(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】回路接続用接着剤フィルム、回路接続構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20240709BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20240709BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240709BHJP
C09J 163/02 20060101ALI20240709BHJP
C09J 163/04 20060101ALI20240709BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240709BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240709BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20240709BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20240709BHJP
H05K 3/36 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J9/02
C09J163/00
C09J163/02
C09J163/04
C09J11/06
C09J11/04
C09J4/00
H01R11/01 501C
H05K3/36 A
(21)【出願番号】P 2020030371
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】小林 譲
(72)【発明者】
【氏名】三島 翔太
(72)【発明者】
【氏名】工藤 直
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/050011(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/050005(WO,A1)
【文献】特開2013-12498(JP,A)
【文献】特開2000-319622(JP,A)
【文献】特開2011-71514(JP,A)
【文献】国際公開第2013/038840(WO,A1)
【文献】特開2012-21140(JP,A)
【文献】特開2009-238753(JP,A)
【文献】特開2017-200029(JP,A)
【文献】特開2012-184288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
H01R 11/00- 11/32
H05K 1/14
H05K 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接着剤層と、該第1の接着剤層上に積層された第2の接着剤層と、を備え、
前記第1の接着剤層は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂の硬化剤と、導電粒子と、を含有する第1の硬化性組成物又は該第1の硬化性組成物の硬化物からなり、
前記第2の接着剤層は、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、を含有する第2の硬化性組成物からな
り、
前記エポキシ樹脂が、2官能のエポキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂とを含み、
前記2官能のエポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、
前記多官能エポキシ樹脂が、エポキシノボラック樹脂及び/又はナフタレン型エポキシ樹脂を含む、回路接続用接着剤フィルム。
【請求項2】
前記導電粒子の平均粒径に対する前記第1の接着剤層の厚さの比が10%以上80%以下である、請求項1に記載の回路接続用接着剤フィルム。
【請求項3】
前記第1の接着剤層において、前記導電粒子の70%以上が隣接する他の導電粒子と離間した状態となっている、請求項1又は2に記載の回路接続用接着剤フィルム。
【請求項4】
前記導電粒子の平均粒径が2.5μm以上6.0μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤フィルム。
【請求項5】
第1の回路基板の主面上に第1の電極が形成された第1の回路部材と、
第2の回路基板の主面上に第2の電極が形成され、前記第2の電極と前記第1の電極とが対向するように配置された第2の回路部材と、
前記第1の回路部材と前記第2の回路部材との間に設けられ、前記第1の電極と前記第2の電極とを電気的に接続する回路接続部と、を備え、
前記回路接続部が、請求項1~4のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤フィルムの硬化物である、回路接続構造体。
【請求項6】
第1の回路基板の主面上に第1の電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の電極が形成された第2の回路部材との間に、請求項1~4のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤フィルムを介在させ、前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材を熱圧着して、前記第1の電極及び前記第2の電極を互いに電気的に接続する工程を備える、回路接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続用接着剤フィルム、回路接続構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路接続を行うために各種の接着材料が使用されている。例えば、液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(TCP)との接続、フレキシブルプリント配線基板(FPC)とTCPとの接続、又はFPCとプリント配線板との接続のための接着材料として、接着剤中に導電粒子が分散された異方導電性を有する回路接続用接着剤フィルムが使用されている。具体的には、回路接続用接着剤フィルムにより形成される回路接続部によって、回路部材同士が接着されると共に、回路部材上の電極同士が回路接続部中の導電粒子を介して電気的に接続されることで、回路接続構造体が得られる。
【0003】
異方導電性を有する回路接続用接着剤フィルムが使用される精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、微小電極上に効率良く導電粒子を捕捉させ(導電粒子の捕捉率を向上させ)、高い接続信頼性を得ることが必ずしも容易ではなくなっている。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1では、導電粒子を異方導電性接着シートの片側に偏在させ、導電粒子同士を離間させる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の回路接続用接着剤フィルムを用いて得られる回路接続構造体を高温高湿環境下(例えば85℃、85%RH)に放置した場合、回路部材と回路接続部との間において剥離が生じる場合がある。このような剥離は、回路接続構造体の接続信頼性の低下の原因となり得る。
【0007】
そこで、本発明は、高温高湿環境下に置かれた後に回路部材と回路接続部との間での剥離が生じ難い回路接続構造体を得ることができる回路接続用接着剤フィルム、該接着剤フィルムを用いた回路接続構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、第1の接着剤層と、該第1の接着剤層上に積層された第2の接着剤層と、を備え、第1の接着剤層は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂の硬化剤と、導電粒子と、を含有する第1の硬化性組成物又は該第1の硬化性組成物の硬化物からなり、第2の接着剤層は、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤と、を含有する第2の硬化性組成物からなる、回路接続用接着剤フィルムを提供する。
【0009】
この回路接続用接着剤フィルムによれば、高温高湿環境下(例えば85℃、85%RH)に置かれた後に回路部材と回路接続部との間での剥離が生じ難い回路接続構造体を得ることができ、回路接続構造体の接続信頼性を確保できる。
【0010】
上記側面の回路接続用接着剤フィルムにおいて、導電粒子の平均粒径に対する第1の接着剤層の厚さの比は10%以上80%以下であることが好ましい。この場合、回路接続時における接着剤フィルム中の導電粒子の流動を抑制しつつ、接続抵抗を低減することができる。
【0011】
上記側面の回路接続用接着剤フィルムの第1の接着剤層において、導電粒子の70%以上が隣接する他の導電粒子と離間した状態となっていることが好ましい。この場合、回路部材の接続にあたって隣接する導電粒子同士の凝集が抑えられ、回路部材内の電極同士の絶縁性を良好に確保できる。
【0012】
上記側面の回路接続用接着剤フィルムにおいて、導電粒子の平均粒径は2.5μm以上6.0μm以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、対向する回路部材間の接続信頼性の確保と、回路部材内の電極同士の絶縁性の確保とをより好適に両立できる。
【0013】
本発明の他の一側面は、第1の回路基板の主面上に第1の電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の電極が形成され、第2の電極と第1の電極とが対向するように配置された第2の回路部材と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に設けられ、第1の電極と第2の電極とを電気的に接続する回路接続部と、を備え、回路接続部が、上記側面の回路接続用接着剤フィルムの硬化物である、回路接続構造体を提供する。
