(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
H02P 9/00 20060101AFI20240709BHJP
H02K 55/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H02P9/00 Z
H02K55/00
(21)【出願番号】P 2024518543
(86)(22)【出願日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2023033205
【審査請求日】2024-03-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/液体水素冷却高温超電導発電機の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】324003956
【氏名又は名称】三菱ジェネレーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 英明
(72)【発明者】
【氏名】殿岡 俊
(72)【発明者】
【氏名】北川 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】小畑 慶人
(72)【発明者】
【氏名】大屋 正義
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4739200(US,A)
【文献】国際公開第2023/042742(WO,A1)
【文献】特開2022-114463(JP,A)
【文献】実開昭59-75760(JP,U)
【文献】特開平1-152953(JP,A)
【文献】特開昭59-117457(JP,A)
【文献】特開平9-103065(JP,A)
【文献】特開昭54-150605(JP,A)
【文献】特開2001-197790(JP,A)
【文献】特開2006-177264(JP,A)
【文献】白井康之,塩津正博,液体水素冷却超電導応用エネルギー機器の開発,低温工学,55巻,1号,日本,公益社団法人低温工学・超電導学会,2020年,p.44-45,Fig.1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
H02K 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化水素タンクに貯蔵してある液化水素を用いて発電する発電システムであって、
液化水素が気化した水素ガスを用いることで駆動されるタービンと、
前記タービンによって駆動されて発電する発電機と、
前記液化水素タンクから前記発電機に液化水素を供給する第1配管と、
前記第1配管に設けられ、前記発電機に供給する液化水素の量を調整する第1供給制御装置と、
前記発電機を冷却して気化した水素ガスを前記タービンへ供給する第2配管と、
前記第1供給制御装置と前記タービンとを繋ぐ第3配管と、
前記第3配管の途中に設けられ、前記液化水素タンクから供給される液化水素で気化する気化器と、を備える、発電システム。
【請求項2】
前記第2配管に設けられ、前記タービンに供給する水素ガスの量を調整する第2供給制御装置をさらに備える、請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記第2配管の途中に設けられ、前記タービンに供給する水素ガスを冷媒に用いる熱交換器をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記第1供給制御装置と前記タービンとを繋ぐ第4配管と、
前記第4配管の途中に設けられ、前記液化水素タンクから供給される液化水素で冷却する発電関連設備と、をさらに備える、請求項1
または請求項2に記載の発電システム。
【請求項5】
前記発電関連設備は、フライホイール・バッテリ、超電導電力貯蔵装置、および同期調相機のうち少なくとも一つを含む、請求項
4に記載の発電システム。
【請求項6】
前記発電機の冷却に使用されている液化水素の量を計測する計測器をさらに備え、
前記第1供給制御装置は、前記計測器の計測結果に基づき、前記発電機に供給する液化水素の量を調整する、請求項1
または請求項2に記載の発電システム。
【請求項7】
前記発電機は、回転子と、固定子と、前記回転子を内包するとともに液化水素が供給される容器と、を含み、
前記回転子は、前記タービンと同軸であり、線材を巻回したコイルと、前記コイルを支持する中空の支持材とを含み、
