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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】センサモジュール及び保護ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20240709BHJP
   C03C 17/30 20060101ALI20240709BHJP
   G01D 11/26 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C17/30 B
G01D11/26 F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022149229
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2019527750の分割
【原出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2022176235
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2017132137
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 周作
(72)【発明者】
【氏名】尾関 正雄
(72)【発明者】
【氏名】竹田 諭司
(72)【発明者】
【氏名】金杉 諭
(72)【発明者】
【氏名】大神 聡司
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/065648(WO,A1)
【文献】特開平08-029535(JP,A)
【文献】特開平07-154660(JP,A)
【文献】特開2011-155468(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022382(WO,A1)
【文献】特開2008-288720(JP,A)
【文献】中国実用新案第204415924(CN,U)
【文献】特開2013-131110(JP,A)
【文献】特開2009-233625(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009336(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 21/00
C03B 27/012
C03C 17/28 - 17/32
G01D 11/26
B06B 1/00 - 3/04
G03B 17/00 - 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材上に配置される単数または複数の、センサ及び振動子の少なくともいずれか一方と、
前記センサ及び振動子の少なくともいずれか一方を覆うように設けられた、少なくとも1つの平面または曲面で構成される保護部材と、を有するセンサモジュールであって、
前記保護部材の一部または全部は強化ガラスで形成され、
前記強化ガラスは、板厚が1.5mm以上である化学強化ガラスであり、
前記化学強化ガラスは、表面圧縮応力値が200MPa以上であり、イオン交換処理によって形成された圧縮応力層の深さが200μm以上であり、
前記化学強化ガラスの、表面から200μmの深層における圧縮応力値が、前記表面から100μmの深層における圧縮応力値の0.39倍以上であることを特徴とする、センサモジュール。
【請求項2】
前記化学強化ガラスは、前記表面圧縮応力値が600MPa以上である請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記化学強化ガラスは、前記表面圧縮応力値が800MPa以上である、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記化学強化ガラスは、前記表面圧縮応力値が900MPa以上である、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記化学強化ガラスは、前記表面圧縮応力値が1000MPa以上である、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記化学強化ガラスは、前記表面圧縮応力値が1100MPa以上である、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項7】
前記化学強化ガラスは、前記圧縮応力層の深さが400μm以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項8】
前記化学強化ガラスは、前記圧縮応力層の深さが500μm以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項9】
前記化学強化ガラスは、前記圧縮応力層の深さが550μm以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項10】
前記化学強化ガラスは、前記表面から200μmの深層における圧縮応力値が、前記表面から100μmの深層における圧縮応力値の0.58倍以上であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項11】
前記化学強化ガラスは、前記表面から200μmの深層における圧縮応力値が、前記表面から100μmの深層における圧縮応力値の0.60倍以上であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項12】
