているので、食材と調味料との相性に関連するデータを満遍なく集めることができる。その結果、より正確な相性予測値を得やすくすることができる。
【0074】
また、部分的最小二乗法は、例えば、相性に関係性が高いような、重要度の高い変数から順に用いるという特徴を有する手法である。そのため、本実施の形態では、部分的最小二乗法によって、相性予測モデルを生成するので、相性に関係性の高いデータを抽出しやすくすることができる。例えば、説明変数として、第1スコア、第2スコアおよび第3スコアが用いられるので、その第1スコア、第2スコアおよび第3スコアの中から、相性に関係性の高いスコアが潜在変数として抽出される。その結果、相性に関係性の高いスコア(潜在変数)をx、相性予測値をyとしたy=f(x)の回帰式が生成されるので、相性予測値の精度を向上させることができる。
【0075】
また、相性スコアは、複数の食品産業関係者から取得したアンケート結果に基づくスコアであるので、それぞれの顧客の嗜好を相性スコアに反映しやすくすることができる。
【0076】
また、特定の国全体や、特定の地域全体における食品産業関係者に対象を絞ることにより、特定の国全体や、特定の地域全体の人の嗜好が相性スコアに反映されやすくなる。
【0077】
例えば、肉食主義の国の人、菜食主義の国の人、インドのように、牛肉を食べる文化がなく、メインの食材が野菜、豆類、魚等である国の人の、それぞれにおいては、所定の食材と調味料との相性の良否が変わる可能性がある。
【0078】
本実施の形態では、特定の国毎、または、特定の地域毎に、予め集計された食材と調味料との相性の評価の対象を変えることで、それぞれにおいて異なる相性予測を行うことができる。その結果、特定の国毎、または、特定の地域毎に、適切な相性予測値を提供することができる。
【0079】
次に、第2の実施の形態について説明する。
上記の第1の実施の形態では、全ての食材と、全ての調味料との組み合わせにおける全ての指標スコアおよび相性スコアを用いて、1つの回帰式(相性予測モデル)を生成していた。第2の実施の形態では、OAVに基づいて食材または調味料がグループ分けされていても良い。
【0080】
図5に示すように、第2の実施の形態における学習装置10は、記憶部11、算出部12および生成部13の他、分類部14を有する。
【0081】
分類部14は、複数の食材を各食材のOAV(第1指標)に基づいてグループ分けし、複数の調味料を各調味料のOAV(第2指標)に基づいてグループ分けする。
【0082】
分類部14は、例えば、フレーバータイプ毎のOAVが比較的近い食材および調味料を複数のグループに分類する。分類部14による分類方法は、例えば、階層的クラスター分析の手法が適用されても良い。
【0083】
階層的クラスター分析は、データ群の中で最も似ている組み合わせから順にまとめていき、最終的に一つのクラスターにまとめる手法である。例えば、全てのフレーバータイプのOAV変換スコアの傾向が最も似ている、2つの食材または調味料をグループ化し、全てのデータがグループ化されて一つの樹形図を完成させる。グループ化する手法としては、例えば、ウォード法、最短距離法、最長距離法、重心法、群平均法、メディアン法等、公知の方法を用いても良い。
【0084】
例えば、
図6には、複数のデータを階層的クラスター分析で分類した樹形図の一部が示されている。便宜上、
図6には、C1~C20までの20個のデータによって構成された樹形図であるとする。
【0085】
例えば、3つのグループに分類する場合、樹形図の枝が3本となる階層(破線で示す層)において、各枝に属するデータを1つのグループとする。例えば、
図6における破線で示す層の最も左の枝のグループには、C1~C10が含まれ、真ん中のグループには、C11~C15が含まれ、最も右の枝のグループには、C16~C20が含まれる。
【0086】
このようにして、一例として上記の12種類の食材と17種類の調味料とを3つのグループに分類した場合、例えば、
図7に示すように、第1グループ、第2グループおよび第3グループの3つのグループに分類された。
【0087】
第1グループは、例えば、各フレーバータイプのOAV変換スコアが全体的に低く、全体的に香りが穏やかであったり、単調である特徴を有するグループとなった。
【0088】
