(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B41J2/01 103
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020159262
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英明
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-1472(JP,A)
【文献】特開2008-216737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0132871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 1/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に印刷する印刷画像と、前記印刷画像の最小輝度よりも低い輝度の表裏見当用の位置補正マークとを生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した前記印刷画像および前記位置補正マークを用紙の第1面に印刷する画像印刷部と、
前記画像印刷部が印刷した前記第1面上の前記印刷画像と前記位置補正マークとを読み取り、読み取り画像データを生成する読み取り部と、
前記印刷画像の最小輝度値と前記位置補正マークの輝度値との間に設定される閾値を使用して、前記読み取り画像データを2値化し、2値化した画像データから輝度差を利用して前記第1面上の前記位置補正マークを検出するマーク検出部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記読み取り部は、第1方向に搬送される用紙において、前記第1方向の直交にする第2方向に並ぶ画素の行毎に行読み取り画像データを順次生成し、
前記マーク検出部は、前記読み取り部が前記行読み取り画像データを生成する毎に2値化を行い、前記位置補正マークの検出処理を行うこと
を特徴とする
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記マーク検出部は、
前記読み取り画像データのうち、用紙の搬送方向に並ぶ複数の行から前記位置補正マークを含む行を検出する第1処理と、
前記読み取り画像データのうち、前記搬送方向の直交方向に並ぶ複数の列から前記位置補正マークを含む列を検出する第2処理と、を行い、
前記第1処理により検出された行と前記第2処理により検出した列とに基づいて、前記位置補正マークを検出すること
を特徴とする
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記読み取り部に用紙を搬送する搬送部を有し、
前記マーク検出部は、前記第1処理および前記第2処理により検出した行と列とに基づいて検出した前記位置補正マークの搬送方向での用紙上の位置を、前記読み取り部による行の読み取り周期と前記搬送部による用紙の搬送速度とを使用して算出すること
を特徴とする
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記マーク検出部は、前記印刷画像の用紙の前記第1面への割り付けを示す割り付け情報に基づいて、前記位置補正マークの前記第1面上での位置を推定し、推定した位置を含む領域から前記位置補正マークを検出すること
を特徴とする
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記位置補正マークは、点対称形状を有すること
を特徴とする請求項1ないし
請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像生成部は、前記第1面上に印刷する複数の頁の各々に対応する画像と前記位置補正マークとを生成し、
前記マーク検出部は、前記第1面上に印刷された複数の頁にそれぞれ対応する前記位置補正マークを検出すること
を特徴とする請求項1ないし
請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像生成部は、前記マーク検出部により検出された前記第1面上の複数の頁毎の前記位置補正マークに基づいて、前記第1面の裏面である第2面に印刷する複数の頁のうちの任意の頁の画像に対する位置の調整、拡大率の変更、回転または変形の少なくともいずれかを実施すること
を特徴とする請求項1ないし
請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
用紙上に印刷する印刷画像と、前記印刷画像の最小輝度よりも低い輝度の表裏見当用の位置補正マークとを生成し、
生成した前記印刷画像および前記位置補正マークを用紙の第1面に印刷し、
印刷した前記第1面上の前記印刷画像と前記位置補正マークとを読み取り、読み取り画像データを生成し、
前記印刷画像の最小輝度値と前記位置補正マークの輝度値との間に設定される閾値を使用して、前記読み取り画像データを2値化し、2値化した画像データから輝度差を利用して前記第1面上の前記位置補正マークを検出すること
を特徴とする画像形成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、画像が印刷された用紙の裁断時の裁断位置の目安となるトンボマーク等の位置検出マークを、用紙の端部または四隅の印刷領域外に印刷する手法が知られている。両面印刷が可能な画像形成装置において、印刷対象の画像とともに用紙の表面に印刷された表裏見当用の位置補正マークを検出し、用紙の表面に印刷された画像の位置に合わせて用紙の裏面に画像を印刷する手法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、印刷対象の画像である印刷画像において位置補正マークに近い周縁部に、位置補正マークの輝度と同程度の輝度の画素があった場合、位置補正マークとの区別ができず、位置補正マークを検出できないおそれがある。特に、1枚の用紙に複数頁が割り付けられる多面割り付けの場合、用紙の中央部に位置する位置補正マークは、隣接する印刷画像に挟まれるため、検出されにくい。
【0004】
開示の技術は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、印刷対象の画像とともに印刷される複数の位置補正マークの各々を確実に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態の画像形成装置は、用紙上に印刷する印刷画像と、前記印刷画像の最小輝度よりも低い輝度の表裏見当用の位置補正マークとを生成する画像生成部と、前記画像生成部が生成した前記印刷画像および前記位置補正マークを用紙の第1面に印刷する画像印刷部と、前記画像印刷部が印刷した前記第1面上の前記印刷画像と前記位置補正マークとを読み取り、読み取り画像データを生成する読み取り部と、前記印刷画像の最小輝度値と前記位置補正マークの輝度値との間に設定される閾値を使用して、前記読み取り画像データを2値化し、2値化した画像データから輝度差を利用して前記第1面上の前記位置補正マークを検出するマーク検出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
