(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】断線検知方法および断線検知装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20240709BHJP
G01R 31/58 20200101ALI20240709BHJP
G01R 27/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R31/58
G01R27/02 R
(21)【出願番号】P 2022113706
(22)【出願日】2022-07-15
【審査請求日】2023-08-08
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深作 泉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 文乃
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7054462(JP,B1)
【文献】特開2000-028674(JP,A)
【文献】特開2021-162570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/54
G01R 31/58
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を有するケーブルの前記導体の断線を検知する方法であって、
振動する振動ヘッドを有するプローブを用い、前記ケーブルの長手方向に沿った前記ケーブルの2か所を把持すると共に、前記ケーブルの2か所の間に位置する前記ケーブルの長手方向における任意の検査部位に対して
前記振動ヘッドを押し当て、前記振動ヘッドを前記ケーブルの長手方向に対して垂直な方向に振動させることで、前記ケーブルの長手方向に垂直な方向に前記
検査部位が変位する振動を周期的に加える加振動作を行い、
かつ、前記加振動作の動作周期に相当する加振周波数を0.5Hz以上とし、
前記加振動作により時系列的に変化する前記導体の抵抗値を測定し、
測定した前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値を周波数解析し、
前記周波数解析の解析結果から、前記加振動作の動作周期に相当する加振周波数での抵抗値変動成分を抽出し、
抽出した前記抵抗値変動成分の大きさに基づいて、前記検査部位における前記導体の断線を検知する、
断線検知方法。
【請求項2】
前記プローブは、前記ケーブルを把持するための一対の把持部を有し、
前記加振動作では、
前記検査部位を挟む前記ケーブルの2か所を前記把持部で把持することで、前記検査部位において、前記ケーブルに一定の張力を付与した状態
とし、かつ前記振動ヘッドにより前記ケーブルの長手方向に垂直な方向に前記
検査部位が変位する振動を周期的に加えることで、前記ケーブル内の前記導体に作用する張力
を周期的に変化
させる、
請求項1に記載の断線検知方法。
【請求項3】
前記周波数解析の解析結果から、前記加振周波数を基準とする高次周波数での抵抗値変動成分を抽出し、
前記加振周波数、及びその高次周波数での前記抵抗値変動成分の大きさに基づいて、前記導体の断線を検知する、
請求項1に記載の断線検知方法。
【請求項4】
導体を有するケーブルの前記導体の断線を検知する装置であって、
振動する振動ヘッドを有するプローブを用い、前記ケーブルの長手方向に沿った前記ケーブルの2か所を把持すると共に、前記ケーブルの2か所の間に位置する前記ケーブルの長手方向における任意の検査部位に対して
前記振動ヘッドを押し当て、前記振動ヘッドを前記ケーブルの長手方向に対して垂直な方向に振動させることで、前記ケーブルの長手方向に垂直な方向に前記
検査部位が変位する振動を周期的に加える加振動作を行
い、かつ、前記加振動作の動作周期に相当する加振周波数を0.5Hz以上とする加振動作機構と、
前記加振動作により時系列的に変化する前記導体の抵抗値を測定する抵抗測定器と、
測定した前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値を周波数解析する周波数解析部と、
前記周波数解析の解析結果から、前記加振動作の動作周期に相当する加振周波数での抵抗値変動成分を抽出する抽出部と、
抽出した前記抵抗値変動成分の大きさに基づいて、前記検査部位における前記導体の断線を検知する断線検知部と、を備えた、
断線検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体の断線を検知する断線検知方法および断線検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体を有するワイヤケーブルを対象として、屈曲に起因した導体の断線の予兆を検知する方法が示される。具体的には、当該方法では、ワイヤケーブルを、電流を流した状態で一方向に向けて周期的に屈曲伸長させ、この屈曲周期に同期して変化する電流成分を検知している。すなわち、当該方法では、一部の断線箇所が屈曲周期に同期して接触と分離とを繰り返している状態が検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーブルの導体における断線の発生は、一般的に、ケーブル内の導体の電気抵抗を測定することで検知されている。導体に含まれる素線の一部に断線が発生すると、導体の抵抗値が増大するため、例えば、断線が発生していない初期状態における導体の抵抗値をあらかじめ測定しておくことで、抵抗値の初期状態からの抵抗値の増加率に基づいて断線の発生を検知することができる。
