(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】脈波測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20240709BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61B5/02 310Z
A61B5/16 110
A61B5/16 200
(21)【出願番号】P 2020089910
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】船橋 一樹
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/136310(WO,A1)
【文献】特開2007-152084(JP,A)
【文献】特開2019-170868(JP,A)
【文献】特開2015-060384(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073906(WO,A1)
【文献】特開昭57-180938(JP,A)
【文献】特開2017-000612(JP,A)
【文献】特開2007-157115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部によって生体を撮像して得られる撮像画像と、当該撮像画像内におけるユーザ毎に設定される顔領域の大きさを示すガイド枠と、を表示部に表示する表示制御部と、
前記ガイド枠内に前記顔領域が収まった後、前記顔領域に基づいて前記生体の脈波信号を測定する測定部と、
を備える脈波測定装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記脈波信号に基づいて、前記ガイド枠の位置および大きさを調整する、請求項1に記載の脈波測定装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記脈波信号を測定する際、前記脈波信号の測定に関する所定処理を実行し、
前記所定処理は、前記撮像画像内における前記顔領域の位置および大きさを検出し、検出した前記顔領域の位置および大きさに応じて、前記脈波信号の測定を中止する処理である、請求項1または2に記載の脈波測定装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記脈波信号を測定する際、前記脈波信号の測定に関する所定処理を実行し、
前記所定処理は、前記撮像部に入射される光の光量を検出し、検出される光量が、第1所定値以下、または当該第1所定値より大きい第2所定値以上である場合、前記脈波信号の測定を中止する処理である、請求項1または2に記載の脈波測定装置。
【請求項5】
生体の脈波信号の測定の実行指示を受け付ける受付部と、
前記実行指示を受け付けた場合に、撮像部によって前記生体を撮像して得られる撮像画像と、当該撮像画像内における前記脈波信号の測定に適した顔領域の位置およびユーザ毎に設定される当該顔領域の大きさを示すガイド枠と、を表示部に表示する表示制御部と、
前記ガイド枠内に前記顔領域が収まった後、所定時間経過した場合に、前記顔領域に基づいて前記生体の脈波信号を測定し、かつ、前記脈波信号を測定する際、前記脈波信号の測定に関する所定処理を実行する測定部と、を備え、
前記表示制御部は、前記脈波信号に基づいて、前記ガイド枠の位置および大きさを調整する、脈波測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体から測定した脈波信号を解析して自律神経機能を評価することにより、生体の疲労やストレス等の状態を判定する技術が開発されている。また、生体の脈波信号を、接触式のセンサではなく、撮像画像を用いて、非接触で測定する技術も開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、生体の脈波信号を非接触で測定する技術では、測定条件によっては質の高い脈波信号を測定することができず、生体の自律神経機能を正しく評価することができない場合がある。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生体の脈波信号を非接触で測定する場合に、生体の脈波信号を正しく測定可能とする脈波測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、撮像部によって生体を撮像して得られる撮像画像と、当該撮像画像内におけるユーザ毎に設定される顔領域の大きさを示すガイド枠と、を表示部に表示する表示制御部と、前記ガイド枠内に前記顔領域が収まった後、前記顔領域に基づいて前記脈波信号を測定する測定部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、生体の脈波信号を非接触で測定する場合に、生体の脈波信号を正しく測定可能とする、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施の形態にかかる脈波測定装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態にかかる脈波測定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態にかかる脈波測定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態にかかる脈波測定装置による各種画面の表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示される計測前画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示される計測中画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示される結果画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において計測前画面を表示中に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、本実施の形態にかかる脈波測定装置により生成されるガイド枠の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示される計測前画面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本実施の形態にかかる脈波測定装置による顔領域および肌領域の検出処理の一例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、本実施の形態にかかる脈波測定装置により測定される脈波信号の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において測定される脈波信号のパワースペクトルの一例を示す図である。
【
図15】
図15は、本実施の形態にかかる脈波測定装置による脈波信号のS/N比の算出処理の一例を説明するための図である。