印刷対象の画像とともに印刷される複数の位置補正マークの各々を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態における画像形成装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の画像形成装置が搭載される画像形成装置システムの一例を示すブロック図である。
【
図3】
図1の読み取り・搬送制御機構によりトンボマークの位置を検出する動作の概要を示す説明図である。
【
図4】
図1の画像形成装置により用紙の表面に印刷した画像とトンボマークの例を示す説明図である。
【
図5】2値化用の閾値を用いて、
図4で取得した輝度分布データからトンボマークのみを抽出する例を示す説明図である。
【
図6】用紙に複数の画像が割り付けられる場合に、2値化用の閾値を用いて輝度分布データからトンボマークを検出する例を示す説明図である。
【
図7】最小輝度値より低い輝度のトンボマークとともに多面割り付けされた複数の頁が印刷された用紙の輝度分布データの例を示す説明図である。
【
図8】最小輝度値より高い輝度のトンボマークとともに多面割り付けされた複数の頁が印刷された用紙の輝度分布データの例を示す説明図(比較例)図である。
【
図9】第2の実施形態における画像形成装置においてトンボマークを検出する例を示す説明図である。
【
図10】第3の実施形態における画像形成装置においてトンボマークを検出する例を示す説明図である。
【
図11】
図10に示す手法を用いて、トンボマークの主走査方向での中心位置を検出する例を示すフロー図である。
【
図12】
図10に示す手法を用いて、トンボマークの副走査方向での中心位置を検出する例を示すフロー図である。
【
図13】第4の実施形態における画像形成装置においてトンボマークを検出する例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施の形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。以下では、信号を示す符号は、信号線を示す符号としても使用される。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における画像形成装置の一例を示すブロック図である。
図1に示す画像形成装置100は、読み取り・搬送制御部10およびセンサ・メカトロ部20を含む読み取り・搬送制御機構30、画像コントローラ40、画像印刷部50、ユーザ操作部60および表示部70を有する。画像コントローラ40は、画像生成部42を有する。画像印刷部50は、ヘッド制御部52を有する。
【0010】
特に限定されないが、例えば、画像形成装置100は、インクジェット方式のプリンタである。なお、画像形成装置100は、コピー機能、ファクシミリ機能、プリント機能またはスキャナ機能等を有するMFP(MultiFunction Printer)でもよい。あるいは、画像形成装置100は、両面印刷機能を有する各種プリンタでもよい。
【0011】
読み取り・搬送制御機構30は、表面(第1面)に印刷対象の印刷画像および表裏見当調整用のトンボマークが印刷された用紙を画像形成装置100内で搬送し、用紙上のトンボマークの位置を検出する機能を有する。トンボマークは、用紙の裏面(第2面)に印刷する任意の頁の画像を、用紙の表面に印刷された画像に合わせて補正するための位置補正マークの一例である。トンボマークを用いることで、用紙の裏面に印刷する画像の位置の調整、拡大率の変更、回転または変形の少なくともいずれかを実施することができる。拡大率の変更により、画像は拡大または縮小される。
【0012】
読み取り・搬送制御部10は、CPU(Central Processing Unit)12、記憶部14、制御インタフェース(I/F)16および通信インタフェース(I/F)18を有する。センサ・メカトロ部20は、用紙タイミングセンサ22、搬送ローラエンコーダ24、搬送モータ26およびイメージセンサ28を有する。イメージセンサ28は、印刷画像と位置補正マークとを読み取り、読み取り画像データを生成する読み取り部の一例である。
【0013】
例えば、CPU12は、画像形成装置100の制御プログラムを実行することで、トンボマークの位置を検出するために、センサ・メカトロ部20を制御する。CPU12は、ユーザ操作部60を介して画像コントローラ40が受ける面付け情報を取得してもよい。面付け情報は、1枚の用紙に割り付ける頁の数と頁の配置である。また、後述するように、CPU12は、面付け情報を取得することなく、用紙上のトンボの位置情報を算出してもよい。
【0014】
記憶部14は、CPU12で使用するワークデータ等を保持する。また、記憶部14は、CPU12が制御I/F16を介してセンサ・メカトロ部20から得た画像データを保持する。記憶部14は、画像コントローラ40が受ける面付け情報を保持してもよい。さらに、記憶部14は、CPU12が通信I/F18を介してユーザ操作部60から得た設定情報を保持してもよい。
【0015】
例えば、記憶部14は、CPU12が実行する制御プログラムを記憶してもよい。なお、CPU12が実行する制御プログラムは、CPU12に内蔵ROM(Read Only Memory)に格納されてもよい。記憶部14は、ROMおよびRAM(Random Access Memory)を含んでもよく、フラッシュメモリを含んでもよい。
【0016】
制御I/F16は、CPU12からの制御指示をセンサ・メカトロ部20に出力し、センサ・メカトロ部20から受信した画像情報等をCPU12に出力する。CPU12からの制御指示は、搬送モータ26の動作指示およびイメージセンサ28の動作指示を含む。センサ・メカトロ部20からの応答は、イメージセンサ28が読み取った用紙の表面の画像データを含む。用紙タイミングセンサ22、搬送ローラエンコーダ24、搬送モータ26およびイメージセンサ28の機能等は、
図3で説明する。
【0017】
通信I/F18は、CPU12と画像生成部42との間の通信と、CPU12とユーザ操作部60との間の通信とを制御する。例えば、通信I/F18は、イメージセンサ28から受信する画像データに基づいてCPU12が検出するトンボマークの位置を、画像コントローラ40内の画像生成部42へ転送する。また、通信I/F18は、ユーザ操作部60から受信したセンサ・メカトロ部20による画像の読み取り機能の設定情報をCPU12に出力する。
【0018】
画像生成部42は、用紙の表面に印刷する印刷画像と、印刷画像の最小輝度よりも低い輝度の表裏見当用のトンボマークとを含む画像データを生成する。また、画像生成部42は、用紙の裏面に印刷する印刷画像を含む画像データを生成する。画像印刷部50は、画像生成部42により生成された画像データを受信し、ヘッド制御部52を制御して、用紙の表面または裏面に画像を印刷する。
【0019】