前記容器は、前記第1配管と接続されて液化水素が供給される供給口と、前記回転子を冷却して気化した水素ガスを排気する排気口とを有する、請求項1
または請求項2に記載の発電システム。
【請求項8】
前記発電機は、前記排気口から排気された水素ガスを、前記固定子を通って前記第2配管に供給する排気経路を有する、請求項
7に記載の発電システム。
【請求項9】
前記発電機は、前記容器の液化水素の量を計測する液面計をさらに含む、請求項
8に記載の発電システム。
【請求項10】
前記発電機は、超電導発電機であって、
前記コイルは、超電導線材を巻回した超電導コイルである、請求項
7に記載の発電システム。
【請求項11】
前記コイルを励磁する励磁電源は、保護回路を有する、請求項
10に記載の発電システム。
【請求項12】
前記第1供給制御装置は、前記液化水素タンクから供給される液化水素を加圧する第1加圧装置と、前記発電機に供給する液化水素の量を制御する第1制御バルブと、を含む、請求項1
または請求項2に記載の発電システム。
【請求項13】
前記第2供給制御装置は、前記タービンに供給する水素ガスの量を加圧する第2加圧装置と、前記タービンに供給する水素ガスの量を制御する第2制御バルブと、を含む、請求項2に記載の発電システム。
【請求項14】
空気を圧縮する空気圧縮機と、
前記空気圧縮機で圧縮した空気と、前記液化水素タンクから供給される水素ガスとを燃焼させる燃焼器と、をさらに備え、
前記燃焼器から供給された燃焼ガスで前記タービンを回転させる、請求項1
または請求項2に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素を燃料とした発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルな社会を実現するために、水素を燃料とした発電システムが検討されている。水素を燃料とした発電システムは、たとえば、実用新案登録第3229202号公報(特許文献1)に開示がある。当該文献に開示されている発電システムは、タービンの回転により発電する発電機を有し、タービンが、水素を燃焼させて生じた水蒸気で回転して、発電機で発電する。
【0003】
また、水素を燃料とする場合、輸送コストなどを考慮すると液化した水素(沸点:20K)を用いることが考えられる。そこで、液化水素の冷熱を発電機内部の超電導コイルの冷却に利用しつつ、水素を燃料として発電する発電システムが、非特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】白井康之、塩津正博、「液体水素冷却超電導応用エネルギー機器の開発」、低温工学、2020年、Vol.55、No.1、p.44-52.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、開示されている技術は、単純に燃料である液化水素の冷熱を利用することで発電機内部の超電導コイルを冷却する考えが記載されているだけで、電力品質(周波数、電圧)を低下させない、超電導コイルをクエンチさせない発電システムの構成について具体的な記載がない。そのため、開示されている技術に基づく発電システムは、電力品質の低下や超電導コイルのクエンチが発生する可能性がある。
【0007】
そこで、本開示は、上述した課題を解決するためのものであり、燃料である水素で発電機を冷却しつつ、少なくとも電力品質の低下を招かない発電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る発電システムは、液化水素タンクに貯蔵してある液化水素を用いて発電する発電システムである。発電システムは、タービンと、発電機と、第1配管と、第1供給制御装置と、第2配管と、第3配管と、気化器と、を備える。タービンは、液化水素が気化した水素ガスを用いることで駆動される。発電機は、タービンによって駆動されて発電する。第1配管は、液化水素タンクから発電機に液化水素を供給する。第1供給制御装置は、第1配管に設けられ、発電機に供給する液化水素の量を調整する。第2配管は、発電機を冷却して気化した水素ガスをタービンへ供給する。第3配管は、第1供給制御装置とタービンとを繋ぐ。気化器は、第3配管の途中に設けられ、液化水素タンクから供給される液化水素で気化する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、発電システムは、第1供給制御装置が発電機に供給する液化水素の量を調整するので、燃料である水素で発電機を冷却しつつ、少なくとも電力品質の低下を招くとことなく発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る発電システムの概略図である。