第2グループは、例えば、Fruit、FloralのOAV変換スコアが比較的高く、複雑な香りを有する特徴を有するグループとなった。
【0089】
第3グループは、例えば、Fruit、Floral、Wood、Green、Herb、Spice、ChemicalのOAV変換スコアが非常に高く、少量でもアクセントを与えるような特徴を有するグループとなった。
【0090】
上記の12種類の食材の場合、第1グループには、カッテージチーズ、モッザレラチーズ、カリフラワー、ピーマン、香り米、たまねぎが分類され、第2グループには、マッシュルーム、トマト、ココナッツ、鶏肉、ほうれん草、マンゴーが分類された。第3グループには、12種類の食材の中で分類されたものはなかった。
【0091】
また、上記の17種類の調味料の場合、第1グループには、バターミルク、にんにく、ギー、牛乳が分類され、第2グループには、バター、醤油、ディル、レモン汁、トマトペースト、白ワインが分類され、第3グループには、ローリエ、黒胡椒、クローブ、クミン、しょうが、ナツメグ、ターメリックが分類された。
【0092】
生成部13は、食材のグループと、調味料のグループとの組み合わせ毎に、相性予測モデルを生成する。言い換えると、相性予測モデルは、食材のグループと、調味料のグループとの組み合わせに対応して、複数生成される。
【0093】
具体的には、生成部13は、食材に係る第1グループと調味料に係る第1グループとの組み合わせ(グループ1)と、食材に係る第1グループと調味料に係る第2グループとの組み合わせ(グループ2)と、食材に係る第1グループと調味料に係る第3グループとの組み合わせ(グループ3)と、食材に係る第2グループと調味料に係る第1グループとの組み合わせ(グループ4)と、食材に係る第2グループと調味料に係る第2グループとの組み合わせ(グループ5)と、食材に係る第2グループと調味料に係る第3グループとの組み合わせ(グループ6)と、の合計6つの相性予測モデルを生成する。
【0094】
また、12種類の食材および17種類の調味料のそれぞれを任意のデータとして、第1の実施の形態と、第2の実施の形態とで、相性予測値の精度を比較した結果を
図8に示す。
【0095】
図8には、第1の実施の形態と、第2の実施の形態の各組合せとの決定係数の値の算出結果が示されている。なお、
図8等の算出結果は、上記の所定のデータベースより取得した各食材および調味料に含まれる香気成分に関するデータに基づいて算出された結果である。
【0096】
第1の実施の形態では、決定係数が0.45であるのに対し、第2の実施の形態では、グループ1、グループ2、グループ3、グループ5、グループ6の各決定係数が0.79、0.71、0.86、0.97、0.93と、いずれも第1の実施の形態よりも決定係数が向上したことが確認された。
【0097】
なお、グループ4については、相性予測モデルが生成されなかった。これは後述するが、予測精度を低下させる食材または調味料が、食材グループと調味料グループとの組み合わせに係るグループに含まれていたためである。この場合、第2の実施の形態では、グループ4に含まれる食材または調味料については、第1の実施の形態と同様の相性予測モデルを用いて、相性予測値を算出すれば良い。
【0098】
以上のように構成された第2の実施の形態では、フレーバータイプ毎のOAVが比較的近い食材および調味料ごとにグループ分けし、食材のグループと調味料のグループとの組み合わせ毎に相性予測モデルを生成したので、相性予測の精度を向上させることができる。
【0099】
次に、第3の実施の形態について説明する。
上記第2の実施の形態では、予測精度を低下させる食材または調味料が、食材グループと調味料グループとの組み合わせに係るグループに含まれていると、相性予測モデルが生成できない場合があった。第3の実施の形態では、予測精度を低下させる食材または調味料がグループに含まれる場合、予測精度を低下させる食材または調味料をグループから除外するようにしても良い。
【0100】
例えば、各グループに含まれる食材および調味料のうちの任意の1つを除外して相性予測モデルを生成した際に、相性予測モデルにおける決定係数が、除外前よりも向上した場合、その任意の1つを、予測精度を低下させる食材または調味料として特定しても良い。
【0101】
例えば、
