(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】トランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240709BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240709BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240709BHJP
H01L 21/288 20060101ALI20240709BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20240709BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20240709BHJP
H01L 29/49 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L29/78 627C
H01L29/78 626C
H01L29/78 616K
H01L21/28 301B
H01L21/288 E
H01L29/50 M
H01L29/78 617J
H01L29/58 G
(21)【出願番号】P 2022111711
(22)【出願日】2022-07-12
(62)【分割の表示】P 2020539314の分割
【原出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018161269
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】川上 雄介
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157111(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0285471(US,A1)
【文献】特開2004-327857(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0214381(US,A1)
【文献】特開2017-079319(JP,A)
【文献】特開2008-130882(JP,A)
【文献】特開2008-060116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/28
H01L 21/288
H01L 29/417
H01L 29/423
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトムゲート型のトランジスタであって、
半導体層と絶縁層との間に、シラザン系化合
物を含む
層を有し、
前記シラザン系化合物は、下記(3)-1または(3)-2で示される化合物であり、
ソース電極と前記絶縁層との間、及び、ドレイン電極と前記絶縁層との間に、アミノ基を含む層を有する、トランジスタ。
【化1】
【請求項2】
ボトムゲート型のトランジスタであって、
半導体層と絶縁層との間に、クロロシラン系化合物を含む層を有し、
前記クロロシラン系化合物は、下記(4)-1で示される化合物であ
り、
ソース電極と前記絶縁層との間、及び、ドレイン電極と前記絶縁層との間に、アミノ基を含む層を有する、トランジスタ。
【化2】
【請求項3】
ボトムゲート型のトランジスタであって、
半導体層と絶縁層との間に、アルコキシシラン系化合物を含む層を有し、
前記アルコキシシラン系化合物は、下記(4)-2または(4)-3で示される化合物であ
り、
ソース電極と前記絶縁層との間、及び、ドレイン電極と前記絶縁層との間に、アミノ基を含む層を有する、トランジスタ。
【化3】
【請求項4】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、ニッケル-リンを含んで形成されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、導電性微粒子で形成されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載のトランジスタ。
【請求項6】
可撓性を有する基板上に形成されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載のトランジスタ。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のトランジスタを含む、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランジスタの製造方法に関する。