画像生成部42は、CPU12が検出したトンボマークの位置に基づいて、用紙の裏面に印刷する画像の位置の調整、拡大率の変更、回転または変形の少なくともいずれかを実施し、用紙の裏面に印刷する画像データを生成する。ここで、用紙の表面および裏面に複数の頁が割り付けられ、頁毎に印刷画像が印刷される場合、画像生成部42は、各頁に対応するトンボマークの検出位置に基づいて、用紙の裏面の各頁の印刷画像の変形等の調整を実施する。これにより、用紙の表面に印刷された印刷画像に合わせて用紙の裏面に印刷画像を印刷することができる。
【0020】
ユーザ操作部60は、例えば、ユーザによる操作を受け付けるタッチパネル等の入力装置を含む。例えば、ユーザ操作部60は、1枚の用紙に割り付ける頁の数と頁の配置を含む面付け情報を受け付け、トンボマークの検出機能を有効または無効にする設定情報を受け付ける。さらに、ユーザ操作部60は、画像形成装置100を動作させるための印刷開始、印刷枚数、拡大率・縮小率、カラー・モノクロ等の各種指示を受け付ける。
【0021】
表示部70は、ユーザによるユーザ操作部60の操作に基づいて、操作内容等を表示する。なお、ユーザ操作部60は、表示部70の表示画面上に、表示部70と一体化して設けられてもよい。
【0022】
図2は、
図1の画像形成装置100が搭載される画像形成装置システム200の一例を示すブロック図である。画像形成装置システム200は、給紙ユニット201、先塗ユニット202、本体ユニット203、乾燥ユニット204a、204b、冷却矯正ユニット205、反転ユニット206および排紙ユニット207を有する。
【0023】
給紙ユニット201は、印刷媒体である用紙を1枚ずつ先塗ユニット202へ搬送する。先塗ユニット202は、給紙ユニット201より給紙された用紙の両面または片面に、インクを用紙に定着させるための先塗液を塗布する。先塗ユニット202は、先塗液を塗布した用紙を本体ユニット203に搬送する。先塗ユニット202により先塗液を用紙に予め塗布しておくことにより、インクが定着しにくい用紙でもインクを定着させやすくすることができる。なお、先塗ユニット202は、先塗液を塗布した用紙をヒータによって乾燥させてもよい。
【0024】
本体ユニット203は、例えば、インクジェット方式により用紙上に画像を印刷し、画像を印刷した用紙を乾燥ユニット204aに搬送する。本体ユニット203は、
図1に示した読み取り・搬送制御機構30を有する。読み取り・搬送制御機構30は、用紙の表面のみに画像が印刷された用紙が搬送される両面搬送パスPS上に設けられる。読み取り・搬送制御機構30は、両面印刷モード時に、用紙の表面に印刷された画像の位置を、トンボマークを検出することで判定する。そして、読み取り・搬送制御機構30は、判定結果に基づいて、用紙の表面に印刷された画像に合わせて用紙の裏面に画像を印刷するための画像補正情報を画像生成部42(
図1)に出力する。
【0025】
乾燥ユニット204a、204bは、本体ユニット203で印刷した用紙上のインクを乾燥させ、インクを用紙に定着させる。冷却矯正ユニット205は、乾燥により高温になった用紙を冷却し、冷却した用紙の乾燥ジワを矯正し、反転ユニット206へ搬送する。
【0026】
反転ユニット206は、用紙の片面印刷時に印刷された用紙が搬送された場合、または、用紙の両面印刷時に両面が印刷された用紙が搬送された場合、搬送された用紙を排紙ユニット207に搬送する。反転ユニット206は、用紙の両面印刷時に片面が印刷された用紙が搬送された場合、搬送された用紙をスイッチバック機構により本体ユニット203に向けて搬送する。
【0027】
スイッチバック機構とは、正転する反転ローラにより用紙を退避部206aに退避した後、逆転する反転ローラにより本体ユニット203に向けて用紙を送り出すことで、片面が印刷された用紙の表裏を逆にして本体ユニット203に搬送する機構である。排紙ユニット207は、反転ユニット206から搬送されてきた印刷が完了した用紙をスタック部に排紙する。
【0028】
図3は、
図1の読み取り・搬送制御機構30によりトンボマークの位置を検出する動作の概要を示す説明図である。用紙タイミングセンサ22、搬送ローラエンコーダ24、搬送モータ26およびイメージセンサ28は、
図2の本体ユニット203内に設置される。
【0029】
用紙タイミングセンサ22は、搬送路(
図2の両面搬送パスPS)において用紙の搬送方向の上流側(
図2の乾燥ユニット204a側)に設置される。イメージセンサ28は、搬送路の搬送方向の下流側に設置される。搬送モータ26、搬送ローラ27および搬送ローラエンコーダ24は、用紙タイミングセンサ22とイメージセンサ28との間に設置される。搬送モータ26および搬送ローラ27は、イメージセンサ28に用紙を搬送する搬送部の一例である。搬送方向(
図3の上下方向)は、第1方向の一例であり、イメージセンサ28の延在方向(
図3の左右方向)は、第1方向に直交する第2方向の一例である。
【0030】
用紙タイミングセンサ22は、イメージセンサ28での読み取り対象の用紙が通過したことを検出する。搬送モータ26は、搬送ローラ27の一端に固定され、用紙を搬送方向に移動させるために、搬送ローラ27を回転させる。搬送ローラ27は、搬送路上の用紙を搬送方向に送る弾性体の送り部を有する。搬送ローラエンコーダ24は、搬送ローラ27の他端に配置され、搬送ローラ27の回転量を検出する。
【0031】
イメージセンサ28は、接触式であり、CPU12からの指示に基づいて、搬送される用紙の表面に接触した状態で用紙の表面に印刷された画像を読み取り、読み取り画像データを生成する。この際、イメージセンサ28は、用紙の表面に印刷された印刷画像とともに、印刷画像の周囲に印刷されたトンボマークTMを読み取る。特に限定されないが、例えば、トンボマークTMは、鉤型(L字状)である。イメージセンサ28は、生成した読み取り画像データ(トンボマークTMを含む)をCPU12に出力する。なお、接触式のイメージセンサ28の代わりに縮小光学系のイメージセンサが使用されてもよい。
【0032】
用紙の表面の印刷画像およびトンボマークTMを読み取る場合、CPU12は、まず、用紙タイミングセンサ22による用紙の通過が検出されたことに基づいて、イメージセンサ28による画像(印刷画像とトンボマークTM)の読み取り開始タイミングを制御する。イメージセンサ28は、CPU12からの指示に基づいて、搬送路上に搬送される用紙の表面に印刷された画像の読み取り動作を実施する。
【0033】
CPU12は、イメージセンサ28から受信した画像データから、用紙内に印刷されたトンボマークTMを検出する。そして、CPU12は、イメージセンサ28による用紙の読み取り位置に基づいてトンボマークTMの各々位置を算出する。CPU12は、イメージセンサ28が生成した画像データから輝度差を利用して用紙の表面上のトンボマークTMを検出するマーク検出部の一例である。
【0034】
例えば、CPU12は、用紙の読み取り位置を求める場合、用紙タイミングセンサ22による用紙の検出時間と、搬送ローラエンコーダ24が検出する回転距離と、イメージセンサ28のライン走査周期および読み取りライン数とにより用紙の搬送距離を算出する。そして、CPU12は、算出した用紙の距離から用紙の読み取り位置を換算する。用紙を介して搬送ローラ27と対向する位置に従動ローラがある場合、搬送ローラエンコーダ24は、従動ローラに設けられてもよい。
