(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】吐出制御装置、液体吐出装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240709BHJP
B41J 29/42 20060101ALI20240709BHJP
B41J 3/60 20060101ALI20240709BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240709BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 103
B41J2/01 203
B41J29/42 F
B41J3/60
B41J29/393 101
B41J29/38 202
(21)【出願番号】P 2020142788
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】横山 佳代
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212842(JP,A)
【文献】特開2020-116748(JP,A)
【文献】特開2006-166138(JP,A)
【文献】特開2015-066744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0174625(US,A1)
【文献】特開2020-023103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 3/60
B41J 29/42
B41J 29/393
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出対象に対して液体を吐出する液体吐出部の吐出にかかる値を補正する補正値を、前記吐出対象の種別に対応付けて記憶部に記憶する記憶制御部と、
ユーザからの入力を受け付ける入力受付部が受け付けた前記入力に基づいて、前記記憶部が記憶している前記補正値の更新を、前記記憶制御部を介して実行する補正値更新部と、
を備え、
前記補正値更新部は、
前記記憶部に前記吐出対象の種別と対応付けて記憶された前記補正値を選択可能に表示し、表示された前記補正値の中から選択を受け付けたいずれかの前記補正値を対応付けて更新し、複数の異なる前記吐出対象の種別に対して同一の補正値を更新する、
ことを特徴とする吐出制御装置。
【請求項2】
前記補正値更新部は、一の吐出対象の種別に対応する補正値である第1補正値を更新する入力を前記入力受付部が受け付けた場合、前記第1補正値の更新後の補正値と、前記一の吐出対象の種別と対応付けられた他の吐出対象の種別についても前記第1補正値の更新後の補正値とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の吐出制御装置。
【請求項3】
前記補正値更新部は、前記補正値が対応付けられていない新たな吐出対象の種別に対して、前記記憶部に吐出対象の種別と対応付けて記憶された補正値を選択可能に表示し、表示された補正値の中から選択を受け付けたいずれかの補正値を対応付けて更新する、
ことを特徴とする請求項1に記載の吐出制御装置。
【請求項4】
前記補正値更新部は、前記補正値が対応付けられていない新たな吐出対象の種別に対して、前記記憶部に補正値と対応付けて記憶された吐出対象の種別を選択可能に表示し、表示された吐出対象の種別の中から選択を受け付けたいずれかの吐出対象の種別に対応付けられた補正値を対応付けて更新する、
ことを特徴とする請求項1に記載の吐出制御装置。
【請求項5】
前記補正値更新部は、選択可能に表示する補正値として、異なる印刷画質モード、または異なるドットゲインが設定されている吐出対象の種別で作成された補正値を除く、
ことを特徴とする請求項
1ないし3
の何れか一項に記載の吐出制御装置。
【請求項6】
前記補正値更新部は、同一の補正値が対応付けられた複数の吐出対象の種別の中の一の吐出対象の種別の補正値を更新した場合に、他の吐出対象の種別に対応付けられた補正値とは別の補正値として前記記憶部に記憶するか否かを選択可能に表示し、選択に従って補正値を更新する、
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の吐出制御装置。
【請求項7】
吐出対象に対して液体を吐出する液体吐出部と、
請求項1ないし6の何れか一項に記載の吐出制御装置と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
ユーザからの入力を受け付ける入力受付部を更に備える、
ことを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
コンピュータを、
吐出対象に対して液体を吐出する液体吐出部の吐出にかかる値を補正する補正値を、前記吐出対象の種別に対応付けて記憶部に記憶する記憶制御部と、
ユーザからの入力を受け付ける入力受付部が受け付けた前記入力に基づいて、前記記憶部が記憶している前記補正値の更新を、前記記憶制御部を介して実行する補正値更新部と、
として機能させ、
前記補正値更新部は、
