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特許7516835アデノ随伴ウイルスベクターを検出するためのオリゴヌクレオチドプライマーおよび当該プライマーを用いた前記ベクターの検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】アデノ随伴ウイルスベクターを検出するためのオリゴヌクレオチドプライマーおよび当該プライマーを用いた前記ベクターの検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6865 20180101AFI20240709BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C12Q1/6865 Z
C12N15/11 Z ZNA
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020076625
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021170975
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、[再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業遺伝子治療製造技術開発]「遺伝子・細胞治療用ベクターのプラットフォーム製造技術開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】牧野 友理子
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀峰
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-116136(JP,A)
【文献】Takara AAVpro Helper Free System 説明書,v202001Da,2020年01月,pp.1-21
【文献】MOLECULAR THERAPY,2002年,Vol.6, No.2,pp.272-278,doi:10.1006/mthe.2002.0659
【文献】Med Sci Monit Basic Res,2013年,vol.19,pp.187-193,DOI: 10.12659/MSMBR.883968
【文献】Journal of Virological Methods,2009年,Vol.158,pp.199-201,doi:10.1016/j.jviromet.2009.02.010
【文献】Listeria monocytogenes: detection using NASBA,Encyclopedia of food microbiology,2000年,pp.1244-1251
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノ随伴ウイルスベクターの特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸をTRC法により増幅するための第一のプライマーおよび第二のプライマーからなるプライマーセットであって、
第一のプライマーが、配列番号11から31のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第二のプライマーが、配列番号32から34および36から50のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第一または第二のプライマーのいずれか一方の5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーターがさらに付加されている、
前記プライマーセット。
【請求項2】
請求項に記載のプライマーセットで増幅した、特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸を、前記核酸の一部と特異的にハイブリダイズ可能なプローブを用いて、アデノ随伴ウイルスベクターを検出する方法。
【請求項3】
プローブを構成するオリゴヌクレオチドが、配列番号51または52に記載のオリゴヌクレオチドである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アデノ随伴ウイルスベクターを検出するためのオリゴヌクレオチドプライマーおよび当該プライマーを用いた前記ベクターの特異的検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子疾患の治療において、当該治療のための遺伝子を含むウイルスベクターを用いて細胞に導入する方法が、当該細胞への導入効率がよい点で広く用いられている。ウイルスベクターの中でもアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、AAV自体に病原性がなく、当該ベクターに挿入した遺伝子を効率よく非分裂細胞に導入でき、かつ導入した遺伝子の発現が長期間持続するため、近年特に注目されている(非特許文献1)。
【0003】
AAVはゲノムがカプシドタンパク質に内包された直径20nmから26nmの粒子である。AAVのゲノムは4.7kbの線状の一本鎖DNAであり、その3’末端側および5’末端側には逆位反復(Inverted Terminal Repeat、以下ITRと略記)配列と呼ばれるT字型のループ構造が存在する。遺伝子治療用のAAVベクターとして前記ゲノムを用いる際は、前記ゲノムの両末端側にあるITR配列に挟まれたRep遺伝子とCap遺伝子を、遺伝子を導入したい組織に特異的なプロモーター配列、遺伝子治療に用いる遺伝子、ポリAシグナル配列などに置換する。
【0004】
AAVベクターの製造は、前述した方法で遺伝子治療に用いる遺伝子に置換したAAVゲノムと、Rep遺伝子とCap遺伝子を含むベクター、およびアデノウイルスやヘルペスシンプレックスウイルスなどのヘルパーウイルスとを、宿主細胞(HEK293細胞やHeLa細胞など)へ同時にトランスフェクションし製造する。なお近年では、前記ヘルパーウイルスの代わりに、より安全性の高い、アデノウイルスの複製遺伝子をクローニングしたAdvヘルパープラスミドを用いた方法も行なわれている。
【0005】
前述した方法で製造したAAVベクターの中には、遺伝子治療に必要なAAVゲノムがないベクター(いわゆる空ベクター)も存在する。したがって、産生したAAVベクターを遺伝子治療に用いるためには、当該ベクター中に前記AAVゲノムが存在するかの確認や、AAVベクターを含む試料(細胞培養液など)中に含まれるAAVゲノムの定量が必要とされている。
【0006】
AAVベクター中に含まれるAAVゲノムの定性的および/または定量的測定法として、透過型電子顕微鏡によるAAVベクター粒子の画像解析や、分析超遠心法や、定量PCR(qPCR)法や、デジタルドロップレットPCR(ddPCR)法や、ドットブロット法や、電気泳動法が知られている。これらのうちqPCR法は、操作の簡便性や迅速性から、AAVベクターの定量に広く用いられている。しかしながら、qPCR法と電気泳動法など他の方法とで定量結果に相関性がとれない点や、測定の対象とする遺伝子領域によっても定量結果が異なる点などの問題があった(非特許文献2から4、ならびに特許文献1および2)。またqPCR法やddPCR法といったPCRを利用した方法は、急激に反応温度を昇降させる必要があるため、自動化の際、反応工程の省力化や反応装置の低コスト化の点で問題があった。
【0007】
