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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/38 20100101AFI20240709BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L33/38
H01L33/60
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023067759
(22)【出願日】2023-04-18
(62)【分割の表示】P 2021040802の分割
【原出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2023093610
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】三▲崎▼ 貴生
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0044116(US,A1)
【文献】中国実用新案第203503689(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0151780(US,A1)
【文献】特開2006-012916(JP,A)
【文献】特開2020-021785(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110085715(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0084591(KR,A)
【文献】中国実用新案第210897328(CN,U)
【文献】特開2020-107819(JP,A)
【文献】特開2016-127113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0311415(US,A1)
【文献】特開2014-022608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/38
H01L 33/40
H01L 33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と、前記第1部分の内側に位置する第2部分と、を有し、第1辺と、前記第1辺と接続された第2辺と、前記第2辺と接続された第3辺と、前記第1辺と前記第3辺とに接続された第4辺とを含む上面視形状が四角形である第1導電型の第1半導体層と、前記第2部分上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた活性層と、を含む半導体積層体であって、前記第1部分は、上面視において、前記第2部分の外周に位置する外周部と、前記第1辺、前記第2辺、前記第3辺、及び前記第4辺のそれぞれに対向し、前記外周部から前記第2部分に延出した複数の延出部と、を含む前記半導体積層体と、
前記半導体積層体を覆う絶縁層であって、前記複数の延出部上それぞれに位置する第1貫通孔と、前記第2半導体層上に位置する第2貫通孔と、を有する前記絶縁層と、
前記絶縁層を介して前記第2半導体層の上方に設けられ、複数の前記第1貫通孔にて第1半導体層と電気的に接続された第1電極と、
前記第2貫通孔にて前記第2半導体層と電気的に接続された第2電極と、
前記第2半導体層上に位置する前記第1電極上に設けられ、前記第1電極と電気的に接続された第1外部接続部と、
前記第2電極上に設けられ、前記第2電極と電気的に接続された第2外部接続部と、を有し、
上面視において、前記第2半導体層は、前記第1辺と直交し前記第1辺を2等分する第1仮想線と、前記第2辺と直交し前記第2辺を2等分する第2仮想線とにより区画された4つの領域を含み、
前記4つの領域は、前記第1外部接続部が配置された第1領域と、前記第2辺に平行な第1方向において、前記第1領域に隣り合う第2領域と、前記第1辺に平行な第2方向において、前記第1領域に隣り合う第3領域と、前記第2方向において、前記第2領域に隣り合い、前記第2外部接続部が配置された第4領域と、を含み、
前記第1電極は、前記複数の延出部上それぞれに位置する前記第1貫通孔にて前記第1半導体層と電気的に接続されると共に、前記第1半導体層の中心部と電気的に接続されており、
上面視において、前記第1外部接続部のすべては、前記第1領域内に設けられ、
上面視において、前記第2外部接続部のすべては、前記第4領域内に設けられ、
上面視において、前記第1外部接続部の外縁は、前記第2辺に平行な第1外縁部と、前記第3辺に平行な第2外縁部と、前記第1外縁部と前記第2外縁部を繋ぐ直線状の第3外縁部と、を有し、
上面視において、前記第2外部接続部の外縁は、前記第4辺に平行な第4外縁部と、前記第1辺に平行な第5外縁部と、前記第4外縁部と前記第5外縁部を繋ぐ直線状の第6外縁部と、を有し、
前記第3外縁部は前記第6外縁部に平行であり、
前記第1外部接続部と前記第2外部接続部との最短距離は、前記第3外縁部と前記第6外縁部との間の距離であり、
上面視において、前記最短距離は、前記第1半導体層の前記第1辺の長さの30%以上60%以下である発光素子。
【請求項2】
前記第1方向において、前記第1外部接続部と前記第2外部接続部とは重ならない請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第2半導体層の上面に光反射性電極が設けられ、
前記第2電極は、前記光反射性電極に電気的に接続されている請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項4】