【0014】
本発明の他の一側面は、第1の回路基板の主面上に第1の電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の電極が形成された第2の回路部材との間に、上記側面の回路接続用接着剤フィルムを介在させ、第1の回路部材及び第2の回路部材を熱圧着して、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する工程を備える、回路接続構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高温高湿環境下に置かれた後に回路部材と回路接続部との間での剥離が生じ難い回路接続構造体を得ることができる回路接続用接着剤フィルム、該接着剤フィルムを用いた回路接続構造体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態の回路接続用接着剤フィルムを示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した回路接続用接着剤フィルムの要部を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の回路接続構造体を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の回路接続構造体の製造工程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」等の他の類似の表現においても同様である。また、「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。
【0018】
<回路接続用接着剤フィルム>
図1は、一実施形態の回路接続用接着剤フィルムを示す模式断面図である。
図1に示すように、回路接続用接着剤フィルム1(以下、単に「接着剤フィルム1」ともいう。)は、第1の接着剤層2と、第1の接着剤層2上に積層された第2の接着剤層3と、を備える。第1の接着剤層2は導電粒子4を含有する。
【0019】
接着剤フィルム1では、導電粒子4が第1の接着剤層2中に分散されている。そのため、接着剤フィルム1は、異方導電性を有する異方導電性接着剤フィルムである。接着剤フィルム1は、第1の電極を有する第1の回路部材と、第2の電極を有する第2の回路部材との間に介在させ、第1の回路部材及び第2の回路部材を圧着(例えば、熱圧着)して、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続するために用いられる。
【0020】
(第1の接着剤層)
第1の接着剤層2は、例えば、第1の硬化性組成物又は第1の硬化性組成物の硬化物からなる。第1の硬化性組成物は(A)エポキシ樹脂(以下、「(A)成分」ともいう。)と、(B)エポキシ樹脂の硬化剤(以下、「(B)成分」ともいう。)と、(C)導電粒子(以下、「(C)成分」ともいう。)とを含有する。第1の硬化性組成物は、例えば、光照射又は加熱により硬化させることができる。
【0021】
第1の接着剤層は、導電粒子が第1の接着剤層中に固定されて、圧着時の導電粒子の流動が起こり難くなり、隣り合う電極間の絶縁性を確保しやすくなる観点から、第1の硬化性組成物の硬化物からなることが好ましい。かかる観点から、第1の接着剤層が第1の硬化性組成物からなる場合には、第1の硬化性組成物を硬化させてから用いてよい。第1の硬化性組成物の硬化物からなる第1の接着剤層2は、例えば、導電粒子4と、第1の硬化性組成物の導電粒子4以外の成分を硬化させてなる第1の接着剤成分5と、からなる。第1の接着剤層2は、第1の硬化性組成物を完全に硬化させた硬化物であってよく、第1の硬化性組成物を部分的に硬化させた硬化物(部分硬化物、Bステージ化物とも呼ばれる)であってもよい。すなわち、第1の接着剤成分5は、未反応の(A)成分及び未反応の(B)成分を含有していてもよく、含有していなくてもよい。圧着前の回路部材への密着性が得られやすい観点から、第1の接着剤層は、第1の硬化性組成物の部分硬化物からなることが好ましい。
【0022】
[(A)成分:エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は、グリシジル基を有する化合物である。エポキシ樹脂は、単官能、2官能又は多官能のいずれでもよいが、充分な硬化性を得る観点では、2官能以上のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂は、モノマー化合物であっても、特定のモノマー単位を複数有するポリマー化合物であってもよい。
【0023】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、F、AD等のビスフェノールのグリシジルエーテルであるビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、F、AD等と、の反応生成物)、及びフェノールノボラック又はクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂(例えば、エピクロルヒドリンと、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等との反応生成物)が代表的なエポキシ樹脂である。その他の例として、ナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、エポキシ基及びアクリレート基を有するアクリレート変性型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及び複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して用いられる。これらのエポキシ樹脂は不純物イオン(Na+、Cl-等)濃度又は加水分解性塩素が300ppm以下であることが、エレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0024】
上記エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が分子量の異なるグレードが広く入手可能で、接着性や反応性等を任意に設定できることから好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の粘度は低く、フェノキシ樹脂と組み合わせて用いることにより、第1の硬化性組成物の流動性を容易に広範囲に設定できる。また、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、第1の接着剤層に良好な粘着性を付与し易いという利点も有する。
【0025】
3個以上のグリシジル基を有する、いわゆる多官能エポキシ樹脂を用いる場合、硬化物の架橋密度が高められてその耐熱性が向上する傾向がある。ただし、多官能エポキシ樹脂の量が多くなると溶剤による補修が困難となる傾向がある。これらの観点から、多官能エポキシ樹脂の含有量は、第1の接着剤層の全質量を基準として、50質量%以下であってよい。多官能エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂といった芳香族骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0026】
多官能エポキシ樹脂は、硬化性により優れる観点から、2官能のエポキシ樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。(A)成分の全量に占める多官能エポキシ樹脂の含有量は、10質量%以上であってよく、50質量%以下であってよい。
【0027】
(A)成分として、グリシジル基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。このような成分としては、例えば、グリシジル基と、アルコキシシリル基とを有する化合物が挙げられる。アルコキシシリル基としては、メトキシシリル基、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、エトキシシリル基、ジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、プロピロキシシリル基、ブトキシシリル基、イソプロピロキシシリル基等が挙げられる。グリシジル基を有するシランカップリング剤の含有量は、高温高湿環境下に置かれた後の回路部材と回路接続部との間での剥離の発生をより抑制しやすくなる観点から、第1の接着剤層の全質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、10質量%以下であってよい。
【0028】
(A)成分の含有量は、高温高湿環境下に置かれた後の回路部材と回路接続部との間での剥離の発生をより抑制しやすくなる観点から、第1の接着剤層の全質量を基準として、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上である。(A)成分の含有量は、フィルム形成性の観点から、第1の接着剤層の全質量を基準として、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、更に好ましくは60質量%以下である。なお、第1の硬化性組成物の全質量を基準とした(A)成分の含有量は上記範囲と同じであってよい。
【0029】
[(B)成分:エポキシ樹脂の硬化剤]
(B)成分は、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであればよい。また、(B)成分はエポキシ樹脂と反応して架橋構造中に取り込まれる化合物であってもよいし、エポキシ樹脂の硬化反応を促進する触媒型硬化剤であってもよい。両者を併用することも可能である。
