(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】発電装置及び発電方法
(51)【国際特許分類】
H02K 35/02 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
H02K35/02
(21)【出願番号】P 2022143327
(22)【出願日】2022-09-08
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2021148207
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】川畑 雄士
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3217603(JP,U)
【文献】登録実用新案第3222807(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第113236514(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力によって発電を行う発電装置であって、
前記外力を機械的振動に変換するシーソー部と、
前記機械的振動を電力に変換する発電部とを有し、
前記シーソー部は、
前記外力によって可動なアームと、
前記アームの長手方向のいずれか一点を支持する支点部と、
前記支点部を挟んだ前記アームの両側に、前記アームを変位方向で支持する弾性部材と、
前記支点部を挟んだ前記アームの両側に、
前記アームに固定された錘とを備え、
前記発電部は、前記支点部を挟んだ前記アームの両側のうち少なくとも一方側に配置された発電装置。
【請求項2】
前記弾性部材と、前記錘と、前記発電部はそれぞれ着脱可能で、前記支点部からの距離を変更できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記弾性部材と、前記錘と、前記発電部はそれぞれ着脱可能で、相対的な位置の入れ替えができることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項4】
前記アームに、
前記外力の向きを変換するための受圧部材が
前記アームの長手方向に対して直角方向に立設されていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項5】
長手方向のいずれか一点を支点として支持されたアームに外力が加わっていないときは、
前記アームの両側は、前記支点を軸にかかるモーメントが釣り合う状態にあり、
前記アームに外力を加えることで、前記支点を軸に前記アームが変位する際、
前記アームの変位方向を支持した前記アームの両側にある弾性部材に圧縮と伸びが生じ、
前記弾性部材の復元力により前記圧縮と前記伸びが交互に起きることで、
前記アームが前記支点を軸に
振動して、シーソー構造体の固有振動を生じさせ、
前記支点を挟んだ前記アームの両側のうちいずれか一方側に配置された発電部によって前記
固有振動を電力に変換して
発電することを特徴とする発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境振動などの外力を受けて発電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対して、洋上・陸上ともに大型の風力発電の要求が高まっているが、タービンの回転機構を利用した従来の方法は、設置や運用に多大なコストを要する問題がある。そのため、回転翼を有しない単純構造で、かつ大規模な発電を可能とする方法が盛んに研究されている。
【0003】
特許文献1では、吊り下げられた羽根車が風の力を受けてゆらゆらと振動や回転し、その運動を受けて発電する装置が示されている。羽根車と連動する磁石と、定位置に固定されたコイルとの間に起電力が生じることで発電する。
【0004】
特許文献2では、両側自由端の固定プレート構造を用いて、高周波の振動を生み出す方法が開示されている。すなわち、固定プレートに外力を加えて弾性変形させ、その外力の除去と同時に復元力によって振動を起こし、その振動がストッパーにあたったショックで、高周波の分割振動を生み出す方法である。この分割振動を磁歪素子に与えることで、コイルとの間に起電力を発生させる。
【0005】
特許文献3は、振動部材(橋梁)に錘と弾性部材を備えることで共振周波数を持つ構造をしており、この共振周波数よりも、明らかに高い周波数の振動を受けることで、錘と弾性部材の位置がほとんど動かないことを利用している。すなわち、錘と弾性部材がある位置をてこの原理の支点とみなし、この支点から作用点までの距離により、振動を増幅する増振器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-123821号公報
【文献】特開2021-061707号公報
【文献】特開2019-163744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に起電力Eは磁束φと時間tを用いて以下の式1で表される。