上面視において、前記複数の延出部は、前記第1仮想線上、又は第2仮想線上に位置している請求項1から3のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1半導体層の一辺の長さは、100μm以上500μm以下である請求項1から4のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項6】
上面視において、前記第1外部接続部は、前記第2辺に対向する前記延出部と、前記第3辺に対向する前記延出部と、の間に位置し、
上面視において、前記第2外部接続部は、前記第4辺に対向する前記延出部と、前記第1辺に対向する前記延出部と、の間に位置する請求項1から5のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項7】
上面視において、前記第1貫通孔は前記第1外部接続部から離れており、
上面視において、前記第2貫通孔は前記第2外部接続部と重なっている請求項1から6のいずれか一項に記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、n側半導体層の上に設けられたp側半導体層上に、p側半導体層を被覆し開口を有する絶縁膜を設け、n側電極を絶縁膜の開口内に設けてn側半導体層と導通させている発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-22608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような発光素子において、発光分布を改善することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る発光素子は、第1部分と、前記第1部分の内側に位置する第2部分と、を有し、第1辺と、前記第1辺と接続された第2辺と、前記第2辺と接続された第3辺と、前記第1辺と前記第3辺とに接続された第4辺とを含む上面視形状が四角形である第1導電型の第1半導体層と、前記第2部分上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた活性層と、を含む半導体積層体であって、前記第1部分は、上面視において、前記第2領域の外周に位置する外周部と、前記第1辺、前記第2辺、前記第3辺、及び前記第4辺のそれぞれに対向し、前記外周部から前記第2部分に延出した複数の延出部と、を含む前記半導体積層体と、前記半導体積層体を覆う絶縁層であって、前記複数の延出部上それぞれに位置する第1貫通孔と、前記第2半導体層上に位置する第2貫通孔と、を有する前記絶縁層と、前記絶縁層を介して前記第2半導体層の上方に設けられ、複数の前記第1貫通孔にて第1半導体層と電気的に接続された第1電極と、前記第2貫通孔にて前記第2半導体層と電気的に接続された第2電極と、前記第2半導体層上に位置する前記第1電極上に設けられ、前記第1電極と電気的に接続された第1外部接続部と、前記第2電極上に設けられ、前記第2電極と電気的に接続された第2外部接続部と、を有し、上面視において、前記第2半導体層は、前記第1辺と直交し前記第1辺を2等分する第1仮想線と、前記第2辺と直交し前記第2辺を2等分する第2仮想線とにより区画された4つの領域を含み、前記4つの領域は、前記第1外部接続部が配置された第1領域と、前記第2辺に平行な第1方向において、前記第1領域に隣り合う第2領域と、前記第1辺に平行な第2方向において、前記第1領域に隣り合う第3領域と、前記第2方向において、前記第2領域に隣り合い、前記第2外部接続部が配置された第4領域と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態に係る発光素子によれば、発光分布が改善された発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る発光素子を示す模式上面図である。
図2A図1のIIA-IIA線における模式断面図である。
図2B図1のIIB-IIB線における模式断面図である。
図2C】本発明の一実施形態に係る発光素子を示す模式上面図である。
図2D図2Cの一部を拡大した模式上面図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る発光素子を用いた発光装置を示す模式斜視図である。
図3B】本発明の一実施形態に係る発光素子を用いた発光装置を示す模式斜視図である。
図4図3BのIV-IV線における模式断面図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る発光素子を用いた発光装置を示す模式斜視図である。
図5B】本発明の一実施形態に係る発光素子を用いた発光装置を示す模式斜視図である。
図6図5BのVI-VI線における模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る発光素子の実施形態について説明する。
なお、以下の説明において参照する図面は、本発明を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、上面図、断面図の間において、各部材のスケールや間隔が一致しない場合もある。また、以下の説明では、同一の名称及び符号については原則として同一又は同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略することとする。
【0009】
本明細書において、「上」、「下」などは、説明のために参照する図面において構成要素間の相対的な位置を示すものであって、特に断らない限り絶対的な位置を示すことを意図したものではない。
【0010】