【
図16】
図16は、本実施の形態にかかる脈波測定装置によるガイド枠の大きさの調整処理の一例を説明するための図である。
【
図17】
図17は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示される計測前画面の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において計測中画面を表示中に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、本実施の形態にかかる脈波測定装置による生体の疲労度等の評価処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、脈波測定装置、およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施の形態にかかる脈波測定装置の概略構成の一例を示す図である。まず、
図1を用いて、本実施の形態にかかる脈波測定装置100の概略構成の一例について説明する。
【0010】
本実施の形態にかかる脈波測定装置100は、
図1に示すように、撮像装置(カメラ)100H1および表示装置100H2を有する。そして、脈波測定装置100は、
図1に示すように、撮像装置100H1により生体1の動画像(撮像画像の一例)を撮像し、撮像した動画像から生体1の脈波を示す信号(以下、脈波信号と言う。生体情報の一例。)を測定する。次に、脈波測定装置100は、脈波信号の測定結果として、生体1の脈拍変動や、自律神経機能、疲労度等を評価(判定)し、生体1の脈拍変動や、自律神経機能、疲労度等の評価結果を表示装置100H2に表示する。ここで、脈拍変動は、生体1の脈波の特徴量の1つであり、生体1の脈拍間隔の揺らぎである。自律神経機能は、脈拍変動から算出される指標の1つである。疲労度は、自律神経機能によって判定される生体1の状態である。生体情報の一例としての脈波信号、脈拍変動、自律神経機能、および疲労は、この順番またはその逆の順番で関係している。
【0011】
図2は、本実施の形態にかかる脈波測定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。次に、
図2を用いて、本実施の形態にかかる脈波測定装置100のハードウェア構成の一例について説明する。
【0012】
本実施の形態にかかる脈波測定装置100は、
図2に示すように、撮像装置100H1、表示装置100H2、入力装置100H3、CPU(Central Processing Unit)100H4、ROM(Read Only Memory)100H5、RAM(Random Access Memory)100H6、HDD(Hard Disk Drive)100H7を有し、システムバス100H8を介して互いに接続されている。脈波測定装置100は、例えば、これらの機能を備えたPC(Personal Computer)、タブレット端末、スマートフォン等である。
【0013】
撮像装置100H1は、生体1の動画像を撮像可能に設けられる撮像部の一例である。本実施の形態では、撮像装置100H1は、例えば、Webカメラ、またはPC(Personal Computer),携帯端末,タブレット端末等に内蔵される内蔵カメラであり、R(Red)、G(Green)、およびB(Blue)の3チャンネルを持つ撮像装置である。本実施の形態では、撮像装置100H1は、RGBの3チャンネルを持つ撮像装置としているが、生体1の脈拍による輝度変化を取得しやすい波長域(例えば、緑波長域や、近赤外光波長域)に分光感度を持つチャンネルを少なくとも1つ有する撮像装置であれば良い。
【0014】
表示装置100H2は、生体1の疲労度の評価(判定)結果等の各種情報を表示可能な表示部の一例である。本実施の形態では、表示装置100H2は、例えば、液晶ディスプレイであり、生体1の疲労度の評価のために、メニュー画面、計測前画面、計測中画面、結果画面等の各種情報を表示する。メニュー画面、計測前画面、計測中画面、および結果画面の詳細については後述する。
【0015】
入力装置100H3は、例えば、キーボードや、マウス、タッチパネルであり、各種プログラムの実行指示や、生体1の脈波信号の測定の実行指示等の各種指示をユーザが入力するための装置である。
【0016】
ROM100H5およびHDD100H7は、CPU100H4で実行される各種プログラムを記憶する記憶装置である。RAM100H6は、CPU100H4の作業領域として用いられる。
【0017】
CPU100H4は、脈波測定装置100全体の制御や、生体1の疲労度の評価に関する各種演算を行う中央処理装置である。本実施の形態では、CPU100H4は、HDD100H7に記憶される脈波測定プログラムを読み出し、RAM100H6に展開されたデータを、当該読み出した脈波測定プログラムの命令に従って演算処理することにより、撮像装置100H1で撮像した生体1の動画像を用いて、生体1の脈波信号を測定する。
【0018】
図3は、本実施の形態にかかる脈波測定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。次に、
図3を用いて、本実施の形態にかかる脈波測定装置100の機能構成の一例について説明する。
【0019】
本実施の形態では、CPU100H4が、HDD100H7に記憶される脈波測定プログラムを実行することにより、
図3に示すように、受付部301、表示制御部302、および測定部303を実現する。
【0020】
受付部301は、生体1の脈波信号の測定の実行指示(以下、脈波測定実行指示と言う)を受け付ける受付部の一例である。
【0021】
表示制御部302は、メニュー画面、計測前画面、計測中画面、結果画面等の各種情報を表示装置100H2に表示する。
【0022】
ここで、メニュー画面は、脈波信号を測定する生体1(ユーザ)の選択や、生体1の脈波測定実行指示の入力等に用いる画面である。また、計測前画面は、生体1の脈波信号の測定前に表示される画面である。具体的には、計測前画面は、受付部300によって脈波測定実行指示を受け付けた場合に、撮像装置100H1によって生体1を撮像して得られる撮像画像(例えば、動画像)と、ガイド枠と、を含む画面である。ここで、ガイド枠は、撮像画像内において、生体1の脈波信号の測定に適した顔領域の位置および大きさを示す画像である。または、ガイド枠は、撮像画像内において、生体1の脈波信号の測定に適した顔領域の位置およびユーザ毎に設定される当該顔領域の大きさを示す画像である。また、計測中画面は、生体1の脈波信号の測定中に表示される画面である。また、結果画面は、脈波測定装置100による生体1の脈拍変動や、自律神経機能、疲労度等の評価結果を表示する画面である。
【0023】
測定部303は、表示装置100H2に表示される計測前画面内のガイド枠に、当該撮像画像が含む顔領域が収まった後、所定時間が経過した場合に、当該顔領域に基づいて、生体1の脈波信号を測定する。ここで、所定時間は、予め設定される時間である。そして、測定部303は、脈波信号の測定結果である、生体1の疲労度等を評価(判定)する。
