(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240709BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/175 503
(21)【出願番号】P 2020088093
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2019135227
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 翔平
(72)【発明者】
【氏名】可知 泰彦
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-045905(JP,A)
【文献】特開2007-320186(JP,A)
【文献】特開平10-278251(JP,A)
【文献】特開2013-014073(JP,A)
【文献】特開2013-132769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0215203(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1963717(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドに前記液体を分配供給する液体供給マニホールドと、
前記複数のヘッドに温度が調整された温調液を分配供給する温調液供給マニホールドと、を備え、
前記液体供給マニホールドと前記温調液供給マニホールドとは熱結合されて
おり、
前記複数のヘッドによる最大吐出量での吐出を行うときの前記液体の流速よりも前記温調液の流速が速い
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記温調液供給マニホールドには、前記液体供給マニホールドを嵌め込む嵌め込み部を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記温調液供給マニホールドは、複数の液流路が折り返されて接続された温調液流路を有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記複数のヘッドを経由して前記温調液を循環させる循環経路を有し、
前記循環経路には、前記温調液を冷却する冷却手段と、前記温調液を加熱する加熱手段と、を含む
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記温調液の温度が所定温度未満のときには前記加熱手段で加熱し、
前記温調液の温度が所定温度以上のときには前記冷却手段で冷却する制御を行う手段を備えている
ことを特徴とする請求項4に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記循環経路内には、前記温調液の流れの方向において、前記冷却手段、前記加熱手段、前記温調液供給マニホールド、前記ヘッドの順に配置されている
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
前記複数のヘッドによる最大吐出量に相当する単位時間当たりの前記
複数のヘッドに供給する液体供給量よりも前記温調液の単位時間当たりの循環量が多い
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項8】
前記ヘッド内において、前記液体の流路と前記温調液の流路とが熱結合している
ことを特徴とする請求項1ないし
7のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項9】
前記複数のヘッドから温調液を回収する温調液回収マニホールドを備えている
ことを特徴とする請求項1ないし
8のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項10】
前記温調液供給マニホールドの入口から前記ヘッドを経由して前記温調液回収マニホールドの出口に至るまでの距離が前記複数のヘッドで同じである
ことを特徴とする請求項
9に記載の液体を吐出する装置。
【請求項11】
前記液体供給マニホールド、前記温調液供給マニホールド、前記温調液回収マニホールドは、前記複数のヘッドの上方に位置している
ことを特徴とする請求項
9又は
10に記載の液体を吐出する装置。
【請求項12】
前記温調液は、前記温調液供給マニホールド、前記複数のヘッドの所定のヘッド、前記所定のヘッドとは別のヘッド、前記温調液回収マニホールド、の順に流れる
ことを特徴とする請求項9ないし
11のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項13】
前記液体供給マニホールドと前記温調液供給マニホールドとは一体の部材である
ことを特徴とする請求項1ないし
12のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出するヘッドにおいては、液体を吐出させる圧力発生手段を駆動する駆動IC(ドライバIC)のような発熱部材の発熱による温度上昇に伴って液体温度が上昇し、吐出特性が変動する。
