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特許7517216ガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムおよび包装体
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  • 特許-ガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムおよび包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムおよび包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20240709BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B32B27/34
B65D65/40 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021048723
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147469
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】和田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】西田 良平
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-166725(JP,A)
【文献】特開2020-111050(JP,A)
【文献】特開2009-119842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層(A)/中層(B)/内層(C)/中層(B)/外層(A)である層順のフィルムであって、
前記外層(A)が脂肪族ポリアミド樹脂を99質量%以上100質量%以下含み、
前記中層(B)が脂肪族ポリアミド樹脂70質量%以上85質量%以下と熱可塑性エラストマー15質量%以上30質量%以下とを含み、
前記内層(C)がガスバリア性樹脂を含み、
前記中層(B)の1層あたりの層厚がフィルム総厚に対して2.0%以上20.0%以下であることを特徴とするガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルム。
【請求項2】
該中層(B)の1層あたりの層厚がフィルム総厚に対して3.0%以上16.0%以下である請求項1に記載のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルム。
【請求項3】
該中層(B)の1層あたりの層厚が1.0μm以下である請求項1又は2に記載のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルム。
【請求項4】
二軸延伸してなる請求項1~3の何れか1項に記載のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルム。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムを用いた包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルム、および該フィルムを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フードロス(食品ロス、食料ロス)低減を進めるため、食品、流通、卸売り、小売り等の各種業界から、冷凍食品包装への要望が高まっている。冷凍食品用プラスチック包装資材の最たる課題は、冷凍条件下でプラスチックが脆くなって割れたり、ピンホールがあいたりしてしまうことである。
更には、冷凍食品包装品であっても、製造工程や、解凍から保存の過程での食品の変質を防ぐために、ガスバリア性が求められている。
【0003】
柔軟性、強靭性、耐ピンホール性の高い包装資材としては、従来からナイロン6等のポリアミド系樹脂フィルムが広く普及し、該フィルムは他のプラスチックフィルムに比べ低温下での機械的強度も高く、市場で利用価値が認められている。
また、ポリアミド系樹脂とガスバリア性樹脂を用い、両者の機械特性とガスバリア性とを兼備したフィルムも各種開発されている。例えば、ポリアミド系樹脂フィルムとガスバリア性樹脂を混合した単層フィルム、ポリアミド系樹脂層とガスバリア性樹脂層を共押出した多層フィルムがあり、両樹脂の特性が十分発揮されると共にフィルム生産安定性の秀でた構成として、ガスバリア性樹脂層を中心にポリアミド樹脂層で挟んだ3層構成が有効に用いられている。そしてさらに、ポリアミド樹脂層とガスバリア樹脂層との間に、両層の接着性を高めたり、機能を付加したりする層を配設した5層構成の高性能フィルムが活用され、上述の冷凍食品包装用への利用もされてきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れ、且つ、耐突刺し性に優れたポリアミド系フィルムを提供する課題に対し、ポリアミドを86~98重量%、及び耐屈曲剤を2~14重量%含有するポリアミド層(B)を少なくとも有するポリアミド系フィルムを解決手段として開示されており、さらに、ポリアミド層(B)の少なくとも一方面上に、脂肪族ポリアミドを含有するポリアミド層(A)が積層され、5層構成(A/B/C/B/A)が例示されている。
