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特許7517352導電性組成物、レジスト被覆材料、レジスト、及びレジストパターンの形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】導電性組成物、レジスト被覆材料、レジスト、及びレジストパターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/02 20060101AFI20240709BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08L79/02
G03F7/20 521
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021574111
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2021003062
(87)【国際公開番号】W WO2021153678
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020012623
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】仲野 早希
(72)【発明者】
【氏名】森 隆浩
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102993413(CN,A)
【文献】国際公開第2014/006821(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/017540(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146715(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106953066(CN,A)
【文献】ジェミニ型界面活性剤を用いた使用感に優れた耐水性O/Wエマルジョンの調製,J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn Vol.51 No.1 2017,日本,9頁アブストラクト
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
H01B
G03F
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマーと、界面活性剤(ただし、ジェミニ型界面活性剤を除く。)とを含む導電性組成物であって、
前記導電性ポリマーが、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を含み、
前記界面活性剤の臨界ミセル濃度が0.1質量%未満であり、前記界面活性剤の含有量が前記導電性ポリマー100質量部に対して42.9質量部以上300質量部以下である導電性組成物。
【化1】
式(4)中11~R15は各々独立に、水素原子、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子(-F、-Cl、-Br又は-I)、-N(R16、-NHCOR16、-SR16、-OCOR16、-COOR16、-COR16、-CHO、又は-CNを表す。R16は炭素数1~24のアルキル基、炭素数6~24のアリール基、又は炭素数7~24のアラルキル基を表す。ただし、一般式(4)のR11~R15のうちの少なくとも1つは、それぞれ酸性基又はその塩である。)
【請求項2】
導電性ポリマーと、界面活性剤(ただし、ジェミニ型界面活性剤を除く。)とを含む導電性組成物であって、
前記導電性ポリマーが、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を含み、
前記界面活性剤の臨界ミセル濃度が0.1質量%以上であり、前記界面活性剤の含有量が前記導電性ポリマーの含有量100質量部に対して100質量部超2000質量部以下である導電性組成物。
【化2】
式(4)中11~R15は各々独立に、水素原子、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子(-F、-Cl、-Br又は-I)、-N(R16、-NHCOR16、-SR16、-OCOR16、-COOR16、-COR16、-CHO、又は-CNを表す。R16は炭素数1~24のアルキル基、炭素数6~24のアリール基、又は炭素数7~24のアラルキル基を表す。ただし、一般式(4)のR11~R15のうちの少なくとも1つは、それぞれ酸性基又はその塩である。)
【請求項3】
前記界面活性剤の含有量が前記導電性ポリマー100質量部に対して110質量部以上である、請求項2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、末端疎水性基を有する水溶性ポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【請求項5】
さらに塩基性化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【請求項6】
前記塩基性化合物の25℃における酸解離定数が13以上であり、前記塩基性化合物の分子量が200以下であり、前記塩基性化合物の含有量が前記導電性ポリマー100質量部に対して1~50質量部である、請求項5に記載の導電性組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、下記一般式(71)で表される化合物(71)と、下記一般式(81)で表される化合物(81)と、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【化3】
式(71)中、
38は水素原子、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、
39は水素原子、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基又は炭化水素基を表し、
は単結合、-S-、-S(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-を表し、
pは1~50の数であり、
rは1~5の数である。
ただし、R38及びR39が同時に水素原子であることはない。
【化4】
式(81)中、
42及びR43は各々独立に、メチル基又はエチル基を表し、
44は水素原子、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基又は炭化水素基を表し、
はシアノ基又はヒドロキシ基を表し、
qは1~50の数であり、
sは1~5の数である。
【請求項8】
前記式(71)中、Zは-S-を表し、
前記式(81)中、Zはヒドロキシ基を表す、請求項7に記載の導電性組成物。
【請求項9】
前記式(71)中、Zは-S-を表し、
前記化合物(81)が、前記式(81)中、Zがヒドロキシ基を表す化合物と、Zがシアノ基を表す化合物と、のいずれも含む、請求項7に記載の導電性組成物。
【請求項10】
表面抵抗率が1×1010[Ω/□]以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の導電性組成物を含むレジスト被覆材料。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の導電性組成物を含む導電膜が表面に形成されたレジスト。
【請求項13】
化学増幅型レジストからなるレジスト層を片面上に有する基板の前記レジスト層の表面に、請求項1~10のいずれか一項に記載の導電性組成物を含む導電膜を形成する積層工程と、前記導電膜が形成された前記基板に対し、前記導電膜側から荷電粒子線をパターン状に照射する露光工程とを有するレジストパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、レジスト被覆材料、レジスト、及びレジストパターンの形成方法に関する。
本願は、2020年1月29日に日本で出願された特願2020-012623号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
電子線やイオン線等の荷電粒子線を用いたパターン形成技術は、光リソグラフィーの次世代技術として期待されている。荷電粒子線を用いる場合、生産性向上にはレジスト層の感度向上が重要である。
従って、露光部分又は荷電粒子線が照射された部分に酸を発生させ、続いてポストエクスポージャーベーク(PEB)処理と呼ばれる加熱処理により架橋反応又は分解反応を促進させる、高感度な化学増幅型レジストの使用が主流となっている。
また、近年、半導体デバイスの微細化の流れに伴い、数nmオーダーでのレジスト形状の管理も要求されるようになってきている。
【0003】
ところで、荷電粒子線を用いるパターン形成方法においては、特に基板が絶縁性の場合、基板の帯電(チャージアップ)によって発生する電界が原因で、荷電粒子線の軌道が曲げられ、所望のパターンが得られにくいという課題がある。
この課題を解決する手段として、導電性ポリマーを含む導電性組成物をレジスト層の表面に塗布して導電膜を形成し、前記導電膜でレジスト層の表面を被覆する技術が知られている。
【0004】
導電性ポリマーとして、酸性基を有する導電性ポリマーが知られている。酸性基を有する導電性ポリマーは、ドープ剤を添加することなく導電性を発現できる。
酸性基を有する導電性ポリマーは、例えば、トリメチルアミンやピリジン等の塩基性化合物の存在下で、酸性基を有するアニリンを酸化剤により重合することで得られる(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
塩基性化合物の存在下で酸性基置換アニリンを重合する方法では、ポリアニリンや、未反応のモノマー、副反応の併発に伴うオリゴマー中の酸性基の一部が、塩基性化合物と塩を形成しやすい。
しかし、塩基性化合物が、その塩基強度等の物性上、ポリアニリンの酸性基を安定して中和できないことから、ポリアニリンの酸性基部は加水分解等を受けやすく、不安定である。そのため、レジスト層上にポリアニリンを塗布した後、加熱処理して導電膜を形成する際に酸性基が脱離しやすい。また、重合の際に用いた酸化剤が分解して硫酸イオン等を発生することがある。その結果、脱離した酸性基や酸化剤の分解物がレジスト層へ移行し、現像時に未露光部のレジスト層が溶解してしまい、レジスト層の膜減りなどが起こることがある。
【0006】
そこで、塩基性化合物の存在下で酸性基置換アニリンを酸化剤により重合して得られたポリアニリンをイオン交換法、電気透析法などにより脱塩処理して塩基性化合物等を除去した後に、新たに強塩基な塩基性化合物を添加する方法が提案されている(例えば特許文献2参照。)。
また、上述の導電性ポリマーを含む導電性組成物をレジスト層の表面に塗布する際の塗布性の向上を目的として、導電性組成物に界面活性剤を配合することが知られている(例えば特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開平7-324132号公報
【文献】日本国特開2011-219680号公報
【文献】日本国特開2017-171940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の方法によれば、新たに添加した塩基性化合物がポリアニリンの酸性基の一部と安定したと塩を形成するため、ポリアニリンの酸性基部分を安定化することができ、ポリアニリンからの酸性基の脱離を抑制できる。また、新たに添加した塩基性化合物は、酸化剤の分解物とも塩を形成しやすい。よって、酸性基や酸化剤の分解物がレジスト層へ移行しにくく、レジスト層の膜減りを抑制できる。
しかしながら、レジスト層の膜減り防止には未だ改善の余地があり、さらなる膜減り防止の向上が求められる。