【0030】
触媒型硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂のアニオン重合を促進するアニオン重合型硬化剤、及びエポキシ樹脂のカチオン重合を促進するカチオン重合型硬化剤が挙げられる。特に、アニオン重合型硬化剤は、様々な被着体に対して強い接着強度を発揮することができるため好ましい。
【0031】
アニオン重合型硬化剤としては、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ素ホウ素-アミン錯体、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド、ジアザビシクロウンデセンまたはその塩、ジアザビシクロノネンまたはその塩、ホスホニウム化合物及びその塩及びこれらの変性物が挙げられる。イミダゾール系のアニオン重合型硬化剤は、例えば、イミダゾール又はその誘導体をエポキシ樹脂に付加して形成される。
【0032】
これらの硬化剤は、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質、ニッケル、銅等の金属薄膜及びケイ酸カルシウム等の無機物で被覆したマイクロカプセル化したものであってもよい。
【0033】
硬化剤(例えばアニオン重合型硬化剤)の配合量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して20~60質量部であることが好ましく、30~50質量部であることがより好ましい。20質量部以上であると第1の硬化性組成物の硬化性が良好となる傾向にある。その結果、導電粒子と電極(例えば回路電極)との接触が保持され、信頼性試験後の接続抵抗の上昇が抑えられる。また、60質量部以下であると締め付け力が強くなりすぎず、回路接続材料の硬化物における内部応力が小さくなり、接着強度の低下が抑えられる傾向がある。
【0034】
[(C)成分:導電粒子]
(C)成分は、導電性を有する粒子であれば特に制限されず、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属で構成された金属粒子、導電性カーボンで構成された導電性カーボン粒子などであってよい。(C)成分は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック(ポリスチレン等)などを含む核と、上記金属又は導電性カーボンを含み、核を被覆する被覆層とを備える被覆導電粒子であってもよい。これらの中でも、熱溶融性の金属で形成された金属粒子、又はプラスチックを含む核と、金属又は導電性カーボンを含み、核を被覆する被覆層とを備える被覆導電粒子が好ましく用いられる。この場合、第1の硬化性組成物の硬化物を加熱又は加圧により変形させることが容易であるため、電極同士を電気的に接続する際に、電極と(C)成分との接触面積を増加させ、電極間の導電性をより向上させることができる。
【0035】
(C)成分は、上記の金属粒子、導電性カーボン粒子、又は被覆導電粒子と、樹脂等の絶縁材料を含み、該粒子の表面を被覆する絶縁層とを備える絶縁被覆導電粒子であってもよい。(C)成分が絶縁被覆導電粒子であると、(C)成分の含有量が多い場合であっても、粒子の表面が樹脂で被覆されているため、(C)成分同士の接触による短絡の発生を抑制でき、また、隣り合う電極回路間の絶縁性を向上させることもできる。(C)成分は、上述した各種導電粒子の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0036】
(C)成分の最大粒径は、電極の最小間隔(隣り合う電極間の最短距離)よりも小さいことが必要である。(C)成分の最大粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、1.0μm以上であってよく、2.0μm以上であってよく、2.5μm以上であってよい。(C)成分の最大粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、50μm以下であってよく、30μm以下であってよく、20μm以下であってよい。本明細書では、任意の導電粒子300個(pcs)について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒径の測定を行い、得られた最も大きい値を(C)成分の最大粒径とする。なお、(C)成分が球形ではない場合(例えば(C)成分が突起を有する場合)、(C)成分の粒径は、SEMの画像における導電粒子に外接する円の直径とする。
【0037】
(C)成分の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、1.0μm以上であってよく、2.0μm以上であってよく、2.5μm以上であってよい。(C)成分の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、50μm以下であってよく、30μm以下であってよく、20μm以下であってよく、6.0μm以下であってよい。特に、(C)成分の平均粒径が2.5μm以上6.0μm以下である場合、対向する回路部材間の接続信頼性の確保と、回路部材内の電極同士の絶縁性の確保とをより好適に両立できる。本明細書では、任意の導電粒子300個(pcs)について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒径の測定を行い、得られた粒径の平均値を平均粒径とする。
【0038】
第1の接着剤層において、(C)成分は均一に分散されていることが好ましい。第1の接着剤層における(C)成分の粒子密度は、安定した接続抵抗が得られやすい観点から、100pcs/mm2以上であってよく、1000pcs/mm2以上であってよく、2000pcs/mm2以上であってよい。第1の接着剤層における(C)成分の粒子密度は、隣り合う電極間の絶縁性を向上させる観点から、100000pcs/mm2以下であってよく、50000pcs/mm2以下であってよく、10000pcs/mm2以下であってよい。
【0039】
第1の接着剤層において、(C)成分の70%以上は、隣接する他の導電粒子と離間した状態となっていることが好ましい。この場合、回路部材内の電極同士の絶縁性が確保されやすく、安定した接続抵抗が得られやすい。(C)成分の70%以上が隣接する他の導電粒子と離間した状態にする方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、特開2015-167106号公報に記載される磁場を印加する方法等が挙げられる。
【0040】
(C)成分の含有量は、導電性をより向上させることができる観点から、第1の接着剤層の全質量を基準として、0.05質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、2.5質量%以上であってよい。(C)成分の含有量は、短絡を抑制しやすい観点から、第1の接着剤層の全質量を基準として、25質量%以下であってよく、15質量%以下であってよい。(C)成分の含有量が上記範囲であれば、高温高湿環境下に置かれた後の回路部材と回路接続部との間での剥離をより抑制しやくなる。なお、第1の硬化性組成物中の(C)成分の含有量(第1の硬化性組成物の全質量基準)は上記範囲と同じであってよい。
【0041】
(C)成分の含有量は、導電性をより向上させることができる観点から、第1の接着剤層中の全体積基準で、0.1体積%以上であってよく、1体積%以上であってよく、5体積%以上であってよい。(C)成分の含有量は、短絡を抑制しやすい観点から、第1の接着剤層中の全体積基準で、50体積%以下であってよく、30体積%以下であってよく、20体積%以下であってよい。なお、第1の硬化性組成物中の(C)成分の含有量(第1の硬化性組成物の全体積基準)は上記範囲と同じであってよい。
【0042】
[その他の成分]
第1の硬化性組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分以外のその他の成分を更に含有していてよい。その他の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、ゴム成分、カップリング剤、充填材が挙げられる。これらの成分は、第1の接着剤層に含有されていてもよい。
【0043】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂から選ばれる1種又は2種以上の樹脂が挙げられる。この中で、接着性、相溶性、耐熱性及び機械強度に優れることからフェノキシ樹脂が、特に好ましい。
【0044】
フェノキシ樹脂は、2官能性フェノール類とエピハロヒドリンとを高分子化するまで反応させるか、又は2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類とを重付加させることにより得られる樹脂である。フェノキシ樹脂は、例えば、2官能性フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985~1.015モルとをアルカリ金属水酸化物等の触媒の存在下、非反応性溶媒中で40~120℃の温度で反応させることにより得ることができる。
【0045】
また、フェノキシ樹脂としては、樹脂の機械的特性や熱的特性の観点からは、特に2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類との配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9~1/1.1とし、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下、沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で、反応固形分が50質量%以下の条件で50~200℃に加熱して重付加反応させて得たものが好ましい。
【0046】