【0005】
また、特許文献2には、屈曲による耐ピンホール性に優れたポリアミド系多層フィルムの提供を課題とし、ポリアミド系樹脂80~99重量%及びポリエステル系エラストマー1~20重量%を含むA層、並びにバリア性樹脂を含むB層を少なくとも有するポリアミド系多層フィルムを解決手段として開示されており、好ましい構成としてA層/B層/A層の3層構成、またA層の配合比を調整したA1層/A2層/B層/A2層/A1層の5層構成が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-02114号公報
【文献】特開2019-18437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の開示技術では、冷蔵、冷凍などの低温条件下における耐屈曲ピンホール性が不十分であった。そして、耐屈曲ピンホール性をより向上させるために、ポリアミド層(B)に耐屈曲剤である熱可塑性エラストマーを14重量%以上の高含有率で混合すると、フィルムが白っぽくなり不透明化してしまう。更には、特許文献1の技術は、ポリアミド層(B)にポリアミドを86重量%以上含有させることで耐突刺し性を向上させるものであるため(段落0014、0025)、耐ピンホール性向上の目的で熱可塑性エラストマーの含有率を増大させると、その分、ポリアミドの含有率が低減するので耐突刺し性が不十分となってしまう。
【0008】
また、特許文献2の開示技術では、特許文献1の技術に比べ、ポリアミド系樹脂のA層にエラストマーを20重量%まで含むが、その場合、内部ヘーズと外部ヘーズの双方によってフィルムが白っぽくなり不透明度が強くなり、また、耐突刺し性が弱くなってしまう。更には、フィルム表面に位置するA層にポリエステル系エラストマーを20重量%まで含有させると、フィルム製造工程において、フィルムのキャストロールへの密着不良が生じる、フィルム表面の滑り性が悪くロール巻取り不良が生じる、またフィルム製造工程と2次加工工程において、エラストマーが工程ロールに付着する、その付着物がフィルムに転写付着する、といった問題がある。
【0009】
上記実情を鑑みて、本発明の課題は、フィルム物性として常温から低温条件まで高い耐屈曲ピンホール性を有し、且つ透明性と耐突刺し性が良好であり、更にフィルム製造工程において熱可塑性エラストマー起因の製造トラブルの生じる可能性が少ないガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルム及び包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を行い、内層に剛性が高く柔軟性の低いガスバリア性樹脂を用いたガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムにおいては、
(i)低温条件下の耐屈曲ピンホール性を高めるには、ポリアミド系樹脂層(B)に熱可塑性エラストマーを高濃度で含有することが有効である
(ii)上記の熱可塑性エラストマー高含有率のポリアミド系樹脂層(B)では、十分な耐突刺し性が得られないので、当該ポリアミド系樹脂層とは別個に、耐突刺し性を付与するポリアミド系樹脂層(A)を設ける
(iii)耐突刺し性を付与するポリアミド系樹脂層(A)は、芳香族ポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマー等を極力含有しないことにより、高い耐突刺し性を発現する
(iv)上記の熱可塑性エラストマー高含有率のポリアミド系樹脂層(B)は、フィルムの不透明度を増大させるので、当該層厚を低減させフィルムの透明性を向上させる
(v)上記の熱可塑性エラストマー高含有率のポリアミド系樹脂層(B)の表面に存在または偏析する熱可塑性エラストマーによるフィルム製造トラブルを防止するため、当該層はフィルム最表層に設けない
ことによって、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
【0011】
第1の本発明は、外層(A)/中層(B)/内層(C)/中層(B)/外層(A)である層順のフィルムであって、前記外層(A)が脂肪族ポリアミド樹脂を99質量%以上100質量%以下含み、前記中層(B)が脂肪族ポリアミド樹脂70質量%以上85質量%以下と熱可塑性エラストマー15質量%以上30質量%以下とを含み、前記内層(C)がガスバリア性樹脂を含み、前記中層(B)の1層あたりの層厚がフィルム総厚に対して2.0%以上20.0%以下であることを特徴とするガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムである。
【0012】
第1の本発明において、該中層(B)の1層あたりの層厚がフィルム総厚に対して3.0%以上16.0%以下であることが好ましい。
【0013】
第1の本発明において、該中層(B)の1層あたりの層厚が1.0μm以下であることが好ましい。
【0014】
第1の本発明のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムは、二軸延伸されていることが好ましい。
【0015】