図1図2A図2B、及び図2Cを参照して、発光素子10Aの構成について説明する。図1は、発光素子10Aの構成の詳細を説明するための模式上面図である。図2Aに示す断面図は、図1に示す上面図のIIA-IIA線における断面を模式的に示したものである。図2Bに示す断面図は、図1に示す上面図のIIB-IIB線における断面を模式的に示したものである。図2Cは、発光素子10Aの構成の詳細を説明するための模式上面図である。図2Dは、図2Cの一部を拡大した部分拡大図である。
【0011】
発光素子10Aの各部の構成について図1、及び図2A図2Dを参照しながら順次説明する。
【0012】
発光素子10Aは、第1半導体層12nと、第2半導体層12pと、第1半導体層12nと第2半導体層との間に設けられた活性層12aとを含む半導体積層体12と、絶縁層15と、第1電極13と、第2電極16と、第1外部接続部17nと、第2外部接続部17pを備えている。半導体積層体12は、基板11上に設けられている。第2半導体層12p上の一部には、光反射性電極14が設けられている。第1電極13上には、第1外部接続部17nが設けられている。第2電極16上には、第2外部接続部17pが設けられている。第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pを介して、発光素子10Aの第1電極13及び第2電極16間に電流が供給される。そして、第1電極13及び第2電極16間に電流が供給されると、発光素子10Aの活性層12aが発光する。発光素子10Aの活性層12aが発光した光は、半導体積層体12内を伝播して、主に基板11の下面又は側面から外部に取り出される。
【0013】
[基板11]
基板11は、半導体をエピタキシャル成長させることができる基板材料であればよい。基板11には、例えば、サファイアや窒化ガリウム等の材料からなる基板を用いる。本実施形態においては、発光素子10Aの光取り出し効率を向上させる観点から透光性を有するサファイア基板を用いることが好ましい。基板11の上面視形状は、例えば、矩形等の四角形状である。本実施形態において、基板11の上面視形状は、正方形状である。基板11の一辺の長さは、例えば、100μm以上1500μm以下であり、好ましくは100μm以上500μm以下である。
【0014】
[半導体積層体12]
半導体積層体12は、基板11の上に積層された積層体であって、基板11側から、第1導電型の第1半導体層12nと、活性層12aと、第2導電型の第2半導体層12pとを、この順に備えている。本実施形態において、第1導電型はn型であり、第2導電型はp型である。第1半導体層12n、活性層12a及び第2半導体層12pは、InXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)等の半導体が好適に用いられる。また、これらの半導体層は、それぞれ単層構造でもよく、組成及び膜厚等の異なる複数の層の積層構造、超格子構造等であってもよい。特に、活性層12aは、量子効果が生ずる薄膜を積層した単一量子井戸又は多重量子井戸構造であることが好ましい。半導体層にはSi、Ge等のn型不純物及び/又はMg、Zn等のp型不純物をドープすることができる。第1半導体層12nは、例えば、n型不純物がドープされた半導体層を含む。第2半導体層12pは、例えば、p型不純物がドープされた半導体層を含む。
【0015】
図1及び図2Cに示すように、第1半導体層12nは、上面視において、第1部分12naと、第1部分12naの内側に位置する第2部分12nbとを有する。第1部分12naは、活性層12a及び第2半導体層12pが設けられておらず、活性層12a及び第2半導体層12pから第1半導体層12nが露出している。第2部分12nbに、第2半導体層12pが設けられる。第2部分12nbと第2半導体層12pの間には、活性層12aが設けられる。第2部分12nb上に活性層12aが設けられ、活性層12a上に第2半導体層12pが設けられる。
【0016】
第1半導体層12nの上面視形状は、例えば、矩形等の四角形状である。本実施形態において、第1半導体層12nの上面視形状は、正方形状である。図1に示すように、第1半導体層12nは、第1辺121と、第1辺121と接続された第2辺122と、第2辺122と接続された第3辺123と、第1辺121と第3辺123とに接続された第4辺124とを含む。第1半導体層12nの一辺の長さは、例えば、100μm以上500μm以下である。ここで、第2辺122及び第4辺124に平行な方向を第1方向D1とし、第1辺121及び第3辺123に平行な方向を第2方向D2とする。
【0017】
図1図2C、及び図2Dに示すように、第1部分12naは、上面視において、第2部分12nbの外周に位置する外周部21と、第1辺121、第2辺122、第3辺123、及び第4辺124のそれぞれに対向し、外周部21から第2部分12nbに延出した複数の延出部22と、を含む。本実施形態において、第1辺121、第2辺122、第3辺123、及び第4辺124の各辺それぞれに対向する1つの延出部22が設けられている。第1辺121、第2辺122、第3辺123、及び第4辺124の各辺それぞれに複数の延出部22を設けてもよい。図2Cに示すように、上面視において、複数の延出部22は、第1辺121と直交し第1辺121を2等分する第1仮想線V1上、又は第2辺122と直交し第2辺122を2等分する第2仮想線V2上にそれぞれ位置している。これにより、発光素子10Aにおける電流密度分布のばらつきを抑制し、発光分布を改善することができる。図2Dにおいて、左上がりのハッチングを付した領域が外周部21であり、右上がりのハッチングを付した領域が延出部22である。上面視において、第1貫通孔15nは延出部22内に位置している。なお、延出部22は、第1仮想線V1上又は第2仮想線V2上に位置していなくてもよい。
【0018】