また、界面活性剤が配合された導電性組成物においては、塗布性とレジスト層への影響がトレードオフの関係にあることが知られており、特許文献3に記載の導電性組成物においても、膜減り防止の面で必ずしも充分なレベルではなかった。
【0009】
本発明は、優れた導電性を有するとともにレジスト層の膜減りが少ない導電膜を形成できる導電性組成物、レジスト被覆材料、レジスト及びレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]導電性ポリマーと、界面活性剤とを含む導電性組成物であって、
前記界面活性剤の臨界ミセル濃度が0.1質量%未満であり、前記界面活性剤の含有量が前記導電性ポリマー100質量部に対して5質量部以上である導電性組成物。
[2]前記界面活性剤の含有量が前記導電性ポリマー100質量部に対して10質量部以上である、[1]の導電性組成物。
[3]導電性ポリマーと、界面活性剤とを含む導電性組成物であって、
前記界面活性剤の臨界ミセル濃度が0.1質量%以上であり、前記界面活性剤の含有量が前記導電性ポリマーの含有量100質量部に対して100質量部超である導電性組成物。
[4]前記界面活性剤の含有量が前記導電性ポリマー100質量部に対して110質量部以上である、[3]の導電性組成物。
[5]前記界面活性剤が、末端疎水性基を有する水溶性ポリマーである、[1]~[4]のいずれかの導電性組成物。
[6]さらに塩基性化合物を含む、[1]~[5]のいずれかの導電性組成物。
[7]前記塩基性化合物の25℃における酸解離定数が13以上であり、前記塩基性化合物の分子量が200以下であり、前記塩基性化合物の含有量が前記導電性ポリマー100質量部に対して1~50質量部である、[6]の導電性組成物。
[8]前記導電性ポリマーが酸性基を有する、[1]~[7]のいずれかの導電性組成物。
[9]表面抵抗率が1×1010[Ω/□]以下である、[1]~[8]のいずれかの導電性組成物。
[10][1]~[9]のいずれかの導電性組成物を含むレジスト被覆材料。
[11][1]~[9]のいずれかの導電性組成物を含む導電膜が表面に形成されたレジスト。
[12]化学増幅型レジストからなるレジスト層を片面上に有する基板の前記レジスト層の表面に、[1]~[9]のいずれかの導電性組成物を含む導電膜を形成する積層工程と、前記導電膜が形成された前記基板に対し、前記導電膜側から荷電粒子線をパターン状に照射する露光工程とを有するレジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた導電性を有するとともにレジスト層の膜減りが少ない導電膜を形成できる導電性組成物、レジスト被覆材料、レジスト及びレジストパターンの形成方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な態様で実施することが可能である。
【0013】
本発明において「導電性」とは、1×1011Ω/□以下の表面抵抗率を有することである。表面抵抗率は、一定の電流を流した場合の電極間の電位差より求められる。
本明細書において「溶解性」とは、水、塩基及び塩基性塩の少なくとも一方を含む水、酸を含む水、水と水溶性有機溶媒との混合物のうちの1つ以上の溶媒10g(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。本明細書において「水溶性」とは、水に対する上記の溶解性を意味する。
本明細書において「末端疎水性基」の「末端」とは、ポリマーを構成する繰り返し単位以外の部位を意味する。
本明細書において「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算又はポリエチレングリコール換算)である。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[導電性組成物]
本発明の導電性組成物は、導電性ポリマー(以下、「導電性ポリマー(A)とも」言う。)と、界面活性剤(以下、「界面活性剤(B)」とも言う。)とを含む。本発明の導電性組成物は、例えば、溶剤(以下、「溶剤(C)」とも言う。)、塩基性化合物(以下、「塩基性化合物(D)とも言う。」を含む任意成分の1つ以上を必要に応じて含んでいてもよい。
【0015】
<導電性ポリマー(A)>
導電性ポリマー(A)としては公知のものを使用できる。例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリチオフェンビニレン、ポリテルロフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、ポリアセン、ポリアセチレンが挙げられる。
これらの中でも、導電性に優れる観点から、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンが好ましい。
【0016】
導電性ポリマー(A)は、水溶性又は水分散性を有することが好ましい。導電性ポリマー(A)が水溶性又は水分散性を有すると、導電性組成物の塗布性が高まり、均一な厚さの導電体が得られやすい。
【0017】
導電性ポリマー(A)は、酸性基を有することが好ましい。酸性基を有すると水溶性が高まる。酸性基はスルホン酸基又はカルボキシ基が好ましい。一分子中に1種の酸性基のみを有していても、2種以上の酸性基を有していてもよい。酸性基の一部又は全部が塩を形成していてもよい。
酸性基を有する導電性ポリマー(A)としては、例えば、日本国特開昭61-197633号公報、日本国特開昭63-39916号公報、日本国特開平1-301714号公報、日本国特開平5-504153号公報、日本国特開平5-503953号公報、日本国特開平4-32848号公報、日本国特開平4-328181号公報、日本国特開平6-145386号公報、日本国特開平6-56987号公報、日本国特開平5-226238号公報、日本国特開平5-178989号公報、日本国特開平6-293828号公報、日本国特開平7-118524号公報、日本国特開平6-32845号公報、日本国特開平6-87949号公報、日本国特開平6-256516号公報、日本国特開平7-41756号公報、日本国特開平7-48436号公報、日本国特開平4-268331号公報、日本国特開2014-65898号公報に示された導電性ポリマーが、溶解性の観点から好ましい。
【0018】
導電性ポリマー(A)としては、例えば、α位若しくはβ位がスルホン酸基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基でそれぞれ置換されたフェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、及びカルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種を繰り返し単位として含むπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。
π共役系導電性ポリマーが、α位若しくはβ位がスルホン酸基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基でそれぞれ置換されたイミノフェニレン及びカルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種の繰り返し単位を含む場合は、例えば、スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を繰り返し単位の窒素原子上に有するπ共役系導電性ポリマー、スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたアルキル基を繰り返し単位の窒素原子上に有するπ共役系導電性ポリマー、スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたエーテル結合を含むアルキル基を繰り返し単位の窒素原子上に有するπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。
これらの中でも、導電性や溶解性の観点から、β位がスルホン酸基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたフェニレンビニレン、チエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、及びカルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種を繰り返し単位として含むπ共役系導電性ポリマーが好ましい。
【0019】
導電性ポリマー(A)は、高い導電性や溶解性を発現できる観点から、導電性ポリマーを構成する全単位(100mol%)のうちの20~100mol%が、下記一般式(1)~(4)で表されるいずれかの繰り返し単位であることが好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
式(1)~(4)中、
Xは硫黄原子又は窒素原子を表し、
~R15は各々独立に、水素原子、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子(-F、-Cl、-Br又は-I)、-N(R16、-NHCOR16、-SR16、-OCOR16、-COOR16、-COR16、-CHO、又は-CNを表す。
16は炭素数1~24のアルキル基、炭素数6~24のアリール基、又は炭素数7~24のアラルキル基を表す。
ただし、一般式(1)のR、Rのうちの少なくとも1つ、一般式(2)のR~Rのうちの少なくとも1つ、一般式(3)のR~R10のうちの少なくとも1つ、一般式(4)のR11~R15のうちの少なくとも1つは、それぞれ酸性基又はその塩である。
【0025】
ここで、「酸性基」とは、スルホン酸基(スルホ基)又はカルボン酸基(カルボキシ基)を意味する。
スルホン酸基は、遊離酸型の状態(-SOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(-SO-)で含まれていてもよい。さらに、スルホン酸基には、スルホン酸基を有する置換基(-R17SOH)も含まれる。
一方、カルボン酸基は、遊離酸型の状態(-COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(-COO-)で含まれていてもよい。さらに、カルボン酸基には、カルボン酸基を有する置換基(-R17COOH)も含まれる。
17は炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、炭素数6~24の直鎖若しくは分岐鎖のアリーレン基、又は炭素数7~24の直鎖若しくは分岐鎖のアラルキレン基を表す。
【0026】
酸性基の塩としては、例えば、スルホン酸基又はカルボン酸基のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又は置換アンモニウム塩が挙げられる。
アルカリ金属塩としては、例えば、硫酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及びこれらの骨格を有する誘導体が挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。
置換アンモニウム塩としては、例えば、脂肪族アンモニウム塩、飽和脂環式アンモニウム塩、不飽和脂環式アンモニウム塩が挙げられる。
脂肪族アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、メチルイソプロピルアンモニウム、エチルイソプロピルアンモニウム、メチルブチルアンモニウム、エチルブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラメチロールアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラn-ブチルアンモニウム、テトラsec-ブチルアンモニウム、テトラt-ブチルアンモニウムが挙げられる。
飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えば、ピペリジニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、ピペラジニウム及びこれらの骨格を有する誘導体が挙げられる。
不飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えば、ピリジニウム、α-ピコリニウム、β-ピコリニウム、γ-ピコリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピロリニウム、及びこれらの骨格を有する誘導体が挙げられる。
【0027】
導電性ポリマー(A)としては、高い導電性を発現できる観点から、上記一般式(4)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。その中でも、溶解性にも優れる観点から、下記一般式(5)で表される繰り返し単位を有することがより好ましい。
【0028】
【化5】
【0029】
式(5)中、
18~R21は、各々独立に、水素原子、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子(-F、-Cl、-Br又は-I)を表す。
ただし、R18~R21のうちの少なくとも1つは酸性基又はその塩である。
【0030】
一般式(5)で表される繰り返し単位としては、製造が容易な点で、R18~R21のうち、いずれか1つが炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、他のいずれか1つがスルホン酸基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
【0031】
導電性ポリマー(A)は、pHに関係なく水及び有機溶媒への溶解性に優れる観点から、導電性ポリマー(A)を構成する全単位(100mol%)のうち、一般式(5)で表される繰り返し単位の含有量は10~100mol%が好ましく、50~100mol%がより好ましく、90~100mol%がさらに好ましく、100mol%が特に好ましい。
導電性ポリマー(A)は、導電性に優れる観点で、一般式(5)で表される単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
【0032】
導電性ポリマー(A)において、溶解性がより向上する観点から、ポリマー中の芳香環の総数に対する、酸性基が結合した芳香環の数は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましく、100%が最も好ましい。
ポリマー中の芳香環の総数に対する酸性基が結合した芳香環の数は、導電性ポリマー(A)製造時のモノマーの仕込み比から算出する。
【0033】
導電性ポリマー(A)において、繰り返し単位の芳香環上の酸性基以外の置換基は、モノマーへの反応性付与の観点から電子供与性基が好ましい。例えば、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、ハロゲン基(-F、-Cl、-Br又は-I)が好ましい。これらの中でも、電子供与性の観点から、炭素数1~24のアルコキシ基が最も好ましい。
【0034】
導電性ポリマー(A)は、一般式(5)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、溶解性、導電性及び性状に影響を及ぼさない限り、置換又は無置換のアニリン、チオフェン、ピロール、フェニレン、ビニレン、二価の不飽和基、二価の飽和基からなる群より選ばれる1種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0035】
導電性ポリマー(A)としては、高い導電性と溶解性を発現できる観点から、下記一般式(6)で表される構造を有する化合物であることが好ましく、下記一般式(6)で表される構造を有する化合物の中でも、ポリ(2-スルホ-5-メトキシ-1,4-イミノフェニレン)が特に好ましい。
【0036】
【化6】
【0037】
式(6)中、
22~R37は、各々独立に、水素原子、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子(-F、-Cl、-Br又は-I)を表す。
ただし、R22~R37のうち少なくとも1つは酸性基又はその塩である。
nは5~2500の整数である。
【0038】
導電性ポリマー(A)に含有される酸性基は、導電性向上の観点から少なくともその一部が遊離酸型であることが好ましい。
【0039】
導電性ポリマー(A)の質量平均分子量は、GPCのポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算で、導電性、溶解性及び成膜性の観点から、1000~100万が好ましく、1500~80万がより好ましく、2000~50万がさらに好ましく、2000~10万が特に好ましい。
導電性ポリマー(A)の質量平均分子量が1000未満の場合、溶解性には優れるものの、導電性及び成膜性が不足する場合がある。一方、質量平均分子量が100万を超える場合、導電性には優れるものの、溶解性が不充分な場合がある。
ここで、「成膜性」とは、例えば、ハジキが無い均一な膜となる性質のことを指し、例えば、ガラス上へのスピンコートで評価することができる。
【0040】
導電性ポリマー(A)は、例えば、重合溶媒及び酸化剤の存在下、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合することで得られる。
以下に、導電性ポリマー(A)の製造方法の一例について説明する。
【0041】
(導電性ポリマー(A)の製造方法)
導電性ポリマー(A)の製造方法は、重合溶媒及び酸化剤の存在下、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合する工程(重合工程)を含む。導電性ポリマー(A)の製造方法は、重合工程で得られた反応生成物を精製する工程(精製工程)を含んでいてもよい。
【0042】
<<重合工程>>
重合工程は、重合溶媒及び酸化剤の存在下、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合する工程である。
原料モノマーとしては、上述した繰り返し単位の由来となる重合性単量体が挙げられ、例えば、酸性基置換アニリン、並びに、酸性基置換アニリンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
酸性基置換アニリンとしては、例えば、酸性基としてスルホン酸基を有するスルホン酸基置換アニリンが挙げられる。
スルホン酸基置換アニリンとしては、アミノベンゼンスルホン酸類が挙げられる。アミノベンゼンスルホン酸類としては、例えば、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、アニリン-2,6-ジスルホン酸、アニリン-2,5-ジスルホン酸、アニリン-3,5-ジスルホン酸、アニリン-2,4-ジスルホン酸、アニリン-3,4-ジスルホン酸が挙げられる。
【0043】
アミノベンゼンスルホン酸類以外のスルホン酸基置換アニリンとしては、例えば、メチルアミノベンゼンスルホン酸、エチルアミノベンゼンスルホン酸、n-プロピルアミノベンゼンスルホン酸、iso-プロピルアミノベンゼンスルホン酸、n-ブチルアミノベンゼンスルホン酸、sec-ブチルアミノベンゼンスルホン酸、t-ブチルアミノベンゼンスルホン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類;メトキシアミノベンゼンスルホン酸、エトキシアミノベンゼンスルホン酸、プロポキシアミノベンゼンスルホン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ニトロ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;フルオロアミノベンゼンスルホン酸、クロロアミノベンゼンスルホン酸、ブロムアミノベンゼンスルホン酸等のハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類を挙げることができる。
これらの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性ポリマー(A)が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類が好ましい。さらに製造が容易な点で、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩が特に好ましい。
これらのスルホン酸基置換アニリンは、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0044】
重合溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
水としては、例えば、水道水、イオン交換水、純水、蒸留水が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、エチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等のピロリドン類が挙げられる。
重合溶媒としては、水、又は水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
重合溶媒として水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、これらの質量比(水/有機溶媒)は1/100~100/1であることが好ましく、2/100~100/2であることがより好ましい。
【0045】
酸化剤としては、標準電極電位が0.6V以上である酸化剤であれば限定されない。例えば、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸類;過酸化水素が挙げられる。
これらの酸化剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0046】
重合工程は、重合溶媒及び酸化剤に加えて、塩基性反応助剤の存在下で原料モノマーを重合してもよい。
塩基性反応助剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機塩基;アンモニア;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン等の脂式アミン類;環式飽和アミン類;ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、キノリン等の環式不飽和アミン類が挙げられる。
これらの中では、無機塩基、脂式アミン類、環式不飽和アミン類が好ましく、環式不飽和アミン類がより好ましい。
これらの塩基性反応助剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0047】
重合の方法としては、例えば、酸化剤溶液中に原料モノマー溶液を滴下する方法、原料モノマー溶液に酸化剤溶液を滴下する方法、反応容器に原料モノマー溶液と、酸化剤溶液を同時に滴下する方法が挙げられる。原料モノマー溶液には、必要に応じて塩基性反応助剤が含まれていてもよい。
酸化剤溶液及び原料モノマー溶液の溶媒としては、上述した重合溶媒を用いることができる。
【0048】
重合反応の反応温度は、50℃以下が好ましく、-15~30℃がより好ましく、-10~20℃がさらに好ましい。重合反応の反応温度が50℃以下、特に30℃以下であれば、副反応の進行や、生成する導電性ポリマー(A)の主鎖の酸化還元構造の変化による導電性の低下を抑止できる。重合反応の反応温度が-15℃以上であれば、十分な反応速度を維持し、反応時間を短縮できる。