前記化学強化ガラスは、板厚が1.5mm以上3.5mm以下である請求項1~11のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項13】
前記強化ガラスは、結晶化ガラスである、請求項1~12のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項14】
前記強化ガラスの表面に撥水膜を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のセンサモジュール。
【請求項15】
平面または曲面で構成される保護ガラスであって、
前記保護ガラスの一部または全部は強化ガラスであり、
前記強化ガラスは、板厚が1.5mm以上である化学強化ガラスであり、
前記化学強化ガラスは、表面圧縮応力値が200MPa以上であり、イオン交換処理によって形成された圧縮応力層の深さが200μm以上であり、
前記化学強化ガラスの、表面から200μmの深層における圧縮応力値が、前記表面から100μmの深層における圧縮応力値の0.39倍以上であることを特徴とする、保護ガラス。
【請求項16】
超音波振動子を有する、請求項15に記載の保護ガラス。
【請求項17】
透明ヒータを有する、請求項15又は16に記載の保護ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ及び振動子の少なくともいずれか一方を収容するセンサモジュール及びセンサ又は振動子を保護する保護ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
車や電車、ドローンなどの移動機器、また屋外センサ、監視カメラといった防犯装置には、多様な機能を有する複数のセンサが搭載されている。これらのセンサを保護する保護部材として樹脂カバーを用いたセンサモジュールが知られている。センサを屋外に配置する場合、センサを保護する保護部材の剛性や耐傷性に加えてヤケ、ヒートショックに強い素材を選択することが求められている。
【0003】
保護部材内部に配置されるセンサの種類も保護部材の構造や素材を選択する重要な要素となる。保護部材の構造や素材によっては、センサの用途を阻害することもある。例えばセンサを保護する保護ガラスは可視光を通す高透過性を有する素材を選択することが必要となる。
【0004】
監視カメラや車に搭載されるセンサとしては、超音波を用いるセンサが知られている(特許文献1)。特許文献1に記載の超音波センサは、超音波を送信する送信素子から送信され、被検出体にて反射された超音波を、超音波を受信する受信部が配置された受信部材で受信できる。
【0005】
また、超音波は、距離の測定のほか、撥水や窓の清掃にも利用される(特許文献2)。超音波を用いたセンサの用途は今後さらに広がることが予測できる。
【0006】
保護部材内部にセンサを配置した構造として、樹脂を用いた保護部材の内側にセンサを配置する構造が知られている(特許文献3)。特許文献3には、超音波センサを収容する保護部材として樹脂製の筐体を用いつつ、筐体内部に設置された振動子の電極との電気的導通を確保することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2007-174323号公報
【文献】日本国特表2016-531792号公報
【文献】日本国特開2006-203563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献3に記載の樹脂を用いた保護部材では、屋外に設置された場合、該保護部材の剛性が低く、耐傷性、耐候性に優れないという課題があった。
【0009】
上記に鑑みて完成された本発明は、化学強化されたガラスを保護部材として用いることによって、樹脂を保護部材として用いる場合よりも剛性が高く、耐傷性、耐候性等に優れたセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様によれば、ベース部材と、前記ベース部材上に配置される単数または複数の、センサ及び振動子の少なくともいずれか一方と、前記センサ及び振動子の少なくともいずれか一方を覆うように設けられた少なくとも1つの平面または曲面で構成される保護部材と、を有するセンサモジュールであって、前記保護部材の一部または全部は強化ガラスで形成され、前記強化ガラスは、化学強化ガラスまたは物理強化ガラスであることを特徴とする、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記強化ガラスは、表面圧縮応力値が400MPa以上、かつ圧縮応力層の深さが10μm以上である、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記強化ガラスは、前記表面圧縮応力値が600MPa以上、かつ前記圧縮応力層の深さが40μm以上である、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記強化ガラスは、化学強化ガラスであり、板厚が0.5~3.5mmである、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記強化ガラスは、化学強化ガラスであり、板厚が1.5~3.5mmであり、圧縮応力層の深さが200~580μmの範囲である、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記化学強化ガラスは、表面圧縮応力値が700MPa以上である、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