【0005】
しかしながら、導体に含まれる素線の極一部で断線が発生した場合、すなわち素線の断線本数が少ない初期の断線(=初期断線)における導体の抵抗値の増加率は、ノイズ(例えば、周囲環境の温度変化や電気的な外来ノイズによる抵抗値の変動)との区別が難しいほどの極めて微小なものとなる。このため、実用上、導体を構成する素線の全本数に対する素線の断線本数の割合が所定の割合(例えば、少なくとも50%以上といったレベル)に達しない限り、導体の抵抗値の増加率に基づいて断線が発生しているかどうかを判断することは困難となり得る。その結果、断線が発生していない初期状態から初期断線が発生した直後となる初期の段階において、導体の抵抗値の増加率に基づいて断線の発生を検知することは容易でない。産業用ロボット等の装置では、該装置に配線されたケーブルの導体に断線が発生することで、装置の不具合が発生する可能性もある。このような懸念を軽減する観点から、初期の段階であっても断線が発生したことを検知できること(すなわち、断線が発生したことを高感度で検知できること)が望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、導体に断線が発生したことを高感度で検知可能な断線検知方法および断線検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、導体を有するケーブルの前記導体の断線を検知する方法であって、前記ケーブルの長手方向における任意の検査部位に周期的な振動を加える加振動作を行い、前記加振動作により時系列的に変化する前記導体の抵抗値を測定し、測定した前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値を周波数解析し、前記周波数解析の解析結果から、前記加振動作の動作周期に相当する加振周波数での抵抗値変動成分を抽出し、抽出した前記抵抗値変動成分の大きさに基づいて、前記検査部位における前記導体の断線を検知する、断線検知方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、導体を有するケーブルの前記導体の断線を検知する装置であって、前記ケーブルの長手方向における任意の検査部位に周期的な振動を加える加振動作を行う加振動作機構と、前記加振動作により時系列的に変化する前記導体の抵抗値を測定する抵抗測定器と、測定した前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値を周波数解析する周波数解析部と、前記周波数解析の解析結果から、前記加振動作の動作周期に相当する加振周波数での抵抗値変動成分を抽出する抽出部と、抽出した前記抵抗値変動成分の大きさに基づいて、前記検査部位における前記導体の断線を検知する断線検知部と、を備えた、断線検知装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導体に断線が発生したことを高感度で検知可能な断線検知方法および断線検知装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る断線検知装置を示す概略構成図である。
【
図2】断線検知の対象となるケーブルの概略的な構成例を示す断面図である。
【
図4】(a),(b)は、抵抗測定器の概略的な構成例を示す図である。
【
図5】周波数解析部により得られる周波数解析データの一例を示す図である。
【
図7】本発明の一変形例に係る断線検知装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る断線検知装置1を示す概略構成図である。
図2は、断線検知の対象となるケーブル10の概略的な構成例を示す断面図である。
【0013】
図2に示すケーブル10は、5本の電線11と糸状の介在12とを撚り合わせたケーブルコア13の周囲に押さえ巻きテープ14をらせん状に巻きつけ、押さえ巻きテープ14の周囲を覆うようにシース15を設けて構成されている。各電線11は、複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体11aと、導体11aの周囲を覆うように設けられた絶縁体11bと、をそれぞれ有している。導体11aは、例えば、外径0.08mmの軟銅線からなる素線を19本集合撚りして構成されている。絶縁体11bは、例えば、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)等のフッ素樹脂からなる。介在12は、例えばジュートやスフからなる。なお、ケーブル10に使用する電線11の本数は5本に限定されない。押さえ巻きテープ14は、例えば、不織布や紙、樹脂等からなるテープ部材からなる。シース15は、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)等からなる。なお、ケーブル10は、図示の構成に限らず、少なくとも撚線導体からなる導体11aを含んでいれば様々な構成であってよい。すなわち、電線11は、1本でもよいし、数本でもよいし、数十本以上でもよい。なお、電線11が1本の場合は、介在12、押さえ巻きテープ14、及びシース15を無くす場合が多い。この場合、ケーブル10と電線11は、同じものを示す。
