(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】接着剤セット、並びに構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20240709BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2020082573
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峻
(72)【発明者】
【氏名】松宮 久雄
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔大
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-141776(JP,A)
【文献】特開2014-231549(JP,A)
【文献】特開昭59-232158(JP,A)
【文献】特開2018-090671(JP,A)
【文献】特開2005-239753(JP,A)
【文献】特開2015-160912(JP,A)
【文献】特開平10-017844(JP,A)
【文献】特開2020-066639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0134932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/04
C09J 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤及び硬化剤を含む接着剤セットであって、
前記主剤が、ウレタンプレポリマーと、分子量1000以下のポリイソシアネートオリゴマーとを含有し、
前記硬化剤が、ポリオールと、炭素数6以上のモノオールとを含有
し、
前記炭素数6以上のモノオールが、直鎖状の飽和脂肪族アルコールを含む、
接着剤セット。
【請求項2】
第1の基材と、
第2の基材と、
前記第1の基材及び前記第2の基材を互いに接着する接着剤層と、
を備え、
前記接着剤層が、請求項1に記載の接着剤セットにおける前記主剤及び前記硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有する、
構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の構造体の製造方法であって、
前記主剤及び前記硬化剤を含む接着剤組成物を介して、前記第1の基材と前記第2の基材とを貼り合わせる工程を備える、
構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤セット、並びに構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディ、フロントドア、リアドア、バックドア、フロントバンパー、リアバンパー、ロッカーモール等の内外装部品には一般的に鋼板が使用されているが、近年の燃費改善要求に応えるため、軽量化が求められている。このため、鋼板に代えてポリプロピレン等のプラスチック材料を自動車の内外装部品として使用する場合が増えている。なお、ポリプロピレン等のプラスチック材料は鋼板と比較して強度が低いため、タルク、ガラスフィラー等を添加して強度を向上させることが一般的である。
【0003】
ポリプロピレン等のプラスチック製自動車部品同士の接着剤としてはウレタン系接着剤組成物が提案されている。ウレタン系接着剤組成物としては、空気中の湿気等によって硬化する、湿気硬化型と呼ばれる一液硬化型の接着剤と、主剤と硬化剤とで構成される接着剤セットを用いて、主剤と硬化剤とを混合する二液硬化型の接着剤が知られている。二液硬化型のウレタン系接着剤組成物では、主剤に含まれるイソシアネート基(NCO基)成分と硬化剤に含まれるヒドロキシ基(OH基)との間での架橋反応が進行して硬化する。これらの中でも、接着工程における作業性の観点から、可使時間(ポットライフ、多液塗料において化学反応等で塗料が硬化し始めるまでの時間)を充分に確保でき、かつ速硬化が可能となる二液硬化型の接着剤が好まれる傾向にある。
【0004】
一般に、ポリプロピレン基材は、表面の極性が小さく、難接着であることから、接着を容易にするために、基材表面に極性基を導入する表面処理が行われる。表面処理としては、例えば、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理等が挙げられる。さらに、表面処理を施したポリプロピレン基材同士の接着にウレタン系接着剤組成物を直接適用することは困難であるため、各々のポリプロピレン基材に前処理としてプライマー処理を行ってからウレタン系接着剤組成物を適用することが一般的である。