【0024】
また、測定部303は、測定部303によって生体1の脈波信号を測定する際、生体1の脈波信号の測定に関する所定処理を実行する。これにより、撮像画像における顔領域の位置またはサイズ、若しくは、撮像装置100H1に入射される光の光量が適切でないと判定された場合に、生体1の脈波信号の測定を中止することができるので、信頼性の低い脈波信号の測定が実行されることを抑制することができる。すなわち、生体1の脈波信号を非接触で測定する場合でも、生体1の脈波信号を正しく測定することができる。
【0025】
ここで、所定処理は、計測前画面に含まれる撮像画像内における顔領域の位置および大きさを検出し、検出した顔領域の位置および大きさに応じて、生体1の脈波信号の測定を中止する処理である。
【0026】
また、所定処理は、撮像装置100H1に入射される光の光量を検出し、当該検出される光量が、第1所定値以下または第2所定値以上である場合、生体1の脈波信号の測定を中止する処理である。ここで、第1所定値は、顔領域に基づいて生体1の脈波信号を測定可能な光量の下限である。また、第2所定値は、第1所定値より大きい値であり、顔領域に基づいて生体1の脈波信号を測定可能な光量の上限である。
【0027】
図4は、本実施の形態にかかる脈波測定装置による各種画面の表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図4を用いて、本実施の形態にかかる脈波測定装置100による各種画面の表示処理の流れの一例について説明する。
【0028】
まず、表示制御部302は、表示装置100H2に対して、メニュー画面を表示する(ステップS401)。
【0029】
図5は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示されるメニュー画面の一例を示す図である。本実施の形態では、表示制御部302は、
図5に示すように、ユーザ選択ボタン501および脈波測定ボタン502を含むメニュー画面500を表示装置100H2に表示する。
【0030】
ユーザ選択ボタン501は、脈波信号を測定するユーザを選択するためのボタンである。本実施の形態では、表示制御部302は、ユーザ選択ボタン501が押下されると、脈波測定装置100のユーザ候補のリストを表示する。ユーザは、当該リストの中から、脈波信号を測定するユーザを選択することができる。
【0031】
脈波測定ボタン502は、生体1(例えば、ユーザ選択ボタン501により選択されるユーザ)の脈波信号の測定の実行を指示するためのボタンである。本実施の形態では、受付部301は、脈波測定ボタン502が押下されると、生体1の脈波測定実行指示を受け付ける。
【0032】
本実施の形態では、表示制御部302は、ユーザ選択ボタン501および脈波測定ボタン502を含むメニュー画面500を表示装置100H2に表示しているが、これに限定するものではなく、ユーザ選択ボタン501および脈波測定ボタン502に加えて、脈波信号の測定に要する測定時間等を設定するパーツ等を含むメニュー画面500を表示装置100H2に表示することも可能である。
【0033】
図4に戻り、メニュー画面を用いて、生体1の脈波測定実行指示が入力されると、表示制御部302は、表示装置100H2に対して、計測前画面を表示する(ステップS402)。
【0034】
図6は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示される計測前画面の一例を示す図である。本実施の形態では、表示制御部302は、
図6に示すように、撮像画像601、メッセージ602、ガイド枠603、および脈波グラフ604を含む計測前画面600を表示装置100H2に表示する。
【0035】
撮像画像601は、撮像装置100H1により撮像される撮像画像である。本実施の形態では、表示制御部302は、予め設定されるフレームレートおよび解像度で撮像装置100H1により撮像されるRGBの動画像を1フレームずつ取得し、当該取得したフレームを予め設定される表示領域のサイズに合わせて変倍して、撮像画像601として計測前画面600にリアルタイムで表示する。
【0036】
ガイド枠603は、撮像画像601における、脈波信号の測定に適した顔領域の位置および当該顔領域の大きさを表すパーツである。また、ガイド枠603は、撮像画像601に重畳して表示される。ユーザは、撮像画像601内に表示される顔領域の位置および当該顔領域のサイズが、ガイド枠603に近づくように姿勢等を調整する。
【0037】
脈波グラフ604は、撮像画像601内の顔領域から測定される脈波信号を表示するパーツである。脈波信号は、撮像装置100H1により撮像されるRGBの動画像の1フレーム毎に測定され、表示制御部302によって脈波グラフ604に対してリアルタイムに反映される。
【0038】
メッセージ602は、ユーザに通知するメッセージである。表示制御部302は、ユーザの状態に応じて、メッセージ602の内容を変更する。例えば、表示制御部302は、ユーザの顔領域の位置または大きさがガイド枠603に合っていない場合、「顔を枠の中に入れて下さい」等のメッセージ602を表示する。
【0039】
図4に戻り、計測前画面内において、ガイド枠と顔領域とが一致すると、表示制御部302は、表示装置100H2に対して、計測中画面を表示する(ステップS403)。
【0040】
図7は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示される計測中画面の一例を示す図である。本実施の形態では、表示制御部302は、
図7に示すように、撮像画像601、ガイド枠603、および脈波グラフ604に加えて、メッセージ701および残り時間702を含む計測中画面700を表示装置100H2に表示する。
【0041】
メッセージ701は、生体1の脈波信号を測定中であることをユーザに通知するメッセージ等である。残り時間702は、生体1の脈波信号の測定に要する残り時間を表すパーツである。一般的に、生体1の脈波信号の測定には、30秒から3分程度の時間が必要となる。したがって、計測中画面700に対して残り時間702を表示することにより、ユーザが、脈波信号の測定に要する残り時間を把握することが可能となる。
【0042】
図4に戻り、ユーザの疲労度の評価が実行された後、表示制御部302は、表示装置100H2に対して、結果画面を表示する(ステップS404)。
【0043】
図8は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示される結果画面の一例を示す図である。本実施の形態では、表示制御部302は、疲労指標801およびコメント802を含む結果画面800を表示装置100H2に表示する。
【0044】
疲労指標801は、測定部303により評価された脈拍変動や、自律神経機能、疲労度等を表す指標である。例えば、疲労指標801は、生体1の自律神経機能のバランスを表すLF/HF値である。
【0045】
コメント802は、測定部303により評価されるユーザの疲労度等に対するコメントである。本実施の形態では、表示制御部302は、測定部303により評価されるユーザの疲労度等に応じて、コメント802を変更する。