前記記憶部に前記吐出対象の種別と対応付けて記憶された前記補正値を選択可能に表示し、表示された前記補正値の中から選択を受け付けたいずれかの前記補正値を対応付けて更新し、複数の異なる前記吐出対象の種別に対して同一の補正値を更新する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出制御装置、液体吐出装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラインヘッド方式の液体吐出装置において、液体の不吐出・吐出曲がりによる画像品質の低下を防ぐために、検出した不良ノズル毎の不吐出補正を行う技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、インクジェットヘッドのノズル毎の補正値である不吐出補正パラメータに基づいて記録媒体に記録されたテストチャートの読取データを取得し、取得した読取データに基づいて評価したノズル毎の不吐出補正パラメータの補正強度から反復法を用いた一変数求根アルゴリズムに基づいてノズル毎の不吐出補正パラメータを最適化する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ノズルからの液体の不吐出による画質への影響は、吐出対象の種別毎の特性により異なる、という課題がある。具体的には、所定の吐出対象の種別を使って調整した補正値が、別の吐出対象の種別を用いる際には適切な補正値ではない、という課題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、吐出対象の種別毎に適切な補正値を適用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、吐出対象に対して液体を吐出する液体吐出部の吐出にかかる値を補正する補正値を、前記吐出対象の種別に対応付けて記憶部に記憶する記憶制御部と、ユーザからの入力を受け付ける入力受付部が受け付けた前記入力に基づいて、前記記憶部が記憶している前記補正値の更新を、前記記憶制御部を介して実行する補正値更新部と、を備え、前記補正値更新部は、前記記憶部に前記吐出対象の種別と対応付けて記憶された前記補正値を選択可能に表示し、表示された前記補正値の中から選択を受け付けたいずれかの前記補正値を対応付けて更新し、複数の異なる前記吐出対象の種別に対して同一の補正値を更新する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出対象の種別毎に補正値を登録でき、かつ、複数の異なる吐出対象の種別に対して同一の補正値を登録することができるため、吐出対象の種別毎に適切な補正値を適用することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかるインクジェット記録装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、2台のスキャナの配置例を示す図である。
【
図3】
図3は、インクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、補正値更新処理にかかる機能を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、用紙データおよび補正値データを例示的に示す図である。
【
図6】
図6は、補正値更新処理を示すシーケンス図である。
【
図7】
図7は、用紙データ設定画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、補正値一覧画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、補正値更新確認画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、吐出制御装置、液体吐出装置およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態は、液体吐出装置としてインクジェット方式のインクジェット記録装置を適用したものである。
【0010】
図1は、実施の形態にかかるインクジェット記録装置1の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、主に、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400を備えている。インクジェット記録装置1は、給紙部100から給紙される吐出対象となるシート材としての記録媒体である用紙Pに対し、画像形成部200で画像形成用の液体であるインクにより画像を形成する。そして、インクジェット記録装置1は、用紙P上に付着したインクを乾燥部300において乾燥させた後、用紙Pを排紙部400から排紙する。
【0011】
まず、給紙部100について説明する。
【0012】
給紙部100は、主に、複数の用紙Pが積載される給紙トレイ110と、給紙トレイ110から用紙Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置120と、用紙Pを画像形成部200へ送り込むレジストローラ対130と、を備えている。
【0013】
給送装置120には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。
【0014】
給紙部100は、給送装置120により給紙トレイ110から送り出された用紙Pの先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130を所定のタイミングで駆動させる。これにより、用紙Pは、画像形成部200へ給紙される。
【0015】
なお、本実施形態において、給紙部100は、画像形成部200へ用紙Pを送り出すものであれば、その構成に制限はない。