【0003】
従来、温度が調整された温調液を貯留する容器を備え、容器からの温調液を往路マニホールドによって複数のヘッドに対して分配供給し、複数のヘッドからそれぞれ温調液を復路マニホールドに回収して、容器に戻すようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、温調液を複数のヘッドに分配供給しても、各ヘッドに供給される吐出する液体(吐出液体)の温度が不揃いとなることで、各ヘッド間で吐出特性のばらつきが発生するという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ヘッド間の吐出特性のばらつきを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体を吐出する装置は、
液体を吐出する複数のヘッドと、
前記複数のヘッドに前記液体を分配供給する液体供給マニホールドと、
前記複数のヘッドに温度が調整された温調液を分配供給する温調液供給マニホールドと、を備え、
前記液体供給マニホールドと前記温調液供給マニホールドとは熱結合されており、
前記複数のヘッドによる最大吐出量での吐出を行うときの前記液体の流速よりも前記温調液の流速が速い
構成とした。
【0008】
本発明によれば、ヘッド間の吐出特性のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
【
図2】同装置の吐出ユニットを構成するヘッドユニットをノズル面側から見た平面説明図である。
【
図3】ヘッドの一例の短手方向(ノズル配列方向と直交する方向)の断面説明図である。
【
図4】
図3のA-A線における温調液流路の平面説明図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における液体の供給系及び温調液の循環経路系の説明に供するブロック説明図である。
【
図6】インク供給マニホールドの一例の外観斜視説明図である。
【
図7】温調液供給マニホールドの外観斜視説明図である。
【
図8】同温調液供給マニホールドの断面説明図である。
【
図9】インク供給マニホールド及び温調液供給マニホールドの組み立て状態の斜視説明図である。
【
図10】温調液供給マニホールド及び温調液回収マニホールドとヘッドとの接続関係の説明に供する模式的説明図である。
【
図11】温調液の温度制御に関わる部分の説明に供するブロック説明図である。
【
図12】ヘッドとインク供給マニホールド及び温調液供給マニホールドの位置関係の説明に供する断面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態における液体の供給系及び温調液の循環経路系の説明に供するブロック説明図である。
【
図14】同温調液回収マニホールドの温調液流路の詳細な説明に供する正断面図である。
【
図15】同温調液回収マニホールドとヘッド駆動基板との結合部分の斜視説明図である。
【
図17】ヘッドとインク供給マニホールド及び温調液供給マニホールドの位置関係の説明に供する断面図である。
【
図18】本発明の第3実施形態に係るヘッドユニットの構成と温調液の循環経路を説明する説明図である。
【
図19】同じくデュアルヘッドの温調液循環経路の説明に供する斜視説明図である。
【
図20】本発明の第4実施形態におけるマニホールドの斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置について
図1を参照して説明する。
図1は同印刷装置の概略説明図である。
【0011】
印刷装置1は、シート材Pを搬入する搬入部10と、前処理部20と、印刷部30と、乾燥部40と、搬出部50と、反転機構部60を備えている。印刷装置1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材Pに対し、前処理手段である前処理部20で必要に応じて前処理液を付与(塗布)し、印刷部30で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部40でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部50に排出する。
【0012】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備え、シート材Pを前処理部20に供給する。
【0013】
前処理部20は、例えばインクを凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液をシート材Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布部21などを備えている。
【0014】
印刷部30は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転体)であるドラム31と、ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部32を備えている。