【0046】
例えば、測定部303により評価されるユーザのLF/HF値が低い場合(例えば、2未満)、表示制御部302は、「自律神経のバランスが良い状態です。疲労はあまりないようなので、この状態を維持するように心掛けましょう。」をコメント802として結果画面800に表示する。
【0047】
また、測定部303により評価されるユーザのLF/HF値が中程度の場合(例えば、2以上かつ5未満)、表示制御部302は、「自律神経のバランスがやや乱れています。この状態が続くようでしたら、疲労が溜まり始めていると思われますので、休息を取ったり、心のリフレッシュやリラックスを心掛けたりしましょう。」をコメント802として結果画面800に表示する。
【0048】
また、測定部303により評価されるユーザのLF/HF値が高い場合(例えば、5以上)、表示制御部302は、「自律神経のバランスが大きく乱れています。この状態が続くようでしたら、かなり疲労が溜まっていると思われますので、周りの方に相談してはどうでしょうか。」をコメント802として結果画面800に表示する。
【0049】
図9は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において計測前画面を表示中に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図9を用いて、本実施の形態にかかる脈波測定装置100において計測前画面の表示中に実行される処理の流れの一例について説明する。
【0050】
受付部301によって、生体1の脈波測定実行指示が受け付けられると、表示制御部302は、撮像装置100H1により撮像される撮像画像を取得する(ステップS901)。本実施の形態では、表示制御部302は、生体1の脈波測定実行指示が受け付けられると、撮像装置100H1を起動して、動画像の撮像を開始し、撮像される動画像を取得する。表示制御部302は、撮像装置100H1により撮像される動画像を、1フレームずつリアルタイムに取得することが好ましい。また、本実施の形態では、表示制御部302は、予め設定されるフレームレートおよび解像度で撮像装置100H1により撮像される動画像を取得する。
【0051】
次いで、表示制御部302は、撮像画像において疲労度の評価に適した顔領域の位置および大きさを示すガイド枠を生成する(ステップS902)。
【0052】
図10は、本実施の形態にかかる脈波測定装置により生成されるガイド枠の一例を示す図である。本実施の形態では、表示制御部302は、ユーザが適切な顔領域の位置および大きさを認識可能な形状のガイド枠を生成する。
【0053】
例えば、表示制御部302は、
図10(a)に示すように、縦長の楕円形の形状のガイド枠603を生成する。これにより、ユーザは、顔領域の輪郭の位置および大きさの目安を認識することができる。または、例えば、表示制御部302は、
図10(b)に示すように、縦長の矩形のガイド枠603を生成しても良い。または、表示制御部302は、
図10(c)に示すように、内側の半透明の色で塗り潰したガイド枠603を生成しても良い。
【0054】
または、表示制御部302は、
図10(d)に示すように、撮像画像内において脈波信号の測定に適切な目や鼻の位置を示す補助線を含むガイド枠603を生成しても良い。これにより、ユーザが、より正確に、脈波信号の測定に適切な位置に顔領域を配置することができる。または、表示制御部302は、
図10(e)に示すように、脈波信号の測定に適切な顔領域の位置における耳や首の輪郭を模ったガイド枠603を生成しても良い。これにより、ユーザ、より正確に、脈波信号の測定に適切な位置に顔領域を配置することができる。
【0055】
また、表示制御部302は、取得する撮像画像の中央付近に配置されるガイド枠を生成することが好ましい。これにより、撮像画像に含まれる顔領域に基づいて脈波信号を測定する際に、顔領域の位置が多少変動したとしても、顔領域の一部が撮像画像から外に出てしまうことなく、安定して生体1の脈波信号を測定することができる。
【0056】
また、表示制御部302は、撮像画像内の顔領域がガイド枠に一致した際に、良好なS/N比の脈波信号が得られるガイド枠の大きさを、ガイド枠の大きさの初期値とする。また、表示制御部302は、後述するステップS911で調整されたガイド枠の大きさを、HDD100H7等の記憶部に保存しておき、次回、同一のユーザの脈波信号を測定する際、当該記憶部に記憶されるガイド枠の大きさの初期値としても良い。同じ条件にて生体1の脈波信号を測定する場合、前回、生体1の脈波信号の測定に用いたガイド枠の大きさが最適値として使用できる可能性が高く、その場合、後述するステップS911において、ガイド枠の大きさを調整する必要が無くなり、ガイド枠の大きさの調整に要する時間や手間を減らすことができる。
【0057】
また、表示制御部302は、ガイド枠の大きさを、HDD100H7等の記憶部に保存する場合、脈波信号を測定するユーザ(すなわち、メニュー画面において選択したユーザ)と対応付けて、当該ガイド枠の大きさを、当該記憶部に保存する。そして、表示制御部302は、当該記憶部から、ガイド枠の大きさの初期値を読み出す場合、メニュー画面において選択したユーザと対応付けて記憶されるガイド枠の大きさを読み出す。生体1の脈波信号の測定に適したガイド枠の大きさは、ユーザの状態に依存する。例えば、低血圧のユーザは、撮像画像に基づいて測定される脈波信号のS/N比が小さくなる傾向があるため、ガイド枠のサイズが大きい方が好ましい。一方、高血圧のユーザは、撮像画像に基づいて測定される脈波信号のS/N比が大きくなる傾向があるため、ガイド枠のサイズは小さい方が好ましい。このように、ガイド枠の大きさは、ユーザの状態に依存するため、表示制御部302は、ユーザ毎に、脈波信号の測定に適切なガイド枠の大きさを記憶部に保存しておくことで、ガイド枠の大きさの最適値を、ガイド枠の初期値とすることが可能となる。すなわち、ガイド枠は、撮像画像において、生体1の脈波信号の測定に適した、ユーザ毎に設定される顔領域の大きさ示す画像である。
【0058】
図9に戻り、次いで、表示制御部302は、取得した撮像画像に対して、生成したガイド枠を重畳した合成画像を含む計測前画面を、表示装置100H2に表示する(ステップS903)。
【0059】
図11は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示される計測前画面の一例を示す図である。本実施の形態では、表示制御部302は、
図11に示すように、ガイド枠603が撮像画像601よりも前面に配置された合成画像を含む計測前画面600を、表示装置100H2に表示する。これにより、撮像画像601内の顔領域と、ガイド枠603との位置関係をユーザが認識できるようにする。
【0060】
図9に戻り、次いで、測定部303は、取得する撮像画像から、生体1の顔領域を検出し、かつ当該検出した顔領域から肌領域を検出する(ステップS904)。本実施の形態では、測定部303は、既存の顔検出技術を用いて、撮像画像に含まれる顔領域の位置および大きさを検出する。
【0061】
