(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】接着剤セット、フィルム、接着体、及び被着体の分離方法
(51)【国際特許分類】
C09J 201/06 20060101AFI20240709BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20240709BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C09J201/06
C09J5/00
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2020169677
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】和田 真幸
(72)【発明者】
【氏名】熊木 尚
(72)【発明者】
【氏名】宮本 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭市
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峻
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501244(JP,A)
【文献】特表2001-512762(JP,A)
【文献】特表2012-530173(JP,A)
【文献】特開2016-089175(JP,A)
【文献】特開平08-211594(JP,A)
【文献】国際公開第2020/209268(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
C08J5/00-5/02
C08J5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上のイソシアネート基を有する化合物を含有する主剤と、
2個以上の水酸基を有する化合物を含有する硬化剤と、
を備え、
前記2個以上のイソシアネート基を有する化合物及び前記2個以上の水酸基を有する化合物の少なくとも一方が、分子内にジスルフィド結合を有し、
前記主剤及び前記硬化剤の少なくとも一方が、硬化触媒をさらに含有し、
前記主剤及び前記硬化剤の少なくとも一方が、光ラジカル発生剤をさらに含有する、
接着剤セット。
【請求項2】
請求項1に記載の接着剤セットにおける前記主剤及び前記硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有する、
フィルム。
【請求項3】
2個以上のイソシアネート基を有する単量体単位及び2個以上の水酸基を有する単量体単位を含む重合体と、光ラジカル発生剤とを含有し、
前記2個以上のイソシアネート基を有する単量体単位及び前記2個以上の水酸基を有する単量体単位の少なくとも一方が、分子内にジスルフィド結合を有する、
フィルム。
【請求項4】
第1の被着体と、
第2の被着体と、
前記第1の被着体及び前記第2の被着体を互いに接着する接着剤層と、
を備え、
前記接着剤層が、請求項1に記載の接着剤セットにおける前記主剤及び前記硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有する、
接着体。
【請求項5】
請求項4に記載の接着体から被着体を分離する被着体の分離方法であって、
前記接着体の前記接着剤層に対して光を照射して、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを分離する工程を備える、
被着体の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤セット、フィルム、及び被着体の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光照射によって融解する光融解性を示す組成物は、様々な用途に用いられている。例えば、特許文献1には、光融解性を示す組成物を有する記録部材を備える画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、光融解性を示す接着剤組成物の硬化物を得ることが可能な接着剤セットを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、接着剤セットに関する。当該接着剤セットは、2個以上のイソシアネート基を有する化合物を含有する主剤と、2個以上の水酸基を有する化合物を含有する硬化剤とを備える。2個以上のイソシアネート基を有する化合物及び2個以上の水酸基を有する化合物の少なくとも一方は、分子内にジスルフィド結合を有する。主剤及び硬化剤の少なくとも一方は、硬化触媒をさらに含有する。主剤及び硬化剤の少なくとも一方は、光ラジカル発生剤をさらに含有する。このような接着剤セットによれば、主剤及び硬化剤を混合することによって、主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物を得ることができ、さらに接着剤組成物を硬化させることによって、接着剤組成物の硬化物を得ることが可能となる。ここで、接着剤組成物の硬化物の形成は、接着剤組成物における主剤の2個以上のイソシアネート基を有する化合物におけるイソシアネート基と硬化剤の2個以上の水酸基を有する化合物における水酸基とが反応して高分子量化することによって発現するものであると推測される。