図9に示すように、第2の実施の形態において、グループ1~3において、食材に係る第1グループに含まれる食材のうちの任意の1つを除外して、相性予測モデルを生成したところ、モッザレラチーズを、食材に係る第1グループから除外した場合、決定係数が、グループ1で0.87、グループ2で0.85、グループ3で0.87と、第2の実施形態よりも決定係数が向上したことが確認された。
【0102】
また、第2の実施の形態において、相性予測モデルが生成されなかったグループ4において、食材に係る第2グループおよび調味料に係る第1グループのうち、食材に係る第2グループのうちの任意の1つを除外して、相性予測モデルを生成したところ、マンゴーを、食材に係る第2グループから除外した場合、グループ4において相性予測モデルを生成することができ、決定係数が0.72となり、第1の実施の形態よりも良好な値になったことが確認された。
【0103】
また、食材に係る第2グループからマンゴーを除外して、グループ5,6についても相性予測モデルを生成したところ、グループ5の決定係数が0.97で、第2の実施の形態と変わらない値となり、グループ6の決定係数が0.88で、第2の実施の形態よりも低い値となった。そのため、グループから食材または調味料を除外後に予測精度が低下するグループの場合、食材または調味料を除外しなくても良い。
【0104】
また、グループから除外した食材については、第1の実施の形態と同様の相性予測モデル、相性予測モデルが生成されている場合、第2の実施の形態と同様の相性予測モデル等を用いて、相性予測値を算出しても良い。また、除外した食材と、全ての調味料との組み合わせで相性予測モデルを生成しても良い。
【0105】
例えば、モッザレラチーズと、全ての調味料との組み合わせで相性予測モデルを制止した場合、決定係数が0.97となることが確認された。また、除外した食材と、調味料の各グループとの組み合わせで相性予測モデルを生成しても良い。
【0106】
以上のように構成された第3の実施の形態では、予測精度を低下させる食材または調味料をグループから除外するので、各グループの相性予測モデルの予測精度を向上させることができる。
【0107】
なお、上記各実施の形態では、指標スコアとして、第1スコア、第2スコアおよび第3スコアを用いていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、第1スコア、第2スコアおよび第3スコアのうちの少なくとも1つを用いて相性予測モデルを生成しても良い。
【0108】
例えば、第2の実施の形態で、各グループにおいて、第1スコアのみ、第2スコアのみ、第3スコアのみ、第1スコアと第2スコア、第1スコアと第3スコア、第2スコアと第3スコア、のそれぞれに基づいた相性予測モデルを生成した場合の決定係数を算出した結果を
図10に示す。なお、グループ5における第2スコアのみ、グループ1における、第3スコアのみ、および、第1スコアと第3スコア、については、相性予測モデルを生成できなかった。
【0109】
図10に示す結果によれば、グループ1については、第2スコアと第3スコアにおける決定係数が0.85で最大となり、グループ2については、第1スコアと第2スコアにおける決定係数が0.87で最大となり、グループ3については、第1スコアと第3スコアにおける決定係数が0.84で最大となった。
【0110】
また、グループ4については、第3スコアのみにおける決定係数が0.73で最大となり、グループ5については、第1スコアと第2スコアにおける決定係数が0.96で最大となり、グループ6については、第1スコアと第2スコアにおける決定係数が0.90で最大となった。
【0111】
これらの結果から、決定係数が最大となる相性予測モデルを選択して、相性予測値を算出するようにしても良い。
【0112】
また、上記各実施の形態では、12種類の食材および17種類の調味料に基づいて相性予測モデルが生成されていたが、本発明はこれに限定されず、食材の種類が12以上であっても良いし、12未満であっても良い。また、調味料の種類が17以上であっても良いし、17未満であっても良い。
【0113】
また、上記各実施の形態では、複数の調味料のそれぞれが異なる種類のものであったが、本発明はこれに限定されず、同一種類の調味料であって、例えばOAVが異なるものを複数含んでいても良い。例えば、醤油において種類の異なるもの(例えば、濃口、淡口、減塩等)が複数の調味料に含まれていても良い。