【0014】
断線検知の対象となるケーブル10は、装置等に既に配線・敷設されたものであってよい。例えば、断線検知の対象となるケーブル10は、産業用ロボットに配線されたケーブルであってもよく、自動車に配線されたケーブルであってもよい。
【0015】
図1に示すように、断線検知装置1は、複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体11aを有するケーブル10の導体11aの断線を検知する装置であり、加振動作機構2と、抵抗測定器3と、演算装置4と、を備えている。
【0016】
加振動作機構2は、ケーブル10の長手方向における任意の検査部位に周期的な振動を加える加振動作を行う機構であり、検査部位となるケーブル10の長手方向における任意の位置に、局所的に振動を加えることができるように構成されている。本実施の形態では、断線検知の対象となるケーブル10が産業用ロボット110に搭載されている場合を説明する。
【0017】
加振動作機構2は、ケーブル10の検査部位を加振するプローブ2aと、プローブ2aの加振動作を制御する加振動作制御装置2bと、を有している。導体11aの断線を検知する試験は、例えば、産業用ロボット110の定期検査の際に行われてもよい。
【0018】
加振動作機構2のプローブ2aは、振動する振動ヘッド22を有しており、この振動ヘッド22をケーブル10の任意の検査部位に押し当てることで、検査部位に一定の周期の振動を加えるように構成されている。
【0019】
また、加振動作機構2は、ケーブル10に一定の張力を付与した状態で、ケーブル長手方向に垂直な方向においてケーブル10に変位が発生するように振動を加えるよう構成されているとよい。より具体的には、プローブ2aは、ケーブル10の検査部位を挟む2か所でケーブル10を把持する一対の把持部21を有しており、これら一対の把持部21でケーブル10に一定の張力を付与した状態で、一対の把持部21の間に位置するケーブル10の検査部位に、振動ヘッド22を当てることができるように構成されている。振動ヘッド22は、ケーブル長手方向に対して垂直な方向に振動する(往復運動する)ように設けられているとよい。なお、ここでいう「一定の張力」とは、例えば、振動ヘッド22の動きによって,一対の把持部21の間のケーブル(具体的には、ケーブル10内の導体11a)の張力が変動する程度の張力である。なお、一対の把持部21の間のケーブル10に、振動ヘッド22の動きによって張力が変動しない程度にゆるみが存在しなくなるように(すなわち、遊びが無くなるように)、把持部21でケーブル10を把持するとよい。さらに、把持部21は、ケーブル10のシースを抑えるだけではなく、ケーブル10の内部のケーブルコアが動かない程度の圧力で把持することがよい。このようにすることにより、加振によってケーブルコアが動いて張力変動が小さくなってしまうことが抑制され、振動による抵抗値変動が小さくなり感度が低下してしまうことや、把持部21の外側の断線による抵抗値変動が大きくなり局所性が悪化してしまうことなどを抑制できる。また、ケーブル10に加えられる振動が、ケーブル10の長手方向に沿った方向に作用するとノイズの原因となる場合がある。そのため、ケーブル10に加えられる振動は、ケーブル10の長手方向に沿った成分を有さないことが望ましい。なお、加振動作機構2には、振動ヘッド22の動きによってケーブル10が振動することを補助するための補助部材を有していてもよい。補助部材としては、例えば、振動ヘッド22と対向する位置に、ケーブル10の表面に接するように配置される。補助部材は、振動ヘッド22がケーブル10から離れたときに、ケーブル10が加振ヘッド22側へ変位する(すなわち、ケーブル10に振動を与えないときの位置にケーブル10が戻る)ようにする。これにより、ケーブル10に変位が発生するような振動を加えやすくなる。
【0020】
本実施の形態では、プローブ2aを有する携帯可能な加振動作機構2を用いている。そのため、既に配線・敷設されたケーブル10を取り外すことなく、ケーブル10を構成する導体11aに断線が発生しているかを検知することが可能である。ただし、これに限らず、固定式の加振動作機構2を用いてもよい。この場合、既に配線・敷設されたケーブル10を検査する場合には、配線場所あるいは敷設場所からケーブル10を取り外し、該ケーブル10を加振動作機構2にセットして検査を行うことになる。また、断線箇所の特定の局所化が不要であれば、把持部21は必須ではなく、例えば、既に一定の張力で配線されているケーブル10を検査する場合等には省略可能である。
【0021】
