(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】乾式試金分析のための試料融解装置
(51)【国際特許分類】
F27B 9/30 20060101AFI20240709BHJP
F27D 3/06 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F27B9/30
F27D3/06 Z
(21)【出願番号】P 2020148860
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】富樫 正道
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-292375(JP,A)
【文献】特開平4-305359(JP,A)
【文献】特開2020-116594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00 - 9/40
F27D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式試金分析のための試料融解装置であって、
坩堝の装入口及び退出口が設けられた本体部と、前記本体部の前記装入口側において前記本体部に装入される前記坩堝が設置される装入坩堝設置部と、前記本体部の前記退出口側において前記本体部から退出した前記坩堝が設置される退出坩堝設置部と、前記本体部の内側を通じて前記装入坩堝設置部から前記退出坩堝設置部まで前記坩堝を搬送する坩堝搬送部と、を有する融解炉と、
前記融解炉の前記装入坩堝設置部に設置する前記坩堝を収容する装入坩堝収容部と、
前記融解炉において融解された試料が投入される鋳型が配置される鋳型配置部と、
前記鋳型配置部の前記鋳型に試料を投入した後の前記坩堝を廃棄する坩堝廃棄部と、
前記融解炉に隣接する部分において、前記融解炉の前記装入坩堝設置部と前記退出坩堝設置部との間を移動自在であり、前記坩堝を把持して取り扱うアーム装置と、を備え、
前記融解炉、前記装入坩堝収容部、前記鋳型配置部及び前記坩堝廃棄部は、前記アーム装置の移動する範囲を囲むように配置され、
前記アーム装置は、前記融解炉の前記装入坩堝設置部及び前記退出坩堝設置部、前記装入坩堝収容部、前記鋳型配置部及び前記坩堝廃棄部のそれぞれにおいて前記坩堝の取り扱いに関する動作を行う
乾式試金分析のための試料融解装置。
【請求項2】
前記アーム装置の移動範囲における前記装入坩堝設置部側の端部である第1端部側には、前記装入坩堝収容部が配置され、
前記アーム装置の移動範囲における前記退出坩堝設置部側の端部である第2端部側には、前記鋳型配置部及び前記坩堝廃棄部が配置されている
請求項1に記載の乾式試金分析のための試料融解装置。
【請求項3】
前記アーム装置の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記アーム装置を前記第1端部側に移動させて、前記装入坩堝収容部において前記坩堝を前記アーム装置によって把持し、前記装入坩堝収容部において把持した前記坩堝を前記装入坩堝設置部に設置し、
前記アーム装置を前記第2端部側に移動させて、前記退出坩堝設置部において前記坩堝を前記アーム装置によって把持し、前記退出坩堝設置部において把持した前記坩堝に収容された試料を前記鋳型配置部において前記鋳型に投入し、前記鋳型配置部において前記鋳型に試料を投入した後の前記坩堝を前記坩堝廃棄部に廃棄する
請求項2に記載の乾式試金分析のための試料融解装置。
【請求項4】
前記坩堝搬送部は、前記装入坩堝設置部に設置された前記坩堝を前記本体部内に押し込む押込装置または前記装入坩堝設置部に設置された前記坩堝を前記退出坩堝設置部側に送るローラ式コンベア装置を有している
請求項1乃至3のいずれかに記載の乾式試金分析のための試料融解装置。
【請求項5】
前記坩堝搬送部によって前記装入坩堝設置部から前記退出坩堝設置部まで搬送される前記坩堝を保持する坩堝保持部材を備え、
前記坩堝保持部材は、匣鉢、セッターまたは台板である
請求項1乃至4のいずれかに記載の乾式試金分析のための試料融解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式試金分析によって鉱石の金属成分を定量分析する際に試料を融解させるための試料融解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉱石の金属成分を定量分析する方法として乾式試金分析が行われている。乾式試金分析は、鉱石を酸化鉛及び融剤と混合した試料を、坩堝内において融解して金や銀等の貴金属を鉛に溶け込ませて他の金属と分離し、貴金属と鉛との合金を灰吹き法によって貴金属のみを取り出して定量するものである。
【0003】