しかし、近年、工程の簡略化、作業環境改善等の観点から、ウレタン系接着剤組成物には、プライマー処理を行わない場合の接着性(すなわち、ノンプライマー接着性)の向上が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ウレタンプレポリマーとイソシアネートシラン化合物とを含有する主剤と、ポリブタジエンジオールを含有する硬化剤とを作業時に混合する二液硬化型のウレタン系接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の二液硬化型のウレタン系接着剤組成物は、ノンプライマー接着性が充分でなく、未だ改善の余地がある。一方で、ノンプライマー接着性を向上させると、基材にせん断がかかった場合に、基材凝集破壊(基材表層破壊)が発生して、基材を破損してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本開示は、優れたノンプライマー接着性を示し、かつ基材凝集破壊(基材表層破壊)が発生し難い接着剤組成物を調製することが可能な接着剤セットを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面は、接着剤セットに関する。当該接着剤セットは、主剤及び硬化剤を含む。主剤は、ウレタンプレポリマーと、分子量1000以下のポリイソシアネートオリゴマーとを含有する。硬化剤は、ポリオールと、炭素数6以上のモノオールとを含有する。このような接着剤セットを用いて調製される接着剤組成物は、優れたノンプライマー接着性を示し、かつ基材凝集破壊(基材表層破壊)が発生し難いものとなり得る。
【0010】
本開示の他の一側面は、構造体に関する。当該構造体は、第1の基材と、第2の基材と、第1の基材及び第2の基材を互いに接着する接着剤層とを備える。接着剤層は、上記の接着剤セットにおける主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有する。
【0011】
本開示の他の一側面は、構造体の製造方法に関する。当該構造体の製造方法は、主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物を介して、第1の基材と第2の基材とを貼り合わせる工程を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、優れたノンプライマー接着性を示し、かつ基材凝集破壊(基材表層破壊)が発生し難い接着剤組成物を調製することが可能な接着剤セットが提供される。また、本開示によれば、このような接着剤セットを用いた構造体及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、接着性試験後の試験体の破壊状態を示す模式図である。
図1(a)は、接着性試験前の試験体を示す模式断面図である。
図1(b)は、試験体の破壊状態が凝集破壊であることを示す模式断面図である。
図1(c)は、試験体の破壊状態が界面破壊であることを示す模式断面図である。
図1(d)は、試験体の破壊状態が基材凝集破壊(基材表層破壊)であることを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0015】
[接着剤セット]
一実施形態の接着剤セットは、主剤及び硬化剤を含む。本実施形態の接着剤セットは、主剤と硬化剤とを混合することによって、接着剤組成物(二液硬化型のウレタン系接着剤組成物)を調製することができる。接着剤組成物(二液硬化型のウレタン系接着剤組成物)は時間経過とともに硬化し(接着剤組成物の硬化物を形成し)、基材同士を接着する接着剤層として作用し得る。
【0016】
(A)主剤は、(a)ウレタンプレポリマーと、(b)分子量1000以下のポリイソシアネートオリゴマーとを含有する。(B)硬化剤は、(c)ポリオールと、(d)炭素数6以上のモノオールとを含有する。(A)主剤及び(B)硬化剤の少なくとも一方は、(e)硬化触媒、(f)カーボンブラック、(g)充填剤、又は(h)可塑剤のいずれかをさらに含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
【0017】
(a)ウレタンプレポリマー
(a)成分は、(a-1)活性水素基を2個以上有する化合物と(a-2)イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物との反応生成物である。(a)成分は、好ましくは(末端基として)イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーである。このような(a)成分は、イソシアネート基の数が過剰となるように反応させることによって、末端基としてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得ることができる。なお、(a-1)成分及び/又は(a-2)成分を2種以上使用することによって、反応生成物である(a)成分は複数存在し得る。活性水素基としては、例えば、ヒドロキシ基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)、アミノ基(NH2基)、メルカプト基(SH基)等が挙げられる。(a)成分は、(a-1)成分と(a-2)成分との反応生成物を単離して用いてもよく、反応系中で反応させたものを単離しないでそのまま用いてもよい。