【0016】
次に、画像形成部200について説明する。
【0017】
画像形成部200は、主に、受け取り胴241と、用紙担持ドラム210と、液体吐出部として機能するインク吐出部220と、受け渡し胴242と、を備えている。受け取り胴241は、給紙された用紙Pを受け取る。搬送部として機能する用紙担持ドラム210は、受け取り胴241によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する。インク吐出部220は、用紙担持ドラム210に担持された用紙Pに向けて液体であるインクを複数のノズルから選択的に吐出する。受け渡し胴242は、用紙担持ドラム210によって搬送された用紙Pを乾燥部300へ受け渡す。
【0018】
給紙部100から画像形成部200へ搬送されてきた用紙Pは、受け取り胴241の表面に設けられた用紙グリッパによって先端が把持され、受け取り胴241の表面移動に伴って搬送される。受け取り胴241により搬送された用紙Pは、用紙担持ドラム210との対向位置で用紙担持ドラム210へ受け渡される。
【0019】
用紙担持ドラム210の表面にも用紙グリッパが設けられており、用紙Pの先端が用紙グリッパによって把持される。また、用紙担持ドラム210の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置211によって用紙担持ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。
【0020】
受け取り胴241から用紙担持ドラム210へ受け渡された用紙Pは、用紙グリッパによって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によって用紙担持ドラム210の表面に吸着して、用紙担持ドラム210の表面移動に伴って搬送される。
【0021】
本実施形態のインク吐出部220は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを複数のノズルから選択的に吐出して画像を形成するラインヘッドであり、インクごとに個別の液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kを備えている。
【0022】
なお、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kは、液体を吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用することができる。必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
【0023】
インク吐出部220の液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kは、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙担持ドラム210に担持された用紙Pがインク吐出部220との対向領域を通過する際に、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kの複数のノズルから各色インクが選択的に吐出され、当該画像情報に応じた画像が形成される。
【0024】
なお、本実施形態において、画像形成部200は、用紙P上に液体を付着させて画像を形成するであれば、その構成に制限はない。
【0025】
加えて、
図1に示すように、画像形成部200は、ラインスキャナである2台のスキャナ231,232を、インク吐出部220に対して用紙Pの搬送方向下流側に備えている。2台のスキャナ231,232は、不良ノズルの検出に用いるテストチャートを読み取るものである。なお、2台のスキャナ231,232の解像度は、画像形成部200における印刷解像度よりも低解像度である。
【0026】
画像形成部200は、用紙担持ドラム210の表面に用紙Pの先端が用紙グリッパで把持されつつ吸引吸着搬送されている状態でインク吐出部220によりテストチャートを印刷し、その直後に2台のスキャナ231,232によってテストチャートの読取りを行う。
【0027】
ここで、
図2は2台のスキャナ231,232の配置例を示す図である。
図2に示すように、2台のスキャナ(Front)231,スキャナ(Rear)232は、用紙Pの全面を読み取るために千鳥状に配置される。より詳細には、2台のスキャナ231,232は、主走査方向において読取り範囲がオーバーラップ(重複)する領域(オーバラップ領域)を有している。また、2台のスキャナ231,232は、副走査方向においてずらして配置される。
【0028】
なお、本実施の形態においては、2台のスキャナ231,232を配置するようにしたが、これに限るものではなく、主走査方向における読取り範囲を確保できるものであれば、1台のスキャナでもよいし、3台以上のスキャナを組み合わせたものであってもよい。
【0029】
次に、乾燥部300について説明する。
【0030】
乾燥部300は、主に、画像形成部200で用紙P上に付着したインクを乾燥させるための乾燥機構301と、画像形成部200から搬送されてくる用紙Pを搬送する搬送機構302と、を備えている。
【0031】