第1仮想線V1上における外周部21の長さは、例えば、15μm以上25μm以下である。第1仮想線V1上における延出部22の長さは、例えば、10μm以上20μm以下である。第1方向D1における延出部22の最大長さは、例えば、35μm以上70μm以下である。
【0019】
[光反射性電極14]
光反射性電極14は、図2A及び図2Bに示すように、第2半導体層12pの上面に設けられる。光反射性電極14は、第2半導体層12pと電気的に接続される。
【0020】
光反射性電極14は、第2電極16を介して供給される電流を、第2半導体層12pに拡散することができる。また、光反射性電極14は、活性層12aからの光に対して高い光反射性を有することが好ましい。光反射性電極14は、活性層12aからの光に対して、例えば、70%以上、好ましくは80%以上の反射率を有することが好ましい。光反射性電極14は、良好な導電性と光反射性とを有する金属材料を用いることができる。光反射性電極14には、金属材料として、例えばAg、Al、Ni、Ti、Pt、Ta、Ru又はこれらの金属を主成分とする合金を好適に用いることができる。また、光反射性電極14は、これらの金属材料を単層で、又は積層したものを用いることができる。光反射性電極14の厚さは、例えば、300nm以上1μm以下とすることができる。
【0021】
[絶縁層15]
図1図2A、及び図2Bに示すように、絶縁層15は、半導体積層体12を覆って設けられている。絶縁層15は、半導体積層体12の表面と光反射性電極14の表面を覆っている。絶縁層15は、光反射性電極14と第1電極13との間に設けられ、光反射性電極14と第1電極13とが電気的に接続されることを抑制する機能を有する。絶縁層15は、複数の延出部22上それぞれに位置する第1貫通孔15nと、第2半導体層12p上に位置する第2貫通孔15pと、を有する。第1電極13は、それぞれの第1貫通孔15nにて、それぞれの延出部22と電気的に接続される。第2電極16は、第2貫通孔15pにて、第2半導体層12pと電気的に接続される。
【0022】
絶縁層15としては、金属酸化物や金属窒化物を用いることができる。絶縁層15には、例えば、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の材料を含む酸化物又は窒化物を好適に用いることができる。絶縁層15には、例えば、SiO2やSiNなどを用いる。また、絶縁層15は、これらの金属酸化物や金属窒化物を単層で、又は積層したものが利用できる。絶縁層15として、屈折率の異なる2種以上の誘電体層を用いて積層し、DBR(Distributed Bragg Reflector)膜を構成するようにしてもよい。
【0023】
第1貫通孔15nの大きさは、延出部22の大きさに合わせて適宜設定することができる。第1貫通孔15nの上面視での形状が、例えば円形の場合、第1貫通孔15nの直径は、例えば、上述した第1仮想線V1における延出部22の長さの60%以上80%以下とすることができる。第1貫通孔15nの直径は、例えば、5μm以上20μm以下とすることができる。第1貫通孔15nの直径を小さくすることにより、延出部22の大きさを小さくし活性層12a等を部分的に除去する領域を小さくできるため、発光領域の減少を低減させることができる。第1貫通孔15nの直径を大きくすることにより、第1電極13と第1半導体層12nとの接触面積を増加させることができるので順方向電圧Vfの上昇を抑制することができる。
【0024】
[第1電極13、第2電極16]
図1図2A図2Cに示すように、第1電極13は、絶縁層15を介して第2半導体層12pの上方に設けられている。第1電極13は、光反射性電極14上に設けられた絶縁層15上と、第1部分12na上に設けられた絶縁層15上とに設けられる。本実施形態において、第1電極13は、延出部22のみで第1半導体層12nと電気的に接続されている。つまり、第1電極13は、第1半導体層12nの第2部分12nbとは電気的に接続されていない。これにより、活性層12aの面積を広く確保できるとともに、活性層12aの上面視形状を略矩形状とすることできるので発光分布を改善することができる。なお、第1電極13は、発光分布を悪化させない程度に第2部分12nbと電気的に接続されていてもよい。例えば、第1電極13は、第1半導体層12nの中心部と電気的に接続されていてもよい。
【0025】
第2電極16は、第2貫通孔15pに設けられ、光反射性電極14と電気的に接続されている。第2電極16は、光反射性電極14を介して第2半導体層12pと導通している。第2電極16は、上面視において、第1電極13に囲まれている。第2電極16は、上面視において、第1電極13と重ならないように設けられている。
【0026】
第1電極13及び第2電極16としては、金属材料を用いることができ、例えば、Ag、Al、Ni、Rh、Au、Cu、Ti、Pt、Pd、Mo、Cr、Wなどの単体金属又はこれらの金属を主成分とする合金などを好適に用いることができる。なお、合金を用いる場合は、例えば、AlSiCu合金のように、組成元素としてSiなどの非金属元素を含有するものであってもよい。また、第1電極13及び第2電極16は、これらの金属材料を単層で、又は積層したものを利用することができる。本実施形態において、第1電極13及び第2電極16は同じ金属材料を用いた積層構造である。
【0027】
[第1外部接続部17n,第2外部接続部17p]
第1外部接続部17nは、図1図2A、及び図2Bに示すように、第2半導体層12p上に位置する第1電極13上に設けられ、第1電極13と電気的に接続されている。第2外部接続部17pは、図1図2A、及び図2Bに示すように、第2電極16上に設けられ、第2電極16と電気的に接続されている。
【0028】