抵抗測定器3は、加振動作により時系列的に変化する導体11aの抵抗値を測定する。本実施の形態では、抵抗測定器3は、加振動作中の導体11aの抵抗値を経時的に測定する。抵抗測定器3で測定した時系列的に変化する導体11aの抵抗値のデータは、演算装置4に入力され、抵抗値データ50として記憶部42に記憶される。本実施の形態では、抵抗測定器3は、演算装置4と別体に構成されているが、これに限らず、演算装置4と一体に構成されていてもよく、また、その機能の一部が演算装置4に搭載されていてもよい。さらに、抵抗測定器3は、産業用ロボット110の制御装置(不図示)に搭載されていてもよい。抵抗測定器3は、加振動作の動作周期に対して十分に早いサンプリングレートで抵抗値を測定することがよい。抵抗測定器3の詳細については後述する。
【0022】
演算装置4は、制御部41と、記憶部42と、を有している。これら制御部41や記憶部42の詳細については後述する。演算装置4には、表示器43が接続されており、抵抗値データ50や断線検知の結果など各種のデータを表示器43に表示可能に構成されている。また、演算装置4にはキーボードやマウス等の入力装置44が設けられており、入力装置44の入力により各種設定や表示器43の表示内容の操作等が行えるようになっている。なお、表示器43をタッチパネルディスプレイで構成して、表示器43が入力装置44を兼ねるように構成してもよい。さらに、表示器43や入力装置44は、演算装置4と有線接続されていなくてもよく、無線により接続されていてもよい。この場合、表示器43や入力装置44は、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末であってもよい。
【0023】
(断線検知の原理)
加振動作機構2の振動ヘッド22をケーブル10の所望の検査部位に接触させて振動させると、振動ヘッド22の振動に伴ってケーブル10の検査部位が加振される。これにより、
図3に示すように、振動ヘッド22の周期的な変位にあわせてケーブル10の検査部位が周期的に変位し、ケーブル10の検査部位においてケーブル10の長手方向に垂直な往復運動が生じる。このとき、導体11a中の素線に断線が発生していると、当該断線箇所11cの長さ(断線箇所11cを挟んで向かい合っている素線端部同士の距離)が周期的に変動し、これに伴って、導体11aの抵抗値が周期的に(振動の周期と同じ周期で)変動する。
【0024】
この抵抗値の変動は僅かであるため、単に抵抗値を測定するだけではノイズに埋もれてしまい検知が困難である。しかし、断線箇所11cに起因する抵抗値の変動は、加振動作の動作周期に相当する加振周波数で変調を受けた抵抗値変動信号となる。そのため、導体11aの抵抗値を連続時間で測定した結果から加振周波数の抵抗値変動成分を抽出することで、ノイズを抑制して断線箇所11cに起因した抵抗値の変動のみを高感度に抽出することが可能となる。抵抗測定器3による抵抗値の変動の長時間の測定により狭帯域化することで、ノイズの影響のさらなる抑制が可能である。そして、抽出した抵抗値変動成分の大きさに基づいて、素線の断線を検知することで、高感度に素線の断線を検知することが可能になる。なお、
図3では、図の簡略化のため、ケーブル10が1本の導体11aのみを有する場合を示している。
【0025】
さらに、本実施の形態では、ケーブル10が一対の把持部21により把持されているため、ケーブル10の検査部位の位置が周期的に変位することに伴い、導体11aに作用する張力も周期的に(振動の周期と同じ周期で)変動することになる。これにより、導体11aの抵抗値の変動がより大きくなり、素線の断線の検知精度を向上することが可能になる。
【0026】
さらに、本実施の形態では、ケーブル10の長手方向における任意の位置を検査部位とし、該検査部位に対して加振動作を行うことで、実際には導体11aが断線している状態であるにもかかわらず、導体11aの断線箇所が接触していることで、抵抗値の変動がなく断線していない状態であるとされてしまう場合であっても、断線が発生しているかどうかを高感度で検知することができる。そのため、本実施の形態では、ケーブル10の長手方向における複数の箇所を検査部位とし、それぞれの検査部位において上述した検査を行うことで、ケーブル10の長手方向における断線の発生位置を特定することが可能である。また、本実施の形態では、ケーブル10の長手方向における複数の検査部位のそれぞれで抽出した抵抗値変動成分の大きさに基づいて、ケーブル10の長手方向における断線の進行状態を推定することも可能である。
【0027】
加振周波数が小さすぎると、ノイズの影響が大きくなるため、加振周波数は少なくとも0.5Hz以上であることが好ましく、1.0Hz以上であることがより好ましい。また、加振周波数が大きすぎるとケーブル10が振動に追従しなくなるため、加振周波数は、ケーブル10が追従可能な程度の周波数であるとよい。さらに、電源ノイズの影響を避けるため、電源周波数と同じ周波数帯を避けるように加振周波数を設定するとよい。さらにまた、ケーブル10の外径が大きいほど剛性が高くなり加振動作による変位が生じにくくなるため、ケーブル10の外径が大きいほど、一対の把持部21の間隔を大きくすることが望ましい。すなわち、一対の把持部21の間隔は、ケーブル10の外径(ケーブル10の剛性)に応じて設定されるとよい。
【0028】
(抵抗測定器3の詳細)
図4(a)は、抵抗測定器3の概略的な構成例を示す図である。