【0015】
また、印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシート材Pを受け取ってドラム31との間でシート材Pを渡す渡し胴34と、ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取って乾燥部40に渡す受け渡し胴35を備えている。
【0016】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴34に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴34の回転に伴って搬送される。渡し胴34により搬送されたシート材Pは、ドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。
【0017】
ドラム31の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シート材Pの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0018】
そして、渡し胴34からドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によってドラム31上に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0019】
液体吐出部32は、液体吐出手段である吐出ユニット33(33A~33D)を備えている。例えば、吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う吐出ユニットを使用することもできる。
【0020】
液体吐出部32の各吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム31に担持されたシート材Pが液体吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0021】
乾燥部40は、印刷部30でシート材P上に付着した液体を乾燥させる。これにより、液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0022】
反転機構部60は、乾燥部40を通過したシート材Pに対して両面印刷をおこなうときに、スイッチバック方式で、シート材Pを反転する機構であり、反転されたシート材Pは印刷部30の搬送経路61を通じて渡し胴34よりも上流側に逆送される。
【0023】
搬出部50は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ51を備えている。反転機構部60を通じて搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ51上に順次積み重ねられて保持される。
【0024】
次に、吐出ユニットを構成するヘッドユニットの一例について
図2を参照して説明する。
図2は同ヘッドユニットをノズル面側から見た平面説明図である。
【0025】
ヘッドユニット300は、液体を吐出する複数のヘッド100を千鳥状にヘッド取付け部材302に並べて配置したものである。
【0026】
各ヘッド100は、液体を吐出する複数のノズル104が配列されたノズル列を複数列(ここでは4列を例にしているが、限定されない。)有している。
【0027】
次に、ヘッド100の一例について
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は同ヘッドの短手方向(ノズル配列方向と直交する方向)の断面説明図、
図4は
図3のA-A線における温調液流路の平面説明図である。
【0028】
ヘッド100は、ノズル104を形成したノズル板101と、ノズル104に通じる圧力室106などの流路を形成する流路板102と、圧力室106の壁面を形成する振動板103を順次積層している。また、ヘッド100は、圧電アクチュエータ111と、共通流路部材としてのフレーム部材120とを有している。
【0029】
圧電アクチュエータ111は、ベース部材113上に固定された柱状の複数の圧電素子112を有し、圧電素子112は振動板103に接合されている。また、圧電素子112には配線部材115が接続されている。
【0030】
共通流路部材を兼ねるフレーム部材120は、圧力室106に吐出する液体(インク)を供給する共通供給流路110を形成している。
【0031】
このフレーム部材120に温調液(温度が調整された液体)を流すヘッド100内の温調液流路130を形成する温調液流路部材131を接合している。温調液流路部材131には、温調液流路130に温調液を供給する温調液供給ポート132と、温調液を外部に回収する温調液回収ポート133とを有している。
【0032】
フレーム部材120と温調液流路部材131とは熱結合させている。これにより、ヘッド100内において、インクの流路である共通供給流路110と温調液流路130とが熱結合されている。
【0033】