【数1】
特許文献1はコイルと磁石を用い、この磁束φを変化させて発電している。しかしながら特許文献1に記載された装置は、風力を受けて振動したり回転したりするだけの単純構造なため、単位時間当たりの磁束の変化が小さい。また、吊り下げられた羽根車の動きは、複雑に流れる風の動きの影響を直接受けるため、周波数は極めて低い状態となることが予想でき、その周波数を増幅する手段の開示も無い。
【0008】
特許文献2は特許文献1と違い、高い周波数を生み出すことが可能である。しかし周波数が高くなるほど振幅が小さくなるため、所望の振幅を維持しつつ、所望の周波数を得ることは困難であり、振幅に伴う磁束の変化も小さくなってしまう。
【0009】
特許文献3はてこの原理を用いて振動を増幅しているため、特許文献2で示した課題を解消できる。しかし共振現象を用いるため、外力の周波数に合わせて装置側の周波数を設計しなければならず、環境エネルギーに対して利用する用途では調整が難しい。
【0010】
以上のように、環境振動等の外力を受けて振動する発電において、従来技術では、共振現象を用いずに、所望の周波数と振幅を得て、発電量を確保することは困難であった。そこで、本発明は、調整が困難な共振現象を用いなくても発電可能な発電装置および発電方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、外力によって発電を行う発電装置であって、前記外力を機械的振動に変換するシーソー部と、前記機械的振動を電力に変換する発電部とを有し、前記シーソー部は、前記外力によって可動なアームと、前記アームの長手方向のいずれか一点を支持する支点部と、前記支点部を挟んだ前記アームの両側に、前記アームを変位方向で支持する弾性部材と、前記支点部を挟んだ前記アームの両側に、前記アームに固定された錘とを備え、前記発電部は、前記支点部を挟んだ前記アームの両側のうち少なくとも一方側に配置される。
【0012】
また、前記発電装置において、前記弾性部材と、前記錘と、前記発電部はそれぞれ着脱可能で、前記支点部からの距離を変更できるように構成されていると好ましい。
また、前記弾性部材と、前記錘と、前記発電部はそれぞれ着脱可能で、相対的な位置の入れ替えができると好ましい。
また、前記アームに、前記外力の向きを変換するための受圧部材が前記アームの長手方向に対して直角方向に立設されていると好ましい。
【0013】
また、本発明は、長手方向のいずれか一点を支点として支持されたアームに外力が加わっていないときは、前記アームの両側は、前記支点を軸にかかるモーメントが釣り合う状態にあり、前記アームに外力を加えることで、前記支点を軸に前記アームが変位する際、前記アームの変位方向を支持した前記アームの両側にある弾性部材に圧縮と伸びが生じ、前記弾性部材の復元力により前記圧縮と前記伸びが交互に起きることで、前記アームが前記支点を軸に振動して、シーソー構造体の固有振動を生じさせ、前記支点を挟んだ前記アームの両側のうちいずれか一方側に配置された発電部によって前記固有振動を電力に変換して発電することを特徴とする発電方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、周波数の調整が困難な共振現象を用いなくても、所望の起電力を生み出すことが可能な発電装置および発電方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】バネ-マス-ダンパー系の簡易モデルを示す図の一例である。
【
図2】簡易モデルから得られる振動波形の一例である。
【
図3】振動装置の構成を示す図の一例、(a)基本構造例(b)変形例である。
【
図5】シーソー構造体に複数個の圧縮ばねからなる弾性ユニットを取り付けた場合の例である。
【
図7】振動装置と外力の関係を示す図の一例である。(a)は受圧部材を備えた基本的な形態、(b)は受圧部材を長くした場合、(c)は遮断板を設けた場合、(d)は(c)で設けた遮断板の位置を変更した場合である。
【
図8】本発明の実施例(錘2kg時)における振動波形と起電力の測定結果である。
【
図9】本発明の実施例(錘6kg時)における振動波形と起電力の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の発電装置は、外力を機械的振動に変換するシーソー部と、機械的振動を電力に変換する発電部とを有する。さらにシーソー部は、外力によって可動なアームと、アームの長手方向のいずれか一点を支持する支点部と、支点部を挟んだアームの両側に、アームを変位方向で支持する弾性部材と、支点部を挟んだアームの両側に、錘とを備える。発電部は、支点部を挟んだ前記アームの両側のうち少なくとも一方側に配置されている。
【0017】
本発明の発電方法は、まず、アームに外力がかかっていない時は、弾性部材や錘によって、支点を中心にアームにモーメントが生じるが、このモーメントが釣り合う状態とする。次にアームに外力を加えると、その力が加わった方向へ、支点を軸にアームが変位する。このときアームの片側にある弾性部材には圧縮が、別の片側にある弾性部材には伸びが生じる。加えられた外力が解放されたとき、伸びた弾性部材が縮まる復元力と、縮んだ弾性部材が伸びる復元力が同時に生じることにより、アームは、前述とは逆の方向に変位する。その後、両弾性部材は交互に圧縮と伸びを繰り返すため、支点を軸にシーソーのように(シーソー運動的に)アームが振動する。
