IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-二次電池用積層体の製造方法 図1
  • 特許-二次電池用積層体の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】二次電池用積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240709BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240709BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240709BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M10/052
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020501645
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2019003729
(87)【国際公開番号】W WO2019163489
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018032347
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅信
(72)【発明者】
【氏名】大西 益弘
(72)【発明者】
【氏名】古賀 大士
(72)【発明者】
【氏名】田中 慶一朗
【審査官】村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138770(JP,A)
【文献】特表2004-527095(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021263(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/081035(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、セパレータとを貼り合わせてなる二次電池用積層体の製造方法であって、
前記電極および前記セパレータの少なくとも一方の貼り合わせ面に断面形状が凹形状または凹凸形状の接着材料を形成する工程(A)と、
前記工程(A)の後、前記接着材料が形成された貼り合わせ面に他の部材を接触させることなく、前記電極および前記セパレータを貼り合わせ開始位置まで搬送する工程(B)と、
前記工程(B)の後、前記貼り合わせ面を介して前記電極と前記セパレータとを貼り合わせる工程(C)と、
を含み、
前記工程(A)では、前記接着材料の形成を、前記接着材料と溶媒とを含む接着用組成物をインクジェット法により前記貼り合わせ面に供給することにより行い、
前記接着用組成物の表面張力が20mN/m以上65mN/m以下であり、
前記工程(A)における前記接着材料の形成量が0.1g/m以上100g/m以下である、二次電池用積層体の製造方法。
【請求項2】
前記接着材料が重合体からなる、請求項1に記載の二次電池用積層体の製造方法。
【請求項3】
前記重合体が、ガラス転移温度が25℃以下の低Tg重合体を含む、請求項2に記載の二次電池用積層体の製造方法。
【請求項4】
前記接着用組成物に含まれている直径10μm以上の粗大粒子の量が100ppm以下である、請求項1~3の何れかに記載の二次電池用積層体の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A)では、貼り合わせ面上の一箇所以上に前記接着材料を形成し、
前記接着材料の形成面積が、一箇所当たり、25μm以上250000μm以下である、請求項1~4の何れかに記載の二次電池用積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの二次電池は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そして、二次電池は、一般に、正極、負極、および、正極と負極とを隔離して正極と負極との間の短絡を防ぐセパレータなどの電池部材を備えている。
【0003】
ここで、二次電池の製造プロセスにおいては、電解液に浸漬する前の電極とセパレータとを圧着させて積層体(以下、「二次電池用積層体」と称することがある。)とし、必要に応じて所望のサイズに切断したり、積層、折畳または巻回したりすることがある。そして、当該切断、積層、折畳または巻回の際には、圧着された電極とセパレータとが位置ズレなどを起こし、不良の発生、生産性の低下といった問題を生じることがある。
【0004】
そこで、近年では、表面に接着層を有するセパレータを用いることにより、二次電池の製造プロセスにおいて電極とセパレータとを良好に接着させる技術が提案されている。具体的には、例えば特許文献1では、無機物粒子およびバインダー高分子を含むコーティング溶液を多孔性基材上に塗布して乾燥することにより多孔性コーティング層を形成した後、当該多孔性コーティング層の表面に所定の表面エネルギーおよび接触角を有するバインダー溶液を塗布して乾燥することにより、多孔性基材上に多孔性コーティング層および接着層を有するセパレータを製造し、二次電池の組み立てに用いている。
【0005】
また、一般に、接着層を有するセパレータ等の接着層を有する電池部材は、接着層を形成した後、二次電池用積層体の形成に用いられるまで、ロール状に巻き取った状態で保管されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2014-534570号公報
【文献】特開2015-41603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、接着層を有する電池部材は、ロール状に巻き取った状態で保管すると、接着層を介して隣接する電池部材同士が膠着(ブロッキング)する虞がある。そして、電池部材同士が膠着すると、ロールから接着層を有する電池部材を繰り出して二次電池用積層体を製造する際に、膠着した電池部材同士を剥離する作業が必要になったり、接着層が剥離したりして、生産性が低下する。
【0008】