温調液流路部材131にはケース部材150及び蓋部材151が順次積層されている。
【0034】
次に、本発明の第1実施形態における液体(インク)の供給系及び温調液の循環経路系について
図5のブロック説明図を参照して説明する。
【0035】
インク供給系には、ヘッド100に供給する液体(インク)を貯留する液体タンク(インクタンク)401と、液体タンク401から供給されるインクを複数のヘッド100に分配供給する液体供給マニホールドであるインク供給マニホールド402とを備えている。インク供給マニホールド402と各ヘッド100とは供給チューブなどの供給経路403で接続されている。
【0036】
温調液循環系には、温調液510を貯留する温調液タンク501と、温調液510を送液する送液ポンプ502と、温調液510に対して熱交換を行う熱交換器503と、各ヘッド100に温調液510を分配供給する温調液供給マニホールド505と、各ヘッド100から温調液510を回収する温調液回収マニホールド506とを備えている。
【0037】
熱交換器503は、温調液510を冷却する冷却手段である冷却器511と、温調液510を加熱する加熱手段である加熱ヒータ512とを備えている。
【0038】
温調液供給マニホールド505と各ヘッド100の温調液供給ポート132とは供給チューブなどの供給経路513で接続され、各ヘッド100の温調液回収ポート133と温調液回収マニホールド506とは回収チューブなどの回収経路514で接続されている。
【0039】
送液ポンプ502を駆動することによって、温調液タンク501に貯留された温調液510は、送液ポンプ502、熱交換器503、温調液供給マニホールド505、各ヘッド100、温調液回収マニホールド506を経て、温調液タンク501に戻る循環経路500を循環する。
【0040】
このように、循環経路500における温調液510の流れの方向において、熱交換器503の冷却器511(冷却手段)、加熱ヒータ512(加熱手段)、温調液供給マニホールド505、ヘッド100の順に配置されている。
【0041】
これにより、低温状態で印刷装置1の立ち上げを行うとき、加熱ヒータ512で加熱した温調液510が冷却器511で冷やされる前にヘッド100に供給される。したがって、温調液510によってインク温度を所要の温度に速やかに調整でき、立ち上げ時間の短縮を図ることができる。
【0042】
そして、インク供給マニホールド402と温調液供給マニホールド505とは熱結合させている。
【0043】
次に、インク供給マニホールド、温調液供給マニホールド及び両者の熱結合について
図6ないし
図8を参照して説明する。
図6はインク供給マニホールドの一例の外観斜視説明図、
図7は温調液供給マニホールドの外観斜視説明図、
図8は同温調液供給マニホールドの断面説明図、
図9はインク供給マニホールド及び温調液供給マニホールドの組み立て状態の斜視説明図である。
【0044】
インク供給マニホールド402は、内部に第1流路であるインク流路420が形成された筒状部材であり、インクタンク401からインクが供給される入口ポート421と、各ヘッド100へインクを供給する出口ポート422とを備えている。
【0045】
温調液供給マニホールド505は、内部に温調液流路551が形成された板状部材であり、熱交換器503から温調液が供給される入口ポート555と、各ヘッド100へ温調液を供給する出口ポート556とを備えている。
【0046】
温調液供給マニホールド505は、内部に複数本の液流路551a~551dが長手方向に沿って形成されたマニホールド本体552と、マニホールド本体552の両端部に装着された折り返し部キャップ553とを備えている。
【0047】
これにより、複数の液流路551a~551dが折り返し部キャップ553の流路で折り返されて温調液流路551が形成される。温調液流路551が折り返された液流路551a~551dを有することで、温調液供給マニホールド505内部における温調液の温度勾配を低減することができる。
【0048】
なお、液流路551dには、各ヘッド100へ温調液510を供給する出口ポート556が設けられている。温調液510は、出口ポート556から供給経路513を経由して、ヘッド100の温調液供給ポート132に供給される。
【0049】
温調液供給マニホールド505のマニホールド本体552の側面には、インク供給マニホールド402を嵌め合わせる嵌め合わせ部558を形成している。嵌め合わせ部558は、マニホールド本体552の長手方向に沿って2本設けている。
【0050】
そして、
図9に示すように、温調液供給マニホールド505のマニホールド本体552の嵌め合わせ部558にインク供給マニホールド402を嵌め合わせることで、温調液供給マニホールド505とインク供給マニホールド402とが熱結合される。これにより、インク供給マニホールド402のインク供給流路420と温調液供給マニホールド505の温調液流路551とが熱結合される。
【0051】
ここで、上段のインク供給マニホールド402は、
図2に示す搬送方向上流側のヘッド100にそれぞれ出口ポート422からインクが供給される。そして、下段のインク供給マニホールド402は、