フェノキシ樹脂は、ラジカル重合性の官能基により変性されていてもよい。フェノキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、5000~400000が好ましく、5000~200000がより好ましく、10000~150000が特に好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が5000以上であると、第1の接着剤層の接着強度が向上する傾向がある。また、熱可塑性樹脂の重量平均分子量が400000以下であれば、他の成分との良好な相溶性が得られやすい傾向があり、第1の硬化性組成物の流動性が得られやすい傾向がある。なお、本願で規定する重量平均分子量とは、以下の条件のゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線に基づいて決定される値をいう。
GPC条件
使用機器:日立L-6000 型(株式会社日立製作所)
カラム:ゲルパックGL-R420+ゲルパックGL-R430+ゲルパックGL-R4
40(計3本)(日立化成株式会社製、製品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/分
検出器:L-3300RI(株式会社日立製作所)
【0048】
熱可塑性樹脂の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、20~80質量部であることが好ましく、30~70質量部であることがより好ましく、35~65質量部であることが更に好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が20質量部以上であると、接着強度が向上したり、第1の硬化性組成物のフィルム形成性が向上したりする傾向があり、80質量部以下であれば、第1の硬化性組成物の流動性が得られやすい傾向がある。
【0049】
ゴム成分としては、例えば、アクリルゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2-ポリブタジエン、水酸基末端1,2-ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール及びポリ-ε-カプロラクトンが挙げられる。ゴム成分は、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基又はカルボキシル基を側鎖基又は末端基として有することが好ましい。これらのゴム成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ゴム成分の含有量は、例えば、第1の接着剤層の全質量基準で、5質量%以上であってよく、50質量%以下であってよい。
【0050】
カップリング剤としては、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、イミダゾール基等の有機官能基を有するシランカップリング剤、テトラアルコキシシラン等のシラン化合物、テトラアルコキシチタネート誘導体、ポリジアルキルチタネート誘導体などが挙げられる。第1の硬化性組成物がカップリング剤を含有する場合、接着性を更に向上することができる。カップリング剤の含有量は、例えば、第1の硬化性組成物の全質量基準で、0.1質量%以上であってよく、20質量%以下であってよい。
【0051】
充填材としては、例えば、非導電性のフィラー(例えば、非導電粒子)が挙げられる。
第1の硬化性組成物が充填材を含有する場合、接続信頼性の向上が更に期待できる。充填材は、無機フィラー及び有機フィラーのいずれであってもよい。無機フィラーとしては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリカ-アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子等の金属酸化物微粒子;窒化物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、シリコーン微粒子、メタクリレート-ブタジエン-スチレン微粒子、アクリル-シリコーン微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子などの有機微粒子が挙げられる。これらの微粒子は、均一な構造を有していてもよく、コア-シェル型構造を有していてもよい。充填材の最大径は、導電粒子4の最小粒径未満であることが好ましい。充填材の含有量は、例えば、第1の硬化性組成物の全体積を基準として、1体積%以上であってよく、30体積%以下であってよい。
【0052】
第1の硬化性組成物は、軟化剤、促進剤、劣化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等のその他の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量は、第1の硬化性組成物の全質量基準で、例えば0.1~10質量%であってよい。これらの添加剤は、第1の接着剤層に含有されていてもよい。
【0053】
第1の硬化性組成物は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の硬化剤以外の硬化性化合物(例えば熱硬化性樹脂、ラジカル重合性化合物等)を含んでいてよいが、当該硬化性化合物の含有量は、第1の硬化性化合物の全質量を基準として、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは30質量部%以下である。第1の硬化性組成物は、上記硬化性化合物を含まなくてよい。
【0054】
(第2の接着剤層)
第2の接着剤層3は、第2の硬化性組成物からなる。第2の硬化性組成物は、例えば、(a)ラジカル重合性化合物(以下、(a)成分ともいう。)と、(b)ラジカル重合開始剤(以下、(b)成分ともいう。)と、を含有する。第2の硬化性組成物は、(b)成分として熱ラジカル重合開始剤を含有する熱硬化性組成物であってよく、(b)成分として光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性組成物であってもよく、熱硬化性組成物及び光硬化性組成物の混合物であってもよい。第2の接着剤層3を構成する第2の硬化性組成物は、回路接続時に流動可能な組成物であり、例えば、未硬化の硬化性組成物である。
【0055】
[(a)成分:ラジカル重合性化合物]
(a)成分は、例えば、光(例えば紫外光)の照射又は加熱によってラジカル重合開始剤(光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤)が発生させたラジカルにより重合する化合物である。(a)成分は、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれであってもよい。(a)成分として、一種の化合物を単独で用いてよく、複数種の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(a)成分は、一つ以上のラジカル重合性基を有する。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アルケニル基、アルケニレン基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられる。(a)成分が有するラジカル重合性基の数は、重合後、所望の溶融粘度が得られやすい観点、高温高湿環境下において回路部材と回路接続部との間での剥離がより生じにくくなる観点、及び、接続抵抗の低減効果が更に向上し、接続信頼性により優れる観点から、2以上であってよく、重合時の硬化収縮を抑える観点から、10以下であってよい。また、架橋密度と硬化収縮のバランスをとるために、重合性基の数が上記範囲内の重合性化合物を使用した上で、上記範囲外の重合性化合物を追加で含んでもよい。
【0057】
(a)成分の具体例としては、(メタ)アクリレート化合物、マレイミド化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、スチレン誘導体、アクリルアミド誘導体、ナジイミド誘導体、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム等が挙げられる。
【0058】
(メタ)アクリレート化合物としては、エポキシ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーンアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフォスフェート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス〔4-(アクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルフォスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0059】
マレイミド化合物としては、1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-トルイレンビスマレイミド、N,N’-4,4-ビフェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチル-ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-3,3-ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-s-ブチル-4-8(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス(1-(4マレイミドフェノキシ)-2-シクロヘキシル)ベンゼン、2,2’-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0060】
ビニルエーテル化合物としては、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0061】