記化学強化ガラスは、前記圧縮応力層の深さが250~580μmの範囲であり、かつ、表面から100μmの深さの圧縮応力値が100MPa以上である、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記化学強化ガラスは、凸面と凹面と、を有する曲面形状をなしており、前記凸面の表面圧縮応力値から前記凹面の表面圧縮応力値を差し引いた値が10MPa以上である、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記凸面の圧縮応力層の深さから前記凹面の圧縮応力層の深さを差し引いた値が10μm以上である、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、化学強化ガラスにおいて、圧縮応力層を形成する領域に少なくとも1つの屈曲点を有し、前記屈曲点を境として傾きの異なる応力分布曲線を有する、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記振動子は、超音波発生素子を有するセンサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記保護部材は、透明ヒータを有するセンサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記強化ガラスは、第1の主面と前記第1の主面と対向する第2の主面を有し、前記第1の主面と前記第2の主面との間に端面を有し、前記端面の表面粗さが、0.01~1.0μmの範囲である、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記強化ガラスは、結晶化ガラスである、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、前記強化ガラスの表面に撥水膜を有する、センサモジュールが提供される。
本発明のある態様によれば、平面または曲面で構成される保護ガラスであって、前記保護ガラスの一部または全部は強化ガラスであり、前記強化ガラスは、化学強化ガラスまたは物理強化ガラスであることを特徴とする保護ガラスが提供される。
本発明のある態様によれば、超音波振動子を有する保護ガラスが提供される。
本発明のある態様によれば、透明ヒータを有する保護ガラスが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のセンサモジュールは、強化ガラスを保護部材として用いたため、面強度、エッジ強度が高く、剛性および耐傷性が高く、また、耐候性(ヤケ防止性、耐ヒートショック性)が高い。したがって、屋外への設置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(a)~図1(c)は、本実施形態におけるセンサモジュールの構成の一例を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態における実装部の構成の一例を示す側面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、本実施形態における実装部の給電機構の一例を示す斜視図であり、図3(a)は有線給電、図3(b)は無線給電の様子をそれぞれ示す。
図4図4(a)及び図4(b)は本実施形態における振動子または透明ヒータの設置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、図面中の記載において、同一又は対応する部材又は部品には、同一又は対応する符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
また、本明細書中、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0014】
<センサモジュール>
本実施形態のセンサモジュールは、ベース部材15と、ベース部材15上に配置される単数または複数の、センサ20及び振動子40の少なくともいずれか一方と、センサ20及び振動子40の少なくともいずれか一方を覆うように設けられた、少なくとも1つの平面または曲面で構成される保護部材1を有する。以下に、本実施形態のセンサモジュールを構成する要素について、詳しく説明する。
【0015】
<保護部材1>
図1(a)及び図1(b)は本実施形態における保護部材1の構成の一例を示す斜視図である。図1(a)はセンサ20を収容する円筒型の筐体(保護部材1)の蓋部に保護ガラス10を用いた構造であり、図1(b)はセンサ20を収容する半球体の球面にガラスを用いた構造である。保護部材1は、その一部または全部が保護ガラス10を用いて形成されるが、図1(a)に示すように、保護部材1の一部に保護ガラス10を支持する支持部2を形成してもよい。支持部2はガラスでもよいが、ステンレスやアルマイトのような金属を用いてもよい。保護部材1は、円筒型や半球体に限らず、円柱型や角柱形、そのほか球状の正多面体といった立体形状でもよい(図1(c))。また、保護部材1は、ガラスを複数枚貼り合わせて形成でき、支持部2を形成する場合は、支持部2と保護ガラス10との間に接着層を形成して、支持部2と保護ガラス10とを接着できる。
【0016】
保護部材1は、ミリ波、超音波、可視光、赤外光、LIDAR、もしくはそれらを複合的に用いた検知機能または感知機能を有するセンサ20を収容する。本実施形態のセンサモジュールが屋外に設置された場合、筐体である保護部材1は実装部5を雨や雪等の気候要因、飛び石による衝撃などの外的要因から保護するために、これらに対して一定の強度を必要とする。
