(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】走査測定方法及び走査測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20240709BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G01B11/24 D
G02B21/00
(21)【出願番号】P 2020018881
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2023-01-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(72)【発明者】
【氏名】王 肖南
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207481(JP,A)
【文献】特開2016-051167(JP,A)
【文献】特開2012-026998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G02B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査方向に沿って走査される撮影装置により連続して撮影された測定面の複数の撮影画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップで取得された前記複数の撮影画像の画素ごとの輝度値に基づき、前記複数の撮影画像の同一座標の画素ごとに、前記走査方向におけるコントラスト値の変化を演算するコントラスト値演算ステップと、
前記コントラスト値演算ステップの演算結果に基づき、前記同一座標の画素ごとに、前記走査方向における前記同一座標の画素間の1又は複数の補間コントラスト値を演算するコントラスト補間ステップと、
前記同一座標の画素ごとの前記コントラスト値及び前記同一座標の画素間の前記補間コントラスト値に基づき
前記同一座標の画素ごとに前記走査方向におけるコントラスト分布を生成して、前記同一座標の画素ごとの前記コントラスト分布に基づき、前記同一座標の画素ごとに前記測定面に対する前記撮影装置の焦点位置を決定する焦点位置決定ステップと、
を有する走査測定方法。
【請求項2】
前記画像取得ステップは、前記撮影装置が前記走査方向に沿って一定のピッチで移動されるごとに前記測定面を撮影した前記撮影画像を、前記撮影装置から取得する請求項1
に記載の走査測定方法。
【請求項3】
走査方向に沿って走査される撮影装置により連続して撮影された測定面の複数の撮影画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した前記複数の撮影画像の画素ごとの輝度値に基づき、前記複数の撮影画像の同一座標の画素ごとに、前記走査方向におけるコントラスト値の変化を演算するコントラスト値演算部と、
前記コントラスト値演算部の演算結果に基づき、前記同一座標の画素ごとに、前記走査方向における前記同一座標の画素間の1又は複数の補間コントラスト値を演算するコントラスト補間部と、
前記同一座標の画素ごとの前記コントラスト値及び前記同一座標の画素間の前記補間コントラスト値に基づき
前記同一座標の画素ごとに前記走査方向におけるコントラスト分布を生成して、前記同一座標の画素ごとの前記コントラスト分布に基づき、前記同一座標の画素ごとに前記測定面に対する前記撮影装置の焦点位置を決定する焦点位置決定部と、
を備える走査測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の3次元形状を測定する走査測定方法及び走査測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォーカスバリエーション(Focus Variation:FV)方式の顕微鏡、共焦点方式の顕微鏡、白色干渉顕微鏡、及びオートフォーカス(Auto Focus:AF)装置等の走査測定装置を用いて、測定対象物の測定面の3次元形状(全焦点画像及び表面形状等)を測定する走査測定方法が知られている(特許文献1から3参照)。このような走査測定方法では、カメラ付きの顕微鏡を走査方向に沿って走査しながら一定のピッチごとにカメラにより測定面を撮影し、ピッチごとの撮影画像に基づき各撮影画像の画素ごとに合焦度(顕微鏡の焦点位置)を演算或いは画素ごとに高さ情報を演算することで、測定面の3次元形状を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-99213号公報
【文献】特開2015-84056号公報
【文献】特開2016-90520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図19は、FV方式の顕微鏡の撮影のピッチと撮影画像の合焦度との関係を示したグラフである。なお、
図19の横軸は顕微鏡の走査時の走査距離であり且つ縦軸はある画素の合焦度である。
【0005】
図19に示すように、公知の標本化定理からも明らかなように顕微鏡の撮影のピッチを小さくすれば、合焦度のピーク位置から顕微鏡の焦点位置を測定できるが、合焦度のピーク位置は撮影のピッチが大きくなると、撮影のピッチを小さくした場合と比較して半値幅が大きくなり、サンプル点数が少ないため、ピーク検出の分解能と精度も悪くなってしまう。一方、撮影のピッチを小さくすると測定面の3次元形状の測定時間が増加するので、この測定時間を短縮させるためには顕微鏡の走査速度(ピッチ×フレームレート)を速くする必要がある。このため、3次元形状の分解能よく正確な測定と高速測定とを両立させるためには、高速撮影(高フレームレート)に対応した高性能なカメラを使用する必要があり、コストが増加してしまう。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、測定面の3次元形状の分解能よく正確な測定と高速測定とを低コストで両立可能な走査測定方法及び走査測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するための走査測定方法は、走査方向に沿って走査される撮影装置により連続して撮影された測定面の複数の撮影画像を取得する画像取得ステップと、画像取得ステップで取得された複数の撮影画像の画素ごとの輝度値に基づき、複数の撮影画像における同一座標の画素ごとに、走査方向における同一座標の画素間の1又は複数の補間輝度値を演算する輝度補間ステップと、同一座標の画素ごとの輝度値及び同一座標の画素間の補間輝度値に基づき、測定面の3次元形状を演算する3次元形状演算ステップと、を有する。