前記乾式試金分析は、従来、試料が入った坩堝を融解炉内に挿入して、試料の温度を例えば1200℃の温度まで昇温させた状態を所定時間保持した後、再び、試料が入った坩堝を取り出し、坩堝内において融解した試料を鋳型に流し込む、という作業を作業者が坩堝ばさみを用いて行っていた。前記乾式試金分析は、高温の環境となる融解炉に近接した場所で作業者が作業を行うことになるため、作業者にとって作業の負担が大きく、安全性の確保が容易ではない。このため、前記乾式試金分析では、作業者の作業負担を軽減するとともに、作業の安全性を向上させるために、作業の自動化が求められている。
【0004】
そこで、作業者の作業負担の軽減が可能な乾式試金分析のための試料融解装置としては、坩堝内の試料を加熱するための融解炉と、坩堝を融解炉の炉内に進入させるとともに、融解炉において加熱された試料が入っている坩堝を融解炉から取り出すためのアーム装置と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記試料融解装置は、融解炉として円形の融解炉と、融解炉の近傍において融解炉の入口及び出口を回転範囲に含むアーム装置と、を備えたものである。このため、前記試料融解装置は、アーム装置が、試料が入った坩堝を融解炉の入口から炉内に挿入する作業と、融解した試料が入った坩堝を融解炉の出口から取り出す作業と、を繰り返すだけであり、作業者の作業負担を十分に軽減することができない。
【0007】
本発明の目的とするところは、作業者の作業負担を軽減するとともに、作業の安全性を向上することのできる乾式試金分析のための試料融解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乾式試金分析のための試料融解装置は、乾式試金分析のための試料融解装置であって、坩堝の装入口及び退出口が設けられた本体部と、前記本体部の前記装入口側において前記本体部に装入される前記坩堝が設置される装入坩堝設置部と、前記本体部の前記退出口側において前記本体部から退出した前記坩堝が設置される退出坩堝設置部と、前記本体部の内側を通じて前記装入坩堝設置部から前記退出坩堝設置部まで前記坩堝を搬送する坩堝搬送部と、を有する融解炉と、前記融解炉の前記装入坩堝設置部に設置する前記坩堝を収容する装入坩堝収容部と、前記融解炉において融解された試料が投入される鋳型が配置される鋳型配置部と、前記鋳型配置部の前記鋳型に試料を投入した後の前記坩堝を廃棄する坩堝廃棄部と、前記融解炉に隣接する部分において、前記融解炉の前記装入坩堝設置部と前記退出坩堝設置部との間を移動自在であり、前記坩堝を把持して取り扱うアーム装置と、を備え、前記融解炉、前記装入坩堝収容部、前記鋳型配置部及び前記坩堝廃棄部は、前記アーム装置の移動する範囲を囲むように配置され、前記アーム装置は、前記融解炉の前記装入坩堝設置部及び前記退出坩堝設置部、前記装入坩堝収容部、前記鋳型配置部及び前記坩堝廃棄部のそれぞれにおいて前記坩堝の取り扱いに関する動作を行う。
【0009】
また、本発明の乾式試金分析のための試料融解装置は、前記アーム装置の移動範囲における前記装入坩堝設置部側の端部である第1端部側には、前記装入坩堝収容部が配置され、前記アーム装置の移動範囲における前記退出坩堝設置部側の端部である第2端部側には、前記鋳型配置部及び前記坩堝廃棄部が配置されている。
【0010】
また、本発明の乾式試金分析のための試料融解装置は、前記アーム装置の動作を制御する制御部を備え、前記制御部が、前記アーム装置を前記第1端部側に移動させて、前記装入坩堝収容部において前記坩堝を前記アーム部材によって把持し、前記装入坩堝収容部において把持した前記坩堝を前記装入坩堝設置部に設置し、前記アーム装置を前記第2端部側に移動させて、前記退出坩堝設置部において前記坩堝を前記アーム装置によって把持し、前記退出坩堝設置部において把持した前記坩堝に収容された試料を前記鋳型配置部において前記鋳型に投入し、前記鋳型配置部において前記鋳型に試料を投入した後の前記坩堝を前記坩堝廃棄部に廃棄する。
【0011】
また、本発明の乾式試金分析のための試料融解装置は、前記坩堝搬送部が、前記装入坩堝設置部に設置された前記坩堝を前記本体部内に押し込む押込装置または前記装入坩堝設置部に設置された前記坩堝を前記退出坩堝設置部側に送るローラ式コンベア装置を有している。
【0012】