【0017】
保護ガラス10と支持部2の間を接着する接着層(図示しない)は、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン共重合体系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、線状ポリイミド系樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、反応性アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、ガラスフリット、及びはんだからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。上記のような樹脂等を用いて、屋外で設置されても変形、風化しない材質の接着層を形成することで、保護部材1の耐久性を向上できる。
【0018】
また、保護部材1は透明ヒータ60を有すると、防曇や融雪といった機能を発揮することができ、曇りや雪などによりセンサが機能しなくなることを防ぐことができるため好ましい(図4(a)及び図4(b)参照)。透明ヒータとしては、例えば、保護部材1のセンサ側に成膜されたITO等の透明電極が挙げられ、該透明電極に電流を流して発熱させる。これにより、水滴や雪を熱により気化させて、保護部材1の表面から水滴や雪を除去できる。同様の機能を発揮するために、透明性の無いメタルをヒータとして用いてもよく、その場合、センサが使う窓以外の部分を覆い、ヒータとして機能させてもよい。
【0019】
<保護ガラス10>
保護ガラス10は、大きいサイズの板ガラスを小さく切断し、切削、研磨の各工程を経て得られたガラスに、化学強化や物理強化等の強化処理をして形成できる。板ガラスの切断方法としては、例えばダイヤモンドブレードによる切断のほか、スクライブ割断法やレーザー切断法などを適用できる。保護ガラス10の強度を高めたい場合は、保護ガラス10の表層部を化学強化または物理強化することが好ましく、表層部の全てを化学強化または物理強化することがより好ましい。切削加工又は研磨加工を施す工具としては、砥石を使用でき、その他に、布、皮、ゴム等からなるバフやブラシ等を使用できる。その際、酸化セリウム、アルミナ、カーボランダム、コロイダルシリカ等の研磨剤を使用できる。中でも寸法安定性の観点から、研磨具としては砥石を用いるとよい。
【0020】
保護ガラス10は、支持部2や実装部5と接触する部分(例えば、保護ガラスの端面に相当する部分)を粗面化することで、支持部2や実装部5との密着性を向上できる。保護ガラス10は、第1の主面と、第1の主面と対向する第2の主面とを有し、第1の主面と第2の主面との間に端面を有するものであれば、とくに形状は問わない。例えば、図1(b)に示される半球体の保護ガラス10を凹面側から見たとき、所定の幅を有して円を描く部分(端面)を粗面化すると、該円を示す面と接着させる対向部分との密着性が向上するため固定しやすくなり、保護ガラス10の実装を安定化できる。ここで、粗面化のレベルとしては具体的に、表面粗さRaが0.01μm以上であればよく、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。また、端面を必要以上に粗面化をすると、端面の対向部分との密着性を損なうおそれがあるので、端面の表面粗さRaは1.0μm以下であればよく、0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましい。また、支持部2も強化ガラスで構成される場合、支持部2の端面の表面粗さRaも、上記の範囲が好ましい。なお、本明細書において、表面粗さRaは、JISB0601:2001により規定される算術平均粗さRaを指す。
【0021】
また、図1(b)に代表される半球体の保護ガラス10に限らず、半球体以外であっても、曲面状をなすドーム形状の保護ガラスを用いると、センサ20が例えば可視光用のカメラである場合、撮像範囲(視野)を広げる効果があり好適である。保護ガラスがドーム形状(曲面状)の場合、そのサイズはとくに制限はないが、例えば、外径が10mm~30mmの範囲、内径が5mm~30mmの範囲で与えられる。半球体を含むドーム形状のガラス板は、ドーム形状に加工後、化学強化処理をすると、化学強化ガラス板の凸面側の方が形状効果により凹面側に比べて大きな表面圧縮応力が得られる。また、同化学強化ガラス板は、凸面側の方が凹面側に比べて大きな圧縮応力層深さが得られる。そのため、とくに屋外の環境下に置いたとき、表側に相当する凸面側の方が、より大きい強化が得られ好ましい。このようなドーム形状のガラス板は、化学強化処理の条件を適宜調整することにより所望の表面圧縮応力、圧縮応力層深さを実現できる。
【0022】
とくに、ドーム形状のガラス板を化学強化する場合、凸面の表面圧縮応力値から凹面の表面圧縮応力値を差し引いた値は、10MPa以上が好ましく、15MPa以上がより好ましく、20MPa以上がさらに好ましい。また、凸面のDOLから凹面のDOLを差し引いた値は10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましい。
【0023】
ドーム形状の保護ガラス10は、例えば曲げ加工により得ることができる。以下に曲げ加工の好ましい態様を説明するが、本実施形態において曲面形状をなす保護ガラス10を得る方法は下記に説明する態様に限定されない。
曲げ加工においては、まず大気圧環境下、カーボンで構成されたモールド上に、ガラスを載置し、600℃から950℃の温度領域まで加熱させ、30秒から180秒の間、温度を維持しながら熱プレスさせた後、徐冷して曲面状のガラス板を形成する。その後、曲面状のガラス板を所定の外形に切削しガラス板表面を研磨することで、所望の形状、所望の表面粗さを有するドーム状等の曲面形状をなす保護ガラス10が得られる。