第2の本発明は、第1の本発明のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムを用いた包装体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルム物性として常温から低温条件まで高い耐屈曲ピンホール性を有し、且つ透明性と耐突刺し性が良好であり、更にフィルム製造工程において熱可塑性エラストマー起因の製造トラブルの生じる可能性が少ないガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムを提供できる。
従って、好適な包装適性と高い生産性とを満たす本発明のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムは、長期保存および冷凍食品包装が強く求められる現代社会において、有効かつ有益なものとなる。また、高価な熱可塑性エラストマーを大量に使用することがないので、フィルムの製造コストを低減でき、経済性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムの層構成を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムを本発明のフィルム、外層(A)を層(A)、中層(B)を層(B)、内層(C)を層(C)と称することがある。
また、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り、X以上Y以下の意と共に、好ましくはXより大きい、及び好ましくはYより小さい、の意を包含するものである。
【0019】
本発明のフィルムは、外層(A)/中層(B)/内層(C)/中層(B)/外層(A)の層順で構成され、外層(A)が脂肪族ポリアミド樹脂を99質量%以上100質量%以下含み、中層(B)が脂肪族ポリアミド樹脂70質量%以上85質量%以下と熱可塑性エラストマー15質量%以上30質量%以下とを含み、内層(C)がガスバリア性樹脂を含む。
【0020】
<外層(A)>
本発明のフィルムの外層(A)は、外層(A)を100質量%とする場合、脂肪族ポリアミド樹脂99質量%以上100質量%以下を含む。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、以下の環状ラクタムの開環重合物やアミノカルボン酸の重縮合物が好ましく使用でき、例えば、ポリアミド4、ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド8、ポリアミド9、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12等である。また、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物も好適に使用でき、例えば、ポリアミド46、ポリアミド410、ポリアミド412、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド96、ポリアミド910、ポリアミド912、ポリアミド106、ポリアミド1010、ポリアミド1012等である。これらは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等いずれの共重合手法を用いても良い。
上記の脂肪族ポリアミド樹脂の各種は、1種類を単独で用いても良く、2種類以上を混合して用いても良い。
【0021】
これらの脂肪族ポリアミド樹脂の中でも、耐熱性、フィルム製膜性、機械強度のバランスに優れることから、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,66が好ましく、汎用性、経済性の高いポリアミド6が特に好ましい。
ポリアミド6は、相対粘度(96%硫酸)が1.0~5.0であることが好ましく、2.0~4.5がさらに好ましく、2.5~4.0が特に好ましい。ポリアミド6の相対粘度が上記範囲であれば、フィルム製膜性、延伸性、二次加工性、機械強度や耐ピンホール性のバランスに優れたガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムを得ることができる。
【0022】
また、ポリアミド6は、融点が210℃~240℃であることが好ましく、220℃~230℃であることがより好ましい。ポリアミド6の融点が上記範囲であれば、フィルム製膜性、延伸性、二次加工性、機械強度や耐ピンホール性のバランスに優れたガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムを得ることができる。
【0023】
外層(A)は、層を構成する樹脂の合計を100質量%とした場合に、脂肪族ポリアミド樹脂を99質量%以上含み、好ましくは99質量%超含み、より好ましくは99.5質量%以上含む。他の樹脂として、公知の芳香族ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマー等を1質量%以下、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%以下含むことができる。