【0018】
(a-1)成分は、ヒドロキシ基(OH基)を2個以上有する化合物であるポリオールであってよく、例えば、ポリエーテルポリオールであってもよい。ポリエーテルポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)であってよい。
【0019】
(a-1)成分の数平均分子量は、20000以下であってよく、18000以下、15000以下、又は12000以下であってもよい。(a-1)成分の数平均分子量が20000以下であると、架橋点が増加し、硬化時の機械物性が向上する傾向にある。(a-1)成分の数平均分子量は、特に制限されないが、例えば、1000以上であってもよい。
【0020】
なお、本明細書中、「数平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を利用し、標準ポリスチレンの検量線を使用して算出したものである。
GPC測定条件は、例えば、下記のとおりである。
測定器:ACQUITY UPLC APCシステム(Waters社製)
カラム:APC XT-900、APC XT-200、APC XT-125、APC XT-45 (Waters社製)
キャリア:テトラヒドロフラン(THF)
検出器:示差屈折率検出器
サンプル:0.5質量%THF溶液
検量線:ポリスチレン
【0021】
(a-2)成分としては、例えば、イソシアネート基が芳香族炭化水素と結合している芳香族ポリイソシアネート、イソシアネート基が脂環式炭化水素と結合している脂環族ポリイソシアネート、イソシアネート基が脂肪族炭化水素と結合している脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。(a-2)成分は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(a-2)成分は、芳香族ポリイソシアネートであってよく、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートであってもよい。ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、例えば、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)(2,4’-MDI)等が挙げられる。
【0022】
(a-1)成分と(a-2)成分とを反応させて(a)成分を得る場合、必要に応じて、(a-3)ウレタンプレポリマー形成用触媒を用いてもよい。(a-3)成分は、後述の(e)成分(硬化触媒)で例示されるウレタン化反応又は尿素化反応を促進する公知の触媒を使用することができる。
【0023】
(a-3)成分の含有量は、(a-1)成分及び(a-2)成分の種類等に合わせて適宜調整することができる。(a-3)成分の含有量は、(a-1)成分及び(a-2)成分の全量に対して、例えば、0.001~5質量%、0.005~1質量%、又は0.01~0.1質量%であってよい。
【0024】
(a)成分((a-1)成分、(a-2)成分、及び(a-3)成分の合計)の含有量は、(A)主剤の全量を基準として、20~55質量%、25~50質量%、又は30~45質量%であってよい。(a)成分の含有量が、(A)主剤の全量を基準として、20質量%以上であると、硬化時の伸び率の低下を防ぐことができる傾向にあり、(a)成分の含有量が、(A)主剤の全量を基準として、55質量%以下であると、養生後(硬化後)の接着特性の低下を防ぐことができる傾向にある。
【0025】
(b)分子量1000以下のポリイソシアネートオリゴマー
(A)主剤が主に(b)成分を含有することによって、優れたノンプライマー接着性を示す接着剤組成物を調製することが可能となる。このような効果を奏する理由は必ずしも定かではないが、例えば、架橋に関わる主剤に含まれるイソシアネート基(NCO基)成分の一部を低分子量成分に変更することによって、接着剤組成物が基材表面の凹凸に追従し易くなったためであると考えられる。一方で、例えば、主剤のNCO基成分の一部として、低分子量成分を用いることによって、接着剤組成物と基材表面との極性が近づき、接着剤組成物の濡れ性が改善され、基材表面と共有結合を形成する可能性のあるNCO基成分が、より基材表面に近づき易くなったためであるとも考えられる。
【0026】