【
図2】空気圧縮機および燃焼器を備える発電システムの一部の概略図である。
【
図3】実施の形態1の変形例に係る発電システムの概略図である。
【
図4】実施の形態2に係る発電システムの概略図である。
【
図5】実施の形態2の変形例に係る発電システムの概略図である。
【
図6】実施の形態3に係る発電システムの概略図である。
【
図7】実施の形態3の変形例に係る発電システムの概略図である。
【
図8】実施の形態4に係る発電システムの概略図である。
【
図9】実施の形態5に係る発電システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示では、液化水素タンクに貯蔵してある液化水素を用いて発電する発電システムの実施例について説明する。以下の実施例では、液化水素を気化させた水素ガスを燃焼させてタービン(ガスタービン)の回転力を得て、発電機を駆動させる水素ガスタービン発電の発電システムについて説明するが、本開示の発電システムは、水素ガスタービン発電に限定されない。本開示の発電システムは、水素ガスをボイラーで燃焼させ、発生した蒸気によりタービン(蒸気タービン)の回転力を得て、発電機を駆動させる汽力発電の発電システムであってもよい。さらに、本開示の発電システムは、同一の回転軸にガスタービンと蒸気タービンとタンデムに接続した発電システムであってもよい。
【0012】
また、本開示では、液化水素を気化させた水素ガスのみを用いて発電する発電システムの実施例について説明するが、本開示の発電システムは、水素ガスのみでなく、水素ガスに他の燃料を加えて燃焼させてタービン(ガスタービン)の回転力を得て、発電機を駆動させる水素ガスタービン発電の発電システムであってもよい。さらに、本開示の発電システムは、水素ガスに他の燃料を加えてボイラーで燃焼させ、発生した蒸気によりタービン(蒸気タービン)の回転力を得て、発電機を駆動させる汽力発電の発電システムであってもよい。
【0013】
以下、実施の形態に係る発電システムついて図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一の構成には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る発電システム100の概略図である。発電システム100は、液化水素タンク11に貯蔵してある液化水素を用いて発電する発電システムである。発電システム100は、ガスタービン1と、発電機2と、第1配管3と、液化水素供給制御装置4(第1供給制御装置)と、第2配管5と、水素ガス供給制御装置6(第2供給制御装置)と、を含む。発電システム100は、液化水素供給制御装置4で発電機2に供給する液化水素の量を調整し、水素ガス供給制御装置6でガスタービン1に供給する水素ガスの量を調整している。しかし、発電システム100は、水素ガス供給制御装置6を設けずに液化水素供給制御装置4のみで、発電機2に供給する液化水素の量を調整し、ガスタービン1に供給する水素ガスの量を調整してもよい。つまり、液化水素供給制御装置4は、発電機2を冷却し、安定して発電できるようにガスタービン1に十分な水素ガスの量が供給されるように発電機2に供給する液化水素の量を調整する。
【0015】
ガスタービン1は、液化水素が気化した水素ガスを用いることで駆動される。具体的に、ガスタービン1は、液化水素を気化させた水素ガスを燃焼させて回転力を得るため、空気と水素ガスとを燃焼させる燃焼器を有している。
図2は、空気圧縮機7および燃焼器8を備える発電システムの一部の概略図である。
図2では、空気を圧縮する空気圧縮機7がガスタービン1と同軸に設けられている。もちろん、空気圧縮機7は、ガスタービン1と同軸に設けられる場合に限定されず、別の駆動装置で駆動されてもよい。空気圧縮機7は、外部から取り入れた空気を圧縮してバルブ7aに送り込む。
【0016】
一方、液化水素が気化した水素ガスは、水素ガス供給制御装置6によりガスタービン1に供給される量が調整される。水素ガス供給制御装置6は、水素ガスを加圧する水素ガス加圧装置61、水素ガス加圧装置61と燃焼器8とを接続する配管に設けられるバルブ62、バルブ62およびバルブ7aの開閉を制御する流量制御装置63を含む。流量制御装置63は、発電機2の発電量、ガスタービン1の回転数、コイル21aの励磁電流量などに基づいて燃焼器8への圧縮空気および加圧水素ガスの供給量をバルブ62およびバルブ7aの開閉で制御する。