図2に示す搬送方向下流側のヘッド100にそれぞれ出口ポート422からインクが供給される。
【0052】
このように、温調液供給マニホールド505とインク供給マニホールド402とを熱結合することで、複数のヘッド100にインクを供給する前にインク温度を調整することができ、各ヘッド100間で供給されるインクの温度のばらつき(温度勾配)が低減する。これにより、各ヘッド100の吐出特性のばらつきが低減する。
【0053】
次に、温調液供給マニホールド及び温調液回収マニホールドとヘッドとの接続関係について
図10を参照して説明する。
図10は同説明に供する模式的説明図である。
【0054】
温調液供給マニホールド505の液流路551の最上流側から1番目の出口ポート556からヘッド100を経て温調液回収マニホールド506の液流路561の最上流側の入口に接続する。以下、同様に、液流路551の最上流側から2番目の出口ポート556からヘッド100を経て温調液回収マニホールド506の液流路561の最上流側から2番目の入口に接続する。そして、液流路551の最下流側の出口ポート556からヘッド100を経て温調液回収マニホールド506の液流路561の最下流側の入口に接続する。
【0055】
このような接続関係とすることによって、すべてのヘッド100を経由する温調液の流路構成が揃い、各ヘッドを通じる温調液の流路の圧力損失が等しくなり、流量・流速が同じになるので、全ヘッドを均等に温度調整することができる。
【0056】
この場合、温調液回収マニホールド506は、温調液供給マニホールド505と同じ材質、同じ長さで構成することが好ましい。例えば、A6063などのアルミ押出し材を使用して、押出成形によって、温調液供給マニホールド505及び温調液回収マニホールド506を作製することにより、製造コストも抑えることができる。
【0057】
次に、温調液の温度制御に関わる部分について
図11のブロック説明図を参照して説明する。
【0058】
温調液温度制御手段801は、環境温度を検出する環境温度センサ811、冷却器511の入口における温調液510の温度(流入温度)を検出する温調液センサ812、熱交換器503の出口における温調液510の温度(流出温度)を検出する出口温度センサ813を入力する。
【0059】
また、温調液温度制御手段801は、冷却器511を構成するラジエターのファンの回転数を検出する回転数センサ814、冷却器511の出口における温調液510の温度を検出する冷却器センサ816などの検知結果を入力する。
【0060】
そして、温調液温度制御手段801は、これらの入力された検知結果に基づいて、熱交換器503の冷却器511、加熱ヒータ512の制御を行う。
【0061】
例えば、温調液510の温度Taが所定温度Te未満のときには加熱ヒータ512をON状態にして加熱し、温調液510の温度Taが所定温度Te以上のときには冷却器511で冷却する制御を行う。
【0062】
また、10℃からの低温立ち上げ時には、インク及びヘッド100の温度を吐出適正温度まで短時間で昇温するため、熱交換器503の加熱ヒータ512の制御温度を40℃~50℃に設定し、熱交換器503の出口における温調液510の温度が25℃になるまで送液ポンプ502を作動させて循環経路500のインク供給マニホールド402、温調液供給マニホールド505、ヘッド100、供給経路513の温度を昇温する。
【0063】
このとき、複数のヘッド100による最大吐出量に相当する単位時間当たりの液体供給量(インク供給量)よりも温調液の単位時間当たりの循環量を多くする。あるいは、複数のヘッド100による最大吐出量での吐出を行うときのインクの流速よりも温調液510の流速を速くする。
【0064】
これにより、低温状態で印刷装置1の立ち上げを行うとき、温調液によるインク温度の調整を速やかに行うことができる。
【0065】
また、連続印刷を行っているときには、ヘッド100の駆動部発熱が増大するため、規程の温度閾値を超えた場合は、熱交換器503の加熱ヒータ512をOFF状態にし、冷却器511をON状態として、インク消費量(最大吐出量)の約5倍以上の温調液510を供給し、ヘッド100及びインクを冷却する。
【0066】
また、シングルパス印刷を行う場合には、シート幅方向に配置したヘッド100間の温度差を小さくし、各ヘッド100の吐出特性変化を抑えることで、ヘッド100間の濃度変動を抑える。
【0067】
次に、ヘッド100と温調液供給マニホールド505と温調液回収マニホールド506との位置関係について
図12を参照して説明する。
【0068】
温調液回収マニホールド506及び温調液供給マニホールド505はヘッド100の上方に配置している。したがって、本実施形態では、温調液供給マニホールド505と熱結合しているインク供給マニホールド402もヘッド100の上方に配置される。
【0069】
インク供給マニホールド402は、インク供給経路403を介してヘッド100のインク供給ポート122に接続されている。温調液供給マニホールド505は、供給経路513を介してヘッド100の温調液供給ポート132に接続されている。温調液回収マニホールド506は、回収経路514を介してヘッド100の温調液回収ポート133に接続されている。