この振動をシーソー運動と呼び、シーソー運動の発生させている構造体を、シーソー構造体と呼ぶ。このとき生じる振動は、シーソー構造体の固有振動である。両アームのいずれか一方側に配置された発電部が、この振動を受けて電力に変換して発電する。
【0018】
すなわち、本発明の発電方法は、外力によってシーソー運動を生じさせ、前記シーソー運動を弾性部材の復元力で継続させ、前記シーソー運動における周期的な変位を用いて発電する発電方法とも言える。
【0019】
以下、本発明にかかる発電装置および発電方法を、図を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下に説明する各構成は、それ以外の他の構成を設ける趣旨を損なわない限りにおいて他の構成の有無にかかわらず適用することが可能である。
【0020】
まず、バネ-マス-ダンパー系の簡易モデルを用いた理論式により、本発明にかかる発電装置および発電方法について説明する。
(理論式)
図1は、本実施形態における発電装置を表すバネ-マス-ダンパー系の簡易モデルであり、シーソー構造体の片側に相当する部分を示している。座標は、紙面上下方向(アーム21の振動方向)をX方向、紙面左右方向(アーム21の長手方向)をY方向、紙面奥行方向(アーム21の幅方向)をZ方向とする。支点20からL
1の距離に弾性部材22を、支点20からL
2の距離に錘23を、支点20からL
3の距離に発電機構24を設置し、弾性部材22のばね定数をk、錘23の質量をm、発電機構24の粘性減衰係数をCとする。図中のx(0)は外力によって与えられる初期変位、v(0)は初速度を示す。x(0)=0、v(0)=0というのは、釣り合っている状態を表す。
【0021】
簡易モデルにおいてアーム21の変位xがゼロとなる位置を支点20で支えているとする。このとき構造体における固有振動の基本式は、式2で表すことができる。
【数2】
アーム21が変位した時の、支点20からの回転角度をθとおき、この角度θが微小でx
1~3 = L
1~3 sinθ ≒ L
1~3θとすると、以下の式3が得られる。
【数3】
式3に対して、角周波数ω
nと減衰比ζ、周波数ω
d、振幅y
(t)を導出すると、以下の式4~7が得られる。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
ただし、減衰比ζは式8のように置く。
【数8】
【0022】
図2に簡易モデルから得られる振動波形の一例を示す。縦軸が振幅で横軸が時間である。外力が一度のみ与えられる時、振動は開始直後に最も大きな振幅となり、徐々に減衰する。この時の周期Tは一般的に知られている以下の式9で表され、振動している間一定である。
【数9】
【0023】
のちにこの振動から電気を得るため、波形の周波数は高い方が良い。かかる周波数は、特に限定しないが、例えば1Hz以上であり、好ましくは20Hz以上である。
振幅は、所定のデバイスで振動を感知できる程度にその大きさを維持している必要がある。つまり時間の経過とともに振幅が減衰することは免れないが、その減衰比はなるべく小さい方が良い。かかる振幅は、特に限定しないが、例えば0.1mm上であり、好ましくは1.0mm以上であり、より好ましくは2mm以上である。
理想的な波形は、周波数が高く、振動直後の振幅が十分に大きく、振動の減衰が緩やかであることを差す。
【0024】
ここで式5から、減衰比ζを小さくするためには、支点20から弾性部材22までの距離L1および支点20から錘23までの距離L2はできるだけ長くし、支点20から発電機構24までの距離L3は短い方が良いことがわかる。
【0025】
次に式6から、高い周波数ωdを得るためには、L1/L2が大きい方が良いことがわかる。すなわち、支点20から錘23までの距離L2に比べて、支点20から弾性部材22までの距離L1が長い方が良い。さらにk/mより、弾性部材22のばね定数kが大きく、錘23の質量mが小さい方が良い。
【0026】
さらに式7から、振幅y(t)を大きくするためには、L3/L2が小さい方が良いことがわかる。すなわち、支点20から発電機構24までの距離L3に比べて、支点20から錘23までの距離L2が長い方が良い。加えてc/(2m)より、錘23の質量mは重い方が良い。
【0027】
本発明は、てこの原理を用いた構造物、より具体的にはシーソー構造体を用いた発電方法であり、固有振動を使用するものである。外力は、支点20を中心に、アーム21が回転する方向にかかれば良いため、アーム21を直接押しても良く、図示していない別の部材や機構を用いて、間接的に押しても良い。例えば、アーム21の先端に鉛直下向きに力を加えても良い。このとき、アーム21が長いほど、より小さな力でアームを大きく振動させることができ、大きな起電力を生み出せるため好ましい。
【0028】