【0049】
重合工程により、反応生成物である導電性ポリマー(A)が重合溶媒に溶解又は沈殿した状態で得られる。
反応生成物が重合溶媒に溶解している場合は、重合溶媒を留去して反応生成物を得る。
反応生成物が重合溶媒に沈殿している場合は、遠心分離器等の濾過器により重合溶媒を濾別して反応生成物を得る。
【0050】
反応生成物には、未反応の原料モノマー、副反応の併発に伴うオリゴマー、酸性物質(導電性ポリマー(A)から脱離した遊離の酸性基や、酸化剤の分解物である硫酸イオンなど)、塩基性物質(塩基性反応助剤や、酸化剤の分解物であるアンモニウムイオンなど)等の低分子量成分が含まれている場合がある。これら低分子量成分は不純物であり、導電性を阻害する要因となる。
よって、反応生成物を精製して低分子量成分を除去することが好ましい。
【0051】
<<精製工程>>
精製工程は、重合工程で得られた反応生成物を精製する工程である。
反応生成物を精製する方法としては、例えば、洗浄溶媒を用いた洗浄法、膜濾過法、イオン交換法、加熱処理による不純物の除去、中和析出を用いることができる。これらの中でも、純度の高い導電性ポリマー(A)を容易に得ることができる観点から、洗浄法、イオン交換法が好ましい。特に、原料モノマー、オリゴマー、酸性物質などを効率よく除去できる観点では、洗浄法が好ましい。導電性ポリマー(A)の酸性基と塩を形成した状態で存在する塩基性物質などを効率よく除去できる観点では、イオン交換法が好ましい。精製工程では、洗浄法とイオン交換法とを組み合わせて用いてもよい。
【0052】
洗浄溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、3-ブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-ペンタノール、n-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチルブチノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、グリセリルモノアセテート等の多価アルコール誘導体;アセトン;アセトニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド;N-メチルピロリドン;ジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリルが好ましい。
【0053】
洗浄後の反応生成物、すなわち洗浄後の導電性ポリマー(A)を乾燥すれば、固体状の導電性ポリマー(A)が得られる。
【0054】
イオン交換法としては、例えば、陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂等のイオン交換樹脂を用いたカラム式、バッチ式の処理;電気透析法が挙げられる。
反応生成物が重合溶媒に溶解している場合は、溶解した状態のままイオン交換樹脂と接触させればよい。反応生成物の濃度が高い場合は、水性媒体で希釈してもよい。
反応生成物が重合溶媒に沈殿している場合は、重合溶媒を濾別した後に、反応生成物を所望の固形分濃度になるように水性媒体に溶解させ、ポリマー溶液としてからイオン交換樹脂に接触させることが好ましい。
洗浄後の反応生成物をイオン交換処理する場合は、洗浄後の反応生成物を所望の固形分濃度になるように水性媒体に溶解させ、ポリマー溶液としてからイオン交換樹脂に接触させることが好ましい。
水性媒体としては、後述する溶剤(C)が挙げられる。
ポリマー溶液中の導電性ポリマー(A)の濃度としては、工業性や精製効率の観点から、0.1~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。
【0055】
イオン交換樹脂を用いたイオン交換法の場合、イオン交換樹脂に対する試料液の量は、例えば固形分濃度5質量%のポリマー溶液の場合、イオン交換樹脂に対して10倍の容積までが好ましく、5倍の容積までがより好ましい。陽イオン交換樹脂としては、例えば、オルガノ株式会社製の「アンバーライトIR-120B」が挙げられる。陰イオン交換樹脂としては、例えば、オルガノ株式会社製の「アンバーライトIRA410」が挙げられる。
【0056】
イオン交換処理後の導電性ポリマー(A)は、重合溶媒又は水性媒体に溶解した状態である。従って、エバポレータなどで重合溶媒又は水性媒体を全て除去すれば固体状の導電性ポリマー(A)が得られるが、導電性ポリマー(A)は重合溶媒又は水性媒体に溶解した状態のまま導電性組成物の製造に用いてもよい。
【0057】
<界面活性剤(B)>
界面活性剤(B)としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0058】
陰イオン系界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ペルフルオロノナン酸、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウムが挙げられる。
【0059】
陽イオン系界面活性剤としては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、トリメチルアミン塩酸塩、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウムが挙げられる。
【0060】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルメチル-β-アラニン、ラウリルジメチルアミン-N-オキシド、オレイルジメチルアミンN-オキシドが挙げられる。
【0061】
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オクチルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールが挙げられる。
【0062】
非イオン系界面活性剤として、上述した以外にも、末端疎水性基を有する水溶性ポリマーを用いてもよい。末端疎水性基を有する水溶性ポリマーとしては、例えば、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマーが挙げられる。含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマーは従来の界面活性剤とは異なり、含窒素官能基を有する主鎖部分(親水性部分)と、末端の疎水性基部分とによって界面活性能を有し、塗布性の向上効果が高い。よって、他の界面活性剤を併用しなくても、優れた塗布性を導電性組成物に付与できる。しかも、この水溶性ポリマーは酸や塩基を含まないうえ、加水分解により副生成物が生じにくいことから、例えば、レジスト層への悪影響が特に少ない。
【0063】
含窒素官能基としては、溶解性の観点から、アミド基が好ましい。
末端疎水性基としては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基、一級又は二級のアルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基が挙げられる。これらの中でも、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基が好ましい。
末端疎水性基の炭素数は、7~100が好ましく、7~50がより好ましく、10~30が特に好ましい。
水溶性ポリマー中の末端疎水性基の数は特に制限されない。また、同一分子内に末端疎水性基を2つ以上有する場合、末端疎水性基は同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0064】
水溶性ポリマーとしては、含窒素官能基を有するビニルモノマーのホモポリマー、又は含窒素官能基を有するビニルモノマーと、含窒素官能基を有さないビニルモノマー(その他のビニルモノマー)とのコポリマーを主鎖構造とし、かつ、ポリマーを構成する繰り返し単位以外の部位に疎水性基を有する化合物が好ましい。
含窒素官能基を有するビニルモノマーとしては、例えば、アクリルアミド及びその誘導体、含窒素官能基を有する複素環状モノマーが挙げられ、その中でもアミド結合を持つものが好ましい。例えば、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムが特に好ましい。
その他のビニルモノマーとしては、含窒素官能基を有するビニルモノマーと共重合可能であれば特に制限されないが、例えば、スチレン、アクリル酸、酢酸ビニル、長鎖α-オレフィンが挙げられる。
【0065】
水溶性ポリマーへの末端疎水性基の導入方法としては特に制限されないが、通常、ビニル重合時の連鎖移動剤を選択することにより導入するのが簡便で好ましい。この場合、連鎖移動剤としてはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基等の疎水性基を含む基が、得られる重合体の末端に導入されるものであれば特に限定はされない。例えば、末端疎水性基としてアルキルチオ基、アラルキルチオ基、又はアリールチオ基を有する水溶性ポリマーを得る場合は、これらの末端疎水性基に対応する疎水性基を有する連鎖移動剤、例えば、チオール、ジスルフィド、チオエーテルを用いてビニル重合することが好ましい。このような連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、2-エチルヘキシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタンが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0066】
ビニル重合時に用いる重合開始剤としては、例えば、アゾビスメチルブチロニトリルや、末端疎水性基を有する重合開始剤を用いることができる。
末端疎水性基を有する重合開始剤としては、炭素数6~20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を有し、シアノ基及びヒドロキシ基を有さないものが挙げられる。例えば、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0067】
水溶性ポリマーの主鎖部分は水溶性であり、含窒素官能基を有する。主鎖部分の単位数(重合度)は、1分子中に2~1000が好ましく、2~100がより好ましく、2~50が特に好ましい。含窒素官能基を有する主鎖部分の単位数が上記上限値以下であれば、界面活性能が低下しにくい。
水溶性ポリマー中の主鎖部分と、末端疎水性基部分との分子量比(主鎖部分の質量平均分子量/末端疎水性基部分の質量平均分子量)は、0.3~170であることが好ましい。
【0068】
水溶性ポリマーの質量平均分子量は、GPCのポリエチレングリコール換算で、100~100万が好ましく、100~10万がより好ましく、600~2000がさらに好ましく、600~1800が特に好ましい。水溶性ポリマーの質量平均分子量が上記下限値以上であれば、導電性組成物の塗布性が高まる。一方、水溶性ポリマーの質量平均分子量が上記上限値以下であれば、導電性組成物の水溶性が高まる。特に、水溶性ポリマーの質量平均分子量が600~1800であれば、実用的な水への溶解性と塗布性のバランスに優れる。
【0069】
界面活性剤(B)としては、上述した中でもレジスト層への影響が少ない点で、非イオン系界面活性剤が好ましく、その中でも特に末端疎水性基を有する水溶性ポリマーが好ましい。末端疎水性基を有する水溶性ポリマーの中でも、特に、下記一般式(7)で表される化合物(以下、「化合物(7)」とも言う。)、下記一般式(8)で表される化合物(以下、「化合物(8)」とも言う。)が好ましい。これら化合物は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0070】