(b)成分は、例えば、分子量1000以下のイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートの多量体であってよく、分子量1000以下のイソシアネート基を2個有するジイソシアネートの多量体であってもよい。このような多量体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ジイソシアネートの多量体;ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネートの多量体などが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートの多量体は、例えば、脂肪族ジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート体、ビウレット体、又はトリメチロールプロパン(TMP)のアダクト体)であってよい。(b)成分は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。脂肪族ジイソシアネートの多量体は、HDIの3量体であってよい。芳香族ジイソシアネートの多量体は、MDIの多量体であってよい。(b)成分は、分子量1000以下の脂肪族ジイソシアネートの多量体及び分子量1000以下の芳香族ジイソシアネートの多量体の少なくとも一方を含んでいればよいが、ノンプライマー接着性により一層優れることから、分子量1000以下の脂肪族ジイソシアネートの多量体及び分子量1000以下の芳香族ジイソシアネートの多量体の両方を含むことが好ましい。
【0027】
分子量1000以下の脂肪族ジイソシアネートの多量体(HDIの3量体)の市販品としては、例えば、スミジュールN3300(商品名、住化バイエルウレタン株式会社製)、デュラネート24A-100(商品名、旭化成株式会社製)、デュラネートE402-100(商品名、旭化成株式会社製)等が挙げられる。分子量1000以下の芳香族ジイソシアネートの多量体(MDIの多量体)としては、例えば、ミリオネートMR-100(商品名、東ソー株式会社製)、デスモジュールVKS20(商品名、住化コベストロウレタン株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
(b)成分の分子量は、平均分子量であってもよい。(b)成分の分子量又は平均分子量は、1000以下であり、900以下、800以下、700以下、又は600以下であってもよく、100以上、200以上、300以上、又は400以上であってもよい。
【0029】
(b)成分の含有量は、(A)主剤の全量を基準として、1~15質量%、3~12質量%、又は5~10質量%であってよい。(b)成分の含有量が、(A)主剤の全量を基準として、1質量%以上であると、ノンプライマー接着性が向上し、基材表面と接着剤組成物との接着耐久性の低下を防ぐことができる傾向にある。(b)成分の含有量が、(A)主剤の全量を基準として、15質量%以下であると、硬化時により充分な柔軟性が付与される傾向にある。
【0030】
(c)ポリオール
(c)成分は、ヒドロキシ基(OH基)を2個以上有する化合物であるポリオールであれば特に制限されないが、例えば、上記の(a-1)成分で例示されるポリエーテルポリオールであってよい。(c)成分の数平均分子量は、(a-1)成分の数平均分子量と同様であってよい。(c)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(c)成分は、架橋反応が進行し易いことから、ヒドロキシ基(OH基)を2個有する化合物とヒドロキシ基(OH基)を3個以上有する化合物とを含むことが好ましい。
【0031】
(c)成分の含有量は、(B)硬化剤の全量を基準として、20~60質量%、25~55質量%、又は30~50質量%であってよい。(c)成分の含有量が、(B)硬化剤の全量を基準として、20質量%以上であると、硬化時の接着剤組成物の柔軟性の低下を防ぐことができる傾向にあり、(c)成分の含有量が、(B)硬化剤の全量を基準として、60質量%以下であると、硬化時の強度の低下を防ぐことができる傾向にある。
【0032】
(c)成分がヒドロキシ基(OH基)を2個有する化合物とヒドロキシ基(OH基)を3個以上有する化合物とを含む場合、ヒドロキシ基(OH基)を3個以上有する化合物の含有量は、(c)成分の全量を基準として、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上であってよく、100質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0033】
(d)炭素数6以上のモノオール
(b)成分が、例えば、分子量1000以下の脂肪族ジイソシアネートの多量体及び分子量1000以下の芳香族ジイソシアネートの多量体の両方を含む場合、基材にせん断がかかったときに、基材凝集破壊(基材表層破壊)が発生して、基材を破損してしまうおそれがある。これに対して、(B)硬化剤が主に(d)成分を含有することによって、基材凝集破壊(基材表層破壊)が発生し難い接着剤組成物を調製することが可能となる。このような効果を奏する理由は必ずしも定かではないが、例えば、(B)硬化剤として(d)成分を用いることによって、(A)主剤に含まれるイソシアネート基(NCO基)成分と(B)硬化剤に含まれるヒドロキシ基(OH基)との間での架橋反応を抑制し、形成される接着剤組成物の硬化物に対して柔軟性を付与できたためと考えられる。