本願は、2018年8月30日に、日本に出願された特願2018-161269号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、集積回路、有機ELディスプレイ用デバイス等の微細デバイス等の製造において、基板上に、表面特性の異なるパターンを形成し、その表面特性の違いを利用して薄膜トランジスタ等の微細デバイスを作成する方法が提案されている。表面特性の異なるパターンを形成する材料としては、例えば、特許文献1に開示された光分解性カップリング剤が知られている。トランジスタの性能を向上させる観点から、電気的特性を改善したトランジスタが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様は、対象物の上に導電性材料を用いてゲート電極を形成し、前記ゲート電極上に絶縁膜を形成し、前記絶縁膜上に光応答性ニトロベンジル基を有する化合物を含む材料を用いて光応答性膜を形成し、前記光応答性膜を選択的に露光して、露光部の前記光応答性基を解離させ、親水性の露光部と、撥水性の未露光部とからなるパターンを形成し、前記露光部に導電性材料を配置してソース電極とドレイン電極を形成し、前記未露光部にプラズマ照射を施して、撥水性膜を除去し、さらに表面処理を施して改質層を形成し、前記改質層の上に半導体層を形成する、ことを含むトランジスタの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本実施形態のトランジスタの製造方法において好適な基板処理装置の全体構成を示す模式図。
【
図2】トランジスタの製造方法の概略工程の一例を示す図である。
【
図3】トランジスタの製造方法の概略工程の一例を示す図である。
【
図4】トランジスタの製造方法の概略工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<トランジスタの製造方法>
本実施形態は、トランジスタの製造方法である。
本実施形態は、まず、対象物の上に導電性材料を用いてゲート電極を形成し、前記ゲート電極上に絶縁膜を形成する。
次に、前記絶縁膜上に光応答性ニトロベンジル基を有する化合物を含む材料を用いて光応答性膜を形成する。
次に、前記光応答性膜を選択的に露光して、露光部の前記光応答性基を解離させ、親水性の露光部と、撥水性の未露光部とからなるパターンを形成する。
次に、前記露光部に導電性材料を配置してソース電極とドレイン電極を形成する。
さらに、未露光部にプラズマ照射を施して、撥水性膜を除去し、さらに表面処理を施して改質層を形成し、前記改質層の上に半導体層を形成する。
【0007】
トランジスタのチャネル領域に接触してカルボキシ基、アミノ基、水酸基等の親水性の基が存在すると、これらの極性基がチャネル領域を流れるキャリアを引き寄せ、キャリアの流れを妨げる「キャリアトラップ」と呼ばれる現象が起きやすい。キャリアトラップが生じると、トランジスタの挙動が安定せず、例えば、素子特性にヒステリシスを生じるというような不具合を生じやすい。
ところで、基板表面の濡れ性を好適に改質できるため、光応答性ニトロベンジル基を有する化合物を含む材料が使用される。この化合物を用いた場合、未露光部にはニトロベンジル基が存在する。一方、露光により光分解性基が分解した部分にはアミノ基等の親水性基が存在する。
【0008】
親水性基の中でも、アミノ基は表面自由エネルギーが高い官能基である。親水性が高いため、水分や不純物の吸着が生じ、デバイスの欠陥や劣化の原因となりうる。またこの上層に積層する材料の表面自由エネルギーと大きく異なる場合、所望の密着性や結晶性・配向性を得られない可能性がある。
【0009】
本実施形態においては、光応答性ニトロベンジル基を有する化合物を含む材料を用いた場合であっても、特性が良好なトランジスタを製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
本実施形態のトランジスタの製造方法は、ゲート電極を作製する第1のパターン形成工程、絶縁膜形成工程、ソース電極及びドレイン電極を作製する第2のパターン形成工程、及び改質層形成工程をこの順で備えることが好ましい。
以下、本実施形態の各工程について説明する。
【0011】
≪第1のパターン形成工程≫
まず、対象物の上に親水性の露光部とからなるパターンを形成するまでの工程について説明する。
第1のパターン形成工程は、対象物の上にパターンを形成し、このパターン上に導電性材料を配置してゲート電極を作製する工程である。
第1のパターン形成工程は、対象物の上に光応答性膜を形成する工程、露光工程、導電性材料配置工程をこの順で備えることが好ましい。
【0012】
・対象物の上に光応答性膜を形成する工程
まず、
図2(a)に示すように、基板11の表面に、光応答性ニトロベンジル基を有する化合物を含む光応答性膜12を形成する。
光応答性膜12は、対象物の上に塗布することにより形成することが好ましい。光応答性膜が含む光応答性二トロベンジル基を有する化合物については後述する。
【0013】
塗布方法としては、物理的気相成長法(PVD)や化学的気相成長法(CVD)、液相成長法等、一般的な成膜技術の何れを用いてもよい。中でも、特に液相成長法が好ましく、液相成長法としては例えば、塗布法(スピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコート、ロールコート、刷毛塗り)、印刷法(フレキソ印刷、スクリーン印刷)等が挙げられる。また、SAM膜、LB膜としてもよい。
【0014】
なお、本工程においては、例えば熱や減圧等によって溶剤を乾燥させる処理を加えてもよい。
【0015】
・露光工程
対象物の上に光応答性膜を形成したのち、所定のパターンの光を照射して選択的に露光する。この露光工程により、露光部の化合物は、撥水性を有する基(保護基)が脱離して親水性を有する基が生成し、露光部には親水領域が形成される。未露光部はこの脱離が起こらず、撥水領域のままとなる。