【0008】
この走査測定方法によれば、高性能な撮影装置を用いて撮影装置の撮影のピッチを狭くすることなく、測定面の3次元形状を分解能よく正確且つ高速測定することができる。
【0009】
本発明の他の態様に係る走査測定方法において、3次元形状演算ステップが、同一座標の画素ごとの輝度値及び同一座標の画素間の補間輝度値に基づき、同一座標の画素ごとに、走査方向におけるコントラスト値の変化を演算するコントラスト値演算ステップと、コントラスト値演算ステップの演算結果に基づき、同一座標の画素ごとに測定面に対する撮影装置の焦点位置を決定する焦点位置決定ステップと、を有する。これにより、測定面の3次元形状の正確な測定と高速測定とを低コストで両立することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る走査測定方法において、撮影装置が白色干渉計に設けられており、且つ複数の撮影画像が、測定面で反射された測定光と白色干渉計の反射体で反射された参照光との干渉光を撮影装置で撮像して得られた干渉縞のある画像である場合において、3次元形状演算ステップでは、同一座標の画素ごとに測定面の高さ情報を演算する。これにより、測定面の3次元形状の正確な測定と高速測定とを低コストで両立することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る走査測定方法において、走査方向に沿って走査される撮影装置により連続して撮影された測定面の複数の撮影画像を取得する画像取得ステップと、画像取得ステップで取得された複数の撮影画像の画素ごとの輝度値に基づき、複数の撮影画像の同一座標の画素ごとに、走査方向におけるコントラスト値の変化を演算するコントラスト値演算ステップと、コントラスト値演算ステップの演算結果に基づき、同一座標の画素ごとに、走査方向における同一座標の画素間の1又は複数の補間コントラスト値を演算するコントラスト補間ステップと、同一座標の画素ごとのコントラスト値及び同一座標の画素間の補間コントラスト値に基づき、同一座標の画素ごとに測定面に対する撮影装置の焦点位置を決定する焦点位置決定ステップと、を有する。
【0012】
この走査測定方法によれば、高性能な撮影装置を用いて撮影装置の撮影のピッチを狭くすることなく、測定面の3次元形状を正確且つ高速測定することができる。また、輝度補間を行う場合と比較して、測定面の3次元形状の測定に要する計算量を減らすことができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る走査測定方法において、画像取得ステップは、撮影装置が走査方向に沿って一定のピッチで移動されるごとに測定面を撮影した撮影画像を、撮影装置から取得する。
【0014】
本発明の目的を達成するための走査測定装置は、走査方向に沿って走査される撮影装置により連続して撮影された測定面の複数の撮影画像を取得する画像取得部と、画像取得部が取得した複数の撮影画像の画素ごとの輝度値に基づき、複数の撮影画像における同一座標の画素ごとに、走査方向における同一座標の画素間の1又は複数の補間輝度値を演算する輝度補間部と、同一座標の画素ごとの輝度値及び同一座標の画素間の補間輝度値に基づき、測定面の3次元形状を演算する3次元形状演算部と、を備える。
【0015】
本発明の目的を達成するための走査測定装置は、走査方向に沿って走査される撮影装置により連続して撮影された測定面の複数の撮影画像を取得する画像取得部と、画像取得部が取得した複数の撮影画像の画素ごとの輝度値に基づき、複数の撮影画像の同一座標の画素ごとに、走査方向におけるコントラスト値の変化を演算するコントラスト値演算部と、コントラスト値演算部の演算結果に基づき、同一座標の画素ごとに、走査方向における同一座標の画素間の1又は複数の補間コントラスト値を演算するコントラスト補間部と、同一座標の画素ごとのコントラスト値及び同一座標の画素間の補間コントラスト値に基づき、同一座標の画素ごとに測定面に対する撮影装置の焦点位置を決定する焦点位置決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、測定面の3次元形状の正確な測定と高速測定とを低コストで両立可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の走査測定装置の概略図である。
【
図2】走査制御部及び撮影制御部の機能を説明するための説明図である。
【
図3】信号処理部による1つの撮影画像の画素ごとのコントラスト値の演算方法の一例を説明するための説明図である。
【
図4】撮影画像の各画素のコントラスト値及び合焦度の演算を説明するための説明図である。
【
図5】カメラによりピッチごとに撮影された複数の撮影画像における任意の同一座標の画素の輝度値、コントラスト値、及び合焦度を示したグラフである。
【
図6】輝度補間部による輝度補間処理を説明するための説明図である。
【
図7】複数の撮影画像の任意の同一座標の画素において、ピッチを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行った場合(本実施例1)と、カメラによる撮影のピッチを小さくした場合(比較例1)と、におけるZ方向の輝度分布を比較したグラフである。
【
図8】任意の補間画像のXY方向に沿った画素の輝度分布(本実施例1)と、この補間画像に対応するZ方向位置でカメラにより撮影された撮影画像のXY方向に沿った画素の輝度分布(比較例1)と、を比較したグラフである。
【
