(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】オニウム塩化合物、化学増幅レジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
C07C 69/78 20060101AFI20240709BHJP
C07C 59/56 20060101ALI20240709BHJP
C07C 59/68 20060101ALI20240709BHJP
C07C 69/635 20060101ALI20240709BHJP
C07C 69/65 20060101ALI20240709BHJP
C07C 381/12 20060101ALI20240709BHJP
C07D 307/56 20060101ALI20240709BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20240709BHJP
C08F 212/02 20060101ALI20240709BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20240709BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240709BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240709BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20240709BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07C69/78 CSP
C07C59/56
C07C59/68
C07C69/635
C07C69/65
C07C381/12
C07D307/56
C07D333/76
C08F212/02
C08F220/10
C09K3/00 K
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020194996
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019223621
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 敬之
(72)【発明者】
【氏名】及川 健一
(72)【発明者】
【氏名】小林 知洋
(72)【発明者】
【氏名】福島 将大
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】特許第7363742(JP,B2)
【文献】特許第7096189(JP,B2)
【文献】特開2014-142620(JP,A)
【文献】特開2015-054833(JP,A)
【文献】特許第7149241(JP,B2)
【文献】特開2008-255035(JP,A)
【文献】特開2017-219836(JP,A)
【文献】特開2015-169790(JP,A)
【文献】特開2015-184456(JP,A)
【文献】特開2021-080245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/78
C07C 59/56
C07C 59/68
C07C 69/635
C07C 69/65
C07C 381/12
C07D 307/56
C07D 333/76
C08F 212/02
C08F 220/10
C09K 3/00
G03F 7/004
G03F 7/039
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるオニウム塩化合物。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~12のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。
R
f1及びR
f2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも一方は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
L
1は、単結合又は炭素数1~15のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基中の水素原子が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビレン基中の-CH
2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。
L
2は、単結合、エーテル結合又はエステル結合である。
Arは、炭素数3~15の(n+1)価の芳香族基であり、該芳香族基の水素原子の一部又は全部が置換基(ただし、下記式(R-1)、(R-2)、(R-3)、(R-4)又及び(R-5)で表される基を除く。)で置換されていてもよい。
nは、1≦n≦5を満たす整数である。
M
+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。)
【化2】
(式中、R
r1、R
r2、R
r3及びR
r4は、それぞれ独立に、炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R
r1及びR
r2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
R
r5及びR
r6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のヒドロカルビル基である。また、R
r4、R
r5及びR
r6のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する原子と共に環を形成してもよい。
破線は、式(1)中のArとの結合手である。)
【請求項2】
下記式(2)で表される請求項1記載のオニウム塩化合物。
【化3】
(式中、M
+は、前記と同じ。
n及びmは、1≦n≦5、0≦m≦4及び1≦n+m≦5を満たす整数である。
R
3は、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の炭素-炭素結合間に、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環又はカルボン酸無水物基が介在していてもよい。
R
4は、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~15のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-、-C(=O)-又は-N(R
N)-で置換されていてもよい。R
Nは、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。mが2以上のとき、各R
4は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
L
3は、単結合、エーテル結合又はエステル結合である。
L
4は、単結合、又は炭素数1~10のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基中の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビレン基中の炭素-炭素結合間に、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環又はカルボン酸無水物基が介在していてもよい。)
【請求項3】
R
3が、水素原子、イソプロピル基、アダマンチル基又は置換されていてもよいフェニル基である請求項2記載のオニウム塩化合物。
【請求項4】
L
3及びL
4が、単結合である請求項2又は3記載のオニウム塩化合物。
【請求項5】
M
+が、下記式(M-1)~(M-4)のいずれかで表されるカチオンである請求項1~4のいずれか1項記載のオニウム塩化合物。
【化4】
(式中、R
M1、R
M2、R
M3、R
M4及びR
M5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~15のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)
2-又は-N(R
N)-で置換されていてもよい。
L
5及びL
6は、それぞれ独立に、単結合、-CH
2-、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)
2-又は-N(R
N)-である。
R
Nは、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。
p、q、r、s及びtは、それぞれ独立に、0~5の整数である。pが2以上のとき、各R
M1は、互いに同一でも異なっていてもよい。qが2以上のとき、各R
M2は、互いに同一でも異なっていてもよい。rが2以上のとき、各R
M3は、互いに同一でも異なっていても
よい。sが2以上のとき、各R
M4は、互いに同一でも異なっていてもよい。tが2以上のとき、各R
M5は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
下記式(3)又は(4)で表される請求項5記載のオニウム塩化合物。
【化5】
(式中、R
M1、R
M2及びR
M3は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~15のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)
2-又は-N(R
N)-で置換されていてもよい。
L
5は、それぞれ独立に、単結合、-CH
2-、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)
2-又は-N(R
N)-である。
R
Nは、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。
m及びnは、1≦n≦5、0≦m≦4及び1≦n+m≦5を満たす整数である。
p、q及びrは、それぞれ独立に、0~5の整数である。pが2以上のとき、各R
M1は、互いに同一でも異なっていてもよい。qが2以上のとき、各R
M2は、互いに同一でも異なっていてもよい。rが2以上のとき、各R
M3は、互いに同一でも異なっていてもよい。
R
5は、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。mが2以上のとき、各R
5は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
nが、2又は3である請求項6記載のオニウム塩化合物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載のオニウム塩化合物からなる酸拡散抑制剤。
【請求項9】
(A)酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するベースポリマー、(B)光酸発生剤、(C)請求項1~7のいずれか1項記載のオニウム塩化合物を含む酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含む化学増幅レジスト組成物であって、
前記ベースポリマーが、下記式(a)で表される繰り返し単位又は下記式(b)で表される繰り返し単位を含むポリマーである化学増幅レジスト組成物。
【化6】
[式中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。
式(a)で表される繰り返し単位は、下記式のいずれかで表されるものである。
【化7】
X
Bは、単結合又はエステル結合である。
AL
1及びAL
2は、それぞれ独立に、下記式(L1)で表される基である酸不安定基である。
【化8】
(式中、R
11は、炭素数1~7のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-で置換されてもよい。aは、1又は2である。破線は、結合手である。)]
【請求項10】
(A')酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、露光により酸を発生する機能を有する繰り返し単位を含むベースポリマー、(C)請求項1~7のいずれか1項記載のオニウム塩化合物を含む酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含む化学増幅レジスト組成物であって、
前記露光により酸を発生する機能を有する繰り返し単位が、下記式(d
2)~(d4)で表されるものから選ばれる少なくとも1種である化学増幅レジスト組成物。
【化8】
(式中、R
Bは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Z
B及びZ
Cは、それぞれ独立に、単結合、又は炭素数1~20のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基中の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビレン基中の炭素-炭素結合間に、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環又はカルボン酸無水物基が介在していてもよい。
Z
Dは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、-O-Z
D1-、-C(=O)-O-Z
D1又は-C(=O)-NH-Z
D1-である。Z
D1は、置換されていてもよいフェニレン基である。
R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
n
1は、0又は1であるが、Z
Bが単結合のときは0である。n
2は、0又は1であるが、Z
Cが単結合のときは0である。
式(d2)~(d4)で表される繰り返し単位中のスルホニウムカチオンは、下記式のいずれかで表されるものである。
【化9】
)
【請求項11】
前記ベースポリマーが、下記式(a)で表される繰り返し単位又は下記式(b)で表される繰り返し単位を含むポリマーである請求項10記載の化学増幅レジスト組成物。
【化10】
(式中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。
式(a)で表される繰り返し単位は、下記式のいずれかで表されるものである。
【化11】
X
Bは、単結合又はエステル結合である。
AL
1及びAL
2は、それぞれ独立に、下記式(L1)で表される基である酸不安定基で
【化12】
(式中、R
11は、炭素数1~7のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-で置換されてもよい。aは、1又は2である。破線は、結合手である。)
【請求項12】
前記ベースポリマーが、下記式(c)で表される繰り返し単位を含むポリマーである請求項10又は11記載の化学増幅レジスト組成物。
【化12】
(式中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。
Y
Aは、単結合又はエステル結合である。
R
21は、フッ素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。
b及びcは、1≦b≦5、0≦c≦4及び1≦b+c≦5を満たす整数である。)
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1項記載の化学増幅レジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線又は極端紫外線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
【請求項14】
現像液としてアルカリ水溶液を用いて、露光部を溶解させ、未露光部が溶解しないポジ型パターンを得る請求項13記載のパターン形成方法。
【請求項15】
現像液として有機溶剤を用いて、未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得る請求項13記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記現像液が、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル及び酢酸2-フェニルエチルから選ばれる少なくとも1種である請求項15記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オニウム塩化合物、化学増幅レジスト組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められ、高解像性のレジストパターンが要求されるようになるにつれ、パターン形状やコントラスト、マスクエラーファクター(Mask Error Factor(MEF))、焦点深度(Depth of Focus(DOF))、寸法均一性(Critical Dimension Uniformity(CDU))、ラインウィドゥスラフネス(Line Width Roughness(LWR))等に代表されるリソグラフィー特性に加えて、現像後のレジストパターンのディフェクト(欠陥)の改善が一層必要とされている。
【0003】
特に、パターンの微細化とともにLWRが問題視されている。ベースポリマーや酸発生剤の偏在や凝集の影響や、酸拡散の影響が指摘されている。更に、レジスト膜の薄膜化にしたがってLWRが大きくなる傾向があり、微細化の進行に伴う薄膜化によるLWRの劣化は深刻な問題になっている。
【0004】
極端紫外線(EUV)レジスト組成物においては、高感度化、高解像度化及び低LWR化を同時に達成する必要がある。酸拡散距離を短くするとLWRは小さくなるが、低感度化する。例えば、ポストエクスポージャーベーク(PEB)温度を低くすることによってLWRは小さくなるが、低感度化する。酸拡散抑制剤(クエンチャー)の添加量を増やしてもLWRが小さくなるが、低感度化する。感度とLWRのトレードオフの関係を打ち破ることが必要である。
【0005】
感度とLWRとのトレードオフの関係を打ち破るべく、種々の添加剤が検討されてきた。光酸発生剤や、アミンや弱酸オニウム塩等の酸拡散抑制剤の構造最適化を始め、酸増殖剤の添加による高感度化、また特許文献1に記載の酸によって塩基性が低下する機構を組み込んだオニウム塩型の酸拡散抑制剤の検討等が行われているが、依然として感度とLWRとがともに満足できるようなレジスト組成物の開発には至っていない。
【0006】
高感度化の手段として、EUVの吸収が高い元素の導入が検討されている。分子のEUVの吸収は、主に分子が保有する元素の種類と数に左右され、ハロゲン原子、特にヨウ素原子が炭素原子、水素原子、酸素原子と比較して高い吸収を示すことから、その導入及び構造の最適化が検討されている。
【0007】
また、特許文献2には、ディフェクトが少なく、LWRに優れる酸拡散抑制剤として、下記式で表されるオニウム塩が開示されている。しかし、このようなオニウム塩を酸拡散抑制剤として用いた場合でも、ArFリソグラフィーやEUVリソグラフィーを用いる超微細加工が求められる世代においては、種々のリソグラフィー性能において満足する結果は得られていない。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-142620号公報
【文献】特許第5904180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年の高解像性のレジストパターンの要求に対して、従来の酸拡散抑制剤を用いたレジスト組成物では、感度、CDU、LWR等のリソグラフィー性能が必ずしも満足できない場合がある。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線(EB)、EUV等の高エネルギー線を光源とするフォトリソグラフィーにおいて、高感度であり、かつCDU、LWR等のリソグラフィー性能に優れる化学増幅レジスト組成物、これに使用される酸拡散抑制剤、及び該化学増幅レジスト組成物を用いるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ヨウ素原子を含む所定の構造のカルボン酸オニウム塩化合物を酸拡散抑制剤として用いる化学増幅レジスト組成物が、高感度であり、CDU、LWR等のリソグラフィー性能に優れ、精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記オニウム塩化合物、化学増幅レジスト組成物及びパターン形成方法を提供する。