【0017】
圧縮空気および加圧水素ガスは、別々に燃焼器8に供給しても、あらかじめ混合して供給してもよい。また、空気圧縮機7を設けて燃焼器8に圧縮空気を供給しているが、自然吸気で燃焼器8に空気を供給してもよい。さらに、水素ガス供給制御装置6は、水素ガス加圧装置61で水素ガスを加圧しているが、加圧せずに燃焼器8に水素ガスを供給してもよい。
【0018】
発電機2は、ガスタービン1によって駆動されて発電する。発電機2は、回転子21と、固定子22と、回転子21を内包する容器23と、を含み、容器23に液化水素が供給されることで内包する回転子21を冷却することができる。容器23は、液化水素で冷却する回転子21を真空層で取り囲み、外部との熱接触を遮断することで低温を維持することができる冷却容器である。容器23は、液化水素タンク11から供給される供給口25と、回転子21を冷却して気化した水素ガスを排気する排気口26とを有する。
【0019】
回転子21は、ガスタービン1と同軸であり、線材を巻回したコイル21aと、コイル21aを支持する中空の支持材21bとを含む。コイル21aは、液体水素温度(約20K)で超電導化する超電導線材を巻回した超電導コイルであることが好ましい。コイル21aが超電導コイルである発電機2は、超電導発電機であり、銅損や鉄損を低減することができる。なお、コイル21aに用いる超電導線材は、液体水素温度で超電導化する材料であり、たとえば二ホウ化マグネシウム(MgB2)、希土類系銅酸化物超伝導体(REBCO)、ビスマス系高温超伝導体(Bi-2223、Bi-2212)などである。コイル21aは、超電導コイルに限定されず通常のコイルであってもよく、通常のコイルであっても冷却することで、多少でも銅損や鉄損を低減することができる。
【0020】
第1配管3は、液化水素タンク11から発電機2に液化水素を供給する配管である。第1配管3は、発電機2の供給口25に接続され、配管の途中に液化水素供給制御装置4が設けられている。液化水素供給制御装置4は、発電機2に供給する液化水素の量を調整する制御装置である。液化水素供給制御装置4は、たとえば、発電機2を冷却して気化して減る液化水素の量を、あらかじめ発電機2の発電量、ガスタービン1の回転数、コイル21aの励磁電流量などから推定できるように設定しておき、発電機2に供給する液化水素の量を調整する。
【0021】
第2配管5は、発電機2を冷却して気化した水素ガスをガスタービン1へ供給する配管である。第2配管5は、発電機2の排気口26に接続され、配管の途中に水素ガス供給制御装置6が設けられている。水素ガス供給制御装置6は、ガスタービン1に供給する水素ガスの量を調整する制御装置である。水素ガス供給制御装置6は、たとえば、ガスタービン1に供給する水素ガスの量を、あらかじめ発電機2の発電量、ガスタービン1の回転数などから推定できるように設定しておき、ガスタービン1に供給する液体ガスの量を調整する。
【0022】
このように、発電システム100は、液化水素供給制御装置4で発電機2に供給する液化水素の量を制御し、水素ガス供給制御装置6でガスタービン1に供給する水素ガスの量を制御することで、発電機2のコイル21aを安定的に冷却しつつ、ガスタービン1の回転数を制御できる。そのため、発電システム100は、電力品質(周波数、電圧)の低下、超電導コイルのクエンチの発生を抑えることができ、安全で高品質な電気を発生させる発電システムを提供できる。
【0023】
(変形例)
発電システム100は、回転子21を冷却して気化した水素ガスを第2配管5からガスタービン1に供給している。回転子21を冷却して気化した水素ガスは室温に比べて低温であり、まだ冷媒として利用することができる。そこで、回転子21を冷却して気化した水素ガスを利用して固定子22をさらに冷却することが考えられる。
図3は、実施の形態1の変形例に係る発電システム100aの概略図である。なお、発電システム100aにおいて、
図1に示す発電システム100と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0024】
発電システム100aは、回転子21を冷却して気化した水素ガスをそのまま第2配管5からガスタービン1に供給するのではなく、
図3に示すように、排気口26から排気された水素ガスを固定子22を通って第2配管5に供給する排気経路5aを設けている。そのため、発電システム100aは、水素ガスで固定子22を冷却することで発電機2の発熱を抑え、安定した発電が可能となる。
【0025】
実施の形態2.