反応工程の省力化や反応装置の低コスト化が比較的容易な核酸増幅方法として、比較的低温(例えば40℃から50℃の範囲)の一定温度で核酸増幅が可能な、NASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)法、TMA(Transcription Mediated Amplification)法、TRC(Transcription Reverse transcription Concerted)法が知られている。これら増幅法は通常一本鎖RNAを標的核酸とした増幅法であるが、反応系を工夫することでDNAの増幅も可能である。
【0008】
例えば特許文献3には、TRC法によるRNA増幅で用いる酵素群およびプライマーセット、ならびに鎖置換酵素および/または増幅した核酸を一本化するためのプライマーを含む試薬を用いた、B型肝炎ウイルス核酸の増幅を開示している。しかしながら、AAVゲノムといった、末端に相補領域を有した一本鎖核酸の増幅については、特許文献3を含め、これまで開示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-235562号公報
【文献】WO2015/080223号
【文献】特開2015-116136号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】小澤敬也、ウイルス、57(1)、47-56(2007)
【文献】P.Fagone et al.、Human Gene Therapy Methods:B、23、1-7(2012)
【文献】M.Lock et al.、Human Gene Therapy Methods、25、115-125(2014)
【文献】S.D’Costa et al.、Methods And Clinical Development 5、16019(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、アデノ随伴ウイルスベクターを迅速、高感度に増幅可能なオリゴヌクレオチドプライマー、および当該プライマーを用いた前記ベクターの特異的検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを迅速、高感度に増幅可能なオリゴヌクレオチドプライマーの組み合わせ(プライマーセット)を見出し、本発明を完成するにいたった。
【0013】
すなわち本発明の第一の態様は、
AAVベクターの特定塩基配列の一部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、前記特定塩基配列の一部と相同的な配列を有する第二のプライマーとからなる、前記特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸を増幅するためのプライマーセットであって、
第一のプライマーが、配列番号58に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドであり、
第二のプライマーが、配列番号59に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである、
前記プライマーセットである。
【0014】
また本発明の第二の態様は、
第一のプライマーが、配列番号60に記載の塩基配列中、少なくとも連続する10塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、
第二のプライマーが、配列番号61に記載の塩基配列中、少なくとも連続する10塩基からなるオリゴヌクレオチドである、
前記第一の態様に記載のプライマーセットである。
【0015】
また本発明の第三の態様は、
第一のプライマーが、配列番号11から31のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第二のプライマーが、配列番号32から34および36から50のいずれかに記載の塩基からなるオリゴヌクレオチドである、
前記第二の態様に記載のプライマーセットである。
【0016】
また本発明の第四の態様は、第一または第二のプライマーのいずれか一方の5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーターがさらに付加されている、前記第一から第三の態様のいずれかに記載のプライマーセットである。
【0017】
さらに本発明の第五の態様は、前記第一から第四の態様のいずれかに記載のプライマーセットで増幅した、特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸を、前記核酸の一部とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なプローブを用いて、AAVベクターを検出する方法である。
【0018】
また本発明の第六の態様は、プローブを構成するオリゴヌクレオチドが、配列番号51もしくは52に記載の塩基配列またはその相補配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである、前記第五の態様に記載の方法である。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明において特定塩基配列とは、AAVベクターのうち、第一のプライマーとの相補領域の3’末端から第二のプライマーとの相同領域の5’末端までの塩基配列のことをいう。すなわち本発明では前記特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸が増幅されることになる。
【0021】
本発明における「ストリンジェントな条件」の例としては、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性(例えば、同一性や類似性)が高いポリヌクレオチド同士、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチド同士がハイブリダイズし、それより低い相同性を示すポリヌクレオチド同士がハイブリダイズしない条件である。限定されないが、具体的には、ハイブリダイゼーション条件として、42℃において、50%(v/v)ホルムアミド、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン、0.1%(w/v)フィコール(商品名)、0.1%(w/v)ポリビニルピロリドン、50mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)、150mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムが存在する条件や、本明細書の実施例に記載の核酸増幅条件があげられる。また、洗浄条件として、60℃、1xSSC、0.1% SDS、好ましくは0.1xSSC、0.1% SDS、さらに好ましくは65℃、0.1xSSC、0.1% SDS、より好ましくは68℃、0.1xSSC、0.1% SDS等のストリンジェントな条件に相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2~3回洗浄する条件等が挙げられる。さらに、当業者であれば、本明細書の記載、および、Molecular Cloning(Sambrook and Russell, Molecular Cloning :A Laboratory Manual 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Woodbury, NY (2001))等を参照し、本発明の第一のプライマー(配列番号58に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド)、および、本発明の第二のプライマー(配列番号59に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド)を容易に取得することができる。