図9】複数の撮影画像の任意の同一座標の画素において、ピッチを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行った場合(本実施例1)と、ピッチを小さくした場合(比較例1)と、ピッチを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行わなかった場合(比較例2)と、における合焦度の変化を比較したグラフである。
【
図10】ピッチを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行った場合(本実施例1)と、ピッチを小さくした場合(比較例1)と、ピッチを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行わなかった場合(比較例2)と、における焦点位置の変化を比較したグラフである。
【
図11】第1実施形態の走査測定装置による測定面の走査測定方法、すなわち3次元形状の測定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】第2実施形態の走査測定装置の概略図である。
【
図13】ピッチを大きくした状態で且つコントラスト補間処理を行った場合(本実施例2)と、ピッチを小さくした場合(比較例1)と、におけるコントラスト値を比較したグラフである。
【
図14】ピッチを大きくした状態で且つコントラスト補間処理を行った場合(本実施例2)と、ピッチを小さくした場合(比較例1)と、における合焦度を比較したグラフである。
【
図15】ピッチを大きくした状態で且つコントラスト補間処理を行った場合(本実施例1)と、ピッチを小さくした場合(比較例1)と、ピッチを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行わなかった場合(比較例2)と、における焦点位置の変化を比較したグラフである。
【
図16】第2実施形態の走査測定装置による測定面の走査測定方法、すなわち3次元形状の測定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図17】第3実施形態の走査測定装置の概略図である。
【
図18】第4実施形態の走査測定装置の概略図である。
【
図19】FV方式の顕微鏡の撮影のピッチと撮影画像の合焦度との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の走査測定装置10の概略図である。なお、図中のXY方向は水平方向であり且つZ方向は上下方向(高さ方向)である。
【0019】
図1に示すように、走査測定装置10は、測定対象物Wの測定面Waの3次元形状(表面形状)の測定、例えば測定面Waの各位置の全てに焦点の合った全焦点画像の生成を行う。この走査測定装置10は、FV方式の顕微鏡20とコントローラ30とを備える。なお、本実施形態では、測定面Waに対して外部から照明光ELが照射される。
【0020】
顕微鏡20は、本発明の撮影装置に相当するものであり、顕微鏡本体20aと、対物レンズ21と、結像レンズ22と、カメラ23と、走査アクチュエータ24と、を備える。
【0021】
顕微鏡本体20aには、Z方向下方側からZ方向上方側に向かって対物レンズ21、結像レンズ22、及びカメラ23が一列に設けられている。また、顕微鏡本体20aは、走査アクチュエータ24により走査方向であるZ方向に移動自在に支持されている。
【0022】
対物レンズ21は、測定面Waに対向する位置に配置されており、測定面Waにて反射された照明光ELの反射光である信号光SL(測定光ともいう)を透過して結像レンズ22に向けて出射する。結像レンズ22は、対物レンズ21から入射した信号光SLをカメラ23に結像させる。
【0023】
カメラ23(検出器ともいう)は、公知の各種撮像素子或いは各種フォトディテクタを備えている。このカメラ23は、コントローラ30の制御の下、結像レンズ22により結像された信号光SLを撮像して、測定面Waの撮影画像25(画像データ)をコントローラ30に向けて出射する。
【0024】
走査アクチュエータ24は、公知のリニアモータ或いはモータ駆動機構により構成されており、顕微鏡本体20aを走査方向であるZ方向に移動自在に保持している。この走査アクチュエータ24は、コントローラ30の制御の下、顕微鏡本体20aをZ方向に沿って走査させる。なお、本明細書における顕微鏡本体20aの走査には、走査アクチュエータ24により顕微鏡本体20aをZ方向に移動させるだけでなく、不図示の移動機構により測定対象物WをZ方向に移動させることで測定対象物Wに対して顕微鏡本体20aを相対的にZ方向に移動させる場合も含む。
【0025】
コントローラ30は、顕微鏡本体20aの走査とカメラ23による信号光SLの撮像(測定面Waの撮影)とを制御すると共に、カメラ23から入力される複数の撮影画像25に基づき測定面Waの3次元形状を演算する。このコントローラ30は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、コントローラ30の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0026】
コントローラ30は、不図示の記憶部に記憶されている不図示の制御プログラムを実行することで、走査制御部31、撮影制御部32、画像取得部33、及び信号処理部34として機能する。なお、コントローラ30の「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい(後述の
図18のコントローラ30Aも同様)。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0027】
図2は、走査制御部31及び撮影制御部32の機能を説明するための説明図である。
図2及び既述の
図1に示すように、走査制御部31は、走査アクチュエータ24を駆動して、顕微鏡本体20aをZ方向に走査させる。
【0028】