【0034】
(d)成分は、ヒドロキシ基(OH基)を1個有する化合物であるモノオールであって、炭素数6以上であれば特に制限なく用いることができる。(d)成分は、例えば、直鎖状、分岐状、若しくは環状の飽和脂肪族アルコール又は不飽和脂肪族アルコールであってよく、これらの炭素原子の1以上が酸素原子に置換されたモノオールであってもよい。(d)成分は、好ましくは直鎖状の飽和脂肪族アルコールを含む。直鎖状の飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、1-ヘキサノール(沸点:157℃)、1-オクタノール(沸点:196℃)、1-デカノール(沸点:231℃)、1-ドデカノール(沸点:262℃)、1-テトラデカノール(沸点:389℃)、1-ヘキサデカノール(沸点:344℃)、1-オクタデカノール(沸点:335℃)、1-エイコサノール(沸点:373℃)等が挙げられる。
【0035】
(d)成分の炭素数は6以上であり、8以上又は10以上であってよい。(d)成分の炭素数が6以上であると、揮発し難いことから接着剤組成物中に残存し易く、作業性に優れる傾向にある。(d)成分の炭素数の上限は、特に制限されないが、溶解性の観点から、例えば、20以下であってよく、18以下又は16以下であってよい。
【0036】
(d)成分の沸点は、例えば、150℃以上、170℃以上、190℃以上、又は210℃以上であってよく、400℃以下、380℃以下、360℃以下、340℃以下、又は320℃以下であってもよい。
【0037】
(d)成分の含有量は、(B)硬化剤の全量を基準として、0.01~10質量%、0.1~5質量%、又は0.5~3質量%であってよい。(d)成分の含有量が、(B)硬化剤の全量を基準として、0.01質量%以上であると、架橋反応の抑制により柔軟性が向上する傾向にある。(d)成分の含有量が、(B)硬化剤の全量を基準として、10質量%以下であると、接着剤組成物の強度低下をより一層防ぐことができる傾向にある。
【0038】
(e)硬化触媒
(e)成分は、例えば、ウレタン化反応又は尿素化反応を促進する公知の触媒を使用することができる。(e)成分としては、例えば、スズ系触媒、アミン系触媒等が挙げられる。スズ系触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジデカネート、ジオクチルスズジデカネート、2-エチルヘキサン酸スズ等が挙げられる。アミン触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ジ(N,N-ジメチルアミノエチル)アミン、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。(e)成分は、所望の硬化速度に合わせて適宜選択することができる。
【0039】
(e)成分の含有量は、(A)主剤及び(B)硬化剤の全量を基準として、0.01~5質量%、0.1~3質量%、又は0.2~1質量%であってよい。(e)成分の含有量が、(A)主剤及び(B)硬化剤の全量を基準として、0.01質量%以上であると、接着剤組成物の硬化反応がより充分に促進される傾向にある。(e)成分の含有量が、(A)主剤及び(B)硬化剤の全量を基準として、5質量%以下であると、接着剤組成物の可使時間をより充分に確保できる傾向にある。
【0040】
(f)カーボンブラック
(f)成分は、その平均粒子径(D50:体積粒度分布曲線の50%値の粒径)が20~40nm又は25~35nmであるものであってよい。(f)成分の平均粒子径が上記範囲であることによって、接着剤組成物の粘性及び(f)成分の分散性がより適切な範囲に調整され、接着剤組成物の作業性及び強度がより向上する傾向にある。なお、カーボンブラックの平均粒子径(D50)は、例えば、ベックマン・コールター社製「モデルLS-230」を用いて、レーザー回折光散乱法によって測定することができる。
【0041】
(f)成分の市販品としては、例えば、モナーク460(キャボットコーポレーション社製)、旭カーボン70(旭カーボン株式会社製)、シースト3(東海カーボン株式会社製)、三菱カーボン32(三菱化学株式会社製)、ニテロン200(新日化カーボン株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
(f)成分の含有量は、(A)主剤及び(B)硬化剤の全量を基準として、5~40質量%又は10~30質量%であってよい。(f)成分の含有量が、(A)主剤及び(B)硬化剤の全量を基準として、5質量%以上であると、硬化時の強度が向上する傾向にある。(f)成分の含有量が、(A)主剤及び(B)硬化剤の全量を基準として、40質量%以下であると、分散性がより向上することから、硬化時の強度を維持できる傾向にある。