【0022】
本発明は、AAVベクターの特定塩基配列の一部と相補的な配列を有する第一のプライマーとして、配列番号58に記載の塩基配列(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1560番目から1650番目までの塩基配列)とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを、前記特定塩基配列の一部と相同的な配列を有する第二のプライマーとして、配列番号59に記載の塩基配列(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1356番目から1516番目までの塩基配列の相補配列)とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いることを特徴としている。すなわち、前述したストリンジェントな条件下で、これら塩基配列と、十分に特異的かつ高効率にハイブリダイゼーション可能であれば、塩基配列の置換、欠失、付加、修飾があってもよい。プライマーの長さは任意に設定できるが、好ましくは10塩基以上、より好ましくは12塩基から45塩基までの範囲、さらにより好ましくは13塩基から43塩基までの範囲である。
【0023】
配列番号58に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドの一例として、配列番号60に記載の塩基配列(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1560番目から1650番目までの塩基配列の相補配列)中、少なくとも連続する10塩基からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。さらに具体的な例として、
配列番号11(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1633番目から1650番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号12(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1632番目から1649番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号13(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1631番目から1648番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号14(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1630番目から1647番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号15(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1625番目から1642番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号16(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1620番目から1637番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号17(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1615番目から1632番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号18(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1610番目から1627番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号19(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1600番目から1617番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号20(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1595番目から1612番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号21(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1591番目から1608番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号22(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1590番目から1607番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号23(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1585番目から1602番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号24(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1580番目から1597番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号25(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1575番目から1592番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号26(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1560番目から1577番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号27(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1595番目から1637番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号28(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1600番目から1637番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号29(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1610番目から1637番目までの塩基配列の相補配列)、
配列番号30(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1615番目から1637番目までの塩基配列の相補配列)および、
配列番号31(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1625番目から1637番目までの塩基配列の相補配列)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。