アリル化合物としては、1,3-ジアリルフタレート、1,2-ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0062】
(a)成分は、所望の溶融粘度が得られやすい観点、高温高湿環境下において回路部材と回路接続部との間での剥離がより生じにくくなる観点、及び、接続抵抗の低減効果が更に向上し、接続信頼性により優れる観点から、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。また、(a)成分が(メタ)アクリレート化合物である場合、より低温での熱圧着により接続構造体を得ることが可能となる。(a)成分は、更に優れた上記接着特性が得られる観点から、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物であってよい。また、(a)成分は、更に優れた上記接着特性が得られる観点から、ジシクロペンタジエン骨格等の高Tg骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であってよい。
【0063】
(a)成分は、所望の溶融粘度が得られやすい観点、高温高湿環境下において回路部材と回路接続部との間での剥離がより生じにくくなる観点、及び、接続抵抗の低減効果が更に向上し、接続信頼性により優れる観点から、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の末端又は側鎖にビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等の重合性基を導入した化合物(例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート)であってよい。この場合、(a)成分の重量平均分子量は、架橋密度と硬化収縮のバランスに優れる観点から、3000以上であってよく、5000以上であってよく、1万以上であってよい。また、(a)成分の重量平均分子量は、他成分との相溶性に優れる観点から、100万以下であってよく、50万以下であってよく、25万以下であってよい。なお、重量平均分子量は、実施例に記載の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0064】
(a)成分は、(メタ)アクリレート化合物として、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。この場合、無機物(金属等)の表面に対する接着強度が向上するため、例えば、電極同士(例えば回路電極同士)の接着に好適である。
【化1】
[式中、nは1~3の整数を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示す。]
【0065】
上記リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物は、例えば、無水リン酸と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0066】
(a)成分の含有量は、所望の溶融粘度が得られやすい観点、高温高湿環境下において回路部材と回路接続部との間での剥離がより生じにくくなる観点、及び、接続抵抗の低減効果が更に向上し、接続信頼性により優れる観点から、第2の硬化性組成物の全質量基準で、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよい。(a)成分の含有量は、重合時の硬化収縮を抑える観点から、第2の硬化性組成物の全質量基準で、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってよく、70質量%以下であってよい。
【0067】
[(b)成分:ラジカル重合開始剤]
(b)成分は、150~750nmの範囲内の波長の光、好ましくは254~405nmの範囲内の波長の光、更に好ましくは365nmを含む波長の光(例えば紫外光)の照射によってラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤であってよく、熱によってラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤であってよい。(b)成分として、一種の化合物を単独で用いてよく、複数種の化合物を組み合わせて用いてもよい。例えば、第2の硬化性組成物が(b)成分として光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤の両方を含有していてもよい。
【0068】
光ラジカル重合開始剤は、光により分解して遊離ラジカルを発生する。つまり、光ラジカル重合開始剤は、外部からの光エネルギーの付与によりラジカルを発生する化合物である。光ラジカル重合開始剤としては、オキシムエステル構造、ビスイミダゾール構造、アクリジン構造、α-アミノアルキルフェノン構造、アミノベンゾフェノン構造、N-フェニルグリシン構造、アシルフォスフィンオキサイド構造、ベンジルジメチルケタール構造、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造等の構造を有する化合物が挙げられる。光ラジカル重合開始剤は、所望の溶融粘度が得られやすい観点、及び、接続抵抗の低減効果により優れる観点から、オキシムエステル構造、α-アミノアルキルフェノン構造及びアシルフォスフィンオキサイド構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有することが好ましい。
【0069】
オキシムエステル構造を有する化合物の具体例としては、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-o-ベンゾイルオキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0070】
α-アミノアルキルフェノン構造を有する化合物の具体例としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。
【0071】
アシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物の具体例としては、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0072】
熱ラジカル重合開始剤は、熱により分解して遊離ラジカルを発生する。つまり、熱ラジカル重合開始剤は、外部からの熱エネルギーの付与によりラジカルを発生する化合物である。熱ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている有機過酸化物及びアゾ化合物から任意に選択することができる。熱ラジカル重合開始剤としては、安定性、反応性及び相溶性の観点から、1分間半減期温度が90~175℃であり、且つ、重量平均分子量が180~1000の有機過酸化物が好ましく用いられる。1分間半減期温度がこの範囲にあることで、貯蔵安定性に更に優れ、ラジカル重合性も充分に高く、短時間で硬化できる。
【0073】
有機過酸化物の具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(3-メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0074】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。
【0075】
(b)成分の含有量は、速硬化性に優れる観点、及び、接続抵抗の低減効果に優れる観点から、第2の硬化性組成物の全質量基準で、0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよい。(b)成分の含有量は、貯蔵安定性が向上する観点、及び、接続抵抗の低減効果に優れる観点から、第2の硬化性組成物の全質量基準で、15質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。
【0076】
[その他の成分]
第2の硬化性組成物は、(a)成分及び(b)成分以外のその他の成分を更に含有していてよい。その他の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、カップリング剤、充填材、軟化剤、促進剤、劣化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等が挙げられる。その他の成分の詳細は、第1の接着剤層2におけるその他の成分の詳細と同じである。
【0077】
熱硬化性樹脂の具体例としては、少なくとも2つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂には、(A)成分として例示したエポキシ樹脂を用いることができる。第2の硬化性組成物における熱硬化性樹脂の含有量は、例えば、第2の硬化性組成物の全質量を基準として、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上又は20質量%以上であってよく、80質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、10質量%以下又は5質量%以下であってよい。
【0078】
第2の硬化性組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、第2の硬化性組成物は、熱硬化性樹脂の硬化剤を含有していてもよい。熱硬化性樹脂の硬化剤としては、例えば、熱ラジカル発生剤、熱カチオン発生剤、熱アニオン発生剤等が挙げられる。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、上述した(B)成分として例示した硬化剤を用いることができる。硬化剤の含有量は、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、20質量部以下であってよい。