【0035】
ここで、イメージセンサ28は、搬送方向に搬送される用紙において、搬送方向の直交方向に並ぶ画素のライン毎にライン画像データを順次生成する。ラインは行の一例であり、ライン画像データは、行読み取り画像データの一例である。CPU12は、イメージセンサ28がライン画像データを生成する毎にライン画像データの2値化を行い、トンボマークTMの検出処理を行ってもよい。画像データの2値化とトンボマークTMの検出処理とを、イメージセンサ28による画像の読み取りと並列に行うことで、トンボマークTMの検出処理を高速に行うことができる。また、画像データを保持するために記憶部14等に割り当てるメモリ容量を最小限にすることができる。
【0036】
なお、用紙の搬送手法として、搬送ローラ27による搬送に代えて、用紙の先端を咥え爪によりクリップして搬送する爪搬送手法が使用されてもよい。また、用紙の搬送手法として、テンションが掛けられたベルト上に用紙を静置させた状態でベルトを移動するベルト搬送手法が使用されてもよい。
【0037】
ベルト搬送手法では、ベルト上に静置された用紙をベルトの内部から吸引することで用紙をベルト上に固定してもよい。あるいは、ベルト上に静置された用紙にベルトの上部からエアーを吹付けることで用紙をベルト上に固定してもよい。さらに、回転するドラム上に上記のベルト搬送手法と同様の用紙の固定機構を用いて用紙をドラム上に固定し、ドラムの回転動作により用紙の搬送を行うドラム搬送手法が使用されてもよい。
【0038】
図4は、
図1の画像形成装置100により用紙の表面に印刷した画像とトンボマークTMの例を示す説明図である。例えば、トンボマークTMは、用紙範囲で示す用紙において、印刷範囲で示す印刷画像の周囲の四隅に印刷される。
図4では、1つの画像が用紙に印される例を示すが、多面割り付けにより1枚の用紙に複数頁の画像が印刷される場合にも、トンボマークTMは、各頁の印刷画像の周囲に印刷される。
【0039】
トンボマークTMの輝度は、印刷画像の輝度範囲のうちの最小輝度より低く設定される。すなわち、トンボマークTMは、印刷画像の最も濃い濃度より高い濃度で用紙に印刷される。ここで、印刷画像の最大輝度(例えば白)と最小輝度(例えば黒)とによる印字濃度の範囲は、印刷時のデンシティ補正により調整される。すなわち、画像形成装置100は、印刷画像用を印刷するときに、画像印刷部50のヘッドノズルのばらつきによる濃度むら、またはノズル抜けによる濃度低下を加味して画像データをデンシティ補正する。
【0040】
図1に示した読み取り・搬送制御機構30は、用紙に印刷された印刷画像とトンボマークTMとをイメージセンサ28により読み取り、トンボマークTMを検出するための輝度分布を取得する。例えば、イメージセンサ28により生成された画像データは、シェーディング補正され、用紙の地の輝度と用紙外の背景の輝度の範囲がフルスケールになるように調整される。そして、読み取り・搬送制御機構30は、イメージセンサ28の延在方向である主走査方向の輝度分布と、用紙の搬送方向である副走査方向の輝度分布を取得する。
【0041】
トンボマークTMの輝度を印刷画像の最小輝度より低くすることで、印刷画像の輝度が全体的に低い場合にも、読み取り・搬送制御機構30は、トンボマークTMを確実に検出することができる。なお、印刷画像の最小輝度値と印刷するトンボマークTMの輝度値との間に2値化用の閾値を設定することで、輝度分布データからトンボマークTMのみを抽出することができる。
【0042】
図5は、2値化用の閾値を用いて、
図4で取得した輝度分布データからトンボマークTMのみを抽出する例を示す説明図である。2値化用の閾値は、印刷画像の最小輝度より低いため、印刷画像の輝度は、必ず白を示す輝度1になる。また、2値化用の閾値は、トンボマークTMの輝度より高いため、トンボマークTMの輝度は、必ず黒を示す輝度0になる。これにより、閾値を用いて画像データを2値化するのみで、トンボマークTMのみを抽出することができる。
【0043】
図6は、用紙に複数の画像が割り付けられる場合に、2値化用の閾値を用いて輝度分布データからトンボマークTMを検出する例を示す説明図である。
図6では、1枚の用紙の縦横にそれぞれ3頁ずつ、合計9頁が割り付けられる例を示している。トンボマークTMは、各頁の四隅にそれぞれ印刷される。
【0044】
図6の各頁において、それぞれの印刷画像よりも暗い色でトンボマークTMを印刷することで、印刷画像とトンボマークTMとを明確に区別することができる。印刷画像の領域には、予め設定された最小輝度値以下の輝度情報は含まれていない。このため、最小輝度値より低い輝度値を閾値として用紙全体を読み取った画像データを2値化処理することで、用紙内のトンボマークTMのみを含む2値画像データを得ることができる。
【0045】
このように、いわゆる多面割り付けされ、最小輝度値より低い輝度のトンボマークTMが印刷された用紙から読み取った読み取り画像データを2値化処理することで、用紙の中央部に存在するトンボマークTMを印刷画像と容易に区別して検出することができる。この結果、各割り付け頁のトンボマークTMの位置を容易に算出することができる。
【0046】
図7は、最小輝度値より低い輝度のトンボマークTMとともに多面割り付けされた複数の頁が印刷された用紙の輝度分布データの例を示す説明図である。
図7は、用紙の主走査方向または副走査方向のいずれかにおいて、トンボマークTMを含む領域を読み取った画像データの輝度分布データを示す。
【0047】
図7に示す例では、特に、印刷画像の印刷範囲1、2の間にあるトンボマークTMの輝度および印刷画像の印刷範囲2、3の間にあるトンボマークTMの輝度と、印刷画像の最小輝度との差を大きくすることができる。この結果、用紙の中央部分に位置する印刷画像の周囲に設けられるトンボマークTMを検出しやすくすることができる。
【0048】
図8は、最小輝度値より高い輝度のトンボマークTMとともに多面割り付けされた複数の頁が印刷された用紙の輝度分布データの例を示す説明図(比較例)である。
図8に示す例では、特に、印刷画像の印刷範囲1、2の間にあるトンボマークTMの輝度および印刷画像の印刷範囲2、3の間にあるトンボマークTMの輝度と、印刷画像の最小輝度より低くすることができない場合がある。この場合、トンボマークTMの検出の精度が低下する。
【0049】
トンボマークTMの検出の精度が低下する場合、用紙への頁の割り付け情報に基づいて、トンボマークTMがあると想定される領域以外の読み取りをマスクして読み取り処理を実施することが考えられる。しかしながら、
図8に示すように、印刷画像にトンボマークTMとの輝度と同程度の輝度の画像が含まれる場合、マスクにより読み取り範囲を限定する場合にも、トンボマークTMの検出は困難になる。
【0050】
さらに、マスクする領域を広げ、読み取り範囲を狭めることで、印刷画像をなるべく含まない領域を読み取ることが考えられる。しかしながら、この場合、読み取り時の用紙のスキューまたは用紙の位置ずれなどの影響によって、トンボマークTMが含まれない領域を読み取ってしまう可能性がある。すなわち、1枚の用紙に複数の頁が割り付けられ、最小輝度値より高い輝度のトンボマークTMが印刷画像とともに印刷される場合、読み取り範囲をマスクして読み取り処理を実施する手法では、トンボマークTMを精度よく検出することは困難である。