【0114】
また、上記各実施の形態では、学習装置10が部分的最小二乗法を用いて学習を行っていたが、本発明はこれに限定されず、その他の方法を用いて学習しても良い。
【0115】
また、上記各実施の形態では、相性予測モデルとして、部分的最小二乗法を用いて生成した回帰式を例示したが、本発明はこれに限定されず、ニューラルネットワーク等の、その他のモデルであっても良い。
【0116】
また、上記各実施の形態では、予測装置1が相性予測モデルを記憶した記憶部2を有していたが、本発明はこれに限定されず、例えば、相性予測モデルを記憶した、別の装置(サーバ装置等)に相性予測モデルに入力可能なデータを送信して、相性予測値を受信する構成であっても良い。
【0117】
また、上記各実施の形態では、食材および調味料のフレーバーに関する指標として、OAVを例示したが、本発明はこれに限定されず、味の重要性を示す指標であるTAV(Taste Activity Value)であっても良いし、フレーバーの重要性を示す指標であるCharm ValueやFD Factorであっても良いし、その他の、味または香りに関する指標であっても良い。
【0118】
次に、本実施の形態に係る予測装置1を用いて行った評価実験について説明する。具体的に、本実験では、本実施の形態に係る予測装置1による所定の食材と第1調味料との相性予測値に基づいて、所定の食材と相性が良いフレーバータイプの候補をいくつか選別する。そして、本実験では、その候補となったフレーバータイプの成分を、第1調味料に加えた第2調味料を用いて所定の食材を調理した際に、その調理品を食した人の嗜好性がどのように変化するかについての評価を行った。
【0119】
所定の食材は、例えば、炒飯に用いられる米であり、第1調味料は醤油である。第1調味料は、任意の醤油(例えば、A社の醤油)である。まず、予測装置1を用いて米と醤油との相性予測値を算出する。相性予測値は、上記のような回帰式に基づいて算出される。米と醤油の組み合わせにおける相性予測値は、第1スコア、第2スコアおよび第3スコア、つまり、39個のスコアのそれぞれに所定の係数を乗算したものの和を示す式で表すことができる。
【0120】
39個のスコアのそれぞれに乗算される係数は、39個のスコア毎に設定された値であり、大きな値になるほど、相性予測値に対する影響度が大きくなる値である。各係数のうち、例えば最も大きな係数を有するスコアに関するフレーバータイプを候補として選別する。例えば、最も大きな係数を有するスコアが、Fruitにかかる第2スコア(米および醤油の各OAV変換スコアの差分値の絶対値)であった場合、Fruitがフレーバータイプの候補となる。
【0121】
次に、上記の係数が最も大きくなるスコアのフレーバータイプの成分を添加した醤油(第2調味料)の生成が行われる。また、上記の係数が所定値以上であるスコアのフレーバータイプの成分を全て添加した醤油(第3調味料)の生成が行われる。そして、第2調味料および米で調理した炒飯(第1炒飯)と、第3調味料および米で調理した炒飯(第2炒飯)とがそれぞれ準備される。また、フレーバータイプの成分を添加する前の醤油(第1調味料)および米で調理した炒飯(第3炒飯)が比較対象として準備される。
【0122】
そして、調理された2つの炒飯を、予測装置1における相性予測モデルを生成する際における、予め集計された食材と調味料との相性の評価を行った食品産業関係者により、アンケート調査が行われる。本実験における食品産業関係者は、53人のインド人シェフである。なお、本実験で用いられる予測装置1における相性予測モデルを生成する際に相性の評価を行った食品産業者は、複数人のインド人シェフであるものとし、本実験における食品産業関係者と同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0123】
アンケート調査としては、(1)第1炒飯と第3炒飯とを比較して好きな方を選択すること、(2)第2炒飯と第3炒飯とを比較して好きな方を選択すること、(3)第1炒飯、第2炒飯、第3炒飯のそれぞれにおける好みの程度をスコア化すること、が行われた。
【0124】
図11Aは、(1)のアンケート調査の結果を示す図である。