【0006】
接着剤組成物の硬化物は、光の照射による光融解性を示す。このような光融解性を発現する理由について、本発明者らは以下のように考えている。接着剤組成物の硬化物においては、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物との反応生成物(イソシアネート基を有する単量体単位及び水酸基を有する単量体単位を含む重合体)が生成している。このとき、イソシアネート基を有する化合物(単量体単位)及び水酸基を有する化合物(単量体単位)の少なくとも一方は、分子内にジスルフィド結合を有している。ここで、接着剤組成物の硬化物に光を照射すると、ジスルフィド結合が分解(開裂)し、チイルラジカルが発生する。このとき、接着剤組成物の硬化物中に、光ラジカル発生剤が存在すると、チイルラジカルと光ラジカル発生剤とが反応し、接着剤組成物の硬化物が低分子量化し、接着剤組成物の硬化物が融解することが考えられる。この反応は不可逆反応であるといえる。なお、光ラジカル発生剤に起因する光誘起ラジカルがジスルフィド結合と直接反応し、光誘起ラジカル-チオエーテル結合の形成とチイルラジカルの生成とが起こり、チイルラジカルと別の光誘起ラジカルとが反応するという、ジスルフィド結合を有する化合物自体が低分子量化する開裂工程を経由しない反応機構も考えられる。
【0007】
本開示の他の一側面は、フィルムに関する。当該フィルムの一態様は、上記の接着剤セットにおける主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有する。当該フィルムの他の一態様は、2個以上のイソシアネート基を有する単量体単位及び2個以上の水酸基を有する単量体単位を含む重合体と、光ラジカル発生剤とを含有する。当該フィルムの他の一態様において、2個以上のイソシアネート基を有する単量体単位及び2個以上の水酸基を有する単量体単位の少なくとも一方は、分子内にジスルフィド結合を有する。
【0008】
これらのフィルムは、主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物又は2個以上のイソシアネート基を有する単量体単位及び2個以上の水酸基を有する単量体単位を含む重合体を含んでいる。このとき、イソシアネート基を有する化合物(単量体単位)及び水酸基を有する化合物(単量体単位)の少なくとも一方は、分子内にジスルフィド結合を有している。さらに、これらのフィルムは、光ラジカル発生剤を含有している。そのため、これらのフィルムは、光を照射することによって光融解性を示すものとなり得る。
【0009】
本開示の他の一側面は、接着体に関する。当該接着体は、第1の被着体と、第2の被着体と、第1の被着体及び第2の被着体を互いに接着する接着剤層とを備える。接着剤層は、上記の接着剤セットにおける主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有する。
【0010】
本開示の他の一側面は、上記の接着体から被着体を分離する被着体の分離方法に関する。当該被着体の分離方法は、接着体の接着剤層に対して光を照射して、第1の被着体と第2の被着体とを分離する工程を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、光融解性を示す接着剤組成物の硬化物を得ることが可能な接着剤セットが提供される。また、本開示によれば、光融解性を示すフィルムが提供される。さらに、本開示によれば、このような接着剤セットを用いた接着体及び接着体から被着体を分離する被着体の分離方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」等の他の類似の表現においても同様である。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
[接着剤セット]
一実施形態の接着剤セットは、2個以上のイソシアネート基を有する化合物を含有する主剤及び2個以上の水酸基を有する化合物を含有する硬化剤を備える。本実施形態の接着剤セットは、主剤及び硬化剤を混合することによって、主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物を得ることができ、さらに接着剤組成物を硬化させることによって、接着剤組成物の硬化物を得ることが可能となる。
【0015】