乾燥部300は、画像形成部200から搬送されてきた用紙Pを、搬送機構302にて受け取った後、乾燥機構301を通過するように搬送し、排紙部400へ受け渡す。乾燥部300は、用紙Pが乾燥機構301を通過する際、用紙P上のインクに乾燥処理を施す。これにより、インク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着するとともに、用紙Pのカールが抑制される。
【0032】
次に、排紙部400について説明する。
【0033】
排紙部400は、主に、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ410を備えている。排紙部400は、乾燥部300から搬送されてくる用紙Pを、排紙トレイ410上に順次積み重ねて保持する。
【0034】
なお、本実施形態において、排紙部400は、用紙Pを排紙するものであれば、その構成に制限はない。
【0035】
次に、その他の機能部について説明する。
【0036】
本実施形態のインクジェット記録装置1は、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400を備えているが、他の機能部を適宜追加してもよい。例えば、給紙部100と画像形成部200との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加したり、乾燥部300と排紙部400との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。
【0037】
前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うものなどが挙げられるが、前処理の内容については特に制限はない。また、後処理部としては、例えば、画像形成部200で画像が形成された用紙Pを反転させて再び画像形成部200へ送って用紙Pの両面に画像を形成するための用紙反転搬送処理や、画像が形成された複数枚の用紙Pを綴じる処理、または、用紙Pの変形を矯正させる矯正機構や用紙Pを冷却させる冷却機構などが挙げられるが、後処理の内容についても特に制限はない。
【0038】
続いて、インクジェット記録装置1の制御構成について説明する。
【0039】
ここで、
図3はインクジェット記録装置1の制御構成を示すブロック図である。
図3に示すように、インクジェット記録装置1は、この装置全体の制御を司る制御部10を備えている。制御部10は、吐出制御装置として機能するものであって、制御主体となるCPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、メモリ14と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)15とを備えている。ROM12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムやその他の固定データを格納する。RAM13は、画像データ等を一時格納する。メモリ14は、記憶部として機能するものであって、インクジェット記録装置1の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリである。ASIC15は、画像データに対する各種信号処理や並び替え等を行なう画像処理や、その他装置全体を制御するための入出力信号処理を実行する。
【0040】
また、
図3に示すように、制御部10は、ホストインタフェース(I/F)16と、ヘッド駆動制御部17と、モータ制御部18と、I/O19と、スキャナ制御部8と、を備えている。
【0041】
ホストI/F16は、ホスト側との間で画像データ(印刷データ)や制御信号の送受信をケーブル或いはネットワークを介して行う。インクジェット記録装置1に接続されるホストとしては、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読取装置、デジタルカメラなどの撮像装置などが挙げられる。
【0042】
I/O19は、湿度センサ、温度センサ及びその他のセンサなどの各種センサ25を接続する。I/O19は、各種センサ25からの検知信号を入力する。
【0043】
ヘッド駆動制御部17は、インク吐出部220を駆動制御するものであり、データ転送手段を含む。より詳細には、ヘッド駆動制御部17は、画像データをシリアルデータで転送する。また、ヘッド駆動制御部17は、画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、インク吐出部220から液滴を吐出する際に使用する駆動波形を生成する。そして、ヘッド駆動制御部17は、生成した駆動波形等をインク吐出部220の内部の駆動回路へ入力する。
【0044】
モータ制御部18は、受け取り胴241、用紙担持ドラム210、受け渡し胴242などを回転させるモータMを駆動するものである。
【0045】
スキャナ制御部8は、2台のスキャナ231,232を制御する。
【0046】
加えて、制御部10は、インクジェット記録装置1に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル60を接続する。操作パネル60は、入力受付部として機能する。
【0047】
制御部10は、CPU11がROM12(またはメモリ14)から読み出したコンピュータプログラムをRAM13に展開して実行することにより、各部を統括的に制御する。より詳細には、CPU11は、操作パネル60から設定された印字モードに基づき、当該印字モード毎に設定された制御内容をROM12(またはメモリ14)から読み出す。そして、CPU11は、ROM12(またはメモリ14)から読み出した制御内容に基づいて各部を制御することで、後述する制御を実行する。