脂肪族ポリアミド樹脂を99質量%以上含むことにより、フィルムへ高い耐突刺し性を付与できる。また、強靭性、耐摩擦性も良好となり、フィルム表面の均質性による美麗性、光沢感も向上する。熱可塑性エラストマーの含有率を1質量%以下とすることにより、フィルム製造工程において、フィルムのキャストロールへの密着性やロール巻取り性が良好となり、フィルム製造工程と2次加工工程において、エラストマーがロールに付着してフィルムに転写付着することなく、フィルム外観性が良好となる。
また、特許文献1では、より優れた延伸製膜性の点から、芳香族ポリアミドを含有することが好ましく(段落0052)、0~30重量%程度含有することが好ましく(段落0054)、多層構成の全ての実施例で芳香族ポリアミドを5重量%含有させている(表3~4)が、本発明では、芳香族ポリアミド樹脂の含有率を1質量%以下とすることにより、フィルムの耐突刺し性と耐屈曲ピンホール性を高めることができる。
【0024】
外層(A)の1層あたりの層厚は、特に制限はないが、フィルム総厚に対して20.0%以上40.0%以下が好ましく、22.0%以上35.0%以下がより好ましい。20.0%以上により、耐突刺し性が良好となり、ポリアミド系樹脂フィルムとしての強靭性を発揮でき、40.0%以下により、内層(C)を厚くしてガスバリア性を高めやすい。
【0025】
<中層(B)>
本発明のフィルムの中層(B)は、中層(B)を100質量%とする場合、脂肪族ポリアミド樹脂70質量%以上85質量%以下と熱可塑性エラストマー15質量%以上30質量%以下とを含む。
【0026】
中層(B)を100質量%とする場合、熱可塑性エラストマーの含有率は15質量%以上30質量%以下である。
冷蔵や冷凍の低温条件下においては、特に内層(C)が脆性破壊しやすく、また中層(B)の脂肪族ポリアミド系樹脂と内層(C)との層間密着性が低下しやすくなる。その点で、中層(B)が熱可塑性エラストマーを15質量%以上含有することにより、脂肪族ポリアミド系樹脂のバルク(海)中で熱可塑性エラストマーがnmオーダーのドメイン(島)で微分散し、低温下でもフィルムに高い柔軟性を付与することができ耐屈曲ピンホール性を向上させる。
一方で、熱可塑性エラストマーの含有率が30質量%を超えると、脂肪族ポリアミド系樹脂のバルク(海)中で熱可塑性エラストマーが微分散できなくなり、熱可塑性エラストマー同士が凝集した粗大なドメイン(島)を形成してしまう。そのために、透明性が失われる、屈曲等の外力を受けると脂肪族ポリアミド系樹脂と熱可塑性エラストマーとの海/島分散形態の相界面でボイドが発生し耐屈曲ピンホール性が低下するといった不具合が発生しやすい。従って、熱可塑性エラストマーの含有率を30質量%以下とすることにより、フィルムの不透明性を抑制し、耐屈曲ピンホール性効果を損ねない、また、脂肪族ポリアミド樹脂の含有率が70質量%以上となるので外層(A)との作用機序と相まってフィルムの耐突刺し性向上にも寄与する。
【0027】
中層(B)の1層あたりの層厚は、フィルム総厚に対して2.0%以上20.0%以下である。下限は3.0%以上が好ましく、4.0%以上がより好ましく、5.0%以上が更に好ましい。上限は18.0%以下が好ましく、17.0%以下がより好ましく、16.0%以下が更に好ましく、15.0%以下が特に好ましい。
総厚に対する比が2.0%以上により、低温条件下での中層(B)による耐屈曲ピンホール性が発揮しやすい。
中層(B)の総厚に対する比が20.0%以下により、外層(A)と内層(C)の層厚を増大させることができ、外層(A)による耐突刺し性、強靭性や、内層(C)によるガスバリア性等との機能を両立させやすい。また、中層(B)における脂肪族ポリアミド樹脂と熱可塑性エラストマーとの海/島の分散構造による内部ヘーズを低減でき、透明性が良好となる。更に、原料価格の高い熱可塑性エラストマー使用量を低減でき、フィルム製造コストを低減できる。中層(B)の1層あたりの層厚は、2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、特に、1.0μm以下に薄くすることで、これらの長所を最大限に利用できる。
【0028】
中層(B)に用いる脂肪族ポリアミド樹脂としては、外層(A)に使用可能な脂肪族ポリアミド樹脂が挙げられる。中でも、外層(A)と同様な種類、かつ同様な相対粘度の脂肪族ポリアミドを用いると、外層(A)と中層(B)との層間密着性が良好となり好ましい。
【0029】
中層(B)に用いる熱可塑性エラストマーは、公知のエラストマーを使用できる。例えば、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等、及びそれらの無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その誘導体や無水物による変性物が挙げられる。これらは、ハードセグメントとして、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタンの分子骨格を有し、ソフトセグメントとして、ポリアルキレンエーテルグリコールやゴム成分を有して、弾性を示す樹脂種である。
また、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、及びそれらの変性物は、脂肪族ポリアミド樹脂との親和性が高く良好な分散混和性を示して微分散するので、フィルムの耐ピンホール性及び透明性の向上の点で好適である。また、中層(B)とガスバリア性樹脂を含む内層(C)との層間密着性の点で、ポリアミド系エラストマーの酸変性物、ポリエステル系エラストマーの酸変性物が特に好ましい。