主剤は、2個以上のイソシアネート基を有する化合物(以下、「(A)成分」という場合がある。)を含有する。硬化剤は、2個以上の水酸基を有する化合物(以下、「(B)成分」という場合がある。)を含有する。(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方は、光融解性を発現させる観点から、分子内にジスルフィド結合を有する。主剤及び硬化剤の少なくとも一方は、硬化触媒(以下、「(C)成分」という場合がある。)をさらに含有している。主剤及び硬化剤の少なくとも一方は、光ラジカル発生剤(以下、「(D)成分」という場合がある。)をさらに含有している。主剤及び硬化剤の少なくとも一方は、増感剤等のいずれかをさらに含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
【0016】
(A)成分:2個以上のイソシアネート基を有する化合物
(A)成分は、2個以上のイソシアネート基を有しかつジスルフィド結合を有する化合物(以下、「(A1)成分」という場合がある。)又は2個以上のイソシアネート基を有しかつジスルフィド結合を有しない化合物(以下、「(A2)成分」という場合がある。)であり得る。
【0017】
(A1)成分は、2個以上のイソシアネート基を有しかつジスルフィド結合を有しているのであれば特に制限されないが、(A1)成分が光照射によって低分子量化することから、ポリマー又はオリゴマーの高分子量成分であってよい。(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(A1)成分は、分子内に複数(2個以上)のジスルフィド結合を有していることが好ましい。
【0018】
(A1)成分は、例えば、ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する化合物(以下、「(A1-a)成分」という場合がある。)と、イソシアネート基を有しかつ官能基と反応可能な置換基を有する化合物(以下、「(A1-b)成分」という場合がある。)とを反応させることによって得られる共重合体、言い換えると、(A1-a)成分と(A1-b)成分との反応物、すなわち、(A1-a)成分の単量体単位及び(A1-b)成分の単量体単位を含む共重合体であってよい。
【0019】
(A1-a)成分は、ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。ここで、(A1-a)成分における官能基としては、例えば、チオール基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられる。(A1-a)成分における官能基は、例えば、チオール基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。(A1-a)成分の官能基数は、高分子量化の観点から、2個以上であってよい。一方で、(A)成分の架橋度が少なくなるほど、接着剤組成物の硬化物を光照射したときに融解させ易くなる傾向にあることから、(A1-a)成分として、官能基数が2個である化合物を使用することが好ましく、官能基数の異なる複数の化合物を使用する場合は、官能基数が2個である化合物の使用割合を多くすることが好ましい。
【0020】
(A1-a)成分としては、例えば、チオコールLPシリーズ(ジスルフィド結合を有するジチオール、東レ・ファインケミカル株式会社製)、3,3’-ジチオジプロピオン酸(東京化成工業株式会社製)等が挙げられる。これらの(A1-a)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(A1-b)成分は、イソシアネート基を有しかつ官能基と反応可能な置換基を有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。ここで、(A1-b)成分における置換基としては、例えば、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アルデヒド基等が挙げられる。(A1-b)成分における置換基は、例えば、イソシアネート基であってよい。(A1-b)成分は、(A1-a)成分の官能基と反応してイソシアネート基を有する化合物を生じさせる観点から、(A1-b)成分は、イソシアネート基数が1個で置換基数が1個である化合物であってよく、イソシアネート基数が2個である化合物であってもよい。
【0022】
(A1-b)成分としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。これらの(A1-b)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
(A1-a)成分と(A1-b)成分との好適な組み合わせは、例えば、ジスルフィド結合を有しかつチオール基を2個有する化合物と、イソシアネート基を2個有する化合物との組み合わせであってよい。
【0024】
(A1-a)成分と(A1-b)成分とを反応させて、(A1)成分である共重合体を得る場合、これらの成分の反応割合は、(A1-a)成分の官能基当量及び(A1-b)成分の置換基当量に基づき、得られる(A1)成分が2個以上のイソシアネート基を有するように適宜調整することができる。(A1-a)成分と(A1-b)成分との反応は、加熱しながら行ってもよい。反応温度は、例えば、0~200℃であってよく、反応時間は、例えば、0.1~240時間であってよい。