撥水性能を有する基が解離し、親水性能を有する残基(アミノ基)が生じるため、光照射後においては、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させることができる。
【0016】
具体的には、
図2(b)に示すように、所定のパターンの露光領域を有するフォトマスク13を用意する。露光方法としては、フォトマスクを用いる手段に限られず、レンズやミラーなどの光学系を用いたプロジェクション露光、空間光変調素子、レーザービームなどを用いたマスクレス露光等の手段を用いることができる。なお、フォトマスク13は、光応答性膜12と接触するように設けてもよいし、非接触となるように設けてもよい。
その後、
図2(c)に示すように、フォトマスク13を介して光応答性膜12にUV光を照射する。これにより、フォトマスク13の露光領域において光応答性膜12が露光され、親水領域14が形成される。
【0017】
なお、UV光は感光性基の構造により最適な量子効率が発揮される波長を照射することができる。例えば、365nmのi線が挙げられる。また、その露光量や露光時間は、必ずしも完全に脱保護が進行する必要はなく、一部に脱保護が発生する程度でよい。その際、後述のめっき工程において、脱保護の進行具合に応じた条件(めっき浴の活性等)を適宜変更することができる。
【0018】
本工程において、照射する光は紫外線が好ましい。照射する光は、200~450nmの範囲に含まれる波長を有する光を含むことが好ましく、320~450nmの範囲に含まれる波長を有する光を含むことがより好ましい。また、波長が365nmの光を含む光を照射することも好ましい。これらの波長を有する光は、本実施形態に用いる化合物の保護基を効率よく分解することができる。光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ;窒素等の気体レーザー、有機色素溶液の液体レーザー、無機単結晶に希土類イオンを含有させた固体レーザー等が挙げられる。
【0019】
また、単色光が得られるレーザー以外の光源としては、広帯域の線スペクトル、連続スペクトルをバンドパスフィルター、カットオフフィルター等の光学フィルターを使用して取出した特定波長の光を使用してもよい。一度に大きな面積を照射することができることから、光源としては高圧水銀ランプまたは超高圧水銀ランプが好ましい。
本実施形態のパターン形成工程においては、上記の範囲で任意に光を照射することができるが、特に回路パターンに対応した分布の光エネルギーを照射することが好ましい。
【0020】
露光工程は特に限定されず、1回の露光を行ってもよく、複数回の露光を行ってもよい。また、透過性のある対象物を処理する場合には、対象物側から露光を行ってもよい。露光工程をより短縮できる観点から、露光は1回行うことが好ましい。
【0021】
[任意の露光後加熱工程]
本実施形態においては、露光工程の後、加熱を実施してもよい。加熱方法としては、オーブン、ホットプレート、赤外線ヒーターなどが挙げられる。加熱温度は40℃~200℃としてよく、50℃~120℃としてもよい。
【0022】
[任意の洗浄工程]
本実施形態においては、露光工程の後、あるいは加熱工程の後に洗浄工程を設けてもよい。洗浄方法としては、浸漬洗浄、スプレー洗浄、超音波洗浄などが挙げられる。洗浄液は水やアルコールなどの極性溶媒や、トルエンなどの非極性溶媒を用いてもよく、その混合溶液や、界面活性剤などの添加剤を含むものを用いてもよい。また、洗浄後、ガス吹付や加熱などによる乾燥工程を設けてもよい。
【0023】
[配置工程]
本工程は、前記露光工程で生成した親水領域に導電性材料を配置させる工程である。この工程により、ゲート電極が作製される。
【0024】
まず、
図2(d)に示すように、親水領域14に無電解めっき用触媒を付与して触媒層15を形成する。
【0025】
無電解めっき用触媒は、無電解めっき用のめっき液に含まれる金属イオンを還元する触媒であり、銀やパラジウムが挙げられる。なお、無電解めっきとして置換めっき、自己触媒めっきを行う場合は、上記の触媒に替えて、銅、ニッケル、金などの金属微粒子を用いることができる。親水領域14の表面にはアミノ基が露出しているが、アミノ基は、上述の無電解めっき用触媒を捕捉・還元することが可能である。そのため、親水領域14上のみに無電解用めっき用触媒が補足され、触媒層15が形成される。また、無電解めっき用触媒は、保護基が分解されることにより生じるアミノ基等の親水性基が担持可能なものを用いることができる。
【0026】
次いで、
図2(e)に示すように、基板11を無電解めっき浴に浸漬して触媒表面に金属イオンを還元し、めっき層16を析出させる。めっき層16の材料としては、ニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)が挙げられる。親水領域14表面には十分な量の触媒を担持する触媒層15が形成されているため、親水領域14上にのみ選択的にめっき層16を析出させることができる。還元が不十分な場合には、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤溶液に浸漬してアミン上の金属イオンを積極的に還元してもよい。