【0043】
(g)充填剤
(g)成分としては、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、ウィスカー等が挙げられる。なお、上記の(f)成分は、(g)成分に包含されない。
【0044】
(g)成分の含有量は、(A)主剤及び(B)硬化剤の全量を基準として、5~40質量%又は10~30質量%であってよい。
【0045】
(h)可塑剤
(h)成分としては、例えば、フタル酸エステル系化合物、アルキルスルホン酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物等が挙げられる。フタル酸エステル系化合物の具体例としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)等が挙げられる。
【0046】
(h)成分の含有量は、(A)主剤及び(B)硬化剤の全量を基準として、5~40質量%又は10~30質量%であってよい。
【0047】
(A)主剤及び(B)硬化剤の少なくとも一方は、上記の(e)~(h)成分に加えて、紫外線吸収剤、脱水剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤等をさらに含有してもよい。
【0048】
(A)主剤と(B)硬化剤とを混合する場合、(B)硬化剤におけるヒドロキシ基(OH)に対する(A)主剤におけるイソシアネート基(NCO)の当量比(モル比)(NCO基/OH基)は、例えば、1.0~5.0であってよい。当量比(NCO基/OH基)が1.0以上であると、主剤と硬化剤とを混合させた際に未反応ポリオールの存在割合が少なくなることから、充分なノンプライマー接着性が得られる傾向にある。当量比(NCO基/OH基)が5.0以下であると、主剤と硬化剤とを混合させた際にイソシアネート及びプレポリマーの存在比率が適切な範囲となって、空気中の水分との反応割合を抑えることができ、充分な硬化性が得られる傾向にある。なお、(A)主剤におけるイソシアネート基は主に(a)成分及び(b)成分に由来するものであり、(B)硬化剤におけるヒドロキシ基は主に(c)成分及び(d)成分に由来するものである。
【0049】
本実施形態の接着剤セットは、(A)主剤と(B)硬化剤とを混合することによって、接着剤組成物(二液硬化型のウレタン系接着剤組成物)を調製することができる。(A)主剤と(B)硬化剤とを混合するときの温度及び時間は、例えば、10~35℃で、1~60分間であってよい。
【0050】
(A)主剤と(B)硬化剤とを混合する方法は、特に制限されず、例えば、通常のコーキングガンを用いて手塗りによって混合する方法であってもよく、原料の送液用に定量性のあるポンプ(例えば、ギヤポンプ、プランジャーポンプ等)と絞り弁とを併用し、機械式回転ミキサー、スタティックミキサー等を用いて混合する方法であってもよい。
【0051】
調製された接着剤組成物(二液硬化型のウレタン系接着剤組成物)は、養生(硬化)させることによって、硬化物を形成することができ、基材同士を接着する接着剤層として作用し得る。接着剤組成物を硬化させる条件(養生条件)は、例えば、10~35℃、30~60%RH(相対湿度)、2~7日間であってよい。
【0052】
一実施形態の構造体は、第1の基材と、第2の基材と、第1の基材及び第2の基材を互いに接着する接着剤層とを備える。接着剤層は、上記の接着剤セットにおける主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有する。構造体としては、例えば、車両用バックドア、トランクリッド、ウィンドシールド、スポイラー等が挙げられる。
【0053】
第1の基材及び第2の基材の少なくとも一方は、ポリプロピレン(PP)基材であってよく、第1の基材及び第2の基材の両方が、ポリプロピレン(PP)基材であってもよい。ポリプロピレン(PP)基材以外の基材としては、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリ(メタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレン(PE)、エチレン/プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン/プロピレン/ジエンポリマー(EPDM)等のプラスチック基材、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の繊維強化プラスチック基材、シート成形コンパウンド(SMC)等の樹脂コンパウンド基材などが挙げられる。構造体が車両用バックドアである場合、第1の基材はポリプロピレン基材からなるインナパネルであってよく、第2の基材はプロピレン基材以外の基材からなるアウタパネルであってよい。
【0054】
