(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】重合体組成物及び単層位相差材
(51)【国際特許分類】
C08L 101/08 20060101AFI20240709BHJP
C08F 20/30 20060101ALI20240709BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08L101/08
C08F20/30
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2021511911
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013617
(87)【国際公開番号】W WO2020203632
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2019065794
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根木 隆之
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/070507(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/133826(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/182704(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(a)で表される光反応性部位を有する側鎖を有する側鎖型重合体、及び
(B)下記式(B)で表されるアルキルセロソルブアセテートを含む有機溶媒
を含む重合体組成物。
【化1】
(式中、R
1は、炭素数1~30のアルキレン基であり、該アルキレン基の1つ又は複数の水素原子が、フッ素原子又は有機基で置換されていてもよい。また、R
1中の-CH
2CH
2-が、-CH=CH-で置換されていてもよく、R
1中の-CH
2-が、-O-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NH-、-NH-C(=O)-NH-及び-C(=O)-からなる群から選ばれる基で置換されていてもよい。ただし、隣接する-CH
2-が同時にこれらの基で置換されることはない。また、-CH
2-は、R
1中の末端の-CH
2-であってもよい。
R
2は、2価の芳香族基、2価の脂環族基、2価の複素環式基又は2価の縮合環式基である。
R
3は、単結合、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-又は-CH=CH-C(=O)-O-である。
Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、c≧2のとき、各Rは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
aは、0、1又は2である。
bは、0又は1である。
cは、0≦c≦2b+4を満たす整数である。
破線は、結合手である。)
【化2】
(式中、R
21は、炭素数1~10のアルキル基である。)
【請求項2】
上記光反応性部位を有する側鎖が、下記式(a1)で表されるものである請求項1に記載の重合体組成物。
【化3】
(式中、R
1、R
2及びaは、上記と同じ。
R
3Aは、単結合、-O-、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。
式(a1)中のベンゼン環は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基及びニトロ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。
破線は、結合手である。)
【請求項3】
(A)側鎖型重合体が、更に、液晶性のみを発現する側鎖を有する請求項1又は2に記載の重合体組成物。
【請求項4】
上記液晶性のみを発現する側鎖が、下記式(1)~(13)のいずれかで表される液晶性側鎖である請求項3に記載の重合体組成物。
【化4】
【化5】
(式中、A
1、A
2はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH
2-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-CH=CH-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-CH=CH-である。
R
11は、-NO
2、-CN、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルキルオキシ基である。
R
12は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、及びこれらを組み合わせて得られる基からなる群から選ばれる基であり、これらに結合する水素原子が、-NO
2、-CN、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のアルコキシ基で置換されてもよい。
R
13は、水素原子、-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシ基である。
Eは、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。
dは、1~12の整数である。
k1~k5は、それぞれ独立に、0~2の整数であるが、k1~k5の合計は2以上である。
k6及びk7は、それぞれ独立に、0~2の整数であるが、k6及びk7の合計は1以上である。
m1、m2及びm3は、それぞれ独立に、1~3の整数である。
nは、0又は1である。
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)-、-CH
2O-、-CH=N-又は-CF
2-である。
破線は、結合手である。)
【請求項5】
上記液晶性のみを発現する側鎖が、式(1)~(11)のいずれかで表される液晶性側鎖である請求項4に記載の重合体組成物。
【請求項6】
上記アルキルセロソルブアセテート
が、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート及びブチルセロソルブアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~5のいずれか1項に記載の重合体組成物。
【請求項7】
(I)請求項1~6のいずれか1項に記載の重合体組成物を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程、
(II)上記塗膜に、偏光した紫外線を照射する工程、及び
(III)上記紫外線を照射した塗膜を加熱して、位相差材を得る工程
を含む、単層位相差材の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物から得られる単層位相差材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体を含む組成物及び単層位相差材に関する。詳しくは、表示装置や記録材料等の用途に好適な光学特性を有する材料、特に、液晶ディスプレイ用の偏光板及び位相差板等の光学補償フィルムに好適に利用できる液晶性重合体、該重合体を含む組成物、及び該組成物から得られる単層位相差材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示品位の向上や軽量化等の要求から、偏光板や位相差板等の光学補償フィルムとして、内部の分子配向構造が制御された高分子フィルムの要求が高まっている。この要求に応えるべく、重合性液晶化合物が有する光学異方性を利用したフィルムの開発がなされている。ここで用いられる重合性液晶化合物は、一般に、重合性基と液晶構造部位(スペーサ部とメソゲン部とを有する構造部位)とを有する液晶化合物であり、この重合性基としてアクリル基が広く用いられている。
【0003】
このような重合性液晶化合物は、一般的に、紫外線等の放射線を照射して重合する方法で重合体(フィルム)とされる。例えば、アクリル基を有する特定の重合性液晶化合物を支持体間に担持し、この化合物を液晶状態に保持しつつ放射線を照射して重合体を得る方法(特許文献1)や、アクリル基を有する2種類の重合性液晶化合物の混合物又はこの混合物にカイラル液晶を混合した組成物に光重合開始剤を添加し、紫外線を照射して重合体を得る方法(特許文献2)が知られている。