【0027】
以上の工程により、親水領域に導電性材料を配置することができる。
【0028】
また、本工程においては、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液からなるパターン形成材料を塗布することで親水領域に導電性材料を配置することもできる。導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル及びITOのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
【0029】
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
【0030】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n-ヘプタン、n-オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、p-ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0031】
液状の半導体材料としては、分散媒に分散又は溶解させた有機半導体材料を用いることができる。有機半導体材料としては、その骨格が共役二重結合から構成されるπ電子共役系の高分子材料が望ましい。代表的には、ポリチオフェン、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリチオフェン誘導体、ペンタセン等の可溶性の高分子材料が挙げられる。
【0032】
パターン形成材料を配置させる方法としては、液滴吐出法、インクジェット法、スピンコート法、ロールコート法、スロットコート法等を適用することができる。
【0033】
[対象物]
対象物としては、特に限定されない。本実施形態において、対象物の材料は、例えば、金属、結晶質材料(例えば単結晶質、多結晶質および部分結晶質材料)、非晶質材料、導体、半導体、絶縁体、繊維、ガラス、セラミックス、ゼオライト、プラスチック、熱硬化性および熱可塑性材料(例えば、場合によってドープされた:ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、セルロースポリマー、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレンビニル共重合体、ポリ塩化ビニルなど)が挙げられる。また、対象物は、光学素子、塗装基板、フィルム等であってよく、これらは可撓性を有していてもよい。
【0034】
ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板としては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0035】
≪絶縁膜形成工程≫
図3(a)に示すように、上述した無電解めっきパターン形成方法により形成した無電解めっきパターンのめっき層16を、公知の方法により覆って光応答性膜12上に絶縁体層17を形成する。絶縁体層17は、例えば、紫外線硬化型のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、シリコーン樹脂、イミド樹脂等の1つ以上の樹脂を有機溶媒に溶解させた塗布液を用い、当該塗布液を塗布することにより形成してもよい。絶縁体層17を形成する領域に対応して開口部が設けられたマスクを介して塗膜に紫外線を照射することで、絶縁体層17を所望のパターンに形成することが可能である。
【0036】
絶縁膜材料としては、有機材料に限られず無機材料を用いてもよい。また、有機シランなどの金属酸化物前駆体などを用いてもよい。絶縁膜の形成方法としては、上記の塗布方法に限られず、物理的気相成長法(PVD)や化学的気相成長法(CVD)等の公知の成膜技術を用いてもよい。
【0037】
≪第2のパターン形成工程≫
ソース電極及びドレイン電極を作製する第2のパターン形成工程について説明する。
図3(b)に示すように、上述した第1のパターン形成方法と同様にして、絶縁体層17の上にソース電極及びドレイン電極が形成される部分に親水領域14を形成する。
【0038】
図3(c)に示すように、上述した第1のパターン形成方法と同様にして、絶縁体層17の上に形成した親水領域14上に無電解めっき用触媒を担持させ、触媒層15を形成した後、無電解めっきを行うことによりめっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)を形成する。なお、めっき層18及び19の材料としてもニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)が挙げられるが、めっき層16(ゲート電極)と異なる材料で形成してもよい。また、第2のパターン形成工程においても、第1のパターン形成工程において説明したパターン形成材料を用いてソース電極及びドレイン電極を形成してもよい。
【0039】
≪改質層形成工程≫
本実施形態において、第2のパターン形成工程において形成された未露光部にプラズマ照射を施して、撥水性膜を除去し、さらに表面処理を施して改質層を形成する。