1.下記式(1)で表されるオニウム塩化合物。
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~12のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。また、R
1及びR
2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
R
f1及びR
f2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも一方は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
L
1は、単結合又は炭素数1~15のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基中の水素原子が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビレン基中の-CH
2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。
L
2は、単結合、エーテル結合又はエステル結合である。
Arは、炭素数3~15の(n+1)価の芳香族基であり、該芳香族基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよい。
nは、1≦n≦5を満たす整数である。
M
+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。)
2.下記式(2)で表される1のオニウム塩化合物。
【化3】
(式中、M
+は、前記と同じ。
n及びmは、1≦n≦5、0≦m≦4及び1≦n+m≦5を満たす整数である。
R
3は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。
R
4は、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~15のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-、-C(=O)-又は-N(R
N)-で置換されていてもよい。R
Nは、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基R
N中の水素原子が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基R
N中の-CH
2-が、-O-、-C(=O)-又は-S(=O)
2-で置換されていてもよい。mが2以上のとき、各R
4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR
4が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。
L
3は、単結合、エーテル結合又はエステル結合である。
L
4は、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビレン基である。)
3.R
3が、水素原子、イソプロピル基、アダマンチル基又は置換されていてもよいフェニル基である2のオニウム塩化合物。
4.L
3及びL
4が、単結合である2又は3のオニウム塩化合物。
5.M
+が、下記式(M-1)~(M-4)のいずれかで表されるカチオンである1~4のいずれかのオニウム塩化合物。
【化4】
(式中、R
M1、R
M2、R
M3、R
M4及びR
M5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~15のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)
2-又は-N(R
N)-で置換されていてもよい。
L
5及びL
6は、それぞれ独立に、単結合、-CH
2-、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)
2-又は-N(R
N)-である。
R
Nは、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-、-C(=O)-又は-S(=O)
2-で置換されていてもよい。
p、q、r、s及びtは、それぞれ独立に、0~5の整数である。pが2以上のとき、各R
M1は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M1が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。qが2以上のとき、各R
M2は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M2が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。rが2以上のとき、各R
M3は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M3が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。sが2以上のとき、各R
M4は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M4が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。tが2以上のとき、各R
M5は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M5が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。)
6.下記式(3)又は(4)で表される5のオニウム塩化合物。
【化5】
(式中、R
M1、R
M2、R
M3、L
5、m、n、p、q及びrは、前記と同じ。
R
5は、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。mが2以上のとき、各R
5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR
5が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)
7.nが、2又は3である6のオニウム塩化合物。
8.1~7のいずれかのオニウム塩化合物からなる酸拡散抑制剤。
9.(A)酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するベースポリマー、(B)光酸発生剤、(C)1~7のいずれかのオニウム塩化合物を含む酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含む化学増幅レジスト組成物。
10.(A')酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、露光により酸を発生する機能を有する繰り返し単位を含むベースポリマー、(C)1~7のいずれかのオニウム塩化合物を含む酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含む化学増幅レジスト組成物。
11.前記ベースポリマーが、下記式(a)で表される繰り返し単位又は下記式(b)で表される繰り返し単位を含むポリマーである9又は10の化学増幅レジスト組成物。
【化6】
(式中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。
X
Aは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は(主鎖)-C(=O)-O-X
A1-である。X
A1は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合又はラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~15のヒドロカルビレン基である。
X
Bは、単結合又はエステル結合である。
AL
1及びAL
2は、それぞれ独立に、酸不安定基である。)
12.前記酸不安定基が、下記式(L1)で表される基である11の化学増幅レジスト組成物。
【化7】
(式中、R
11は、炭素数1~7のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-で置換されてもよい。aは、1又は2である。破線は、結合手である。)
13.前記ベースポリマーが、下記式(c)で表される繰り返し単位を含むポリマーである9~12のいずれかの化学増幅レジスト組成物。
【化8】
(式中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。
Y
Aは、単結合又はエステル結合である。
R
21は、フッ素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。
b及びcは、1≦b≦5、0≦c≦4及び1≦b+c≦5を満たす整数である。)
14.露光により酸を発生する機能を有する繰り返し単位が、下記式(d1)~(d4)で表されるものから選ばれる少なくとも1種である10の化学増幅レジスト組成物。
【化9】
(式中、R
Bは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Z
Aは、単結合、フェニレン基、-O-Z
A1-、-C(=O)-O-Z
A1-又は-C(=O)-NH-Z
A1-である。Z
A1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
Z
B及びZ
Cは、それぞれ独立に、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
Z
Dは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、-O-Z
D1-、-C(=O)-O-Z
D1又は-C(=O)-NH-Z
D1-である。Z
D1は、置換されていてもよいフェニレン基である。
R
31~R
41は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、Z
A、R
31及びR
32のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
33、R
34及びR
35のうちのいずれか2つ、R
36、R
37及びR
38のうちのいずれか2つ又はR
39、R
40及びR
41のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
n
1は、0又は1であるが、Z
Bが単結合のときは0である。n
2は、0又は1であるが、Z
Cが単結合のときは0である。
Xa
-は、非求核性対向イオンである。)
15.9~14のいずれかの化学増幅レジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EB又はEUVで露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
16.現像液としてアルカリ水溶液を用いて、露光部を溶解させ、未露光部が溶解しないポジ型パターンを得る15のパターン形成方法。
17.現像液として有機溶剤を用いて、未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得る15のパターン形成方法。
18.前記現像液が、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル及び酢酸2-フェニルエチルから選ばれる少なくとも1種である17のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のオニウム塩化合物を酸拡散抑制剤として含む化学増幅レジスト組成物は、高感度であり、これを用いてパターン形成を行った場合、CDU、LWR等のリソグラフィー性能に優れるパターンを形成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオマーやジアステレオマーが存在し得るものがあるが、その場合は1つの式でそれらの異性体を代表して表す。これらの異性体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
[オニウム塩化合物]
本発明のオニウム塩化合物は、下記式(1)で表される。
【化10】
【0016】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~12のヒドロカルビル基である。前記炭素数1~12のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。
【0017】
また、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(1)中の炭素原子に結合するものであってもよい。このとき、置換されたヒドロカルビル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、2-メトキシエトキシ基、アセチル基、エチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、メトキシメチルカルボニルオキシ基、(2-メトキシエトキシ)メチルカルボニルオキシ基、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、アセトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
また、R1及びR2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環等が挙げられる。リソグラフィー性能、合成容易性の観点から、R1及びR2のうち一方が水素原子であることが好ましい。一方が水素原子の場合、カルボキシレート部位の周辺が立体的に空いた状態になるので、本発明のオニウム塩化合物が効率よく酸拡散抑制剤として働くと推察される。
【0019】
式(1)中、Rf1及びRf2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも一方は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。特に、Rf1及びRf2が、共にフッ素原子であることが好ましい。
【0020】
式(1)中、L1は、単結合、又は炭素数1~15のヒドロカルビレン基である。前記ヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基等のアルカンジイル基;シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の芳香族ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビレン基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビレン基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。なお、前記ヒドロカルビレン基中の-CH2-は、式(1)中のArに結合するものであってもよい。
【0021】
式(1)中、L2は、単結合、エーテル結合又はエステル結合であるが、エーテル結合又はエステル結合が好ましい。
【0022】
L
1及びL
2がともに単結合の場合は、R
2は、ヒドロキシ基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルカルボニルオキシ基であることが好ましい。すなわち、下記式(1A)で表される構造が好ましい。
【化11】
(式中、R
1、R
f1、R
f2、n及びM
+は、前記と同じ。Arは、後述する。R
2Aは、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~11のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。)
【0023】
式(1)中、Arは、炭素数3~15の(n+1)価の芳香族基である。前記芳香族基は、炭素数3~15の芳香族化合物から芳香環上の(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。炭素数3~15の芳香族化合物としては、ベンゼン、ナフタレン、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、インドール、オキサゾール等が挙げられる。溶解性、保存安定性、感度の観点からベンゼンから誘導される基が好ましい。ベンゼンから誘導される基であると、適度に酸拡散が抑制され、高い感度を維持することが可能となる。また、前記芳香族基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよく、前記置換基としては、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のヒドロカルビル基が挙げられる。前記ヒドロカルビル基は、その-CH2-が、O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、前記芳香族基に結合するものであってもよい。
【0024】
式(1)中、nは、1≦n≦5を満たす整数であるが、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2又は3である。nが1~3の場合、レジスト溶剤への溶解性を損なうことなく、EUVの吸収効率を改善することができ、感度の向上が期待できる。
【0025】
式(1)で表されるオニウム塩化合物としては、下記式(2)で表されるものが好ましい。
【化12】
(式中、M
+は、前記と同じ。)
【0026】
式(2)中、n及びmは、1≦n≦5、0≦m≦4及び1≦n+m≦5を満たす整数である。mは、0、1又は2が好ましい。
【0027】
式(2)中、R3は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。R3としては、水素原子、プロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-メトキシフェニル基が好ましく、水素原子、イソプロピル基、アダマンチル基、フェニル基、4-ヨードフェニル基がより好ましい。
【0028】
式(2)中、R4は、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~15のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-、-C(=O)-又は-N(RN)-で置換されていてもよい。RNは、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基RN中の水素原子が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基RN中の-CH2-が、-O-、-C(=O)-又は-S(=O)2-で置換されていてもよい。すなわち、前記ヒドロカルビル基R4及びRNは、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ラクトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0029】
なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(2)中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。このとき、置換されたヒドロカルビル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、フェノキシ基、2-メトキシエトキシ基、アセチル基、エチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、メトキシメチルカルボニルオキシ基、(2-メトキシエトキシ)メチルカルボニルオキシ基、アダマンチルカルボニルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、アセトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、メトキシカルボニルアミノ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
mが2以上のとき、各R
4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR
4が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。前記環としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、破線は、式(2)中のL
3との結合手である。
【化13】
【0031】
式(2)中、L3は、単結合、エーテル結合又はエステル結合である。
【0032】
式(2)中、L4は、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビレン基である。前記ヒドロカルビレン基は飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル基等のアルカンジイル基;シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;エテン-1,2-ジイル基、1-プロペン-1,3-ジイル基、2-ブテン-1,4-ジイル基、1-メチル-1-ブテン-1,4-ジイル基等のアルケンジイル基;2-シクロヘキセン-1,4-ジイル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の芳香族ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビレン基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビレン基中の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0033】
式(1)及び(2)中、M
+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。特に、下記式(M-1)~(M-4)のいずれかで表されるカチオンが好ましい。
【化14】
【0034】
式(M-1)~(M-4)中、RM1、RM2、RM3、RM4及びRM5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~15のヒドロカルビル基である。
【0035】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。前記炭素数1~15のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等の芳香族ヒドロカルビル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-又は-N(RN)-で置換されていてもよい。RNは、前記と同じである。すなわち、前記ヒドロカルビル基は、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(M-1)~(M-4)中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。このとき、RM1~RM5は、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、ヒドロカルビルカルボニル基、ヒドロカルビルスルホニル基、ヒドロカルビルアミノ基、ヒドロカルビルスルホニルアミノ基、ヒドロカルビルカルボニルアミノ基等となってもよい。
【0036】
式(M-2)及び(M-4)中、L5及びL6は、それぞれ独立に、単結合、-CH2-、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-又は-N(RN)-である。RNは、前記と同じである。
【0037】
式(M-1)~(M-4)中、p、q、r、s及びtは、それぞれ独立に、0~5の整数である。pが2以上のとき、各RM1は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのRM1が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。qが2以上のとき、各RM2は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのRM2が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。rが2以上のとき、各RM3は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのRM3が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。sが2以上のとき、各RM4は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのRM4が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。tが2以上のとき、各RM5は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのRM5が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0038】
式(M-1)で表されるスルホニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化15】
【0039】
【0040】
式(M-2)で表されるスルホニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化17】
【0041】
【0042】
式(M-3)で表されるヨードニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化19】
【0043】
式(M-4)で表されるヨードニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化20】
【0044】
また、式(M-1)又は(M-2)で表されるスルホニウムカチオン以外のスルホニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化21】
【0045】
【0046】
式(2)で表される化合物のうち、下記式(3)又は(4)で表されるものが好ましい。
【化23】
(式中、R
M1、R
M2、R
M3、L
5、m、n、p、q及びrは、前記と同じ。)
【0047】
式(3)及び(4)中、R5は、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(3)又は(4)中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。mが2以上のとき、各R5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR5が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0048】
R5で表されるヒドロカルビル基及び置換されたヒドロカルビル基としては、R4の説明において例示したもののうち炭素数1~10のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、アセトキシ基、アセチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。また、環を形成する場合の構造としては、2つのR4が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に形成される環として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0049】
式(1)で表されるオニウム塩化合物のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基である。
【化24】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
これらのうち、以下に示すものが特に好ましい。
【化36】
【0062】
本発明のオニウム塩化合物の具体的な構造としては、前述したアニオンの具体例とカチオンの具体例とを組み合わせたものが挙げられる。
【0063】
本発明のオニウム塩化合物においてL
2がエステル結合であるものは、例えば、下記スキームAに従って合成することができる。
【化37】
(式中、R
1、R
2、R
f1、R
f2、L
1、Ar、n及びM
+は、前記と同じ。X
0は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。R
0は、炭素数1~5のヒドロカルビル基である。A
-は、アニオンである。)
【0064】
第1工程では、α-ハロ酢酸エステル(1a)とカルボニル化合物とを亜鉛存在下で反応させることにより、中間体化合物(1b)が合成される。この場合、X0が塩素原子又は臭素原子であり、R0がメチル基又はエチル基であるものは、市販品として容易に入手可能である。
【0065】
第2工程では、中間体化合物(1b)と含ヨウ素カルボン酸とのエステル化反応により、中間体化合物(1c)が合成される。エステル化反応には、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド又は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸等の縮合剤を用いることができる。
【0066】
中間体化合物(1c)は、このほかに、含ヨウ素カルボン酸を塩化オキサリルや、塩化チオニルで酸クロリドへと誘導し、塩基性条件下、中間体化合物(1b)と反応させる方法で合成してもよく、含ヨウ素カルボン酸をメタンスルホン酸クロリドや、ピバロイルクロリドを用いて混合酸無水物へと誘導し、塩基性条件下、中間体化合物(1b)と反応させる方法で合成してもよく、トルエン等の有機溶剤中、酸性条件下、中間体化合物(1b)と含ヨウ素カルボン酸を加熱し、脱水縮合させる方法で合成してもよい。
【0067】
第3工程では、中間体化合物(1c)を常法により加水分解処理してR0のエステル部分を切断した後、生じたカルボン酸塩又はカルボン酸を、式M+A-で表される所望のカチオンを有するオニウム塩と塩交換することで、目的物であるオニウム塩化合物(1')が合成される。なお、A-としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メチル硫酸アニオン又はメタンスルホン酸アニオンが、交換反応が定量的に進行しやすいことから好ましい。第3工程の塩交換は、公知の方法で容易に達成され、例えば、特開2007-145797号公報を参考にすることができる。
【0068】
本発明のオニウム塩化合物においてL
2がエーテル結合であるものは、例えば、下記スキームBに従って合成することができる。
【化38】
(式中、R
1、R
2、R
f1、R
f2、L
1、R
0、Ar、n、M
+及びA
-は、前記と同じ。X
00は、脱離基である。)
【0069】
前記方法で中間体化合物(1b)を合成した後、ヒドロキシ基を脱離基X00へと変換し、中間体化合物(1d)とする。脱離基としては、メタンスルホン酸エステルやp-トルエンスルホン酸エステル等が挙げられ、公知の有機化学的反応を用いて誘導可能である。中間体化合物(1d)を、塩基性条件下、アルコール又はフェノールと反応させ、求核置換反応を行うことで中間体化合物(1e)が合成される。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム等の強塩基を使用することができる。中間体化合物(1e)からオニウム塩化合物(1'')への誘導は、前記と同様の方法で可能である。L2がエステル結合であるものに関しても、同様の方法で合成することができる。
【0070】
本発明のオニウム塩化合物においてL
2が単結合であり、R
2が-OR
2Aであるものは、例えば、下記スキームCに従って合成することができる。
【化39】
(式中、R
1、R
2A、R
f1、R
f2、L
1、R
0、X
0、A
-、Ar、n及びM
+は、前記と同じ。)
【0071】
第1工程では、α-ハロ酢酸エステル(1a)と含ヨウ素のカルボニル化合物を亜鉛存在下反応させることにより、中間体化合物(1f)が合成される。この場合、X0が塩素原子又は臭素原子、R0がメチル基又はエチル基の場合が市販で容易に入手可能である。
【0072】
第2工程では、中間体化合物(1f)を常法により加水分解処理してR0のエステル部分を切断した後、生じたカルボン酸塩又はカルボン酸を、式M+A-で表される所望のカチオンを有するオニウム塩と塩交換することで、目的物であるカルボン酸塩(1'')が合成される。なお、A-としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メチル硫酸アニオン又はメタンスルホン酸アニオンが、交換反応が定量的に進行しやすいことから好ましい。
【0073】
また、カルボン酸塩(1'')のヒドロキシル基を公知の有機化学的反応によって修飾することで、目的のカルボン酸塩(1''')へと誘導することもできる。修飾化としては、例えば、塩基性条件下、クロロメチルメチルエーテル等と反応させてアセタール化することができる。また、塩基性条件下、ハロゲン化アルキルや、所望のアルコールのメタンスルホン酸エステル体、p-トルエンスルホン酸エステル体等と反応させてエーテル化することもできる。さらに、所望のカルボン酸を、縮合剤を利用してエステル化することもでき、塩基性条件下、所望のカルボン酸クロリドと反応させてエステル化することもできる。
【0074】
なお、前述した合成方法は、あくまでも一例であり、本発明はこれらに限定されない。
【0075】
本発明のオニウム塩化合物を含む化学増幅レジスト組成物は、感度、LWR及びCDUに優れる。この理由としては、詳細は不明だが、以下のように推察される。本発明のオニウム塩化合物は、アニオンとしてα位がフッ素原子又はトリフルオロメチル基で置換されたカルボン酸アニオンを有する。通常のカルボン酸塩型の酸拡散抑制剤と比較して、共役酸が高い酸性度を有しているため高感度となり、また同様に高い酸性度を有するアルカンスルホン酸型の酸拡散抑制剤と比較して、クエンチ能に優れるため、LWRやCDU等のリソグラフィー性能に優れる。また、アニオンにヨウ素原子を含むことから、EUVを効率良く吸収することが可能である。本発明のオニウム塩化合物を含む化学増幅レジスト組成物は、EUVリソグラフィーにおいて高い感度を有する。さらに、ヨウ素原子は、原子サイズの大きい原子であるため、ヨウ素原子を有する本発明のオニウム塩化合物は、立体的に嵩高くなり、そのため立体障害により酸拡散が抑制され、LWRやCDU等のリソグラフィー性能が改善されると推察される。
【0076】
[化学増幅レジスト組成物]
本発明の化学増幅レジスト組成物は、
(A)酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するベースポリマー、
(B)光酸発生剤、
(C-1)本発明のオニウム塩化合物からなる酸拡散抑制剤、及び
(D)有機溶剤
を必須成分として含み、必要に応じて、
(C-2)本発明のオニウム塩化合物以外の酸拡散抑制剤、
(E)界面活性剤、及び
(F)その他の成分
を含んでもよい。
【0077】
または、(A')酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、露光により酸を発生する機能を有する繰り返し単位を含むベースポリマー、
(C-1)本発明のオニウム塩化合物からなる酸拡散抑制剤、及び
(D)有機溶剤
を必須成分として含み、必要に応じて、
(B)光酸発生剤、
(C-2)本発明のオニウム塩化合物以外の酸拡散抑制剤、
(E)界面活性剤、及び
(F)その他の成分
を含んでもよい。
【0078】
[(A)ベースポリマー]
(A)成分のベースポリマーとしては、下記式(a)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位aともいう。)又は下記式(b)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位bともいう。)を含むポリマーが好ましい。
【化40】
【0079】
式(a)及び(b)中、RAは、水素原子又はメチル基である。XAは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は(主鎖)-C(=O)-O-XA1-である。XA1は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合又はラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~15のヒドロカルビレン基である。XBは、単結合又はエステル結合である。AL1及びAL2は、それぞれ独立に、酸不安定基である。前記ヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0080】
酸不安定基AL1及びAL2としては、特に限定されないが、例えば、炭素数4~20の第3級ヒドロカルビル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1~6のアルキル基であるトリアルキルシリル基、炭素数4~20のオキソアルキル基等である。これら酸不安定基の具体的構造に関する詳細な説明は、特開2014-225005公報の段落[0016]~[0035]が詳しい。
【0081】
酸不安定基AL
1及びAL
2としては、下記式(L1)で表される基が好ましい。
【化41】
【0082】
式(L1)中、R11は、炭素数1~7のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-で置換されていてもよい。aは、1又は2である。破線は、結合手である。
【0083】
酸不安定基AL
1及びAL
2としては、以下に示す基が特に好ましい。
【化42】
(式中、破線は結合手である。)
【0084】
前記酸不安定基を有する繰り返し単位a又はbを含むベースポリマーと本発明のオニウム塩化合物とを含むレジスト組成物は、種々のリソグラフィー性能に優れる。これは、詳細は分からないが以下のように推察できる。式(L1)で表される第3級脂環式ヒドロカルビル基がエステル部位に結合する場合、立体反発に起因して他の鎖状の第3級アルキル基、例えばtert-ブチル基、tert-ペンチル基と比較して酸分解能が高くなる。また、アダマンタン環を有する酸不安定基と比較して、式(L1)で表される酸不安定基は、酸脱離反応が容易に進むため高感度になる傾向がある。そのため、前記第3級脂環式ヒドロカルビル基をレジスト組成物のベースポリマーの極性変化単位に用いた場合、露光部と未露光部との溶解コントラストが増大する。本発明のオニウム塩化合物は、酸拡散抑制剤として作用するが、強酸をクエンチした後に発生するカルボン酸としては比較的酸性度が高いため、高反応性の酸不安定基単位と併用した場合、僅かではあるがクエンチ後に生じる酸が脱離反応を促進し、コントラストの改善に繋がり、結果としてリソグラフィー性能が改善されると推察される。式(b)で表されるような第3級エーテル型の酸不安定基は、通常酸脱離反応性が低いが、フェノールのような酸性度の高いプロトン性ヒドロキシ基共存下では、脱離反応が促進されるため、結果として前記第3級エステル型と同様の効果が得られると推察される。
【0085】
式(a)中のX
Aを変えた構造の具体例としては、特開2014-225005公報の段落[0015]に記載のものが挙げられるが、以下に示すものが好ましい。
【化43】
(式中、R
A及びAL
1は、前記と同じ。)
【0086】
繰り返し単位aとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは前記と同じである。