【0024】
配列番号59に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドの一例として、配列番号61に記載の塩基配列(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1356番目から1516番目までの塩基配列)中、少なくとも連続する10塩基からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。さらに具体的な例として、
配列番号32(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1499番目から1516番目までの塩基配列)、
配列番号33(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1479番目から1496番目までの塩基配列)、
配列番号34(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1429番目から1446番目までの塩基配列)、
配列番号36(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1356番目から1373番目までの塩基配列)、
配列番号37(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1374番目から1391番目までの塩基配列)、
配列番号38(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1370番目から1387番目までの塩基配列)、
配列番号39(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1392番目から1409番目までの塩基配列)、
配列番号40(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1391番目から1408番目までの塩基配列)、
配列番号41(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1410番目から1427番目までの塩基配列)、
配列番号42(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1413番目から1430番目までの塩基配列)、
配列番号43(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1428番目から1445番目までの塩基配列)、
配列番号44(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1446番目から1463番目までの塩基配列)、
配列番号45(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1459番目から1476番目までの塩基配列)、
配列番号46(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1429番目から1466番目までの塩基配列)、
配列番号47(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1429番目から1461番目までの塩基配列)、
配列番号48(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1429番目から1456番目までの塩基配列)、
配列番号49(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1429番目から1451番目までの塩基配列)および、
配列番号50(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1429番目から1441番目までの塩基配列)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。
【0025】
本発明のプライマーセット(前記第一のプライマーと前記第二のプライマーとの組み合わせ)は、PCR法など当業者が通常用いる核酸増幅法を利用したAAVベクターの特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸を増幅するためのプライマーセットとして有用である。なお第一または第二のプライマーのいずれか一方の5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーターをさらに付加させると、前記プロモーターに対応したRNAポリメラーゼを用いて、RNAポリメラーゼのプロモーターを付加した特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸が合成されるため、これら核酸から、NASBA法、TMA法、TRC法といった一定温度でRNAを増幅する方法により、RNAを増幅できる点で好ましい。プライマーの5’末端側に付加するプロモーターは、RNA増幅に用いるRNAポリメラーゼ(例えば、分子生物学の分野で汎用される、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼやSP6 RNAポリメラーゼ)に対応したプロモーターを用いればよい。また前記プロモーターに、転写効率に影響を及ぼすことが知られている転写開始領域をさらに付加してもよい。RNA増幅に用いるRNAポリメラーゼとしてT7 RNAポリメラーゼを用いたときの、プライマーの5’末端側に付加するプロモーター(T7プロモーター)の具体例として、配列番号57に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。
【0026】
本発明のプライマーセットを用いて増幅したAAVベクターの特定塩基配列またはその相補配列を含む核酸の検出は、従来から知られた核酸検出方法を利用することができる。具体的には、
(A)電気泳動や液体クロマトグラフィーを用いた方法、
(B)検出可能な標識で標識された、前記核酸の一部とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドプローブによるハイブリダイゼーション法、
(C)前記核酸の一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることで蛍光特性が変化するように設計された蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブを用いた方法、
などがあげられる。中でも前記(C)の方法は、前記核酸の増幅および検出を一段階かつ密閉容器内で行なえる点で好ましい。
【0027】
前記(C)の蛍光色素標識プローブの一例として、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用した蛍光標識プローブや、インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブ、TaqMan(商品名)プローブ、Molecular Beaconプローブがあげられる。
【0028】