そこで、本発明は、電極とセパレータとを貼り合わせてなる二次電池用積層体を、電極とセパレータとの接着力を確保しつつ効率的に製造し得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、電極とセパレータとを貼り合わせてなる二次電池用積層体を製造するに当たり、貼り合わせ面に形成する接着材料の量を所定の範囲内にすると共に、接着材料を形成後、接着材料が形成された貼り合わせ面に他の部材を接触させることなく電極とセパレータとを貼り合わせれば、電極とセパレータとの接着力を確保しつつ二次電池用積層体を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池用積層体の製造方法は、電極と、セパレータとを貼り合わせてなる二次電池用積層体の製造方法であって、前記電極および前記セパレータの少なくとも一方の貼り合わせ面に接着材料を形成する工程(A)と、前記工程(A)の後、前記接着材料が形成された貼り合わせ面に他の部材を接触させることなく、前記電極および前記セパレータを貼り合わせ開始位置まで搬送する工程(B)と、前記工程(B)の後、前記貼り合わせ面を介して前記電極と前記セパレータとを貼り合わせる工程(C)とを含み、前記工程(A)における前記接着材料の形成量が0.1g/m以上100g/m以下であることを特徴とする。このように、工程(A)において形成する接着材料の量を所定の範囲内にすると共に、工程(B)および工程(C)において接着材料が形成された貼り合わせ面に他の部材を接触させることなく電極とセパレータとを貼り合わせれば、電極とセパレータとを十分に接着させつつ、接着材料を形成した電池部材(電極および/またはセパレータ)を一旦ロール状に巻き取って保管等する場合と比較し、二次電池用積層体を効率的に製造することができる。
ここで、本発明において、「貼り合わせ開始位置」とは、電極とセパレータとの貼り合わせに当たり、電極の貼り合わせ面とセパレータの貼り合わせ面とを当接させる位置を指す。また、本発明において、「接着材料の形成量」とは、貼り合わせ面の単位面積当たりに形成される接着材料の量を指し、貼り合わせ面上に形成された接着材料の質量を、当該接着材料が形成された貼り合わせ面の面積で割ることにより算出することができる。なお、「貼り合わせ面の面積」とは、電極とセパレータとを貼り合わせた際に互いに当接する部分の面積を指す(即ち、電極およびセパレータの一方が他方よりも小さい場合には、電極およびセパレータの貼り合わせ面の面積は、小さい側の貼り合わせ面の面積と一致する)。
【0011】
ここで、本発明の二次電池用積層体の製造方法は、前記接着材料が重合体からなることが好ましい。重合体からなる接着材料を用いれば、電極とセパレータとを良好に接着させることができる。
【0012】
また、本発明の二次電池用積層体の製造方法は、前記重合体が、ガラス転移温度が25℃以下の低Tg重合体を含むことが好ましい。低Tg重合体を含む重合体を接着材料として使用すれば、電極とセパレータとの接着強度を更に高めることができる。
なお、本発明において、「ガラス転移温度」は、JIS K7121に従って測定することができる。
【0013】
更に、本発明の二次電池用積層体の製造方法は、前記工程(A)では、前記接着材料と溶媒とを含む接着用組成物を前記貼り合わせ面に供給し、前記接着用組成物に含まれている直径10μm以上の粗大粒子の量が100ppm以下であることが好ましい。粗大粒子の量が上記上限値以下であれば、二次電池用積層体を用いて作製した二次電池のエネルギー密度を高めることができる。
ここで、本発明において、「粗大粒子の量」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
【0014】
また、本発明の二次電池用積層体の製造方法は、前記工程(A)では、貼り合わせ面上の一箇所以上に前記接着材料を形成し、前記接着材料の形成面積が、一箇所当たり、25μm以上250000μm以下であることが好ましい。接着材料の一箇所当たりの形成面積が上記範囲内であれば、電極とセパレータとを良好に接着させつつ、二次電池用積層体を効率的に製造することができる。
【0015】
そして、本発明の二次電池用積層体の製造方法は、前記工程(A)において、前記接着材料の形成をインクジェット法により行うことが好ましい。インクジェット法により接着材料を形成すれば、電極とセパレータとを更に良好に接着させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電極とセパレータとの接着力を確保しつつ二次電池用積層体を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】二次電池用積層体の製造装置の一例の概略構成を示す説明図である。
図2】接着用組成物の塗工パターンの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の二次電池用積層体の製造方法は、電極(正極および/または負極)と、セパレータとを貼り合わせてなる二次電池用積層体を製造する際に用いられる。そして、本発明の二次電池用積層体の製造方法を用いて製造した二次電池用積層体は、非水系二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)などの二次電池を製造する際に用いることができる。
なお、本発明の二次電池用積層体の製造方法は、二次電池用積層体を連続的に製造する際に特に好適に用いることができる。
【0019】
(二次電池用積層体の製造方法)
本発明の二次電池用積層体の製造方法は、電極と、セパレータとを貼り合わせて二次電池用積層体を製造する方法である。そして、本発明の二次電池用積層体の製造方法では、電極およびセパレータの少なくとも一方の貼り合わせ面に接着材料を0.1g/m以上100g/m以下の量で形成する工程(A)を実施した後、接着材料が形成された貼り合わせ面に他の部材を接触させることなく、電極およびセパレータを貼り合わせ開始位置まで搬送する工程(B)を実施し、更に、貼り合わせ面を介して電極とセパレータとを貼り合わせる工程(C)を実施して、二次電池用積層体を製造する。このように、接着材料が形成された貼り合わせ面に他の部材を接触させることなく電極およびセパレータを貼り合わせ開始位置まで搬送して貼り合わせれば、接着材料が形成された電池部材(電極および/またはセパレータ)がブロッキングを起こすことがない。また、接着材料の形成量を所定の範囲内にすれば、接着材料が形成された電池部材(電極および/またはセパレータ)をそのまま貼り合わせに用いる場合であっても、電極とセパレータとを十分に接着させることができる。従って、二次電池用積層体を効率的に製造することができる。
【0020】
<二次電池用積層体>
本発明の製造方法により製造される二次電池用積層体は、電極とセパレータとが貼り合わせ面を介して貼り合わされたものである。ここで、セパレータと貼り合わされて二次電池用積層体を構成する電極は、正極のみであってもよいし、負極のみであってもよいし、正極および負極の双方であってもよい。また、正極および負極の双方をセパレータと貼り合わせて二次電池用積層体とする場合、二次電池用積層体が有する正極、負極およびセパレータの数は、それぞれ、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
即ち、本発明の製造方法を用いて製造する二次電池用積層体の構造は、下記(1)~(6)の何れであってもよい。
(1)正極/セパレータ
(2)負極/セパレータ
(3)正極/セパレータ/負極
(4)正極/セパレータ/負極/セパレータ
(5)セパレータ/正極/セパレータ/負極