図2Cに示すように、上面視において、第2半導体層12pは、第1仮想線V1と、第2仮想線V2とにより区画された4つの領域を含んでいる。4つの領域は、第1領域30aと、第2領域30bと、第3領域30cと、第4領域30dとを含む。これら4つの各領域は、上面視において、第2半導体層12pの外縁と、第1仮想線V1及び第2仮想線V2とにより囲まれた領域である。第1領域30aは、第1外部接続部17nが配置された領域である。第2領域30bは、第1方向D1において、第1領域30aに隣り合っている。第3領域30cは、第2方向D2において、第1領域30aに隣り合っている。第4領域30dは、第2方向D2において、第2領域30bに隣り合い、第2外部接続部17pが配置された領域である。第4領域30dは、第1方向D1において、第3領域30cに隣り合っている。
【0029】
第1方向D1において、第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとは重ならないように配置されている。また、第2方向D2において、第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとは重ならないように配置されている。第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pは、第1半導体層12nの対角線上に位置している。このように第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pを配置することで、第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとの間の距離を、例えば、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pを第1方向D1に対向して配置する場合よりも長くできる。その結果、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pを配線が設けられた基板に接合する際、導電性の異なる2つの配線に跨って第1外部接続部17n又は第2外部接続部17pが設けられることを抑制することができる。また、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pを半田などの導電性部材を用いて配線に接合する際、導電性部材によって第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pが電気的に接続されることを抑制できる。上面視において、第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとの間の最短距離は、例えば、第1半導体層12nの一辺の30%以上60%以下とすることが好ましく、40%以上50%以下とすることがより好ましい。第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとの間の最短距離は、例えば、120μm以上250μm以下である。
【0030】
上面視において、第1外部接続部17nの90%以上は、第1領域30a内に設けられている。上面視において、第2外部接続部17pの90%以上は、第4領域30d内に設けられている。これにより、これにより、第1外部接続部17n又は第2外部接続部17pの一部が第2領域30b及び/又は第3領域30cに設けられた場合でも、第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとが部分的に近くなることを抑制することができる。上面視において、第1外部接続部17nのすべては、第1領域30a内に設けられている。上面視において、第2外部接続部17pのすべては、第4領域30d内に設けられている。これにより、第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとの間の最短距離をより短く設計することが容易になる。
【0031】
第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの上面視形状は、略三角形状である。本実施形態において、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの上面視形状は、角部が丸まった三角形である。第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pと配線との接合性や位置精度を向上させる観点から、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの大きさを略同じとすることが好ましい。第1外部接続部17nの大きさは、例えば、第1領域30aの30%以上70%以下とすることが好ましく、30%以上50%以下とすることがより好ましい。第2外部接続部17pの大きさは、例えば、第4領域30dの30%以上70%以下とすることが好ましく、30%以上50%以下とすることがより好ましい。第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pをより大きく形成することで、配線が設けられた基板との接合面積を増加させることができる。
【0032】
上面視において、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pは直線部を含む。第1外部接続部17nの直線部は、第2外部接続部17pの直線部と略平行である。第1外部接続部17nの直線部と第2外部接続部17pの直線部との間の距離が、第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとの間の最短距離に相当する。第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pは直線部の長さは、例えば、第1半導体層12nの1辺の長さの20%以上40%以下とすることができる。第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pがこのような直線部を有することで、第1外部接続部17nの直線部と第2外部接続部17pの直線部との間の距離が同じ領域を配置することできる。そのため、第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとが部分的に近くなる部分がなくなり、基板に接合する際に第1外部接続部17nと第2外部接続部17pが電気的に接続されることを抑制できる。