【化44】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
繰り返し単位bとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは前記と同じである。
【化49】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
なお、前記具体例はXA及びXBが単結合の場合であるが、単結合以外の場合においても同様の酸不安定基と組み合わせることができる。XAが単結合以外のものである場合の具体例は、前述したとおりである。XBがエステル結合であるものの具体例としては、前記具体例において、主鎖とベンゼン環との間の単結合をエステル結合に置き換えたものが挙げられる。
【0096】
前記ベースポリマーは、下記式(c)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位cともいう。)を含むことが好ましい。
【化53】
【0097】
式(c)中、RAは、水素原子又はメチル基である。YAは、単結合又はエステル結合である。
【0098】
式(c)中、R21は、フッ素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。
【0099】
また、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(c)中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。置換されたヒドロカルビル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、2-メトキシエトキシ基、アセチル基、エチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、メトキシメチルカルボニルオキシ基、(2-メトキシエトキシ)メチルカルボニルオキシ基、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、アセトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。R21としては、フッ素原子、ヨウ素原子、メチル基、アセチル基又はメトキシ基が好ましい。
【0100】
式(c)中、b及びcは、1≦b≦5、0≦c≦4及び1≦b+c≦5を満たす整数である。bは1、2又は3が好ましく、cは0、1又は2が好ましい。
【0101】
繰り返し単位cは、基板や下層膜との密着性を向上させる働きを有する。また、酸性度の高いフェノール性ヒドロキシ基を有することから、露光により発生する酸の働きを促進し、高感度化に寄与するとともに、EUV露光においては露光により生じる酸のプロトン供給源となるため、感度の改善が期待できる。
【0102】
繰り返し単位cとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化54】
【0103】
【0104】
【0105】
これらのうち、繰り返し単位cとしては、以下に示すものが好ましい。なお、下記式中、R
Aは前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化57】
【0106】
前記ベースポリマーは、下記式(d1)、(d2)、(d3)及び(d4)のいずれかで表される繰り返し単位(以下、それぞれ繰り返し単位d1~d4ともいう。)を含んでいてもよい。
【化58】
【0107】
式(d1)~(d4)中、RBは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。ZAは、単結合、フェニレン基、-O-ZA1-、-C(=O)-O-ZA1-又は-C(=O)-NH-ZA1-である。ZA1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。ZB及びZCは、それぞれ独立に、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。ZDは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、-O-ZD1-、-C(=O)-O-ZD1又は-C(=O)-NH-ZD1-である。ZD1は、置換されていてもよいフェニレン基である。
【0108】
ZA1で表されるヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル基等のアルカンジイル基;シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;エテン-1,2-ジイル基、1-プロペン-1,3-ジイル基、2-ブテン-1,4-ジイル基、1-メチル-1-ブテン-1,4-ジイル基等のアルケンジイル基;2-シクロヘキセン-1,4-ジイル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の芳香族ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビレン基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビレン基中の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0109】
ZB及びZCで表されるヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、ZA1で表されるヒドロカルビレン基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0110】
式(d1)~(d4)中、R31~R41は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基等のヘテロアリール基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。これらのうち、アリール基が好ましい。また、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0111】
ZA及びR31~R41は、フェニル基を含み、かつ該フェニル基が式中のS+と結合している構造が好ましい。
【0112】
また、ZA、R31及びR32のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33、R34及びR35のうちのいずれか2つ、R36、R37及びR38のうちのいずれか2つ又はR39、R40及びR41のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0113】
式(d2)中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0114】
式(d2)中、n1は、0又は1であるが、ZBが単結合のときは0である。式(d3)中、n2は、0又は1であるが、ZCが単結合のときは0である。
【0115】
式(d1)中、Xa
-は、非求核性対向イオンである。前記非求核性対向イオンとしては、特に限定されないが、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;トリフレートイオン、1,1,1-トリフルオロエタンスルホネートイオン、ノナフルオロブタンスルホネートイオン等のフルオロアルキルスルホネートイオン;トシレートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、4-フルオロベンゼンスルホネートイオン、1,2,3,4,5-ペンタフルオロベンゼンスルホネートイオン等のアリールスルホネートイオン;メシレートイオン、ブタンスルホネートイオン等のアルキルスルホネートイオン;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミドイオン等のイミドイオン;トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドイオン等のメチドイオン等が挙げられ、好ましくは、下記式(d1-1)又は(d1-2)で表されるアニオンである。
【化59】
【0116】
式(d1-1)及び(d1-2)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0117】
式(d1-1)で表されるアニオンとしては、特開2014-177407号公報の段落[0100]~[0101]に記載されたものや、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
HFは前記と同じである。
【化60】
【0118】
【0119】
【0120】
式(d1-2)で表されるアニオンとしては、特開2010-215608号公報の段落[0080]~[0081]に記載されたものや、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Acはアセチル基である。
【化63】
【0121】
【0122】
繰り返し単位d2中のアニオンとしては、特開2014-177407号公報の段落[0021]~[0026]に記載されたものが挙げられる。また、RHFが水素原子であるアニオンの具体的な構造としては、特開2010-116550号公報の段落[0021]~[0028]に記載されたもの、RHFがトリフルオロメチル基の場合のアニオンの具体的な構造としては、特開2010-77404号公報の段落[0021]~[0027]に記載されたものが挙げられる。
【0123】
繰り返し単位d3中のアニオンとしては、繰り返し単位d2中のアニオンの具体例において、-CH(RHF)CF2SO3
-の部分を-C(CF3)2CH2SO3
-に置き換えたものが挙げられる。
【0124】
繰り返し単位d2~d4のアニオンの好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Bは前記と同じである。
【化65】
【0125】
繰り返し単位d2~d4中のスルホニウムカチオンの具体的な構造としては、特開2008-158339号公報の段落[0223]に記載されたものや、式(1)中のM
+で表されるスルホニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化66】
【0126】
繰り返し単位d1~d4は、光酸発生剤の機能を有する。繰り返し単位d1~d4を含むベースポリマーを用いる場合、後述する添加型光酸発生剤の配合を省略し得る。
【0127】
前記ベースポリマーは、更に、他の密着性基として、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基、ラクトン環、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、シアノ基又はカルボキシ基を含む繰り返し単位(以下、繰り返し単位eともいう。)を含んでいてもよい。
【0128】
繰り返し単位eとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化67】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
繰り返し単位eとしては、これら以外にも、特開2014-225005号公報の段落[0045]~[0053]に記載されたものを挙げることができる。
【0133】
これらのうち、繰り返し単位eとしてはヒドロキシ基又はラクトン環を有するものが好ましく、例えば、以下に示すものが好ましい。
【化71】
【0134】
前記ベースポリマーは、更に他の繰り返し単位として、酸不安定基によりヒドロキシ基が保護された構造を有する繰り返し単位を含んでもよい。このような繰り返し単位としては、酸不安定基によりヒドロキシ基が保護された構造を1つ以上有し、酸の作用により保護基が分解し、ヒドロキシ基が生成するものであれば特に限定されないが、具体的には特開2014-225005号公報の段落[0055]~[0065]に記載されたものや、特開2015-214634号公報の段落[0110]~[0115]に記載されたものが挙げられる。
【0135】
前記ベースポリマーは、更に前述したもの以外の他の繰り返し単位を含んでもよい。他の繰り返し単位としては、オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位が挙げられる。オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位を含むことによって、露光部が架橋するために、露光部分の残膜特性とエッチング耐性が向上する。
【0136】
前記ベースポリマーは、更に他の繰り返し単位として、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体等の環状オレフィン類;無水イタコン酸等の不飽和酸無水物;スチレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルナフタレン、アセトキシスチレン、アセナフチレン等のビニル芳香族類;その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0137】
前記ベースポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000~500,000が好ましく、3,000~100,000がより好ましく、4,000~20,000が更に好ましい。Mwが前記範囲であれば、エッチング耐性が極端に低下することがなく、露光前後の溶解速度差が確保できるため解像性が良好である。なお、本発明においてMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。また、分散度(Mw/Mn)は、1.20~2.50が好ましく、1.30~2.00がより好ましい。
【0138】
前記ポリマーの合成方法としては、例えば、各種繰り返し単位を与えるモノマーのうち、所望のモノマー1種あるいは複数種を、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱して重合を行う方法が挙げられる。このような重合方法は、特開2015-214634号公報の段落[0134]~[0137]に詳しい。また、酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、重合後保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0139】
前記ポリマーにおいて、各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)とすることができるが、これに限定されない。
(I)繰り返し単位a及びbから選ばれる1種又は2種以上を好ましくは10~70モル%、より好ましくは20~65モル%、更に好ましくは30~60モル%含み、必要に応じ、
(II)繰り返し単位cの1種又は2種以上を好ましくは0~90モル%、より好ましくは15~80モル%、更に好ましくは30~60モル%含み、必要に応じ、
(III)繰り返し単位d1~d4から選ばれる1種又は2種以上を好ましくは0~30モル%、より好ましくは0~20モル%、更に好ましくは0~15モル%含み、必要に応じ、
(IV)繰り返し単位e及び他の繰り返し単位から選ばれる1種又は2種以上を好ましくは0~80モル%、より好ましくは0~70モル%、更に好ましくは0~50モル%含むことができる。
【0140】
(A)成分のベースポリマーは、1種単独で使用してもよく、組成比率、Mw及び/又はMw/Mnが異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、(A)成分のベースポリマーとして、前記ポリマーに加えて、開環メタセシス重合体の水素添加物を含んでいてもよい。開環メタセシス重合体の水素添加物としては、特開2003-66612号公報に記載のものを用いることができる。
【0141】
[(B)光酸発生剤]
本発明のレジスト組成物は、前記ベースポリマーが繰り返し単位d1~d4から選ばれる少なくとも1つを含まない場合、必須成分として(B)光酸発生剤(以下、添加型光酸発生剤ともいう。)を含む。なお、前記ベースポリマーが繰り返し単位d1~d4から選ばれる少なくとも1つを含む場合であっても、添加型光酸発生剤は含まれていてもよい。
【0142】
前記添加型光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であれば特に限定されない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシジカルボキシイミド、O-アリ-ルスルホニルオキシム、O-アルキルスルホニルオキシム等の光酸発生剤等が挙げられる。具体的には、例えば、特開2007-145797号公報の段落[0102]~[0113]に記載された化合物、特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]に記載された化合物、特開2014-001259号公報の段落[0081]~[0092]に記載された化合物、特開2012-41320号公報に記載された化合物、特開2012-153644号公報に記載された化合物、特開2012-106986号公報に記載された化合物、特開2016-018007号公報に記載された化合物等が挙げられる。これらの公報に記載の部分フッ素化スルホン酸発生型の光酸発生剤は、特にArFリソグラフィーにおいて、発生酸の強度や拡散長が適度であり、好ましく使用される。
【0143】
(B)成分の光酸発生剤の好ましい例として、下記式(5A)で表されるスルホニウム塩又は下記式(5B)で表されるヨードニウム塩が挙げられる。
【化72】
【0144】
式(5A)及び(5B)中、R101、R102、R103、R104及びR105は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基としては、式(d1)~(d4)中のR31~R41の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。また、R101、R102及びR103のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R104及びR105が、互いに結合してこれらが結合するヨウ素原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環としては、式(M-1)の説明において、RM1、RM2及びRM3のいずれか2つが互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に形成する環として例示したものや、式(M-2)の説明において、RM4及びRM5が互いに結合してこれらが結合するヨウ素原子と共に形成する環として例示したものと同様のものが挙げられる。R101~R105は、フェニル基を含み、かつ該フェニル基が式中のS+又はI+に結合している構造が好ましい。
【0145】
式(5A)で表されるスルホニウム塩のスルホニウムカチオンに関しては、特開2014-001259号公報の段落[0082]~[0085]に詳しい。また、その具体例としては、特開2007-145797号公報の段落[0027]~[0033]に記載されたもの、特開2010-113209号公報の段落[0059]に記載されたもの、特開2012-41320号公報に記載されたもの、特開2012-153644号公報に記載されたもの、特開2012-106986号公報に記載されたものや、式(1)中のM+で表されるスルホニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0146】
式(5A)で表されるスルホニウム塩のカチオンとしては、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化73】
【0147】
式(5A)で表されるスルホニウム塩のカチオンとしては、特に、トリフェニルスルホニウムカチオン、S-フェニルジベンゾチオフェニウムカチオン、(4-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオン、(4-フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオン、(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオンが好ましい。