撮影制御部32は、走査アクチュエータ24により顕微鏡本体20aがZ方向に走査される間、顕微鏡本体20aがZ方向に沿って一定のピッチPだけ移動するごとに、カメラ23による信号光SLの撮像(測定面Waの撮影)と、カメラ23からコントローラ30(画像取得部33)への撮影画像25の出力と、を繰り返し実行させる。これにより、顕微鏡本体20aがZ方向に走査される間、カメラ23による測定面Waの撮影が連続して行われると共に、カメラ23から画像取得部33への撮影画像25の出力が連続して行われる。なお、顕微鏡本体20aがピッチPだけ移動するごとに顕微鏡本体20aを停止させて撮影を行ってもよいし、或いは顕微鏡本体20aを停止させることなく撮影を行ってもよい。
【0029】
画像取得部33は、カメラ23に有線接続又は無線接続された公知の画像入力インターフェースとして機能する。この画像取得部33は、走査アクチュエータ24により顕微鏡本体20aがZ方向に走査される間、カメラ23から複数の撮影画像25を取得し、これら複数の撮影画像25を信号処理部34へ出力する。
【0030】
信号処理部34は、画像取得部33から入力される複数の撮影画像25に基づき、測定面Waの3次元形状を演算する。最初に一般的な測定面Waの3次元形状の演算方法について説明を行う。
【0031】
図3は、信号処理部34による1つの撮影画像25の画素ごとのコントラスト値(コントラスト評価値、AF評価値ともいう)の演算方法の一例を説明するための説明図である。なお、
図3の符号3Aは測定面Waに合焦しているカメラ23により撮影された撮影画像25を示し、符号3Bは測定面Waに合焦してないカメラ23により撮影された撮影画像25を示し、符号3Cは符号3A,3Bの撮影画像25の注目画素Gごとのコントラスト値の演算結果を示したグラフである。
【0032】
図3に示すように、信号処理部34(後述のコントラスト値演算部37)は、1つの撮影画像25の任意の画素を注目画素Gとして選択する。そして、信号処理部34は、この注目画素Gを中心とする任意の評価範囲AR(例えば5×5の範囲)内の各画素の輝度値の輝度差を演算、例えば本実施形態では各輝度値の標準偏差を演算したり或いは公知のフィルタ処理(例えば特開2017-224923号公報)を実行したりすることで、注目画素Gのコントラスト値を演算する。
【0033】
コントラスト値は、撮影画像25の合焦度(合焦度合)を示す評価値である。カメラ23が測定面Waに対して合焦している場合には、測定面Waのエッジ部分が撮影画像25にはっきりと写るためコントラスト値が大きくなる(符号σ1参照)。また逆にカメラ23が測定面Waに対して合焦していない場合には、撮影画像25において測定面Waのエッジ部分がボケるためコントラスト値は小さくなる(符号σ2参照)。なお、コントラス値から合焦度を演算する方法は公知技術であるので具体的な説明は省略する。
【0034】
図4は、撮影画像25の各画素のコントラスト値及び合焦度の演算を説明するための説明図である。なお、
図4の符号4Aは撮影画像25の任意のX方向に沿った各画素の輝度値であり、符号4BはX方向に沿った各画素のコントラスト値及び合焦度の演算結果である。
図4に示すように、信号処理部34は、撮影画像25の各画素の画素値に基づき、画素ごとにコントラスト値及び合焦度の演算を繰り返し実行する。以下同様に信号処理部34は、全ての撮影画像25についてその画素ごとにコントラスト値及び合焦度の演算を行う。
【0035】
図5は、カメラ23によりピッチPごとに撮影された複数の撮影画像25における任意の同一座標の画素の輝度値、コントラスト値、及び合焦度を示したグラフである。なお、複数の撮影画像25における同一座標の画素とは、カメラ23の撮像素子等の画素が同一であることを示す。
【0036】
図5に示すように、信号処理部34は、複数の撮影画像25における同一座標の画素(以下、単に「同一座標の画素」と略す)ごとの合焦度の変化(分布)に基づき、同一座標の画素ごとに測定面Waに対する顕微鏡20の焦点位置を決定する。これにより、測定面Waの3次元形状を示す全焦点画像が得られる。なお、「同一座標の画素ごと」とは「全焦点画像の画素ごと」に対応する。
【0037】
ここで、既述の通り、合焦度(コントラスト値)の分布から顕微鏡20の焦点位置を正確に測定するためにはピッチPを小さくする必要があるが、ピッチPを小さくすると測定時間(走査時間)が増加する。一方、コストの観点から顕微鏡20に採用可能なカメラ23の種類(性能)にも制限があるので顕微鏡本体20aの走査速度の増加にも制限が生じる。そこで、本実施形態では、測定面Waの3次元形状の分解能よく正確な測定と高速測定とを低コストに両立可能な機能を信号処理部34に持たせている。
【0038】
図1に戻って、信号処理部34は、輝度補間部36、コントラスト値演算部37、及び焦点位置決定部38として機能する。なお、コントラスト値演算部37及び焦点位置決定部38は、本発明の3次元形状演算部として機能する。
【0039】
図6は、輝度補間部36による輝度補間処理を説明するための説明図である。
図6及び既述の
図1に示すように、輝度補間部36は、画像取得部33から入力される複数の撮影画像25に基づき、同一座標の画素ごとに、同一座標の画素間の1又は複数の補間輝度値を輝度補間処理により演算する。換言すると輝度補間部36は、個々の撮影画像25間を補間する補間画像25aを生成する。なお、Z方向における同一座標の画素間(Z方向において互いに隣接する画素間)の補間輝度値の演算方法(補間画像25aの生成方法)としては、例えば公知の線形補間方法等が用いられる。
【0040】
コントラスト値演算部37は、同一座標の画素ごとの輝度値及び同一座標の画素間の補間輝度値に基づき、既述の
図3で説明したコントラスト値の演算方法を用いて、各撮影画像25の画素ごと及び各補間画像25aの画素ごとにコントラスト値を演算する。これにより、コントラスト値演算部37によって、同一座標の画素ごとにZ方向におけるコントラスト値の変化(コントラスト分布)が演算される。
【0041】
焦点位置決定部38は、コントラスト値演算部37による演算結果(同一座標の画素ごとのZ方向におけるコントラスト値の変化)に基づき、公知の手法で同一座標の画素ごとのZ方向における合焦度の変化(合焦度分布)を演算する。そして、焦点位置決定部38は、同一座標の画素ごとのZ方向における合焦度の変化に基づき、同一座標の画素ごとに測定面Waに対する顕微鏡20の焦点位置を決定する。これにより、測定面Waの3次元形状が得られる。