(6)複数の正極および負極がセパレータを介して交互に積層された構造(例えば、「セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極・・・・・/セパレータ/正極」など)
なお、複数の電極および/またはセパレータを有する二次電池用積層体は、上述した工程(A)~(C)を繰り返し実施することにより製造することができる。
【0021】
<電極>
ここで、電極としては、特に限定されることなく、例えば、集電体の片面または両面に電極合材層を形成してなる電極基材からなる電極、或いは、電極基材の電極合材層上に多孔膜層を更に形成してなる電極を用いることができる。
なお、集電体、電極合材層および多孔膜層としては、特に限定されることなく、例えば特開2013-145763号公報に記載のもの等、二次電池の分野において使用され得る任意の集電体、電極合材層および多孔膜層を使用し得る。ここで、多孔膜層とは、例えば特開2013-145763号公報に記載されているような非導電性粒子を含む層を指す。
そして、二次電池用積層体の製造に用いられる電極は、ロール状に巻かれていてもよいし、予め切断されていてもよい。
【0022】
<セパレータ>
また、セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば、セパレータ基材からなるセパレータ、または、セパレータ基材の片面または両面に多孔膜層を形成してなるセパレータを用いることができる。
なお、セパレータ基材および多孔膜層としては、特に限定されることなく、例えば特開2012-204303号公報や特開2013-145763号公報に記載のもの等、二次電池の分野において使用され得る任意のセパレータ基材および多孔膜層を使用し得る。
そして、二次電池用積層体の製造に用いられるセパレータは、ロール状に巻かれていてもよいし、予め切断されていてもよい。中でも、二次電池用積層体を効率良く連続的に製造する観点からは、セパレータとしては、ロール状に巻かれているものを用いることが好ましい。
【0023】
<接着材料>
更に、電極とセパレータとを接着させる接着材料としては、電極とセパレータとを接着可能であり、且つ、電池反応を阻害しないものであれば、特に限定されることなく、二次電池の分野において使用されている任意の接着材料を用いることができる。中でも、電極とセパレータとを良好に接着させる観点からは、接着材料としては、重合体からなる接着材料を用いることが好ましい。なお、接着材料を構成する重合体は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0024】
ここで、接着材料として使用し得る重合体としては、特に限定されることなく、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)共重合体等のフッ素系重合体;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)等の共役ジエン系重合体;共役ジエン系重合体の水素化物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体(アクリル系重合体);ポリビニルアルコール(PVA)等のポリビニルアルコール系重合体;などが挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0025】
そして、重合体よりなる接着材料の形状は、特に限定されることなく、粒子状であってもよいし、非粒子状であってもよいし、粒子状と非粒子状との組み合わせであってもよい。
なお、重合体よりなる接着材料が粒子状である場合、当該粒子状の接着材料は、単一の重合体から形成された単一相構造の粒子であってもよいし、互いに異なる2つ以上の重合体が物理的または化学的に結合して形成された異相構造の粒子であってもよい。ここで、異相構造の具体例としては、球状の粒子であって中心部(コア部)と外殻部(シェル部)とが異なる重合体から形成されているコアシェル構造;2つ以上の重合体が並置された構造であるサイドバイサイド構造;などが挙げられる。なお、本発明において、「コアシェル構造」には、コア部の外表面をシェル部が完全に覆う構造の他、コア部の外表面をシェル部が部分的に覆う構造も含まれるものとする。そして、本発明では、外観上、コア部の外表面がシェル部によって完全に覆われているように見える場合であっても、シェル部の内外を連通する孔が形成されていれば、そのシェル部はコア部の外表面を部分的に覆うシェル部とする。
【0026】
また、重合体よりなる接着材料が粒子状である場合、当該粒子状の接着材料の体積平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましく、0.18μm以上であることが更に好ましく、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましい。粒子状の接着材料の体積平均粒子径が上記下限値以上であれば、電極とセパレータとの接着力を高めることができる。また、粒子状の接着材料の体積平均粒子径が上記上限値以下であれば、二次電池用積層体を用いて作製した二次電池のエネルギー密度を高めることができる。
なお、本発明において、「体積平均粒子径」とは、レーザー回折法で測定された体積基準の粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
【0027】
更に、粒子状の接着材料がコアシェル構造を有する重合体を含む場合、当該コアシェル構造を有する重合体の体積平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることが更に好ましく、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましい。コアシェル構造を有する重合体よりなる接着材料の体積平均粒子径が上記下限値以上であれば、電極とセパレータとの接着力を高めることができる。また、コアシェル構造を有する重合体よりなる接着材料の体積平均粒子径が上記上限値以下であれば、二次電池用積層体を用いて作製した二次電池のエネルギー密度を高めることができる。
また、粒子状の接着材料がコアシェル構造を有する重合体を含む場合、コアシェル構造を有する重合体よりなる接着材料は、体積平均粒子径(D50)に対する、体積基準の粒子径分布において小径側から計算した累積体積が10%となる粒子径(D10)の比(D10/D50)が、0.5以上1.0以下あることが好ましく、0.55以上1.0以下であることがより好ましく、0.6以上1.0以下であることが更に好ましい。D10/D50が上記下限値以上であれば、電極とセパレータとの接着力を高めることができる。
更に、粒子状の接着材料がコアシェル構造を有する重合体を含む場合、コアシェル構造を有する重合体よりなる接着材料は、体積平均粒子径(D50)に対する、体積基準の粒子径分布において小径側から計算した累積体積が90%となる粒子径(D90)の比(D90/D50)が、1.5以下であることが好ましく、1.45以下であることがより好ましく、1.4以下であることが更に好ましい。D90/D50が上記上限値以下であれば、電極とセパレータとの接着力を高めることができる。