また、本発明の乾式試金分析のための試料融解装置は、前記坩堝搬送部によって前記装入坩堝設置部から前記退出坩堝設置部まで搬送される前記坩堝を保持する坩堝保持部材を備え、前記坩堝保持部材が、匣鉢、セッターまたは台板である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アーム装置によって、試料が入った坩堝を融解炉に装入して融解炉から退出した坩堝を取り出す作業に加え、融解した試料を鋳型に投入する作業及び試料を鋳型に投入した後の空の坩堝を廃棄する作業を行うことが可能となるので、作業者の作業負担を軽減するとともに、作業の安全性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態を示す試料融解装置の概略平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態を示す融解炉の平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態を示す融解炉の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至
図3は、本発明の一実施形態を示すものであり、
図1は試料融解装置の概略平面図であり、
図2は融解炉の平面図であり、
図3は融解炉の側面図である。
【0016】
本発明の試料融解装置1は、例えば、鉱石中の金及び銀の定量方法としての乾式試金分析の際に用いられるものであり、鉱石に融剤及び酸化鉛を添加した混合物からなる試料を融解させるためのものである。
【0017】
本実施形態の試料融解装置1は、
図1に示すように、試料を融解させるための融解炉10と、融解炉10に装入する坩堝Cを収容するための装入坩堝収容部20と、融解炉10において融解した試料が投入される鋳型31が配置される鋳型配置部30と、鋳型配置部30において試料を投入した後の坩堝Cを廃棄するための坩堝廃棄部40と、坩堝Cを把持して取り扱うためのアーム装置50と、を備えている。
【0018】
融解炉10は、試料が入った坩堝Cを移動させながら試料を加熱する電気加熱式の連続炉である。融解炉10は、装入口11b及び退出口11cが設けられた本体部11と、本体部11の装入口11b側において本体部11に装入される坩堝Cが設置される装入坩堝設置部12と、本体部11の退出口11c側において本体部11から退出した坩堝Cが設置される退出坩堝設置部13と、本体部11の内側を通じて装入坩堝設置部12から退出坩堝設置部13まで坩堝Cを搬送する坩堝搬送部14と、を有している。
【0019】
ここで、坩堝搬送部14によって搬送される坩堝Cは、坩堝保持部材15に保持された状態で搬送される。坩堝保持部材15には、坩堝Cの底部側が嵌合可能な複数の凹部が形成され、同時に複数の坩堝Cが保持される。本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、1つの坩堝保持部材15に対して4つの坩堝Cが保持される。坩堝保持部材15としては、匣鉢、セッターまたは台板が用いられる。
【0020】
本体部11は、耐火煉瓦や耐火モルタル等の耐火物によって直方体形状に形成されている。本体部11の内部には、複数の坩堝Cを保持した坩堝保持部材15が通過可能な通路11aが水平方向に直線状に延びるように形成されている。通路11aの一端部が位置する本体部11の側壁には、坩堝Cを保持した坩堝保持部材15を、通路11aに装入させるための装入口11bが設けられている。また、通路11aの他端部が位置する本体部11の側壁には、坩堝Cを保持した坩堝保持部材15を、通路11aから退出させるための退出口11cが設けられている。
【0021】
通路11aは、
図3に示すように、装入口11b側から順に、試料が入った坩堝Cを待機させるための待機ゾーン11a1、坩堝Cに入った試料が融解する温度である融解温度まで試料を加熱するための第1昇温ゾーン11a2、第1昇温ゾーン11a2において融解温度まで加熱された試料の温度を保持するための第1温度保持ゾーン11a3、融解温度に保持された試料が完全に融解する温度である完全融解温度まで試料を加熱するための第2昇温ゾーン11a4、第2昇温ゾーン11a4において完全融解温度まで加熱された試料の温度を保持するための第2温度保持ゾーン11a5から構成されている。
【0022】
装入口11bには、装入扉11b1が設けられている。また、退出口11cには、退出扉11c1が設けられている。
【0023】
装入坩堝設置部12は、本体部11の装入口11bの外側に設けられている。装入坩堝設置部12は、通路11aの路面と略同一の高さの水平面を成し、坩堝保持部材15を載置するための載置面12aを有している。
【0024】
退出坩堝設置部13は、本体部11の退出口11cの外側に設けられている。退出坩堝設置部13は、通路11aの路面と略同一の高さの水平面を成し、坩堝保持部材15を載置するための載置面13aを有している。
【0025】
坩堝搬送部14は、装入坩堝設置部12に設置されている坩堝保持部材を本体部11内に押し込むための所謂プッシャ装置である。坩堝搬送部14は、装入坩堝設置部12に設置された坩堝保持部材15を本体部11の装入口11bから通路11aの待機ゾーン11a1に押し込むための押込装置14aと、通路11aの第2温度保持ゾーン11a5に位置する坩堝保持部材15を本体部11の退出口11cから退出坩堝設置部13まで引き出すための引出装置14bと、を有している。