【0030】
ポリアミド系エラストマーとしては、炭素数6~12の環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物等のハードセグメントと、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のソフトセグメントとの共重合体が挙げられる。中でも、耐ピンホール性、低粘度の点で、ポリアミド11及び/又はポリアミド12とポリオキシテトラメチレングリコールとのブロック共重合体が好ましい。
ポリアミド系エラストマー100質量%におけるハードセグメントとソフトセグメントとの質量組成比は、(10~70):(30~90)が好ましく、(10~50):(50~90)がより好ましく、(10~40):(60~90)が更に好ましい。
ポリアミド系エラストマーは、ショア硬度D20以上70以下が好ましく、上限は60以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。ショア硬度D70以下により、フィルムの柔軟性、耐屈曲ピンホール性が良好となる。
融点は200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下が更に好ましい。融点が200℃以下であれば、中層(B)の脂肪族ポリアミド樹脂と混合した際に未溶融ブツや分散不良が生じ難く、フィルム製膜時に吐出ムラやゲル・ブツの発生を抑制することができる。
【0031】
ポリエステル系エラストマーとしては、芳香族ポリエステル等のハードセグメントと、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のソフトセグメントとの共重合体が挙げられる。中でも、エラストマーの引張物性等の機械的強度、耐熱性、柔軟性、低温特性のバランスの点でポリブチレンテレフタレートとポリオキシテトラメチレングリコールとのブロック共重合体が好ましい。
ポリエステル系エラストマー100質量%におけるハードセグメントとソフトセグメントとの質量組成比は、(10~70):(30~90)が好ましく、(10~50):(50~90)がより好ましく、(10~30):(70~90)が更に好ましい。
ポリエステル系エラストマーは、ショア硬度D20以上70以下が好ましく、上限は60以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。ショア硬度D70以下により、フィルムの柔軟性、耐屈曲ピンホール性が良好となる。融点は200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下が更に好ましい。融点が200℃以下であれば、中層(B)の脂肪族ポリアミド樹脂と混合した際に未溶融ブツや分散不良が生じ難く、フィルム製膜時に吐出ムラやゲル・ブツの発生を抑制することができる。
【0032】
ポリスチレン系エラストマーとしては、ポリスチレン等のハードセグメントと、炭素数2~4のポリアルキレン、ポリエン等のソフトセグメントとの共重合体が挙げられる。例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)等である。中でも、常温から冷凍温度までの温度範囲における耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性の点で、SIBSが好適である。
SIBSの数平均分子量は20,000~150,000が好ましく、30,000~100,000がより好ましい。数平均分子量20,000以上により、フィルムの耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性が良好となり、数平均分子量150,000以下により、スチレン系エラストマーの流動性が良好となり、中層(B)の脂肪族ポリアミド樹脂と混合した際のフィルム製膜性が良好となる。
【0033】
ポリオレフィン系エラストマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のハードセグメントと、エチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)等のソフトセグメントとの共重合体が挙げられる。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー等も用いることができる。
【0034】
ポリウレタン系エラストマーとしては、ジイソシアネートとジオールの共重合体であり、分子構造中のイソシアネートは水素添加されているものが好ましい。イソシアネートが芳香族系である場合、芳香環が水素添加により脂環へと転換されるため、耐紫外線変色性に優れる。また、ポリウレタン系エラストマーの高分子量ジオールは、耐加水分解性の観点から、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルが好ましい。
【0035】
<内層(C)>
本発明のフィルムは、ガスバリア性樹脂を含む内層(C)を有する。