【0042】
次に、ピッチPを大きくした状態(小さくしない状態)で且つ輝度補間処理を行った場合と、ピッチPを小さくした場合とにおける輝度値、合焦度(コントラスト値)、及び焦点位置の比較を行う。
【0043】
図7は、複数の撮影画像25の任意の同一座標の画素において、ピッチPを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行った場合(本実施例1)と、カメラ23による撮影のピッチPを小さくした場合(比較例1)と、におけるZ方向の輝度分布を比較したグラフである。
【0044】
図8は、任意の補間画像25aのXY方向に沿った画素の輝度分布(本実施例1)と、この補間画像25aに対応するZ方向位置でカメラ23により撮影された撮影画像25のXY方向に沿った画素の輝度分布(比較例1)と、を比較したグラフである。具体的には、
図8の符号8Aは、本実施例1のX方向に沿った輝度分布と、比較例1のX方向に沿った画素の輝度分布とを比較したグラフである。また、
図8の符号8Bは、本実施例1のY方向に沿った輝度分布と、比較例1のY方向に沿った画素の輝度分布とを比較したグラフである。
【0045】
図9は、複数の撮影画像25の任意の同一座標の画素において、ピッチPを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行った場合(本実施例1)と、ピッチPを小さくした場合(比較例1)と、ピッチPを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行わなかった場合(比較例2)と、における合焦度の変化を比較したグラフである。なお、本実施例1では、ピッチPを6μmに設定し且つ輝度補間処理を1μm間隔で行っている。また、比較例1ではピッチPを1μmに設定し、比較例2ではピッチPを6μmに設定している。
【0046】
図7から
図9に示すように、輝度補間部36による輝度補間処理を実行することで、ピッチPを小さくした場合と同等の精度及び分解能で、輝度値と合焦度(コントラスト値も同様)とを測定することができる。このため、顕微鏡本体20aの走査時間を短縮することができる。例えば
図9に示したように、本実施例1(ピッチP=6μm)では比較例1(ピッチP=1μm)と比較して走査時間を1/6に短縮することができる。その結果、測定面Waの3次元形状の高速測定が可能となる。
【0047】
図10は、ピッチPを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行った場合(本実施例1)と、ピッチPを小さくした場合(比較例1)と、ピッチPを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行わなかった場合(比較例2)と、における焦点位置の変化を比較したグラフである。ここで
図10の符号10Aは、本実施例1、比較例1、及び比較例2でそれぞれ求められる測定面Waの任意の測定ラインに沿った焦点位置の変化を示したグラフである。
図10の符号10Bは、比較例2及び比較例1の焦点位置の変化の差分ΔF1と、本実施例1及び比較例1の焦点位置の変化の差分ΔF2と、を示したグラフである。
【0048】
図10に示すように、ピッチPを大きくした状態においても輝度補間部36による輝度補間処理を実行することで、比較例2と比較して、比較例1により近い精度の焦点位置の測定結果が得られる。その結果、本実施例1では、比較例1と同等の精度及び分解能で焦点位置の測定を行うことができる。
【0049】
[第1実施形態の作用]
図11は、上記構成の第1実施形態の走査測定装置10による測定面Waの走査測定方法、すなわち3次元形状の測定処理の流れを示すフローチャートである。
図11に示すように、走査測定装置10に測定対象物Wがセットされた後、オペレータが不図示の操作部にて測定開始操作を入力すると、コントローラ30の走査制御部31が走査アクチュエータ24を駆動して、顕微鏡本体20aのZ方向の走査を開始させる(ステップS1)。
【0050】
顕微鏡本体20aのZ方向の走査が開始されると、或いは顕微鏡本体20aが所定の撮影開始位置まで移動されると、撮影制御部32がカメラ23による信号光SLの撮像を実行させる。これにより、カメラ23による測定面Waの撮影及び撮影画像25の出力と、画像取得部33による撮影画像25の取得と、が実行される(ステップS2、本発明の画像取得ステップに相当)。
【0051】
次いで、走査アクチュエータ24により顕微鏡本体20aがピッチPだけZ方向に移動されると(ステップS3でNO、ステップS4)、カメラ23による測定面Waの撮影及び撮影画像25の出力が再び実行される(ステップS2)。以下、顕微鏡本体20aがピッチPだけ移動されるごとに、カメラ23による測定面Waの撮影及び撮影画像25の出力が繰り返し実行される。また、画像取得部33は、カメラ23から新たな撮影画像25を取得するごとに、この新たな撮影画像25を信号処理部34へ逐次出力する。
【0052】
顕微鏡本体20aの走査が終了すると(ステップS3でYES)、信号処理部34が、輝度補間部36、コントラスト値演算部37、及び焦点位置決定部38として機能する。最初に輝度補間部36が、既述の
図6から
図8に示したように、画像取得部33から入力された複数の撮影画像25に基づき輝度補間処理を実行する(ステップS5、本発明の輝度補間ステップに相当)。これにより、複数の撮影画像25の同一座標の画素ごとに、同一座標の画素間の1又は複数の補間輝度値が求められる。
【0053】
輝度補間処理が完了すると、コントラスト値演算部37が、同一座標の画素ごとの輝度値及び同一座標の画素間の補間輝度値に基づき、各撮影画像25の画素ごと及び各補間画像25aの画素ごとにコントラスト値を演算する(ステップS6、本発明のコントラスト値演算ステップに相当)。これにより、同一座標の画素ごとにZ方向におけるコントラスト値の変化が求められる。
【0054】