【0079】
第2の接着剤層における導電粒子の含有量は、例えば、第2の接着剤層の全質量基準で、1質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。第2の接着剤層は、導電粒子を含まないことが好ましい。
【0080】
上記実施形態の回路接続用接着剤フィルム1によれば、高温高湿環境下に置かれた後に回路部材と回路接続部との間での剥離が生じ難い回路接続構造体を得ることができる。
【0081】
また、上記実施形態の回路接続用接着剤フィルム1によれば、回路部材同士を接続する際の導電粒子の流動が抑制される傾向がある。そのため、導電粒子が対向する電極間に好適に捕捉され、短絡のリスクが低減されやすい。
【0082】
続いて、
図2を参照しながら、接着剤フィルム1の好適な構成を詳細に説明する。接着剤フィルム1は、積層方向からみたときに、導電粒子4が存在する領域(存在領域)R1と、導電粒子4が存在しない(不存在領域)R2とから構成されている。
【0083】
接着剤フィルム1は、存在領域R1においては、第1の接着剤層2側から順に、第1の接着剤成分5、導電粒子4、第1の接着剤成分5、及び第2の接着剤成分6を備えている。すなわち、第1の接着剤層2の第2の接着剤層3と反対側の表面2aと、導電粒子4との間には、第1の接着剤成分5が存在していると共に、導電粒子4の第2の接着剤層3側の表面にも、該表面を覆うように第1の接着剤成分5が存在している。
【0084】
第1の接着剤層2の第2の接着剤層3と反対側の表面2aから導電粒子4の表面までの最短距離Dは、高温高湿環境下における接続抵抗の上昇を抑制し、回路接続時の導電粒子の流動も抑制できる観点から、0μmを超え1μm以下である。最短距離Dは、同様の観点から、0.1μm以上、又は0.2μm以上であってもよく、0.8μm以下であってもよい。
【0085】
第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の界面Sから導電粒子4の表面までの最短距離d11は、例えば、0.1μm以上であってよく、3.0μm以下、2.0μm以下、又は1.0μm以下であってよい。他の一実施形態では、導電粒子4の第2の接着剤層3側の表面には、第1の接着剤成分が存在していなくてもよい。すなわち、上記最短距離d11は、0μm以上であってよいということもできる。
【0086】
存在領域R1において、第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の界面Sから第2の接着剤層3の第1の接着剤層2と反対側の表面3aまでの最短距離d21は、例えば、3.0μm以上、5.0μm以上、又は10.0μm以上であってよく、50μm以下であってよい。
【0087】
接着剤フィルム1は、不存在領域R2においては、第1の接着剤層2側から順に、第1の接着剤成分5及び第2の接着剤成分6を備えている。上述したとおり、第1の接着剤成分5は、導電粒子4の表面(第2の接着剤層3側の表面を含む)を覆うように存在しているため、第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の界面Sは、不存在領域R2において、導電粒子4の近傍では導電粒子4の表面形状に追従するような曲面となっており、導電粒子4から遠ざかるにつれて、第1の接着剤層2の第2の接着剤層3と反対側の表面2a及び第2の接着剤層3の第1の接着剤層2と反対側の表面3aのそれぞれと略平行な略平面となる。
【0088】
第1の接着剤層2の厚さは、導電粒子4の近傍で最も厚くなっており、導電粒子4から遠ざかるにつれて薄くなっている。第2の接着剤層3の厚さは、導電粒子4の近傍で最も薄くなっており、導電粒子4から遠ざかるにつれて厚くなっている。本明細書において、第1の接着剤層の厚さ及び第2の接着剤層の厚さは、導電粒子4が存在しない不存在領域R2における第1の接着剤層の厚さ及び第2の接着剤層の厚さとしてそれぞれ定義される。また、第1の接着剤層の厚さ及び第2の接着剤層の厚さの好適な範囲について以下で説明するが、以下は、不存在領域R2の任意の位置における第1の接着剤層の厚さ(例えば、導電粒子4の近傍の厚さd12及びそこから遠ざかった位置における厚さd13の両方)及び第2の接着剤層の厚さ(例えば、導電粒子4の近傍の厚さd22及びそこから遠ざかった位置における厚さd23の両方)が以下で示される範囲内となることが好適であることを意味する。
【0089】
図2では、第1の接着剤層2の厚さは、導電粒子4の平均粒径より小さくなっている。具体的には、導電粒子4の平均粒径に対する第1の接着剤層2の厚さの比(第1の接着剤層2の厚さ/導電粒子4の平均粒径)は、回路接続時の導電粒子4の流動を抑制する観点から好ましくは10%以上であり、接続抵抗の上昇を抑制する観点から好ましくは80%以下である。上記比は、回路接続時の導電粒子4の流動を更に抑制する観点から、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、接続抵抗の上昇を更に抑制する観点から、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下、特に好ましくは55%以下、極めて好ましくは50%以下である。
【0090】
第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の合計厚さに対する第2の接着剤層3の厚さの比(第2の接着剤層3の厚さ/第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の合計厚さ)は、回路接続時の導電粒子4の流動を抑制する観点から、好ましくは96%未満である。上記比は、回路接続時の導電粒子4の流動を更に抑制する観点から、より好ましくは94%以下、更に好ましくは93%以下、特に好ましくは88%以下、極めて好ましくは86%以下である。上記比は、例えば、75%以上、78%以上、又は80%以上であってよい。
【0091】
第1の接着剤層2の厚さは、導電粒子の大きさにもよるが、例えば、0.3μm以上であってよく、20μm以下であってよい。第2の接着剤層3の厚さは、電極間のスペースを充分に充填して電極を封止することができ、より良好な信頼性が得られる観点から、5μm以上であってよく、200μm以下であってよい。第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の合計厚さ(接着剤フィルム1の厚さ)は、例えば、5μm以上であってよく、200μm以下であってよい。
【0092】
以上、本実施形態の回路接続用接着剤フィルムについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0093】
例えば、回路接続用接着剤フィルムは、第1の接着剤層及び第2の接着剤層の二層から構成されるものであってよく、第1の接着剤層及び第2の接着剤層以外の層(例えば第3の接着剤層)を備える、三層以上の層から構成されるものであってもよい。
【0094】
また、上記実施形態の回路接続用接着剤フィルムは、異方導電性を有する異方導電性接着剤フィルムであるが、回路接続用接着剤フィルムは、異方導電性を有していない導電性接着剤フィルムであってもよい。
【0095】
<回路接続用接着剤フィルムの製造方法>
本実施形態の回路接続用接着剤フィルム1の製造方法は、例えば、上述した第1の接着剤層2を用意する用意工程(第1の用意工程)と、第1の接着剤層2上に上述した第2の接着剤層3を積層する積層工程と、を備える。回路接続用接着剤フィルム1の製造方法は、第2の接着剤層3を用意する用意工程(第2の用意工程)を更に備えていてもよい。
【0096】
第1の用意工程では、例えば、基材上に第1の接着剤層2を形成して第1の接着剤フィルムを得ることにより、第1の接着剤層2を用意する。具体的には、まず、(A)成分、(B)成分及び(C)成分、並びに必要に応じて添加される他の成分を、有機溶媒中に加え、攪拌混合、混錬等により、溶解又は分散させて、ワニス組成物を調製する。その後、離型処理を施した基材上に、ワニス組成物をナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター等を用いて塗布した後、加熱により有機溶媒を揮発させて、基材上に第1の硬化性組成物からなる層(第1の接着剤層2)を形成する。これにより、第1の接着剤フィルムが得られる。第1の硬化性組成物からなる層の形成後、第1の硬化性組成物からなる層に対して光照射又は加熱を行い、第1の硬化性組成物を硬化させる工程(硬化工程)を実施してもよい。この場合、第1の硬化性組成物の硬化物からなる層が第1の接着剤層2となる。
【0097】
ワニス組成物の調製に用いる有機溶媒としては、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましく、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。ワニス組成物の調製の際の攪拌混合及び混錬は、例えば、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル又はホモディスパーを用いて行うことができる。
【0098】
基材としては、第1の硬化性組成物を光により硬化させる場合には有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、第1の硬化性組成物を加熱により硬化させる場合には、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件及び第1の硬化性組成物を硬化させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はない。基材としては、例えば、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム系、液晶ポリマー等からなる基材(例えばフィルム)を用いることができる。
【0099】