【0028】
また、粒子状の接着材料がコアシェル構造を有する重合体を含む場合、当該コアシェル構造を有する重合体は、コア部の径が、コアシェル構造を有する重合体の体積平均粒子径100%に対して、好ましくは5%以上100%未満、より好ましくは10%以上100%未満、更に好ましくは20%以上100%未満である。コア部の径が上記下限値以上であれば、貼り合わせ面に供給された後も粒子形状を良好に保ち、電極とセパレータとを良好に接着することができる。
【0029】
更に、接着材料が重合体からなる場合、接着材料を構成する重合体は、ガラス転移温度が25℃以下の低Tg重合体を含むことが好ましい。接着材料を構成する重合体が低Tg重合体を含有していれば、電極とセパレータとの接着力を高めることができる。なお、低Tg重合体のガラス転移温度は、-120℃以上であることが好ましい。
【0030】
なお、接着材料がコアシェル構造を有する重合体を含む場合、当該コアシェル構造を有する重合体は、コア部のガラス転移温度がシェル部のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。コア部のガラス転移温度がシェル部のガラス転移温度よりも高ければ、貼り合わせ面に供給された後も粒子形状を良好に保ちつつシェル部に十分に高い接着力を発揮させて、電極とセパレータとを良好に接着することができる。
そして、コアシェル構造を有する重合体のコア部のガラス転移温度は、-40℃以上110℃以下であることが好ましく、-40℃以上60℃以下であることがより好ましく、-40℃以上25℃以下であることが更に好ましい。コア部のガラス転移温度が上記下限値以上であれば、貼り合わせ面に供給された後も粒子形状を良好に保つことができる。また、コア部のガラス転移温度が上記上限値以下であれば、電極とセパレータとを良好に接着することができる。
また、コアシェル構造を有する重合体のシェル部のガラス転移温度は、-40℃以上であることが好ましく、-35℃以上であることがより好ましく、-30℃以上であることが更に好ましく、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましく、25℃以下であることが特に好ましい。シェル部のガラス転移温度が上記下限値以上であれば、貼り合わせ面に供給された後も粒子形状を良好に保つことができる。また、シェル部のガラス転移温度が上記上限値以下であれば、電極とセパレータとを良好に接着することができる。
ここで、コアシェル構造を有する重合体は、25℃以下に少なくとも一つのガラス転移温度を有することが好ましい。
【0031】
<工程(A)>
工程(A)では、電極およびセパレータの少なくとも一方の貼り合わせ面に上述した接着材料を形成する。
【0032】
ここで、貼り合わせ面に形成する接着材料の量は、0.1g/m以上100g/m以下であることが必要であり、0.1g/m以上50g/m以下であることが好ましく、0.1g/m以上10g/m以下であることがより好ましく、0.1g/m以上1g/m以下であることが更に好ましい。接着材料の形成量が0.1g/m以上であれば、電極とセパレータとを十分に接着させることができる。また、接着材料の形成量が100g/m以下であれば、二次電池用積層体を効率的に製造することができる。
そして、工程(A)において電極側の貼り合わせ面とセパレータ側の貼り合わせ面との双方に接着材料を形成する場合には、各貼り合わせ面において接着材料の形成量が0.1g/m以上100g/m以下となるようにすればよい。
【0033】
なお、接着材料は、固体状態、溶融状態、溶媒に溶解させた状態または溶媒に分散させた状態などの任意の状態で貼り合わせ面へと供給することができる。中でも、接着材料は、溶媒に溶解させた状態または溶媒に分散させた状態で供給することが好ましく、溶媒に分散させた状態で供給することがより好ましい。
【0034】
そして、工程(A)において接着材料を溶媒に溶解させた状態または溶媒に分散させた状態で貼り合わせ面に供給する場合、即ち、接着材料と溶媒とを含む接着用組成物を貼り合わせ面に供給する場合、接着用組成物の溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、水、有機溶媒およびそれらの混合物を用いることができる。なお、有機溶媒としては、特に限定されることなく、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;などが挙げられる。
上述した中でも、二次電池用積層体を効率的に製造する観点からは、溶媒としては、水およびアルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0035】
また、接着用組成物中の接着材料の濃度は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上15質量%以下であることが更に好ましい。接着材料の濃度が上記範囲内であれば、二次電池用積層体を更に効率的に製造することができる。
【0036】
更に、接着用組成物の粘度は、1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上40mPa・s以下であることがより好ましく、1mPa・s以上30mPa・s以下であることが更に好ましい。接着用組成物の粘度が上記範囲内であれば、貼り合わせ面上の所望の位置に接着用組成物を容易に供給し、所望の形成量とすることができるので、電極とセパレータとを良好に接着させることができる。
なお、本発明において、「粘度」とは、ブルックフィールド粘度計(B型粘度計)を用いて測定された、温度20℃での静的粘度の値を指す。
【0037】
また、接着用組成物の表面張力は、10mN/m以上であることが好ましく、15mN/m以上であることがより好ましく、20mN/m以上であることが更に好ましく、72mN/m以下であることが好ましく、70mN/m以下であることがより好ましく、65mN/m以下であることが更に好ましい。接着用組成物の表面張力が上記下限値以上であれば、接着用組成物を貼り合わせ面上に所望の形状で供給し、所望の形成量とすることができ、二次電池用積層体を更に効率的に製造することができる。また、接着用組成物の表面張力が上記上限値以下であれば、貼り合わせ面上の所望の位置に接着用組成物を供給し、電極とセパレータとを良好に接着させることができる。
なお、本発明において、「表面張力」は、JIS K2241に準拠して測定した値を指す。
【0038】
更に、接着用組成物に含まれている直径10μm以上の粗大粒子の量は、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましい。粗大粒子の量が上記上限値以下であれば、二次電池用積層体を用いて作製した二次電池のエネルギー密度を高めることができる。なお、接着用組成物に含まれている粗大粒子は、通常、重合体よりなる粒子状の接着材料よりなる。