コントラスト値の演算が完了すると、焦点位置決定部38が、コントラスト値演算部37による演算結果に基づき、各撮影画像25の画素ごと及び各補間画像25aの画素ごとに合焦度を演算する(ステップS7)。これにより、既述の
図9に示したように、同一座標の画素ごとにZ方向における合焦度の変化が求められる。次いで、焦点位置決定部38が、同一座標の画素ごとのZ方向における合焦度の変化に基づき、同一座標の画素ごとに合焦度のピーク位置を検出することで、既述の
図10に示したように同一座標の画素ごとに測定面Waに対する顕微鏡20の焦点位置を決定する(ステップS8、本発明の焦点位置決定ステップに相当)。これにより、測定面Waの3次元形状が得られる。なお、ステップS6からステップS8は、本発明の3次元形状演算ステップに相当する。
【0055】
[第1実施形態の効果]
以上のように第1実施形態の走査測定装置10では、複数の撮影画像25に基づき輝度補間処理を実行することで、ピッチPを小さくすることなく、ピッチPを小さくした場合と同等の精度及び分解能で同一座標の画素ごとの焦点位置を決定、すなわち測定面Waの3次元形状を測定することができる。また、ピッチPを小さくする必要がなくなるので、走査時間を短くすることができ、さらに高速撮影に対応した高性能なカメラ23を使用する必要がなくなる。その結果、測定面Waの3次元形状の分解能よく正確な測定と高速測定とを低コストで両立することができる。
【0056】
[第2実施形態]
図12は、第2実施形態の走査測定装置10の概略図である。上記第1実施形態の走査測定装置10では信号処理部34にて輝度補間処理を実行しているが、第2実施形態の走査測定装置10では、輝度補間処理の代わりに後述のコントラスト補間処理を行う。
【0057】
図12に示すように、第2実施形態の走査測定装置10は、コントローラ30の信号処理部34が、コントラスト値演算部37a、コントラスト補間部37b、及び焦点位置決定部38として機能する点を除けば、第1実施形態の走査測定装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0058】
コントラスト値演算部37aは、画像取得部33から入力される複数の撮影画像25に基づき、既述の
図3で説明したコントラスト値の演算方法を用いて、各撮影画像25の画素ごとのコントラスト値を演算する。これにより、コントラスト値演算部37aによって、同一座標の画素ごとにZ方向におけるコントラスト値の変化(コントラスト分布)が演算される(
図4及び
図5参照)。
【0059】
コントラスト補間部37bは、コントラスト値演算部37aによる各撮影画像25の画素ごとのコントラスト値の演算結果に基づき、同一座標の画素ごとに、Z方向における同一座標の画素間の1又は複数の補間コントラスト値を演算するコントラスト補間処理を実行する。なお、Z方向における同一座標の画素間の補間コントラスト値の演算方法としては、例えば公知の線形補間方法等が用いられる。これにより、同一座標の画素ごとに、比較例1(ピッチPを小さくした場合)と同等の分解能でZ方向におけるコントラスト値の変化が求められる。
【0060】
第2実施形態の焦点位置決定部38は、コントラスト値演算部37の演算結果(同一座標の画素ごとのコントラスト値)と、コントラスト補間部37bの演算結果(Z方向における同一座標の画素間の補間コントラスト値)と、に基づき、公知の手法で同一座標の画素ごとのZ方向における合焦度の変化(合焦度分布)を演算する。そして、焦点位置決定部38は、上記第1実施形態と同様に、同一座標の画素ごとに測定面Waに対する顕微鏡20の焦点位置を決定する。これにより、測定面Waの3次元形状が得られる。
【0061】
次に、ピッチPを大きくした状態で且つコントラスト補間処理を行った場合と、ピッチPを小さくした場合とにおけるコントラスト値、合焦度、及び焦点位置の比較を行う。
【0062】
図13は、ピッチPを大きくした状態で且つコントラスト補間処理を行った場合(本実施例2)と、ピッチPを小さくした場合(比較例1)と、におけるコントラスト値を比較したグラフである。具体的には、
図13の符号13Aは、本実施例2(コントラスト補間処理で求められた補間コントラスト値)のY方向のコントラスト分布と、比較例1(撮影画像25から求められた実際のコントラスト値)のY方向のコントラスト分布と、を比較したグラフである。
図13の符号13Bは、本実施例2のX方向のコントラスト分布と、比較例1のX方向のコントラスト分布と、を比較したグラフである。
図13の符号13Cは、複数の撮影画像25の任意の同一座標の画素において、本実施例2と比較例1とにおけるZ方向のコントラスト分布を比較したグラフである。
【0063】
図14は、ピッチPを大きくした状態で且つコントラスト補間処理を行った場合(本実施例2)と、ピッチPを小さくした場合(比較例1)と、における合焦度を比較したグラフである。具体的には、
図14の符号14Aは、本実施例2及び比較例1のY方向の合焦度分布を示したグラフである。
図14の符号14Bは、本実施例2及び比較例1のX方向の合焦度分布を示したグラフである。
図14の符号14Cは、複数の撮影画像25の任意の同一座標の画素において、本実施例2と比較例1とにおけるZ方向の合焦度分布を比較したグラフである。
【0064】
図13及び
図14に示すように、コントラスト補間部37bによるコントラスト補間処理を実行することで、ピッチPを小さくした場合と同等の精度及び分解能で、コントラスト値と合焦度とを測定することができる。このため、上記第1実施形態と同様に走査時間を短縮させることができるので、測定面Waの3次元形状の高速測定が可能となる。
【0065】
図15は、ピッチPを大きくした状態で且つコントラスト補間処理を行った場合(本実施例1)と、ピッチPを小さくした場合(比較例1)と、ピッチPを大きくした状態で且つ輝度補間処理を行わなかった場合(比較例2)と、における焦点位置の変化を比較したグラフである。ここで
図15の符号15Aは、本実施例1、比較例1、及び比較例2でそれぞれ求められる測定面Waの任意の測定ラインに沿った焦点位置の変化を示したグラフである。
図15の符号15Bは、比較例2及び比較例1の焦点位置の変化の差分ΔF1と、本実施例1及び比較例1の焦点位置の変化の差分ΔF2と、を示したグラフである。