【0025】
(A1-a)成分と(A1-b)成分とを反応させる場合、必要に応じて、硬化触媒(以下、「(A1-c)成分」という場合がある。)を用いてもよい。(A1-c)成分は、(A1-a)成分の官能基の種類及び(A1-b)成分の置換基の種類に合わせて、任意に選択することができる。(A1-a)成分として、チオール基を官能基として有する化合物と、(A1-b)成分として、イソシアネート基を置換基として有する化合物とを反応させる場合、(A1-c)成分は、例えば、錫系硬化触媒又はアミン系硬化触媒であってよい。
【0026】
錫系硬化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0027】
アミン系硬化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール(IBM)等が挙げられる。
【0028】
(A1-c)成分の含有量は、(A1-a)成分及び(A1-b)成分の合計を基準として、0.005~10質量%、0.01~5質量%、又は0.02~3質量%であってよい。
【0029】
(A1)成分の分子量又は重量平均分子量は、200~10000000、1000~2000000、又は2500~1000000であってよい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0030】
(A2)成分は、2個以上のイソシアネート基を有しかつジスルフィド結合を有しないのであれば特に制限なく使用することができる。(A2)成分は、(A1-b)成分における化合物と同様の化合物を例示することができる。(A2)成分は、2個以上のイソシアネート基を有する化合物の多量体であってよい。このような多量体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ジイソシアネートの多量体;ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネートの多量体などが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートの多量体は、例えば、脂肪族ジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート体、ビウレット体、又はトリメチロールプロパン(TMP)のアダクト体)であってよい。
【0031】
(A)成分の含有量は、例えば、主剤及び硬化剤の総量を基準として、0.5質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってよく、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であってよい。
【0032】
(B)成分:2個以上の水酸基を有する化合物
(B)成分は、2個以上の水酸基を有しかつジスルフィド結合を有する化合物(以下、「(B1)成分」という場合がある。)又は2個以上の水酸基を有しかつジスルフィド結合を有しない化合物(以下、「(B2)成分」という場合がある。)であり得る。
【0033】
(B1)成分は、2個以上の水酸基を有しかつジスルフィド結合を有しているのであれば特に制限されないが、(B1)成分が光照射によって低分子量化することから、ポリマー又はオリゴマーの高分子量成分であってよい。(B1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B1)成分は、分子内に複数(2個以上)のジスルフィド結合を有していることが好ましい。
【0034】
(B1)成分は、例えば、ジスルフィド結合を有しかつ官能基を有する化合物(以下、「(B1-a)成分」という場合がある。)と、水酸基を有しかつ官能基と反応可能な置換基を有する化合物(以下、「(B1-b)成分」という場合がある。)とを反応させることによって得られる共重合体、言い換えると、(B1-a)成分と(B1-b)成分との反応物、すなわち、(B1-a)成分の単量体単位及び(B1-b)成分の単量体単位を含む共重合体であってよい。
【0035】
(B1-a)成分は、(A1-a)成分で例示した化合物を例示することができる。
【0036】
(B1-b)成分は、水酸基を有しかつ官能基と反応可能な置換基を有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。ここで、(B1-b)成分における置換基としては、例えば、環状エーテルを含む基(例えば、グリシジル基等)、(メタ)アクリロイル基、アルデヒド基等が挙げられる。(B1-b)成分における置換基は、例えば、(メタ)アクリロイル基であってよい。(B1-b)成分は、(B1-a)成分の官能基と反応して水酸基を有する化合物を生じさせる観点から、(B1-b)成分は、水酸基数が1個で置換基数が1個である化合物であってよく、水酸基数が1個で(メタ)アクリロイル基数が1個である化合物であってもよい。
【0037】