【0040】
図3(d)の撥水領域12Aは、光応答性ニトロベンジル基を有する化合物を含む層である。改質層形成工程は、プラズマを照射して、撥水領域12Aを除去する。さらに表面処理を施す。これにより、キャリアトラップを抑制でき、さらに、上層に積層する材料との密着性や結晶性・配向性を良好なものとすることができる。
【0041】
・プラズマ照射工程
改質層形成工程では、
図3(d)に示すように、撥水領域12Aにプラズマを照射する。撥水領域12Aにプラズマ照射を行うことにより、撥水領域12Aが除去される。これにより、
図4(a)に示す絶縁層17の最表面17Aが露出する。プラズマ照射工程は、公知のプラズマ照射装置を用い、プラズマ化用ガスを照射することにより実施すればよい。
プラズマ照射により露出した絶縁層の最表面17Aには、水酸基が生成される。
なお、プラズマ照射工程では、プラズマ照射領域において必ずしも完全に撥水領域12Aが除去されなくともよく、プラズマ照射領域における少なくとも一部の撥水領域12Aが除去されてもよい。
【0042】
・表面処理工程
本工程は、前記プラズマ照射工程により露出した水酸基を表面処理剤を用いて保護する工程である。本工程に使用する表面処理剤としては、シラザン化合物、クロロシラン化合物などの表面処理剤が使用できる。また、表面処理工程によって形成される表面処理層は、自己組織化単分子SAM膜材から形成される層であってもよい。
【0043】
自己組織化単分子SAM膜材を使用すると、分子配向により電子豊富なフェニル基やフッ素原子等の官能基を、絶縁膜の表面に配置することができる。これにより、絶縁膜と半導体層の界面は電子が豊富な状態となる。電子豊富な絶縁膜界面からの電荷反発によって、半導体側界面に正孔が豊富な層(正電荷)を生成させることができる。
【0044】
なお、互いに異なる2種以上の表面処理剤を用い、2種以上の化合物を含む表面を得ることも可能である。この場合、例えば、上述のプラズマ照射工程で照射するプラズマ照射量とプラズマ照射時間を制御し、プラズマ照射領域における一部の撥水領域を除去する。そして、露出した水酸基を表面処理剤で処理した後2回目のプラズマ照射工程を行い、除去されていなかった残りの撥水領域を除去する。次いで、2回目のプラズマ照射工程で露出した水酸基を異なる表面処理剤で処理することにより2種以上の化合物を含む表面が得られる。
【0045】
本実施形態に用いる表面処理剤が含む化合物としては、具体的には、(3)-1、(3)-2に示すシラザン系化合物、(4)-1に示すクロロシラン系化合物、(4)-2、(4)-3に示す化合物を含む表面処理剤が挙げられる。
【0046】
【0047】
【0048】
表面処理を行う方法としては、浸漬法、化学処理法等の公知の方法を用いることができる。なお、反応促進のための活性化剤や縮合剤などを用いてもよい。また、物理吸着による付着を回避するために適宜洗浄処理を行ってもよい。
上記に列挙した化合物を含む表面処理剤で表面処理を行うことにより、
図4(b)に示すように、表面処理部12cが形成される。
【0049】
表面処理部12cを形成することの効果について、p型半導体を例に説明する。
表面処理部12cを形成することにより、絶縁膜の欠陥や親水性基によるキャリアトラップの影響を抑制又は解消できる。これにより、キャリア移動度の向上と、サブスレッショルド特性の向上を実現できる。
【0050】
また、絶縁膜と半導体との界面において、有機半導体側に生じた正電荷の蓄積密度が向上するため、on/off比の向上が可能となる。このときの双極子、すなわち分子内の電荷分布の強さによって、ON状態にするために必要なゲート電圧が変わる。つまり、表面修飾剤の選定によって、閾値電圧を制御することも可能となる。
表面処理により表面電荷が変化することに伴い、表面自由エネルギーも低くなることで、高分子・低分子有機半導体成膜時の分子再配向・結晶化が促進され、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0051】
図4(c)に示すように、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に半導体層21を形成する。半導体層21は、例えば、TIPSペンタセン(6,13-Bis(triisopropylsilylethynyl)pentacene)のような有機溶媒に可溶な有機半導体材料を当該有機溶媒に溶解させた溶液を作製し、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に塗布、乾燥させることにより形成してもよい。なお、半導体層21を形成する前に、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間の化合物層12を露光して親水化してもよい。トランジスタのチャネルに対応する部分を親水化することで、当該親水化部分に上記溶液が好適に塗布され、半導体層21を選択的に形成しやすくなる。また、半導体層21は、上記溶液にPS(ポリスチレン)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル)などの絶縁性ポリマーを1種類以上添加し、当該絶縁性ポリマーを含む溶液を塗布、乾燥することにより形成してもよい。このようにして半導体層21を形成すると、半導体層21の下方(絶縁体層17側)に絶縁性ポリマーが集中して形成される。有機半導体と絶縁体層との界面にアミノ基などの極性基が存在する場合、トランジスタ特性の低下を生じる傾向にあるが、上述の絶縁性ポリマーを介して有機半導体を設ける構成とすることにより、トランジスタ特性の低下を抑制することができる。以上のようにして、トランジスタを製造することが可能である。