【0066】
図15に示すように、ピッチPを大きくした状態においてもコントラスト補間部37bによるコントラスト補間処理を実行することで、比較例2と比較して、比較例1により近い精度で焦点位置の測定結果が得られる。その結果、上記第1実施形態と同様に、比較例1と同等の精度及び分解能で焦点位置の測定を行うことができる。
【0067】
[第2実施形態の作用]
図16は、上記構成の第2実施形態の走査測定装置10による測定面Waの走査測定方法、すなわち3次元形状の測定処理の流れを示すフローチャートである。
図16に示すように、ステップS1からステップS4までは既述の
図11に示した第1実施形態と基本的に同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0068】
顕微鏡本体20aの走査が終了すると(ステップS3でYES)、信号処理部34が、コントラスト値演算部37a、コントラスト補間部37b、及び焦点位置決定部38として機能する。最初にコントラスト値演算部37aが、既述の
図3及び
図4に示したように、画像取得部33から入力された複数の撮影画像25に基づき各撮影画像25の画素ごとのコントラスト値を演算する(ステップS5A、本発明のコントラスト値演算ステップに相当)。
これにより、同一座標の画素ごとにZ方向におけるコントラスト値の変化(コントラスト分布)が演算される。
【0069】
コントラスト値の演算が完了すると、コントラスト補間部37bが、既述の
図13に示したように、各撮影画像25の画素ごとのコントラスト値に基づき、コントラスト補間処理を実行する(ステップS6A、本発明のコントラスト補間ステップに相当)。これにより、複数の撮影画像25の同一座標の画素ごとに、Z方向における同一座標の画素間の1又は複数の補間コントラスト値が求められる。
【0070】
以下第1実施形態と同様に、焦点位置決定部38が合焦度の演算(ステップS7)及び焦点位置の決定(ステップS8、本発明の焦点位置決定ステップに相当)を実行する(
図14及び
図15参照)。これにより、測定面Waの3次元形状が得られる。
【0071】
[第2実施形態の効果]
以上のように第2実施形態の走査測定装置10においても、各撮影画像25の画素ごとのコントラスト値の演算後にコントラスト補間処理を実行することで、ピッチPを小さくすることなく、ピッチPを小さくした場合と同等の精度及び分解能で同一座標の画素ごとの焦点位置を決定、すなわち測定面Waの3次元形状を測定することができる。その結果、第1実施形態と同様に、測定面Waの3次元形状の分解能よく正確な測定と高速測定とを低コストで両立することができる。
【0072】
さらに第2実施形態では、輝度補間処理に代えてコントラスト補間処理を行うことで、測定面Waの3次元形状の測定に要する計算量を減らすことができる。以下、その理由について説明する。
【0073】
第1実施形態の輝度補間処理及び第2実施形態のコントラスト補間処理は、共に線形補間処理等を行うので計算量はほぼ同じである。また、第1実施形態及び第2実施形態において合焦度の演算及び焦点位置の決定に要する計算量もほぼ同じ計算量となる。このため、測定面Waの3次元形状の測定では、既述の
図3に示したような各撮影画像25の画素ごとのコントラスト値の計算が占める割合が非常に高くなる。
【0074】
例えば、フィルタ処理を行う場合の1画素当たりのコントラスト値の計算量αは、本実施形態では評価範囲ARが5×5(
図3参照)であるので、「計算量α≒(評価範囲AR)
2=(5×5)
2」である。そして、1つの撮影画像25当たりのコントラスト値の計算量βは、撮影画像25の解像度(総画素数)をmとした場合に「計算量β=α×m」である。従って、全ての撮影画像25の画素ごとのコントラスト値の計算量γは、撮影画像25の総数をnとした場合に「計算量γ=β×n」である。このように測定面Waの3次元形状の測定においては、コントラスト値の演算対象の撮影画像25の総数nが増加するほど計算量γも増加する。
【0075】
上記第1実施形態では輝度補間処理を行って補間画像25aを生成するため、補間画像25aの分だけ第1実施形態の撮影画像25(補間画像25aを含む)の総数nは、第2実施形態の撮影画像25の総数nよりも大きくなる。換言すると第2実施形態では、輝度補間処理に代えてコントラスト補間処理を行うことで、コントラスト値の演算対象の撮影画像25の総数nを第1実施形態よりも減らすことができる。その結果、第2実施形態では、測定面Waの3次元形状の測定に要する計算量を第1実施形態よりも減らすことができる。
【0076】
[第3実施形態]
図17は、第3実施形態の走査測定装置10の概略図である。上記各実施形態では、外部から照明光ELが照射されている測定面Waを顕微鏡20のカメラ23で撮影しているが、
図17に示すように、第3実施形態の走査測定装置10は測定面Waの照明用の光源27を備えている。
【0077】
第3実施形態の走査測定装置10は、顕微鏡本体20aの鏡筒26に光源27及びハーフミラー28が設けられている点を除けば、上記各実施形態の走査測定装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0078】
鏡筒26は、Z方向に平行に配置されており、そのZ方向下端部には対物レンズ21が設けられ、且つそのZ方向上端部には結像レンズ22及びカメラ23が設けられている。また、鏡筒26の内部にはハーフミラー28が設けられている。さらに鏡筒26の外周面上においてハーフミラー28に対向する位置には光源27が設けられている。
【0079】
光源27は、ハーフミラー28に向けて照明光ELを出射する。光源27のオンオフは、本実施形態ではコントローラ30により制御されるが、オペレータの手動操作でオンオフできるようにしてもよい。
【0080】
ハーフミラー28は、光源27から出射された照明光ELの一部を対物レンズ21に向けて反射する。これにより、対物レンズ21を通して照明光ELが測定面Waに照射され、さらに測定面Waにて反射された信号光SLが対物レンズ21、ハーフミラー28、及び結像レンズ22を通してカメラ23に入射する。