(B1-b)成分としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(B1-b)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(B1-a)成分と(B1-b)成分との好適な組み合わせは、例えば、ジスルフィド結合を有しかつチオール基を2個有する化合物と、水酸基を1個有しかつ(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物との組み合わせであってよい。
【0039】
(B1-a)成分と(B1-b)成分とを反応させて、(B1)成分である共重合体を得る場合、これらの成分の反応割合は、(B1-a)成分の官能基当量及び(B1-b)成分の置換基当量に基づき、得られる(B1)成分が2個以上の水酸基を有するように適宜調整することができる。(B1-a)成分と(B1-b)成分との反応は、加熱しながら行ってもよい。反応温度は、例えば、0~200℃であってよく、反応時間は、例えば、0.1~240時間であってよい。
【0040】
(B1-a)成分と(B1-b)成分とを反応させる場合、必要に応じて、硬化触媒(以下、「(B1-c)成分」という場合がある。)を用いてもよい。(B1-c)成分は、(B1-a)成分の官能基の種類及び(B1-b)成分の置換基の種類に合わせて、任意に選択することができる。(B1-a)成分として、チオール基を官能基として有する化合物と、(B1-b)成分として、(メタ)アクリロイル基を置換基として有する化合物とを反応させる場合、(B1-c)成分は、例えば、錫系硬化触媒又はアミン系硬化触媒であってよい。錫系硬化触媒及びアミン系硬化触媒は、(A1-c)成分における錫系硬化触媒及びアミン系硬化触媒と同様の硬化触媒を例示することができる。
【0041】
(B1-c)成分の含有量は、(B1-a)成分及び(B1-b)成分の合計を基準として、0.005~10質量%、0.01~5質量%、又は0.02~3質量%であってよい。
【0042】
(B1)成分の分子量又は重量平均分子量は、200~10000000、1000~2000000、又は2500~1000000であってよい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0043】
(B2)成分は、2個以上の水酸基を有しかつジスルフィド結合を有しないのであれば特に制限なく使用することができる。(B2)成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネーポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。(B2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(B)成分の含有量は、例えば、主剤及び硬化剤の総量を基準として、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、又は35質量%以上であってよく、95質量%以下、92質量%以下、90質量%以下、又は88質量%以下であってよい。
【0045】
(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方は、光融解性を発現させる観点から、分子内にジスルフィド結合を有する化合物を含む。すなわち、接着剤セットは、(A)成分としての(A1)成分及び(B)成分としての(B1)成分からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。(A1)成分及び(B1)成分の含有量(総量)は、主剤及び硬化剤の総量を基準として、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上であってよく、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、又は96質量%以下であってよい。
【0046】
(C)成分:硬化触媒
(C)成分は、(A)成分と(B)成分との反応を促進させるための触媒である。(C)成分は、主剤及び硬化剤の少なくとも一方に含有されていればよいが、硬化安定性及び貯蔵安定性の観点から、硬化剤に含有されていてもよい。(C)成分としては、例えば、錫系硬化触媒、アミン系硬化触媒、ジルコニウム系硬化触媒等が挙げられる。(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。錫系硬化触媒及びアミン系硬化触媒は、(A1-c)成分における錫系硬化触媒及びアミン系硬化触媒と同様の硬化触媒を例示することができる。
【0047】
ジルコニウム系硬化触媒としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、オクチル酸ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0048】