【化7】
【0071】
式(7)中、
38は水素原子、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、
39は水素原子、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基又は炭化水素基を表し、
40は親水性基を表し、
41は水素原子又はメチル基を表し、
は単結合、-S-、-S(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-を表し、
pは1~50の数である。
ただし、R38及びR39が同時に水素原子であることはない。
【0072】
【化8】
【0073】
式(8)中、
42及びR43は各々独立に、メチル基又はエチル基を表し、
44は水素原子、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基又は炭化水素基を表し、
45は親水性基を表し、
46は水素原子又はメチル基を表し、
はシアノ基又はヒドロキシ基を表し、
qは1~50の数である。
【0074】
38におけるアルキル基の炭素数は6~20が好ましい。
38におけるアラルキル基の炭素数は7~20が好ましい。
38におけるアリール基の炭素数は6~20が好ましい。
39、R44におけるアルキルチオ基としては、炭素数1~20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基に硫黄原子が結合した基が挙げられる。
39、R44におけるアラルキルチオ基としては、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐鎖のアラルキル基に硫黄原子が結合した基が挙げられる。
39、R44におけるアリール基としては、炭素数6~20の直鎖若しくは分岐鎖のアリール基に硫黄原子が結合した基が挙げられる。
39、R44における炭化水素基としては、炭素数1~20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~20の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基、炭素数1~20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキニル基が挙げられる。
40、R45における親水性基は、水溶性ポリマーの原料モノマーである水溶性ビニルモノマー由来である。ここで、水溶性ビニルモノマーとは、水と任意の割合で混合可能なビニル単量体を示す。このような水溶性ビニルモノマーとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N-ビニルホルムアミドが挙げられる。
【0075】
化合物(7)としては、例えば、下記一般式(71)で表される化合物(以下、「化合物(71)」とも言う。)が挙げられる。
【0076】
【化9】
【0077】
式(71)中、
38は水素原子、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、
39は水素原子、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基又は炭化水素基を表し、
は単結合、-S-、-S(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-を表し、
pは1~50の数であり、
rは1~5の数である。
ただし、R38及びR39が同時に水素原子であることはない。
【0078】
化合物(8)としては、例えば、下記一般式(81)で表される化合物(以下、「化合物(81)」とも言う。)が挙げられる。
【0079】
【化10】
【0080】
式(81)中、
42及びR43は各々独立に、メチル基又はエチル基を表し、
44は水素原子、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基又は炭化水素基を表し、
はシアノ基又はヒドロキシ基を表し、
qは1~50の数であり、
sは1~5の数である。
【0081】
<溶剤(C)>
溶剤(C)としては、導電性ポリマー(A)及び界面活性剤(B)を溶解することができる溶剤であれば特に限定はされない。例えば、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合溶剤が挙げられる。
水としては、例えば、水道水、イオン交換水、純水、蒸留水が挙げられる。
有機溶剤としては、導電性ポリマー(A)の製造方法において重合溶媒としての有機溶媒として例示した溶剤が挙げられる。
溶剤(C)として、水と有機溶剤との混合溶剤を用いる場合、これらの質量比(水/有機溶剤)は1/100~100/1であることが好ましく、2/100~100/2であることがより好ましい。
【0082】
<任意成分>
導電性組成物は、必要に応じて、導電性ポリマー(A)、界面活性剤(B)及び溶剤(C)以外の成分(任意成分)を含んでいてもよい。
任意成分としては、例えば、塩基性化合物(D)、高分子化合物(ただし、導電性ポリマー(A)、界面活性剤(B)及び塩基性化合物(D)を除く。)、添加剤が挙げられる。
【0083】
塩基性化合物(D)としては、塩基性を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記の第4級アンモニウム化合物(d-1)、塩基性化合物(d-2)、塩基性化合物(d-3)、塩基性化合物(d-4)が挙げられる。
第4級アンモニウム化合物(d-1):窒素原子に結合する4つの置換基のうちの少なくとも1つが炭素数1以上の炭化水素基である第4級アンモニウム化合物。
塩基性化合物(d-2):1つ以上の窒素原子を有する塩基性化合物(ただし、第4級アンモニウム化合物(d-1)及び塩基性化合物(d-3)を除く。)。
塩基性化合物(d-3):同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基とを有し、かつ30℃以上の融点を有する塩基性化合物。
塩基性化合物(d-4):無機塩基。
【0084】
第4級アンモニウム化合物(d-1)において、4つの置換基が結合する窒素原子は、第4級アンモニウムイオンの窒素原子である。
第4級アンモニウム化合物(d-1)において、第4級アンモニウムイオンの窒素原子に結合する炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基が挙げられる。
第4級アンモニウム化合物(d-1)としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0085】
塩基性化合物(d-2)としては、例えば、アンモニア、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、4-ジメチルアミノメチルピリジン、3,4-ビス(ジメチルアミノ)ピリジン、ピコリン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、4-ジメチルアミノメチルピリジン、3,4-ビス(ジメチルアミノ)ピリジン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1-(3-アミノプロピル)-2-ピロリドン、N-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタム、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0086】
塩基性化合物(d-3)において、塩基性基としては、例えば、アレニウス塩基、ブレンステッド塩基、ルイス塩基等で定義される塩基性基が挙げられる。具体的には、例えば、アンモニアが挙げられる。ヒドロキシ基は、-OHの状態であってもよいし、保護基で保護された状態であってもよい。保護基としては、例えば、アセチル基;トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等のシリル基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基等のアセタール型保護基;ベンゾイル基;アルコキシド基が挙げられる。
塩基性化合物(d-3)としては、例えば、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸が挙げられる。
【0087】
塩基性化合物(d-4)としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化バナジウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムが挙げられる。
【0088】
これら塩基性化合物(D)は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0089】
塩基性化合物(D)としては、25℃における酸解離定数(pKa)が13以上であり、分子量が200以下である化合物が好ましい。
塩基性化合物(D)の25℃における酸解離定数が13以上であれば、導電性ポリマー(A)の酸性基や酸化剤の分解物と塩基性化合物とで、安定した塩を形成させることができ、レジスト層の膜減りを抑制できる傾向にある。
塩基性化合物(D)の酸解離定数の上限値については特に制限されない。
なお、酸解離定数は「化学便覧 基礎編II」(日本化学会編、丸善、昭和41.9.25発行)に記載されている数値である。
【0090】
塩基性化合物(D)の分子量が200以下であれば、塩基性化合物(D)自体に由来する立体障害による影響が少なくなることにより、導電性ポリマー(A)の酸性基や酸化剤の分解物と塩基性化合物とで、安定した塩を形成させることができ、レジスト層の膜減りを抑制できる傾向にある。
塩基性化合物(B)の分子量の下限値については特に制限されない。
【0091】
25℃における酸解離定数が13以上であり、分子量が200以下である塩基性化合物としては、例えば、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(pKa=26、分子量=139.20)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(pKa=25、分子量=153.23)、水酸化テトラメチルアンモニウム(分子量=91.15)、水酸化テトラエチルアンモニウム(分子量=147.26)等の有機塩基;水酸化リチウム(分子量=23.95)、水酸化ナトリウム(分子量=39.99)、水酸化カリウム(分子量=56.10)、水酸化ルビジウム(分子量=102.48)、水酸化セシウム(分子量=149.91)、水酸化バナジウム(分子量=171.34)、水酸化カルシウム(分子量=74.09)、水酸化ストロンチウム(分子量=121.63)等の無機塩基が挙げられる。上述の4級アンモニウム及び無機塩基の25℃におけるpKaは、いずれも13以上である。これら塩基性化合物は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
これらの中でも、導電性の向上と膜減り抑制の両立の観点から、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、水酸化カリウムがより好ましく、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0092】