【0004】
また、液晶配向膜を必要としない重合性液晶化合物や重合体を用いた配向フィルム(特許文献3、4)、光架橋部位を含む重合体を用いた配向フィルム(特許文献5、6)等、様々な単層塗布型配向フィルムが報告されてきた。しかし、上記フィルム作製プロセスは、困難である、用いられる重合体の溶媒としてNMP、クロロホルム、クロロベンゼン等の溶解力に優れた溶媒を使う必要がある等、重合体の溶解性が低い等の問題があり、このような問題を解決する材料はこれまでに見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-70407号公報
【文献】特開平9-208957号公報
【文献】欧州特許出願公開第1090325号明細書
【文献】国際公開第2008/031243号
【文献】特開2008-164925号公報
【文献】特開平11-189665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、より簡単なプロセスにより、位相差値の高い単層位相差材作製を可能とする新規重合体、該重合体を含む組成物、及び該組成物から得られる単層位相差材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の重合体及び特定の添加剤を含む組成物を用いることで、液晶配向膜を使用することなく、高い屈折率異方性(Δn)を有する単層位相差材が得られること、更に、位相差値が高く、濁りがない単層位相差材を作製可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明は、下記重合体組成物及び単層位相差材を提供する。
1.(A)下記式(a)で表される光反応性部位を有する側鎖を有する側鎖型重合体、及び
(B)下記式(B)で表されるアルキルセロソルブアセテートを含む有機溶媒
を含む重合体組成物。
【化1】
(式中、R
1は、炭素数1~30のアルキレン基であり、該アルキレン基の1つ又は複数の水素原子が、フッ素原子又は有機基で置換されていてもよい。また、R
1中の-CH
2CH
2-が、-CH=CH-で置換されていてもよく、R
1中の-CH
2-が、-O-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NH-、-NH-C(=O)-NH-及び-C(=O)-からなる群から選ばれる基で置換されていてもよい。ただし、隣接する-CH
2-が同時にこれらの基で置換されることはない。また、-CH
2-は、R
1中の末端の-CH
2-であってもよい。
R
2は、2価の芳香族基、2価の脂環族基、2価の複素環式基又は2価の縮合環式基である。
R
3は、単結合、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-又は-CH=CH-C(=O)-O-である。
Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、c≧2のとき、各Rは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
aは、0、1又は2である。
bは、0又は1である。
cは、0≦c≦2b+4を満たす整数である。
破線は、結合手である。)
【化2】
(式中、R
21は、炭素数1~10のアルキル基である。)
2.上記光反応性部位を有する側鎖が、下記式(a1)で表されるものである1の重合体組成物。
【化3】
(式中、R
1、R
2及びaは、上記と同じ。
R
3Aは、単結合、-O-、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。
式(a1)中のベンゼン環は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基及びニトロ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。
破線は、結合手である。)
3.(A)側鎖型重合体が、更に、液晶性のみを発現する側鎖を有する1又は2の重合体組成物。
4.上記液晶性のみを発現する側鎖が、下記式(1)~(13)のいずれかで表される液晶性側鎖である3の重合体組成物。
【化4】
【化5】
(式中、A
1、A
2はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH
2-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-CH=CH-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-CH=CH-である。
R
11は、-NO
2、-CN、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルキルオキシ基である。
R
12は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、及びこれらを組み合わせて得られる基からなる群から選ばれる基であり、これらに結合する水素原子が、-NO
2、-CN、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のアルコキシ基で置換されてもよい。
R
13は、水素原子、-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシ基である。
Eは、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。
dは、1~12の整数である。
k1~k5は、それぞれ独立に、0~2の整数であるが、k1~k5の合計は2以上である。
k6及びk7は、それぞれ独立に、0~2の整数であるが、k6及びk7の合計は1以上である。
m1、m2及びm3は、それぞれ独立に、1~3の整数である。
nは、0又は1である。
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)-、-CH
2O-、-CH=N-又は-CF
2-である。
破線は、結合手である。)
5.上記液晶性のみを発現する側鎖が、式(1)~(11)のいずれかで表される液晶性側鎖である4の重合体組成物。
6.上記アルキルセロソルブアセテートが、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート及びブチルセロソルブアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種である1~5のいずれかの重合体組成物。
7.(I)1~5のいずれかの重合体組成物を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程、
(II)上記塗膜に、偏光した紫外線を照射する工程、及び
(III)上記紫外線を照射した塗膜を加熱して、位相差材を得る工程
を含む、単層位相差材の製造方法。
8.1~5のいずれかの組成物から得られる単層位相差材。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、薄膜であっても位相差値の高い単層位相差材と、それを与える重合体とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得て本発明を完成するに至った。
本発明の重合体組成物は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型重合体(以下、単に側鎖型重合体ともいう。)を有しており、上記重合体組成物を用いて得られる塗膜は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型重合体を有する膜である。この塗膜にはラビング処理を行うこと無く、偏光照射によって配向処理を行う。そして、偏光照射の後、その側鎖型重合体膜を加熱する工程を経て、光学異方性が付与されたフィルム(以下、単層位相差材ともいう。)となる。このとき、偏光照射によって発現した僅かな異方性がドライビングフォースとなり、液晶性側鎖型重合体自体が自己組織化により効率的に再配向する。その結果、単層位相差材として高効率な配向処理が実現し、高い光学異方性が付与された単層位相差材を得ることができる。
【0011】
また、本発明における重合体組成物では、(A)成分である側鎖型重合体を含む重合体組成物において、溶媒として式(B)で表されるアルキルセロソルブアセテートを含む。これにより、得られる位相差材の平坦性が向上する結果、光学異方性が向上する。なお、これらは本発明のメカニズムに関する発明者の見解を含むものであり、本発明を拘束するものではない。