【0033】
第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの材料としては、Cu、Au、Niなどの金属を好適に用いることができる。また、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pは、これらの金属材料を単層で、又は積層したものを利用することができる。第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの厚さは、例えば、30μm以上70μm以下とすることできる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る発光素子10Aは、第1半導体層12nの各辺それぞれに設けられた延出部22と電気的に接続された第1電極13を有する。そして、第1外部接続部17nが第1領域30aに設けられ、第2外部接続部17pが第4領域30dに設けられている。これにより、活性層12aの面積を比較的大きく確保しつつ、発光素子10Aの発光分布を改善することができる。また、第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとの間の距離を比較的大きくできるため、配線が設けられた基板に接合する際、導電性の異なる2つの配線に跨って第1外部接続部17n又は第2外部接続部17pが設けられることを抑制することができる。
【0035】
〔発光装置100A〕
図3A図3B、及び図4を参照して、発光素子10Aを用いた発光装置100Aの構成について説明する。図3A及び図3Bは、発光装置100Aを示す斜視図である。図4に示す断面図は、図3BのIV-IV線における断面を模式的に示したものである。
【0036】
発光素子10Aを用いた発光装置100Aは、図3A図3B、及び図4に示すように、発光素子10Aと、発光素子10Aの側面を覆う被覆部材40と、発光素子10Aの側面及び被覆部材40の表面を覆う第1反射部材50と、発光素子10Aの基板11の下面に設けられた透光部材60と、を有する。
【0037】
(被覆部材40)
被覆部材40は、図4に示すように、発光素子10Aの側面の一部と、透光部材60の上面とを覆っている。被覆部材40は、発光素子10Aの各側面の一部を覆っている。発光素子10Aの基板11は、被覆部材40により覆われている。被覆部材40は、第1反射部材50と接する部分に曲面を有している。被覆部材40を設けることで、発光素子10Aから出射される光を被覆部材40の曲面により透光部材60側に反射させ、光取り出し効率を向上させることができる。
【0038】
(第1反射部材50)
第1反射部材50は、図4に示すように、発光素子10Aの表面、被覆部材40の傾斜面、及び透光部材60の表面を覆っている。第1反射部材50は、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの側面を覆っている。第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの導通させるための表面を確保するために、第1反射部材50は、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの一部は覆わないように設けられる。図3Bに示すように、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの一部は、第1反射部材50から露出している。第1反射部材50の上面と、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの上面とは略同一平面上に位置している。
【0039】
第1反射部材50には、光反射性を有する樹脂、セラミックを用いる。第1反射部材50には、例えば、樹脂に光反射性の物質が含有された樹脂を用いることができる。例えば、樹脂としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を用いる。光反射性の物質としては、酸化チタン、酸化ケイ素、アルミナ等を用いる。第1反射部材50が光反射性を有することで、発光素子10Aから出射される光を反射させ、光取り出し効率を向上させることができる。第1反射部材50は、例えば、発光素子10Aから出射される光の波長に対して、60%以上の反射率、好ましくは70%以上の反射率を有することが好ましい。
【0040】
(透光部材60)
透光部材60は、発光素子10Aの基板11の下面に設けられている。透光部材60は、光反射性物質や、発光素子10Aから出射される光の一部を波長変換可能な蛍光体を含有することができる。透光部材60は、例えば、樹脂、ガラス、セラミック等により形成することができる。また、蛍光体を含有する透光部材60は、例えば、蛍光体の焼結体、あるいは樹脂、ガラス、セラミックに蛍光体を含有させたものを用いることができる。
【0041】