【0039】
そして、貼り合わせ面への接着材料の形成は、特に限定されることなく、例えば、インクジェット法、スプレー法、ディスペンサー法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法などの方法を用いて行うことができる。中でも、生産性および形成形状の自由度の高さの観点からは、接着材料の形成方法は、インクジェット法であることが好ましい。
【0040】
なお、接着材料は、貼り合わせ面の全面に形成してもよいし、貼り合わせ面の一部のみに形成してもよい。そして、貼り合わせ面の一部のみに接着材料を形成する場合、接着材料は、特に限定されることなく、ストライプ状、ドット状、格子状などの任意の平面視形状となるように形成することができる。中でも、二次電池用積層体を用いて二次電池を製造する際の電解液の注液性を高める観点からは、接着材料は、ドット状に形成することが好ましい。そして、ドット状の接着材料は、貼り合わせ面の全面に均一に配置(形成)してもよいし、ストライプ状、ドット状、格子状などの所定のパターンになるように配列させて配置(形成)してもよい。中でも、二次電池用積層体を用いて二次電池を製造する際の電解液の注液性を高める観点からは、ドット状の接着材料はストライプ状に配列させて配置(形成)することが好ましい。なお、微小なドット状の接着材料を所定のパターンに配列する場合には、接着材料の形成および配列のし易さの観点から、インクジェット法により接着用組成物を所望のパターンで塗工して接着材料を形成することが好ましい。
また、接着材料の断面形状は、特に限定されることなく、凸形状、凹凸形状、凹形状とすることができ、中でも、電極とセパレータとを更に良好に接着させる観点からは、凹凸形状であることが好ましい。なお、接着材料の断面形状は、例えば、接着用組成物を用いて接着材料を形成する際の乾燥条件を調整することにより変更することができる。
ここで、貼り合わせ面上の一箇所以上、好ましくは二箇所以上に接着材料を形成する場合、貼り合わせ面に形成する接着材料の形成面積は、一箇所当たり、25μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、250000μm以下であることが好ましく、200000μm以下であることがより好ましく、100000μm以下であることが更に好ましい。一箇所当たりの接着材料の形成面積が25μm以上であれば、電極とセパレータとを十分に接着させることができる。また、一箇所当たりの接着材料の形成面積が250000μm以下であれば、二次電池用積層体を効率的に製造することができる。
なお、上記の形成面積は、接着材料または接着用組成物を貼り合わせ面に塗工する量、形状および範囲を変更することで調整することができる。具体的には、形成面積は、例えば、接着用組成物を用いてインクジェット法により接着材料を形成する場合には、インクジェットヘッドのノズルからの接着用組成物の吐出の諧調(同じポイントに吐出した回数)を変更することで調整することができる。
【0041】
<工程(B)>
工程(B)では、接着材料が形成された貼り合わせ面に他の部材を接触させることなく、電極およびセパレータを貼り合わせ開始位置まで搬送する。このように、接着材料が形成された貼り合わせ面に他の部材を接触させなければ、ブロッキング等の問題が生じないので、接着性に優れる接着材料を用いることができると共に、二次電池用積層体を効率的に製造することができる。
【0042】
なお、電極およびセパレータの搬送は、特に限定されることなく、例えば、ローラ、ベルトコンベア、マニピュレーター、吸着バンドなどの任意の搬送機構を用いて行うことができる。中でも、二次電池用積層体の製造効率を更に高める観点からは、電極およびセパレータの少なくとも一方をローラを用いて搬送することが好ましい。
【0043】
また、工程(A)において接着材料を接着用組成物として供給した場合には、工程(B)における搬送中に貼り合わせ面上の接着用組成物を乾燥させてもよい。ここで、乾燥は、特に限定されることなく、ヒーター、ドライヤー、ヒートローラなどの加熱装置を用いて行うことができる。なお、接着用組成物が供給された電極および/またはセパレータの乾燥時の温度は、特に限定されることなく、0℃以上とすることが好ましく、10℃以上とすることがより好ましく、15℃以上とすることが更に好ましく、200℃以下とすることが好ましく、150℃以下とすることがより好ましく、100℃以下とすることが更に好ましい。乾燥時の温度を上記下限値以上にすれば、乾燥速度を十分に高めて二次電池用積層体を効率的に製造することができる。また、乾燥時の温度を上記上限値以下にすれば、乾燥後の接着材料の形状を良好なものとし、電極とセパレータとを良好に接着させることができる。
【0044】
<工程(C)>
工程(C)では、貼り合わせ面を介して電極とセパレータとを貼り合わせる。ここで、貼り合わせは、特に限定されることなく、例えば、貼り合わせ面を介して重ね合わせた電極とセパレータとの積層体を加圧および/または加熱することにより行うことができる。
【0045】
なお、工程(C)において積層体に加える圧力、電極とセパレータとを貼り合わせる際の温度、並びに、積層体を加圧および/または加熱する時間は、使用する接着材料の種類および量等に応じて適宜調整することができる。
【0046】
<二次電池用積層体の製造装置の一例>
そして、本発明の二次電池用積層体の製造方法を用いた二次電池用積層体の製造は、特に限定されることなく、例えば図1に示すような製造装置100を用いて行うことができる。
【0047】
ここで、図1に示す製造装置100は、電極(正極および負極)並びにセパレータが上側から下側に向かって「正極/セパレータ/負極/セパレータ」の順で積層されてなる二次電池用積層体200を製造する装置である。なお、この製造装置100では、得られた二次電池用積層体200は、適当なサイズに切断された後、更に重ね合わせてから二次電池の製造に用いられる。
【0048】
そして、製造装置100は、負極11をロール状に巻き取ってなる負極ロール10と、セパレータ21,31をロール状に巻き取ってなる第一セパレータロール20および第二セパレータロール30と、予め切断された正極41を収容する正極ストッカー40とを備えている。また、製造装置100は、複数(図示例では9つ)の搬送ローラ1と、複数(図示例では3組)のプレスローラ2と、複数の(図示例では4つ)の接着材料供給機60A,60B,60C,60Dと、切断機50とを更に備えている。
【0049】