【0051】
以上、この実施形態では、印刷画像の最小輝度値より低い輝度の表裏見当用のトンボマークTMを用紙の表面に印刷することで、トンボマークTMを容易に検出することができ、トンボマークTMの位置を容易に算出することができる。すなわち、印刷対象の画像とともに印刷される複数のトンボマークTMの各々を確実に検出することができる。この結果、用紙の表面に印刷された画像に合わせて用紙の裏面に印刷する画像の位置の調整または変形等を確実に実施することができる。
【0052】
印刷画像の最小輝度値とトンボマークTMの輝度値との間に設定される閾値を使用して画像データを2値化することで、2値化した画像データから(輝度分布データ)からトンボマークTMのみを抽出することができる。
【0053】
画像データの2値化とトンボマークTMの検出処理とを、イメージセンサ28による画像の読み取りと並列に行うことで、トンボマークTMの検出処理を高速に行うことができる。また、画像データを保持するために記憶部14等に割り当てるメモリ容量を最小限にすることができる。
【0054】
印刷画像の最小輝度値より低い輝度のトンボマークTMを印刷することで、1枚の用紙に複数頁を割り付ける場合にも、用紙の中央部に存在するトンボマークTMを印刷画像と容易に区別して検出することができる。この結果、各割り付け頁のトンボマークTMの位置を容易に算出することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態における画像形成装置においてトンボマークTMを検出する例を示す説明図である。上述した実施形態と同様の要素については、詳細な説明は省略する。
図9に示すトンボマークTMの検出手法を実施する画像形成装置は、トンボマークTMの検出手法の一部が相違することを除き、
図1の画像形成装置100と同様の構成および機能を有する。例えば、この実施形態の画像形成装置は、
図3に示した読み取り・搬送制御機構30を有する。また、この実施形態の画像形成装置は、
図2に示した画像形成装置システム200に含まれる。
【0056】
この実施形態では、CPU12(
図1)は、印刷画像を含む複数頁の用紙の割り付けを示す割り付け情報に基づいて、読み取り領域を設定する。例えば、割り付け情報は、ユーザ操作部60を介してユーザにより予め設定される。CPU12は、頁の割り付け情報を記憶部14等に一時的に記憶してもよい。CPU12は、割り付け情報に基づいて、用紙の表面に印刷されるトンボマークTMの位置を推測し、推測した位置を含む複数の読み取り領域を設定する。
【0057】
図9に示す例では、
図6と同様に、1枚の用紙に縦横にそれぞれ3頁ずつ、合計9頁が割り付けられる。この場合、CPU12は、イメージセンサ28の延在方向に沿って並ぶトンボマークTMを包含するように、6つの読み取り領域(1)~(6)を設定する。
【0058】
CPU12は、用紙の搬送タイミングを、用紙タイミングセンサ22からのセンサ情報と用紙を搬送する搬送速度とに基づいて計算する。そして、CPU12は、設定した読み取り領域がイメージセンサ28の直下を通過するタイミングに合わせて、イメージセンサ28に読み取り動作を指示する。
【0059】
例えば、CPU12は、複数の読み取り領域から取得した画像データを2値化することで、
図9に示すようにトンボマークTMのみを検出し、トンボマークTMの位置を算出する。この際、CPU12は、各読み取り領域(1)~(6)の副走査方向(=搬送方向)の位置情報を、読み取りタイミングに基づくライン数と搬送ローラエンコーダ24のカウンタ値とから換算することで取得する。そして、CPU12は、用紙内の全てのトンボマークTMの位置を算出する。
【0060】
このように、トンボマークTMを含む読み取り領域(1)~(6)の画像をイメージセンサ28により読み取ることで、用紙の表面に印刷されたトンボマークTMの位置を検出することができる。したがって、搬送方向に搬送される用紙の全ての範囲を読み取る場合に比べて、トンボマークTMの検出処理を高速に行うことができる。
【0061】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、印刷画像の最小輝度値より低い輝度の表裏見当用のトンボマークTMを用紙の表面に印刷することで、トンボマークTMを容易に検出することができ、トンボマークTMの位置を容易に算出することができる。また、最小輝度値より低い輝度のトンボマークTMが印刷された用紙から読み取った読み取り画像データを2値化処理することで、用紙の中央部に存在するトンボマークTMを印刷画像と容易に区別して検出することができる。
【0062】
さらに、この実施形態では、イメージセンサ28による画像の読み取り領域を、トンボマークTMが存在する読み取り領域に限定することで、搬送方向に搬送される用紙の全ての範囲を読み取る場合に比べて、トンボマークTMの検出処理を高速に行うことができる。
【0063】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態における画像形成装置においてトンボマークTMを検出する例を示す説明図である。上述した実施形態と同様の要素については、詳細な説明は省略する。
図10に示すトンボマークTMの検出手法を実施する画像形成装置は、トンボマークTMの検出手法の一部が相違することを除き、
図1の画像形成装置100と同様の構成および機能を有する。例えば、この実施形態の画像形成装置は、
図3に示した読み取り・搬送制御機構30を有する。また、この実施形態の画像形成装置は、
図2に示した画像形成装置システム200に含まれる。
【0064】
この実施形態では、上述した実施形態で使用したL字状のトンボマークTMではなく、十字状のトンボマークTMが使用される。なお、トンボマークTMの形状は、十字状に限定されず、点対称形状であればよい。トンボマークTMを点対称形状にすることで、例えば、用紙が搬送方向に完全で平行でなく、トンボマークTMが傾いた場合にも、トンボマークTMの中心位置を確実に検出することができる。
【0065】
図10では、イメージセンサ28が読み取り動作を開始した最初の走査ラインLを"1"とし、読み取り動作を終了した走査ラインLを"Lmax"とする。以下では、走査ラインLをラインLとも称する。また、イメージセンサ28の画素数がkmax個であり、
図10の一番左側の画素が1画素目であるとする。
図10では、説明を分かりやすくするために、1つのトンボマークTMをイメージセンサ28で読み取る例を示す。なお、
図10に示す画像データは、用紙の搬送方向の先端がラインL=1に対応し、用紙の搬送方向の末端がラインL=Lmaxに対応する。
【0066】
図10においても、トンボマークTMの輝度は、印刷画像の輝度範囲のうちの最小輝度より低く設定される。そして、CPU12は、
図5と同様に、2値化用の閾値を用いてトンボマークTMを検出する。
図10に示す画像データは、2値化処理後の画像データを示す。
【0067】