また、振動波形は、錘23の質量mや弾性部材22のばね定数k、支点20から弾性部材22までの距離L1、支点20から錘23までの距離L2のパラメータを変更することで、周波数が高く、振動直後の振幅が十分に大きく、振動の減衰が緩やかである波形を設計することができる。
【0029】
次に、本発明の発電装置にかかる実施形態に関する構成について例示する。
【0030】
(発電装置11の構成)
図3に、本実施形態における発電装置11の一例を示す。
図3(a)は基本的な構成で(b)は変形例である。シーソー部は、支点20を軸に回転するアーム21と、アーム21に連結された弾性部材22a、22bと、弾性部材22a、22bの他端を支える固定プレート25a、25bと、アーム21と一体となっている(または固定されている)錘23a、23bと、支点20が配置されるベースプレート26と、固定プレート25a、25bを拘束するフレーム(非図示)とを有する。
【0031】
発電装置11は、アーム21の長手方向の一点(
図3におけるアーム21の長手方向の中央)を支点20が支えており、外力を受けていない状態のとき、アーム21にかかるモーメントが釣り合って、アーム21は地面と水平に静止している。
【0032】
このとき、アーム21の形状は支点20を境に対象でなくても良い。しかしながら、支点20を境に対称の方が、支点20から弾性部材22a、22bまでの距離と、支点20から錘23a、23bまでの距離も対象にできるため、モーメントが釣り合い易く好ましい。すなわち、発電機構24を除く発電装置11の構造は左右対称であることが好ましい。
【0033】
また、
図3(b)に示すように、発電装置11は受圧部材27を備えても良い。発電装置11が左右対称であり、受圧部材27も左右対称になるように設置される場合、モーメントが釣り合い易い状態を維持できるため好ましい。支持部材28、底面プレート29については、後述する。
【0034】
発電装置11の各構成要素について詳細を以下に述べる。
(支点20とアーム21)
支点20は、アーム21の長手方向のいずれか1カ所を支えるものである。両者の接触面積は最小限にし、両者の間に生じる摩擦抵抗を減らすことが好ましい。すなわち、
図3の紙面において1点(三次元空間において紙面奥行方向の一軸)で支えることが好ましい。
例えば、アーム21に備えた切り欠きと、支点20に備えた突起を接触させても良く、例えばアーム21に備えた突起と支点20に備えた切り欠きを接触させても良く、例えばアーム21と支点20をシャフトと軸受けで連結しても良い。
【0035】
例えば、
図3(b)に示すように、アーム21の底面に一組の支持部材28を設置し、上側の支持部材の底面に切り欠きを設け、下側の支持部材を鋭角な突起にして、この2つを接触させて支持しても良い。このように支点部材28を設けることで、振動によって摩耗するのは支持部材28だけになるので、部品の交換が容易になる。
【0036】
アーム21の材質は、加えた力を吸収したり外部に逃がしたりすることが無いよう金属材料と同等かそれ以上の剛性を持つ。すなわち外力によって実質的に変形しない程度の剛性を持つことが好ましい。アルミニウムやその合金などの軽金属を用いると、シーソー構造体を軽く作製することができ、加工も容易であるため良い。また、鉄やその合金を用いると、剛性を高められるため良い。さらに剛性を高めたい場合は、ニッケルやクロム、タングステン等を含む合金を用いても良い。
【0037】
また、アーム21の形状は、
図3(a)では直方体を想起させる形状になっているが、これに限定するものではない。例えば
図3(b)に示すように、アーム21の両端の一部を切り欠いて面を設け、この面に弾性部材を取り付けるための底面プレート29等を設置しても良い。さらに、アーム21の断面の形状は多角形でも一部が曲面でも良い。剛性を高めるために、断面をH形やコの字や中空にしても良い。
【0038】
(弾性部材22a、22b)
弾性部材22a、22bは、繰返し生じる高負荷な荷重に耐えられる部品やアクチュエータであれば良い。例として、コイルばねや渦巻きばねに代表されるばね類全般が使用できる。この場合、ばねの材質は特に限定しないが、例えば一般的に良く用いられる弾性部材鋼(SUP)、硬鋼線(SW)、ピアノ線(SWP)、ステンレス(SUS)などから選定することができる。または、空圧シリンダーや油圧シリンダーを使用することもできる。弾性部材としてシリンダーを用いると、一般的なばねよりも強い荷重をかけることができるため、構造体の剛性を高めることができ好ましい。
【0039】
以下、弾性部材としてばねを使う場合について述べる。弾性部材22a、22bは、圧縮時または延伸時において、弾性部材22a、22bの両端を支持する部材との間に隙間があると、その空間にガタツキが生じ、力を伝えにくくなる。そのため弾性部材22a、22bとして、例えば引張コイルばねを使う場合は、アーム21が振動中も常に引張方向に力がかかるようにコイルばねの両端を係止等の状態で接続し、逆に圧縮コイルばねを使う場合は、常に圧縮方向に力がかかるようにコイルばねの両端を支持するよう設計することが望ましい。すなわち、圧縮コイルばねの場合は、アーム21と固定プレート25a、25bに挟まれる状態を作り、振動中もアームと固定プレートとの間に隙間ができないようにすることが好ましい。