一実施形態の構造体の製造方法は、主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物を介して、第1の基材と第2の基材とを貼り合わせる工程を備える。接着剤セットにおける(A)主剤と(B)硬化剤とを混合するときの温度及び時間、接着剤組成物を硬化させる条件等は、上記と同様である。
【実施例】
【0055】
以下、本開示について、実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
[主剤中間品の調製]
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ、及び加熱冷却装置付き混練容器に、プレミノール3012(ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたプロピレングリコールの重合体)、旭硝子株式会社製、数平均分子量:12000、ヒドロキシ基数:3)38.0g、モナーク460(カーボンブラック、キャボットコーポレーション社製)13.3g、アイスバーグ(焼成カオリン、白石カルシウム株式会社製)19.0g、及びDINP(フタル酸ジイソノニル)22.1gを仕込み、カーボンブラックの塊がなくなるまで、室温(25℃)で60分間撹拌した。次いで、内容物が100℃となるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が2.7kPa(20mmHg)になるまで減圧して、内容物を1時間撹拌した。次いで、内容物の温度が40℃になるまで冷却し、混練容器にミリオネートMT(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、東ソー株式会社製、NCO含有量:33.6%)3.8g及びDabco T-9(スズ系触媒、スタナスオクトエート(2-エチルヘキサン酸スズ)、エア・プロダクツ・アンド・ケミカル社製)0.008gを添加した後、窒素を導入し、内容物が70℃となるまで混練容器を加熱し、内容物を1時間撹拌した。内容物の温度を40℃になるまで冷却し、スミジュールN3300(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート体、住化バイエルウレタン株式会社製、分子量:504.6)3.8gを添加し、30分間撹拌した。以上の工程で得られた粘調物を主剤中間品とした。粘調物においては、プレミノール3012とミリオネートMTとの反応物である、ウレタンプレポリマーを含むと推測される。
【0057】
[硬化剤中間品の調製]
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ、及び加熱冷却装置付き混練容器に、エクセノール837(ポリプロピレングリコール、旭硝子株式会社製、数平均分子量:6000、官能基数:3)32.3g、エクセノール2020(ポリプロピレングリコール、旭硝子株式会社製、数平均分子量:2000、官能基数:2)8.1g、EDP-1100(エチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体、官能基数:4、ヒドロキシ基価:214mgKOH/g)0.8g、モナーク460(同上)16.2g、アイスバーグ(同上)24.2g、及びDINP(同上)17.0gずつ仕込み、カーボンブラックの塊がなくなるまで、室温(25℃)で30分間撹拌した。次いで、内容物が100℃となるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が2.7kPa(20mmHg)になるまで減圧して、内容物を1時間撹拌した。内容物の温度を40℃になるまで冷却し、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)0.1g、脱水モレキュラーシーブ4A(脱水剤)を0.6g、及びテクスノールIBM-12(アミン系触媒、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、日本乳化剤株式会社製)0.8gを添加し、30分間撹拌した。以上の工程で得られた粘調物を硬化剤中間品とした。
【0058】
[接着剤セットの作製]
<実施例1>
(主剤)
上記主剤中間品に、ミリオネートMR-100(芳香族系多官能イソシアネート(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI))、東ソー株式会社製、NCO含有量:31.0%、平均分子量:450))5.0gを添加し、10分間撹拌することによって、実施例1の主剤を得た。
(硬化剤)
上記硬化剤中間品に、NAA-42(ラウリルアルコール(1-ドデカノール、炭素数12)、日油株式会社製)1.0gを添加し、10分間撹拌することによって、実施例1の硬化剤を得た。
【0059】
<比較例1>
(主剤)
上記主剤中間品をそのまま比較例1の主剤として用いた。
(硬化剤)