【0148】
式(5B)で表されるヨードニウム塩のカチオンとしては、式(1)中のM+で表されるヨードニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられ、ジフェニルヨードニウムカチオン又はジ-tert-ブチルフェニルヨードニウムカチオンが特に好ましい。
【0149】
式(5A)及び(5B)中、Xb
-は、下記式(6A)又は(6B)で表されるアニオンである。
【化74】
【0150】
式(6A)及び(6B)中、Rfaは、フッ素原子、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。Rfbは炭素数1~40のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。
【0151】
式(6A)で表されるアニオンとしては、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、ノナフルオロブタンスルホネートアニオン又は下記式(6A')で表されるアニオンが好ましい。
【化75】
【0152】
式(6A')中、R111は、水素原子又はトリフルオロメチル基であるが、好ましくはトリフルオロメチル基である。R112は、炭素数1~35のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。式(6A')で表されるアニオンに関しては、特開2007-145797号公報、特開2008-106045号公報、特開2009-007327号公報、特開2009-258695号公報、特開2012-181306号公報に詳しい。式(6A)で表されるアニオンとしては、これらの公報に記載されたアニオンや、式(d1-1)で表されるアニオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0153】
式(6B)で表されるアニオンに関しては、特開2010-215608号公報や、特開2014-133723号公報に詳しい。式(6B)で表されるアニオンとしては、これらの公報に記載のアニオンや、式(d1-2)で表されるアニオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。なお、式(6B)で表されるアニオンを有する光酸発生剤は、スルホ基のα位にフッ素原子を有していないが、β位に2つのトリフルオロメチル基を有していることに起因して、ベースポリマー中の酸不安定基を切断するのに十分な酸性度を有している。そのため、光酸発生剤として使用することができる。
【0154】
Xb
-で表されるアニオンとしては、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、式中、R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【化76】
【0155】
【0156】
式(5A)又は(5B)で表される光酸発生剤の具体的な構造としては、前述したアニオンの具体例とカチオンの具体例との任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
(B)成分の光酸発生剤の他の好ましい例として、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
【化78】
【0158】
式(7)中、R201及びR202は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビル基である。R203は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。また、R201、R202及びR203のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。LAは、単結合、エーテル結合、エステル結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビレン基中の-CH2-は、式(7)中の炭素原子及び/又はR203に結合するものであってもよい。X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0159】
式(7)で表される化合物としては、特に、下記式(7')で表されるものが好ましい。
【化79】
【0160】
式(7')中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基であるが、好ましくはトリフルオロメチル基である。R301、R302及びR303は、それぞれ独立に、炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(7')中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。x及びyは、それぞれ独立に、0~5の整数であり、zは、0~4の整数である。
【0161】
式(7)又は(7')で表される光酸発生剤に関しては、特開2011-16746号公報に詳しい。また、これらの具体例としては、前記公報に記載されたスルホニウム塩や、特開2015-214634号公報の段落[0149]~[0150]に記載されたスルホニウム塩が挙げられる。
【0162】
式(7)で表される光酸発生剤としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
HFは、前記と同じであり、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化80】
【0163】
(B)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、1~30質量部が好ましく、2~25質量部がより好ましく、4~20質量部が更に好ましい。含有量が前記範囲であれば、解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれがない。(B)成分の光酸発生剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0164】
[(C)酸拡散抑制剤]
本発明のレジスト組成物は、(C)成分として酸拡散抑制剤を含む。(C)成分は、式(1)で表されるオニウム塩化合物を必須成分(C-1)として含むが、式(1)で表されるオニウム塩化合物以外の酸拡散抑制剤(C-2)を含んでもよい。なお、本発明において酸拡散抑制剤とは、光酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物を意味する。
【0165】
酸拡散抑制剤(C-2)としては、アミン化合物や、α位がフッ素化されていないスルホン酸又はカルボン酸等の弱酸オニウム塩が挙げられる。
【0166】
前記アミン化合物としては、第1級、第2級又は第3級アミン化合物、特に、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基及びスルホン酸エステル結合のいずれかを有するアミン化合物が挙げられる。また、酸拡散抑制剤としてカーバメート基で保護された第1級又は第2級アミン化合物も挙げることができる。このような保護されたアミン化合物は、レジスト組成物中、塩基に対して不安定な成分があるときに有効である。このような酸拡散抑制剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載された化合物、特許第3790649号公報に記載された化合物や、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化81】
【0167】
【0168】
α位がフッ素化されていないスルホン酸又はカルボン酸のオニウム塩としては、下記式(8A)又は(8B)で表されるものが挙げられる。
【化83】
【0169】
式(8A)中、Rq1は、水素原子、メトキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。ただしスルホ基のα位の炭素原子上の水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基に置換されたものを除く。
【0170】
式(8B)中、Rq2は、水素原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
【0171】
式(8A)及び(8B)中、Mq
+は、オニウムカチオンである。前記オニウムカチオンとしては、下記式(9A)、(9B)又は(9C)で表されるものが好ましい。
【化84】
【0172】
式(9A)~(9C)中、R401~R409は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。また、R401及びR402、R404及びR405又はR406及びR407は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子、ヨウ素原子又は窒素原子と共に環を形成してもよい。
【0173】
Rq1で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基等のヘテロアリール基;4-ヒドロキシフェニル基等のヒドロキシフェニル基;4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基等のアルキルフェニル基;メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基;メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、n-プロポキシナフチル基、n-ブトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基;ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基;ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基;2-フェニル-2-オキソエチル基、2-(1-ナフチル)-2-オキソエチル基、2-(2-ナフチル)-2-オキソエチル基等の2-アリール-2-オキソエチル基等のアリールオキソアルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0174】
Rq2で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、Rq1の具体例として例示した置換基のほか、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-メチル-1-ヒドロキシエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)-1-ヒドロキシエチル基等の含フッ素アルキル基、ペンタフルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基等の含フッ素アリール基が挙げられる。
【0175】
式(8A)で表されるスルホン酸オニウム塩及び式(8B)で表されるカルボン酸オニウム塩に関しては、特開2008-158339号公報、特開2010-155824号公報に詳しい。また、これらの化合物の具体例としては、これらの公報に記載されたものが挙げられる。
【0176】
式(8A)で表されるスルホン酸オニウム塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化85】
【0177】
式(8B)で表されるカルボン酸オニウム塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化86】
【0178】
式(9A)で表されるカチオン及び式(9B)で表されるカチオンとしては、それぞれ式(M-1)で表されるカチオン及び式(M-2)で表されるカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられ、また、式(9C)で表されるカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、トリメチルベンジルカチオン、トリメチルフェニルカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいカチオンとしては、以下に示すものが挙げられる。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化87】
【0179】
式(8A)で表されるスルホン酸オニウム塩及び式(8B)で表されるカルボン酸オニウム塩の具体例としては、前述したアニオン及びカチオンの任意の組み合わせが挙げられる。なお、これらのオニウム塩は、既知の有機化学的方法を用いたイオン交換反応によって容易に調製される。イオン交換反応ついては、例えば特開2007-145797号公報を参考にすることができる。
【0180】
式(8A)又は(8B)で表されるオニウム塩は、本発明において酸拡散抑制剤として作用する。これは、前記オニウム塩化合物の各カウンターアニオンが、弱酸の共役塩基であることに起因する。ここでいう弱酸とは、ベースポリマーに含まれる酸不安定基含有単位の酸不安定基を脱保護させることができない酸性度のものを意味する。式(8A)又は(8B)で表されるオニウム塩は、α位がフッ素化されているスルホン酸のような強酸の共役塩基をカウンターアニオンとして有するオニウム塩型光酸発生剤と併用させたときに、酸拡散抑制剤として機能する。すなわち、α位がフッ素化されているスルホン酸のような強酸を発生するオニウム塩と、フッ素置換されていないスルホン酸や、カルボン酸のような弱酸を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見掛け上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0181】
式(8A)又は(8B)で表されるオニウム塩化合物において、Mq+がスルホニウムカチオン(9A)又はヨードニウムカチオン(9B)であるオニウム塩は、特に光分解性があるため、光強度が強い部分のクエンチ能が低下するとともに、光酸発生剤由来の強酸の濃度が増加する。これにより露光部分のコントラストが向上し、LWRやCDUに優れたパターンを形成することが可能となる。
【0182】
また、酸不安定基が酸に対して特に敏感なアセタール基である場合は、保護基を脱離させるための酸は必ずしもα位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸でなくてもよく、α位がフッ素化されていないスルホン酸でも脱保護反応が進行する場合がある。この場合の酸拡散抑制剤としては、アミン化合物や、式(8B)で表されるカルボン酸オニウム塩を用いることが好ましい。
【0183】
また、酸拡散抑制剤として、前記オニウム塩のほかに、弱酸のベタイン型化合物を使用することもできる。その具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化88】
【0184】
また、酸拡散抑制剤として、前述した化合物のほかに、アニオンとしてCl-、Br-、NO3
-を有するスルホニウム塩又はヨードニウム塩を使用することもできる。その具体例としては、トリフェニルスルホニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニウムナイトレート等が挙げられる。これらのアニオンは共役酸の沸点が低いため、強酸のクエンチ後に生じる酸がPEB等で容易にレジスト膜から除去される。レジスト膜中から酸が系外に除去されるため、高度に酸拡散が抑制され、コントラストが改善できる。
【0185】
前記酸拡散抑制剤として、含窒素置換基を有する光分解性オニウム塩を使用することもできる。前記光分解性オニウム塩は、未露光部では酸拡散抑制剤として機能し、露光部は自身からの発生酸との中和によって酸拡散抑制能を失う、いわゆる光崩壊性塩基として機能する。光崩壊性塩基を用いることによって、露光部と未露光部のコントラストをより強めることができる。光崩壊性塩基としては、例えば特開2009-109595号公報、特開2012-46501号公報、特開2013-209360号公報等を参考にすることができる。
【0186】
前記光分解性オニウム塩のアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【化89】
【0187】
前記光分解性オニウム塩のカチオンの具体例としては、式(1)中のM
+で表されるカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化90】
【0188】
前記光分解性オニウム塩の具体例としては、前記アニオンとカチオンとを組み合わせたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
(C)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、2~30質量部が好ましく、2.5~20質量部がより好ましく、4~15質量部が更に好ましい。前記範囲で酸拡散抑制剤を配合することで、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させたりすることができる。また、酸拡散抑制剤を添加することで、基板密着性を向上させることもできる。なお、(C)成分の含有量とは、式(1)で表されるオニウム塩化合物からなる酸拡散抑制剤に加えて、式(1)で表されるオニウム塩化合物以外の酸拡散抑制剤の含有量も合わせた合計の含有量のことである。(C)酸拡散抑制剤中、式(1)で表されるオニウム塩化合物は、50~100質量%含まれることが好ましい。(C)成分の酸拡散抑制剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0190】
[(D)有機溶剤]
本発明の化学増幅レジスト組成物は、(D)成分として有機溶剤を含んでもよい。前記有機溶剤としては、前述した各成分や後述する各成分が溶解可能な有機溶剤であれば特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載のシクロヘキサノン、メチル-2-n-ペンチルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類及びこれらの混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0191】
本発明においては、これらの有機溶剤の中でも、光酸発生剤の溶解性が特に優れている1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン及びその混合溶剤が好ましく使用される。特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(X成分)を含み、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン及びγ-ブチロラクトンの4種の溶剤(Y成分)のうち、1種又は2種を混合した溶剤系であり、X成分とY成分との比が90:10~60:40の範囲にある混合溶剤が好ましい。
【0192】
(D)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、100~8,000質量部が好ましく、400~6,000質量部がより好ましい。
【0193】
[(E)界面活性剤]
本発明のレジスト組成物は、前記成分以外に、(E)成分として、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を含んでもよい。
【0194】
(E)成分の界面活性剤は、好ましくは、水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤、あるいは水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤である。このような界面活性剤としては、特開2010-215608号公報や特開2011-16746号公報に記載のものを参照することができる。
【0195】