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0012】
[重合体組成物]
本発明の重合体組成物は、(A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型重合体、及び(B)アルキルセロソルブアセテートを含む有機溶媒を含むことを特徴とする。
【0013】
[(A)側鎖型重合体]
(A)成分は、所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型重合体であって、下記式(a)で表される光反応性部位を有する側鎖(以下、側鎖aともいう。)を有する側鎖型重合体である。
【化6】
【0014】
式(a)中、R1は、炭素数1~30のアルキレン基であり、該アルキレン基の1つ又は複数の水素原子が、フッ素原子又は有機基で置換されていてもよい。また、R1中の-CH2CH2-が、-CH=CH-で置換されていてもよく、R1中の-CH2-が、-O-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NH-、-NH-C(=O)-NH-及び-C(=O)-からなる群から選ばれる基で置換されていてもよい。ただし、隣接する-CH2-が同時にこれらの基で置換されることはない。また、-CH2-は、R1中の末端の-CH2-であってもよい。R2は、2価の芳香族基、2価の脂環族基、2価の複素環式基又は2価の縮合環式基である。R3は、単結合、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-又は-CH=CH-C(=O)-O-である。Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、c≧2のとき、各Rは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。aは、0、1又は2である。bは、0又は1である。cは、0≦c≦2b+4を満たす整数である。破線は、結合手である。
【0015】
R1で表される炭素数1~30のアルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等が挙げられる。
【0016】
R2で表される2価の芳香族基としては、フェニレン基、ビフェニリレン基等が挙げられる。R2で表される2価の脂環族基としては、シクロヘキサンジイル基等が挙げられる。R2で表される2価の複素環式基としては、フランジイル基等が挙げられる。R2で表される2価の縮合環式基としては、ナフチレン基等が挙げられる。
【0017】
側鎖aとしては下記式(a1)で表されるもの(以下、側鎖a1ともいう。)が好ましい。
【化7】
【0018】
式(a1)中、R1、R2及びaは、上記と同じ。R3Aは、単結合、-O-、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。式(a1)中のベンゼン環は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のハロアルコキシ基、シアノ基及びニトロ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。破線は、結合手である。
【0019】
側鎖a1としては、例えば、下記式(a1-1)で表されるものが好ましい。
【化8】
【0020】
式(a1-1)中、Lは、直鎖状又は分岐状の炭素数1~16のアルキレン基である。Xは、単結合、-O-、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。
【0021】
(A)側鎖型重合体は、250~400nmの波長範囲の光で反応し、かつ100~300℃の温度範囲で液晶性を示すものが好ましい。(A)側鎖型重合体は、250~400nmの波長範囲の光に反応する感光性側鎖を有することが好ましい。
【0022】
(A)側鎖型重合体は、主鎖に感光性を有する側鎖が結合しており、光に感応して架橋反応又は異性化反応を起こすことができる。液晶性を発現し得る感光性の側鎖型重合体の構造は、そうした特性を満足するものであれば特に限定されないが、側鎖構造に剛直なメソゲン成分を有することが好ましい。上記側鎖型重合体を単層位相差材とした際に、安定な光学異方性を得ることができる。
【0023】
液晶性を発現し得る感光性の側鎖型重合体の構造のより具体的な例としては、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基及びシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖と、側鎖aを有する構造であることが好ましい。
【0024】
また、(A)側鎖型重合体は、100~300℃の温度範囲で液晶性を示すため、更に液晶性のみを発現する側鎖(以下、側鎖bともいう。)を有することが好ましい。なお、ここで「液晶性のみを発現する」とは、側鎖bのみを有するポリマーは、本発明の位相差材の作製プロセス(すなわち、後述する工程(I)~(III))中に、感光性を示さず、液晶性のみを発現するという意味である。
【0025】
側鎖bとしては、下記式(1)~(13)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖が好ましい。
【化9】
【0026】
【0027】
式(1)~(13)中、A1、A2はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH2-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-CH=CH-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-CH=CH-である。R11は、-NO2、-CN、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルキルオキシ基である。R12は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、及びこれらを組み合わせて得られる基からなる群から選ばれる基であり、これらに結合する水素原子が、-NO2、-CN、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のアルコキシ基で置換されてもよい。R13は、水素原子、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシ基である。Eは、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。dは、1~12の整数である。k1~k5は、それぞれ独立に、0~2の整数であるが、k1~k5の合計は2以上である。k6及びk7は、それぞれ独立に、0~2の整数であるが、k6及びk7の合計は1以上である。m1、m2及びm3は、それぞれ独立に、1~3の整数である。nは、0又は1である。Z1及びZ2は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)-、-CH2O-、-CH=N-又は-CF2-である。破線は、結合手である。
【0028】
これらのうち、側鎖bとしては、式(1)~(11)のいずれかで表されるものが好ましい。
【0029】
また、(A)側鎖型重合体は、架橋性基を有する側鎖、窒素含有芳香族複素環基、アミド基及びウレタン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する側鎖等を含んでいてもよい。
【0030】
(A)成分の側鎖型重合体は、式(a)で表される構造を有するモノマー、所望により液晶性のみを発現する構造を有するモノマー、所望により架橋性基を有するモノマー、並びに所望により窒素含有芳香族複素環基、アミド基及びウレタン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するモノマーを重合することによって得ることができる。
【0031】
式(a)で表される構造を有するモノマー(以下、モノマーM1ともいう。)としては、下記式(M1)で表される化合物が挙げられる。
【化11】
(式中、R
1、R
2、R
3、R、a、m及びnは、上記と同じ。)
【0032】
モノマーM1としては、下記式(M1A)で表されるものが好ましい。