図4(a)に示すように、抵抗測定器3は、直流信号源(例えば、直流定電圧源)35a、入力抵抗35b、及び抵抗値検出器35cを有する抵抗測定部35を備えている。なお、直流信号源35aとして直流定電流源を用いる場合は、入力抵抗35bは不要である。直流信号源35aは、入力抵抗35bを介してケーブル10(導体11a)に直流信号(ここでは直流電圧)を印加する。これに応じて、ケーブル10(導体11a)からは、加振動作により、加振周波数fの成分を含んだ変調信号(例えば電圧信号)が出力される。抵抗値検出器35cは、例えば、この変調信号を所定のゲインで増幅することで、導体11aの抵抗値の時系列的な変化を検出する。抵抗値検出器35cからの信号は、A/Dコンバータ37によりデジタル信号に変換され、抵抗値データ50として演算装置4へと出力される。
【0029】
なお、
図4(a)に示した抵抗測定器3の構成はあくまで一例であり、適宜変更可能である。例えば、
図4(b)に示すように、抵抗測定器3は、周波数解析部36を一体に有していてもよい。この場合、後述する演算装置4の周波数解析部411(
図1参照)を省略可能になる。
【0030】
周波数解析部36は、例えば、キャリア信号生成器36a、ミキサ36bおよびロウパスフィルタ(LPF)36c等を備える。キャリア信号生成器36aは、加振周波数f、すなわち断線による抵抗値変動周波数と同じキャリア周波数(ωc)であって、抵抗値変動周波数と同じ位相を持つキャリア信号を生成する。ミキサ36bは、このキャリア信号と、抵抗値検出器35cからの出力信号とを乗算(言い換えれば同期検波)することで、直流成分の信号と"2×ωc"成分の信号とが重畳された信号を出力する。なお、
図4(b)に示すキャリア信号生成器36aにおいて、sin(ωct)は、ωc=2πfであるとした場合に加振周波数fの抵抗値変動成分を抽出することができる。
【0031】
ロウパスフィルタ36cは、ミキサ36bからの出力信号を受けて、"2×ωc"成分の信号を遮断し、直流成分の信号を通過させる。この直流成分の信号は、加振周波数f(=ωc)の抵抗値変動成分の大きさを表す。このように、キャリア信号生成器36a、ミキサ36bおよびロウパスフィルタ36cを用いることで、所定周波数の成分(例えば、後述する所定の高次周波数の成分)を検出することができる。ロウパスフィルタ36cからの信号は、A/Dコンバータ37によりデジタル信号に変換され、演算装置4に出力されることになる。
【0032】
なお、
図4(a),(b)の構成例は、ケーブル10(導体11a)に直流信号を印加するものであったが、直流信号に限らず、交流信号源を用いて所定周波数(例えば10kHz程度)の交流信号を印加するものであってもよい。この場合、ケーブル10からは、この交流信号を加振周波数fの変調信号で振幅変調したような信号が出力される。そこで、この出力信号に対して、ミキサを用いて交流信号源の交流信号と同じ周波数のキャリア信号を乗算すれば、加振周波数fの変調信号を復調できる。このような方式を用いると、より高い周波数(例えば10kHz程度)での測定を行える結果、ノイズ成分の影響がより生じ難くなる。
【0033】
(演算装置4)
演算装置4の制御部41には、周波数解析部411と、抽出部412と、断線検知部413と、警報部414と、が搭載されている。これら周波数解析部411、抽出部412、断線検知部413、及び警報部414は、CPU等の演算素子、RAMやROM等のメモリ、ソフトウェア、インターフェイス、記憶装置等を適宜組み合わせて実現されている。
【0034】
周波数解析部411は、抵抗測定器3で測定した抵抗値データ50(すなわち、時系列的に変化する導体11aの抵抗値のデータ)を周波数解析する。周波数解析の結果は、周波数解析データ51として記憶部42に記憶される。なお、周波数解析とは、抵抗値データ50に含まれる各周波数の成分の大きさをそれぞれ解析し、周波数毎に成分の大きさを抽出したデータである周波数解析データ51を得ることを意味している。
【0035】
図5は、外径が約6mmであるケーブル10の長手方向における非断線部位と断線部位とのそれぞれを検査部位とし、それらの検査部位に対して約60rpm(約1Hz)の振動を加えた場合に、周波数解析部411により得られる周波数解析データ51の一例を示す図である。
図5に示すように、ケーブル10の非断線部位に振動を加えると、図示の「非断線部位を加振」と示される領域に示されるように、加振周波数である約1Hz、及びそのn倍(nは2以上の自然数)の高次周波数において、強度がほとんど大きくなっていない(すなわち、強度の変化がほとんどない)ことがわかる。これに対して、ケーブル10の断線部位に振動を加えると、図示の「断線部位を加振」と示される領域に示されるように、加振周波数である約1Hz、及びそのn倍(nは2以上の自然数)の高次周波数のそれぞれでの強度が大きくなっていることがわかる。なお、加振を停止すると、図示の「加振停止」と示される領域に示されるように、これらの周波数での強度はほぼなくなっている。
【0036】
抽出部412は、周波数解析の解析結果である周波数解析データ51を基に、加振動作の動作周期に相当する加振周波数fでの抵抗値変動成分(=強度)を抽出する。また、抽出部412は、さらに、加振周波数fを基準とした高次周波数f×n(nは2以上の自然数)での抵抗値変動成分(=強度)を抽出してもよい。このとき抽出する高次周波数は、加振動作により導体11aに抵抗値変動が生じる周波数に適宜設定されるとよい。