(C)成分の含有量は、主剤及び硬化剤の総量を基準として、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、又は0.1質量%以上であってよく、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0049】
(D)成分:光ラジカル発生剤
(D)成分は、接着剤組成物の硬化物に光を照射したときに、発生するチイルラジカルと反応する成分又は光誘起ラジカルを発生する成分であり得る。(D)成分は、主剤及び硬化剤の少なくとも一方に含有されていればよいが、硬化安定性及び貯蔵安定性の観点から、主剤に含有されていてもよい。
【0050】
光ラジカル発生剤としては、例えば、分子内開裂型の光ラジカル重合開始剤、水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。分子内開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンジルケタール系光ラジカル重合開始剤;α-ヒドロキシアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤;ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤;アミノアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤;オキシムケトン系光ラジカル重合開始剤;アシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤;チタノセン系光ラジカル重合開始剤;チオ安息香酸S-フェニル重合開始剤;これらの高分子量誘導体等が挙げられる。水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系光ラジカル開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、アントラキノン系光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0051】
(D)成分の含有量は、主剤及び硬化剤の総量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよく、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0052】
主剤及び硬化剤の少なくとも一方は、増感剤等をさらに含有していてもよい。
【0053】
増感剤は、特に制限されず、公知の三重項増感剤を用いることができる。増感剤としては、例えば、安息香酸系光増感剤、アミン系光増感剤等が挙げられる。増感剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
増感剤の含有量は、主剤及び硬化剤の総量を基準として、0.1~10質量%、0.5~8質量%、又は1~5質量%であってよい。
【0055】
主剤及び硬化剤の少なくとも一方は、上記の(A)~(D)成分及び増感剤に加えて、その他の成分として、例えば、カップリング剤等の密着性向上剤、重合禁止剤、光安定剤、消泡剤、フィラー、連鎖移動剤、チキソトロピー付与剤、難燃剤、離型剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤などの添加剤をさらに含有してもよい。これらの添加剤は、公知のものを使用することができる。その他の成分の含有量(総量)は、主剤及び硬化剤の総量を基準として、0.01~20質量%又は0.1~10質量%であってよい。
【0056】
主剤と硬化剤とを混合する場合、(B)成分の水酸基に対する(A)成分のイソシアネート基の当量比(モル比)(NCO基/OH基)は、例えば、0.76~1.3であってよい。
【0057】
本実施形態の接着剤セットは、主剤と硬化剤とを混合することによって、接着剤組成物を調製することができる。主剤と硬化剤とを混合するときの温度及び時間は、例えば、10~35℃で、0.1~60分間であってよい。
【0058】
主剤と硬化剤とを混合する方法としては、例えば、スパチュラ等を用いて手動で混合する方法、通常のコーキングガンを用いて手塗りによって混合する方法、原料の送液用に定量性のあるポンプ(例えば、ギヤポンプ、プランジャーポンプ等)と絞り弁とを併用し、機械式回転ミキサー、スタティックミキサー等を用いて混合する方法などが挙げられる。
【0059】
調製された接着剤組成物は、養生(硬化)させることによって、接着剤組成物の硬化物を形成することができ、被着体同士を接着する接着剤層として作用し得る。接着剤組成物を硬化させる条件(養生条件)は、例えば、10~35℃、30~60%RH(相対湿度)、0.1~7日間であってよい。
【0060】