実施の形態1で説明した発電システム100は、液化水素タンク11に貯蔵してある液化水素を、発電機2を経由してガスタービン1に供給する経路のみであった。そこで、実施の形態2に係る発電システムでは、別の経路を設けて液化水素タンク11に貯蔵してある液化水素をガスタービン1に供給する構成について説明する。
【0026】
図4は、実施の形態2に係る発電システム200の概略図である。なお、発電システム200において、
図1に示す発電システム100および
図3に示す発電システム100aと同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。発電システム200は、
図4に示すように、液化水素タンク11に貯蔵してある液化水素をガスタービン1に供給する経路として、第3配管3aを有している。第3配管3aの途中には、気化器10が設けられている。気化器10は、液化水素タンク11から供給される液化水素を水素ガスに気化する装置である。
【0027】
発電システム200は、液化水素タンク11に貯蔵してある液化水素を、発電機2を経由してガスタービン1に供給する経路以外に、第3配管3aを経由する経路を設けることで、ガスタービン1により多くの量の水素ガスを安定して供給することが可能となる。特に、発電システム200は、大型のガスタービン1を採用する場合に有用な構成である。
【0028】
気化器10は、熱交換器の一種であり、液化水素を水素ガスに気化する際の冷熱を利用して、冷却装置として使用することができる。たとえば、気化器10の冷熱を利用して、発電システム200の施設の冷蔵設備に使用してもよい。
【0029】
(変形例)
発電システム200では、ガスタービン1に供給する液化水素の量を増やすことを目的で別の経路として第3配管3aを設けた。しかし、別の経路を設ける目的はガスタービン1に供給する液化水素の量を増やすことに限定されない。たとえば、発電機2以外の発電関連設備を冷却することを目的に別の経路を設けてもよい。
図5は、実施の形態2の変形例に係る発電システム200aの概略図である。なお、発電システム200aにおいて、
図4に示す発電システム200と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0030】
発電システム200aは、
図5に示すように、液化水素タンク11に貯蔵してある液化水素をガスタービン1に供給する経路として、第4配管3bをさらに有している。第4配管3bの途中には、発電関連設備12が設けられている。発電関連設備12は、たとえば、フライホイール・バッテリ、超電導電力貯蔵装置、および同期調相機のうち少なくとも一つを含む。
【0031】
発電システム200aでは、周波数変動を抑制したり、電圧降下を抑制したりすることで、電力品質の安定化に寄与する目的で発電関連設備12を設けている。発電関連設備12においても稼働させることで発熱するため冷却する必要があるので、第4配管3bで液化水素タンク11に貯蔵してある液化水素を供給することで、発電関連設備12を冷却することができる。発電関連設備12を冷却することで気化した水素ガスを、第4配管3bを通してガスタービン1に供給することで、ガスタービン1により多くの量の水素ガスを安定して供給することも可能となる。
【0032】
さらに、発電関連設備12が、液体水素温度で超電導化する材料を用いているのであれば、第4配管3bで液化水素タンク11に貯蔵してある液化水素を供給することで、超電導状態を安定的に維持することができる。
【0033】
発電関連設備12の一例であるフライホイール・バッテリは、電気エネルギーを一時的に回転運動の物理的エネルギーに変換することで保存しておき、電気が必要な時に回転運動から発電によって電気エネルギーを得る蓄電装置である。フライホイール・バッテリは、内蔵するフライホイールの慣性を利用するため、周波数変動および電圧降下を抑制することができ、電力品質の向上に寄与する発電関連設備である。しかし、フライホイール・バッテリは、電気エネルギーを回転運動の物理的エネルギーで保存するため、軸受の機械損による効率低下が課題となる。そこで、フライホイール・バッテリは、液体水素温度で超電導化する材料で磁気軸受部分(具体的に、回転軸に超電導バルク体を内蔵し、軸受に超電導コイルを使用する)し、非接触化とする。これにより、フライホイール・バッテリは、エネルギー損失を低減し、メンテナンスコストの削減することができる。
【0034】
発電関連設備12の一例である超電導電力貯蔵装置(SMES:Superconducting Magnetic Energy Storage)は、超電導線材で作られたコイルに電気エネルギーを貯蔵する装置である。超電導電力貯蔵装置は、コイルに貯蔵されている電気エネルギーを取り出すため、短時間での電力の出し入れが可能で、短時間に大出力が必要な電力系統の安定化、瞬時電圧低下の防止、負荷変動に対応するために有用な発電関連設備である。
【0035】
発電関連設備12の一例である同期調相機は、電力系統の電圧制御、力率改善などの目的で設けられる発電関連設備である。同期調相機は、無負荷同期電動機であり、慣性力を有するため、周波数変動および電圧降下を抑制でき、電力品質の向上に寄与する。同期調相機は、運転中にエネルギー損失が発生するが、回転界磁コイル、電機子を液化水素の冷熱で冷却することで、エネルギー損失を低減することができる。
【0036】
実施の形態3.