【0040】
弾性部材22a、22bは、アーム21の両側にそれぞれ1個でも良く、それぞれ複数個でも良い。
図4に、それぞれ2つの圧縮ばね(S1、S2)からなる弾性部材22a、22bが、アーム21の両側に配置された発電装置13の上面図の例を示す。同じ仕様の圧縮ばね(S
1とS
2)をアームの両側にそれぞれ配置する場合、支点20(上面図においては軸20)からS
1までの距離L
S1と、支点20からS
2までの距離L
S2が同じ距離になるようにすれば、2つの弾性部材の伸縮量は等しくなる。つまり、ばね定数が2倍の1つの弾性部材を使用したのと同一の効果となり、このような設置も可能である。
【0041】
圧縮ばねの個数はさらに多くしても良い。
図5に、複数個の圧縮ばねからなる弾性ユニット220を取り付けた場合の例を示す。
図5(a)はアーム21が水平に保たれている時の状態で、シーソー構造体の支点から右側のみを図示しているが、左側も同様である。一般的に流通している圧縮ばねのばね定数には上限があるが、このように複数個の圧縮ばねを用いてユニット化することで、より高い弾性係数の高い状態を作る出すことができる。
【0042】
この図において、複数個の圧縮ばねSは、底面プレート221と調整プレート222の間に設置されている。底面プレート221は、下面が凸形状のブロックを介して、アーム21に押し付けられている。調整プレート222は、押込み棒223によって圧縮ばねSが縮む方向に所定量押し込まれる。これにより、圧縮ばね22が持つ長さのばらつきを吸収し、すべての圧縮ばねが底面プレート221と調整プレート222に挟まれた状態を維持している。押込み棒223は、固定プレート25に固定されている。図では押込み棒223は固定プレート25を貫通しているように見えるが、貫通する必要は無く、固定方法は特に問わない。また、底面プレート221と固定プレート25は同軸となる貫通穴を備えており、前記貫通穴にシャフト224が挿入されている。固定プレート25は、図示しない土台に固定されている。
【0043】
図5(b)に、アーム21が反時計回りに傾いたときの弾性ユニット220の状態を示す。固定プレート25と押込み棒223、シャフト224は固定されているため、動かない。また、調整プレート222は圧縮ばねSから押し上げる力が働くが、押込ボルト223に押し当てられて動かない。一方で、圧縮ばねSは、底面プレート221と調整プレート223に挟まれた状態を維持して収縮する。底面プレート221は、シャフト224に沿って、上下に稼働する。
【0044】
図5において、支点20から弾性部材(弾性ユニット220)までの距離とは、支点20から弾性ユニット220の中央位置までのことを表す。また、
図5は弾性ユニット220の一例であるから、底面プレート221と調整プレート222の位置関係を逆にすることもできるし、シャフト224を底面プレート221に固定して、圧縮ばねが収縮時にシャフト224が固定プレート25よりもさらに上に突き出るように可動させることもできる。このような変形例を含んでも良いことは、言及するまでもない。
【0045】
弾性部材は着脱可能であることが好ましい。例えば
図3のような構成において、アーム21と固定プレート25がアルミフレームからなり、前記アルミフレームに弾性部材をボルト締結するような構造の場合、ボルトを緩めてアームの長手方向にスライドさせるだけで、支点20から弾性部材までの距離を容易に変更できる。
【0046】
ここで、弾性部材22a、22bは、ばねに限定されない。空圧シリンダーや油圧シリンダーを使用することもできる。弾性部材としてこれらのシリンダーを用いると、ばねを用いる場合よりも構造体の剛性を高めることができるため好ましい。
さらに、弾性部材22a、22bは、アームの上面側に設置しても良く、アームの下面側に設置しても良い。アームの上面側および下面側の少なくとも一方に設置すればよい。
【0047】
(錘23a、23b)
錘23a、23bの材質はアーム21の材質と同じでも良いし、異なっていても良い。空気抵抗を減らすため、アーム21の材質よりも高密度な材質にして体積を減らすと好ましい。
【0048】
錘23a、23bとアーム21の間に隙間があって稼働中にガタツキを生じると、振動が減衰してしまう。そのため錘23a、23bは、アーム21と一体の部材とするか、もしくは別部材の場合は、強固に固定することが望ましい。この締結方法については、ボルトで締結する他、あらゆる公知の方法を使うことができる。アーム21に対して錘23a、23bの位置は、アーム21の上面である必要は無く、下面でも良いし、アーム21の側面のどの角度に取り付けても良い。
【0049】
アーム21に錘23a、23bがボルト締結されている場合、錘は着脱可能である。例えば、アーム21がアルミフレームからなる場合は、ボルトを緩めてアームの長手方向にスライドさせるだけで、支点20から弾性部材までの距離を容易に変更できる。
【0050】
(支点20と固定プレート25a、25b)
アーム21を支える支点20と、固定プレート25a、25bは、金属などの硬い部材である。アーム21や弾性部材22a、22bから応力を受けてもこれらの位置関係が変わらないように、図示しないフレーム等を用いて、お互いに強固に固定するか一体とすることが望ましい。