図12は、本実施の形態にかかる脈波測定装置による顔領域および肌領域の検出処理の一例を説明するための図である。測定部303は、
図12(a)に示すように、既存の顔検出技術を用いて、顔領域の周りの矩形(点線で示す)の中心点や、当該矩形の各頂点の座標、当該矩形の高さ方向および幅方向の画素数等を、顔領域の位置および大きさとして検出する。
【0062】
また、測定部303は、顔検出技術により検出した顔領域に含まれる画素を抽出し、当該抽出した画素のRGB値(色信号値)が、予め設定された肌色が持つRGB値の範囲に含まれると判定された場合に、当該抽出した画素を肌領域として検出する。または、測定部303は、顔検出技術により検出される顔領域の特徴点の座標に基づいて、肌領域を検出することも可能である。例えば、測定部303は、既知の顔検出技術によって、顔領域から、目、口、および鼻等の特徴点の座標を検出し、当該検出した座標に基づいて、肌領域を検出する。より具体的には、測定部303は、
図12(b)に示すように、顔領域から検出される目、口、および鼻等の特徴点の座標を含む領域を、肌領域として検出する。
【0063】
ただし、測定部303は、目、口、および鼻等の特徴点以外の他の肌領域(例えば、額)を、肌領域として検出しても良い。または、ユーザによって、肌領域の始点、幅、および高さ等が予め入力されている場合、測定部303は、当該入力される始点、幅、および高さ等に基づいて、顔領域から肌領域を検出しても良い。
【0064】
図9に戻り、測定部303は、顔領域から検出した肌領域に基づいて、生体1の脈波信号を測定する(ステップS905)。本実施の形態では、測定部303は、肌領域の画素のRGB値のフレーム毎の加算平均を算出する。次いで、測定部303は、RGB値のフレーム毎の加算平均の時系列データに基づいて、独立主成分分析等の手法を用いて、生体1の脈拍に伴う信号変化成分である脈波信号を測定する。
【0065】
図13は、本実施の形態にかかる脈波測定装置により測定される脈波信号の一例を示す図である。
図13において、横軸は、時間を表し、縦軸は、脈波信号の信号値を表す。
図13に示すように、脈波信号は、生体1の脈拍に応じて周期的にその信号値が変化する時系列データである。
【0066】
図9に戻り、表示制御部302は、測定部303により測定される脈波信号を表示装置100H2に表示する(ステップS906)。本実施の形態では、表示制御部302は、測定部303により測定される脈波信号を、計測前画面600の脈波グラフ604(
図6参照)に表示する。
【0067】
次に、測定部303は、撮像画像から検出した顔領域の位置および大きさと、ガイド枠の位置および大きさが略一致しているか否かを判定する(ステップS907)。
【0068】
本実施の形態では、測定部303は、顔領域の中心点と、ガイド枠の中心点との間の距離を算出し、算出した距離が所定の閾値以下である場合、顔領域の位置とガイド枠の位置とが略一致していると判定する。ここで、所定閾値は、予め設定される閾値であり、例えば、顔領域の位置が動いてしまった場合でも脈波信号を測定可能な距離の閾値である。本実施の形態では、測定部303は、顔領域の中心点とガイド枠の中心点との間の距離を用いて、顔領域の位置とガイド枠の位置とが略一致しているか否かを判定しているが、これに限定するものではなく、他の判定手法を用いて、顔領域の位置とガイド枠の位置とが略一致しているか否かを判定することも可能である。
【0069】
また、本実施の形態では、測定部303は、顔領域の面積(大きさ)と、ガイド枠の面積(大きさ)との差分(誤差)を算出し、算出した差分が所定閾値以下である場合、顔領域の大きさとガイド枠の大きさとが略一致していると判定する。ここで、所定閾値は、予め設定される閾値であり、例えば、生体1の状態(例えば、生体1の血圧)によって脈波信号の測定精度が低下しない閾値である。本実施の形態では、測定部303は、顔領域の面積およびガイド枠の面積を用いて、顔領域の大きさとガイド枠の大きさとが略一致しているか否かを判定しているが、これに限定するものではなく、他の判定手法を用いて、顔領域の大きさとガイド枠の大きさとが略一致しているか否かを判定することも可能である。
【0070】
本実施の形態では、測定部303は、後述するステップS910において生体1の疲労度が評価可能か否か(言い換えると、生体1の脈波信号が測定可能か否か)を判定する前に、顔領域の位置および大きさと、ガイド枠の位置および大きさが略一致しているか否かを判定している。顔領域の位置および大きさが、ガイド枠の位置および大きさと略一致していない状態では、脈波信号の品質を正しく評価することできず、後述するステップS911において、ガイド枠を適切な大きさに調整することができない可能性がある。しかしながら、本実施の形態によれば、生体1の疲労度が評価可能か否かを判定する前に、顔領域の位置および大きさと、ガイド枠の位置および大きさが略一致しているか否かを判定している。これにより、顔領域の一部が撮像画像から外れた状態で、脈波信号のS/N比が評価されてしまった場合に、脈波信号のS/N比が低いと判定され、本来は、不要なガイド枠の調整が行われることを防止できる。
【0071】
そして、顔領域の位置および大きさと、ガイド枠の位置および大きさとが略一致していないと判定した場合(ステップS907:No)、表示制御部302は、表示装置100H2に対してアラートを表示する(ステップS908)。本実施の形態では、表示制御部302は、計測前画面600のメッセージ602に対してアラートを表示して、ユーザに対して、顔領域の位置または大きさの調整を促す。
【0072】
例えば、表示制御部302は、顔領域の位置がガイド枠603の位置と略一致していないと判定された場合、「顔を枠の中に入れて下さい。」というメッセージ602を計測前画面600に表示する。また、例えば、表示制御部302は、顔領域の大きさがガイド枠603の大きさに対して小さ過ぎると判定された場合、「もう少しカメラに近づいて下さい。」というメッセージ602を計測前画面600に表示する。また、例えば、表示制御部302は、顔領域の大きさがガイド枠603の大きさに対して大き過ぎると判定された場合、「もう少しカメラから遠ざかって下さい。」というメッセージ602を計測前画面600に表示する。
【0073】
本実施の形態では、表示制御部302は、表示装置100H2に対してアラートを表示することによって、ユーザに対して、顔領域の位置および大きさの調整を促しているが、これに限定するものではなく、音声等の他の手段によって、ユーザに対して、顔領域の位置または大きさの調整を促しても良い。また、表示制御部302は、顔領域の位置および大きさがガイド枠の位置および大きさと略一致していると判定された場合と、顔領域の位置および大きさがガイド枠の位置および大きさと略一致していると判定されなかった場合とで、ガイド枠の表示態様(例えば、色)を変えることによって、ユーザに対して、顔領域の位置または大きさの調整を促しても良い。
【0074】
一方、顔領域の位置および大きさと、ガイド枠の位置および大きさとが略一致していると判定した場合(ステップS907:Yes)、測定部303は、ステップS904において測定した脈波信号の品質を評価する(ステップS909)。本実施の形態では、測定部303は、既存の技術を用いて、脈波信号の品質を評価する。