実施の形態3に係る発電システムでは、容器内の液化水素の量に基づいて液化水素タンク11から供給する液化水素の量を制御する構成について説明する。
図6は、実施の形態3に係る発電システム300の概略図である。なお、発電システム300において、
図4に示す発電システム200と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0037】
発電システム300は、
図6に示すように、容器23内の液化水素の量を計測する液面計13をさらに備えている。液化水素供給制御装置4は、液面計13の計測結果に基づき、発電機2に供給する液化水素の量を調整する。なお、発電機2の冷却に使用されている液化水素の量を計測することができれば、液面計13でなくてもよく、容器23内の圧力を計測する圧力計、ガスタービン1に供給する水素ガスの流量を計測する流量計など他の計測器であってもよい。また、発電システム300は、液面計13と他の計測器とを併用してもよい。
【0038】
液化水素供給制御装置4は、液化水素を加圧する液化水素加圧装置41、液化水素加圧装置41と気化器10とを接続する配管に設けられるバルブ42、液化水素加圧装置41と発電機2とを接続する配管に設けられるバルブ43、バルブ42およびバルブ43の開閉を制御する流量制御装置44を含む。流量制御装置44は、液面計13の計測結果に基づいて発電機2への液化水素の供給量をバルブ43の開閉で制御する。さらに、流量制御装置44は、発電機2の発電量、ガスタービン1の回転数、コイル21aの励磁電流量などに基づいて気化器10への液化水素の供給量をバルブ42の開閉で制御する。
【0039】
このように、発電システム300は、流量制御装置44およびバルブ43で発電機2への液化水素の供給量を調整するので、発電機2が超電導コイルの場合、クエンチの発生を抑えることができ、安全で高品質な電気を発生させる発電システムを提供できる。また、発電システム300は、流量制御装置44およびバルブ42で気化器10への液化水素の供給量を調整するので、ガスタービン1により多くの量の水素ガスを安定して供給することが可能となる。
【0040】
(変形例)
図7は、実施の形態3の変形例に係る発電システム300aの概略図である。なお、発電システム300aにおいて、
図6に示す発電システム300と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。発電システム300aは、
図7に示すように、水素ガス供給制御装置6でガスタービン1に供給する水素ガスの量を調整する。
【0041】
水素ガス供給制御装置6は、水素ガスを加圧する水素ガス加圧装置61、水素ガス加圧装置61とガスタービン1とを接続する配管に設けられるバルブ62、バルブ62の開閉を制御する流量制御装置63を含む。流量制御装置63は、発電機2の発電量、ガスタービン1の回転数、コイル21aの励磁電流量などに基づいてガスタービン1への加圧水素ガスの供給量をバルブ62の開閉で制御する。なお、発電システム300aでは、燃焼器、空気圧縮機などの構成に図示していないが、
図2で示した構成を同様に有している。
【0042】
このように、発電システム300aは、流量制御装置63およびバルブ62でガスタービン1への水素ガスの供給量を調整するので、水素ガスを安定してガスタービン1に供給することが可能となり、安全で高品質な電気を発生させる発電システムを提供できる。
【0043】
実施の形態4.