前記水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤としては、前記公報に記載の界面活性剤の中でもFC-4430(スリーエム社製)、サーフロン(登録商標)S-381(AGCセイミケミカル(株)製)、オルフィン(登録商標)E1004(日信化学工業(株)製)、KH-20、KH-30(AGCセイミケミカル(株)製)、下記式(surf-1)で表されるオキセタン開環重合物等が好ましい。
【化91】
【0196】
ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは、前述の記載にかかわらず、式(surf-1)のみに適用される。Rは、2~4価の炭素数2~5の脂肪族基である。前記脂肪族基としては、2価のものとしてはエチレン基、1,4-ブチレン基、1,2-プロピレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、1,5-ペンチレン基等が挙げられ、3価又は4価のものとしては下記のものが挙げられる。
【化92】
(式中、破線は、結合手であり、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
【0197】
これらの中でも、1,4-ブチレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基等が好ましい。
【0198】
Rfは、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基であり、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは、0~3の整数であり、nは、1~4の整数であり、nとmの和はRの価数であり、2~4の整数である。Aは、1である。Bは、2~25の整数であり、好ましくは4~20の整数である。Cは、0~10の整数であり、好ましくは0又は1である。また、式(surf-1)中の各構成単位は、その並びを規定したものではなく、ブロック的に結合してもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては、米国特許第5650483号明細書等に詳しい。
【0199】
水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、ArF液浸露光においてレジスト保護膜を用いない場合、レジスト膜の表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する。そのため、レジスト膜からの水溶性成分の溶出を抑えて露光装置へのダメージを下げるために有用であり、また、露光後、PEB後のアルカリ水溶液現像時には可溶化し、ディフェクトの原因となる異物にもなり難いため有用である。このような界面活性剤は、水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な性質であり、ポリマー型の界面活性剤であって、疎水性樹脂とも呼ばれ、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。
【0200】
このようなポリマー型界面活性剤としては、下記式(10A)~(10E)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【化93】
【0201】
式(10A)~(10E)中、RCは、水素原子又はメチル基である。W1は、-CH2-、-CH2CH2-若しくは-O-、又は互いに分離した2個の-Hである。Rs1は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。Rs2は、単結合又は炭素数1~5のアルカンジイル基である。Rs3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基である。Rs3がヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基の場合、その炭素-炭素結合間に、-O-又は-C(=O)-が介在していてもよい。Rs4は、炭素数1~20の(u+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基である。uは1~3の整数である。Rs5は、それぞれ独立に、水素原子又は下記式
-C(=O)-O-Rs5A
(式中、Rs5Aは、炭素数1~20のフッ素化ヒドロカルビル基である。)
で表される基である。Rs6は、炭素数1~15のヒドロカルビル基又は炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基であり、炭素-炭素結合間に、-O-又は-C(=O)-が介在していてもよい。
【0202】
前記ポリマー型界面活性剤は、更に、式(10A)~(10E)で表される繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含んでいてもよい。その他の繰り返し単位としては、メタクリル酸やα-トリフルオロメチルアクリル酸誘導体等から得られる繰り返し単位が挙げられる。ポリマー型界面活性剤中、式(10A)~(10E)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中、20モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、100モル%が更に好ましい。
【0203】
前記水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、特開2008-122932号公報、特開2010-134012号公報、特開2010-107695号公報、特開2009-276363号公報、特開2009-192784号公報、特開2009-191151号公報、特開2009-98638号公報、特開2010-250105号公報、特開2011-42789号公報も参照できる。
【0204】
(E)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、0~20質量部が好ましい。(E)成分を含む場合は、好ましくは0.001~15質量部、より好ましくは0.01~10質量部である。(D)成分の界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記界面活性剤は、特開2007-297590号公報に詳しい。
【0205】
[(F)その他の成分]
本発明の化学増幅レジスト組成物は、(F)その他成分として、酸により分解して酸を発生する化合物(酸増殖化合物)、有機酸誘導体、フッ素置換アルコール、架橋剤、酸の作用により現像液への溶解性が変化する重量平均分子量3,000以下の化合物(溶解阻止剤)、アセチレンアルコール類等を含んでいてもよい。具体的には、前記酸増殖化合物に関しては、特開2009-269953号公報、特開2010-215608号公報に詳しく、その含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、0~5質量部が好ましく、0~3質量部がより好ましい。含有量が多すぎると、酸拡散制御が難しく、解像性の劣化やパターン形状の劣化を招く可能性がある。その他の添加剤に関しては、特開2008-122932号公報の段落[0155]~[0182]、特開2009-269953号公報、特開2010-215608号公報に詳しい。
【0206】
式(1)で表されるオニウム塩化合物を酸拡散抑制剤として含む本発明の化学増幅レジスト組成物であれば、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EB、EUV等の高エネルギー線を光源としたフォトリソグラフィーにおいて、高い酸拡散抑制能を示し、かつ高コントラストなパターン形成が可能となり、CDUや、LWR、感度等のリソグラフィー性能に優れた化学増幅レジスト組成物となる。
【0207】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法は、前述したレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を、高エネルギー線で露光する工程、及び前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程を含む。
【0208】
前記基板としては、例えば、集積回路製造用の基板(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、SiO2等)を用いることができる。
【0209】
レジスト膜は、例えば、スピンコーティング等の方法で膜厚が好ましくは10~2,000nmとなるようにレジスト組成物を基板上に塗布し、これをホットプレート上で好ましくは60~180℃、10~600秒間、より好ましくは70~150℃、15~300秒間プリベークすることで形成することができる。
【0210】
レジスト膜の露光は、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光又はEUVを用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~200mJ/cm2、より好ましくは10~100mJ/cm2となるように照射することで行うことができる。EBを用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて又は直接、露光量が好ましくは1~300μC/cm2、より好ましくは10~200μC/cm2となるように照射する。
【0211】
なお、露光は、通常の露光法のほか、屈折率1.0以上の液体をレジスト膜と投影レンズとの間に介在させて行う液浸法を用いることも可能である。その場合には、水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0212】
前記水に不溶な保護膜は、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1つはレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ水溶液現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1つはアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去とともに保護膜を除去するアルカリ水溶液可溶型である。後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール残基を有するポリマーをベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8~12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。前述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8~12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料とすることもできる。
【0213】
露光後、必要に応じて加熱処理(PEB)を行ってもよい。PEBは、例えば、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~5分間、より好ましくは80~140℃、1~3分間加熱することで行うことができる。
【0214】
現像は、例えば、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液、又は有機溶剤現像液を用い、好ましくは0.1~3分間、より好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により行うことができる。
【0215】
アルカリ水溶液を現像液として用いてポジ型パターンを形成する方法に関しては、特開2011-231312号公報の段落[0138]~[0146]に詳しく、有機溶剤を現像液として用いてネガ型パターンを形成する方法に関しては、特開2015-214634号公報の段落[0173]~[0183]に詳しい。
【0216】
また、パターン形成方法の手段として、レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0217】
更に、ダブルパターニング法でパターンを形成することもできる。ダブルパターニング法としては、1回目の露光とエッチングで1:3トレンチパターンの下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3トレンチパターンを形成して1:1のパターンを形成するトレンチ法、1回目の露光とエッチングで1:3孤立残しパターンの第1の下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3孤立残しパターンを第1の下地の下に形成された第2の下地を加工してピッチが半分の1:1のパターンを形成するライン法が挙げられる。
【0218】
また、有機溶剤含有現像液を用いたネガティブトーン現像によってホールパターンを形成する場合、X軸及びY軸方向の2回のラインパターンのダイポール照明を用いて露光を行うことで、最もコントラストが高い光を用いることができる。また、X軸及びY軸方向の2回のラインパターンのダイポール照明にs偏光照明を加えると、更にコントラストを上げることができる。これらのパターン形成方法は、特開2011-221513号公報に詳しい。
【0219】
本発明のパターン形成方法の現像液に関して、アルカリ水溶液の現像液としては、例えば、前述したTMAH水溶液や、特開2015-180748号公報の段落[0148]~[0149]に記載のアルカリ水溶液が挙げられ、好ましくは2~3質量%TMAH水溶液である。
【0220】
有機溶剤現像の現像液としては、例えば、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2-フェニルエチル等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0221】
現像後のホールパターンやトレンチパターンを、サーマルフロー、RELACS(Resolution Enhancement Lithography Assisted by Chemical Shrink)技術、DSA(Directed Self-Assembly)技術等でシュリンクすることもできる。ホールパターン上にシュリンク剤を塗布し、ベーク中のレジスト層からの酸触媒の拡散によってレジストの表面でシュリンク剤の架橋が起こり、シュリンク剤がホールパターンの側壁に付着する。ベーク温度は、好ましくは70~180℃、より好ましくは80~170℃で、ベーク時間は10~300秒である。最後に、余分なシュリンク剤を除去し、ホールパターンを縮小させる。
【0222】
本発明の式(1)で表されるオニウム塩化合物を酸拡散抑制剤として含む化学増幅レジスト組成物を用いることで、CDUや、LWR、感度等のリソグラフィー性能に優れた微細なパターンを容易に形成することができる。
【実施例】
【0223】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、下記例において、Mwは、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤として用いたGPCによるポリスチレン換算測定値である。
【0224】
[実施例1-1]酸拡散抑制剤Q-1の合成
(1)化合物SM-2の合成
【化94】
【0225】
2,3,5-トリヨード安息香酸450g、N,N-ジメチルホルムアミド3.3g及びクロロホルム3,150gを混合した後、60℃に加熱し、塩化チオニル214gを滴下した。終夜攪拌した後、反応液を50℃で減圧濃縮した。ヘキサン900gを加えて2時間攪拌し、結晶化させた後、得られた固体を濾別してヘキサンで4回洗浄することで、2,3,5-トリヨード安息香酸クロリド386gを湿結晶として得た。
得られた2,3,5-トリヨード安息香酸クロリド343g、化合物SM-1 100g及び塩化メチレン1,500gを混合した後、氷冷下、トリエチルアミン77g、N,N-ジメチルアミノピリジン9.3g及び塩化メチレン100gの混合溶液を滴下した。室温で終夜攪拌した後、トリエチルアミン10gを加え、更に2,3,5-トリヨード安息香酸クロリド43g及び塩化メチレン250gの混合溶液を滴下し、室温で終夜攪拌した。2.5質量%塩酸1,500gを加えて30分間攪拌し、反応をクエンチした。析出した固体を濾別し、有機層を回収した。得られた有機層を純水1,200gで3回洗浄した後、活性炭17gを加えて1時間攪拌した。活性炭を濾別した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1,200gで1回、及び純水1,200gで3回洗浄した。その後、有機層を減圧濃縮することで、目的の化合物SM-2を赤色の油状物として得た(収量360g)。
【0226】
【0227】
化合物SM-2 360g及びジオキサン1,080gの混合溶液に、25質量%TMAH水溶液189.7gを室温で滴下した。終夜攪拌した後、反応液を減圧濃縮した。濃縮液に塩化メチレン2,050g、純水1,000g及びベンジルトリメチルアンモニウムクロリド113.6gを加え、室温で20分間攪拌した。有機層を分取し、そこへメタノール100gを添加し、活性炭15gを加え、室温で終夜攪拌した。活性炭を濾別した後、濾液を減圧濃縮した。濃縮液にジイソプロピルエーテル1,300mLを加えて1.5時間攪拌し、固体を析出させた。析出した固体を濾別し、固体をジイソプロピルエーテルで1回洗浄し、粗結晶415gを得た。得られた粗結晶にメタノール330gを加えて溶解し、純水2,000g及びジイソプロピルエーテル300mLを加えて終夜攪拌した。析出した固体を濾過し、ジイソプロピルエーテルで1回洗浄し、得られた固体を60℃で減圧乾燥することで、目的の化合物SM-3を固体として得た(収量286g、二工程収率68%)。
【0228】
【0229】
化合物SM-3 198g、塩化メチレン1,200g及びメタノール66gを混合して攪拌し、化合物SM-3が完全に溶解したところで活性炭6.6gを添加し、終夜攪拌した。攪拌終了後、活性炭を濾別し、得られた溶液にトリフェニルスルホニウムメチルサルフェート102.1g及び純水300gを加え、室温で1.5時間攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層を純水300gで4回、希シュウ酸水溶液300gで2回、純水300gで3回、希アンモニア水300gで2回、純水300gで5回、及び25質量%メタノール水溶液400gで4回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、ジイソプロピルエーテル600g中に濃縮液を加えて攪拌し、結晶を析出させた。析出後、1時間攪拌を行い、固体を濾別し、ジイソプロピルエーテルで1回洗浄し、50℃で減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-1を固体として得た(収量230.1g、収率91%)。Q-1のスペクトルデータを以下に示す。
【0230】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.93 (3H, d), 1.00 (3H, d), 2.14 (1H, m), 5.37 (1H, m), 7.70 (1H, d), 7.75-7.87 (15H, m), 8.37 (1H, d) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -113.1 (1F, dd), -109.9 (1F, dd) ppm
IR (D-ATR): ν= 3059, 2968, 1737, 1652, 1520, 1476, 1447, 1381, 1269, 1232, 1184, 1102, 1034, 997, 939, 821, 796, 749, 700, 684, 502 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+263.1 (C18H15S+相当)
NEGATIVE M-648.8 (C13H10F2I3O4
-相当)
【0231】
[実施例1-2]酸拡散抑制剤Q-2の合成