上記硬化剤中間品をそのまま比較例1の硬化剤として用いた。
【0060】
<比較例2>
(主剤)
実施例1の主剤を比較例2の主剤として用いた。
(硬化剤)
上記硬化剤中間品をそのまま比較例2の硬化剤として用いた。
【0061】
[接着性試験]
<試験体の作製>
フレーム処理を行ったポリプロピレン(PP)を主成分とする基材を2枚用意した。実施例1及び比較例1、2の主剤及び硬化剤を、主剤のNCO基と硬化剤のOH基のモル比が(NCO基/OH基)=1.10となるような質量比(おおよそ主剤:硬化剤=1:1)で混合した。得られた接着剤組成物を、一方の基材に厚みが3mmとなるように塗布し、接着面積が250mm2(25mm×10mm)になるように他方の基材の表面と貼り合わせ、圧着させることによって積層体を得た。得られた積層体を23℃で72時間養生することによって、基材同士が、接着剤組成物の硬化物を含有する接着剤層を介して接着された試験体を得た。なお、以下の接着性試験では、条件ごとにそれぞれ別の試験体を用いた。
【0062】
<接着性試験>
(初期条件)
得られた試験体について、23℃において、JIS K6850:1999に準じた引張試験を行い、せん断強度(破断強度)を求めた。また、試験後(引張試験で破断された後)の試験体を観察し、その破壊状態を評価した。
【0063】
図1は、接着性試験後の試験体の破壊状態を示す模式図である。
図1(a)は、接着性試験前の試験体を示す模式断面図である。
図1(a)に示される試験体10は、接着性試験前において、基材2a,2bと、これらの基材を互いに接着する接着剤層1とを備えている。
図1(b)は、試験体の破壊状態が凝集破壊(以下、「CF」という場合がある。)であることを示す模式断面図である。CFが発生すると、
図1(b)に示されるように、試験体10は接着剤層1の内部で分断される。
図1(c)は、試験体の破壊状態が界面破壊(以下、「AF」という場合がある。)であることを示す模式断面図である。AFが発生すると、
図1(c)に示されるように、試験体10は基材2aと接着剤層1との界面(又は基材2bと接着剤層1との界面)で分断される。
図1(d)は、試験体の破壊状態が基材凝集破壊(基材表層破壊)(以下、「CSF」という場合がある。)であることを示す模式断面図である。CSFが発生すると、
図1(d)に示されるように、試験体10は基材2aの内部(又は基材2bの内部)で分断され、基材2aの表層(又は基材2bの表層)が破壊される。試験体10の破壊は、通常、これらの破壊(CF、AF、CSF等)が複合して発生する。本試験においては、各破壊によって生じた破壊面積を観察し、破壊面積における各破壊由来の面積割合を求めることによって評価を行った。例えば、表1において、「CF100」は、破壊面積の全域(100%)がCF由来であることを意味し、「CF90AF10」は、破壊面積の90%がCF由来であり、10%がAF由来であることを意味する。なお、本試験においては、破壊面積に対するCF由来の割合が大きくなるほど、接着強度のばらつきが少なく、基材の破壊を抑制することができることから、ノンプライマー接着性に優れているといえる。
【0064】
(高温(90℃)条件)
得られた試験体について、90℃で1時間加温し、90℃環境で初期条件と同様の引張試験を行い、せん断強度(破断強度)を求めた。また、試験後(引張試験で破断された後)の試験体を観察し、その破壊状態を評価した。なお、高温(90℃)条件においては、基板のたるみ等の影響を排除する観点から、基板の接着剤層とは反対側に裏打ち材(金属板)を貼り合わせた試験体も用意し、同様の評価を行った。
【0065】
(高温(80℃)条件)
得られた試験体について、80℃で1時間加温し、80℃環境で初期条件と同様の引張試験を行い、せん断強度(破断強度)を求めた。また、試験後(引張試験で破断された後)の試験体を観察し、その破壊状態を評価した。なお、高温(80℃)条件においては、高温(90℃)条件と同様に、基板のたるみ等の影響を排除する観点から、基板の接着剤層とは反対側に裏打ち材(金属板)を貼り合わせた試験体も用意し、同様の評価を行った。
【0066】
材料の配合組成を表1に示し、試験結果を表2に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
表2に示すとおり、所定の主剤及び所定の硬化剤を含む実施例1の接着剤セットから調製される接着剤組成物は、このような要件を満たさない比較例1、2の接着剤セットから調製される接着剤組成物に比べて、高いせん断強度を示し、破壊状態も凝集破壊(CF)の割合が大きく、基材凝集破壊(基材表層破壊)の発生が抑制されていた。これらの結果から、本開示の接着剤セットが、優れたノンプライマー接着性を示し、かつ基材凝集破壊(基材表層破壊)が発生し難い接着剤組成物を調製することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0070】
1…接着剤層、2a,2b…基材、10…試験体。