基材へ塗布したワニス組成物から有機溶媒を揮発させる際の加熱条件は、有機溶媒が充分に揮発する条件とすることが好ましい。加熱条件は、例えば、40℃以上120℃以下で0.1分間以上10分間以下であってよい。
【0100】
硬化工程における光の照射には、150~750nmの範囲内の波長を含む照射光(例えば紫外光)を用いることが好ましい。光の照射は、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を使用して行うことができる。光の照射量は、例えば、波長365nmの光の積算光量で、100mJ/cm2以上であってよく、200mJ/cm2以上であってよく、300mJ/cm2以上であってよい。光の照射量は、例えば、波長365nmの光の積算光量で、10000mJ/cm2以下であってよく、5000mJ/cm2以下であってよく、3000mJ/cm2以下であってよい。
【0101】
硬化工程における加熱条件は、例えば、30℃以上300℃以下で0.1分間以上5000分間以下であってよく、50℃以上150℃以下で0.1分間以上3000分間以下であってよい。
【0102】
第2の用意工程では、(a)成分及び(b)成分、並びに必要に応じて添加される他の成分を用いること、及び、硬化工程を実施しないこと以外は、第1の用意工程と同様に、基材上に第2の接着剤層3を形成して第2の接着剤フィルムを得ることにより、第2の接着剤層3を用意する。
【0103】
積層工程では、第1の接着剤フィルムと、第2の接着剤フィルムとを貼り合わせることにより、第1の接着剤層2上に第2の接着剤層3を積層してよく、第1の接着剤層2上に、(a)成分及び(b)成分、並びに必要に応じて添加される他の成分を用いて得られるワニス組成物を塗布し、有機溶媒を揮発させることにより、第1の接着剤層2上に第2の接着剤層3を積層してもよい。
【0104】
第1の接着剤フィルムと、第2の接着剤フィルムとを貼り合わせる方法としては、例えば、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等の方法が挙げられる。ラミネートは、例えば、0~80℃の加熱条件下で行ってよい。
【0105】
<回路接続構造体及びその製造方法>
以下、回路接続材料として上述した回路接続用接着剤フィルム1を用いた回路接続構造体及びその製造方法について説明する。
【0106】
図3は、一実施形態の回路接続構造体を示す模式断面図である。
図3に示すように、回路接続構造体10は、第1の回路基板11及び第1の回路基板11の主面11a上に形成された第1の電極12を有する第1の回路部材13と、第2の回路基板14及び第2の回路基板14の主面14a上に形成された第2の電極15を有する第2の回路部材16と、第1の回路部材13及び第2の回路部材16の間に配置され、第1の電極12及び第2の電極15を互いに電気的に接続する回路接続部17と、を備えている。
【0107】
第1の回路部材13及び第2の回路部材16は、互いに同じであっても異なっていてもよい。第1の回路部材13及び第2の回路部材16は、電極が形成されているガラス基板又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンICチップ等であってよい。第1の回路基板11及び第2の回路基板14は、半導体、ガラス、セラミック等の無機物、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等の複合物などで形成されていてよい。第1の回路部材13の表面(回路接続部17との接触面)は、SiNを含む材料で形成されていてよい。例えば、第1の回路部材13の表面(回路接続部17との接触面)にSiN膜が形成されていてよい。第1の回路部材13の表面(回路接続部17との接触面)がSiNを含む材料で形成されている場合、第1の接着剤層と第1の回路部材13との界面がより強固に接着されることとなり、高温高湿環境下に置かれた後の回路部材と回路接続部との間での剥離がより生じ難くなる傾向がある。
【0108】
第1の電極12及び第2の電極15は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、アルミ、モリブデン、チタン、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)等で形成されていてよい。第1の電極12及び第2の電極15は回路電極であってよく、バンプ電極であってもよい。第1の電極12及び第2の電極15の少なくとも一方は、バンプ電極であってよい。
図3では、第2の電極15がバンプ電極である。
【0109】
回路接続部17は、上述した接着剤フィルム1により形成される。回路接続部17は例えば、接着剤フィルム1の硬化物からなる。回路接続部17は、例えば、第1の回路部材13と第2の回路部材16とが互いに対向する方向(以下「対向方向」)における第1の回路部材13側に位置し、上述の第1の硬化性組成物の導電粒子4以外の(A)成分、(B)成分等の成分の硬化物からなる第1の領域18と、対向方向における第2の回路部材16側に位置し、(a)成分、(b)成分等を含有する上述の第2の硬化性組成物の硬化物からなる第2の領域19と、少なくとも第1の電極12及び第2の電極15の間に介在して第1の電極12及び第2の電極15を互いに電気的に接続する導電粒子4と、を有する。回路接続部は、第1の領域18及び第2の領域19のように2つの領域を有していなくてもよく、例えば、上述の第1の硬化性組成物の導電粒子4以外の成分の硬化物と上述の第2の硬化性組成物の硬化物とが混在した硬化物からなっていてもよい。
【0110】
図4は、回路接続構造体10の製造方法を示す模式断面図である。
図4に示すように、回路接続構造体10の製造方法は、例えば、第1の電極12を有する第1の回路部材13と、第2の電極15を有する第2の回路部材16との間に、上述した接着剤フィルム1を介在させ、第1の回路部材13及び第2の回路部材16を熱圧着して、第1の電極12及び第2の電極15を互いに電気的に接続する工程を備える。
【0111】
具体的には、
図4(a)に示すように、まず、第1の回路基板11及び第1の回路基板11の主面11a上に形成された第1の電極12を備える第1の回路部材13と、第2の回路基板14及び第2の回路基板14の主面14a上に形成された第2の電極15を備える第2の回路部材16と、を用意する。
【0112】
次に、第1の回路部材13と第2の回路部材16とを、第1の電極12と第2の電極15とが互いに対向するように配置し、第1の回路部材13と第2の回路部材16との間に接着剤フィルム1を配置する。例えば、
図4(a)に示すように、第1の接着剤層2側が第1の回路部材13の実装面11aと対向するようにして接着剤フィルム1を第1の回路部材13上にラミネートする。次に、第1の回路基板11上の第1の電極12と、第2の回路基板14上の第2の電極15とが互いに対向するように、接着剤フィルム1がラミネートされた第1の回路部材13上に第2の回路部材16を配置する。例えば、第2の接着剤層3側が第2の回路部材16の実装面14aと対向するようにして接着剤フィルム1を第2の回路部材16上にラミネートしてもよい。この場合、第1の回路基板11上の第1の電極12と、第2の回路基板14上の第2の電極15とが互いに対向するように、接着剤フィルム1がラミネートされた第2の回路部材16上に第1の回路部材13を配置する。
【0113】
そして、
図4(b)に示すように、第1の回路部材13、接着剤フィルム1及び第2の回路部材16を加熱しながら、第1の回路部材13と第2の回路部材16とを厚み方向に加圧することで、第1の回路部材13と第2の回路部材16とを互いに熱圧着する。この際、
図4(b)において矢印で示すように、第2の接着剤層3が、第2の電極15,15間の空隙を埋めるように流動すると共に、上記加熱によって硬化する。これにより、第1の電極12及び第2の電極15が導電粒子4を介して互いに電気的に接続され、また、第1の回路部材13及び第2の回路部材16が互いに接着されて、
図4に示す回路接続構造体10が得られる。なお、第2の硬化性組成物が光硬化性組成物を含む場合、加熱による熱圧着に代えて、加圧と光照射、又は、加圧と加熱と光照射を行うことにより第1の回路部材13と第2の回路部材16とを接合してよい。硬化性及び硬化速度に優れる観点では、熱圧着により第1の回路部材13と第2の回路部材16とを接合することが好ましい。
【実施例】
【0114】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0115】
<ポリウレタンアクリレート(UA1)の合成>
攪拌機、温度計、塩化カルシウム乾燥管を有する還流冷却管、及び、窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリ(1,6-ヘキサンジオールカーボネート)(製品名:デュラノール T5652、旭化成ケミカルズ株式会社製、数平均分子量1000)2500質量部(2.50mol)と、イソホロンジイソシアネート(シグマアルドリッチ社製)666質量部(3.00mol)とを3時間かけて均一に滴下した。次いで、反応容器に充分に窒素ガスを導入した後、反応容器内を70~75℃に加熱して反応させた。次に、反応容器に、ハイドロキノンモノメチルエーテル(シグマアルドリッチ社製)0.53質量部(4.3mmol)と、ジブチルスズジラウレート(シグマアルドリッチ社製)5.53質量部(8.8mmol)とを添加した後、2-ヒドロキシエチルアクリレート(シグマアルドリッチ社製)238質量部(2.05mol)を加え、空気雰囲気下70℃で6時間反応させた。これにより、ポリウレタンアクリレート(UA1)を得た。ポリウレタンアクリレート(UA1)の重量平均分子量は15000であった。なお、重量平均分子量は、下記の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC-8020
検出器:東ソー株式会社製 RI-8020
カラム:日立化成株式会社製 Gelpack GLA160S+GLA150S
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.94×106Pa(30kgf/cm2)