【0081】
以下、上記各実施形態と同様に、顕微鏡本体20aの走査、カメラ23による測定面Waの撮影(信号光SLの撮像)、及びコントローラ30による測定面Waの3次元形状の測定が実行される。
【0082】
[第4実施形態]
図18は、第4実施形態の走査測定装置10の概略図である。上記各実施形態ではFV方式の顕微鏡20及びコントローラ30を備える走査測定装置10を例に挙げて説明したが、第4実施形態の走査測定装置10は白色干渉顕微鏡20Aとコントローラ30Aとを備える。なお、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0083】
白色干渉顕微鏡20Aは、本発明の白色干渉計に相当するものであり、参照鏡29を備える点を除けば第3実施形態の顕微鏡20と基本的に同じ構成である。参照鏡29は、本発明の反射体に相当するものであり、鏡筒26の側面であって且つハーフミラー28を基準として光源27が設けられている側とは反対側の位置に設けられている。
【0084】
第4実施形態のハーフミラー28(ビームスプリッタともいう)は、光源27から入射した照明光EL(白色光)を測定光MLと参照光RLとに分割し、測定光MLを対物レンズ21に向けて反射すると共に参照光RLを透過して参照鏡29に向けて出射する。これにより、対物レンズ21を通して測定光MLが測定面Waに照射され且つ測定面Waにて反射された測定光MLが対物レンズ21を通してハーフミラー28に入射する。また、参照鏡29にて反射された参照光RLがハーフミラー28に入射する。
【0085】
ハーフミラー28は、対物レンズ21及び参照鏡29から入射した測定光ML及び参照光RLの各々の一部を透過して結像レンズ22に向けて出射する。これにより、測定光ML及び参照光RLの干渉光ILが結像レンズ22を通してカメラ23に入射する。
【0086】
第4実施形態のカメラ23は、結像レンズ22を通して干渉光ILを撮像して、干渉縞のある画像25Iをコントローラ30Aへ出力する。
【0087】
第4実施形態のコントローラ30Aは、不図示の記憶部に記憶されている不図示の制御プログラムを実行することで、上記各実施形態と同様に走査制御部31、撮影制御部32、及び画像取得部33として機能する他に、信号処理部34Aとして機能する。
【0088】
走査制御部31及び撮影制御部32により、走査アクチュエータ24による顕微鏡本体20aのZ方向の走査と、カメラ23によるピッチPごとの干渉光ILの撮像及び干渉縞のある画像25Iの出力と、が実行される。そして、画像取得部33が、カメラ23から複数の干渉縞のある画像25Iを取得し、これら複数の干渉縞のある画像25Iを信号処理部34Aへ出力する。
【0089】
信号処理部34Aは、画像取得部33から入力される複数の干渉縞のある画像25Iに基づき、測定面Waの3次元形状を演算する。この信号処理部34Aは、輝度補間部36及び高さ情報決定部39として機能する。
【0090】
輝度補間部36は、上記第1実施形態と同様に、画像取得部33から入力される複数の干渉縞のある画像25Iに基づき、その同一座標の画素ごとに、同一座標の画素間の1又は複数の補間輝度値を輝度補間処理により演算することで、個々の干渉縞のある画像25I間を補間する補間画像25aを生成する。
【0091】
高さ情報決定部39は、複数の干渉縞のある画像25I(輝度値)及び補間画像25a(補間輝度値)に基づき、同一座標の画素ごとに測定面Waの高さ情報を演算する。なお、各干渉縞のある画像25I等を用いた高さ情報の演算については公知技術(例えば特開2017-106860号公報参照)であるので、ここでは具体的な説明は省略する。これにより、測定面Waの全焦点画像、すなわち3次元形状が得られる。
【0092】
以上のように、第4実施形態の走査測定装置10においても複数の干渉縞のある画像25Iに基づき輝度補間処理を実行することで、ピッチPを小さくすることなく、ピッチPを小さくした場合と同等の精度及び分解能で同一座標の画素ごとの高さ情報を決定、すなわち測定面Waの3次元形状を測定することができる。その結果、上記各実施形態と同様に、測定面Waの3次元形状の正確な測定と高速測定とを低コストで両立することができる。
【0093】
[その他]
上記第1実施形態では、同一座標の画素ごとの輝度値及び補間輝度値に基づき、同一座標の画素ごとのコントラスト値、合焦度、及び焦点位置を順番に求めているが、同一座標の画素ごとの焦点位置(測定面Waの全焦点画像等の3次元形状)を求める方法は特に限定はされず、公知の演算方法を用いて同一座標の画素ごとの焦点位置を決定してもよい。
【0094】
上記各実施形態では、FV式の顕微鏡20或いは白色干渉顕微鏡20Aを備える走査測定装置10による測定面Waの3次元形状の測定について説明したが、例えば共焦点方式顕微鏡及びAF装置等の3次元形状測定用の撮影装置を走査する各種の走査測定装置及び走査測定方法に本発明を適用可能である。
【0095】
上記各実施形態の走査測定装置10は、顕微鏡20又は白色干渉顕微鏡20Aとコントローラ30,30Aとを備えているが、コントローラ30,30Aのみで構成されていてもよい。この場合には、コントローラ30,30Aは、顕微鏡20又は白色干渉顕微鏡20Aにて撮影された撮影画像25或いは干渉縞のある画像25Iを、各種通信ネットワーク或いは記録媒体を介して取得する。
【符号の説明】
【0096】
10 走査測定装置
20 顕微鏡
20A 白色干渉顕微鏡
20a 顕微鏡本体
21 対物レンズ
22 結像レンズ
23 カメラ
24 走査アクチュエータ
25 撮影画像
25I 干渉縞のある画像
25a 補間画像
26 鏡筒
27 光源
28 ハーフミラー
29 参照鏡
30,30A コントローラ
31 走査制御部
32 撮影制御部
33 画像取得部
34 信号処理部
34A 信号処理部
36 輝度補間部
37 コントラスト値演算部
37a コントラスト値演算部
37b コントラスト補間部
38 焦点位置決定部
39 高さ情報決定部
AR 評価範囲
EL 照明光
G 注目画素
IL 干渉光
ML 測定光
RL 参照光
SL 信号光
W 測定対象物
Wa 測定面