【0075】
例えば、測定部303は、脈波信号のS/N比を算出し、その算出結果に基づいて、脈波信号の品質を評価する。具体的には、測定部303は、まず、脈波信号のパワースペクトルを算出する。次いで、測定部303は、脈波信号のパワースペクトルに基づいて、脈波信号の信号成分とノイズ成分を求める。そして、測定部303は、脈波信号の信号成分とノイズ成分との比を、脈波信号のS/N比として算出する。
【0076】
ここで、脈波信号のパワースペクトルは、脈波信号の時系列データに対して、種々のスペクトル解析方法を適用することによって算出する。スペクトル解析手法は、例えば、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)や最大エントロピー法(MEM:Maximum Entropy Method)を用いる。
【0077】
図14は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において測定される脈波信号のパワースペクトルの一例を示す図である。
図14において、横軸は、周波数(Hz)を表し、横軸は、パワー(振幅)を表す。
図14に示すように、脈波信号のパワースペクトルには、脈波の信号成分だけでなく、ノイズ成分も含まれる。例えば、1Hz付近に現れるピークおよびその整数倍の周波数付近に現れるピークは、生体1の脈波に起因するピークである。
【0078】
図15は、本実施の形態にかかる脈波測定装置による脈波信号のS/N比の算出処理の一例を説明するための図である。
図15において、縦軸は、周波数(Hz)を表し、横軸は、パワー(振幅)を表す。脈波信号のパワースペクトルを求めた後、測定部303は、脈波信号のパワースペクトルの脈波成分とノイズ成分とを求める。
【0079】
具体的には、測定部303は、脈波信号のパワースペクトルにおいて、Pth以下かつ周波数がFth以下のパワーを信号成分に設定し、それ以外のパワーをノイズ成分に設定する。ここで、Pthは、ノイズ成分と判断するパワーの閾値であり、例えば、信号成分が殆ど含まれない高周波のパワーに基づいて決定される値である。また、Fthは、ノイズ成分と判断する周波数の閾値であり、例えば、パワーが最大となる周波数Fpから予め設定された値だけ小さい周波数である。
【0080】
測定部303は、Pth以下かつ周波数がFth以下のパワーの平均値を信号成分として用い、それ以外のパワーの平均値をノイズ成分として用いる。そして、測定部303は、信号成分とノイズ成分との比を、脈波信号のS/N比として算出する。ここで、S/N比が大きくなるに従い、脈波信号の品質が高いことを意味する。
【0081】
図9に戻り、測定部303は、脈波信号の品質に基づいて、生体1の疲労度の評価が可能か否か(言い換えると、生体1の脈波信号が測定可能か否か)を判定する(ステップS910)。本実施の形態では、制御部304は、脈波信号のS/N比が所定のS/N比以上であるか否かを判定する。ここで、所定のS/N比は、予め設定されるS/N比であり、生体1の疲労度等を表す指標の評価精度を担保するために必要な脈波信号のS/N比である。脈波信号のS/N比と、疲労度等を表す指標(例えば、自律神経機能のバランスを表すLF/HF値)の評価精度と、の間には、脈波信号のS/N比が高くなるに従って、生体1の疲労度等を表す指標の評価精度が高くなるという関係がある。よって、測定部303は、脈波信号のS/N比と、生体1の疲労度等を表す指標の評価精度との関係に基づいて、所定のS/N比を決定する。そして、制御部304は、脈波信号のS/N比が所定のS/N比以上である場合、生体1の疲労度等の評価が可能と判定する。
【0082】
本実施の形態では、測定部303は、生体1の疲労度の評価が可能か否かの判定に用いる特徴量として、脈波信号のS/N比を用いているが、生体1の疲労度等を表す指標の評価精度と相関がある特徴量であれば、別の特徴量を用いても良い。例えば、測定部303は、脈波信号の振幅を、生体1の疲労度等を表す指標の評価精度と相関がある特徴量として用いても良い。そして、測定部303は、脈波信号の振幅が所定の振幅より大きい場合、生体1の疲労度等の評価が可能と判定する。また、測定部303は、脈波信号に対する寄与が大きいG信号(肌領域に含まれる画素のG信号)の振幅を、生体1の疲労度を表す指標の算出精度と相関がある特徴量として用いても良い。G信号の振幅は、脈波信号のS/N比と比較して短時間で算出することができるので、生体1の疲労度等の評価が可能か否かの判定処理を短時間で実行することができる。
【0083】
次に、生体1の疲労度等の評価が不可と判定された場合(ステップS910:No)、表示制御部302は、表示装置100H2に表示するガイド枠の大きさを調整する(ステップS911)。
【0084】
図16は、本実施の形態にかかる脈波測定装置によるガイド枠の大きさの調整処理の一例を説明するための図である。本実施の形態では、表示制御部302は、
図16に示すように、計測前画面600に表示されるガイド枠603の大きさを大きくするとともに、「もう少しカメラに近づいて下さい。」等のメッセージ602を計測前画面600に表示して、ユーザに対して顔領域の大きさの調節を促す。表示制御部302は、ガイド枠603の大きさの複数の候補を予め登録しておき、現在のガイド枠603の大きさよりも大きいガイド枠603を計測前画面600に表示する。
【0085】
ガイド枠603が大きくなることによって、撮像画像内の顔領域から検出される肌領域の画素が増加すると、脈波信号のS/N比が大きくなる。よって、表示制御部302は、肌領域の画素の増加数と、脈波信号のS/N比の増加率との関係式またはテーブルを予め作成しておき、現在のガイド枠603の画素数と、脈波信号のS/N比との関係に基づいて、目標とする脈波信号のS/N比を得るために必要なガイド枠603の画素数を推定する。そして、表示制御部302は、推定した画素数に基づいて、ガイド枠603の大きさを調整しても良い。
【0086】
すなわち、表示制御部302は、生体1の脈波信号に基づいて、ガイド枠603の位置および大きさを調整する。これにより、脈波信号の測定に望ましい顔領域の位置および大きさのガイド枠603を撮像画像601に重ねて表示することによって、S/N比の大きい脈波信号を安定して測定できる位置にユーザを誘導することができるので、S/N比の大きい脈拍信号を測定することができる。また、ズーム機能を有しない撮像装置100H1を用いる場合でも、顔領域が適切な大きさになるように、ユーザの位置を誘導することができるので、S/N比が大きい脈波信号を測定することができる。また、ユーザを撮像画像の中央に誘導することができるので、脈波信号の測定中にユーザの体動が発生して、ユーザの顔の位置が動いた場合でも、脈波信号が測定できなくなるリスクを低減することができる。
【0087】
さらに、ユーザの肌の色や照明の明るさ等の条件が変化して、撮像画像から測定できる脈波信号のS/N比が変化した場合でも、ガイド枠603の大きさを調整することによって、S/N比の大きい脈波信号を測定することができる。例えば、脈波信号を測定時に照明の明るさが暗くなると、顔領域の大きさが同じであっても、測定できる脈波信号のS/N比が低下するが、ガイド枠603の大きさを大きくすることによって、撮像画像に含まれる顔領域の大きさを大きくすることができるので、脈波信号のS/N比が低下することを抑制することができる。