【0026】
押込装置14aは、例えば、電動モータ等の駆動力によってプッシュロッドを水平方向に移動させることによって装入坩堝設置部12に設置された坩堝保持部材15を通路11aの待機ゾーン11a1に押し込む。このとき、押込装置14aによって装入坩堝設置部12から通路11aの待機ゾーン11a1に押し込まれた坩堝保持部材15は、通路11a内に位置する坩堝保持部材15を、退出口11c側に押し込む。
【0027】
引出装置14bは、例えば、電動モータ等の駆動力によって水平方向に移動するロッドの外周面に坩堝保持部材15に係合可能な爪を設け、爪を坩堝保持部材15に係合させた状態でロッドを移動させることによって、坩堝保持部材15を通路11aの第2温度保持ゾーン11a5から退出坩堝設置部13に引き出す。
【0028】
装入坩堝収容部20は、複数の坩堝Cが並べて載置されるコンテナ21と、複数のコンテナ21を支持するためのコンテナ支持台22と、を有している。
【0029】
コンテナ21は、坩堝Cの底部側が嵌合可能な複数の凹部が形成された矩形状の板状部材である。本実施形態のコンテナ21は、
図1に示すように、長手方向に凹部を5列形成するとともに、短手方向に凹部を3列形成することによって、合計15個の坩堝Cが載置されるようになっている。
【0030】
コンテナ支持台22は、上面に複数のコンテナ21を並べて支持するものである。コンテナ支持台22の上面には、載置されるコンテナ21の水平方向の位置決めを行うためのコンテナガイド22aと、上下方向の位置決めを行うための支柱22bと、が設けられている。コンテナ支持台22に対するコンテナ21の着脱は、作業者によって行われる。
【0031】
鋳型配置部30は、溶融した試料が投入される鋳型31と、鋳型31を支持するための鋳型支持台32と、を有している。
【0032】
鋳型31は、矩形状に形成され、複数の坩堝Cのそれぞれに対して1つずつ溶融した材料を投入するための複数の凹部が形成されている。本実施形態の鋳型31は、
図1に示すように、長手方向に凹部を5列形成するとともに、短手方向に凹部を3列形成することによって、合計15個の凹部が形成されている。
【0033】
鋳型支持台32は、上面に複数の鋳型31を並べて支持するものである。鋳型支持台32の上面には、載置される鋳型31を水平方向の位置決めを行うための鋳型ガイド32aが設けられている。鋳型支持台32に対する鋳型31の着脱は、作業者によって行われる。
【0034】
坩堝廃棄部40は、上面が開口された箱状の部材であり、試料を鋳型31に投入した後の坩堝Cが上方から投入されるようになっている。
【0035】
アーム装置50は、ベース部51と、ベース部51の上面において水平旋回自在に設けられた図示しない縦リンクと、縦リンクの先端に対して上下方向に回動自在に連結された図示しない横リンクと、横リンクの先端に対して回動自在に連結された図示しない把持部と、を備えている。アーム装置50は、把持部によって坩堝Cを把持するとともに、坩堝Cを把持した状態で坩堝Cの向きを変更することが可能である。また、アーム装置50は、ベース部51がアーム装置50の設置面に設けられたガイドレール52に支持されており、ガイドレール52の敷設されている範囲内において水平方向に移動自在となっている。ガイドレール52は、融解炉10に隣接する部分において、融解炉10の本体部11の通路11aの延伸方向と平行に延びるとともに、装入坩堝設置部12と退出坩堝設置部13との間の範囲に敷設されている。
【0036】
ここで、融解炉10、装入坩堝収容部20、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40は、アーム装置50の水平移動可能な範囲を囲むように配置されている。これにより、アーム装置50は、融解炉10、装入坩堝収容部20、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40のそれぞれにおいて坩堝Cの取り扱いに関する動作が可能である。
【0037】
また、アーム装置50の水平方向の移動範囲における装入坩堝設置部12側の端部である第1端部52a側には、装入坩堝収容部20が配置されている。さらに、アーム装置50の水平方向の移動範囲における退出坩堝設置部13側の端部である第2端部52b側には、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40が配置されている。これにより、アーム装置50は、最低限度の水平方向の移動で、装入坩堝設置部12、退出坩堝設置部13、装入坩堝収容部20、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40のおけるそれぞれの作業が可能である。