実施の形態1で説明した発電システム100は、発電機2からガスタービン1に水素ガスを供給しているが、ガスタービン1に供給される水素ガスは室温に比べて低温であり、まだ冷媒として利用することができる。そこで、当該水素ガスを何らかの冷却に用いることが考えられる。
図8は、実施の形態4に係る発電システム400の概略図である。なお、発電システム400において、
図7に示す発電システム300aと同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0044】
発電システム400は、発電機2を冷却して気化した水素ガスをそのまま第2配管5からガスタービン1に供給するのではなく、
図8に示すように、第2配管5の途中に熱交換器14を設けている。熱交換器14は、第2配管5を通る水素ガスが低温であるので、その冷熱を他の機器を冷却する冷却機として利用することができる。冷却機は、たとえば、ガスタービン1の吸気を冷却したり、発電システム400以外の装置を冷却したりすることができる。
【0045】
実施の形態5.
発電機が超電導発電機である場合に保護回路を追加した発電システムについて説明する。
図9は、実施の形態5に係る発電システム500の概略図である。なお、発電システム500において、
図7に示す発電システム300aと同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0046】
発電機2は、
図9に示すように、回転子21を励磁するために励磁電源15とスリップリング16とを有している。発電機2は、励磁電源15とスリップリング16とを有することで、回転界磁コイルの電流値を可変にすることができ、遅れ無効電力を供給することで、電力系統の安定化に寄与することができる。ただ、回転界磁コイルが超電動コイルである場合、発電機2を液化水素で冷却できなくなりクエンチが発生すると、コイル内部で大きな発熱が生じ、コイルが焼損する。そこで、発電システム500は、発電機2を液化水素で冷却できなくなりクエンチした場合でも、コイル内部で大きな発熱が生じないように励磁電源15に保護回路を設けている。保護回路は、コイル内部で大きな発熱が生じないように電流を遮断する回路である。これにより、発電システム500は、安全で高品質な電気を発生させる発電システムを提供できる。
【0047】
前述の実施の形態および変形例は、組み合わせに制限がない限り、自由に組み合わせることができる。たとえば、実施の形態2の変形例に係る発電システム200aに、実施の形態4の構成、または実施の形態5の構成を組み合わせてもよい。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 ガスタービン、2 発電機、3 第1配管、3a 第3配管、3b 第4配管、4 液化水素供給制御装置、5 第2配管、5a 排気経路、6 水素ガス供給制御装置、7 空気圧縮機、7a,42,43,62 バルブ、8 燃焼器、10 気化器、11 液化水素タンク、12 発電関連設備、13 液面計、14 熱交換器、15 励磁電源、16 スリップリング、21 回転子、21a コイル、21b 支持材、22 固定子、23 容器、25 供給口、26 排気口、41 液化水素加圧装置、44,63 流量制御装置、61 水素ガス加圧装置、100,100a,200,200a,300,300a,400,500 発電システム。
【要約】
本開示は、燃料である水素で発電機を冷却しつつ、少なくとも電力品質の低下を招かない発電システムを提供する。発電システム(100)は、液化水素タンク(11)に貯蔵してある液化水素を用いて発電する発電システムである。発電システム(100)は、タービン(1)と、発電機(2)と、第1配管(3)と、液化水素供給制御装置(4)と、第2配管(5)と、を備える。タービン(1)は、液化水素が気化した水素ガスを用いることで駆動される。発電機(2)は、タービン(1)によって駆動されて発電する。第1配管(3)は、液化水素タンク(11)から発電機(2)に液化水素を供給する。液化水素供給制御装置(4)は、第1配管(3)に設けられ、発電機(2)に供給する液化水素の量を調整する。第2配管(5)は、発電機(2)を冷却して気化した水素ガスをタービン(1)へ供給する。