【0052】
なお、トランジスタの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
図2~
図4の態様では、ボトムコンタクト・ボトムゲート型のトランジスタの製造方法について説明したが、トップコンタクト・ボトムゲート型、トップコンタクト・トップゲート型、ボトムコンタクト・トップゲート型のトランジスタも同様にして製造してもよい。
【0053】
以下、図面を参照して、本実施形態におけるパターン形成方法の一例を説明する。
本実施形態のパターン形成方法において、いわゆるロール・ツー・ロールプロセスに対応する可撓性の基板を用いる場合には、
図1に示すような、ロール・ツー・ロール装置である基板処理装置100を用いてパターンを形成してもよい。
【0054】
図1に示すように、基板処理装置100は、帯状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)Sを供給する基板供給部2と、基板Sの表面(被処理面)Saに対して処理を行う基板処理部3と、基板Sを回収する基板回収部4と、光応答性ニトロベンジル基を有する化合物の塗布部6と、露光部7と、マスク8と、パターン材料塗布部9と、これらの各部を制御する制御部CONTと、を有している。基板処理部3は、基板供給部2から基板Sが送り出されてから、基板回収部4によって基板Sが回収されるまでの間に、基板Sの表面に各種処理を実行できる。
この基板処理装置100は、基板S上に例えば有機EL素子、液晶表示素子等の表示素子(電子デバイス)を形成する場合に好適に用いることができる。
【0055】
なお、
図1は、所望のパターン光を生成するためにフォトマスクを用いる方式を図示したものであるが、本実施形態は、フォトマスクを用いないマスクレス露光方式にも好適に適用することができる。フォトマスクを用いずにパターン光を生成するマスクレス露光方式としては、DMD等の空間光変調素子を用いる方法、レーザービームプリンターのようにスポット光を走査する方式等が挙げられる。
【0056】
本実施形態のパターン形成方法においては、
図1に示すようにXYZ座標系を設定し、以下では適宜このXYZ座標系を用いて説明を行う。XYZ座標系は、例えば、水平面に沿ってX軸及びY軸が設定され、鉛直方向に沿って上向きにZ軸が設定される。また、基板処理装置100は、全体としてX軸に沿って、そのマイナス側(-側)からプラス側(+側)へ基板Sを搬送する。その際、帯状の基板Sの幅方向(短尺方向)は、Y軸方向に設定される。
【0057】
基板処理装置100において処理対象となる基板Sとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0058】
基板Sは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、フィルムをアニールすることで、寸法変化を抑制することができる。また、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。また、基板Sはフロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単体、或いはその極薄ガラスに上記樹脂フィルムやアルミ箔を貼り合わせた積層体であっても良い。
【0059】
基板Sの幅方向(短尺方向)の寸法は例えば1m~2m程度に形成されており、長さ方向(長尺方向)の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えば基板SのY方向の寸法が50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、基板SのX方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0060】
基板Sは、可撓性を有するように形成されていることが好ましい。ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板Sとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0061】
基板供給部2は、例えばロール状に巻かれた基板Sを基板処理部3へ送り出して供給する。この場合、基板供給部2には、基板Sを巻きつける軸部や当該軸部を回転させる回転駆動装置などが設けられる。この他、例えばロール状に巻かれた状態の基板Sを覆うカバー部などが設けられた構成であっても構わない。なお、基板供給部2は、ロール状に巻かれた基板Sを送り出す機構に限定されず、帯状の基板Sをその長さ方向に順次送り出す機構(例えばニップ式の駆動ローラ等)を含むものであればよい。
【0062】