【化12】
(式中、R
1、R
2、R
3A、R及びaは、上記と同じ。)
【0033】
モノマーM1Aのうち、下記式(M1B)で表されるものがより好ましい。
【化13】
(式中、L及びXは、上記と同じ。)
【0034】
式(M1)、(M1A)及び(M1B)中、PLは、下記式(PL-1)~(PL-5)のいずれかで表される重合性基である。
【化14】
【0035】
式(PL-1)~(PL-5)中、Q1、Q2及びQ3は、水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~10のアルキル基、又はハロゲンで置換された直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~10のアルキル基である。破線は、R1又はLとの結合手である。これらモノマーのうち、あるものは市販されており、あるものは公知物質から公知の製造方法にて製造することができる。
【0036】
モノマーM1の好ましい例としては、下記式(M1-1)~(M1-5)で表されるものが挙げられる。
【化15】
(式中、PLは、上記と同じ。pは、2~9の整数である。)
【0037】
液晶性のみを発現する構造を有するモノマー(以下、モノマーM2ともいう。)は、該モノマー由来のポリマーが液晶性を発現し、該ポリマーが側鎖部位にメソゲン基を形成することができるモノマーのことである。
【0038】
側鎖の有するメソゲン基としては、ビフェニルやフェニルベンゾエート等の単独でメソゲン構造となる基であっても、安息香酸等のように側鎖同士が水素結合することでメソゲン構造となる基であってもよい。側鎖の有するメソゲン基としては、下記の構造が好ましい。
【化16】
【0039】
モノマーM2のより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基及びシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する重合性基と、式(1)~(13)の少なくとも1種からなる構造を有する構造であることが好ましい。特に、モノマーM2は、重合性基として(メタ)アクリレートを有するものであるものが好ましく、側鎖の末端が-COOHであるものが好ましい。
【0040】
モノマーM2の好ましい例としては、下記式(M2-1)~(M2-11)で表されるものが挙げられる。
【化17】
【0041】
【0042】
(A)成分の側鎖型重合体は、架橋性基を有するモノマー(以下、モノマーM3ともいう。)を用いて形成されてもよい。架橋性基としては、エポキシ基、チイラン環、アジリジン環、オキセタン環、チエタン環及びアゼチジン環から選ばれる基が好ましい。
【0043】
上記エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等の化合物が挙げられる。中でも、グリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,7-オクタジエンモノエポキサイド等が好ましい。
【0044】
チイラン環を有するモノマーとしては、具体的には、上記エポキシ基を有するモノマーのエポキシ構造がチイラン環に置き換わったもの等が挙げられる。アジリジン環を有するモノマーとしては、具体的には、上記エポキシ基を有するモノマーのエポキシ構造がアジリジン環又は1-メチルアジリジン環に置き換わったもの等が挙げられる。
【0045】
オキセタン環を有するモノマーとしては、例えば、オキセタン環を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。このようなモノマーとしては、3-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-メチル-オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-3-メチル-オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-トリフロロメチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2-トリフロロメチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-フェニル-オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2-フェニル-オキセタン、2-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、2-(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2-(メタクリロイルオキシメチル)-4-トリフロロメチルオキセタン、2-(アクリロイルオキシメチル)-4-トリフロロメチルオキセタン等が挙げられる。これらのうち、3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン等が好ましい。
【0046】
チエタン環を有するモノマーとしては、例えば、オキセタン基を有するモノマーのオキセタン基がチエタン基に置き換わったモノマーが好ましい。アゼチジン環を有するモノマーとしては、例えば、オキセタン基を有するモノマーのオキセタン基がアゼタン基に置き換わったモノマーが好ましい。
【0047】
モノマーM3としては、入手性等の点から、エポキシ基を有するモノマーとオキセタン基を有するモノマーが好ましく、エポキシ基を有するモノマーがより好ましい。中でも、入手性の点から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0048】
(A)成分の側鎖型重合体は、所望により、窒素含有芳香族複素環基、アミド基及びウレタン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するモノマー(以下、モノマーM4ともいう。)を用いて形成されてもよい。
【0049】
窒素含有芳香族複素環としては、下記式(M4A)、(M4B)及び(M4C)からなる群から選ばれる構造を少なくとも1個、好ましくは1~4個含むものが好ましい。
【化19】
(式中、Zは、直鎖状又は分岐状の炭素数1~5のアルキル基である。)
【0050】
窒素含有芳香族複素環として具体的には、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、ピラゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、プリン環、チアジアゾール環、ピリダジン環、ピラゾリン環、トリアジン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、ピラジン環、ベンズイミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、チノリン環、フェナントロリン環、インドール環、キノキサリン環、ベンゾチアゾール環、フェノチアジン環、オキサジアゾール環、アクリジン環等が挙げられる。さらに、これら窒素含有芳香族複素環の炭素原子には、ヘテロ原子を含む置換基が結合していてもよい。これらのうち、例えば、ピリジン環が好ましい。
【0051】
(A)成分の側鎖型重合体が窒素含有芳香族複素環基、アミド基及びウレタン基から選ばれる基を有することにより、本発明の重合体組成物を位相差フィルムとしたときに、上記架橋性基の架橋反応を促進するため、より耐久性の高いフィルムを得ることができる。窒素含有芳香族複素環基、アミド基及びウレタン基から選ばれる基を有する重合体を製造するには、モノマーM4を上記モノマーM1、所望によりモノマーM2及び所望によりモノマーM3と共重合させればよい。
【0052】
モノマーM4としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基及びシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された重合性基と、窒素含有芳香族複素環基、アミド基及びウレタン基を有する構造とを有するものが好ましい。アミド基及びウレタン基のNHは置換されていてもいなくてもよい。置換されていてもよい場合の置換基としては、アルキル基、アミノ基の保護基、ベンジル基等が挙げられる。
【0053】