2値化された画像データにおいて、各画素の輝度値P(L,k)="0"は、トンボマークTMの検出を示し、各画素の輝度値P(L,k)="1"は、トンボマークTMの非検出を示す。ここで、Lは、ライン番号を示し、kは画素番号を示す。
【0068】
Ph(k)は、k="1"~"kmax"のkmax個が存在し、副走査方向(
図10の縦方向)に並ぶ画素の列(画素番号)毎にトンボマークTMが検出されたか否かを示す。Ph(k)は、副走査方向に並ぶ画素の列の少なくともいずれかの画素の輝度値PがトンボマークTMの検出を示す場合、"0"になる。Ph(k)は、副走査方向に並ぶ画素の列の全ての画素の輝度値PがトンボマークTMの非検出を示す場合、"1"になる。Ph(k)は、式(1)を使用して、画素の列毎に輝度値P(L,k)から求められる。
Ph(k)=P(1,k)・P(2,k) … ・P(Lmax,k) ‥ (1)
式(1)において、kは、"1"~"kmax"のいずれかである。式(1)に示すように、Ph(k)は、副走査方向に並ぶ画素の輝度値の論理積を示す。
【0069】
Pv(L)は、L="1"~"Lmax"のLmax個が存在し、主走査方向(
図10の横方向)に並ぶ画素の行(ライン番号)毎にトンボマークTMが検出されたか否かを示す。Pv(L)は、主走査方向に並ぶ画素の行の少なくともいずれかの画素の輝度値PがトンボマークTMの検出を示す場合、"0"になる。Pv(L)は、主走査方向に並ぶ画素の行の全ての画素の輝度値PがトンボマークTMの非検出を示す場合、"1"になる。Px(L)は、式(2)を使用して、画素の行毎に輝度値P(L,k)から求められる。
Pv(L)=P(L,1)・P(L,2) … ・P(L,kmax) ‥ (2)
式(2)において、Lは、"1"~"Lmax"のいずれかである。式(2)に示すように、Pv(L)は、主走査方向に並ぶ画素の輝度値の論理積を示す。
【0070】
図10に示す例では、CPU12は、イメージセンサ28により用紙の表面に印刷された画像を全て読み取り、Ph(k)を算出することにより、主走査方向のm画素目からn画素目にトンボマークTMが含まれていると判定する。また、CPU12は、Pv(L)を算出することにより、副走査方向のaライン目からbライン目にトンボマークTMが含まれていると判定する。
【0071】
そして、CPU12は、トンボマークTMの主走査方向の中心位置が(m+n)/2に相当する位置であることを算出し、トンボマークTMの副走査方向の中心位置が(a+b)/2に相当する位置であることを算出する。さらに、CPU12は、画素のピッチをΔk、ライン周期と用紙の搬送速度によって算出されるライン周期間隔距離をΔLとして、式(3)により、トンボマークTMの用紙上での物理的な中心位置を算出する。ライン周期は、イメージセンサ28による1ライン(行)の読み取り周期である。
(Th,Tv)=(Δk・((m+n)/2)-1),ΔL・((a+b)/2)-1)) ‥ (3)
ここで、Thは、主走査方向のトンボマークTMの中心位置を示し、1画素目の中心位置からの距離を示す。Tvは、副走査方向のトンボマークTMの中心位置を示し、1ライン目の中心位置からの距離を示す。すなわち、(Th,Tv)は、用紙上でのトンボマークTMの中心座標を示す。式(3)の右辺において、Thを求める項およびTvを求める項では、それぞれ1画素目からの距離と1ライン目からの距離を算出するため、最後に"-1"を引いている。
【0072】
このように、点対称形状のトンボマークTMの輝度を印刷画像の最小輝度より低く設定し、画像データを2値化することで、CPU12は、簡易な論理演算と簡易な算術演算によりトンボマークTMの中心位置を算出することができる。
【0073】
図11は、
図10に示す手法を用いて、トンボマークTMの主走査方向での中心位置を検出する例を示すフロー図である。すなわち、
図11は、画像形成装置100の制御方法の一例を示す。例えば、
図11に示す処理は、第2処理の一例であり、CPU12が画像形成装置100の制御プログラムを実行することで実現される。
【0074】
まず、ステップS100において、CPU12は、ライン番号Lと画素番号kをそれぞれ"1"に初期化し、k=1からkmaxまでのPh(k)をそれぞれ"1"に初期化する。次に、ステップS102において、CPU12は、それまでに算出したPh(k)の1つに対して、算出対象の画素の輝度値P(L,k)を乗じて、新たなPh(k)を算出する。
【0075】
次に、ステップS104において、CPU12は、画素番号kが最大値kmaxの場合、ステップS108を実行し、画素番号kが最大値kmaxでない場合、ステップS106を実行する。ステップS106において、CPU12は、画素番号kを"1"インクリメントし、処理をステップS102に戻す。ステップS102、S104(NO)、S106のループにより、CPU12は、選択しているラインLの主走査方向に並ぶ画素の輝度値の論理積Ph(k)を画素番号k毎に算出する。すなわち、CPU12は、式(1)のk=1からkmaxまでの各Ph(k)の右辺において、選択しているラインLの項の論理積を演算する。
【0076】
ステップS108において、CPU12は、ライン番号Lが最大値Lmaxの場合、ステップS112を実行し、ライン番号Lが最大値Lmaxでない場合、ステップS110を実行する。ステップS110において、CPU12は、ライン番号Lを"1"インクリメントし、画素番号kを"1"に設定し、処理をステップS102に戻す。ステップS108(NO)、S110により、CPU12は、次のライン番号LでステップS102、S104(NO)、S106のループを実行するために、ライン番号Lを更新する。
【0077】
ステップS112において、CPU12は、画素番号kを"1"に設定し、ステップS114を実行する。ステップS100からS112の処理により、式(1)のPh(k)が画素番号k毎に算出される。すなわち、ステップS100からS112の処理は、
図10の縦方向に並ぶ画素データの列毎に、Ph(k)を算出する主走査方向検索処理を示す。
【0078】
ステップS114において、CPU12は、k番目の列のPh(k)が"0"の場合(トンボマークTM検出)、ステップS118を実行し、k番目の列のPh(k)が"1"の場合(トンボマークTM非検出)、ステップS116を実行する。ステップS116において、CPU12は、画素番号kを"1"インクリメントし、処理をステップS114に戻す。
【0079】
ステップS118において、CPU12は、ステップS114でトンボマークTMを検出した画素番号kを、
図10に示したトンボマークTMの左端の画素位置mとする。次に、ステップS120において、CPU12は、画素番号kを"1"インクリメントする。
【0080】
次に、ステップS122において、CPU12は、k番目の列のPh(k)が"1"の場合(トンボマークTM非検出)、ステップS126を実行し、k番目の列のPh(k)が"0"の場合(トンボマークTM検出)、ステップS124を実行する。ステップS124において、CPU12は、画素番号kを"1"インクリメントし、処理をステップS122に戻す。
【0081】
ステップS126において、CPU12は、ステップS122でトンボマークTMを非検出した画素番号kから"1"を引き、