前記プローブを構成するオリゴヌクレオチドの好ましい例として、配列番号51(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1477番目から1492番目までの塩基配列)に記載の塩基配列もしくは配列番号52(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列のうち、1590番目から1605番目までの塩基配列)に記載の塩基配列またはそれら塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドがあげられる。さらに具体的な例として、配列番号51もしくは52に記載の塩基配列またはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。
【0029】
なお配列番号51は配列番号61(すなわち第二のプライマーの領域)に、配列番号52は配列番号58(すなわち第一のプライマーの領域)に、それぞれ含まれる。したがって、
第一のプライマーとして、配列番号52よりも5’末端側にあるオリゴヌクレオチド(例えば、配列番号23から26のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド)を用いる場合は、前記プローブを構成するオリゴヌクレオチドは、配列番号51に記載の塩基配列またはその相補配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを用いればよく、
第二のプライマーとして、配列番号51よりも3’末端側にあるオリゴヌクレオチド(例えば、配列番号32または33に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド)を用いる場合は、前記プローブを構成するオリゴヌクレオチドは、配列番号52に記載の塩基配列またはその相補配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを用いればよい。
【0030】
本発明のプライマーセットを用いてAAVベクターを検出するには、例えば以下の(1)から(8)に示す工程により実施すればよい。
(1)AAVベクター核酸のうち、第一のプライマーと、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、鎖置換活性を有する酵素を用いて、前記核酸に相補的なDNAを合成する工程
(2)鎖置換活性を有する酵素を用いて、前記(1)で合成したDNAを3’末端側に相補領域を有した一本鎖DNAとする工程
(3)第二のプライマーと、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、鎖置換活性を有する酵素とを用いて、前記核酸に相同的なDNAを合成する工程
(4)第二のプライマーと、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素とを用いて、第一のプライマーおよび第二のプライマーのうちいずれか一方が有するRNAポリメラーゼのプロモーター配列を付加した前記(3)で合成したDNAから二本鎖DNAを合成する工程
(5)前記プロモーター配列に対応したRNAポリメラーゼを用いて、前記(4)で合成した二本鎖DNAからRNA転写産物を合成する工程
(6)第一のプライマーおよび第二のプライマーのうち前記RNA転写産物と相補的な配列を有したプライマーと、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素を用いて、前記RNA転写産物に相補的なcDNAを合成する工程
(7)リボヌクレアーゼH活性を有する酵素を用いて、前記cDNAを一本鎖DNAとする工程
(8)前記(7)で得られた一本鎖DNAを鋳型として、連続的にRNA転写産物を合成する工程。
【0031】
前記(1)、(3)および(4)の工程で用いるDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、前記(6)の工程で用いるRNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、および前記(7)の工程で用いるリボヌクレアーゼH活性を有する酵素は、それぞれ別個あるいは種々の組合せで添加してもよいが、前記活性を併せ持つレトロウイルス由来の逆転写酵素を使用すると好ましい。前記逆転写酵素の一例として、分子生物学の分野で汎用される、AMV(Avian Myeloblastosis Virus)逆転写酵素、MMLV(Molony Murine Leukemia Virus)逆転写酵素、RAV(Rous Associated Virus)逆転写酵素、HIV(Human Immunodeficiency Virus)逆転写酵素があげられる。中でもAMV逆転写酵素およびその誘導体が特に好ましい。なおこれら逆転写酵素は単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。各酵素の反応系への添加量は、本明細書の記載および公知の核酸増幅技術を参照し、反応系に応じ適宜決定すればよい。
【0032】
前記(2)および(3)の工程で用いる鎖置換活性を有する酵素は、鋳型となる二本鎖DNAの水素結合を自ら解離しつつ、新しいDNA鎖を合成する酵素のことをいう。なお、前記DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素が鎖置換活性を有する酵素としても機能するものであれば、これらの活性を併せ持つ酵素を、DNA依存性DNAポリメラーゼおよび鎖置換活性を有する酵素として、使用してもよい。鎖置換活性を有する酵素の一例として、E.coli DNAポリメラーゼI、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、T7またはT5バクテリオファージDNAポリメラーゼ、AMV逆転写酵素、MMLV逆転写酵素、HIV逆転写酵素、Bsu DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、Aac DNAポリメラーゼ、phi29 DNAポリメラーゼ、96-7 DNAポリメラーゼ、Bca DNAポリメラーゼがあげられる。中でも96-7 DNAポリメラーゼが好ましい。またヘリカーゼも、鎖置換効果、すなわち、同じ配列の核酸合成と結びつけられた核酸の置換を生じることから、本発明における鎖置換活性を有する酵素として用いることができる。さらにRecAや一本鎖結合蛋白質も、本発明における鎖置換活性を有する酵素として用いることができる。なおこれら逆転写酵素は単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。鎖置換活性を有する酵素の添加量は、本明細書の記載および公知の核酸増幅技術を参照し、反応系に応じ適宜決定すればよい。
【0033】
前述した態様によるAAVベクター検出方法における反応温度は、使用する各酵素の耐熱性や活性、ならびにプライマー/プローブのTm等に依存するが、使用する酵素がAMV逆転写酵素、T7 RNAポリメラーゼおよび96-7 DNAポリメラーゼであり、プライマー/プローブの長さが13塩基から43塩基の範囲である場合は、35℃から65℃の範囲で反応温度を設定すればよく、40℃から50℃の範囲で設定するとより好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明のプライマーセットは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに特異的な配列(特定塩基配列)およびその相補配列の一部にそれぞれハイブリダイスすることにより、AAVベクターの特定塩基配列またはその相補配列を迅速、高感度に増幅できる。
【0035】
本発明のプライマーセットを用いたAAVベクター検出法により、当該ベクターを迅速、高感度、かつ特異性高く検出できる。
【実施例