窒素含有芳香族複素環基を有するモノマーとして具体的には、例えば、2-(2-ピリジルカルボニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-ピリジルカルボニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-ピリジルカルボニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
アミド基又はウレタン基を有するモノマーとして具体的には、2-(4-メチルピペリジン-1-イルカルボニルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、4-(6-メタクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸N-(tert-ブチルオキシカルボニル)ピペリジン-4-イルエステル、4-(6-メタクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸2-(tert-ブチルオキシカルボニルアミノ)エチルエステル等が挙げられる。
【0055】
モノマーM4としては、下記式(M4-1)~(M4-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【化20】
(式中、PL及びpは、上記と同じ。)
【0056】
また、光反応性及び/又は液晶性の発現能を損なわない範囲で、その他のモノマーを共重合することができる。その他のモノマーとしては、例えば工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーが挙げられる。その他のモノマーの具体例としては、不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
【0057】
不飽和カルボン酸の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0058】
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0059】
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0060】
ビニル化合物としては、例えば、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。スチレン化合物としては、例えば、スチレン、4-メチルスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン等が挙げられる。マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0061】
本発明の側鎖型重合体における側鎖aの含有量は、光反応性の点から、20~99.9モル%が好ましく、30~95モル%がより好ましく、40~90モル%が更に好ましい。
【0062】
本発明の側鎖型重合体における側鎖bの含有量は、位相差値の観点から、0.1~80モル%が好ましく、5~70モル%がより好ましく、10~60モル%が更に好ましい。
【0063】
本発明の側鎖型重合体における架橋性基を有する側鎖の含有量は、信頼性の向上、位相差材の特性への影響といった点から、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下が更に好ましい。
【0064】
本発明の側鎖型重合体における窒素含有芳香族複素環基、アミド基及びウレタン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する側鎖の含有量は、信頼性の向上、位相差材の特性への影響といった点から、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下が更に好ましい。
【0065】
本発明の側鎖型重合体は、上述したとおり、その他の側鎖を含んでいてもよい。その他の側鎖の含有量は、その他の側鎖以外の側鎖の含有量の合計が100モル%に満たない場合に、その残りの部分である。
【0066】
(A)成分の側鎖型重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、上述したモノマーM1、所望によりモノマーM2、所望によりモノマーM3、所望によりモノマーM4及び所望によりその他のモノマーのビニル基を利用したラジカル重合、カチオン重合又はアニオン重合により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさ等の観点からラジカル重合が特に好ましい。
【0067】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤(ラジカル熱重合開始剤、ラジカル光重合開始剤)や、可逆的付加-開裂型連鎖移動(RAFT)重合試薬等の公知の化合物を使用することができる。
【0068】
ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert-ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類(ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシシクロヘキサン等)、アルキルパーエステル類(パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ2-エチルシクロヘキサン酸-tert-アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)等が挙げられる。ラジカル熱重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル重合を光照射によって開始する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4’-イソプロピルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’-ジ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’-トリ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-(4’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-ペンチルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)]-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4’-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、2-(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、3-(2-メチル-2-ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジ(メトキシカルボニル)-4,4’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’-ジ(メトキシカルボニル)-4,3’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ジ(メトキシカルボニル)-3,3’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-(3-メチル-3H-ベンゾチアゾール-2-イリデン)-1-ナフタレン-2-イル-エタノン、2-(3-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-2(3H)-イリデン)-1-(2-ベンゾイル)エタノン等が挙げられる。ラジカル光重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
ラジカル重合法としては、特に限定されるものではなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。
【0071】
重合反応に用いる有機溶媒としては、生成したポリマーが溶解するものであれば特に限定されない。その具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1,4-ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
【0072】