また、曲面形状をなす保護ガラス10を得る方法は曲げ加工に限定されず、例えば板厚が大きいガラス板の切削加工等によっても得られる。
【0024】
さらに、保護ガラス10は、その主表面に不図示の撥水膜が備わっていてもよい。撥水膜の材料は、具体的に高い撥水性を有する材料であればよく、さらに防汚性も備える材料が好ましい。このような撥水膜の材料としては、フッ素含有有機化合物、フッ素系樹脂が挙げられ、より具体的には、含フッ素有機ケイ素化合物や、加水分解性を有する含フッ素有機化合物等が挙げられる。このような撥水膜の厚さは、保護ガラス10の透過性を損なわない程度であれば、とくに制限はないが、例えば、10nm以上であれば、撥水性の効果を発揮できるので好ましく、100nm以上がより好ましい。また、撥水膜の厚さは、その上限にとくに制限はないが、生産性の観点から1μm以下であれば好ましい。
【0025】
保護ガラス10は、透明度の高いガラスによって構成するとよい。保護ガラス10として用いられるガラスの材料として、多成分系の酸化物ガラスを使用できる。
【0026】
保護ガラス10として用いられるガラスの組成の具体例を以下に示すが、該ガラスの組成はこれらに限定されない。本発明に使用されるガラスは、ナトリウムを含んでいればよく、成形、化学強化処理又は物理強化処理による強化が可能な組成を有する限り、種々の組成のものを使用できる。
具体的には、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノボロシリケートガラス、結晶化ガラス、アルカリ含有光学ガラス等が挙げられる。この中でも、結晶化ガラスは、比較的強度が高いので、物理強化処理又は化学強化処理をすると、より高強度の強化ガラスが得られやすい。
【0027】
結晶化ガラスは、ガラス中に結晶を析出させたものであり、結晶を含まない非晶質ガラ
スと比較して硬く、傷がつきにくい特徴がある。また、結晶化ガラスに、イオン交換処理を施して化学強化することで、強度をさらに高くできる。
結晶化ガラスは、非晶質ガラスを適切な条件で加熱処理して得られるが、例えば、厚さ0.8mmに換算した可視光ヘーズ値が1.0%以下である結晶化ガラス等が、保護ガラス10として有用である。なお、ヘーズ値は、例えば、スガ試験機株式会社製のヘーズメーター「HZ-2」を用いて、CIEが規定する標準光源の規格であるC光源を用いて測定できる。
【0028】
保護ガラス10として用いられるガラスの一構成例は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを56~66%、Alを8~18%、NaOを9~17%、KOを1~11%、MgOを2~12%、CaOを0~5%、SrOを0~5%、BaOを0~5%、およびZrOを0~5%含む。
【0029】
また、保護ガラス10として用いられるガラスの一構成例は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを58~65%、Alを14~21%、NaOを12~19%、MgOを3~10%、KOを0.5~1.3%、ZrOを0.1~0.5%、およびTiOを0.0~0.1%含む。
【0030】
また、保護ガラス10として用いられるガラスの一構成例は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを55~65%、Alを12~22%、NaOを10~20%、KOを0~2%、MgOを1~9%、およびZrOを0~5%含む。
【0031】
また、保護ガラス10として用いられるガラスの一構成例は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを55~65%、Alを12~22%、NaOを10~20%、KOを0~2%、MgOを1~9%、ZrOを0~1%、およびTiOを0~1%含む。
【0032】
また、保護ガラス10として用いられるガラスの一構成例は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを60~70%、Alを9~19%、NaOを9~19%、KOを0~4%、MgOを3~6%、CaOを0~1%、およびZrOを0~1%含む。
【0033】
また、保護ガラス10として用いられるガラスの一構成例は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを45~70%、Bを1~9%、Alを15~25%、NaOを7~18%、KOを0~1%、MgOを0~5%、CaOを0~1%、およびTiOを0~1%含む。
【0034】
また、保護ガラス10として用いられるガラスの一構成例は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを45~70%、Bを1~9%、Alを15~25%、NaOを7~18%、KOを0~1%、MgOを0~5%、CaOを0~1%、およびSnOを0~1%含む。
【0035】
また、保護ガラス10として用いられるガラスの一構成例は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを50~80%、Alを1~30%、Bを0~6%、Pを0~6%、LiOを0~20%、NaOを0~20%、KOを0~10%、MgOを0~20%、CaOを0~20%、SrOを0~20%、BaOを0~15%、ZnOを0~10%、TiOを0~5%、およびZrOを0~8%含む。
【0036】