この製造装置100では、まず、負極ロール10から繰り出されて搬送ローラ1を介して搬送される負極11の表面(図示例では上側の表面)に対し、例えば図2に示すような斜めストライプ形状の塗工パターンとなるように、接着材料供給機60Aから接着材料を含む接着用組成物61が供給される(工程(A))。ここで、図2に示す斜めストライプ形状の塗工パターンは、平面視において、搬送方向に直交する方向との為す角度が狭角側から測定してθであり、配設ピッチがPであり、幅がWである。そして、接着材料が供給された負極11および第一セパレータロール20から繰り出されたセパレータ21がプレスローラ2の位置する貼り合わせ開始位置まで搬送され(工程(B))、プレスローラ2により貼り合わされる(工程(C))。
なお、接着材料供給機60Aから接着用組成物を供給する場合には、製造装置100では、接着材料供給機60Aとプレスローラ2との間に位置する搬送ローラ1をヒートローラとし、接着用組成物を乾燥させてもよい。
【0050】
また、製造装置100では、接着材料を用いて貼り合わされた負極11とセパレータ21との積層体の負極11側の表面に対し、例えば図2に示すような斜めストライプ形状の塗工パターンとなるように、接着材料供給機60Bから接着材料を含む接着用組成物61が供給される(工程(A))。そして、接着材料が供給された負極11とセパレータ21との積層体、および、第二セパレータロール30から繰り出されたセパレータ31がプレスローラ2の位置する貼り合わせ開始位置まで搬送され(工程(B))、プレスローラ2により貼り合わされる(工程(C))。
なお、接着材料供給機60Bから接着用組成物を供給する場合には、製造装置100では、接着材料供給機60Bとプレスローラ2との間に位置する搬送ローラ1をヒートローラとし、接着用組成物を乾燥させてもよい。
【0051】
更に、製造装置100では、接着材料を用いて貼り合わされた負極11とセパレータ21,31との積層体のセパレータ31側の表面に対し、例えば図2に示すのと同様な斜めストライプ形状の塗工パターンとなるように、接着材料供給機60Cから接着材料を含む接着用組成物61が供給される(工程(A))。そして、貼り合わせ開始位置において、接着材料が供給された負極11とセパレータ21,31との積層体のセパレータ31上に正極41が載置され(工程(B))、プレスローラ2により貼り合わされる(工程(C))。
なお、接着材料供給機60Cから接着用組成物を供給する場合には、製造装置100では、接着材料供給機60Cとプレスローラ2との間に位置する搬送ローラ1をヒートローラとし、接着用組成物を乾燥させてもよい。
【0052】
そして、製造装置100では、上側から下側に向かって「正極/セパレータ/負極/セパレータ」の順で積層されてなる二次電池用積層体200の正極側の表面に対し、例えば図2に示すのと同様な斜めストライプ形状の塗工パターンとなるように、接着材料供給機60Dから接着材料を含む接着用組成物61を供給した後、切断機50で二次電池用積層体200を切断する。
なお、切断機50で二次電池用積層体200を切断して得られる積層体は、更に重ね合わせてから二次電池の製造に用いられる。
【0053】
(二次電池の製造方法)
二次電池用積層体を用いた二次電池の製造方法は、上述した本発明の二次電池用積層体の製造方法を用いて二次電池用積層体を製造する工程と、二次電池用積層体と、電解液とを用いて二次電池を組み立てる工程(組み立て工程)とを含む。
【0054】
<組み立て工程>
ここで、電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF、LiClO、CFSOLiが好ましく、LiPFが特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0055】
更に、電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。また、これらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類を用いることが好ましい。通常、用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加してもよい。
【0056】
そして、二次電池は、本発明の二次電池用積層体の製造方法に従って製造した二次電池用積層体に対し、必要に応じて追加の電池部材(電極および/またはセパレータなど)を更に積層した後、得られた積層体を必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより組み立てることができる。なお、二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。また、二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例
【0057】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、接着材料を構成する重合体のガラス転移温度、体積平均粒子径D50および粒子径分布、接着用組成物の粘度、表面張力および直径10μm以上の粗大粒子の含有量、電極とセパレータとのドライ接着力、並びに、二次電池の電解液注液性、出力特性およびサイクル特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0058】
<ガラス転移温度>
JIS K7121に準拠し、測定温度-100℃~180℃、昇温速度5℃/分にて、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製、DSC6220SII)を用いて測定した。
<体積平均粒子径D50および粒子径分布>
粒子状の重合体の水分散液について、レーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製、製品名「SALD-3100」)により粒子径分布(体積基準)を測定した。そして、測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を各粒子の体積平均粒子径(D50)とした。また、測定された粒子径分布を使用し、小径側から計算した累積体積が10%となる粒子径(D10)および小径側から計算した累積体積が90%となる粒子径(D90)を求め、D10/D50およびD90/D50を算出した。
<粘度>
調製した接着用組成物について、ブルックフィールド粘度計(英弘精機株式会社製、DV1M)を使用し、温度20℃での静的粘度を測定した。
<表面張力>
調製した接着用組成物について、JIS K2241に準拠し、表面張力測定装置(協和界面化学株式会社製、DY-700)を使用し、温度25℃における表面張力を測定した。
<粗大粒子の含有量>
平均孔径10μmのナイロンメッシュの質量(B)を測定し、漏斗にセットした。そこに、接着用組成物100gを注ぎ、ろ過した。ここに、イオン交換水を注ぎ、濁りがなくなるまで洗浄し、90℃のオーブンで、60分以上乾燥した。放冷後、ナイロンメッシュの質量(A)を測定しメッシュ残渣量の測定を行った。メッシュ残渣量、即ち接着用組成物中の粒子径が10μm以上の粗大粒子量は、下記式により求めた。
粗大粒子の含有量(ppm)=(A-B)/(C×D/100)×1000000