【0088】
図9に戻り、一方、生体1の疲労度等の評価が可能であると判定した場合(ステップS910:Yes)、測定部303は、撮像画像内の顔領域から検出した肌領域に基づいて、生体1の脈波信号の測定を開始する(ステップS912)。
【0089】
図17は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において表示される計測前画面の一例を示す図である。本実施の形態では、生体1の疲労度等の評価が可能であると判定された場合、表示制御部302は、
図17に示すように、計測前画面600に、「測定を開始します。」等のメッセージ602を表示する。そして、測定部303は、生体1の疲労度等の評価が可能であると判定されてから(すなわち、ガイド枠603内に顔領域が収まった後)、所定時間経過した場合に、撮像画像601に含まれる顔領域に基づく生体1の脈波信号の測定を自動的に開始する。ここで、所定時間は、予め設定される時間であり、例えば、ユーザが脈波信号の測定のために心や呼吸の状態を落ち着かせるために必要な時間(例えば、4秒)である。その際、表示制御部302は、計測前画面600において、所定時間のカウントダウン表示を行っても良い。
【0090】
または、生体1の疲労度等の評価が可能であると判定された場合、表示制御部302は、計測前画面600に対して、測定開始ボタンを表示しても良い。そして、生体1の疲労度等の評価が可能であると判定された後(すなわち、ガイド枠603内に顔領域が収まった後)、ユーザが入力装置100H3(例えば、マウス)を操作して、計測前画面600に表示される測定開始ボタンが押下された場合に、測定部303は、撮像画像601に含まれる顔領域に基づく生体1の脈拍信号の測定を開始しても良い。
【0091】
計測前画面600に測定開始ボタンを表示する場合、表示制御部302は、生体1の疲労度等の評価が可能であると判定されるまでは、非アクティブ(ユーザが測定開始ボタンを押下しても、生体1の脈波信号の測定が開始された状態)で測定開始ボタンを表示する。そして、表示制御部302は、生体1の疲労度等の評価が可能であると判定された後、アクティブ(ユーザが測定開始ボタンを押下すると、生体1の脈波信号の測定が開始される状態)で測定開始ボタンを表示することが好ましい。これにより、生体1の疲労度等の評価が可能であると判定される前に、ユーザが誤って測定開始ボタンを押下した場合でも、生体1の脈波信号の測定が開始されないので、不正確な生体1の疲労度等の評価結果が得られることを防止できる。
【0092】
図18は、本実施の形態にかかる脈波測定装置において計測中画面を表示中に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図18を用いて、本実施の形態にかかる脈波測定装置100において計測中画面を表示中に実行される処理の流れの一例について説明する。
【0093】
生体1の疲労度等の評価が可能であると判定された後、脈波測定装置100は、
図9に示すステップS901,ステップS903~ステップS906と同様の処理を実行する。次いで、測定部303は、撮像画像から検出される顔領域の位置および大きさが生体1の脈波信号の測定に適切か否か、および撮像装置100H1に入射される光の光量が生体1の脈波信号の測定に適切か否かを判定する(ステップS1801)。
【0094】
本実施の形態では、測定部303は、撮像画像から検出される顔領域の位置および大きさを検出し、顔領域の位置および大きさに応じて、顔領域が生体1の脈波信号の測定に適切か否かを判定する。具体的には、脈波信号の測定中に生体1の顔の位置が大きく変化して、顔の一部が撮像装置100H1の撮像範囲から外れてしまった場合(すなわち、撮像画像内に顔領域が含まれなくなった場合)、脈波信号を正確に測定することが難しいため、測定部303は、顔領域が生体1の脈波信号の測定に適切でないと判定する。
【0095】
また、測定部303は、撮像装置100H1に入射される光の光量を検出し、当該検出された光量が、第1所定値以下または第2所定値以上である場合、検出された光量が、生体1の脈波信号の測定に適切でないと判定する。本実施の形態では、測定部303は、撮像画像内の顔領域から検出する肌領域の画素のRGB値を検出し、当該RGB値が、生体1の脈波信号の測定に適切か否かを判定する。具体的には、脈波信号の測定中に照明の明るさ等が大きく変化して、肌領域の画素のRGB値が生体1の脈波信号の測定に必要なRGB値の下限(第1所定値の一例)以下となったり、肌領域の画素のRGB値が生体1の脈波信号の測定に必要なRGB値の上限(第2所定値の一例)以上となったりした場合、脈波信号を正確に測定することが難しいため、測定部303は、撮像装置100H1に入射される光の光量が適切でないと判定する。
【0096】
撮像画像から検出される顔領域の位置および大きさ、または撮像装置100H1に入射される光の光量が、生体1の脈波信号の測定に適切でないと判定された場合(ステップS1801:No)、測定部303は、生体1の脈波信号の測定を中止する(ステップS1802)。すなわち、測定部303は、顔領域の位置および大きさに応じて、生体1の脈波信号の測定を中止する。また、測定部303は、撮像装置100H1に入射される光の光量が第1所定値以下または第2所定値以上である場合、生体1の脈波信号の測定を中止する。
【0097】
撮像画像から検出される顔領域の位置および大きさ、または撮像装置100H1に入射される光の光量が、生体1の脈波信号の測定に適切でないと判定された場合、所望の品質の脈波信号を測定することが困難であり、信頼性の高い疲労度等の評価を実施することが難しい。そのため、撮像画像から検出される顔領域の位置および大きさ、または撮像装置100H1に入射される光の光量が、生体1の脈波信号の測定に適切でないと判定された場合、測定部303は、生体1の脈波信号の測定を中止する。これにより、信頼性の低い脈波信号の測定が実施されることを防止できる。
【0098】
また、撮像画像から検出される顔領域の位置および大きさ、または撮像装置100H1に入射される光の光量が適切でないと判定された場合、表示制御部302は、顔領域の位置および大きさ、または撮像装置100H1に入射される光の光量が適切でないことを通知するアラートを表示装置100H2に表示しても良い。例えば、表示制御部302は、計測中画面700に、「顔の位置がずれています。」、「光量が不足しています。」等のメッセージ701を表示しても良い。若しくは、表示制御部302は、音声等によって、顔領域の位置および大きさ、または撮像装置100H1に入射される光の光量が適切でないことをユーザに通知しても良い。これにより、顔領域の位置および大きさ、または撮像装置100H1に入射される光の光量が適切でないことによる、生体1の脈波信号の測定に対する影響を低減することができるので、より信頼性の高い脈波信号の測定結果を得ることができる。
【0099】