流量:1.00mL/min
【0116】
<導電粒子(P1)の作製>
ポリスチレン粒子の表面上に、層の厚さが0.2μmとなるようにニッケルからなる層を形成した。このようにして、平均粒径4μm、最大粒径4.5μm、比重2.5の導電粒子(P1)を得た。
【0117】
<ポリエステルウレタン樹脂(EU1)の調製方法>
撹拌機、温度計、コンデンサー、真空発生装置及び窒素ガス導入管が備え付けられたヒーター付きステンレス製オートクレーブに、イソフタル酸48質量部及びネオペンチルグリコール37質量部を投入し、更に、触媒としてのテトラブトキシチタネート0.02質量部を投入した。次いで、窒素気流下220℃まで昇温し、そのまま8時間撹拌した。その後、大気圧(760mmHg)まで減圧し、室温まで冷却した。これにより、白色の沈殿物を析出させた。次いで、白色の沈殿物を取り出し、水洗した後、真空乾燥することでポリエステルポリオールを得た。
【0118】
得られたポリエステルポリオールを充分に乾燥した後、MEK(メチルエチルケトン)に溶解し、撹拌機、滴下漏斗、還流冷却機及び窒素ガス導入管を取り付けた四つ口フラスコに投入した。また、触媒としてジブチル錫ラウレートをポリエステルポリオール100質量部に対して0.05質量部となる量投入し、ポリエステルポリオール100質量部に対して50質量部となる量の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートをMEKに溶解して滴下漏斗で投入し、80℃で4時間撹拌することで目的とするポリエステルウレタン樹脂(EU1)を得た。
【0119】
<硬化性組成物のワニス(ワニス組成物)の調製>
表1及び表2に示す硬化性組成物1~5のワニスを調製した。硬化性組成物1~4は導電粒子含有硬化性組成物であり、硬化性組成物5は導電粒子非含有硬化性組成物である。配合成分の詳細を以下に示す。なお、表1には、各成分の配合量(質量部)を示している。
【0120】
[エポキシ樹脂(グリシジル基を有するカップリング剤を含む)]
・YL-983U(三菱化学株式会社製、製品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、1分子中のグリシジルキ基数:2)
・EXA-4816(DIC株式会社製、製品名、脂肪族鎖変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、1分子中のグリシジルキ基数:2)
・HP-4700(DIC株式会社製、製品名、ナフタレン型エポキシ樹脂、1分子中のグリシジルキ基数:4)
・jER152(三菱化学株式会社製、製品名、ノボラック型エポキシ樹脂、1分子中のグリシジルキ基数:1)
(エポキシ樹脂/カップリング剤)
・SH6040(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、製品名、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1分子中のグリシジルキ基数:1)
[硬化剤]
・U-CAT SA1(サンアプロ株式会社製、製品名、ジアザビシクロウンデセン-フェノール塩)
[ラジカル重合性化合物]
・DCP-A(東亞合成株式会社製、製品名、ジシクロペンタジエン型ジアクリレート)
・UA1:上述のとおり合成したポリウレタンアクリレート(UA1)
・P-2M(共栄社化学株式会社製、製品名:ライトエステルP-2M、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート)
[ラジカル重合開始剤]
・OXE01(BASF社製、製品名:Irgacure(登録商標)OXE01、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(o-ベンゾイルオキシム)])
・BMT-K40(日油株式会社製、製品名:ナイパーBMT-K40、ベンゾイルパーオキサイド)
[導電粒子]
・P1(上述のとおり作製した導電粒子)
[熱可塑性樹脂]
・PKHC(ユニオンカーバイド社製、製品名、フェノキシ樹脂)
・EU1(上述のとおり作製したポリウレタン樹脂)
[充填材]
・R104(日本アエロジル株式会社製、製品名、シリカ微粒子、平均粒径(一次粒径):12nm、比重:2)
[溶剤]
・MEK(メチルエチルケトン)
【0121】
【0122】
【0123】
<実施例1>
[第1の接着剤フィルムの作製]
硬化性組成物1(第1の硬化性組成物)のワニスを、厚さ50μmのPETフィルム上に塗工装置を用いて塗布した。次いで、磁場を印加し、70℃、3分間の熱風乾燥を行い、PETフィルム上に第1の硬化性組成物からなる層を形成した。次に、第1の硬化性組成物からなる層を100℃で2分加熱することにより、第1の硬化性組成物を硬化させ、第1の硬化性組成物の硬化物からなる層(第1の接着剤層)を形成した。以上の操作により、PETフィルム上に第1の接着剤層を備える第1の接着剤フィルムを得た。このときの導電粒子密度は約7000pcs/mm2であった。
【0124】
[第2の接着剤フィルムの作製]
硬化性組成物5(第2の硬化性組成物)のワニスを、厚さ50μmのPETフィルム上に塗工装置を用いて塗布した。次いで、70℃、3分間の熱風乾燥を行い、PETフィルム上に第2の硬化性組成物からなる層(第2の接着剤層)を形成した。以上の操作により、PETフィルム上に第2の接着剤層を備える第2の接着剤フィルムを得た。
【0125】
[回路接続用接着剤フィルムの作製]
第1の接着剤フィルムと第2の接着剤フィルムとを、それぞれの接着剤層が対向するように配置し、基材であるPETフィルムと共に40℃で加熱しながら、ロールラミネータでラミネートした。これにより、第1の接着剤層と第2の接着剤層とが積層された二層構成の回路接続用接着剤フィルム(異方導電性フィルム)を作製した。
【0126】
得られた接着剤フィルムを2枚のガラス(厚み:1mm程度)で挟み込み、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:JER811、三菱ケミカル株式会社製)100gと、硬化剤(製品名:エポマウント硬化剤、リファインテック株式会社製)10gとからなる樹脂組成物で注型後に、研磨機を用いて断面研磨を行い、走査型電子顕微鏡(SEM、製品名:SE-8020、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて各層の厚み等を測定した。測定結果(第1の接着剤層の最薄部の厚さ[A])を表3に示す。また、測定結果から算出した、導電粒子の平均粒径[B]に対する第1の接着剤層の最薄部の厚さ[A]の比([A]/[B])も表3に併せて示す。
【0127】
[回路接続構造体の作製]
作製した回路接続用接着剤フィルムを介して、ピッチ40μmのCOF(FLEXSEED社製)と、ガラス基板上に窒化珪素膜を形成した厚さ0.2mmの薄ガラス基板とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、株式会社太陽機械製作所製)を用いて、150℃、5MPaで5秒間の条件で加熱加圧を行って幅1mmにわたり接続し、回路接続構造体を作製した。なお、接続の際には、回路接続用接着剤フィルムにおける第1の接着剤層側の面がガラス基板と対向するように、回路接続用接着剤フィルムをガラス基板上に配置した。
【0128】
<実施例2~3及び比較例1>
硬化性組成物1に代えて、硬化性組成物2~4をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、回路接続用接着剤フィルム及び回路接続構造体を作製した。また、実施例1と同様にして、回路接続用接着剤フィルムの厚さ等を測定した。結果を表3に示す。
【0129】
<評価>
[導電粒子の単分散率の評価]
実施例1~3及び比較例1の回路接続用接着剤フィルムについて、導電粒子の単分散率(隣接する他の導電粒子と離間した状態(単分散状態)で存在している導電粒子の比率)を評価した。単分散率(単位:%)は、回路接続用接着剤フィルムの第1の接着剤層側から、第1の接着剤層内の2500μm2四方(50μm×50μm)の領域Aを金属顕微鏡を用いて200倍の倍率で観察し、以下の式により求めた。結果を表3に示す。
単分散率=(領域A中の単分散状態の導電粒子数/領域A中の導電粒子数)×100
【0130】
[剥離評価]
得られた回路接続構造体を85℃、85%RHの恒温恒湿槽に100h放置した(高温高湿試験)。顕微鏡(製品名:ECLIPSE L200、株式会社ニコン製)を用いて、高温高湿試験後の回路接続構造体における回路接続部(回路接続用接着剤フィルムの硬化物)とCOFとの界面(回路接続部/COF)、及び回路接続部とガラス基板との界面(回路接続部/ガラス基板)を観察し、両界面における剥離の程度を評価した。回路接続部全体の面積のうち、回路部材(COF及びガラス基板)から剥離している割合を求め、剥離がほとんど生じていない(剥離部分の割合が全体の5%未満)ものをA、剥離が少量生じている(剥離部分の割合が全体の5%以上20%未満)ものをB、剥離が生じている(剥離部分の割合が全体の20%以上)ものをCとした。
【0131】
[導電粒子の流動性の評価]
得られた回路接続構造体について、回路接続用接着剤フィルムの染み出し部分の粒子流動状態を顕微鏡(製品名:ECLIPSE L200、株式会社ニコン製)を用いて評価した。具体的には、作製した回路接続構造体をガラス基板側から、顕微鏡にて観察し、回路接続用接着剤フィルムの幅よりも外側に染み出した部分の粒子状態を3段階で評価した。粒子がほとんど動かず、染み出し部分に粒子がない状態を1、多少粒子が動いているが、粒子が互いに連結していない状態を2、粒子が流動し、粒子が互いに連結している状態を3とした。結果を表3に示す。
【0132】
【符号の説明】
【0133】
1…回路接続用接着剤フィルム、2…第1の接着剤層、3…第2の接着剤層、4…導電粒子、10…回路接続構造体、12…回路電極(第1の電極)、13…第1の回路部材、15…バンプ電極(第2の電極)、16…第2の回路部材。