【0070】
これにより、ヘッド100のノズル密度(ヘッド配置密度)を低減することなく高画質を得ることができる。また、インクの供給経路403と温調液の供給経路513の距離を短く構成することができ、各供給路内の温度変化を小さく抑えることが可能である。
【0071】
また、ヘッドユニット300と温調液回収マニホールド506と温調液供給マニホールド505とをカバー1000により一体化している。したがって、メンテナンス性が向上する。
【0072】
次に、本発明の第2実施形態における液体(インク)の供給系及び温調液の循環経路系について
図13のブロック説明図を参照して説明する。
【0073】
本実施形態は、送液ポンプ502と温調液供給マニホールド505との間に、前記第1実施形態における熱交換器503に代えて、冷却器511を配置している。また、温調液回収マニホールド506にヘッド駆動基板(ドライバIC搭載基板)160を熱結合している。
【0074】
温調液循環系には、温調液510を貯留する温調液タンク501と、温調液510を送液する送液ポンプ502と、温調液510を冷却する冷却手段である冷却器511と、各ヘッド100に温調液510を分配供給する温調液供給マニホールド505と、各ヘッド100から温調液510を回収する温調液回収マニホールド506とを備えている。冷却器511は、例えばラジエターで構成される。
【0075】
送液ポンプ502を駆動することによって、温調液タンク501に貯留された温調液510は、送液ポンプ502、冷却器511、温調液供給マニホールド505、各ヘッド100、温調液回収マニホールド506を経て、温調液タンク501に戻る循環経路500を循環する。
【0076】
そして、温調液回収マニホールド506上に、複数のヘッド100の圧電アクチュエータ111に印加する駆動波形を生成する駆動波形生成部及び駆動波形を増幅する電力増幅部などが実装されたヘッド駆動基板160の発熱部が熱結合されている。
【0077】
このように構成した系においては、温調液510は、温調液タンク501から送液ポンプ502で汲み上げられ、温調液510を冷却する冷却器511を通り、温調液供給マニホールド505から各ヘッド100に分配される。
【0078】
そして、各ヘッド100の温調液流路130を温調液510が通ることで各ヘッド100のフレーム部材120(筐体部)を冷却し、各ヘッド100を通過した後、温調液回収マニホールド506にて回収され、その後、ヘッド駆動基板160(駆動回路部)を冷却して電力増幅部などを冷却し、温調液タンク501に戻る。
【0079】
一方、インクは、インクタンク401からインク供給マニホールド402に供給されて各ヘッド100に分配される。
【0080】
次に、温調液回収マニホールド及び温調液回収マニホールドとヘッド駆動基板160との熱結合について
図14ないし
図16を参照して説明する。
図14は同温調液回収マニホールドの温調液流路の詳細な説明に供する正断面説明図である。
図15は同温調液回収マニホールドとヘッド駆動基板160との結合部分の斜視説明図、
図16は同じく分解斜視説明図である。
【0081】
温調液回収マニホールド506は、内部に、各ヘッド100から回収経路514を通じて供給される温調液510が矢印A方向に流れる液流路561が形成されている。また、温調液回収マニホールド506は、複数の回収経路514と接続する入口ポート565と、温調液タンク501へ温調液を排出する出口ポート566を備えている。
【0082】
温調液流路561は、複数本の液流路が長手方向に沿い、両端部に折り返し流路を備えている。
【0083】
ヘッド駆動基板160には、駆動波形を増幅するMOS-FETなどで構成される電力増幅部161(後述の
図17参照)が実装され、電力増幅部161に接触するヒートシンク162が設けられている。
【0084】
そこで、ヘッド駆動基板160のヒートシンク162と温調液回収マニホールド506とを熱伝導シート163を介して固定することで、温調液回収マニホールド506とヘッド駆動基板160の電力増幅部161とを熱結合している。
【0085】
次に、ヘッド100と温調液供給マニホールド505と温調液回収マニホールド506との位置関係について
図17を参照して説明する。
図17は同説明に供する説明図である。
【0086】
温調液回収マニホールド506及び温調液供給マニホールド505は、ヘッド100の上方に配置している。
【0087】
これにより、ヘッド100のノズル密度(ヘッド配置密度)を低減することなく、高画質を得ることができる。また、インクの供給経路403と温調液の供給経路513の距離を短く構成することができ、各供給路内の温度変化を小さく抑えることができる。さらに、ヘッド100の上方に温調液回収マニホールド506と熱結合したヘッド駆動基板160を配置している。したがって、ヘッド100の温度上昇を抑制できる。
【0088】
また、ヘッドユニット300と温調液回収マニホールド506と温調液供給マニホールド505とをカバー1000により一体化している。これにより、メンテナンス性が向上する。
【0089】
次に、本発明の第3実施形態について
図18及び
図19を参照して説明する。