接着剤組成物の硬化物は、光照射によって、硬化物中のジスルフィド結合(-S-S-)が切断され、ジスルフィド結合を有する化合物が低分子量化して融解する性質を有している。このような性質を利用することによって、接着剤組成物の硬化物は、例えば、フォトリソグラフィーのフォトレジスト剤の用途に応用することができる。これらの接着剤組成物の硬化物は、光照射(露光)によってパターニングが可能となり、さらには光照射(露光)後に、例えば、水洗で現像が可能となる。接着剤組成物の硬化物は、パターン膜の形成に好適に用いることができる。また、主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物は接着性を有し、接着剤組成物の硬化物は、光照射による光融解性を有している。そのため、接着剤組成物は、リペア性を有する接着剤としても使用することができる。
【0061】
光照射における光は、特に制限されないが、例えば、紫外光又は可視光であってよい。光照射における光の波長は、150~830nmであってよい。光照射は、例えば、光照射装置を用いて、照射量100mJ/cm2以上の条件で行うことができる。なお、照射量とは、照度と照射時間(秒)との積を意味する。また、紫外光又は可視光照射用の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ等が挙げられる。光照射は、接着剤組成物の硬化物に対して直接行ってもよく、ガラス等を介して行ってもよい。
【0062】
接着剤組成物の硬化物の光照射は、加熱しながら行ってもよい。加熱条件は、例えば、40~200℃であってよい。
【0063】
[フィルム]
一実施形態のフィルムは、上記の接着剤セットにおける主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有するフィルムである。一実施形態のフィルムの他の態様は、2個以上のイソシアネート基を有する単量体単位及び2個以上の水酸基を有する単量体単位を含む重合体と、光ラジカル発生剤とを含有し、2個以上のイソシアネート基を有する単量体単位及び2個以上の水酸基を有する単量体単位の少なくとも一方が、分子内にジスルフィド結合を有する単量体単位を含むフィルムである。
【0064】
フィルムは、例えば、主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物をフィルム状に形成して接着剤フィルムを作製し、得られた接着剤フィルムを上記と同様の条件で養生(硬化)させることによって得ることができる。ここで、接着剤フィルムは、上記の接着剤セットにおける主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有するものである。
【0065】
フィルムの厚さは、特に制限されないが、例えば、5~300μm、20~200μm、又は60~180μmであってよい。
【0066】
[接着体]
一実施形態の接着体は、第1の被着体と、第2の被着体と、第1の被着体及び第2の被着体を互いに接着する接着剤層とを備える。接着剤層は、上記に記載の接着剤セットにおける主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有する。
【0067】
第1の被着体及び第2の被着体としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、アクリル樹脂等のプラスチック;鉄鋼、ステンレス鋼、金属(アルミニウム、銅、ニッケル、クロム等)単体又はこれら金属の合金、ガラス、シリコンウエハ等の無機材料;木材;ゴムなどが挙げられる。また、第1の被着体及び第2の被着体としては、上記プラスチックと上記無機材料とが複合化された材料も挙げられる。
【0068】
接着体は、主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物を介して、第1の被着体と第2の被着体とを貼り合わせる工程を備える方法によって得ることができる。接着剤セットにおける主剤と硬化剤とを混合するときの温度及び時間、接着剤組成物を硬化させる条件等は、上記と同様であってよい。
【0069】
[被着体の分離方法]
一実施形態の被着体の分離方法は、接着体の接着剤層に対して光を照射して、第1の被着体と第2の被着体とを分離する工程を備える。接着剤層は、上記に記載の接着剤セットにおける主剤及び硬化剤を含む接着剤組成物の硬化物を含有することから、光を照射することによって、接着剤組成物の硬化物を融解させて容易に被着体同士を分離することができる。
【0070】
被着体の分離方法において、光を照射するときの光の種類、光源等は、上記と同様であってよい。
【実施例】
【0071】
以下、本開示について、実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
[原料の準備]
(原料の合成)
・製造例1:2個以上のイソシアネート基を有しかつジスルフィド結合を有する化合物