上記有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。さらに、生成するポリマーを溶解させない溶媒であっても、生成したポリマーが析出しない範囲で、上述した有機溶媒に混合して使用してもよい。また、ラジカル重合において有機溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気されたものを用いることが好ましい。
【0073】
ラジカル重合の際の重合温度は、30~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50~100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な撹拌が困難となるので、モノマー濃度は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0074】
上述したラジカル重合反応においては、ラジカル重合開始剤の比率がモノマーに対して多いと得られる高分子の分子量が小さくなり、少ないと得られる高分子の分子量が大きくなるので、ラジカル開始剤の比率は重合させるモノマーに対して0.1~10モル%であることが好ましい。また重合時には各種モノマー成分や溶媒、開始剤等を追加することもできる。
【0075】
上記反応により得られた反応溶液から生成したポリマーを回収するには、反応溶液を貧溶媒に投入して、それら重合体を沈殿させればよい。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセロソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等が挙げられる。貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥させることができる。また、回収した重合体を有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるため好ましい。
【0076】
本発明の(A)側鎖型重合体は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性及び塗膜の均一性を考慮すると、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量が、2,000~2,000,000であるものが好ましく、2,000~1,000,000であるものがより好ましく、5,000~200,000であるものがより一層好ましい。
【0077】
[(B)有機溶媒]
(B)成分の有機溶媒には、下記式(B)で表されるアルキルセロソルブアセテートが含まれることが必要である。
【化21】
(式中、R
21は、炭素数1~10のアルキル基である。)
【0078】
上記アルキルセロソルブアセテートとして、炭素数が好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6のアルキル基を有するセロソルブアセテートが好ましい。その好ましい例としては、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等が挙げられる。なかでも、適切な沸点と揮発速度の点から、ブチルセロソルブアセテートが好ましい。アルキルセロソルブアセテートのアルキル鎖長が長すぎる場合、沸点が高くなり、重合体組成物の乾燥工程において乾燥しなくなるという問題が発生する。
【0079】
上記アルキルセロソルブアセテート以外の有機溶媒は、重合体が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例としては、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ε-カプロラクタム、2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。なかでも、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドンが、汎用性、溶解性の点から好ましい。
【0080】
本発明の重合体組成物の粘度は、インクジェット塗布の点から、好ましくは5~20mPa・sであり、特に好ましくは5~15mPa・sである。本発明の重合体組成物における溶媒の含有量は、上記の粘度を考慮して選択され、好ましくは80~99質量%であり、特に好ましくは85~95質量%である。この場合、予め、重合体の濃厚溶液を作製し、かかる濃厚溶液から重合体組成物とする場合に希釈してもよい。
【0081】
有機溶媒中のアルキルセロソルブアセテートの含有量は、好ましくは1~60質量%、より好ましくは2~40質量%である。少ない含有量では、インクジェット塗布膜の面内均一性、周辺部直線性が不十分となり、多すぎる含有量では液晶配向剤の冷凍時における保存安定性が悪化する。
【0082】
本発明の重合体組成物における重合体の含有量(濃度)は、形成させようとする位相差材の厚みの設定によっても適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から、好ましくは1~20質量%であり、特に好ましくは5~15質量%である。
【0083】
本発明の重合体組成物は、ポリマー成分を溶解させるための有機溶媒のほかに、重合体組成物を基板へ塗布する際の塗膜均一性を向上させるための溶媒を含んでもよい。かかる溶媒としては、一般的に上記有機溶媒よりも低表面張力の溶媒が用いられる。その具体例としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
[その他の成分]
本発明の重合体組成物は、(A)及び(B)成分以外の成分を含んでもよい。その例としては、重合体組成物を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、位相差材と基板との密着性を向上させる化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
膜厚均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤等が挙げられる。これらの具体例としては、エフトップ(登録商標)301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(登録商標)F171、F173、R-30(DIC社製)、フロラードFC430、FC431(スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710(AGC社製)、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル社製)等が挙げられる。これらの界面活性剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.01~2質量部が好ましく、0.01~1質量部がより好ましい。
【0086】
位相差材と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、官能性シラン含有化合物等が挙げられ、その具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0087】
さらに、基板と位相差材の密着性の向上に加え、偏光板を構成した時のバックライトによる特性の低下等を防ぐ目的で、フェノプラスト系化合物やエポキシ基含有化合物を、重合体組成物に添加してもよい。
【0088】
フェノプラスト系添加剤の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【化22】
【0089】
エポキシ基含有化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0090】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その含有量は、重合体組成物に含まれる重合体成分100質量部に対し、0.1~30質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましい。含有量が0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶の配向性が悪くなる場合がある。
【0091】
添加剤として、光増感剤を用いることもできる。光増感剤としては、無色増感剤及び三重項増感剤が好ましい。
【0092】