図10に示したトンボマークTMの右端の画素位置nとする。次に、ステップS128において、CPU12は、式(3)に示した主走査方向でのトンボマークTMの中心位置Thを算出し、
図11に示す処理を終了する。ここで、CPU12は、ステップS118で決定したトンボマークTMの左端の画素位置mと、ステップS126で決定したトンボマークTMの右端の画素位置nとを用いて、中心位置Thを算出する。
【0082】
図12は、
図10に示す手法を用いて、トンボマークTMの副走査方向での中心位置を検出する例を示すフロー図である。すなわち、
図12は、画像形成装置100の制御方法の一例を示す。例えば、
図12に示す処理は、第1処理の一例であり、CPU12が画像形成装置100の制御プログラムを実行することで実現される。
【0083】
まず、ステップS200において、CPU12は、ライン番号Lと画素番号kをそれぞれ"1"に初期化し、L=1からLmaxまでのPv(L)をそれぞれ"1"に初期化する。次に、ステップS202において、CPU12は、それまでに算出したPv(L)の1つに対して、算出対象の画素の輝度値P(L,k)を乗じて、新たなPv(L)を算出する。
【0084】
次に、ステップS204において、CPU12は、画素番号kが最大値kmaxの場合、ステップS208を実行し、画素番号kが最大値kmaxでない場合、ステップS206を実行する。ステップS206において、CPU12は、画素番号kを"1"インクリメントし、処理をステップS202に戻す。ステップS202、S204(NO)、S206のループにより、CPU12は、式(2)において、選択している1つのライン番号Lの主走査方向に並ぶ画素の輝度値の論理積Pv(L)を算出する。
【0085】
ステップS208において、CPU12は、ライン番号Lが最大値Lmaxの場合、ステップS212を実行し、ライン番号Lが最大値Lmaxでない場合、ステップS210を実行する。ステップS210において、CPU12は、ライン番号Lを"1"インクリメントし、画素番号kを"1"に設定し、処理をステップS202に戻す。ステップS208(NO)、S210により、CPU12は、ライン番号Lを更新し、更新したライン番号Lにおいて、ステップS202、S204(NO)、S206のループを実行する。
【0086】
ステップS212において、CPU12は、ライン番号Lを"1"に設定し、ステップS214を実行する。ステップS200からS212の処理により、式(2)のPv(L)がラインL毎に算出される。すなわち、ステップS200からS212の処理は、
図10の横方向に並ぶ画素データのライン毎に、Pv(L)を算出する副走査方向検索処理を示す。
【0087】
ステップS214において、CPU12は、L番目のラインのPv(L)が"0"の場合(トンボマークTM検出)、ステップS218を実行し、L番目のラインのPv(L)が"1"の場合(トンボマークTM非検出)、ステップS216を実行する。ステップS216において、CPU12は、ライン番号Lを"1"インクリメントし、処理をステップS214に戻す。
【0088】
ステップS218において、CPU12は、ステップS214でトンボマークTMを検出したライン番号Lを、
図10に示したトンボマークTMの上端のライン位置aとする。次に、ステップS220において、CPU12は、ライン番号Lを"1"インクリメントする。
【0089】
次に、ステップ222において、CPU12は、L番目のラインのPv(L)が"1"の場合(トンボマークTM非検出)、ステップS226を実行し、L番目のラインのPv(L)が"0"の場合(トンボマークTM検出)、ステップS224を実行する。ステップS224において、CPU12は、ライン番号Lを"1"インクリメントし、処理をステップS222に戻す。
【0090】
ステップS226において、CPU12は、ステップS222でトンボマークTMを非検出したライン番号Lから"1"を引き、
図10に示したトンボマークTMの下端のライン位置bとする。次に、ステップS228において、CPU12は、式(3)に示した副走査方向でのトンボマークTMの中心位置Tvを算出し、
図12に示す処理を終了する。ここで、CPU12は、ステップS218で決定したトンボマークTMの上端のライン位置aと、ステップS226で決定したトンボマークTMの下端のライン位置bとを用いて、中心位置Tvを算出する。
【0091】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、印刷画像の最小輝度値より低い輝度の表裏見当用のトンボマークTMを用紙の表面に印刷することで、トンボマークTMを容易に検出することができ、トンボマークTMの位置を容易に算出することができる。また、最小輝度値より低い輝度のトンボマークTMが印刷された用紙から読み取った読み取り画像データを2値化処理することで、用紙の中央部に存在するトンボマークTMを印刷画像と容易に区別して検出することができる。
【0092】
さらに、この実施形態では、トンボマークTMを点対称形状にすることで、例えば、用紙が搬送方向に完全で平行でなく、トンボマークTMが傾いた場合にも、トンボマークTMの中心位置を確実に検出することができる。また、主走査方向の画素の列と副走査方向の画素の行とのそれぞれにおいて、式(1)、(2)で示す輝度値の論理積Ph(k)、Pv(L)を算出することで、簡易な論理演算と簡易な算術演算によりトンボマークTMの中心位置を算出することができる。この際、主走査方向の画素ピッチΔkおよび副走査方向のライン周期間隔距離ΔLを用いて、トンボマークTMの用紙上での物理的な位置を式(3)から算出することができる。
【0093】
(第4の実施形態)
図13は、第4の実施形態における画像形成装置においてトンボマークTMを検出する例を示す説明図である。上述した実施形態と同様の要素については、詳細な説明は省略する。
図13に示すトンボマークTMの検出手法を実施する画像形成装置は、トンボマークTMの検出手法の一部が相違することを除き、
図1の画像形成装置100と同様の構成および機能を有する。例えば、この実施形態の画像形成装置は、
図3に示した読み取り・搬送制御機構30を有する。また、この実施形態の画像形成装置は、
図2に示した画像形成装置システム200に含まれる。
【0094】
この実施形態では、第3の実施形態と同様に、輝度を印刷画像の最小輝度より低くした十字状等の点対称形状のトンボマークTMが使用される。CPU12は、第3の実施形態と同様に、イメージセンサ28で読み取った画像データを2値化した画像データを使用して、トンボマークTMの中心位置の検出を行う。なお、イメージセンサ28により生成される画像データの2値化処理は、イメージセンサ28による読み取りと並列に実施されてもよい。
【0095】
この実施形態では、用紙の主走査方向および副走査方向のそれぞれに複数のトンボマークTM1、TM2、TM3、TM4が存在するときの検出手法の例を示す。用紙の主走査方向および副走査方向のそれぞれに複数のトンボマークTMが存在する場合、CPU12は、用紙の領域を複数のグループに分割して、グループ毎にトンボマークTMの位置を推定し、推定結果に基づいて、各トンボマークTMの位置を検出する。