【0038】
さらに、試料融解装置1は、融解炉10及びアーム装置50の動作を制御するための制御部60を備えている。
【0039】
制御部60は、CPU等の演算処理部、ROM、RAM等の記憶部を有し、入力側に接続された機器からの入力信号を受信すると、入力信号に基づいて記憶部に記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態を記憶部に記憶したり、出力側に接続された機器に出力信号を送信したりする。
【0040】
制御部60には、融解炉10の本体部11及び坩堝搬送部14(押込装置14a、引出装置14b)及びアーム装置50が接続されている。
【0041】
制御部60の記憶部には、融解炉10の本体部11のヒータの出力に関する情報、装入扉11b1、退出扉11c1、坩堝搬送部14(押込装置14a、引出装置14b)の動作タイミングに関する情報、アーム装置50を動作させるために必要な融解炉10の装入坩堝設置部12及び退出坩堝設置部13、装入坩堝収容部20、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40のそれぞれにおける坩堝Cを配置する位置に関する情報等が記憶されている。
【0042】
以上のように構成された試料融解装置1において、試料を融解する作業における制御部60の動作について説明する。
【0043】
まず、制御部60は、アーム装置50を、水平方向の移動範囲における第1端部52a側に移動させ、アーム装置50の把持部によって装入坩堝収容部20のコンテナ21に収容されている試料が入った坩堝Cをコンテナ21から取り出し、装入坩堝設置部12の坩堝保持部材15の凹部に坩堝Cを設置する。ここで、制御部60は、4つの坩堝Cが坩堝保持部材15に保持されるまで、コンテナ21に収容された坩堝Cを坩堝保持部材15の凹部に設置する動作を繰り返す。
【0044】
また、制御部60は、継続的に、融解炉10の本体部11の通路11aの温度をゾーン11a1,11a2,11a3,11a4,11a5毎に制御するとともに、装入扉11b1及び退出扉11c1をそれぞれ所定時間毎に開放して閉鎖する。
【0045】
制御部60は、装入扉11b1を開放するとともに、坩堝搬送部14の押込装置14aを駆動させて坩堝Cが収容された坩堝保持部材15を本体部11の通路11a内に押し込む。また、制御部60は、退出扉11c1を開放するとともに、坩堝搬送部14の引出装置14bを駆動させて坩堝C収容された坩堝保持部材15を本体部11の通路11a内から退出坩堝設置部13まで引き出す。
【0046】
次に、制御部60は、アーム装置50を、水平方向の移動範囲における第2端部52b側に移動させ、アーム装置50の把持部によって退出坩堝設置部13に位置する坩堝保持部材15に保持されている試料が入った坩堝Cを坩堝保持部材15から取り出し、坩堝Cに入った試料を鋳型配置部30の鋳型31に対して投入する。制御部60は、鋳型配置部30の鋳型31に試料を投入した後、アーム装置50の把持部が把持している空の坩堝Cを坩堝廃棄部40に廃棄する。ここで、制御部60は、坩堝保持部材15に収容されている4つの坩堝Cの全てに対して、アーム装置50によって取り出して試料を鋳型に投入し、坩堝Cを坩堝廃棄部40に廃棄する動作を繰り返す。
【0047】
次に、制御部60は、アーム装置50によって退出坩堝設置部13に位置する空の坩堝保持部材15を退出坩堝設置部13から取り出して、アーム装置50を、水平方向の移動範囲における第1端部52a側に移動させ、装入坩堝設置部12に空の坩堝保持部材15を設置する。
【0048】
制御部60は、空の坩堝保持部材15を装入坩堝設置部12に設置した後、再び装入坩堝収容部20に収容されている坩堝Cを取り出して装入坩堝設置部12の坩堝保持部材15に設置し、試料を融解する作業を継続的に行う。
【0049】
このように、本実施形態の試料融解装置1によれば、融解炉10、装入坩堝収容部20、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40は、アーム装置50の移動する範囲を囲むように配置され、アーム装置50は、融解炉10の装入坩堝設置部12及び退出坩堝設置部13、装入坩堝収容部20、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40のそれぞれにおいて坩堝Cの取り扱いに関する動作を行う。
【0050】
これにより、アーム装置50によって、試料が入った坩堝Cを融解炉10の本体部11に装入して本体部11から退出した坩堝Cを取り出す作業に加え、融解した試料を鋳型に投入する作業及び試料を鋳型31に投入した後の空の坩堝Cを廃棄する作業を行うことが可能となるので、作業者の作業負担を軽減するとともに、作業の安全性を向上することが可能となる。
【0051】