ガスバリア性樹脂としては、特に制限はなく、公知の芳香族ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フランジカルボン酸基、またはナフタレンジカルボン酸基含有ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン樹脂等を用いることができる。より高いガスバリア性の点から、ポリメタキシレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましく、特にEVOHが好ましい。ポリアミドMXD6の場合は、ガスバリア性の他に耐熱水性もあるので、ボイル・レトルト用途の包装材にも使用できる利点がある。
【0036】
ポリアミドMXD6、EVOHは、高いガスバリア性を有する一方で、樹脂物性が硬質で、脆性破壊しやすい、他の樹脂との接着性が弱いという特性を持ち、低温条件下では更にその特性が顕著となる。そのため、内層(C)が外部から受ける応力を中層(B)と外層(A)により緩和させること、内層(C)と中層(B)との層間密着性を向上させることが、フィルムの耐屈曲ピンホール性、耐突刺し性を向上させる点で重要となる。本発明のフィルムは、脂肪族ポリアミド樹脂を99質量%以上含有する外層(A)と、脂肪族ポリアミド樹脂70~85質量%と熱可塑性エラストマー15~30質量%とを含有する中層(B)により、内層(C)の受ける外力を緩和ができる。
【0037】
内層(C)の層厚のフィルム総厚に対する比は、特に制限はないが、5.0~30.0%が好ましく、8.0~28.0%がより好ましく、10.0~25.0%が更に好ましい。5.0%以上により、フィルムのガスバリア性が良好となり、30.0%以下によりフィルムの耐ピンホール性が向上しやすい。
【0038】
本発明のフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、各層に公知の添加剤を添加できる。添加剤としては、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、顔料、着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、目ヤニ防止剤、結晶核剤等が挙げられる。
【0039】
<製造方法>
本発明のフィルムは、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムでもよく、例えば以下の方法を用いて製造できる。
未延伸フィルムは、各層の原材料を乾燥させ、所定の配合比で各層押出機に投入し、溶融した樹脂をフィードブロック、またはマルチマニホールドのフラットダイ、または環状ダイで合流させてから共押出し、急冷することによって、実質的に無定型で配向していない未延伸のフィルムとして製造できる。
【0040】
延伸フィルムは、上記の未延伸フィルムを、フィルムの流れ方向(縦方向)、及び/又はこれと直角な方向(横方向)において、一方向に通常2.0~5.0倍、好ましくは縦横二軸方向に各々2.5~4.5倍の範囲で延伸する。縦方向、および横方向の延伸倍率が係る範囲であることによって、フィルムが有効に延伸配向し、十分なフィルム強度を有し、延伸時の破断が起き難い。
二軸延伸の方法としては、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、従来公知の延伸方法がいずれも採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、未延伸フィルムを30~100℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に延伸し、続いてテンター式横延伸機によって60~200℃の温度範囲内で横方向に延伸することにより製造することができる。また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、40~230℃の温度範囲において、縦横の各軸方向に同時に延伸し製造することができる。
二軸延伸フィルムに寸法安定性を付与するために、二軸延伸に続けて160~225℃の熱固定処理を行うことができる。また、熱固定による結晶化収縮の応力を緩和させ幅方向の収縮率を均等にする目的で、熱固定中に幅方向に3~10%程度の弛緩を行うことができる。
【0041】
<包装体>
本発明のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムは、高いガスバリア性を有する上、低温においても耐屈曲ピンホール性が高く、耐突刺し性も十分あり、また透明性が良好でフィルムの美観性、包装内容物の視認性が良いので、常温、冷蔵、冷凍条件の各種食品等の包装体に好適に使用できる。包装体としては、特に制限はないが、例えば、袋体、蓋材、底材、チューブ、タンク、ラベル等が挙げられる。
本発明のフィルムを包装体に用いる場合は、公知の方法で、シーラントフィルム、ポリエステル系樹脂フィルム等の他の熱可塑性樹脂フィルムと積層したり、印刷等の加飾加工をしたりしてもよい。積層の数や構成は、特に制限はない。
【実施例
【0042】
実施例、比較例を用いて説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
下記の原材料を用いてガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムを作製し、評価を行い表1に纏めた。
【0043】
<原材料>
(脂肪族ポリアミド樹脂)
PA-1; ポリアミド6、相対粘度(96%硫酸)3.4、融点222.5℃
【0044】