高分子化合物としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール誘導体類及びその変性体、デンプン及びその変性体(酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、カチオン化デンプン等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びこれらの塩等)、ポリアクリルアミド、ポリ(N-t-ブチルアクリルアミド)、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等のポリアクリルアミド類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルスチレン共重合体樹脂、水溶性酢酸ビニルアクリル共重合体樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性スチレンマレイン酸共重合樹脂、水溶性フッ素樹脂及びこれらの共重合体が挙げられる。
【0093】
添加剤としては、例えば、顔料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、防腐剤が挙げられる。
【0094】
<含有量>
導電性組成物の組成は、界面活性剤(B)の臨界ミセル濃度によって異なる。
ここで、臨界ミセル濃度とは、界面活性剤として機能するための最低限必要な濃度のことであり、臨界ミセル濃度が低いほど界面活性能が高い。臨界ミセル濃度は、表面張力を測定することで決定できる。具体的には、水性媒体に対して界面活性剤(B)を徐々に添加して25℃における表面張力を測定し、界面活性剤(B)の添加量を増やしても表面張力が低下しなくなるときの界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度とする。なお、界面活性剤(B)が2種以上の混合物からなる場合、混合物の状態で臨界ミセル濃度を求める。
以下、臨界ミセル濃度が0.1質量%未満である界面活性剤(B)を「界面活性剤(B1)」ともいい、臨界ミセル濃度が0.1質量%以上である界面活性剤(B)を「界面活性剤(B2)」ともいう。
【0095】
(導電性組成物中の界面活性剤(B)の臨界ミセル濃度が0.1質量%未満の場合)
導電性ポリマー(A)の含有量が、導電性組成物の総質量に対して0.01質量%以上であれば、形成される導電膜の導電性が優れる傾向にある。より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。導電性ポリマー(A)の含有量が、導電性組成物の総質量に対して5質量%以下であれば、導電性組成物の塗布性に優れる傾向にある。より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましく、0.1~2質量%がさらに好ましい。
導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物をレジスト被覆材料として使用した場合のレジスト層の膜減りが減少する傾向にあることから、導電性組成物の固形分の総質量に対して、99質量%以下が好ましい。なお、導電性組成物の固形分は、導電性組成物から溶剤(C)を除いた残分である。より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。
導電性ポリマー(A)の含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物の塗布性と、導電性組成物より形成される導電膜の導電性のバランスに優れる。
【0096】
界面活性剤(B1)の含有量は、導電性ポリマー(A)100質量部に対して5質量部以上である。
界面活性剤(B1)の含有量が上記下限値以上であれば、導電膜となったときに界面活性剤(B1)が対象物側に局在化しやすくなる。特に、対象物がレジスト層の場合、レジスト層の表面は疎水性であるのに対し、導電性ポリマー(A)は親水性であることから、界面活性剤(B1)がレジスト層側に局在化しやすい。この局在化した界面活性剤(B1)がバリア層の役割を果たすので、導電性ポリマー(A)から酸性基が脱離しても、脱離した酸性基がレジスト層などの対象物に移行するのを抑制でき、レジスト層の膜減りを抑制できる。また、レジスト層への酸化剤の分解物の移行も抑制でき、レジスト層の膜減りを抑制できる。加えて、対象物への導電性組成物の濡れ性が向上し、成膜しやすくなる。好ましくは8質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上である。
界面活性剤(B1)の含有量の上限値については特に限定されず、界面活性剤(B1)の含有量が多くなるほど膜減り防止の効果が高まる傾向にある。ただし、界面活性剤(B1)の含有量が多くなると、その分、導電性組成物中の導電性ポリマー(A)の含有量が少なくなり、導電性が低下する傾向にある。よって、膜減り防止と導電性のバランスを考慮すると、界面活性剤(B1)の含有量は、導電性ポリマー(A)100質量部に対して1000質量部以下が好ましい。より好ましくは500質量部以下であり、さらに好ましくは300質量部以下である。
上記の上限と下限は任意に組み合わせることができる。例えば、界面活性剤(B1)の含有量は、導電性ポリマー(A)100質量部に対して、5~1000質量部が好ましく、8~500質量部がより好ましく、10~300質量部がさらに好ましい。
【0097】
本発明の導電性組成物が溶剤(C)を含有する場合、溶剤(C)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、1~99質量%が好ましく、10~98質量%がより好ましく、50~98質量%がさらに好ましい。
溶剤(C)の含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物の塗布性と、導電性組成物より形成される導電膜の導電性のバランスに優れる。
なお、導電性ポリマー(A)を、イオン交換法により精製して重合溶媒又は水性媒体に溶解した状態(以下、この状態の導電性ポリマー(A)を「導電性ポリマー溶液」ともいう。)で用いる場合、導電性ポリマー溶液由来の重合溶媒又は水性媒体も導電性組成物中の溶剤(C)の含有量に含まれる。
【0098】
(導電性組成物中の界面活性剤(B)の臨界ミセル濃度が0.1質量%以上の場合)
導電性ポリマー(A)の含有量が、導電性組成物の総質量に対して0.01質量%以上であれば、形成される導電膜の導電性が優れる傾向にある。より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。導電性ポリマー(A)の含有量が、導電性組成物の総質量に対して5質量%以下であれば、導電性組成物の塗布性に優れる傾向にある。より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましく、0.1~2質量%がさらに好ましい。
導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物をレジスト被覆材料として使用した場合のレジスト層の膜減りが減少する傾向にあることから、導電性組成物の固形分の総質量に対して、90質量%以下が好ましい。より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。
導電性ポリマー(A)の含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物の塗布性と、導電性組成物より形成される導電膜の導電性のバランスに優れる。
【0099】
界面活性剤(B2)の含有量は、導電性ポリマー(A)100質量部に対して100質量部超である。言い換えれば、界面活性剤(B2)の含有量は、導電性ポリマー(A)の含有量を超える量である。
界面活性剤(B2)の含有量が上記下限値以上、即ち導電性ポリマー(A)に対して過剰であれば、導電膜となったときに界面活性剤(B2)が対象物側に局在化しやすくなる。この局在化した界面活性剤(B2)がバリア層の役割を果たすので、導電性ポリマー(A)から酸性基が脱離しても、脱離した酸性基がレジスト層などの対象物に移行するのを抑制でき、レジスト層の膜減りを抑制できる。また、レジスト層への酸化剤の分解物の移行も抑制でき、レジスト層の膜減りを抑制できる。加えて、対象物への導電性組成物の濡れ性が向上し、成膜しやすくなる。好ましくは110質量部以上であり、より好ましくは200質量部以上であり、さらに好ましくは250質量部以上であり、特に好ましくは300質量部以上である。
界面活性剤(B2)の含有量の上限値については特に限定されず、界面活性剤(B2)の含有量が多くなるほど膜減り防止の効果が高まる傾向にある。ただし、界面活性剤(B2)の含有量が多くなると、その分、導電性組成物中の導電性ポリマー(A)の含有量が少なくなり、導電性が低下する傾向にある。よって、膜減り防止と導電性のバランスを考慮すると、界面活性剤(B2)の含有量は、導電性ポリマー(A)100質量部に対して2000質量部以下が好ましい。より好ましくは1500質量部以下であり、さらに好ましくは1000質量部以下であり、特に好ましくは800質量部以下である。
上記の上限と下限は任意に組み合わせることができる。例えば、界面活性剤(B2)の含有量は、導電性ポリマー(A)100質量部に対して、100質量部超2000質量部以下が好ましく、110~2000質量部がより好ましく、200~1500質量部がさらに好ましく、250~1000質量部が特に好ましく、300~800質量部が最も好ましい。
【0100】
本発明の導電性組成物が溶剤(C)を含有する場合、溶剤(C)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、1~99質量%が好ましく、10~98質量%がより好ましく、50~98質量%がさらに好ましい。
溶剤(C)の含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物の塗布性と、導電性組成物より形成される導電膜の導電性のバランスに優れる。
【0101】
本発明の導電性組成物が塩基性化合物(D)を含む場合、塩基性化合物(D)の含有量が1質量部以上であれば、導電性ポリマー(A)が酸性基を含んでいても、導電性ポリマー(A)の酸性基や酸化剤と充分に塩を形成でき、酸性基が脱離しにくくなる。また、塩基性化合物が酸化剤の分解物とも充分に塩を形成する。よって、レジスト層への酸性基や酸化剤の分解物の移行が抑制され、レジスト層の膜減りを抑制できる。より好ましくは3質量部以上であり、さらに好ましくは5質量部以上であり、特に好ましくは7質量部以上である。
塩基性化合物(D)の含有量が50質量部以下であれば、導電性組成物中での導電性ポリマー(A)の含有量を充分に確保できるので、導電性が良好な導電膜を形成できる。また、導電性ポリマー(A)が酸性基を含む場合、この酸性基が導電膜中で塩基性化合物(D)と塩を形成せずにフリーな状態で適度に存在するので、導電性を良好に維持できる。より好ましくは40質量部以下であり、さらに好ましくは35質量部以下であり、特に好ましくは27質量部以下である。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、塩基性化合物(D)の含有量は、導電性ポリマー(A)100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、3~40質量部がより好ましく、5~35質量部がさらに好ましく、7~27質量部が特に好ましい。
【0102】
<導電性組成物の製造方法>
導電性組成物は、導電性ポリマー(A)及び界面活性剤(B)と、必要に応じて溶剤(C)及び塩基性化合物(D)を含む任意成分の1つ以上とを混合することで得られる。
導電性ポリマー(A)の製造方法により製造した、洗浄後の導電性ポリマー(A)は固体状であることから、固体状の導電性ポリマー(A)と、界面活性剤(B)と、必要に応じて溶剤(C)及び塩基性化合物(D)を含む任意成分の1つ以上とを混合して、導電性組成物とすればよい。