A:メッシュ+乾燥物の質量(g)
B:メッシュの質量(g)
C:ろ過した接着用組成物の質量(g)
D:接着用組成物の全固形分濃度(%)
<接着材料の1箇所あたりの形成面積>
接着材料の1箇所あたりの形成面積S50は、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VR-3100)を用いて、2mmの領域に形成されているドット状の接着材料の長軸径xと短軸径yを測定し、z=(x+y)/2を平均径として、各ドットの面積をS=1/4πzとして算出し、50個のドットの面積Sの平均値として算出した。
<ドライ接着力>
実施例および比較例で作成した正極、負極、およびセパレータをそれぞれ10mm幅、長さ50mm幅に切り出し、正極とセパレータ、および、負極とセパレータを積層させ、温度70℃、荷重1MPa相当の圧力のロールプレスで積層体を10m/分でプレスし、試験片とした。
この試験片を、電極(正極または負極)の集電体側の面を下にして、電極の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。そして、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。
この測定を、正極およびセパレータを備える積層体、並びに、負極およびセパレータを備える積層体でそれぞれ3回、合計6回行い、応力の平均値をピール強度として求めて、電極とセパレータとの接着性を下記の基準で評価した。ピール強度が大きいほど、接着性が高いことを示す。
A:ピール強度が3N/m以上
B:ピール強度が1N/m以上3N/m未満
C:ピール強度が1N/m未満
<電解液注液性>
作製した二次電池用積層体を電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=68.5/30/1.5(体積比)、電解質:濃度1MのLiPF)を注液時間を異ならせつつ空気が残らないように注入した。
そして、注液の際に電解液が吹きこぼれない最短の注液時間を求め、下記の基準で評価した。最短の注液時間が短いほど、電解液注液性に優れていることを示す。
A:最短の注液時間が100秒未満
B:最短の注液時間が100秒以上300秒未満
C:最短の注液時間が300秒以上500秒未満
D:最短の注液時間が500秒以上
<出力特性>
作製した二次電池を、温度25℃の雰囲気下で、4.3Vまで定電流定電圧(CCCV)充電した。その後、温度-10℃の雰囲気下で、0.2Cの定電流法によって3.0Vまで放電した際の電気容量と、1Cの定電流法によって3.0Vまで放電した際の電気容量とを求めた。
そして、電気容量の比(=(1Cでの電気容量/0.2Cでの電気容量)×100(%))で表される放電容量維持率を求めた。これらの測定を、二次電池5セルについて行い、各セルの放電容量維持率の平均値を、低温出力特性として、以下の基準で評価した。この値が大きいほど、出力特性に優れることを示す。
A:低温出力特性が80%以上
B:低温出力特性が70%以上80%未満
C:低温出力特性が60%以上70%未満
D:低温出力特性が60%未満
<サイクル特性>
作製した二次電池を、温度45℃の雰囲気下で、0.5Cの定電流法によって4.4Vに充電し、3.0Vまで放電する充放電を、200サイクル繰り返した。そして、200サイクル終了時の電気容量と、5サイクル終了時の電気容量との比(=(200サイクル終了時の電気容量/5サイクル終了時の電気容量)×100(%))で表される充放電容量維持率を求めた。これらの測定を、二次電池5セルについて行い、各セルの充放電容量維持率の平均値を、高電圧サイクル特性として、以下の基準で評価した。この値が大きいほど、サイクル特性に優れることを示す。
A:高電圧サイクル特性が95%以上
B:高電圧サイクル特性が90%以上95%未満
C:高電圧サイクル特性が90%未満
【0059】
(実施例1)
<接着材料の準備>
コアシェル構造を有する重合体からなる粒子状の第一の接着材料として、ガラス転移温度108℃の重合体よりなるコア部と、コア部の外表面を部分的に覆う、ガラス転移温度が-17℃の重合体よりなるシェル部とを有するコアシェル粒子の水分散液を準備した。
また、単一相構造の重合体からなる粒子状の第二の接着材料として、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)の水分散液を準備した。
そして、接着材料を構成する重合体のガラス転移温度、体積平均粒子径D50および粒子径分布を測定した。結果を表1に示す。
<接着用組成物の調製>
固形分相当で、第二の接着材料の水分散液10部と、第一の接着材料の水分散液100部とを撹拌容器内で混合し、イオン交換水により希釈して、固形分濃度10%の接着用組成物を得た。
そして、接着用組成物の粘度、表面張力および直径10μm以上の粗大粒子の含有量を測定した。結果を表1に示す。
<負極の形成>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3-ブタジエン33部、イタコン酸3.5部、スチレン63.5部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止し、負極合材層用結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記負極合材層用結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の負極合材層用結着材を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径:15.6μm)100部、粘度調整剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製、製品名「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部、およびイオン交換水を混合して固形分濃度68%に調整した後、25℃で60分間さらに混合した。更に、イオン交換水で固形分濃度を62%に調整した後、25℃で15分間更に混合した。得られた混合液に、上記の負極合材層用結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5部、およびイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して流動性の良い二次電池負極用スラリー組成物を得た。
得られた二次電池負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
<正極の形成>
正極活物質としての体積平均粒子径12μmのLiCoOを100部と、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製、製品名「HS-100」)を2部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、製品名「#7208」)を固形分相当で2部と、溶媒としてのN-メチルピロリドンとを混合して全固形分濃度を70%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、二次電池正極用スラリー組成物を得た。