【0048】
なお、本実施形態のインクジェット記録装置1で実行されるコンピュータプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0049】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1で実行されるコンピュータプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のインクジェット記録装置1で実行されるコンピュータプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0050】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1で実行されるコンピュータプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0051】
ここで、インクジェット記録装置1の制御部10がコンピュータプログラムに従って実行する不良ノズルに対する補正処理について簡単に説明する。不良ノズルに対する補正処理は、例えば特開2014-54763号公報に記載の技術である。
【0052】
インクジェット記録装置1の制御部10は、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kに備えられた複数のノズル毎の補正値(不吐出補正パラメータ)に基づいてテストチャートデータを生成する。制御部10は、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kと用紙Pとを相対的に移動させながらテストチャートデータに基づいて複数のノズルからインクを用紙Pに吐出させ、スキャナ231,232によって用紙Pに記録されたテストチャートの読取データを取得する。
【0053】
次に、制御部10は、取得した読取データに基づいて、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kに備えられたノズル毎の補正値(不吐出補正パラメータ)の補正強度を評価する。そして、制御部10は、評価した補正強度から反復法を用いた一変数求根アルゴリズムに基づいて、ノズル毎の補正値(不吐出補正パラメータ)を更新する動作を繰り返し実行させて、ノズル毎の補正値(不吐出補正パラメータ)を最適化する。
【0054】
詳細は後述するが、上述のような処理によって最適化された補正値は、吐出対象の種別に対応付けてメモリ14に記憶される。
【0055】
次に、インクジェット記録装置1の制御部10がコンピュータプログラムに従って実行する補正値更新処理にかかる機能について説明する。
【0056】
ここで、
図4は補正値更新処理にかかる機能を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、制御部10は、表示制御部101、記憶制御部102、補正値更新部103として機能する。
【0057】
表示制御部101は、吐出対象である用紙Pに関する補正値の登録画面である用紙データ設定画面P1(
図7参照)を、操作パネル60に表示する。操作パネル60は、操作パネル60を介したユーザの操作に基づくイベントを表示制御部101に通知する。
【0058】
表示制御部101は、操作パネル60から通知されたイベントに従って、補正値更新に必要な情報を補正値更新部103に通知する。
【0059】
また、表示制御部101は、補正値更新部103からの結果の通知を受け、操作パネル60に更新結果を表示する。
【0060】
記憶制御部102は、メモリ14に対する用紙データおよび補正値データの記憶を制御する。
【0061】
ここで、
図5は用紙データ200および補正値データ500を例示的に示す図である。
図5に示すように、用紙データ200には、用紙Pの種別を識別するmediaID205が採番されている。記憶制御部102は、用紙データ200として、mediaID205に関連づけて、各用紙Pの紙種、カラー、コート種類などや用紙サイズに依存しない印刷条件(印刷モードやドットゲインなど)の情報を基本情報201としてメモリ14に記憶する。
【0062】
また、記憶制御部102は、用紙データ200として、用紙サイズ202に依存する補正値などに関する情報であるUniformityID204を各印刷条件203に併せてメモリ14に記憶する。
【0063】
補正値データ500には、補正値503に対応付けてUniformityID501が採番されている。記憶制御部102は、補正値データ500として、UniformityID501に関連づけて、補正の適用に使用するハーフトーンの情報、手動調整値や補正値作成時の印刷条件に関する情報502をメモリ14に記憶する。
【0064】
図4に戻り、補正値更新部103は、操作パネル60を介して表示制御部101から補正値登録で指定された用紙データ200に紐づけられたmediaID205とその用紙データ200の指定された補正値、また指定された補正値を適用する印刷条件を受信する。
【0065】
そして、補正値更新部103は、受信したmediaIDおよびUniformityIDをもとに、記憶制御部102を介してメモリ14から、用紙データ200と補正値データ500を取得し、指定された補正値の印刷条件が指定された用紙データ200の印刷条件203に適用できるかどうかを判断する。
【0066】