【0037】
断線検知部413は、抽出部412が抽出した加振周波数fでの抵抗値変動成分の大きさに基づいて、導体の断線(すなわち、導体を構成する素線の断線)を検知する。より具体的には、抽出部412が抽出した加振周波数fでの抵抗値変動成分の大きさ(
図5の例では約1Hzの周波数での抵抗値変動成分の大きさ)を、予め設定した閾値と比較し、加振周波数fでの抵抗値変動成分の大きさが閾値以上であれば断線が発生したと判定する。なお、複数の閾値を設定しておき、加振周波数fでの抵抗値変動成分の大きさを複数の閾値それぞれと比較することで、素線の断線の程度(断線している素線の本数等)を段階的に検知できるようにしてもよい。
【0038】
また、断線検知部413は、加振周波数fを基準とした高次周波数f×n(nは2以上の自然数)での抵抗値変動成分の大きさと予め設定した閾値とを比較することで、素線の断線を検知してもよい。すなわち、断線検知部413は、加振周波数f、及びその高次周波数での抵抗値変動成分の大きさに基づいて、素線の断線を検知してもよい。判定結果は、断線検知データ52として記憶部42に記憶される。
【0039】
警報部414は、断線検知部413が断線を検知したとき、警報を発する。警報部414は、例えば、警報音の鳴動、表示器43への警報表示、管理装置等の外部装置への警報信号の発報等により警報を発し、管理者に断線を検知したことを通知する。
【0040】
演算装置4は、例えばパーソナルコンピュータで構成される。なお、これに限らず、演算装置4は、例えば、サーバ装置であってもよい。この場合、抵抗測定器3で測定された抵抗値データ50は、ネットワークを介してサーバ装置である演算装置4に送信されることになる。演算装置4をサーバ装置で構成する場合、断線検知の結果(すなわち、断線検知データ52)等を、ロボットユーザ等の装置ユーザやロボットメーカ等の装置メーカと共有できるように構成してもよい。また、制御部41と記憶部42とを別の装置で構成してもよい。例えば、サーバ装置の記憶部42に記憶された抵抗値データ50を、他のサーバ装置やパーソナルコンピュータ等に搭載された制御部41でダウンロードし、断線検知を行うよう構成することもできる。
【0041】
(断線検知方法)
図6は、本実施の形態に係る断線検知方法の手順を示すフロー図である。断線検知は、例えば、ケーブル10を配線した装置等の定期点検時等に行われるとよい。また、
図6のフローは、ケーブル10の検査部位(加振動作機構2の振動ヘッド22を当てる位置)を変えながら、繰り返し行われるとよい。
【0042】
まず、ステップS10にて、加振動作機構2が、検査対象となるケーブル10の検査部位に周期的な振動を加える加振動作を開始する。その後、ステップS11にて、抵抗測定器3による導体11aの抵抗値の測定を開始する。
【0043】
次いで、ステップS12において、加振動作及び導体11aの抵抗値の測定を所定の期間継続する。所定の期間とは、断線の検知のために十分な抵抗値のデータが得られるのに要する期間である。この所定の期間は、抵抗測定器3の構成や測定環境(すなわちノイズ成分の大きさ)等によって適宜変わり得る。これにより、加振動作により時系列的に変化する導体11aの抵抗値が抵抗測定器3により測定される。
【0044】
続いて、ステップS13において、加振動作及び導体11aの抵抗値の測定を停止する。測定した導体11aの抵抗値のデータは、演算装置4に送信され、抵抗値データ50として記憶部42に記憶される。
【0045】
その後、ステップS14において、周波数解析部411が、抵抗値データ50の周波数解析を行う。周波数解析の結果は、周波数解析データ51として記憶部42に記憶される。なお、ステップS14における周波数解析は、加振動作及び抵抗値の測定を停止しない状態で行うことでもよい。例えば、加振動作及び導体11aの抵抗値の測定を継続している状態において、所定の期間が経過した段階で周波数解析部411によって周波数解析を行う。これにより、導体11aの断線の有無が適時把握できるため、検査にかかる時間を短縮することが可能になる。
【0046】
その後、ステップS15にて、抽出部412が、周波数解析データ51から、加振周波数fでの抵抗値変動成分を抽出する。このとき、予め設定した周波数範囲に含まれる所定の高次周波数の抵抗値変動成分を抽出してもよい。
【0047】
その後、ステップS16にて、断線検知部413が、抽出部412が抽出した抵抗値変動成分の大きさが、予め設定した閾値以上かを判定する。ステップS16でYESと判定された場合、ステップS17にて、断線検知部413が、検査部位において導体11aに断線が有ると判定し、ステップS18にて、警報部414が警報を発した後、処理を終了する。ステップS16でNOと判定された場合、断線検知部413が、検査部位において導体11aに断線が無いと判定し、処理を終了する。