また、保護ガラス10として用いられるガラスの一構成例は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを65~75%、Alを1~5%、NaOを7~17%、KOを0~1%、MgOを3~6%、およびCaOを6~9%含む。
【0037】
さらに、保護ガラス10として用いられるガラスの一構成例は、酸化物基準の質量百分率表示で、SiOを65~75%、Alを3~10%、NaOを7~17%、KOを0~1%、MgOを3~6%、CaOを6~9%、および微量成分としてZrOを0~1%含む。
【0038】
上記した成分を有する本実施形態の保護ガラス10のガラスの組成の各成分の組成範囲、およびその他の任意成分について、以下に説明する。なお、各組成の含有量の単位はいずれも酸化物基準の質量百分率表示または質量ppm表示であり、それぞれ単に「%」「ppm」と表す。
【0039】
SiOは、ガラスの主成分である。SiOの含有量は、ガラスの耐候性を保ち、失透を抑制するため、好ましくは45%以上、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上である。
【0040】
一方、SiOの含有量は、溶解を容易にし、泡品質を良好とするために、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。
【0041】
Alは、ガラスの耐候性を向上させる必須成分である。本実施形態のガラスにおいて実用上必要な耐候性を維持するためには、Alの含有量は好ましくは7%以上、より好ましくは10%以上である。
【0042】
但し、光学特性を良好なものとし、泡品質を良好とするため、Alの含有量は30%以下が好ましく、より好ましくは23%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
【0043】
は、ガラス原料の溶融を促進し、機械的特性や耐候性を向上させる成分であるが、揮発による脈理(ream)の生成、炉壁の侵食等の不都合が生じないために、Bの含有量は、好ましくは6%以下、より好ましくは3%以下である。
【0044】
LiO、NaO、および、KOといったアルカリ金属酸化物は、ガラス原料の溶融を促進し、熱膨張、粘性等を調整するのに有用な成分である。
【0045】
NaOの含有量は、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上である。
【0046】
Oの含有量は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。
【0047】
また、LiOは、任意成分であるが、ガラス化を容易にし、原料に由来する不純物として含まれる鉄含有量を低く抑えるために、本実施形態の保護ガラス10はLiOを2%以下含有できる。
【0048】
さらに、これらアルカリ金属酸化物の合計含有量(LiO+NaO+KO)は、溶解時の清澄性を保持し、製造されるガラスの泡品質を保つために、好ましくは5%~20%、より好ましくは8%~15%である。
【0049】
MgO、CaO、SrO、およびBaOといったアルカリ土類金属酸化物は、ガラス原料の溶融を促進し、熱膨張、粘性等を調整するのに有用な成分である。
MgOは、ガラス溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する作用がある。また、比重を低減させ、保護ガラス10に疵をつきにくくする作用がある。また、ガラスの熱膨張係数を低く、失透を抑制するために、MgOの含有量は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下である。
【0050】
CaOは、ガラス原料の溶融を促進し、また粘性、熱膨張等を調整する成分である。上記の作用を得るためには、CaOの含有量は、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上である。また、失透を防ぎ、良好な透過性を得るため、CaOの含有量は好ましくは6%以下であり、より好ましくは4%以下である。
【0051】
SrOは、熱膨張係数の増大およびガラスの高温粘度を下げる効果がある。かかる効果を得るために、本実施形態の保護ガラス10はSrOを含有できる。但し、ガラスの熱膨張係数を低く抑えるため、SrOの含有量は、3%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
【0052】
BaOは、SrO同様に熱膨張係数の増大およびガラスの高温粘度を下げる効果がある。上記の効果を得るために、本実施形態の保護ガラス10はBaOを含有できる。但し、ガラスの熱膨張係数を低く抑えるため、BaOの含有量は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
【0053】
また、これらアルカリ土類金属酸化物の合計含有量(MgO+CaO+SrO+BaO)は、熱膨張係数を低く抑え、失透を抑制し、強度を維持するために、好ましくは1%~15%、より好ましくは3%~10%である。
【0054】
本実施形態の保護ガラス10の組成においては、ガラスの耐熱性および表面硬度の向上のために、任意成分としてZrOを好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下含有させてもよい。ZrOの含有量を10%以下とすることでガラスが失透しにくくなる。
【0055】
また、本実施形態の保護ガラス10は、清澄剤としてSOを含有してもよい。この場合、SO含有量は、質量百分率表示で0%超、0.5%以下が好ましい。0.4%以下がより好ましく、0.3%以下がさらに好ましく、0.25%以下がよりさらに好ましい。