図18は同実施形態に係るヘッドユニットの構成と温調液の循環経路を説明する説明図、
図19は同じくデュアルヘッドの温調液循環経路の説明に供する斜視説明図である。
【0090】
ヘッドユニット300は、液体を吐出する2組のヘッド(デュアルヘッド)100、100を千鳥状に並べて配置したものである。
【0091】
そして、
図19に実線矢印Aで示すように、温調液供給マニホールド505から、2組のヘッド100、100の一方のヘッド100の温調液供給ポート132に対して温調液510を供給し、一方のヘッド100のフレーム部材120を通過した温調液を温調液回収ポート133から回収する。一方のヘッド100から回収した温調液510を他方のヘッド100の温調液供給ポート132に供給し、他方のヘッド100のフレーム部材120を通過した温調液510を温調液回収ポート133から回収する。
【0092】
他方のヘッド100の温調液回収ポート133から回収した温調液510を、冷却部材570を通して、温調液回収マニホールド506に回収する。
【0093】
なお、各ヘッド100に対しては、
図19に矢印Bで示すように、インク供給ポート122にインクが供給される。
【0094】
本実施形態によれば、搬送方向の配置について、同色の千鳥配置の搬送方向距離、K、C、M、Y間の搬送方向距離を短縮することで装置寸法を小さくするとともに、搬送方向の速度変動、用紙の蛇行などの外乱成分による画像ムラなどの影響を抑えることができる。
【0095】
次に、本発明の第4実施形態について
図20及び
図21を参照して説明する。
図20は同実施形態におけるマニホールドの斜視説明図、
図21は同じく断面説明図である。
【0096】
本実施形態は、前記実施形態で説明した温調液供給マニホールド505とインク供給マニホールド402を一体の部材としてマニホールド600を備えている。言い換えれば、マニホールド600は、複数のヘッド100に液体(インク)及び温度が調整された温調液510を分配供給する部材である。
【0097】
マニホールド600は、マニホールド本体601内に、温調液510が流れる第2流路である液流路551と、インクが流れる第1流路であるインク供給流路420とが形成されている。液流路551は、各ヘッド100の温調液供給ポート132と供給チューブなどの供給経路513で接続される。インク供給流路420は出口ポート422を通じて各ヘッド100に接続される。
【0098】
このとき、
図21に示すように、温調液510の2つの液流路551の間にインク供給流路420を配置することが好ましい。
【0099】
本実施形態においても、温調液流路551とインク供給流路420とが熱結合されたことになる。したがって、複数のヘッド100にインクを供給する前にインク温度を調整することができ、各ヘッド100間で供給されるインクの温度のばらつき(温度勾配)が低減する。これにより、各ヘッド100の吐出特性のばらつきが低減する。
【0100】
なお、本実施形態のように温調液供給マニホールド505とインク供給マニホールド402とを一体とするマニホールド600は、例えば、立体造形装置(3Dプリンタ)にて容易に造形することができる。
【0101】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0102】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0103】
また、「液体を吐出する装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0104】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0105】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0106】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0107】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0108】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0109】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0110】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0111】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0112】
1 印刷装置
10 搬入部
20 前処理部
30 印刷部
31 ドラム
40 乾燥部
50 搬出部
60 反転機構部
33 吐出ユニット
100 液体吐出ヘッド(ヘッド)
160 ドライバIC搭載基板(ヘッド駆動基板)
402 インク供給マニホールド(液体供給マニホールド)
503 熱交換器
505 温調液供給マニホールド
506 温調液回収マニホールド
511 冷却器(冷却手段)
512 加熱ヒータ(加熱手段)
600 マニホールド