【0048】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る断線検知方法では、ケーブル10の長手方向における任意の検査部位に周期的な振動を加える加振動作を行い、加振動作により時系列的に変化する導体11aの抵抗値を測定し、測定した時系列的に変化する導体11aの抵抗値を周波数解析し、周波数解析の解析結果から、加振動作の動作周期に相当する加振周波数での抵抗値変動成分を抽出し、抽出した抵抗値変動成分の大きさに基づいて、検査部位における素線の断線を検知している。
【0049】
これにより、ノイズの影響を抑えて、素線の断線による抵抗値変動成分のみを精度よく検知することが可能となり、ケーブル10の導体11aにおける素線の断線を精度よく検知することが可能になる。すなわち、本実施の形態によれば、ケーブル10の導体11aでの素線の断線を、抵抗値の増加率を用いた一般的な検知方式では検知することが困難であった初期の断線を含めて検知することが可能になり、断線を高感度で検知することが可能になる。その結果、ケーブル10が装着される各種装置において、重大な障害(例えば、ほぼ全断線)が生じる前に対策を講じることができ、装置の信頼性を向上させることが可能になる。
【0050】
また、従来の抵抗値の増加率を用いた一般的な検知方式では、断線前の導体11aの抵抗値、すなわち初期抵抗値が必要であったが、本実施の形態では、抵抗値の絶対値ではなく、加振動作中の抵抗値の変動量(相対量)を用いて断線の発生を検知するため、初期抵抗値は不要となる。よって、本実施の形態によれば、導体11aの初期抵抗値の不明な場合であっても、導体11aの素線に断線が発生していることを高感度に検出できる。
【0051】
さらに、導体11aの抵抗値や、導体11aと抵抗測定器3間の接触抵抗は、温度によって大きく変動するが、温度による抵抗値の変動は加振動作の動作周期とは無関係となるため、本実施の形態によれば、温度変化の影響を受けずに導体11aの断線検知を行うことが可能である。
【0052】
さらにまた、携帯可能な加振動作機構2を用いることで、既に配線・敷設されたケーブル10についても、装置等から取り外すことなく、断線の発生の有無を検査することが可能になり、検査にかかる時間を大幅に短縮することが可能になる。また、本実施の形態では、ケーブル10を曲げたり捻回したりすることなく、ケーブル10に振動ヘッド22を当てて振動を与えるだけで断線検知を行うことが可能であるため、汎用性が高く、断線検知を容易に行うことができる。また、検査部位をケーブル10の長手方向に沿って移動させて断線検知を繰り返すことで、ケーブル10の長手方向におけるどの位置で断線が発生しているかを検知することも可能になる。また、本実施の形態では、ケーブル10の長手方向における複数の検査部位のそれぞれで抽出した抵抗値変動成分の大きさを比較することで、ケーブル10の長手方向における断線の進行状態を推定することも可能である。
【0053】
(変形例1)
上記実施の形態では、導体11aにおいて断線が発生したことを検知する方法について述べたが、断線の発生後、その断線の進行状態を推定すること(=断線進行状態推定)も可能である。
【0054】
本発明者らの検討の結果、導体11a抵抗値の時系列的な変化において、素線の断線本数が増加し断線が進むほど、導体11aの抵抗値の最大値と最小値との差が大きくなることがわかっている。よって、この抵抗値の最大値と最小値との差を基に、導体11aの断線進行状態を推定することが可能である。例えば、段階的に複数の閾値を設定しておき、各閾値と、抵抗値の最大値と最小値との差とを比較することで、導体11aの断線進行状態を推定することができる。なお、導体11aの断線進行状態とは、導体11aを構成する全ての素線のうち、何本の素線が断線しているかという割合である。また、推定して得られた断線進行状態は、断線進行状態データとして
図1に示す記憶部42に記憶される。
【0055】
そして、この断線進行状態が所定の割合(例えば80%以上)となった場合に、ケーブル10が寿命(=ケーブル寿命)に到達したと設定しておけば、推定して得られた断線進行状態がケーブル寿命に到達したか否かを予測することで、ケーブル10の寿命予測が可能になる。そのケーブル10の寿命予測結果に基づいて、ケーブル10の交換やケーブル10の予知保全等を行うか否かを判断することができる。なお、断線進行状態に基づいて得られたケーブル10の寿命予測結果は、ケーブル寿命予測データとして
図1に示す記憶部42に記憶される。また、演算装置4は、得られた断線進行状態データやケーブル寿命予測データを表示器43に表示可能に構成されていてもよい。
【0056】
(変形例2)
また、本発明は、コネクタの健全性、あるいは電気的接点の健全性(接続不良の有無)の検査に応用することができる。
図7に示すように、ケーブル10の端部に設けられたコネクタ100が、任意の機器に設けられた機器側コネクタ101に接続されている場合について説明する。
図7の例では、両コネクタ100,101を接続することで、コネクタ100に設けられた電極(コネクタ側電極)100aと、機器側コネクタ101に設けられた電極(機器側電極)101aとが電気的に接続される。
【0057】