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて詳細に説明するが、本実施例は本発明の実施の一形態を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0037】
実施例1 アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターモデル一本鎖DNAの調製
AAVベクターモデル一本鎖DNA(以下、単に「AAV一本鎖DNA」とも表記する)を、Long ssDNA Preparation Kit for 3.0 kb(BioDynamics Laboratory製)を用いて下記の方法で合成した。
【0038】
(1)鋳型として前記キット付属のpLSODN-3(配列番号3)を、プライマーとして配列番号1および2に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、PCRにより核酸増幅した。具体的には、以下の組成からなる反応液を滅菌水で20μLとなるようPCRチューブ16本それぞれに調製し、98℃で2分間加熱後、98℃で10秒-65℃で5秒-72℃で35秒のサイクルを40回行ない、その後72℃で1分間加熱することでPCRを実施した。
【0039】
反応液の組成:
1×PrimeSTAR MAX Premix(タカラバイオ製)
0.2μM プライマー(配列番号1)
0.2μM プライマー(配列番号2)
1ng 鋳型(配列番号3)
(2)得られたPCR産物を、0.8%(w/v)アガロースゲルを用いた電気泳動に供し、PCR産物に相当するバンドを切り出し後、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。
【0040】
(3)鋳型としてpAAV-CMV(配列番号4)を、プライマーとして配列番号6および配列番号7に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、PCRにより核酸増幅した。具体的には、以下の組成からなる反応液を滅菌水で20μLとなるようPCRチューブ8本それぞれに調製し、98℃で2分間加熱後、98℃で10秒-60.4℃で5秒-72℃で12秒のサイクルを40回行ない、その後72℃で1分間加熱することでPCRを実施した。増幅したPCR産物は、前記(2)と同様な方法で精製した。
【0041】
反応液の組成:
1×PrimeSTAR MAX Premix(タカラバイオ製)
0.2μM Fプライマー(配列番号6)
0.2μM Rプライマー(配列番号7)
1ng 鋳型(配列番号4)
(4)プライマーとして配列番号8および5に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた他は、前記(3)と同様な方法でPCRを実施した。増幅したPCR産物は、前記(2)と同様な方法で精製した。
【0042】
(5)鋳型として前記(4)で得られた精製PCR産物を、プライマーとして配列番号9および10に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた他は、前記(3)と同様な方法でPCRを実施した。増幅したPCR産物は、前記(2)と同様な方法で精製した。
【0043】
(6)前記(1)、前記(3)および前記(5)で得られた精製PCR産物を混合後、In Fusion試薬(タカラバイオ製)を用いて以下に示す方法でプラスミドを合成した。本方法により目的のインサート(AAV一本鎖DNA)が含まれていたプラスミドを得た。
(6-1)In-Fusion HD Enzyme(タカラバイオ製)を前記精製PCR混合溶液に添加し、50℃で15分間反応後、その一部で大腸菌JM109株を形質転換した。
(6-2)カルベニシリンナトリウムを含む寒天培地に塗布し、37℃で一昼夜培養した。(6-3)コロニーダイレクトPCRにより目的のインサートを含むコロニーを再度培養し、プラスミドを抽出後、塩基配列を解析し、目的のインサートが含まれていることを確認した。インサート(AAV一本鎖DNA)の塩基配列を配列番号56に示す。
【0044】
(7)前記(6)で得られた各プラスミドを、ニッキング酵素Nt BspQIおよびNb BsrDI(いずれもNew England Biolabs製)を用いて、インサート部位にニックを挿入した。
【0045】
(8)エタノール沈殿後、Denaturing Gel-Loading buffer(BioDynamics Laboratory製)を添加し、一本鎖DNAを遊離した状態で、アガロースゲル電気泳動により泳動した。一本鎖DNAと思われるバンドを切り出し、AAV一本鎖DNAを得た。
【0046】
(9)前記(8)で得られた一本鎖DNAを、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific製)を用いて吸光度測定により濃度を求め、塩基長から疑似コピー数を算出した。
【0047】
実施例2 AAV一本鎖DNAのqPCRによるコピー数算出
(1)AAVpro Titration Kit for Real Time PCR(タカラバイオ製)に含まれるPositive Controlを標準濃度として、実施例1で調製したAAV一本鎖DNA溶液の濃度をqPCRで算出した。具体的には、下記組成からなる反応液18μLに対し、各種濃度に希釈した前記Positive Control、および前記一本鎖DNAまたはプラスミドを2μL添加し、25℃で2分-53℃で10分-95℃で2分加熱後、95℃で3秒-60℃で30秒のサイクルを40回繰り返す条件でqPCRを実施した。
【0048】
反応液の組成:20μL中の最終濃度
TaqPath qPCR Master Mix
900nM プライマー(配列番号16)
900nM プライマー(配列番号34)
250nM TaqManプローブ(配列番号52)
(2)前記Positive Controlの検量線より、前記一本鎖DNAやプラスミドの濃度を算出した。以降の実施例においてコピー数は、本実施例で算出したコピー数を使用している。
【0049】
実施例3 AAV一本鎖DNAの検出(TaqManプローブ使用)
実施例1で調製し、実施例2で濃度決定した、AAV一本鎖DNA溶液を試料とし、当該試料中に含まれる前記一本鎖DNAを、TRC法による増幅とTaqManプローブによる検出を試みた。
【0050】
(1)前記AAV一本鎖DNA溶液(以下、「NS3溶液」とも表記する)を、0.01%(w/v)コール酸ナトリウム、0.01%(w/v)アジ化ナトリウムを含むTE(Tris-EDTA)バッファーを用いて3×10コピー/2μLとなるように希釈し、これをDNA試料とした。
【0051】
(2)以下の組成からなる反応液10μLを0.5mL容量PCRチューブ(Individual Dome Cap PCR Tube、SSI製)に分注した後、前記(1)で調製したDNA試料2μLを添加した。なお本明細書の実施例において、第一のプライマーは、その5’末端側にT7プロモーターである、配列番号57に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを付加している。
【0052】
反応液の組成:濃度は後述の開始剤添加後(20μL中)の最終濃度
60mM Tris-HCl緩衝液(pH8.65)
各0.3mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP
各3.0mM ATP、CTP、GTP、UTP
3.4mM ITP
67mM トレハロース
50nM TaqManプローブ(配列番号51または52)
1.0μM 第一のプライマー(配列番号14から16および21のいずれか)