光増感剤としては、芳香族ニトロ化合物、クマリン(7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、7-ヒドロキシ4-メチルクマリン)、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、芳香族2-ヒドロキシケトン、芳香族2-ヒドロキシケトン(2-ヒドロキシベンゾフェノン、モノ-又はジ-p-(ジメチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン等)、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンズアントロン、チアゾリン(2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(α-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(p-フルオロベンゾイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン等)、オキサゾリン(2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(α-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(p-フルオロベンゾイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン等)、ベンゾチアゾール、ニトロアニリン(m-又はp-ニトロアニリン、2,4,6-トリニトロアニリン等)、ニトロアセナフテン(5-ニトロアセナフテン等)、2-[(m-ヒドロキシ-p-メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール、ベンゾインアルキルエーテル、N-アルキル化フタロン、アセトフェノンケタール(2,2-ジメトキシフェニルエタノン等)、ナフタレン(2-ナフタレンメタノール、2-ナフタレンカルボン酸等)、アントラセン(9-アントラセンメタノール、9-アントラセンカルボン酸等)、ベンゾピラン、アゾインドリジン、メロクマリン等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、芳香族2-ヒドロキシケトン(ベンゾフェノン)、クマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン及びアセトフェノンケタールである。
【0093】
本発明の重合体組成物には、上述したもののほか、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、位相差材の誘電率や導電性等の電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、さらには、位相差材にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的で、架橋性化合物を添加してもよい。
【0094】
[重合体組成物の調製]
本発明の重合体組成物は、単層位相差材の形成に好適となるように塗布液として調製されることが好ましい。すなわち、本発明に用いられる重合体組成物は、(A)成分及び上述した膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物等が(B)成分の有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。ここで、(A)成分の含有量は、本発明の組成物中1~20質量%が好ましく、より好ましくは3~15質量%、特に好ましくは3~10質量%である。
【0095】
本発明の重合体組成物は、(A)成分の重合体以外に、液晶発現能及び感光性能を損なわない範囲でその他の重合体が含まれていてもよい。その際、重合体成分中におけるその他の重合体の含有量は、好ましくは0.5~80質量%、より好ましくは1~50質量%である。その他の重合体は、例えば、ポリ(メタ)アクリレートやポリアミック酸やポリイミド等の、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型重合体ではない重合体等が挙げられる。
【0096】
[単層位相差材]
本発明の単層位相差材は、下記工程(I)~(III)を含む方法によって製造することができる。
(I)本発明の組成物を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程、
(II)上記塗膜に偏光した紫外線を照射する工程、及び
(III)上記紫外線を照射した塗膜を加熱して、位相差材を得る工程。
【0097】
[工程(I)]
工程(I)は、本発明の組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程である。より具体的には、本発明の組成物を基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属(例えば、アルミニウム、モリブデン、クロム等)が被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)やフィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルム)等の上に、バーコート、スピンコート、フローコート、ロールコート、スリットコート、スリットコートに続いたスピンコート、インクジェット法、印刷法等の方法によって塗布する。塗布した後、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブン等の加熱手段により50~200℃、好ましくは50~150℃で溶媒を蒸発させて塗膜を得ることができる。
【0098】
[工程(II)]
工程(II)では、工程(I)で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する。塗膜の膜面に偏光した紫外線を照射する場合、基板に対して一定の方向から偏光板を介して偏光された紫外線を照射する。上記紫外線としては、波長100~400nmの範囲の紫外線を使用することができる。好ましくは、使用する塗膜の種類によりフィルター等を介して最適な波長を選択する。そして、例えば、選択的に光架橋反応を誘起できるように、波長290~400nmの範囲の紫外線を選択して使用することができる。紫外線としては、例えば、高圧水銀灯から放射される光を用いることができる。
【0099】
偏光した紫外線の照射量は、使用する塗膜に依存する。照射量は、該塗膜における、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸光度と垂直な方向の紫外線吸光度との差であるΔAの最大値を実現する偏光紫外線の量の1~70%の範囲内とすることが好ましく、1~50%の範囲内とすることがより好ましい。
【0100】
[工程(III)]
工程(III)では、工程(II)で偏光した紫外線を照射された塗膜を加熱する。加熱により、塗膜に配向制御能を付与することができる。
【0101】
加熱は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブン等の加熱手段を用いることができる。加熱温度は、使用する塗膜の液晶性を発現させる温度を考慮して決めることができる。
【0102】
加熱温度は、本発明の組成物に含まれる(A)成分の重合体が液晶性を発現する温度(以下、液晶発現温度という。)の温度範囲内であることが好ましい。塗膜のような薄膜表面の場合、塗膜表面の液晶発現温度は、(A)成分の重合体をバルクで観察した場合の液晶発現温度よりも低いことが予想される。このため、加熱温度は、塗膜表面の液晶発現温度の温度範囲内であることがより好ましい。すなわち、偏光紫外線照射後の加熱温度の温度範囲は、(A)成分の重合体の液晶発現温度の温度範囲の下限より10℃低い温度を下限とし、その液晶温度範囲の上限より10℃低い温度を上限とする範囲の温度であることが好ましい。加熱温度が、上記温度範囲よりも低いと、塗膜における熱による異方性の増幅効果が不十分となる傾向があり、また加熱温度が、上記温度範囲よりも高すぎると、塗膜の状態が等方性の液体状態(等方相)に近くなる傾向があり、この場合、自己組織化によって一方向に再配向することが困難になることがある。
【0103】
なお、液晶発現温度は、重合体又は塗膜表面が固体相から液晶相に相転移が起きる液晶転移温度以上であって、液晶相からアイソトロピック相(等方相)に相転移を起こすアイソトロピック相転移温度(Tiso)以下の温度をいう。例えば、130℃以下で液晶性を発現するとは、固体相から液晶相に相転移が起きる液晶転移温度が130℃以下であることを意味する。