補正値更新部103は、指定された補正値の印刷条件が指定された用紙データ200の印刷条件203に適用できることが確認できた場合には、用紙データ200に紐づけられた補正値データ500のUniformityID501を更新する。
【0067】
次に、補正値更新処理の流れについて説明する。
【0068】
ここで、
図6は補正値更新処理を示すシーケンス図である。
図6に示すように、表示制御部101が、吐出対象である用紙Pに関する補正値の登録画面である用紙データ設定画面P1を、操作パネル60に表示していることを前提とする。
【0069】
ここで、
図7は用紙データ設定画面P1の一例を示す図である。
図7に示すように、用紙データ設定画面P1は、用紙種類や補正値に関する設定を行うための画面である。より詳細には、用紙データ設定画面P1は、吐出対象である用紙Pに関する、用紙名、紙種、カラー種類、コート種類、補正値などの設定を受け付ける。用紙名は、「○○社コート紙」などのように、用紙Pを識別するための名称である。紙種は、普通紙、再生紙、合成紙などのような用紙Pの種類を示すものである。カラー種類は、白色、黒色などの用紙Pの色を示すものである。コート種類は、グロス紙などの用紙Pのコート種類を示すものである。
【0070】
補正値は、用紙Pにかかる、用紙サイズ、画質モード、先塗り情報、用紙面情報に対応付けられて、設定される。用紙サイズは、A4縦、A4横などの用紙Pのサイズおよび向きを示すものである。画質モードは、スピード重視の高生産性モード、品質重視の高画質モードなどを示すものである。先塗り情報は、用紙Pにおける先塗りの有無を示すものである。用紙面情報は、用紙面のおもて、用紙面のうらを示すものである。
【0071】
図7に示すように、補正値は、補正値変更ボタンB1とともに用紙データ設定画面P1に表示される。
【0072】
このような状態で操作パネル60に表示された用紙データ設定画面P1の所望の補正値変更ボタンB1をユーザが操作すると、操作パネル60は、指定用紙に適用する補正値を登録するものとして、表示制御部101に通知する(ステップS1)。
【0073】
表示制御部101は、補正値登録要求として補正値更新に必要な情報(mediaID、登録するUniformityID)を補正値更新部103に通知する(ステップS2)。
【0074】
補正値更新部103は、用紙データ取得のために指定されたmediaIDを記憶制御部102に通知する(ステップS3)。
【0075】
記憶制御部102は、補正値更新部103から通知された指定したmediaIDに基づく用紙データをメモリ14から取得して補正値更新部103に通知する(ステップS4)。
【0076】
補正値更新部103は、補正値データ取得のために指定されたUniformityIDを記憶制御部102に通知する(ステップS5)。
【0077】
記憶制御部102は、補正値更新部103から通知された指定したUniformityIDに基づく補正値データをメモリ14から取得して補正値更新部103に通知する(ステップS6)。
【0078】
補正値更新部103は、用紙データおよび補正値データに基づき、補正値一覧画面P2(
図8参照)を表示する(ステップS7)。
【0079】
ここで、
図8は補正値一覧画面P2の一例を示す図である。
図8に示すように、補正値一覧画面P2は、補正値が作成時の印刷条件やその補正値を使用する設定になっている用紙名を表示する。具体的には、補正値一覧画面P2は、設定される印刷条件などに対して設定可能な補正値を一覧表示する。補正値一覧画面P2には、補正値ごとに、補正時の情報、使用されている用紙名称が表示される。補正時の情報は、紙種、用紙サイズ、画質モード、先塗り情報、用紙面情報である。また、補正値一覧画面P2には、補正値ごとに、設定可能な補正値であることを示す丸印が付されている。なお、二重丸印は、選択されている補正値を示している。
【0080】
ユーザは、補正値一覧画面P2に表示された印刷条件(補正時の情報など)を基に、用紙Pの補正値が用紙データに関連付け可能かについて印刷条件をチェックする。ユーザは、補正値一覧画面P2に表示された補正値から用紙Pに適用したい補正値を選択して補正値一覧画面P2のOKボタンB2を操作することにより、用紙Pに適用したい補正値を決定することで、用紙Pに既存の補正値を適用することができる。なお、ユーザが補正値一覧画面P2のキャンセルボタンB3を操作した場合には、補正値更新部103は、用紙データ設定画面P1に戻す。
【0081】
すなわち、補正値一覧画面P2は、印刷条件(補正時の情報など)を基に濃度ムラの特性が似ている別の用紙を探索し、濃度ムラの特性が似ている別の用紙間で、同一の補正値を適用する場合に使用する。この場合、1つの補正値を複数種類の用紙で参照することになる。この補正値を更新・調整した場合には、更新・調整した補正値は、参照している全ての用紙において適用される。
【0082】
なお、異なる印刷画質モード、または異なるドットゲイン(ハーフトーン)が設定されている用紙で作成された補正値については、登録することができないようにしてもよい。これにより、ユーザが補正可能な条件に関する知識をもっていなくても、適切な補正値を設定することができる。
【0083】
なお、補正値一覧画面P2には、初期値(補正なし)も表示し、初期値(補正なし)を選択することができるようにしてもよい。
【0084】
補正値更新部103は、補正値が選択されてOKボタンB2が操作された場合、補正値更新確認画面P3(
図9参照)を表示する。
【0085】
ここで、
図9は補正値更新確認画面P3の一例を示す図である。