【化97】
【0232】
化合物SM-3 371g、塩化メチレン2,400g及びメタノール150gを混合して攪拌し、化合物SM-3が完全に溶解したところで活性炭11gを添加し、終夜攪拌した。攪拌終了後、活性炭を濾別し、得られた溶液に(4-フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムメチルサルフェート190g及び純水840gを加え、室温で1時間攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層を純水600gで2回、希シュウ酸水溶液600gで1回、純水600gで3回、希アンモニア水600gで2回、純水600gで3回、及び20質量%メタノール水溶液600gで3回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、ジイソプロピルエーテル1,000g中に濃縮液を加えて攪拌し、結晶を析出させた。析出後、1時間攪拌を行い、固体を濾別し、ジイソプロピルエーテルで1回洗浄し、50℃で減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-2を固体として得た(収量348g、収率82%)。Q-2のスペクトルデータを以下に示す。
【0233】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.93 (3H, d), 0.99 (3H, d), 2.14 (1H, m), 5.37 (1H, m), 7.64-7.68 (2H, m), 7.70 (1H, d), 7.75-7.87 (10H, m), 7.91-7.95 (2H, m), 8.37 (1H, d) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -113.1 (1F, dd), -109.9 (1F, dd), -104.6 (1F, m) ppm
IR (D-ATR): ν= 3058, 2969, 1737, 1652, 1587, 1521, 1492, 1476, 1446, 1392, 1269, 1235, 1184, 1102, 1034, 997, 939, 843, 821, 796, 748, 696, 683, 525, 504 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+281.1 (C18H14FS+相当)
NEGATIVE M-648.8 (C13H10F2I3O4
-相当)
【0234】
[実施例1-3]酸拡散抑制剤Q-3の合成
【化98】
【0235】
化合物SM-2 8.5g(純度83質量%)、テトラヒドロフラン18g及び純水18gを混合した後、25質量%TMAH水溶液5.9gを滴下し、終夜攪拌した。攪拌終了後、メチルイソブチルケトン60g、純水60g、メタノール20g及びS-フェニルジベンゾチオフェニウムメチルサルフェート8gを加えて攪拌し、有機層を分取した。前記有機層を純水40gで5回、及び25質量%メタノール水溶液40gで3回洗浄した。有機層を50℃で減圧濃縮し、濃縮液にジイソプロピルエーテル80gを加えて30分間攪拌し、固体を析出させた。析出した固体を濾別し、ジイソプロピルエーテルで2回洗浄し、50℃で減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-3を固体として得た(収量7.5g、収率77%)。Q-3のスペクトルデータを以下に示す。
【0236】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.93 (3H, d), 1.00 (3H, d), 2.14 (1H, m), 5.38 (1H, m), 7.55-7.62 (4H, m), 7.68 (1H, m), 7.70 (1H, d), 7.74 (2H, m), 7.95 (2H, m), 8.37 (1H, d), 8.38 (2H, d), 8.51 (2H, dd) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -113.1 (1F, dd), -109.9 (1F, dd) ppm
IR (D-ATR): ν= 3061, 2966, 1736, 1647, 1520, 1475, 1448, 1429, 1383, 1268, 1233, 1184, 1102, 1034, 997, 940, 895, 872, 821, 796, 758, 706, 680, 526, 489 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+261.1 (C18H13S+相当)
NEGATIVE M-648.8 (C13H10F2I3O4
-相当)
【0237】
[実施例1-4]酸拡散抑制剤Q-17の合成
(1)化合物SM-5の合成
【化99】
【0238】
粉末亜鉛3.6gをテトラヒドロフラン30mLに分散させた後、50℃に加熱した。1,2-ジブロモエタン0.21gを添加して還流条件下加熱攪拌することで、亜鉛を活性化させた。その後50℃まで内温を下げ、化合物SM-4 20.8g、ブロモジフルオロ酢酸エチル12.2g及びテトラヒドロフラン80mLの混合溶液を滴下した。50℃で5.5時間攪拌した後、氷冷し、20質量%塩酸12.0gを加えて反応をクエンチした。更に、トルエン150mL及び2質量%塩酸50gを加えて攪拌し、有機層を分取した。得られた有機層を2質量%塩酸50gで2回、及び純水50gで5回洗浄し、有機層を減圧濃縮した。得られたオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、ヘキサン300mLで晶析を行った。析出した固体を濾別し、減圧乾燥することで、目的の化合物SM-5を白色固体として得た(収量17.2g、収率63.8%)。
【0239】
【0240】
化合物SM-5 16.2g及びジオキサン64gの混合溶液に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液19.2gを室温で滴下した。45℃に昇温し、終夜攪拌した。反応液を冷却した後、20質量%塩酸24.1gを加えて反応をクエンチした。酢酸エチル100mL及びトルエン50mLを加えて攪拌した後、有機層を分取し、得られた有機層を、純水30mLで4回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、アセトンに溶解し、ヘキサン150mLを加えて晶析を行った。析出した固体を濾別し、ヘキサン30mLで洗浄した後、減圧乾燥することで、目的の化合物SM-6を固体として得た(収量15.3g、二工程収率92%)。
【0241】
【0242】
化合物SM-6 5.6g、炭酸水素ナトリウム0.84g、メチルイソブチルケトン30g及び純水6gを混合して攪拌した後、減圧濃縮した。濃縮液に、ジフェニル(4-フルオロフェニル)スルホニウム=ブロミド4.3g、メチルイソブチルケトン40g、1-ブタノール10g及び純水20gを加えて攪拌した。その後、有機層を分取し、得られた有機層を純水20gで5回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、塩化メチレン80g及びメタノール10gを加えて溶解し、活性炭素0.4gを加えて終夜攪拌した。活性炭素を濾別し、濾液を減圧濃縮した。濃縮液にアセトン16gを加えて溶解し、ジイソプロピルエーテル50mLを加えて攪拌した後、上澄み液を除去した。残渣のオイルにヘキサン50mLを加えて攪拌した後、上澄み液を除去した。更に、メチルイソブチルケトン150mL及び塩化メチレン50mLを加えて攪拌して固体を析出させた。析出した固体を濾別し、減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-17を固体として得た(収量6.6g、収率88%)。Q-17のスペクトルデータを以下に示す。
【0243】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 4.71 (1H, dd), 7.22 (1H, br), 7.64-7.69 (4H, m), 7.75-7.87 (10H, m), 7.91-7.95 (2H, m), 9.52 (1H, br) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -115.7 (1F, dd), -110.7 (1F, dd) -104.6 (1F, m) ppm
IR (D-ATR): ν= 3271, 3054, 1641, 1589, 1493, 1477, 1447, 1392, 1321, 1268, 1246, 1178, 1161, 1112, 1094, 1063, 1000, 847, 818, 779, 741, 701, 681, 630, 526, 504, 493, 459 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+281.1 (C18H14FS+相当)
NEGATIVE M-468.8 (C9H5F2I2O4
-相当)
【0244】
[実施例1-5]酸拡散抑制剤Q-20の合成
【化102】
【0245】
化合物SM-6 5.6g、炭酸水素ナトリウム0.84g、メチルイソブチルケトン30g及び純水6gを混合して攪拌した後、減圧濃縮した。濃縮液に、化合物SM-7 4.6g、メチルイソブチルケトン40g、1-ブタノール10g及び純水20gを加えて10分間攪拌した。その後、有機層を分取し、得られた有機層を純水20gで5回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、塩化メチレン40gを加えて溶解し、活性炭素0.4gを加えて5時間攪拌した。活性炭素を濾別し、濾液を減圧濃縮した。濃縮液にアセトン10gを加えて溶解し、メチルイソブチルケトン100mL及びジイソプロピルエーテル50mLを加えて攪拌した後、上澄み液を除去した。残渣のオイルにジイソプロピルエーテル150mLを加えて攪拌して固体を析出させた。析出した固体を濾別し、減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-20を固体として得た(収量6.5g、収率73.7%)。Q-20のスペクトルデータを以下に示す。
【0246】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 1.32 (3H, s), 1.52-1.72 (6H, m), 1.93 (2H, m), 4.70 (1H, dd), 7.22 (1H, br), 7.39 (1H, ddd), 7.53 (1H, dd), 7.67 (1H, dd), 7.67 (2H, s), 7.74-7.88 (10H, m), 9.57 (1H, br) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -122.1 (1F, m), -115.7 (1F, dd), -110.7 (1F, dd) ppm
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+379.2 (C24H24FOS+相当)
NEGATIVE M-468.8 (C9H5F2I2O4
-相当)
【0247】
[実施例1-6]酸拡散抑制剤Q-21の合成
【化103】
【0248】
化合物SM-3 4.7g、化合物SM-8 2.5g、メチルイソブチルケトン40g及び純水20gを混合し、室温で1時間攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層を純水20gで5回洗浄した後、減圧濃縮した。濃縮液を塩化メチレン30gで溶解し、活性炭素0.3gを加えて終夜攪拌した。活性炭素を濾別した後、濾液を減圧濃縮し、得られた濃縮液にジイソプロピルエーテル50mLを加えて晶析を行った。析出した固体を濾別し、減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-21を固体として得た(収量5.3g、収率93.4%)。Q-21のスペクトルデータを以下に示す。
【0249】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.93 (3H, d), 0.99 (3H, d), 2.13 (1H, m), 5.37 (1H, m), 7.22 (1H, m), 7.35 (1H, dd), 7.54 (1H, dd), 7.67 (1H, d), 7.72-7.79 (8H, m), 7.80-7.85 (2H, m), 8.37 (1H, d), 12.4 (1H, br) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -127.7 (1F, m), -113.2 (1F, dd), -110.3 (1F, dd) ppm
IR (D-ATR): ν= 3062, 2969, 1734, 1644, 1603, 1576, 1519, 1475, 1446, 1393, 1367, 1268, 1233, 1210, 1183, 1120, 1103, 1042, 998, 940, 897, 871, 821, 796, 747, 698, 683, 600, 508, 495 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+297.1 (C18H14FOS+相当)
NEGATIVE M-648.8 (C13H10F2I3O4
-相当)
【0250】
[実施例1-7]酸拡散抑制剤Q-22の合成
【化104】
【0251】
化合物SM-3 21.0g、化合物SM-9 12.8g、メチルイソブチルケトン100g及び純水70gを混合し、室温で終夜攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層に、化合物SM-9 1.1g及び純水55gを加えて2回追加塩交換を行った。その後、純水50gで5回洗浄した後、減圧濃縮した。濃縮液を塩化メチレン100gで溶解し、活性炭素1.3gを加えて終夜攪拌した。活性炭素を濾別した後、濾液を減圧濃縮することで、目的の酸拡散抑制剤Q-22を淡黄色の油状物として得た(収量28.9g、収率99%)。Q-22のスペクトルデータを以下に示す。
【0252】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.93 (3H, d), 1.00 (3H, d), 2.14 (1H, m), 5.37 (1H, m), 7.70 (1H, d), 7.76-7.81 (6H, m), 7.83-7.88 (6H, m), 7.96 (2H, m), 8.38 (1H, d) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -113.1 (1F, dd), -109.9 (1F, dd), -57.9 (3F, s) ppm
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+347.1 (C19H14F3OS+相当)
NEGATIVE M-648.8 (C13H10F2I3O4
-相当)
【0253】
[実施例1-8]酸拡散抑制剤Q-23の合成
(1)化合物SM-10の合成
【化105】
【0254】
4-ヨード安息香酸109.1g、N,N-ジメチルホルムアミド0.3g及びトルエン400gを混合した後、40℃に加熱し、オキサリルクロリド67.0gを滴下した。3.5時間攪拌した後、反応液を50℃で減圧濃縮することで、4-ヨード安息香酸クロリド118.0gを固体として得た。
得られた4-ヨード安息香酸クロリド118.0g、化合物SM-1 78.5g及び塩化メチレン520gを混合した後、氷冷下、トリエチルアミン56.7g、N,N-ジメチルアミノピリジン4.9g及び塩化メチレン80gの混合溶液を滴下した。室温で終夜攪拌した後、氷冷下、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mL及び純水100mLを加えて反応をクエンチした。有機層を分取し、4質量%塩酸200gで1回、純水200gで1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mLで1回、及び純水200gで2回洗浄した。得られた有機層に活性炭素12.2gを加えて終夜攪拌した後、活性炭を濾別し、濾液を減圧濃縮することで、目的の化合物SM-10を油状物として得た(収量151.4g、収率84.6%)。
【0255】
【0256】
化合物SM-10 199.7g及びジオキサン200gの混合溶液に、25質量%TMAH水溶液154.5gを室温で滴下した。終夜攪拌した後、反応液を減圧濃縮した。濃縮液に塩化メチレン500g、純水250g及びベンジルトリメチルアンモニウムクロリド124.2gを加え、室温で10分間攪拌した。有機層を分取し、純水250gで3回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、濃縮液にジイソプロピルエーテル1,000mLを加えて攪拌した後、上澄み液を除去した。残った油状物にヘキサン500mLを加えて攪拌した後、上澄み液を除去した。油状物をメタノールに溶解し、減圧濃縮することで、目的の化合物SM-11を油状物として得た(収量214.6g、二工程収率83.2%)。
【0257】
【0258】
化合物SM-11 111g、塩化メチレン500g、トリフェニルスルホニウムメチルサルフェート83.7g、29質量%アンモニア水2.5g及び純水350gを加え、室温で1時間攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層を純水300gで3回、希シュウ酸水溶液300gで2回、純水300gで2回、希アンモニア水300gで2回、純水300gで3回、及び25質量%メタノール水溶液300gで3回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、tert-ブチルメチルエーテル380g中に濃縮液を加えて攪拌し、上澄み液を除去した。残った油状物に対してPGMEA130gを加えて攪拌し、固体を析出させ、更に、tert-ブチルメチルエーテル380gを加えて攪拌した後、固体を濾別し、減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-23を固体として得た(収量96.2g、収率73.8%)。Q-23のスペクトルデータを以下に示す。
【0259】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.87 (3H, d), 0.92 (3H, dd), 2.13 (1H, m), 5.46 (1H, ddd), 7.72 (2H, m), 7.75-7.87 (15H, m), 7.94 (2H, m) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -115.2 (1F, dd), -107.7 (1F, dd) ppm
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+263.1 (C18H15S+相当)
NEGATIVE M-397.0 (C13H12F2IO4
-相当)
【0260】
[実施例1-9]酸拡散抑制剤Q-24の合成
【化108】
【0261】
化合物SM-3 150.0g、化合物SM-12 104.5g、塩化メチレン1160g及び純水740gを混合し、室温で1時間攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層を純水280gで4回洗浄した後、有機層に活性炭素9.0gを加えて終夜攪拌した。活性炭素を濾別した後、有機層を希シュウ酸水溶液280gで2回、純水280gで3回、希アンモニア水280gで2回、及び純水280gで4回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮することで、目的の酸拡散抑制剤Q-24を油状物として得た(収量160.7g、収率88.6%)。Q-24のスペクトルデータを以下に示す。