例えば、電極100a,101aの表面において、水の付着の影響等によって酸化膜や腐食部分が生じていたり、あるいは電極100a,101aの表面に設けられためっきが剥落していたりすると、当該部分で接触抵抗が増加する。そして、コネクタ100に周期的な振動を加え、両電極100a,101aの接触部分に周期的な振動を加えると、接触抵抗が大きい部分の影響により、両電極100a,101a間の接触抵抗が周期的に(振動と同じ周期で)変動する。よって、接触抵抗における加振周波数での変動成分の大きさによって、接触抵抗が大きい部分が存在しているか(酸化膜や腐食部分が生じたり、めっきの剥落が生じたりしているか)を検知することが可能である。
【0058】
すなわち、両電極100a,101aの接触部分(検査対象の電気的接点)を含む区間において、加振動作により時系列的に変化する抵抗値を抵抗測定器3で測定すれば、上記実施の形態と同様に、コネクタ100,101の健全性、あるいは両電極100a,101a間の電気的接点の健全性素線を検査することが可能になる。より詳細には、抵抗測定器3で測定した時系列的に変化する抵抗値を周波数解析し、当該周波数解析での解析結果から、加振動作の動作周期に相当する加振周波数の抵抗値変動成分を抽出することで、その抽出した抵抗値変動成分の大きさに基づいて、電気的接点に酸化膜等の接触抵抗が大きい部分が生じているか否かを検知し、コネクタ100,101の健全性、あるいは両電極100a,101a間の電気的接点の健全性素線を検査することが可能になる。なお、
図7における演算装置4は、
図1に示した演算装置4と同じものである。
【0059】
図7の例では、コネクタ100に振動ヘッド22を押し当てて振動を加えているが、これに限らず、検査対象となる電気的接点が加振される位置であれば、どこに振動を加えてもよく、例えばケーブル10に振動を加えてもよいし、機器側コネクタ101に振動を加えてもよい。また、
図7の例では、ケーブル10と機器とを接続するコネクタ100,101について説明したが、これに限らず、例えばケーブル同士を接続するコネクタについても同様に検査可能である。
【0060】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0061】
[1]導体(11a)を有するケーブル(10)の前記導体(11a)の断線を検知する方法であって、前記ケーブル(10)の長手方向における任意の検査部位に周期的な振動を加える加振動作を行い、前記加振動作により時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値を測定し、測定した前記時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値を周波数解析し、前記周波数解析の解析結果から、前記加振動作での動作周期に相当する加振周波数での抵抗値変動成分を抽出し、抽出した前記抵抗値変動成分の大きさに基づいて、前記検査部位における前記導体(11a)の断線を検知する、断線検知方法。
【0062】
[2]前記加振動作では、前記ケーブル(10)に一定の張力を付与した状態で、前記ケーブル(10)の長手方向に垂直な方向において前記ケーブル(10)に変位が発生するように振動を加える、[1]に記載の断線検知方法。
【0063】
[3]前記周波数解析の解析結果から、前記加振周波数を基準とする高次周波数での抵抗値変動成分を抽出し、前記加振周波数、及びその高次周波数での前記抵抗値変動成分の大きさに基づいて、前記導体(11a)の断線を検知する、[1]または[2]に記載の断線検知方法。
【0064】
[4]導体(11a)を有するケーブル(10)の前記導体(11a)の断線を検知する装置であって、前記ケーブル(10)の長手方向における任意の検査部位に周期的な振動を加える加振動作を行う加振動作機構(2)と、前記加振動作により時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値を測定する抵抗測定器(3)と、測定した前記時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値を周波数解析する周波数解析部(411)と、前記周波数解析の解析結果から、前記加振動作の動作周期に相当する加振周波数での抵抗値変動成分を抽出する抽出部(412)と、抽出した前記抵抗値変動成分の大きさに基づいて、前記検査部位における前記導体(11a)の断線を検知する断線検知部(413)と、を備えた、断線検知装置(1)。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0066】
例えば、上記実施の形態では、断線検知の対象となる導体11aが撚線導体である場合について説明したが、これに限らず、断線検知の対象となる導体は、複数の素線からなるものであればよく、ケーブルコアの周囲を一括して覆うように設けられた外部導体(シールド層)であってもよい。より具体的には、断線検知の対象となる導体は、複数の素線を編み組みした編組シールド(編組導体)であってもよく、複数の素線を螺旋状に巻き回した横巻きシールド(横巻き導体)であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…断線検知装置
2…加振動作機構
21…把持部
22…振動ヘッド
3…抵抗測定器
4…演算装置
41…制御部
411…周波数解析部
412…抽出部
413…断線検知部
10…ケーブル
11…電線
11a…導体