図9に示すように、補正値更新確認画面P3は、補正値が更新される場合において、他の用紙にも補正値が使用されている場合に、更新するかどうかを選択できるようにしたものである。補正値更新確認画面P3は、補正値にかかる補正時の情報(紙種、用紙サイズ、画質モード、先塗り情報、用紙面情報)とともに、使用されている用紙の更新可否を問うチェックボックスを備える。補正値更新確認画面P3は、選択されている補正値を2つの用紙が使用している場合には、2つの用紙に対してそれぞれチェックボックスC1、C2を備える。チェックボックスは、補正値の関連付けがOKなのかNGなのかをユーザに宣言させるためのものである。
図9に示す例は、一の用紙のチェックボックスC1にはチェックを入れているが、他の用紙のチェックボックスC2にはチェックを入れていない状態を示すものである。これにより、自動で補正値が更新されずに、ユーザの選択で更新することができるので、意図しない更新を防ぐことができる。
【0086】
補正値更新部103は、補正値更新確認画面P3のチェックボックスを確認する。補正値更新部103は、補正値更新確認画面P3のチェックボックスにチェックが入っている場合には、補正値の関連付けがOKであるとして、登録要求結果(OK)を表示制御部101に通知する(ステップS11)。
【0087】
その後、補正値更新部103は、記憶制御部102に対してメモリ14の用紙データの更新を通知する(ステップS12)。
【0088】
記憶制御部102は、補正値更新部103から通知された用紙データの更新を完了すると、更新完了したことを補正値更新部103に通知する(ステップS13)。
【0089】
そして、補正値更新部103は、用紙データの更新完了通知を受け取ると、表示制御部101に対して更新した用紙データを通知する(ステップS14)。
【0090】
一方、補正値更新部103は、補正値更新確認画面P3のチェックボックスにチェックが入っていない場合には、補正値の関連付けがNGであるとして、登録要求結果(NG)を表示制御部101に通知する(ステップS15)。補正値更新部103は、このように更新しない場合には、更新前の補正値を複製し、別の補正値IDを割り当てる。
【0091】
最後に、表示制御部101は、操作パネル60に対して、登録結果の表示要求を通知し、登録結果を表示する(ステップS8)。
【0092】
このように本実施形態によれば、ユーザによる設定用紙の作成・編集時に、既に作成済みの補正値一覧から任意の補正値を選択して登録することができる。すなわち、本実施形態によれば、吐出対象の種別毎に補正値を登録でき、かつ、複数の異なる吐出対象の種別に対して同一の補正値を登録することができるため、吐出対象の種別毎に適切な補正値を適用することができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、新たな用紙に既存のUniformityIDを紐づけることにより、同じ補正値を適用できる用紙であれば、何度も補正を実施しなくてもよい。
【0094】
さらに、本実施形態によれば、新たな用紙に既存のUniformityIDを紐づける際に、補正値でなく原稿で選択することができる。新たに使用する用紙と近い用紙を選択することで、より適切な補正パラメータを選択しやすくなる。
【0095】
なお、本実施形態では、液体吐出装置としてインクジェット記録装置1への適用例で説明しているが、「液体吐出装置」は、吐出対象となる記録媒体の被乾燥面に向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドを備え、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではなく、例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するものも含まれる。
【0096】
また、記録媒体は、材質を限定されるものではなく、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど、液体が一時的でも付着可能なものであればよく、例えば、フィルム製品、衣料用等の布製品、壁紙や床材等の建材、皮革製品などに使用されるものであってもよい。
【0097】
また、「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0098】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
【0099】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと記録媒体とが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0100】
また、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの吐出エネルギー発生手段を使用することができるが、使用する吐出エネルギー発生手段が限定されるものではない。
【0101】
なお、上記実施の形態では、本発明の液体吐出装置を、インクジェット方式のインクジェット記録装置に適用した例を挙げて説明するが、これに限るものではなく、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 液体吐出装置
10 吐出制御装置
14 記憶部
60 入力受付部
102 記憶制御部
103 補正値更新部
220 液体吐出部
P 吐出対象
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】