【0262】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.93 (3H, d), 1.00 (3H, d), 2.14 (1H, m), 5.37 (1H, m), 7.66 (6H, m), 7.70 (1H, d), 7.93 (6H, m), 8.38 (1H, d) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -113.1 (1F, dd), -109.9 (1F, dd), -104.7 (3F, m) ppm
IR (D-ATR): ν= 3399, 3098, 3053, 2969, 2880, 1737, 1709, 1652, 1586, 1521, 1491, 1394, 1364, 1268, 1240, 1185, 1161, 1102, 1035, 1006, 939, 839, 797, 747, 701, 519 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+317.1 (C18H12F3S+相当)
NEGATIVE M-648.8 (C13H10F2I3O4
-相当)
【0263】
[実施例1-10]酸拡散抑制剤Q-25の合成
【化109】
【0264】
化合物SM-3 20.0g、化合物SM-13 12.4g、メチルイソブチルケトン110g、メタノール11g及び純水63gを混合し、室温で1時間攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層を純水50gで3回、20質量%メタノール水溶液100gで3回、希アンモニア水50gで1回、及び20質量%メタノール水溶液50gで7回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮した後、濃縮液にジイソプロピルエーテル70gを加えて攪拌した後、上澄み液を除去した。残った油状物に対してヘキサン100gを添加し、終夜攪拌することで固体を析出させた。析出した固体を濾別し、減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-25を固体として得た(収量15.9g、収率64.8%)。Q-25のスペクトルデータを以下に示す。
【0265】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.93 (3H, d), 0.99 (3H, d), 1.30 (9H, s), 2.14 (1H, m), 5.37 (1H, m), 7.70 (1H, d), 7.73-7.82 (12H, m), 7.82-7.87 (2H, m), 8.37 (1H, d) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -113.1 (1F, dd), -109.9 (1F, dd) ppm
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+319.2 (C22H23S+相当)
NEGATIVE M-648.8 (C13H10F2I3O4
-相当)
【0266】
[実施例1-11]酸拡散抑制剤Q-26の合成
【化110】
【0267】
化合物SM-11 120g、塩化メチレン875g、ジフェニル(4-フルオロフェニル)スルホニウムメチルサルフェート112.2g及び純水400gを加え、室温で1時間攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層を純水200gで5回、希シュウ酸水溶液300gで2回、純水300gで3回、希アンモニア水300gで2回、純水300gで4回、及び20質量%メタノール水溶液300gで4回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、PGMEA120gを加えて溶解し、ヘキサン600gを添加して20分間攪拌した。攪拌後、上澄み液を除去し、残った油状物にヘキサン500gを添加して攪拌した後、上澄み液を除去した。その後、残った油状物を減圧濃縮することで、目的の酸拡散抑制剤Q-26を油状物として得た(収量150g、収率92.6%)。Q-26のスペクトルデータを以下に示す。
【0268】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.87 (3H, d), 0.92 (3H, dd), 2.13 (1H, m), 5.46 (1H, ddd), 7.67 (2H, m), 7.72 (2H, m), 7.75-7.87 (10H, m), 7.91-7.96 (4H, m) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -115.2 (1F, dd), -107.8 (1F, d), -104.6 (1F, m) ppm
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+281.1 (C18H14FS+相当)
NEGATIVE M-397.0 (C13H12F2IO4
-相当)
【0269】
[実施例1-12]酸拡散抑制剤Q-27の合成
【化111】
【0270】
化合物SM-11 11.1g、塩化メチレン80g、ジフェニル(4-トリフルオロメチルフェニル)スルホニウムメチルサルフェート10.2g及び純水20gを加え、室温で30分攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層を純水20gで3回、希シュウ酸水溶液20gで2回、純水20gで2回、希アンモニア水20gで1回、及び純水20gで4回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、ジイソプロピルエーテル50gを添加して攪拌した後、上澄み液を除去した。残渣にヘキサン50gを添加して攪拌した後、上澄み液を除去した。残ったオイルをメチルイソブチルケトン40gに溶解し、20質量%メタノール水溶液25gで3回洗浄した。有機層を減圧濃縮することで、目的の酸拡散抑制剤Q-27を油状物として得た(収量8.9g、収率50.6%)。Q-27のスペクトルデータを以下に示す。
【0271】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.87 (3H, d), 0.92 (3H, dd), 2.13 (1H, m), 5.46 (1H, ddd), 7.72 (2H, m), 7.76-7.81 (6H, m), 7.83-7.88 (6H, m), 7.94 (2H, m), 7.96 (2H, m) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -115.2 (1F, dd), -107.6 (1F, dd), -57.9 (3F, s) ppm
IR (D-ATR): ν= 3402, 3061, 2969, 1724, 1652, 1587, 1479, 1447, 1393, 1263, 1213, 1178, 1113, 1102, 1038, 1009, 926, 882, 846, 795, 753, 683, 529, 502 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+347.1 (C19H14F3S+相当)
NEGATIVE M-397.0 (C13H12F2IO4
-相当)
【0272】
[実施例1-13]酸拡散抑制剤Q-28の合成
【化112】
【0273】
化合物SM-11 11.5g、塩化メチレン485g、化合物SM-14 9.9g及び純水225gを加え、室温で2時間攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層を純水100gで6回、及び10質量%メタノール水溶液100gで2回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、メチルイソブチルケトンを加えて再度減圧濃縮することで溶剤を置換し、ジイソプロピルエーテル90gを添加して攪拌した後、上澄み液を除去した。残渣にジイソプロピルエーテル90gを添加し、攪拌して固体を析出させた。固体を濾過、減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-28を固体として得た(収量12.6g、収率83.7%)。Q-28のスペクトルデータを以下に示す。
【0274】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.89 (3H, d), 0.93 (3H, dd), 2.14 (1H, m), 5.46 (1H, ddd), 7.12 (2H, m), 7.60-7.66 (4H, m), 7.68 (2H, m), 7.72 (2H, m), 7.82-7.87 (4H, m), 7.93 (2H, m), 11.81 (1H, br) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -115.1 (1F, dd), -108.2 (1F, d), -105.5 (1F, m) ppm
IR (D-ATR): ν= 3413, 3100, 3061, 2971, 2880, 2797, 2681, 2595, 1723, 1645, 1587, 1492, 1393, 1301, 1266, 1241, 1177, 1162, 1102, 1073, 1042, 1009, 943, 882, 838, 794, 753, 682, 658, 626, 519, 433 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+315.1 (C18H13F2OS+相当)
NEGATIVE M-397.0 (C13H12F2IO4
-相当)
【0275】
[実施例1-14]酸拡散抑制剤Q-29の合成
【化113】
【0276】
化合物SM-3 12.9g、塩化メチレン350g、化合物SM-14 7.3g及び純水165gを加え、室温で1時間攪拌した後、有機層を分取した。前記有機層を純水100gで3回、及び10質量%メタノール水溶液100gで3回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、メチルイソブチルケトンを加えて再度減圧濃縮することで溶剤を置換し、ジイソプロピルエーテル80gを添加して固体を析出させた。析出した固体を濾別し、減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-29を固体として得た(収量13.4g、収率81.3%)。Q-29のスペクトルデータを以下に示す。
【0277】
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= 0.94 (3H, d), 1.01 (3H, d), 2.15 (1H, m), 5.38 (1H, ddd), 7.13 (2H, m), 7.60-7.65 (4H, m), 7.68 (2H, m), 7.69 (1H, d), 7.82-7.87 (4H, m), 8.37 (1H, d), 11.92 (1H, br) ppm
19F-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ= -113.1 (1F, dd), -110.3 (1F, dd), -105.4 (1F, m) ppm
IR (D-ATR): ν= 3398, 3099, 3062, 2970, 2880, 2798, 2681, 2597, 1738, 1645, 1587, 1574, 1522, 1491, 1396, 1300, 1267, 1238, 1183, 1161, 1102, 1072, 1042, 1005, 941, 896, 872, 835, 797, 771, 745, 701, 519, 433 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+315.1 (C18H13F2OS+相当)
NEGATIVE M-648.8 (C13H10F2I3O4
-相当)
【0278】
[実施例1-15~1-29]酸拡散抑制剤Q-4~Q-16、Q-18及びQ-19の合成
実施例1-1~1-14を参考に、以下に示す酸拡散抑制剤Q-4~Q-16、Q-18及びQ-19を合成した。
【化114】
【0279】
【0280】
[合成例1]ポリマーP-1の合成
窒素雰囲気下、メタクリル酸1-tert-ブチルシクロペンチル22g、メタクリル酸2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル17g、V-601(和光純薬工業(株)製)0.48g、2-メルカプトエタノール0.41g及びメチルエチルケトン50gをとり、単量体-重合開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコにメチルエチルケトン23gをとり、攪拌しながら80℃まで加熱した後、前記単量体-重合開始剤溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間攪拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を激しく攪拌したメタノール640g中に滴下し、析出した固体を濾別した。前記固体をメタノール240gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥することで、白色粉末状のポリマーP-1を得た(収量36g、収率90%)。GPCにて分析したところ、ポリマーP-1のMwは8,500、Mw/Mnは1.63であった。
【化116】
【0281】
[合成例2~5]ポリマーP-2~P-5の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例1と同様の方法で、下記ポリマーP-2~P-5を合成した。
【化117】
【0282】
[実施例2-1~2-68、比較例1-1~1-26]化学増幅レジスト組成物の調製
下記表1~4に示す各成分を、界面活性剤Polyfox636(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解させ、得られた溶液を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することで、化学増幅レジスト組成物を調製した。
【0283】
なお、表1~4中、光酸発生剤PAG-1~PAG-4、溶剤、比較用の酸拡散抑制剤Q-A~Q-J及びアルカリ可溶型界面活性剤SF-1は、以下のとおりである。
・光酸発生剤PAG-1~PAG-4
【化118】
【0284】
・溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
GBL(γ-ブチロラクトン)
CyHO(シクロヘキサノン)
DAA(ジアセトンアルコール)
【0285】
【0286】
・アルカリ可溶型界面活性剤SF-1:ポリ(メタクリル酸2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロ-1-イソブチル-1-ブチル・メタクリル酸9-(2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチルオキシカルボニル)-4-オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン-5-オン-2-イル)
Mw=7,700
Mw/Mn=1.82
【化120】
【0287】
【0288】
【0289】
【0290】
【0291】
[実施例3-1~3-10、比較例2-1~2-8]ArFリソグラフィー評価
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学(株)製ARC-29A)を塗布し、180℃で60秒間ベークして反射防止膜(膜厚100nm)を形成した。各レジスト組成物(R-1~R-7、R-66~R-68、CR-1~CR-8)を前記反射防止膜上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。ArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製NSR-S610C、NA=1.30、σ0.94/0.74、Dipole-35deg照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて液浸露光を行った。なお、液浸液としては水を用いた。その後、85℃で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%TMAH水溶液で60秒間現像を行い、ラインアンドスペース(LS)パターンを形成した。
【0292】
現像後のLSパターンを、(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(CG5000)で観察し、感度及びLWRを下記方法に従って評価した。結果を表5に示す。
【0293】
[感度評価]
感度として、ライン幅40nm、ピッチ80nmのLSパターンが得られる最適露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。この値が小さいほど感度が高い。
【0294】
[LWR評価]
Eopで照射して得たLSパターンを、ラインの長手方向に10箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をLWRとして求めた。この値が小さいほど、ラフネスが小さく均一なライン幅のパターンが得られる。
本評価においては、良(〇):2.5nm以下、不良(×):2.5nmより大きい、とした。
【0295】
【0296】
表5に示した結果より、本発明の化学増幅レジスト組成物は、感度とLWRとのバランスに優れ、ArF液浸リソグラフィーの材料として好適であることが示された。
【0297】
[実施例4-1~4-58、比較例3-1~3-18]EUVリソグラフィー評価
各レジスト組成物(R-8~R-65、CR-9~CR-26)を、信越化学工業(株)製ケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を膜厚20nmで形成したシリコン基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて105℃で60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を作製した。これを、ASML社製EUVスキャナーNXE3300(NA0.33、σ0.9/0.6、クアドルポール照明、ウエハー上寸法がピッチ46nm、+20%バイアスのホールパターンのマスク)を用いて露光し、ホットプレート上で90℃で60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で30秒間現像を行い、寸法23nmのホールパターンを形成した。
【0298】
現像後のホールパターンを、(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(CG5000)で観察し、感度及びCDUを下記方法に従って評価した。結果を表6~8に示す。
【0299】
[感度評価]
感度として、ホール寸法が23nmで形成されるときの最適露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。この値が小さいほど感度が高い。
【0300】
[CDU評価]
Eopで照射して得たホールパターンを、同一露光量ショット内50箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をCDUとして求めた。この値が小さいほど、ホールパターンの寸法均一性が優れる。
本評価においては、良(〇):3.0nm以下、不良(×):3.0nmより大きい、とした。
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
表6~8に示した結果より、本発明の化学増幅レジスト組成物は、高感度であり、かつCDUに優れ、EUVリソグラフィーの材料として好適であることが示された。