洗浄後にイオン交換法によりさらに精製した導電性ポリマー(A)を用いる場合、イオン交換処理後の導電性ポリマー(A)は、上述したように導電性ポリマー溶液の状態で得られる。そのため、この導電性ポリマー溶液に界面活性剤(B)と、必要に応じて塩基性化合物(D)を含む任意成分の1つ以上とを添加して導電性組成物としてもよいし、溶剤(C)でさらに希釈してもよい。
【0103】
<作用効果>
本発明の導電性組成物は、導電性に優れ、表面抵抗率1×1010[Ω/□]以下を達成することができ、1×10[Ω/□]以下を達成することもできる。
本発明の導電性組成物は、レジスト被覆材料として好適に用いることができる。すなわち、導電性ポリマー(A)と、特定量の界面活性剤(B)とを含むので、導電膜となったときに界面活性剤(B)が基材やレジスト層等の対象物側に局在化しやすくなり、この局在化した界面活性剤(B)がバリア層の役割を果たす。よって、導電性ポリマー(A)が酸性基を含んでいても、導電性ポリマー(A)から脱離した酸性基や酸化剤の分解物がレジスト層へ移行しにくく、レジスト層の膜減りを抑制できる。
【0104】
なお、レジスト層の膜厚が薄いほど、膜減りした場合の影響を受けやすい傾向にある。
しかし、本発明の導電性組成物であれば、レジスト層の膜減りが少ない導電膜を形成できる。よって、本発明の導電性組成物は、膜厚が薄い、具体的には膜厚が500nm以下、好ましくは200nm以下のレジスト層の表面に導電膜を形成する場合にも適している。
【0105】
<用途>
本発明の導電性組成物は、荷電粒子線描画時の帯電防止用として好適であり、レジスト被覆材料として好適に用いることもできる。具体的には、本発明の導電性組成物を、化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法のレジスト層の表面に塗布して、導電膜を形成することができる。すなわち、導電性組成物を含む導電膜が表面に形成されたレジストにおいては、この導電膜がレジスト層の帯電防止膜となる。
また、上述した以外にも、本発明の導電性組成物は、例えばコンデンサ、透明電極、半導体等の材料として使用することもできる。
以下、本発明の導電性組成物を用いたレジストパターンの形成方法の一例について説明する。
【0106】
<レジストパターンの形成方法>
本発明のレジストパターンの形成方法は、化学増幅型レジストからなるレジスト層を片面上に有する基板のレジスト層の表面に、本発明の導電性組成物の導電膜を形成する積層工程と、本発明の導電性組成物の導電膜がレジスト層表面に形成された基板に対し、導電膜側から荷電粒子線をパターン状に照射する露光工程とを有する。
化学増幅型レジストからなるレジスト層は、荷電粒子線に感度を有するものであればよく、ポジ型でもネガ型でもよい。公知の化学増幅型レジスト組成物を用いて形成できる。
例えば、露光工程の後、水洗により導電膜を除去する水洗工程、レジスト層を現像してレジストパターンを形成する現像工程を必要に応じて行う。
レジスト層が化学増幅型レジストからなる場合は、露光工程の後、現像工程の前に加熱する露光後ベーク(以下、「PEB」とも言う。)工程を行うことが好ましい。
【0107】
(積層工程)
積層工程では、化学増幅型レジストからなるレジスト層を片面上に有する基板の、レジスト層の表面に導電膜を形成する。
基板としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;塩化ビニル;ナイロン;ポリスチレン;ポリカーボネート;エポキシ樹脂;フッ素樹脂;ポリスルホン;ポリイミド;ポリウレタン;フェノール樹脂;シリコーン樹脂;合成紙等の各種高分子化合物の成型品及びフィルム;紙;鉄;ガラス;石英ガラス;各種ウエハ;アルミニウム;銅;亜鉛;ニッケル;ステンレス鋼、及びこれらの基板表面に各種塗料や感光性樹脂等がコーティングされているものを例示できる。
基板の形状は特に限定されず、板状であってもよいし、板状以外の形状であってもよい。
【0108】
基板の片面上には、ポジ型又はネガ型のレジストからなるレジスト層が設けられる。
ポジ型のレジストは、荷電粒子線に感度を有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用できる。荷電粒子線の照射により酸を発生する酸発生剤と、酸分解性基を有する構成単位を含む重合体とを含有する化学増幅型レジストが好ましい。
ポジ型レジスト層は公知の方法により形成できる。例えば基板の片面上にレジストの有機溶剤溶液を塗布し、必要に応じて加熱(プリベーク)を行うことによりポジ型のレジスト層を形成できる。
【0109】
ネガ型のレジストは、荷電粒子線に感度を有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用できる。荷電粒子線の照射により酸を発生する酸発生剤と、現像液に可溶性の重合体と、架橋剤とを含有する化学増幅型レジストが好ましい。
ネガ型のレジスト層は、ポジ型のレジスト層と同様、公知の方法により形成できる。
【0110】
レジスト層の表面に本発明の導電性組成物を塗布し、乾燥して導電膜を形成する。必要に応じて乾燥後に加熱処理してもよい。
本発明の導電性組成物のレジスト層への塗布方法としては、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法を含む手法が挙げられる。
乾燥温度は、40℃未満が好ましい。乾燥時間は1時間以内が好ましい。
加熱処理温度は、導電性の観点から、40℃~250℃の温度範囲が好ましく、60℃~200℃の温度範囲がより好ましい。処理時間は、安定性の観点から、1時間以内が好ましく、30分以内がより好ましい。
【0111】
積層工程により、基板とレジスト層と導電膜とがこの順に積層した積層体が得られる。
レジスト層の膜厚は特に限定されない。
導電膜の膜厚は、1~100nmが好ましく、5~50nmがより好ましく、5~30nmがさらに好ましい。
【0112】
(露光工程)
露光工程は、本発明の導電性組成物の導電膜がレジスト層表面に形成されたレジスト層に対して荷電粒子線をパターン状に照射する工程である。具体的には、積層体に対して、導電膜の側から荷電粒子線を照射する。
露光工程により、基板と導電膜との間のレジスト層に潜像が形成される。前記レジスト層が化学増幅型レジストからなる場合は、荷電粒子線照射部(露光部)において酸発生剤から酸が発生する。
このとき、レジスト層の表面に導電膜が設けられているため、導電膜からアースをとることができ、積層体全体の帯電を防止できる。そのため、帯電の影響でレジスト層に入射する電子の位置がずれることを抑制でき、目的とするレジストパターンに対応する潜像を精度良く形成できる。
【0113】
(PEB工程)
PEB工程は、露光工程の後、レジスト層を加熱(PEB)する工程である。例えば、ホットプレート等の公知の加熱手段により前記積層体を加熱する。
露光工程で荷電粒子線が照射されたレジスト層が加熱されると、ポジ型のレジスト層の場合は荷電粒子線照射部(露光部)において、酸発生剤から発生した酸の作用による反応が促進され、現像液への溶解性が増大する。一方、ネガ型のレジスト層の場合は逆に、現像液への溶解性が低下する。
加熱条件は、レジストにより異なるが、導電膜の耐熱性の点から、200℃以下、1時間以内が好ましい。
【0114】
(水洗/現像工程)
水洗/現像工程は、水洗により導電膜を除去し、レジスト層を現像してレジストパターンを形成する工程である。
導電膜は水溶性であるため、水洗を行うと、導電膜が溶解除去される。
水洗は、水性液に接触させることを示す。水性液としては、例えば、水、塩基及び塩基性塩の少なくとも一方を含む水、酸を含む水、水と水溶性有機溶媒との混合物が挙げられる。
【0115】
ポジ型のレジスト層を現像すると、ポジ型のレジスト層の荷電粒子線照射部(露光部)が溶解除去され、ポジ型のレジスト層の荷電粒子線未照射部(未露光部)からなるレジストパターンが形成される。
一方、ネガ型のレジスト層を現像すると、ポジ型のレジスト層の場合とは逆に、荷電粒子線未照射部(未露光部)が溶解除去され、ネガ型のレジスト層の荷電粒子線照射部(露光部)からなるレジストパターンが形成される。
【0116】
水洗/現像工程は、例えば以下の(α)又は(β)の方法により行うことができる。
方法(α):水洗にアルカリ現像液を用い、導電膜の除去と共にレジスト層の現像を行う。
方法(β):水洗により導電膜のみを除去し、次いで、現像液によりレジスト層を現像する。
【0117】
方法(α)で用いるアルカリ現像液(アルカリ水溶液)としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液が挙げられる。
方法(β)の水洗は、現像液に該当しない水性液、例えば、水を用いて行うことができる。現像は、方法(α)と同様、アルカリ現像液を用いて行うことができる。
【0118】
水洗/現像工程の後に、必要に応じて、基板を純水等でリンス処理してもよい。
水洗/現像工程の後、又はリンス処理後に、必要に応じて、レジストパターンが形成された基板を加熱(ポストベーク)してもよい。
【0119】
本発明のレジストパターンの形成方法で、片面上にレジストパターンを有する基板を得て、レジストパターンをマスクとしてエッチングする工程(エッチング工程)を行うことにより、パターンが形成された基板が得られる。
エッチング工程の後に基板上にレジストパターンが残存する場合は、基板上のレジストパターンを剥離剤によって除去する工程をさらに有してもよい。
【実施例
【0120】
以下、本発明を実施例により説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。なお、実施例5は参考例である。
【0121】
[測定/評価方法]
<臨界ミセル濃度の測定>
水に界面活性剤(B)を添加して測定サンプルを調製し、得られた測定サンプルの25℃における表面張力を自動表面張力計(協和界面科学株式会社、「CBVP-Z型」)を用い、プレート法(ウィルヘルミ法)に基づいて測定した。
すなわち、測定子(白金プレート)を25℃に調整した測定サンプルに浸漬させ、測定子が測定サンプルに引っ張られる力(表面張力)と、測定子を固定しているバネの力が釣り合ったときの、測定子が測定サンプルに沈んだ変位から、表面張力を求めた。
水に対して界面活性剤(B)を0.01~1質量%ずつ添加して測定サンプルの表面張力を測定し、界面活性剤(B)の添加量を増やしても表面張力が低下しなくなるときの界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度とした。
【0122】
<導電性の評価>
ガラス基材上に導電性組成物を2.0mL滴下し、基材表面全体を覆うように、スピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布して塗膜を形成した後、ホットプレートにて80℃で2分間加熱処理を行い、基材上に膜厚約30nmの導電膜を形成して導電体を得た。
ハイレスタUX-MCP-HT800(株式会社三菱ケミカルアナリテック製)を用い2端子法(電極間距離20mm)にて、導電膜の表面抵抗率[Ω/□]を測定した。
【0123】
<膜減り試験による評価>
(減膜率の測定)
化学増幅型電子線レジスト(以下、「レジスト」と略す。)を使用し、レジスト層の減膜率を以下の手順(1A)~(8A)で測定した。
(1A)レジスト層の形成:基材として4インチシリコンウエハー上に、膜厚が約60nmとなるようにレジスト3μLをスピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布した後、ホットプレートにて130℃で3分間プリベークを行い、溶剤を除去し、基材上にレジスト層を形成した。
(2A)レジスト層の膜厚測定1:基材上に形成されたレジスト層の一部を剥離し、基材面を基準位置として、高速分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製、「M-2000D」)を用い、初期のレジスト層の膜厚a[nm]を測定した。