【0051】
(受圧部材27)
図3に戻る。アーム21は、外力を直接受けても良いが、アーム21の長手方向とほぼ平行な方向に外力が働いている場合は、受けた外力を回転モーメントに変換しにくい。その場合は、アーム21の長手方向における支点20によって支持される位置に、アーム21の長手方向に対して直角方向に受圧部材27が立設されていることが好ましい。すなわち、シーソー構造体が支点20を境に左右対称な場合は、アーム21の長手方向における中央の位置に、受圧部材27が立設されていることが好ましい。受圧部材27を備えることで、外力の向きを発電装置が振動しやすい方向に変換することができる。受圧部材27は、金属などの硬い部材であり、形状は特に限定しないが、例えば板状や棒状、ブロック状にすることができる。
【0052】
受圧部材27は、アーム21と一体の部材とするか、もしくは別部材の場合は、アーム21に強固に固定することが望ましい。この締結方法については、ボルトで締結する他、あらゆる公知の方法を使うことができる。設置位置は、アーム21の上面や下面の他、アーム21の側面のどの角度に取り付けても良い。これらの設計事項は、外力の条件によって変更できる。
【0053】
受圧部材27は、支点上に、アームの長手方向に対して直角方向に立設することで、シーソー部のバランスが取りやすくなるため望ましい。また、支点を中心とする回転の径方向に外力が作用するため、外力を効率良く回転のモーメントに変換することができる。
【0054】
(発電機構24)
図6に発電部における発電機構24の一例を示す。この図は、
図3のA-A断面から見た図の例である。アーム21の支点20を挟んだ両側の少なくとも一方側に、磁石S極30と、磁石N極31で一対を成す磁石を一定の空間を開けて2組取り付け、磁石S極30と磁石N極31の間に、鉄芯32に導線33を巻いたコイルを設置する。コイルは磁石と接触しない位置に取り付けられ、磁力に引き寄せられて移動しないよう鉄心固定部34に強固に固定される。
【0055】
アーム21が振動するのに従い、磁石S極30と磁石N極31が、図中の矢印方向に周期的に上下運動36をすると、磁石S極30がコイルに近づいたり、磁石N極31がコイルに近づいたりを繰り返す。式1で述べたように、短時間の間に磁界が周期的に入れ替わるとコイルに起電力が生じる。この時コイルの両端に電流取り出し用の端子を接続すると、電流を取り出すことができる。
【0056】
発電機構24は着脱可能であることが好ましい。例えば
図3のような構成において、ベースプレート26がアルミフレームからなり、前記アルミフレームに発電機をボルト締結するような構造の場合、ボルトを緩めてアームの長手方向にスライドさせるだけで、支点20から発電機構24までの距離を容易に変更できる。
【0057】
ここで
図3を参照して、各構成要素の配列について例示する。
(各構成要素の配列)
発電装置を設計する上でアーム21の長さに制約が無い場合、アーム21は製作可能な範囲で十分に長くし、支点20から最も遠い位置に弾性部材22を設置すると、周波数が上がるので望ましい。次に支点20から弾性部材22までの範囲で、支点20からなるべく遠い位置に錘23を設置すると、振動の持続時間が長く保てるので好ましい。そして支点20から錘23までの範囲で、支点20からなるべく遠い位置に発電機構24を設置すると、振動の振幅が大きくなるため望ましい。
ただし、支点20から発電機構24までの距離が遠くなると、振幅の減衰が大きくなってしまう。そのため、発電機構24が発電できる範囲(発電機構に必要な振幅が得られる範囲)で、発電機構24を支点20に近づけて調整すると良い。
つまり、各要素の配列順は、アームの長手方向において、支点20からアーム端部に向かって、支点20-発電機24-錘23-弾性部材22とするのが好ましい。
【0058】
発電装置11を小型化し、装置の製作費用を安く抑えることを優先する場合は、支点20に弾性部材22をなるべく近づけた方が良い。なぜなら、弾性部材22はその一端をアームに、もう一端を固定プレート25に取り付けるため、弾性部材22を支点20から遠い位置に置くと、固定プレート25や図示していないフレームも大きく作らなければならないからである。この配置の場合、周波数が下がるため、発電量は期待値より減少するが、振動の持続時間は伸びることになる。その上で発電機構24を、支点20からできるだけ遠くに設置すれば振幅も大きく取れる。
つまり、発電装置11を小型化する場合、各要素の配列順は、アームの長手方向において、支点20からアーム端部に向かって、支点20-弾性部材22-錘23-発電機構24とするのが好ましい。
【0059】
各構成要素(弾性部材、錘、発電部)はそれぞれ着脱可能で、前記支点部からの距離を変更できるように構成されていると、支点からの距離を容易に変更できるため好ましい。
また、各構成要素(弾性部材、錘、発電部)はそれぞれ着脱可能で、相対的な位置の入れ替えができると、配列を容易に組み替えられるため好ましい。
【0060】
(外力によるモーメント)
本実施形態の発電装置と外力40の関係を、