フラスコに、チオコールLP-55を400g加え、窒素を投入し、撹拌しながら15分間で95℃まで昇温した。95℃を維持しながら、減圧(ゲージ圧0.1MPa)し、2時間15分間撹拌することによって脱水処理を行った。脱水処理後、室温(25℃)まで冷却した。窒素雰囲気下、室温(25℃)において、フラスコにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、東ソー株式会社製)を36.6g加え、続いて、触媒としてのトリエチルアミンを138mg加え、混合液の撹拌を開始した。触媒を加えた後、混合液は反応熱によって40℃まで温度が上昇した。反応は、HDIのイソシアネート基の減少率を、赤外吸収スペクトルを測定することによって追跡し、所定の減少率となった3時間後に撹拌を停止した。撹拌停止後の反応物を、製造例1の2個以上の水酸基を有しかつジスルフィド結合を有する化合物とした。製造例1の化合物のNCO含有量(%)を測定したところ、2.16%(理論値:2.09%)であった。
【0073】
・製造例2:2個以上の水酸基を有しかつジスルフィド結合を有する化合物
フラスコに、チオコールLP-55(ジスルフィド結合を有するジチオール、東レ・ファインケミカル株式会社製)を367.8g、HEA(ヒドロキシエチルアクリレート、株式会社日本触媒製)を23.2g加えた。混合物を撹拌しながら昇温し、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、サンアプロ株式会社製)を加えた。その後、90℃まで昇温し、90℃で4時間15分間撹拌した。撹拌後の反応物を、製造例2の2個以上の水酸基を有しかつジスルフィド結合を有する化合物とした。製造例2の化合物の水酸基価を測定したところ、25.7mg/KOHg(理論値:28.7mg/KOHg)であった。
【0074】
(原料の準備)
(A)2個以上のイソシアネート基を有する化合物
(A1)2個以上のイソシアネート基を有しかつジスルフィド結合を有する化合物
A1-1:製造例1の化合物
(A2)2個以上のイソシアネート基を有しかつジスルフィド結合を有しない化合物
A2-1:HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、東ソー株式会社製)
A2-2:スミジュールN3300(ヘキサメチレンジイソシアネート型イソシアヌレート、住化コベストロウレタン株式会社製)
(B)2個以上の水酸基を有する化合物
(B1)2個以上の水酸基を有しかつジスルフィド結合を有する化合物
B1-1:製造例2の化合物
(C)硬化触媒
(C1)アミン系硬化触媒
C1-1:DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、サンアプロ株式会社製)
C1-2:TEDA L-33(トリエチレンジアミン(TEDA)のジプロピレングリコール溶液(33質量%:トリエチレンジアミン、67質量%:ジプロピレングリコール)、東ソー株式会社製)
(C2)錫系硬化触媒
C2-1:L101-1(ジブチル錫ラウレート、東京ファインケミカル株式会社製)
(C3)ジルコニウム系硬化触媒
C3-1:ZC-162(ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、マツモトファインケミカル株式会社製)
(D)光ラジカル発生剤
D-1:Omnirad651(ベンジルケタール、IGM Resins B.V.社製)
【0075】
[接着剤セットの作製]
(主剤)
表1及び表2に示す種類及び割合(単位:質量部)で(A)成分及び(D)成分を自公転式撹拌装置(あわとり練太郎AR-250、株式会社シンキー製)を用いて、2000回転/分で90秒間撹拌した後、70℃で30分間加熱した。冷却した後、2000回転/分で90秒間さらに撹拌して硬化剤を得た。
(硬化剤)
表1及び表2に示す種類及び割合(単位:質量部)で(B)成分及び(C)成分を混合して硬化剤を得た。
【0076】
[接着剤組成物の硬化性の確認]
作製した主剤と作製した硬化剤とをスパチュラを用いて1分間撹拌した後、室温(25℃)で24時間以上放置し、硬化性の発現の有無を目視にて確認した。結果を表1及び表2に示す。
【0077】
[接着剤組成物の硬化物の光融解性の確認]
作製した主剤と作製した硬化剤とをスパチュラを用いて1分間撹拌した後、室温(25℃)で24時間以上放置し、接着剤組成物の硬化物を得た。得られた接着剤組成物の硬化物を用いて、光融解性試験を行った。なお、光融解性試験は酸素の影響をなくすため、スライドガラスで接着剤組成物の硬化物を挟んでから、光の照射を行った。より具体的には、スライドガラス上に、0.02gの接着剤組成物の硬化物を配置し、さらにもう1枚のスライドガラスで挟むことによって試験用サンプルを得た。試験用サンプルの接着剤組成物の硬化物に対して、LED(365nm、照度:600mW/cm2)で80秒間照射した(積算光量:約48000mJ/cm2)。照射後、スライドガラスを剥がし、液状成分の有無を目視にて確認した。液状成分が観察されることは、光融解性を有していることを意味する。結果を表1及び表2に示す。
【0078】
【0079】
【0080】
表1及び表2に示すとおり、実施例1~20の接着剤セットを用いることによって、接着剤組成物の硬化物を作製できることが判明した。また、表1及び表2に示すとおり、接着剤組成物の硬化物は、光融解性を示すことが判明した。これらの結果から、本開示の接着剤セットが、光融解性を示す接着剤組成物の硬化物を得ることが可能であることが確認された。