1.0μM 第二のプライマー(配列番号32から35のいずれか)
1.33U 96-7 DNAポリメラーゼ
4.3U AMV逆転写酵素
95U T7 RNAポリメラーゼ
(3)上記の反応液を46℃で3分間保温後、以下の組成からなる開始剤8μLを添加した。
【0053】
開始剤の組成:濃度は開始剤添加後(20μL中)の最終濃度
19.0mM 塩化マグネシウム
95.0mM 塩化カリウム
3.8%(w/v) Glycerol
10.5%(v/v) DMSO
(4)引き続きPCRチューブを直接測定可能な温調機能付き蛍光分光光度計を用い、46℃で反応させると同時に反応液の蛍光強度(励起波長470nm、蛍光波長520nm)を経時的に30分間測定した。
【0054】
(5)開始剤添加時を0分として、30分後の反応液の蛍光強度比(所定時間の蛍光強度値をバックグラウンドの蛍光強度比で割った値)と、同様な条件で陰性コントロール(0コピー)を測定したときの蛍光強度比との差が0.3を超えたとき、検出可と判定した。
【0055】
結果を表1に示す。第一のプライマーが配列番号14から16および21のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号32から34のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、プライマーセットを用いることで、3×10コピー/testのAAV一本鎖DNAを増幅できた。一方、第二のプライマーとして配列番号35に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いると、3×10コピー/testのAAV一本鎖DNAは増幅できなかった。なおTaqManプローブを構成するオリゴヌクレオチドは、配列番号51および52に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド、いずれを用いても増幅したAAV一本鎖DNAを特異的に検出した。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例4 AAV一本鎖DNAの検出(Molecular Beaconプローブ使用、その1)
(1)NS3溶液を、0.01%(w/v)コール酸ナトリウムおよび0.01%(w/v)アジ化ナトリウムを含むTEバッファーを用いて、3×10コピー/2μLまたは3×10コピー/2μLとなるように希釈し、これらをDNA試料とした。
【0058】
(2)以下の組成からなる反応液10μLを0.5mL容量PCRチューブ(Individual Dome Cap PCR Tube、SSI社製)に分注した後、前記(1)で調製したDNA試料2μLを添加した。なおMolecular Beaconプローブを構成する、配列番号53に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、配列番号51に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの両末端に、ステムループ構造を形成させるためのオリゴヌクレオチド(5’末端側6塩基、3’末端側7塩基)を付加させたものである。
【0059】
反応液の組成:濃度は後述の開始剤添加後(20μL中)の最終濃度
60mM Tris-HCl緩衝液(pH8.65)
各0.3mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP
各3.0mM ATP、CTP、GTP、UTP
3.4mM ITP
67mM トレハロース
100nMまたは75nM Molecular Beaconプローブ(配列番号53、Integrated DNA Technologiesに合成委託)
1.0μM 第一のプライマー(配列番号14から16および21のいずれか)
1.0μM 第二のプライマー(配列番号34または35)
1.33U 96-7 DNAポリメラーゼ
4.3U AMV逆転写酵素
95U T7 RNAポリメラーゼ
(3)上記の反応液を46℃で3分間保温後、実施例3(3)に記載の組成からなる開始剤8μLを添加した。
【0060】
(4)実施例3(4)と同様の方法で30分間測定し、実施例3(5)と同じ基準で検出の可/不可を判定した。
【0061】
結果を表2に示す。なお表2において「±(一部検出)」は、複数回測定し、その結果の一部で「検出可」と判定されたことを示している。検出用プローブを、TaqManプローブ(配列番号51、実施例3)からMolecular Beaconプローブ(配列番号53)に変えても、増幅した3×10コピー/testのAAV一本鎖DNAを特異的に検出した。なおプライマーセットとして、配列番号16に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(第一のプライマー)と、配列番号34に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(第二のプライマー)との組み合わせを用いた場合、3×10コピー/testのAAV一本鎖DNAを増幅できた。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例5 AAV一本鎖DNAの検出(Molecular Beaconプローブ使用、その2)
(1)NS3溶液を、0.01%(w/v)コール酸ナトリウムおよび0.01%(w/v)アジ化ナトリウムを含むTEバッファーを用いて3×10コピー/2μLとなるように希釈し、これをDNA試料とした。
【0064】
(2)以下の組成からなる反応液10μLを0.5mL容量PCRチューブ(Individual Dome Cap PCR Tube、SSI社製)に分注した後、前記(1)で調製したDNA試料2μLを添加した。なおMolecular Beaconプローブを構成する、配列番号54に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、配列番号53に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのうち、ステムループ構造を形成させるため3’末端側に付加したオリゴヌクレオチドを「CCCCGGG」から「CCCGGG」としたものである。
【0065】
反応液の組成:濃度は後述の開始剤添加後(20μL中)の最終濃度
60mM Tris-HCl緩衝液(pH8.65)
各0.3mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP
各2.75mM ATP、CTP、GTP、UTP
4.0mM ITP
67mM トレハロース
75nM Molecular Beaconプローブ(配列番号54、Integrated DNA Technologiesに合成委託)
1.0μM 第一のプライマー(配列番号11から20および22から26のいずれか)
1.0μM 第二のプライマー(配列番号34)
1.33U 96-7 DNAポリメラーゼ
1.42U AMV逆転写酵素
95U T7 RNAポリメラーゼ
(3)上記の反応液を46℃で3分間保温後、以下の組成からなる開始剤8μLを添加した。
【0066】
開始剤の組成:濃度は開始剤添加後(20μL中)の最終濃度
19.0mM 塩化マグネシウム
80.0mM 塩化カリウム
3.8%(w/v) Glycerol
10.5%(v/v) DMSO
(4)実施例3(4)と同様の方法で30分間測定した。開始剤添加時を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時間の蛍光強度値をバックグラウンドの蛍光強度比で割った値)が2.8を超えた時間を検出時間とした。
【0067】