透光部材60に含有させる蛍光体には、公知の材料を適用することができる。透光部材60に含有させる蛍光体には、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Y(Al,Ga)12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu(Al,Ga)12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb(Al,Ga)12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(POCl:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、SrAl1425:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、CaMgSi16Cl:Eu)、窒化物系蛍光体、フッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する蛍光体(例えば、CsPb(F,Cl,Br,I))、量子ドット蛍光体(例えば、CdSe、InP、AgInSまたはAgInSe)等を用いることができる。窒化物系蛍光体の例は、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)(O,N):Eu)、αサイアロン系蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN:Eu)およびSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu)等であり、フッ化物系蛍光体の例は、KSF系蛍光体(例えば、KSiF:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、K(Si,Al)F:Mn)およびMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn)等である。これらの蛍光体と、発光素子からの光の波長の組み合わせにより、所望の発光色の発光装置を得ることができる。
【0042】
透光部材60は、発光素子10Aの基板11の下面を被覆するように配置する場合、接着材を介して接合することができる。接着材は、例えば、エポキシ又はシリコーンのような透光性を有する樹脂を用いることができる。また、透光部材60と発光素子10Aの基板11の下面との接合には、例えば、表面活性化接合、原子拡散接合、水酸基接合等による直接接合法を用いてもよい。
【0043】
〔発光装置100B〕
図5A図5B、及び図6を参照して、発光素子10Aを用いた発光装置100Bの構成について説明する。図6A及び図6Bは、発光装置100Bを示す斜視図である。図6に示す断面図は、図5BのVI-VI線における断面を模式的に示したものである。
【0044】
発光素子10Aを用いた発光装置100Bは、図6A図6B、及び図7に示すように、第1反射部材50、透光部材60、及び第2反射部材70の配置と、被覆部材40が配置されていないことが発光装置100Aと主に相違している。以下では、図4A図4B、及び図5に示す発光装置100Aと同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
発光装置100Bは、発光素子10Aと、発光素子10Aの上面の一部を覆う第1反射部材50と、発光素子10Aの基板11の側面及び下面を覆う透光部材60と、透光部材60の下面に設けられた第2反射部材70と、を有する。
【0046】
第1反射部材50は、図6に示すように、発光素子10Aの上面の一部と、透光部材60の上面を覆っている。第1反射部材50は、基板11の側面及び下面には設けられていない。第1反射部材50は、第1半導体層12nの側面と、基板11の側面及び下面を覆わないように設けられている。これにより、発光素子10Aから出射される光のうち第1反射部材50側に向かう光を透光部材60側に反射させるとともに、発光素子10Aから出射される光を透光部材60に効率よく入射させることができる。第1反射部材50の上面は、第1外部接続部17n及び第2外部接続部17pの上面よりも下方に位置している。第1外部接続部17nと第2外部接続部17pとの間に位置する第1反射部材50の上面は、その他の領域に位置する第1反射部材50の上面よりも下方に位置している。
【0047】
透光部材60は、第1半導体層12nの側面、基板11の側面及び下面に設けられている。発光素子10Aから出射される光の一部は、透光部材60の側面から取り出される。
【0048】
(第2反射部材70)
第2反射部材70は、透光部材60の下面に設けられている。透光部材60は、第1反射部材50と第2反射部材70の間に設けられている。第2反射部材70には、上述した第1反射部材50と同様の部材を用いることができる。
【0049】
以上、本発明に係る発光素子及び発光装置について、発明を実施するための形態によって具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0050】
10A 発光素子
11 基板
12 半導体積層体
12n 第1半導体層
12na 第1部分
12nb 第2部分
121 第1辺
122 第2辺
123 第3辺
124 第4辺
12a 活性層
12p 第2半導体層
13 第1電極
14 光反射性電極
15 絶縁層
15n 第1貫通孔
15p 第2貫通孔
16 第2電極
17n 第1外部接続部
17p 第2外部接続部
21 外周部
22 延出部
30a 第1領域
30b 第2領域
30c 第3領域
30d 第4領域
40 被覆部材
50 第1反射部材
60 透光部材
70 第2反射部材
100A、100B 発光装置
D1 第1方向
D2 第2方向
V1 第1仮想線
V2 第2仮想線

図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6