図7を用いて説明する。アームにかかるモーメントは、外力40と、支点20から外力を受ける位置41までの距離Lopの積によって決まる。外力を受ける位置41というのは、実際には点ではなく、任意の範囲を持った面となるが、その場合は外力40を受ける領域の中央を代表位置と考えれば良い。
【0061】
図7(a)は、
図3に示した受圧部材27を備えた発電装置11の基本的な形態とする。この形態で位置41に外力40を受けた際、アームが受けるモーメントが足りない場合は、受圧部材27aを27bに変更し、支点20から外力を受ける位置29までの距離Lopを長くとると、モーメントを大きくできる(
図7(b))。支点からアーム先端までの長さより、支点から受圧部材先端までの長さの方が長い場合、てこの原理でより力を増幅できるため、好ましい。
【0062】
外力40の向きや大きさが時間の経過により変動する場合は、例えば、受圧部材27aまたは27bの長さが可変となる機構を設けて伸縮させても良いし、アーム21に対する受圧部材27aまたは27bの位置を可動式にして、その位置を変えても良い。
【0063】
さらに、受圧部材27aまたは27bから任意の距離離れた位置に遮断板42を設けても良い。時間的に変化する外力40に対して遮断板42を設けるというのは、例えば、
図6(c)のように受圧部材27bより短い遮断板42を設けて、受圧部材27bの先端のみが外力40を受けるようにしたり、
図7(d)のように受圧部材27bの先端を隠して、中央部分までで外力40を受けるようにすることが考えられる。遮断板42の位置を可変にすることで、支点20から外力を受ける位置41までの距離Lopを調整できるため、モーメントを一定に保ち、発電量を安定させることができる。
さらに、受圧部材27aまたは27bに対して、遮断板42が外力を遮るタイミングを制御することで、振動を継続させたり増強させたりすることもできる。
【0064】
(外力の波形)
本実施形態では、外力の波形がパルス波か正弦波か、また断続的か連続的かを問わない。断続的な波の場合、シーソー部が振動している時間は限定的であるが、得られた電力を、増幅器を用いて増幅しても良く、蓄電池等に溜めても良い。
【0065】
(発電装置の拡張性)
発電装置11は左右対称でなくても良い。例えばアーム21が断面不均一な形状の場合、アーム21の長手方向の中心ではないアーム21の重心に支点20を設置して、先述した理論式のもとで振動できれば良い。
また、例えば受圧部材27は、外力の状態に応じて、支点20の直上からずれた位置に設置しても良いし、アーム21の長手方向に対して直角以外の方向に立設しても良い。
さらに、発電装置全体の大きさは、求める発電量や設置環境に応じて、例えば数センチメートルから数百メートルまで、いかなる大きさにも作製できる。
【0066】
本実施形態は、共振現象ではなく、構造体の固有振動現象を用いる方法である。共振現象を用いる場合は、周波数の調整がしばしば厳密に行われ、その構造物特有の周波数に一位に定める必要がある。それに対し、固有振動を用いた本発明は、式4に従い、弾性体のばね係数を増加させて、支点からの距離を長くしたり、錘の重量を減少させて支点からの距離を短くしたりすることで、周波数を上げることが可能となる。そのため、式1により、起電力を容易に増加できる。
【0067】
従来技術は、外力を受ける部材と、起電力を生み出す発電機構との位置関係を近づけることが望ましい構成、または構造上の問題で、両者を離すことが困難な構成であった。これに対して、本実施形態は、前述の通り、発電機構40の設置位置(支点20からの距離)も、受圧部材27の伸縮や移動も自由に行えるため、設置環境に応じた柔軟な設計ができる。
【0068】
本実施形態は、支点と呼称している位置が、てこの原理の支点であり、力点はこの支点以外の場所に存在する。これに対し特許文献3は、段落[0028]に「錘部6は支点Cと、作用部材20は作用点Aと、支持部3は力点Bと見ることができる。すなわち、支点Cが錘部6の慣性力により静止され、被設置物50の振動が力点Bである支持部3に加わると、その振動が増幅されて作用点Aである作用部材20に伝わることを意味している。」と記載されているように、支持部や錘部の機能は、本実施形態とは全く異なる。
【0069】
本実施形態によれば、例えば発電装置11を地上に置き、アーム21から受圧部材27を上空に伸ばすことで風力を受けることが可能となる。その力を装置の固有振動に変え、高周波数の振動を発生させるとともに、てこの原理により振動の振幅を増加させることで、大きな起電力を得ることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、海洋の波や川の流れを利用することもできる。例えば、橋などの構造物上に発電装置を置き、アームから鉛直下向きに受圧部材を伸ばし、川の流れを受けることで発電することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、人間の手足の動作を利用することもできる。例えば、団扇を仰ぐ動作や、足踏みをする動作など、特定の方向に何度も生じる力を利用して、振動を発生させ、発電することもできる。この場合、発電装置を人間の近くに設置するなら、受圧部材は人間の手足の長さ等に合わせて、設計することも可能である。