基板回収部4は、基板処理装置100を通過した基板Sを例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部4には、基板供給部2と同様に、基板Sを巻きつけるための軸部や当該軸部を回転させる回転駆動源、回収した基板Sを覆うカバー部などが設けられている。なお、基板処理部3において基板Sがパネル状に切断される場合などには例えば基板Sを重ねた状態に回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態で基板Sを回収する構成であっても構わない。
【0063】
基板処理部3は、基板供給部2から供給される基板Sを基板回収部4へ搬送すると共に、搬送の過程で基板Sの被処理面Saに対して光応答性膜を形成する工程、所定パターンの光を照射する工程、及びパターン形成材料を配置させる工程を行う。基板処理部3は、基板Sの被処理面Saに対して光応答性膜を形成するための材料を塗布する塗布部6と、光を照射する露光部7と、マスク8と、パターン材料塗布部9と、加工処理の形態に対応した条件で基板Sを送る駆動ローラR等を含む搬送装置20とを有している。
【0064】
塗布部6と、パターン材料塗布部9は、液滴塗布装置(例えば、液滴吐出型塗布装置、インクジェット型塗布装置、スピンコート型塗布装置、ロールコート型塗布装置、スロットコート型塗布装置など)が挙げられる。
【0065】
これらの各装置は、基板Sの搬送経路に沿って適宜設けられ、フレキシブル・ディスプレイのパネル等が、所謂ロール・ツー・ロール方式で生産可能となっている。本実施形態では、露光部7が設けられるものとし、その前後の工程(感光層形成工程、感光層現像工程等)を担う装置も必要に応じてインライン化して設けられる。
【0066】
≪化合物≫
本実施形態に用いる光応答性ニトロベンジル基を有する化合物は、下記一般式(1)で表される含フッ素化合物であることが好ましい。
【0067】
【化3】
[一般式(1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R
1は水素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R
f1、R
f2はそれぞれ独立にアルコキシ基、シロキシ基、またはフッ素化アルコキシ基であって、nは0以上の整数を表す。]
【0068】
前記一般式(1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。Xで表されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等を挙げることができるが、Xはハロゲン原子であるよりもアルコキシ基であることが好ましい。nは整数を表し、出発原料の入手の容易さの点から、1~20の整数であることが好ましく、2~15の整数であることがより好ましい。
【0069】
前記一般式(1)中、R1は水素原子、又は炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基である。
R1のアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
環状のアルキル基としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
本実施形態においては、R1は水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0070】
前記一般式(1)中、Rf1、Rf2はそれぞれ独立にアルコキシ基、シロキシ基、またはフッ素化アルコキシ基である。
前記一般式(1)中、Rf1、Rf2のアルコキシ基、シロキシ基、またはフッ素化アルコキシ基は、好ましくは炭素数3以上のアルコキシ基であって、部分的にフッ素化されたものであってもよく、パーフルオロアルコキシ基であってもよい。本実施形態においては、部分的にフッ素化されたフッ素化アルコキシ基であることが好ましい。
【0071】
本実施形態において、Rf1、Rf2のフッ素化アルコキシ基としては、例えば、-O-(CH2)n
f1-(Cn
f2F2n
f2
+1)で表される基が挙げられる。前記nf1は0以上の整数であり、nf2は0以上の整数である。
本実施形態において、nf1は0~30であることが好ましく、0~15であることがより好ましく、0~5であることが特に好ましい。
また、本実施形態において、nf2は0~30であることが好ましく、0~15であることがより好ましく、1~8であることが特に好ましい。
【0072】
前記一般式(1)中、nは0以上の整数である。本実施形態においては、nは1以上が好ましく、3以上であることがより好ましい。
【0073】
以下に一般式(1)で表される含フッ素化合物の具体例を示す。
【0074】
【0075】
上記の含フッ素化合物は、国際公開第2015/029981号公報に記載の方法により製造することができる。
【0076】
本工程における化学修飾の一例を下記に示す。下記式中、X、R1、Rf1、Rf2、nについての説明は前記一般式(1)中におけるR1、Rf1、Rf2、nについての説明と同様である。
【0077】
【符号の説明】
【0078】
S…基板、CONT…制御部、Sa…被処理面、2…基板供給部、3…基板処理部、4…基板回収部、6…含フッ素化合物塗布部、7…露光部、8…マスク、9…パターン材料塗布部、100…基板処理装置