(3A)導電膜の形成:レジスト層上に導電性組成物2mLを滴下し、レジスト層の表面全体を覆うように、スピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布した後、ホットプレートにて80℃で3分間プリベークを行い、溶剤を除去し、レジスト層上に膜厚約30nmの導電膜を形成した。
(4A)PEB処理:導電膜とレジスト層が積層した基材を空気雰囲気下、ホットプレートにて120℃×20分加熱し、この状態の基材を空気中、常温(25℃)で90秒静置した。
(5A)水洗:導電膜を20mLの水で洗い流した後、スピンコーターにて2000rpm×60秒間で回転させ、レジスト層の表面の水を除去した。
(6A)現像:2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液からなる現像液20mLをレジスト層の表面に滴下した。60秒静置した後、スピンコーターにて2000rpm×60秒間で回転させ、レジスト層の表面の現像液を除去し、引き続き60秒間回転を維持して乾燥した。
(7A)レジスト層の膜厚測定2:前記(2A)においてレジスト層を一部剥離した部分から5mm以内におけるレジスト層の一部を剥離した後、触針式段差計を用いて現像後のレジスト層の膜厚b[nm]を測定した。
(8A)減膜率の算出:下記式(i)より減膜率[%]を算出した。
減膜率[%]=100-(b/a×100) ・・・(i)
【0124】
[製造例1]
<導電性ポリマー(A)の製造>
2-アミノアニソール-4-スルホン酸100mmolに、ピリジン100mmolと水100mLを添加して、モノマー溶液を得た。
得られたモノマー溶液に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液(酸化剤溶液)を10℃で滴下した。滴下終了後、25℃で15時間さらに攪拌した後、35℃まで昇温してさらに2時間撹拌して、反応生成物が沈殿した反応液を得た(重合工程)。
得られた反応液を遠心濾過器にて濾過し、沈殿物(反応生成物)を回収して、1Lのメタノールにて反応生成物を洗浄した後に乾燥させた。乾燥後の反応生成物20gを、純水980gに溶解させ、固形分濃度2質量%の導電性ポリマー溶液(A1-1)を1000g得た。
超純水により洗浄した陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライトIR-120B」)500mLをカラムに充填した。
このカラムに、導電性ポリマー溶液(A1-1)1000gを、50mL/分(SV=6)の速度で通過させて、塩基性物質等が除去された導電性ポリマー溶液(A1-2)を900g得た。
次に、超純水により洗浄した陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライトIRA410」)500mLをカラムに充填した。
このカラムに、導電性ポリマー溶液(A1-2)900gを、50mL/分(SV=6)の速度で通過させて、塩基性物質等が除去された導電性ポリマー溶液(A1-3)を800g得た。
この導電性ポリマー溶液(A1-3)についてイオンクロマトグラフィにより組成分析を行なったところ、残存モノマーは80%以上、硫酸イオンは99%以上、塩基性物質は99%以上除去されていた。また、加熱残分を測定した結果、2.0質量%であった。すなわち、導電性ポリマー溶液(A1-3)の固形分濃度は2.0質量%である。
なお、1スベルドラップ(SV)は1×10/s(1GL/s)と定義される。
【0125】
[製造例2]
<界面活性剤(B)の製造>
N-ビニルピロリドン55g(0.49mol)、重合開始剤としてアゾビスメチルブチロニトリル3g(15.60mmol)、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン1g(4.94mmol)を、イソプロピルアルコール100mLに攪拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール100mL中に、前記反応溶液を1mL/minの滴下速度で滴下し、滴下重合を行った。滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行われた。滴下終了後、80℃でさらに2時間熟成した後、放冷した。その後、減圧濃縮を行い、濃縮物をアセトン30mLに溶解させ、水溶性ポリマー溶液を得た。得られた水溶性ポリマー溶液を1000mLのn-ヘキサンに添加して白色沈殿物を生成させ、得られた沈殿物を濾別した。得られた水溶性ポリマーをn-ヘキサンにて洗浄した後、乾燥させ、粉末状の水溶性ポリマー(B-1)45gを得た。
【0126】
得られた水溶性ポリマー(B-1)について分析を行ったところ、下記一般式(71-1)で表される化合物(71)と、下記一般式(81-1)で表される化合物(81)と、下記一般式(81-2)で表される化合物(81)との混合物であった。これらの質量比は、化合物(71):化合物(81)=10:90であった。
水溶性ポリマー(B-1)の臨界ミセル濃度は、0.1質量%であった。
【0127】
【化11】
【0128】
【化12】
【0129】
【化13】
【0130】
[製造例3]
<界面活性剤(B)の製造>
N-ビニルピロリドン55g(0.49mol)、重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイド3g(7.53mmol)、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン1g(4.94mmol)を、メチルイソブチルケトン100mLに攪拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール100mL中に、前記反応溶液を1mL/minの滴下速度で滴下し、滴下重合を行った。滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行われた。滴下終了後、80℃でさらに2時間熟成した後、放冷した。その後、減圧濃縮を行い、濃縮物をアセトン30mLに溶解させ、水溶性ポリマー溶液を得た。得られた水溶性ポリマー溶液を1000mLのn-ヘキサンに添加して白色沈殿物を生成させ、得られた沈殿物を濾別した。得られた水溶性ポリマーをn-ヘキサンにて洗浄した後、乾燥させ、粉末状の水溶性ポリマー(B-2)48gを得た。
【0131】
得られた水溶性ポリマー(B-2)について分析を行ったところ、前記一般式(71-1)で表される化合物(71)と、前記一般式(81-1)で表される化合物(81)との混合物であった。これらの質量比は、化合物(71):化合物(81)=40:60であった。
水溶性ポリマー(B-2)の臨界ミセル濃度は、0.01質量%であった。
【0132】
[実施例1]
導電性ポリマー溶液(A1-3)20質量部(固形分換算で0.4質量部)と、水溶性ポリマー(B-1)0.6質量部と、イソプロピルアルコール(IPA)4質量部と、水75.4質量部とを混合し、導電性組成物を得た。導電性組成物の総質量に対する、導電性ポリマー(A)、界面活性剤(B)及び溶剤(C)の含有量等を表1に示す。
得られた導電性組成物について、導電性を評価し、膜減り試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0133】
[実施例2~4/比較例1~2]
導電性ポリマー(A)100質量部に対する水溶性ポリマー(B-1)の含有量が表1に示す値となるように、各成分の含有量を変更した以外は、実施例1と同様にして導電性組成物を調製した。
得られた導電性組成物について、導電性を評価し、膜減り試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
表1から明らかなように、各実施例の場合、表面抵抗率が1×1010[Ω/□]以下、かつ減膜率が6.2%以下であり、各実施例で得られた導電性組成物によれば、導電性に優れるとともにレジスト層の膜減りが少ない導電膜を形成できた。
一方、比較例の場合、レジスト層が膜減りしやすかった。
【0136】
[実施例5]
導電性ポリマー溶液(A1-3)45質量部(固形分換算で0.9質量部)と、水溶性ポリマー(B-2)0.1質量部と、イソプロピルアルコール(IPA)4質量部と、水50.9質量部とを混合し、導電性組成物を得た。導電性組成物の総質量に対する、導電性ポリマー(A)、界面活性剤(B)及び溶剤(C)の含有量等を表2に示す。
得られた導電性組成物について、導電性を評価し、膜減り試験を行った。これらの結果を表2に示す。
【0137】
[実施例6~7]
導電性ポリマー(A)100質量部に対する水溶性ポリマー(B-2)の含有量が表2に示す値となるように、各成分の含有量を変更した以外は、実施例5と同様にして導電性組成物を調製した。
得られた導電性組成物について、導電性を評価し、膜減り試験を行った。これらの結果を表2に示す。
【0138】
[比較例3]
導電性ポリマー溶液(A1-3)49.5質量部(固形分換算で0.99質量部)と、水溶性ポリマー(B-2)0.01質量部と、イソプロピルアルコール(IPA)4質量部と、水46.49質量部とを混合し、導電性組成物を得た。導電性組成物の総質量に対する、導電性ポリマー(A)、界面活性剤(B)及び溶剤(C)の含有量等を表2に示す。
得られた導電性組成物について、導電性を評価し、膜減り試験を行った。これらの結果を表2に示す。
【0139】
【表2】
【0140】
表2から明らかなように、各実施例の場合、表面抵抗率が1×1010[Ω/□]以下、かつ減膜率が6.2%以下であり、各実施例で得られた導電性組成物によれば、導電性に優れるとともにレジスト層の膜減りが少ない導電膜を形成できた。特に、臨界ミセル濃度が0.01質量%である水溶性ポリマー(B-2)を用いれば、少ない量でもレジスト層の膜減り防止の効果が充分に得られることが示された。
【0141】
[実施例8]
導電性ポリマー溶液(A1-3)18質量部(固形分換算で0.36質量部)と、水溶性ポリマー(B-1)0.55質量部と、イソプロピルアルコール(IPA)4質量部と、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)0.09質量部と、水77.36質量部とを混合し、導電性組成物を得た。導電性組成物の総質量に対する、導電性ポリマー(A)、界面活性剤(B)、溶剤(C)、及び塩基性化合物(D)の含有量等を表3に示す。
得られた導電性組成物について、導電性を評価し、膜減り試験を行った。これらの結果を表3に示す。
【0142】
[実施例9]
導電性ポリマー溶液(A1-3)18質量部(固形分換算で0.36質量部)と、水溶性ポリマー(B-1)0.6質量部と、イソプロピルアルコール(IPA)4質量部と、水酸化カリウム(KOH)0.04質量部と、水77.36質量部とを混合し、導電性組成物を得た。導電性組成物の総質量に対する、導電性ポリマー(A)、界面活性剤(B)、溶剤(C)、及び塩基性化合物(D)の含有量等を表3に示す。
得られた導電性組成物について、導電性を評価し、膜減り試験を行った。これらの結果を表3に示す。
【0143】
【表3】
【0144】
表3中の略号は以下の通りである。
・TBD:1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(pKa=26、分子量=136)。
・KOH:水酸化カリウム(pKa>13、分子量=56)。
【0145】
表3から明らかなように、各実施例の場合、表面抵抗率が1×1010[Ω/□]以下、かつ減膜率が6.2%以下であり、各実施例で得られた導電性組成物によれば、導電性に優れるとともにレジスト層の膜減りが少ない導電膜を形成できた。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の導電性組成物は、例えば、レジスト層上に形成して荷電粒子線を用いたパターン形成した際に、レジスト層の膜減りが少ない導電膜を形成でき、荷電粒子線描画時の帯電防止用として有用である。