図11Bは、(2)のアンケート調査の結果を示す図である。
図11Cは、(3)のアンケート調査の結果を示す図である。
【0125】
図11Aに示すように、(1)では、53人のインド人シェフのうち、31人が第3炒飯を選択し、22人が第1炒飯を選択するとの結果となった。また、
図11Bに示すように、(2)では、53人のインド人シェフのうち、18人が第3炒飯を選択し、35人が第2炒飯を選択するとの結果となった。
【0126】
このように、所定の食材と相性が良いと考えられるフレーバータイプの成分を調味料に加えて、調理することで、嗜好性に変化が出ることが確認された。
【0127】
また、
図11Cに示すように、(3)では、第1炒飯、第2炒飯、第3炒飯のうち、第2炒飯(複数のフレーバータイプの成分を添加した第3調味料および米で調理した炒飯)が最も良いスコアが得られた。
図11Cに示すスコアは、-4~4の9段階で、53人のインド人シェフのそれぞれが各炒飯を評価したスコアの平均値である。スコアの値は、値が大きくなるほど、嗜好性が高くなることを示している。
【0128】
また、各炒飯がプラスの値になっていることが確認された。このことから、各炒飯において比較的嗜好性が高くなることを確認することができる。
【0129】
次に、(1)で第1炒飯または第3炒飯を選択したインド人シェフが、(2)で選択した各炒飯の人数の内訳を
図12Aおよび
図12Bに示す。
【0130】
図12Aに示すように、(1)で第3炒飯を選択したインド人シェフの31人中、(2)では、17人が、第2炒飯を選択し、第3炒飯よりも人数が多い結果となった。また、
図12Bに示すように、(1)で第1炒飯を選択したインド人シェフの22人中、(2)では、18人が、第2炒飯を選択し、第3炒飯よりも大幅に人数が多い結果となった。
【0131】
これらのことから、複数種類のフレーバータイプの成分を調味料に添加することで、嗜好性が向上することが確認できる。
【0132】
さらに、
図12Aおよび
図12Bにおける、同一の嗜好性を示したインド人シェフをグループ化して、各グループで選択された炒飯のスコアの集計結果を
図13に示す。
【0133】
図13に示すAグループは、(1)(2)ともに第3炒飯を選択したインド人シェフのグループであり、14人のグループである。
図13に示すBグループは、(1)で第1炒飯、(2)で第2炒飯を選択したインド人シェフのグループであり、18人のグループである。
図13に示すCグループは、(1)で第3炒飯、(2)で第2炒飯を選択したインド人シェフのグループであり、17人のグループである。
図13に示すDグループは、(1)で第1炒飯、(2)で第3炒飯を選択したインド人シェフのグループであり、4人のグループである。
【0134】
図13に示す結果を見ると、各グループで選択された炒飯のスコアが、概ね2を超える値となっていることが確認できる。そのため、相性が良いフレーバータイプの成分を調味料に添加した調味料を用いることで、元々の調味料(第1調味料)での調理品をあまり好まない人にとっての嗜好性を向上させた、調理品を実現することができる。すなわち、本実施の形態における予測装置1を用いることで、調味料に添加するフレーバータイプを抽出し、ひいては特定の国または特定の地域の人の嗜好に合う新たな調味料を生成しやすくすることができる。
【0135】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0136】
2022年9月26日出願の特願2022-152725の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本開示の予測装置は、食事をする人の嗜好を考慮した食材と調味料との相性を予測可能な予測装置、学習装置および学習方法として有用である。
【符号の説明】
【0138】
1 予測装置
2 記憶部
3 入力部
4 処理部
5 出力部
10 学習装置
11 記憶部
12 算出部
13 生成部
【要約】
予測装置は、入力部と、第1指標、および、第2指標に基づく指標スコアと、食材と調味料との相性予測モデルに入力するための指標スコアを抽出する処理部と、処理部により抽出された指標スコアの入力により相性予測モデルから出力された相性スコアを、食材と調味料との相性予測値として出力する出力部と、を備える。