(熱可塑性エラストマー)
TPEE; ポリエステル系エラストマー、無水マレイン酸変性-ポリブチレンテレフタレート(PBT)-ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)共重合体、PTMG共重合比率76質量%、酸変性比率0.3質量%
TPAE; ポリアミド系エラストマー、ポリアミド12(PA12)-ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)共重合体、PTMG共重合比率50質量%
【0045】
(ガスバリア性樹脂)
GB-1; エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン共重合比率25モル%、けん化度99%以上
GB-2; ポリメタキシレンアジパミド(MXD6ナイロン)
【0046】
<フィルム作製(実施例1~5、比較例1~4)>
原材料を表1に示す各層組成比で配合し、外層(A)、中層(B)、内層(C)の樹脂組成物をそれぞれφ65mm単軸押出機に投入し、各押出機により溶融させた樹脂を分配ブロックで分割かつ共押出Tダイ内で多層化させ、[外層(A)/中層(B)/内層(C)/中層(B)/外層(A)]の5層構成の溶融フィルムを押出し、30℃の冷却ロール上で急冷して未延伸フィルムを作製した。
次いで、得られた未延伸フィルムを、55℃条件のロール式延伸機にて縦方向3.0倍延伸し、次いで、100℃条件のテンター式横延伸機にて横方向に3.5倍延伸した。引き続き、得られた二軸延伸フィルムを215℃条件で熱固定を行った。その後、室温まで冷却し、クリップの把持部に相当する両端部分はトリミングし、トリミング後のフィルムをロール状に巻き取り、二軸延伸フィルムを得た。
【0047】
<評価>
得られた二軸延伸フィルムについて、以下の評価を行い、表1に纏めた。
(厚み)
フィルム総厚は、接触式膜厚計で測定した。各層厚は、フィルムの断面を顕微鏡観察して計測した。
【0048】
(ガスバリア性)
JIS K-7126 B法に準拠して、23℃相対湿度50%条件で、酸素透過率(単位:cc/m/24h/atm)を測定した。
酸素透過率は、ガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムとして低い値ほど好ましい。10.0cc/m/24h/atm以下が好ましく、8.0cc/m/24h/atm以下がより好ましく、5.0cc/m/24h/atm以下が更に好ましく、3.0cc/m/24h/atm以下が特に好ましく、1.5cc/m/24h/atm以下が最も好ましい。
【0049】
(透明性)
JIS K7136:2000に準拠して、ヘーズ(単位:%)を測定した。
ヘーズは、10.0%以下が好ましく、8.0%以下がより好ましく、7.0%以下がさらに好ましく、5.0%以下が特に好ましい。
【0050】
(耐屈曲ピンホール性)
20cm×28cmの大きさに切断したフィルムを、以下の示す所定の温度、相対湿度50%の条件下に、24時間以上静置して調温湿し、MIL-B-131Cの規格に準拠した理学工業社製ゲルボフレックステスターNo.901型を使用して、次のように屈曲テストを繰り返し、481cm当たりのピンホール数(単位:個)を計測した。
フィルムを長さ20cm円周28cmの円筒状にし、当該巻架した円筒状フィルムの一端を上記テスターの円盤状固定ヘッドの外周に、他端を上記テスター円盤状可動ヘッドの外周にそれぞれ固定した。固定ヘッドと可動ヘッドとは17.5cm隔てて対向している。
次いで、上記可動ヘッドを上記固定ヘッドの方向に、平行に対向した両ヘッドの軸に沿って8.8cm接近させる間に440゜回転させ、続いて回転させることなしに6.3cm直進させ、その後、これらの動作を逆に行わせ、上記可動ヘッドを最初の位置に戻すまでの行程を1回とする屈曲テストを、1分あたり40回の速度で、連続して所定の回数行った。その後、屈曲テストしたフィルムの固定ヘッドと可動ヘッドの外周に固定した部分を除いた17.5cm×27.5cmの面積481cm内の部分に生じたピンホール数を、サンコー電子研究所製ピンホールテスターTRD型により1kVの電圧を印加して、計測した。
温度、湿度、屈曲試験回数は、(イ)-25℃相対湿度50%、1000回、(ロ)5℃相対湿度50%、3000回、(は)23℃相対湿度50%、3000回、の3条件で行った。
ピンホール数は、各条件において5.0個/481cm以下が好ましく、4.0個/481cm以下がより好ましく、3.0個/481cm以下が更に好ましく、2.0個/481cm以下が特に好ましく、1.0個/481cm以下が最も好ましい。
【0051】
(耐衝撃性)
JIS K7211-2:2006に基づき、高速試験機を用い、-10℃条件でパンクチャーエネルギー(単位:J)を測定した。
本発明のフィルムは耐衝撃性に優れ、パンクチャーエネルギーは、0.6J以上が好ましく、0.8J以上がより好ましく、1.0J以上が更に好ましい。耐衝撃性の指標となるパンクチャーエネルギーが高いと、耐屈曲性も良好となり易い。
【0052】
(耐突刺し性)
東洋精機製作所製ストログラフVG5-E機を用い、23℃、直径0.5mm及び先端形状半径0.5mmの針、速度50mm±5mm/分の条件で突刺し試験を行い、貫通するまでの最大力を突刺し強度(単位:g/枚)として求めた。
突刺し強度は、480g/枚以上が好ましく、500g/枚以上がより好ましく、520g/枚以上が更に好ましい。