また、アーム装置50の移動範囲における第1端部52a側には、装入坩堝収容部20が配置され、アーム装置50の移動範囲における第2端部52b側には、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40が配置されている。
【0052】
これにより、アーム装置50は、水平方向の移動範囲における第1端部52a側において移動することなく、融解炉10の装入坩堝設置部12及び装入坩堝収容部20のそれぞれにおいて作業を行うことができる。また、アーム装置50は、水平方向の移動範囲における第2端部52b側において移動することなく、融解炉10の退出坩堝設置部13、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40のそれぞれにおいて作業を行うことができる。このため、アーム装置50は、最低限度の水平方向の移動で各作業を行うことが可能となり、作業効率を向上させることが可能となる。
【0053】
また、制御部60は、アーム装置50を第1端部52a側に移動させて、装入坩堝収容部20において坩堝Cをアーム装置50によって把持し、装入坩堝収容部20において把持した坩堝Cを装入坩堝設置部12に設置し、アーム装置50を第2端部52b側に移動させて、退出坩堝設置部13において坩堝Cをアーム装置50によって把持し、退出坩堝設置部13において把持した坩堝Cに収容された試料を鋳型配置部30において鋳型31に投入し、鋳型配置部30において鋳型31に試料を投入した後の坩堝Cを坩堝廃棄部40に廃棄する。
【0054】
これにより、アーム装置50によって、融解炉10の装入坩堝設置部12、退出坩堝設置部13、装入坩堝収容部20、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40のそれぞれにおける作業を自動で実行することが可能となるので、作業者が直接的に行う作業の低減を図ることが可能となり、より作業者の作業負担を軽減するとともに、作業の安全性の向上を図ることが可能となる。
【0055】
また、坩堝搬送部14は、装入坩堝設置部12に設置された坩堝Cを本体部11内に押し込む押込装置14aを有している。
【0056】
これにより、本体部11外における簡単な構成によって坩堝Cを本体部11内に押し込むことができるので、安定的に坩堝Cを本体部11の通路11aを移動させることが可能となる。
【0057】
また、坩堝搬送部14によって装入坩堝設置部12から退出坩堝設置部13まで搬送される坩堝Cを保持する坩堝保持部材15を備え、坩堝保持部材15が、匣鉢、セッターまたは台板である。
【0058】
これにより、坩堝搬送部14によって坩堝保持部材15を搬送することによって、坩堝Cを搬送することができるので、融解炉10において坩堝Cを安定的に搬送することが可能となる。また、坩堝保持部材15として匣鉢、セッターまたは台板を用いることによって、アーム装置50の把持部によって容易に坩堝保持部材15を把持することができるので、アーム装置50の簡単な動作によって退出坩堝設置部13に位置する空の坩堝保持部材15を装入坩堝設置部12に移動させることが可能となる。
【0059】
尚、前記実施形態では、坩堝搬送部14として装入坩堝設置部12に設置された坩堝Cを本体部11内に押し込む押込装置14aを示したが、これに限られるものではない。融解炉の本体部の通路に沿って坩堝Cを移動させることができるものであれば、例えば、融解炉の通路の全体にわたってローラが設けられたローラ式コンベア装置を用いてもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、制御部60の記憶部に記憶された、融解炉10の装入坩堝設置部12及び退出坩堝設置部13、装入坩堝収容部20、鋳型配置部30及び坩堝廃棄部40のそれぞれにおける坩堝Cを配置する位置に関する情報等に基づいてアーム装置50の動作を制御するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。アーム装置50によって坩堝Cや坩堝保持部材15を把持するとともに、目的の位置に移動させるものであれば、装入坩堝設置部12、退出坩堝設置部13及び装入坩堝収容部20のコンテナ21における坩堝Cの有無を検出するとともに、鋳型配置部30の鋳型31における試料の有無を検出し、検出結果に基づいてアーム装置50を移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 試料融解装置
10 融解炉
11 本体部
11b 装入口
11c 退出口
12 装入坩堝設置部
13 退出坩堝設置部
14 坩堝搬送部
14a 押込装置
14b 引出装置
15 坩堝保持部材
20 装入坩堝収容部
30 鋳型配置部
40 坩堝廃棄部
50 アーム装置
60 制御部
C 坩堝