得られた二次電池正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極原反を得た。
そして、得られた正極原反を、ロールプレス機を用いて圧延することにより、正極合材層を備える正極を得た。
<セパレータの準備>
ポリプロピレン(PP)製のセパレータ(製品名「セルガード2500」)を準備した。
<二次電池用積層体の製造>
準備した接着用組成物、負極、正極およびセパレータを使用し、図1に示す製造装置でリチウムイオン二次電池用積層体を製造し、切断した。
なお、接着材料供給機としては、インクジェットヘッド(コニカ製、KM1024(シアモードタイプ))を備えるインクジェット方式の接着材料供給機を用いた。
また、搬送速度は10m/分とし、接着用組成物は図2に示すストライプ形状(θ:45°、P:200μm、W:30μm)の塗工パターンで供給し、その他の製造条件は表1に示す条件とした。
なお、供給した接着用組成物は、搬送ローラの一部にヒートローラを用いることで乾燥した。そして、乾燥後の接着材料をレーザー顕微鏡で観測したところ、接着材料は、微小なドット状をしていた。即ち、貼り合わせ面には、微小なドット状の複数の接着材料が斜めストライプ状のパターンに配列されて存在していた。また、レーザー顕微鏡で断面を観察して接着材料の平均高さ(厚み)および最大高さ(厚み)を確認したところ、断面は凹凸形状をしており、平均高さは1μmであり、最大高さは3μmであった。
そして、二次電池用積層体のドライ接着力を評価した。結果を表1に示す。
<二次電池の製造>
切断した二次電池用積層体を5つ重ね合わせ、温度70℃、圧力1MPaで10秒間プレスして重ね合わせ体とした。
作製した重ね合わせ体を電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=68.5/30/1.5(体積比)、電解質:濃度1MのLiPF)を注液した。その後、アルミ包材外装の開口を150℃のヒートシールで閉口して、容量800mAhの積層型リチウムイオン二次電池を製造した。
そして、二次電池の電解液注液性、出力特性およびサイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2)
二次電池用積層体の製造時に、接着用組成物をドット形状の塗工パターン(直径:50μm、ドット間の距離:200μm)で供給した以外は実施例1と同様にして、接着材料、接着用組成物、負極、正極、セパレータ、二次電池用積層体および二次電池を準備または製造した。なお、接着材料は、微小なドット状をしていた。即ち、貼り合わせ面には、微小なドット状の複数の接着材料が集合してなる大きなドットが複数存在していた。また、レーザー顕微鏡で接着材料の断面を観察したところ、断面は凹凸形状をしていた。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例3)
二次電池用積層体の製造時に、製造条件を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、接着材料、接着用組成物、負極、正極、セパレータ、二次電池用積層体および二次電池を準備または製造した。なお、接着材料は、微小なドット状をしていた。即ち、貼り合わせ面には、微小なドット状の複数の接着材料が斜めストライプ状のパターンに配列されて存在していた。また、レーザー顕微鏡で接着材料の断面を観察したところ、断面は凸形状をしていた。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例4)
第一の接着材料として、ガラス転移温度15℃の単一相構造の粒子状重合体を使用し、二次電池用積層体の製造時に、ストライプ形状(θ:45°、P:400μm、W:30μm)および製造条件を表1に示すように変更し、二次電池の製造時に、切断した二次電池用積層体を5つ重ね合わせ、温度40℃、圧力1MPaで5秒間プレスして重ね合わせ体とした以外は実施例1と同様にして、接着材料、接着用組成物、負極、正極、セパレータ、二次電池用積層体および二次電池を準備または製造した。なお、接着材料は、微小なドット状をしていた。即ち、貼り合わせ面には、微小なドット状の複数の接着材料が斜めストライプ状のパターンに配列されて存在していた。また、レーザー顕微鏡で接着材料の断面を観察したところ、断面は凹凸形状をしていた。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
セパレータとして、ポリプロピレン(PP)製のセパレータ(製品名「セルガード2500」)の片面(セパレータ21用)または両面(セパレータ31用)に接着用組成物をグラビアロールでドット状の塗工パターンに塗工し、温度70℃で熱風乾燥(乾燥時間:6秒)してなるものを使用し、接着材料供給機60A~60Dおよびヒートロールを有さない以外は図1に示す製造装置と同様の構成を有する製造装置を使用して二次電池用積層体を製造した以外は実施例1と同様にして、接着材料、接着用組成物、負極、正極、セパレータ、二次電池用積層体および二次電池を準備または製造した。なお、接着材料は、微小なドット状をしていた。即ち、貼り合わせ面には、微小なドット状の複数の接着材料が集合してなる大きなドットが複数存在していた。また、レーザー顕微鏡で接着材料の断面を観察したところ、断面は凸形状をしていた。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
なお、二次電池用積層体の製造時には、ロール状に巻き取ったセパレータがブロッキングを起こしていたため、剥離しながら製造を行った。
【0064】
【表1】
【0065】
表1より、実施例1~4では、電極とセパレータとの接着力を確保しつつ二次電池用積層体を効率的に製造することができる。一方、表1より、比較例1では、セパレータのブロッキングにより接着材料が剥離し、電極とセパレータとの接着力を十分に確保することができないと共に、二次電池用積層体を効率的に製造することができないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、電極とセパレータとの接着力を確保しつつ二次電池用積層体を効率的に製造することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 搬送ローラ
2 プレスローラ
10 負極ロール
11 負極
20 第一セパレータロール
30 第二セパレータロール
21,31 セパレータ
40 正極ストッカー
41 正極
50 切断機
60A,60B,60C,60D 接着材料供給機
61 接着材料
100 製造装置
200 二次電池用積層体
図1
図2