【0053】
(引張物性)
JIS K7127:1999に基づき、試験速度200mm/min、-10℃と23℃の条件で、縦方向(MD)、横方向(TD)の引張破断応力(単位:MPa)を測定した。
引張破断応力は、MDまたはTDの少なくとも何れかの方向で240MPa以上であることが好ましく、両方向とも240MPa以上であることがより好ましい。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例、比較例の評価結果は、以下の通りであった。
(実施例1~5)
中層(B)が、脂肪族ポリアミド系樹脂に熱可塑性エラストマーがnmオーダーで微分散し、耐屈曲ピンホール性が、冷凍温度-25℃、1000回の条件でピンホール数2.0個/481cm以下、冷蔵温度5度、3000回の条件で3.0個/481cm以下、常温23℃、3000回の条件で1.0個/481cm以下と大変優れていた。実施例1~3と実施例5は、中層(B)の熱可塑性エラストマーがTPEEであり、TPAEを用いた実施例4に比べ、-25℃及び5℃条件のピンホール数が少なく、より優れていた。
また、-10℃のパンクチャーエネルギーが1.0J以上と十分な耐衝撃性があり、耐屈曲ピンホール性の向上に寄与したものと考えられた。
透明性は、何れの例もヘーズ7.0%以下と良好であり、中でも、中層(B)にTPEEを用いた実施例1~3と実施例5はヘーズ5.0%以下とより良好であった。
耐突刺し性は、突刺し強度520g/枚以上であり、二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムとして十分強度であった。
引張破断応力は、-10℃条件でMD、TDとも260MPa以上と高く、23℃条件でMD、TDとも240MPa以上が得られた。
ガスバリア性は、実施例1~4は、内層(C)のガスバリア性樹脂がEVOHであり、酸素透過率が1.5cc/m/24h/atm以下と高いガスバリア性を示した。実施例5のガスバリア性樹脂はポリアミドMXD6であり、8.0cc/m/24h/atm以下の良好な酸素透過率を示した。
従って、実施例1~5は、低温耐屈曲ピンホール性が大変優れている上、耐突刺し性、透明性も良好なガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムであった。また、フィルム製膜工程において、工程ロールへのエラストマーの付着はなく、押出や巻取りも問題なく、フィルムを製造できた。
【0056】
(比較例1)
中層(B)に熱可塑性エラストマーを含まないため、-25℃、5℃条件の耐屈曲ピンホール性はピンホール数10個/481cm以上、23℃条件でも1.0個/481cm超と不良であった。また、-10℃条件のパンクチャーエネルギーも、0.8J未満と不十分強度であった。
【0057】
(比較例2)
中層(B)の熱可塑性エラストマー含有率が10質量%であり、-25℃、5℃条件の耐屈曲ピンホール数が4.0個/481cm超と不良であった。また、23℃条件のMDの引張破断応力が240MPa未満と不十分であった。
【0058】
(比較例3)
外層(A)の脂肪族ポリアミド樹脂含有率が99質量%未満で、熱可塑性エラストマーを10質量%含み、突刺し強度が450g/枚と耐突刺し性が弱かった。また、引張破断応力も23℃のMDが240MPa未満と低いほか、-10℃、23℃、MD、TDの各条件で実施例1~5に比べ全体的に値が低かった。
【0059】
(比較例4)
中層(B)の熱可塑性エラストマーの含有率が35質量%と高いため、熱可塑性エラストマーが脂肪族ポリアミド系樹脂の中で微分散できずに分散粒子径が粗大となった。その結果、ヘーズは10.0%超と透明性が悪く、また、屈曲試験や衝撃試験の外力に対して、脂肪族ポリアミド系樹脂(バルク、海)と熱可塑性エラストマー(ドメイン、島)との分散粒子の界面でボイドが激しく発生し、耐屈曲ピンホール性が悪化し、更に、外層(A)の耐突刺し性効果に対して中層(B)が相乗的な効果を付与できず突刺し強度も低かったと考えられる。
また、23℃条件のMDの引張破断応力も、240MPa未満と不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、透明性が高く、フィルム外観の良好な耐屈曲ピンホール性に優れたガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムを提供できるので、常温、冷蔵、冷凍で用いる食品用などの包装体に有用である。また更に、高価なエラストマーを大量に使用することがないので、フィルムの製造コストを低減でき、経済性に有効である。
本発明のガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムは、フィルム物性として常温から低温条件まで高い耐屈曲ピンホール性を有し、且つ透明性と耐突刺し性が良好な、好適は包装適性を示す。また、フィルム製造工程において熱可塑性エラストマー起因の製造トラブルの生じず、高い生産性を示す。従って、長期保存および低温包装の点、及び経済性の点で、利用価値が大変高い。
【符号の説明】
【0061】
100:ガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルム
10:外層(A)
20:中層(B)
30:内層(C)
図1