【0104】
加熱後に形成される塗膜の厚みは、使用する基板の段差や光学的、電気的性質を考慮して適宜選択することができ、例えば、0.5~3μmが好適である。
【0105】
このようにして得られた本発明の単層位相差材は、表示装置や記録材料等の用途に好適な光学特性を有する材料であり、特に、液晶ディスプレイ用の偏光板及び位相差板等の光学補償フィルムとして好適である。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0107】
実施例で使用した光反応性基を有するモノマーとしてM1を、液晶性基を有するモノマーとしてM2、架橋基を有するモノマーとしてHBAGEを、窒素含有芳香族複素環基を有するモノマーとしてA1を以下に示す。M1は、国際公開第2011/084546号に記載された合成法に従って合成した。M2は、特開平9-118717号公報に記載された合成法に従って合成した。なお、M1に由来する側鎖は光反応性及び液晶性を発現し、M2に由来する側鎖は液晶性のみを発現する。HBAGE(ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル)は、市販購入可能であるものを用いた。A1は、国際公開第2014/054785号に記載の合成法にて合成した。
【0108】
【0109】
その他、本実施例で用いた試薬の略号を以下に示す。
(有機溶媒)
THF:テトラヒドロフラン
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
BCA:ブチルセロソルブアセテート
(重合開始剤)
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
【0110】
[1]メタクリレートポリマー粉末の合成
[合成例1]
M1(6.6g,0.02mol)及びM2(24.5g,0.08mol)をTHF(126.6g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.49g)を加え、再び脱気を行った。この後、60℃で8時間反応させ、メタクリレートポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(500mL)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することで、メタクリレートポリマー粉末P1を得た。
【0111】
[合成例2~4]
表1に示す組成を用いた以外は、合成例1と同様の方法で、メタクリレートポリマー粉末P2~P4を合成した。
【0112】
【0113】
[2]ポリマー溶液の調製
[実施例1-1]
NMP(24.8g)にメタクリレートポリマー粉末P1(3.2g)を加え、室温で1時間撹拌して溶解させた。この溶液に、BCS(8.0g)及びBCA(4.0g)を加え、撹拌することにより、ポリマー溶液T1を得た。このポリマー溶液T1は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤とした。
【0114】
[実施例1-2]
NMP(24.8g)にメタクリレートポリマー粉末P2(3.2g)を加え、室温で1時間撹拌して溶解させた。この溶液に、BCS(8.0g)及びBCA(4.0g)を加え、撹拌することにより、ポリマー溶液T2を得た。このポリマー溶液T2は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤とした。
【0115】
[実施例1-3]
NMP(24.8g)にメタクリレートポリマー粉末P3(3.2g)を加え、室温で1時間撹拌して溶解させた。この溶液に、BCS(8.0g)及びBCA(4.0g)を加え、撹拌することにより、ポリマー溶液T3を得た。このポリマー溶液T3は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤とした。
【0116】
[実施例1-4]
NMP(24.8g)にメタクリレートポリマー粉末P4(3.2g)を加え、室温で1時間撹拌して溶解させた。この溶液に、BCS(8.0g)及びBCA(4.0g)を加え、撹拌することにより、ポリマー溶液T4を得た。このポリマー溶液T4は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤とした。
【0117】
[比較例1-1]
NMP(24.8g)にメタクリレートポリマー粉末P1(3.2g)を加え、室温で1時間撹拌して溶解させた。この溶液に、BCS(12.0g)を加え、撹拌することにより、ポリマー溶液C1を得た。このポリマー溶液C1は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤とした。
【0118】
[比較例1-2]
NMP(24.8g)にメタクリレートポリマー粉末P2(3.2g)を加え、室温で1時間撹拌して溶解させた。この溶液に、BCS(12.0g)を加え、撹拌することにより、ポリマー溶液C2を得た。このポリマー溶液C2は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤とした。
【0119】
[比較例1-3]
NMP(24.8g)にメタクリレートポリマー粉末P3(3.2g)を加え、室温で1時間撹拌して溶解させた。この溶液に、BCS(12.0g)を加え、撹拌することにより、ポリマー溶液C3を得た。このポリマー溶液C3は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤とした。
【0120】
[比較例1-4]
NMP(24.8g)にメタクリレートポリマー粉末P4(3.2g)を加え、室温で1時間撹拌して溶解させた。この溶液に、BCS(12.0g)を加え、撹拌することにより、ポリマー溶液C4を得た。このポリマー溶液C4は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤とした。
【0121】
[3]ポリマー溶液の評価
[実施例2-1~2-4、比較例2-1~2-4]
(1)評価基板1の作製
ポリマー溶液T1を0.45μmのフィルターで濾過した後、石英基板上にスピンコートし、70℃のホットプレート上で90秒間乾燥し、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。次いで、塗膜面に偏光板を介して313nmの紫外線1~20mJ/cm2を照射した後、150℃のホットプレートで10分間加熱し、液晶配向膜付き基板を得た。
同様に、ポリマー溶液T2~T4及びポリマー溶液C1~C4を用いて、評価基板を作製した。
【0122】
(2)評価基板2の作製
ポリマー溶液T1を0.45μmのフィルターで濾過した後、石英基板上にスクリーン印刷にて製膜し、70℃のホットプレート上で90秒間乾燥し、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。次いで、塗膜面に偏光板を介して313nmの紫外線を照射した後、150℃のホットプレートで10分間加熱し、液晶配向膜付き基板を得た。
同様に、ポリマー溶液T2~T4及びポリマー溶液C1~C4を用いて、評価基板を作製した。
【0123】
(3)面内配向度の測定
評価基板を用い、液晶配向膜の光学的異方性を測定するために、偏光の吸光度から面内配向度であるSを下式より算出した。算出値は、照射量範囲内で最も高い値を用いた。結果を表2に示す。なお、吸光度の測定には、島津製作所社製の紫外線可視近赤外分析光度計U-3100PCを使用した。
【0124】
【0125】
ここで、Aparaは、照射した偏光UV方向に対して平行方向の吸光度を表し、Aperは、照射した偏光UV方向に対して垂直方向の吸光度を表す。Alargeは、平行方向と垂直方向の吸光度を比較して値が大きい方の吸光度を表し、Asmallは、平行方向と垂直方向の吸光度を比較して値が小さい方の吸光度を表す。面内配向度Sの絶対値が、1に近い程より一様な配向状態となっていることを示している。
【0126】
(4)塗布性の評価
評価基板を、ナトリウムランプ下で目視することで、塗布性を評価した。塗布性の特に良いものは◎、良いものは〇、あまりよくないものは△、悪いものは×とした。
【0127】
【0128】
表2に示したように、実施例と比較例との対比から、実施例のポリマー溶液は、塗布方法にかかわらず良好な塗布性と高い面内配向度が得られたことから、ポリマー溶液中にアルキルセロソルブアセテートであるBCAが導入された効果によるものといえる。