一方、撮像画像から検出される顔領域の位置および大きさ、または撮像装置100H1に入射される光の光量が、生体1の脈波信号の測定に適切であると判定された場合(ステップS1801:Yes)、測定部303は、撮像画像内の顔領域の肌領域に基づく生体1の脈波信号の測定結果をHDD100H7等の記憶部に記録(保存)する(ステップS1803)。本実施の形態では、測定部303は、撮像装置100H1により撮像される動画像を構成するフレーム(撮像画像)毎に、当該フレーム内の顔領域の肌領域に基づく生体1の脈波信号の測定結果を記憶部に保存する。
【0100】
本実施の形態では、測定部303は、生体1の脈波信号の測定結果を記憶部に保存しているが、これに限定するものではなく、生体1の脈波信号に代えて、脈波信号の測定に用いる肌領域に含まれる画素のRGB値や、脈波信号の測定に用いる肌領域を含む撮像画像等、生体1の脈波信号の測定に用いる情報を記憶部に保存しても良い。その場合、測定部303は、後述する
図19に示す生体1の疲労度等の評価処理において、
図9に示すステップS904およびステップS905に示す処理を実行して、生体1の脈波信号を測定した上で、生体1の疲労度等の評価処理を実行する。
【0101】
次に、測定部303は、生体1の脈波信号の測定を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS1804)。ここで、所定時間は、予め設定された時間であり、生体1の疲労度等の評価に必要な脈波信号の測定に必要な時間(例えば、30秒から3分程度)である。生体1の脈波信号の測定を開始してから所定時間が経過していない場合(ステップS1804:No)、測定部303は、ステップS901に戻り、生体1の脈波信号の測定を継続する。一方、生体1の脈波信号の測定を開始してから所定時間が経過した場合(ステップS1804:Yes)、測定部303は、生体1の脈波信号の測定を終了する。
【0102】
図19は、本実施の形態にかかる脈波測定装置による生体の疲労度等の評価処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図19を用いて、本実施の形態にかかる脈波測定装置100による生体1の疲労度等の評価処理の流れの一例について説明する。
【0103】
まず、測定部303は、HDD100H7等の記憶部に記憶される脈波信号を取得する(ステップS1901)。次いで、測定部303は、取得した脈波信号に基づいて、生体1の脈拍間隔を算出する(ステップS1902)。本実施の形態では、測定部303は、既知の技術を用いて、脈波信号に基づいて生体1の脈拍間隔を算出する。例えば、測定部303は、脈波信号のピークを検出し、隣り合うピーク間の時間間隔を脈拍間隔として算出する。
【0104】
次に、測定部303は、算出した脈拍間隔が等間隔になるように、算出した脈拍間隔のリサンプリングを実行する(ステップS1903)。本実施の形態では、測定部303は、予め設定される時間間隔(例えば、0.25sec)で、算出した脈拍間隔のリサンプリングを実行する。リサンプリングする経過時間における脈拍間隔は、線形補間やスプライン補間等によって、補間することが可能である。
【0105】
次いで、測定部303は、脈拍間隔の時系列データに基づいて、脈拍間隔のパワースペクトルを算出する(ステップS1904)。本実施の形態では、測定部303は、既知の周波数解析手法を用いて、脈拍間隔のパワースペクトルを算出する。例えば、測定部303は、最大エントロピー法によって、指定の周波数におけるパワーを求める。ラグ等のパラメータは適当な値を設定するものとする。
【0106】
そして、測定部303は、脈拍間隔のパワースペクトルに基づいて、生体1の疲労度等の指標である疲労指標を算出する(ステップS1905)。本実施の形態では、測定部303は、既知の方法によって、自律神経機能のバランスを表すLF/HF値を、生体1の疲労指標として算出する。例えば、測定部303は、脈拍間隔のパワースペクトルの0.04~0.15Hzのパワーの積分値をLF値として算出し、脈拍間隔のパワースペクトルの0.15~0.40Hzのパワーの積分値をHF値として算出する。次いで、測定部303は、算出したLF値とHF値の比を、LF/HF値として算出する。
【0107】
その後、表示制御部302は、測定部303による疲労指標の算出結果を表示装置100H2に表示する(ステップS1906)。本実施の形態では、表示制御部302は、結果画面800に対して、測定部303により算出される疲労指標801を表示する。また、本実施の形態では、表示制御部302は、疲労指標801に応じたコメント802を、結果画面800に表示する。コメント802は、HDD100H7等の記憶部に予め保存されているものとする。表示制御部302は、測定部303により算出される疲労指標に応じたコメント802を記憶部から読み出して、結果画面800に表示するものとする。
【0108】
このように、本実施の形態にかかる脈波測定装置100によれば、撮像画像における顔領域の位置および大きさ、若しくは、撮像装置100H1に入射される光の光量が適切でないと判定された場合に、生体1の脈波信号の測定を中止することができるので、信頼性の低い脈波信号の測定が実行されることを抑制することができる。すなわち、生体1の脈波信号を非接触で測定する場合でも、生体1の脈波信号を正しく測定することができる。
【0109】
本実施形態の脈波測定装置100で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0110】
また、本実施形態の脈波測定装置100で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の脈波測定装置100で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態のプログラムを、ROM100H5等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0111】
本実施の形態の脈波測定装置100で実行されるプログラムは、上述した各部(受付部301、表示制御部302、および測定部303)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU100H4(プロセッサの一例)が上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、受付部301、表示制御部302、および測定部303が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【符号の説明】
【0112】
100 脈波測定装置
100H1 撮像装置
100H2 表示装置
100H3 入力装置
100H4 CPU
100H5 ROM
100H6 RAM
100H7 HDD
100H8 システムバス
301 受付部
302 表示制御部
303 測定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【文献】特開2007-289540号公報
【文献】特開2017-104488号公報