【0072】
また、本実施形態によれば、橋やビルなどの構造物の振動を利用することもできる。例えば、橋の場合は橋げた、ビルの場合はビルの土台部分など、強固に固定された位置に発電装置を置き、受圧部材を橋のよく撓む位置やビルのよく揺れる部分(例えば免震構造体の可動部等)に接するように設置すると、橋やビルの揺れを受けて振動を生じさせ発電することができる。
【実施例】
【0073】
(実験装置)
上述した発電装置を製作し、外力をかけた際の変位と電力を測定した。シーソー構造体は左右対称な形状とした。アームは、材質がアルミ合金(A5052)、全長が1100mmで、長手方向の中央の位置を支点とした。この支点から、両側270mmの位置に弾性体を設置し、支点から両側370mmに錘を設置した。弾性体は、
図5に示すような弾性ユニット220とし、丸コイルスプリング(ミスミ製、WT10-40、ばね定数2N/mm)を40本(両側で80本)配置して、固定プレート221と調整プレート222で挟み、全長37mmになるよう圧縮した状態にした。すなわち、支点から弾性体までの距離が270mmというのは、この弾性ユニットの中央までの距離のことを指す。
【0074】
発電機構は
図6のように構成した。
図6を用いて説明する。材質が炭素鋼で断面積7.2mm
2、長さ40mmの鉄心の外周に銅線を巻き付けたコイルを用意した。これを鉄心固定部34に、磁力に引き寄せられて移動しないよう強固に固定した。また、このコイルと接触しないように隙間を開けて、N極とS極の磁石を対角に配置してアームに固定した。発電機構は、支点から550mmの位置に片側に設置した。550mmというのは、鉄心の中心までの距離である。
【0075】
(実験条件)
前記錘の重さを2種類(2kgと6kg)用意し、アームに片側2kg(両側4kg)の錘を備えた場合と、アームに片側6kg(両側12kg)の錘を備えた場合について実験した。外力は、アームの支点を挟んだ両側のうち、発電機構を備えていない側の先端(支点から550mmの位置)に加えた。具体的には、アームが回転する方向に強制変位を与えて(アーム先端を鉛直下向きに押し込んで)クランプ治具で抑え、そのクランプ治具を外して、加えていた力を瞬間的に開放することで、これを外力とした。アームが支点を中心に振動することを確認した。
【0076】
(測定方法)
変位は、発電機構の上下運動している位置の上部に、CCDレーザ変位計(キーエンス製、LK―G82)を設置して、サンプリング周波数0.2msで変位を計測した。これをグラフにプロットすることで、振動波形を得た。
電力は、パワーメータ(日置電機製、PW3335)を用いて、サンプリング周波数100msで計測した。鉄心に巻いた銅線に抵抗2.2kΩを接続し、この抵抗値による電流と電圧を計測し、電力を求めた。
【0077】
(測定結果)
錘2kg(片側)の測定結果を
図8に、錘6kg(片側)の測定結果を
図9に示す。第1縦軸に変位(mm)、第2縦軸にパワーメーターで測定した電力(W)を、横軸に経過時間(s)を記載した。この振動波形から、振動開始後の第一ピークの経過時間と第二ピークの経過時間の差(振動の周期T)を求め、その逆数を周波数f(Hz)とした。また、計測された起電力(W)のうち最大値を最大起電力とした。また、第一ピーク発生時から変位量が1mmになるまでの時間を持続時間とした。以上の項目をまとめて表1に示す。
【表1】
錘2kg(片側)の結果では、錘6kg(片側)に比べ、周波数が上がり、最大起電力も大きくなり、持続時間が短くなった。持続時間が減少した理由は、式7に示す錘mが小さくなったことで、構造の減衰cの影響が大きくなったことが原因と考える。また、この結果から、錘の重さを変更することで、容易に周波数を調整できることが分かった。
【0078】
以上より、本発明によれば、共振現象を用いずに、シーソー構造体(てこの原理)によって所望の振動数と振幅を得て、起電力を生み出すことが可能である。
【符号の説明】
【0079】
10:バネーマスーダンパー系の簡易モデル
11:発電装置
12:発電装置
13:発電機構の一例
20:支点O
21:アーム
22、22a、22b:弾性部材
23、23a、23b:錘
24:発電機構
25、25a、25b:固定プレート
26:ベースプレート
27、27a、27b:受圧部材
28:支持部材
29:底面プレート
30:磁石S極
31:磁石N極
32:鉄芯
33:コイル
34:鉄芯固定部
35:支柱(フレーム)
36:上下運動
40:外力F
41:外力を受ける位置P
42:遮断板
220:弾性ユニット
221:底面プレート
222:調整プレート
223:押込み棒
224:シャフト
C:ダンパー係数
k:ばね定数
m:質量
S、S1、S2:弾性体
T:周期
L1:支点から弾性部材までの距離
L2:支点から錘までの距離
L3:支点からダンパー系までの距離
LOP:支点20から外力を受ける位置41までの距離
LS1:支点20から弾性部材S1までの距離
LS2:支点20から弾性部材S2までの距離
θ:アームが変位した時の回転角度