結果を表3に示す。第一のプライマーが配列番号11から20および22から26のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号34に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、プライマーセットを用いることで、3×10コピー/testのAAV一本鎖DNAを増幅できた。
【0068】
【表3】
【0069】
実施例6 AAV一本鎖DNAの検出(Molecular Beaconプローブ使用、その2)
(1)NS3溶液を、0.01%(w/v)コール酸ナトリウム、0.01%(w/v)アジ化ナトリウムを含むTEバッファーを用いて3×10コピー/2μL、3×10コピー/2μLまたは3×10コピー/2μLとなるように希釈し、これらをDNA試料とした。
【0070】
(2)実施例5(2)に記載の組成からなる反応液10μLを0.5mL容量PCRチューブ(Individual Dome Cap PCR Tube、SSI社製)に分注した後、前記(1)で調製したDNA試料2μLを添加した。ただし前記組成のうち、Molecular Beaconプローブを構成するオリゴヌクレオチドは配列番号54または55に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(いずれもIntegrated DNA Technologiesに合成委託)を、第一のプライマーは配列番号16に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、第二のプライマーは配列番号32から45のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いており、Molecular Beaconプローブの濃度は、配列番号54に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの場合50nMであり、配列番号55に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの場合100nMである。
【0071】
(3)上記の反応液を46℃で3分間保温後、実施例5(3)に記載の組成からなる開始剤8μLを添加した。
【0072】
(4)実施例3(4)と同様の方法で30分間測定し、実施例5(4)と同様な方法で検出時間を求めた。
【0073】
結果を表4に示す。第二のプライマーとして配列番号35に記載の塩基配列(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列(NS3)のうち、1338番目から1355番目までの塩基配列)からなるオリゴヌクレオチドを用いた場合は、AAV一本鎖DNAが3×10コピー/testあっても増幅しなかった。一方、第一のプライマーが配列番号16に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号32から34および36から45のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、プライマーセットを用いることで、3×10コピー/testのAAV一本鎖DNAを増幅できた。なおMolecular Beaconプローブを構成するオリゴヌクレオチドとして、配列番号55に記載の塩基配列(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列(NS3)のうち、1564番目から1579番目までの塩基配列の両末端にステムループ構造を形成させるためのオリゴヌクレオチド(5’末端側6塩基、3’末端側6塩基)を付加した配列)からなるオリゴヌクレオチドを用いた場合、プライマーセットによっては偽陽性が発生することから、当該プローブではAAV一本鎖DNAの特異的検出は困難といえる。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例7 第一のプライマー長さの検討
(1)NS3溶液を、0.01%(w/v)コール酸ナトリウムおよび0.01%(w/v)アジ化ナトリウムを含むTEバッファーを用いて3×10コピー/2μLとなるように希釈し、これを一本鎖DNA試料とした。
【0076】
(2)実施例5(2)に記載の組成からなる反応液10μLを0.5mL容量PCRチューブ(Individual Dome Cap PCR Tube、SSI社製)に分注した後、前記(1)で調製したDNA試料2μLを添加した。ただし前記組成のうち、Molecular Beaconプローブを構成するオリゴヌクレオチドは配列番号54に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、第一のプライマーは配列番号16および27から30のいずれかに記載の配列からなるオリゴヌクレオチドまたは「CTCCATCA(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列(NS3)のうち、1630番目から1637番目までの塩基配列の相補配列)」を、第二のプライマーは配列番号34に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いている。
【0077】
(3)上記の反応液を46℃で3分間保温後、実施例5(3)に記載の組成からなる開始剤8μLを添加した。
【0078】
(4)実施例3(4)と同様の方法で20分間測定し、実施例5(4)と同様な方法で検出時間を求めた。
【0079】
結果を表5に示す。第一のプライマーとして配列番号27(プライマー長さ43塩基)、28(プライマー長さ38塩基)、29(プライマー長さ28塩基)、30(プライマー長さ23塩基)、16(プライマー長さ18塩基)および31(プライマー長さ13塩基)のいずれかの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いたときは、3×10コピー/testのAAV一本鎖DNAを増幅できた一方、「CTCCATCA(プライマー長さ8塩基)」を用いたときは増幅できなかった。本結果より、第一のプライマーの長さ(ただし、5’末端側に付加するT7プロモーター配列は除外)は少なくとも10塩基必要なことがわかる。
【0080】
【表5】
【0081】
実施例8 第二のプライマー長さの検討
第一のプライマーとして配列番号16に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、第二のプライマーは配列番号34および46から50のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドまたは「TTGGGATT(配列番号56に記載の塩基配列からなるAAVベクター部分配列(NS3)のうち、1429番目から1436番目までの塩基配列)」を、それぞれ用いた他は、実施例7と同様な方法で測定した。
【0082】
結果を表6に示す。第二のプライマーとして配列番号46(プライマー長さ38塩基)、47(プライマー長さ33塩基)、48(プライマー長さ28塩基)、49(プライマー長さ23塩基)、34(プライマー長さ18塩基)および50(プライマー長さ13塩基)のいずれかの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いたときは、3×10コピー/testのAAV一本鎖DNAを増幅できた一方、「TTGGGATT(プライマー長さ8塩基)」を用いたときは増幅できなかった。本結果より、第二のプライマーの長さは少なくとも10塩基必要なことがわかる。
【0083】
【表6】
【配列表】
0007516835000001.app