【0096】
例えば、CPU12は、まず、
図12に示した副走査方向検索処理を実行し、ライン番号L=1~Lmax毎に、トンボマークTMが検出されたか否かを示すPv(L)を算出する。そして、CPU12は、トンボマークTMの検出を示すPv(L)="0"が連続する行番号Lのグループ(行グループ)を検出する。
【0097】
図13に示す例では、CPU12は、ラインa1~b1+1を含む行グループL1と、ラインa2~b2+1を含む行グループL2を検出する。この時点では、トンボマークTM1~TM4が行グループL1、L2のいずれに属するかは不明である。
【0098】
なお、
図6に示したように、例えば、1枚の用紙の縦横にそれぞれ3頁ずつ、合計9頁が割り付けられ、十字状のトンボマークTMが各頁の印刷画像の周囲に印刷されるとする。この場合、トンボマークTMは、
図9に示した読み取り領域(1)~(6)と同様に、副走査方向に沿って6箇所に配列されるため、CPU12は、読み取り領域(1)~(6)に対応する6つの行グループを検出する。
【0099】
次に、CPU12は、行グループL1、L2のそれぞれについて、
図11に示した主走査方向検索処理を実行し、画素番号k=1~kmax毎に、トンボマークTMが検出されたか否かを示すPh(k)を算出する。この際、CPU12は、行グループL1では、ラインLの初期値を"a1"に設定し、Lmaxを"b1+1"に設定する。CPU12は、行グループL2では、ラインLの初期値を"a2"に設定し、Lmaxを"b2+1"に設定する。そして、CPU12は、トンボマークTMの検出を示すPh(k)="0"が連続する画素番号kのグループ(列グループ)を検出する。
【0100】
図13に示す例では、CPU12は、行グループL1において、画素m11~n11を含む列グループk1と、画素n12~n12を含む列グループk2を検出する。また、CPU12は、行グループL2において、画素m21~n21を含む列グループk3と、画素m22~n22を含む列グループk4を検出する。そして、CPU12は、各行グループL1、L2にトンボマークTMが2つずつ含まれることを検出する。すなわち、CPU12は、4つのトンボマークTMが存在することを検出する。
【0101】
CPU12は、画素m11~n11、n12~n12、m21~n21、m22~n22の各々について、式(3)の(Δk・((m+n)/2)-1)を用いて、主走査方向でのトンボマークTMの中心位置を算出する。
【0102】
次に、CPU12は、行グループL1と列グループk1の両方に含まれるラインa1~b1+1と、画素m11~n11の範囲において、
図12に示した副走査方向でのトンボマークTMの中心位置を検出する処理を実行する。この際、CPU12は、ラインLの初期値を"a1"に設定し、Lmaxを"b1+1"に設定し、画素kの初期値を"m11"に設定し、kmaxを"n11"に設定する。
【0103】
同様に、CPU12は、行グループL1と列グループk2の両方に含まれるラインa1~b1+1と、画素m12~n12の範囲において、
図12に示した副走査方向でのトンボマークTMの中心位置を検出する処理を実行する。この際、CPU12は、ラインLの初期値を"a1"に設定し、Lmaxを"b1+1"に設定し、画素kの初期値を"m12"に設定し、kmaxを"n12"に設定する。
【0104】
さらに、CPU12は、行グループL2と列グループk1の両方に含まれるラインa2~b2+1と、画素m21~n21の範囲において、
図12に示した副走査方向でのトンボマークTMの中心位置を検出する処理を実行する。この際、CPU12は、ラインLの初期値を"a2"に設定し、Lmaxを"b2+1"に設定し、画素kの初期値を"m21"に設定し、kmaxを"n21"に設定する。
【0105】
また、CPU12は、行グループL2と列グループk2の両方に含まれるラインa2~b2+1と、画素m22~n22の範囲において、
図12に示した副走査方向でのトンボマークTMの中心位置を検出する処理を実行する。この際、CPU12は、ラインLの初期値を"a2"に設定し、Lmaxを"b2+1"に設定し、画素kの初期値を"m22"に設定し、kmaxを"n22"に設定する。
【0106】
このように、CPU12は、ライン範囲および画素範囲を限定して、
図11および
図12に示した処理を実行する。そして、CPU12は、行グループL1と列グループk1とが交差する領域においてトンボマークTM1の中心位置を検出し、行グループL1と列グループk2とが交差する領域においてトンボマークTM2の中心位置を検出する。CPU12は、行グループL2と列グループk1とが交差する領域においてトンボマークTM3の中心位置を検出し、行グループL2と列グループk2とが交差する領域においてトンボマークTM4の中心位置を検出する。
【0107】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、印刷画像の最小輝度値より低い輝度の表裏見当用のトンボマークTMを用紙の表面に印刷することで、トンボマークTMを容易に検出することができ、トンボマークTMの位置を容易に算出することができる。また、最小輝度値より低い輝度のトンボマークTMが印刷された用紙から読み取った読み取り画像データを2値化処理することで、用紙の中央部に存在するトンボマークTMを印刷画像と容易に区別して検出することができる。また、点対称形状のトンボマークTMを使用することで、用紙の表面の画像の読み取り時に用紙スキューまたは用紙の位置ずれなどが発生した場合にも、トンボマークTMの中心位置を確実に検出することができる。
【0108】
さらに、この実施形態では、用紙の表面に複数のトンボマークTMが印刷されている場合にも、複数のトンボマークTMの各々の中心位置を容易かつ確実に算出することができる。この際、CPU12は、印刷画像を含む複数頁の用紙の割り付けを示す割り付け情報を使用する必要がない。したがって、
図9に示したような読み取り領域を設定することなく、複数のトンボマークTMの中心位置を算出することができる。
【0109】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0110】
10 搬送制御部
12 CPU
14 記憶部
16 制御インタフェース
18 通信インタフェース
20 センサ・メカトロ部
22 用紙タイミングセンサ
24 搬送ローラエンコーダ
26 搬送モータ
27 搬送ローラ
28 イメージセンサ
30 搬送制御機構
40 画像コントローラ
42 画像生成部
50 画像印刷部
52 ヘッド制御部
60 ユーザ操作部
70 表示部
100 画像形成装置
200 画像形成装置システム
201 給紙ユニット
202 先塗ユニット
203 本体ユニット
204a、204b 乾燥ユニット
205 冷却矯正ユニット
206 反転ユニット
206a 退避部
207 排紙ユニット
TM トンボマーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0111】
【文献】特開2008-271473号公報
【文献】特開2019-98734号公報