【0056】
また、本実施形態の保護ガラス10は、酸化剤および清澄剤としてSb、SnOおよびAsのうちの一つ以上を含有してもよい。この場合、Sb、SnOまたはAsの含有量はそれぞれ、質量百分率表示で0~0.5%が好ましい。0.2%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0057】
また、本実施形態の保護ガラス10は、NiOを含有してもよい。NiOを含有する場合、NiOは、着色成分としても機能するので、NiOの含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、10ppm以下が好ましい。
【0058】
本実施形態の保護ガラス10は、Crを含有してもよい。Crを含有する場合、Crは、着色成分としても機能するので、Crの含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、10ppm以下が好ましい。
【0059】
本実施形態の保護ガラス10は、MnOを含有してもよい。MnOを含有する場合、MnOは、可視光を吸収する成分としても機能するので、MnOの含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、50ppm以下が好ましい。
【0060】
本実施形態の保護ガラス10は、TiOを含んでもよい。TiOを含有する場合、TiOは、可視光を吸収する成分としても機能するので、TiOの含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、1000ppm以下が好ましい。
【0061】
本実施形態の保護ガラス10は、CoO、VおよびCuOからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含んでもよい。これらの成分を含有する場合、可視光を吸収する成分としても機能し可視光透過率を低下させるので、前記成分の含有量は、上記したガラス組成の合量に対し、10ppm以下が好ましい。
【0062】
<化学強化処理>
化学強化処理は、ナトリウムを含むガラスを、特定の塩または塩基を含む、ガラス転移点以下の温度の溶融塩に浸漬させ、ナトリウムイオンをより原子半径の大きいカリウムイオンにイオン交換することによって行われる。また、リチウムを含むガラスを化学強化する場合は、リチウムイオンをより原子半径の大きいナトリウムイオンにイオンに交換することを含めて化学強化処理とする。さらに、化学強化処理は、ナトリウムとリチウムの両方を含むガラスの場合、ナトリウムイオンをカリウムイオンにイオン交換する処理と、リチウムイオンをナトリウムイオンに交換する処理、との2つの処理を含んでもよい。
【0063】
化学強化工程は、例えば、ナトリウムを含むガラスを、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、KCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOHおよびNaOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩又は塩基を含む無機塩に接触させてガラス中のNaイオンと前記無機塩中のKイオンとをイオン交換することにより、圧縮応力層をガラス表面に形成する工程である。
【0064】
化学強化処理によって得られる化学強化ガラスは、イオン交換の時間や温度、使用する塩、その他処理条件等を制御して、形成される応力プロファイル(縦軸を圧縮応力値(CS)とし、横軸を圧縮応力層深さ(DOL)とする)が変化する。例えば、リチウムイオンをナトリウムイオンにイオン交換するイオン交換処理と、ナトリウムイオンをカリウムイオンにイオン交換するイオン交換処理を1つのガラスに対して実施して得られた化学強化ガラスの応力値を測定した場合、その応力プロファイルは屈曲点を境として傾きの異なる屈曲したプロファイルを描く。つまり、ガラスに対してイオン交換する組合せを2組以上とし、ガラス中の2種以上のイオンを交換することで、表面圧縮応力値を大きくしつつ、圧縮応力層深さを大きくでき、高強度の化学強化ガラスが得られる。イオン交換の方法としては、2種類のイオンを含む溶融塩にガラスを浸漬処理する方法や、異なる2種以上の溶融塩を用いて多段階で浸漬処理をする方法がある。このように、イオン交換する組合せを2組以上与えるプロセスを経ることで、上記した屈曲点が存在する応力プロファイルが得られる。
【0065】
ガラスの表面をイオン交換し、圧縮応力が残留する表面層が形成されると、ガラスの表面に圧縮応力が残留し、ガラスの強度が向上する。得られる強化ガラスは、ガラスの板厚や組成によって変化し、ガラスの用途に応じてより的確に強化されるよう工夫するとよい。
【0066】
化学強化処理によって得られた化学強化ガラスの、アルカリの溶出に起因する変質(ヤケ)を防止する観点から、化学強化処理温度を300~500℃の範囲で行うとよい。また、溶融塩に硫酸水素塩等のアルカリの溶出防止効果のある塩を加えてもよい。
【0067】
本実施の形態に係る化学強化ガラスの板厚tは、軽量化に寄与するため、3.5mm以下であればよく、2.5mm以下が好ましい。より好ましくは、板厚tは2.0mm以下であり、1.7mm以下がさらに好ましく、1.5mm以下がよりさらに好ましく、1.3mm以下がなおさらに好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。また、板厚tが0.5mm未満のガラスは、割れやすいため、板厚tは0.5mm以上が好ましい。
【0068】
本実施の形態に係る化学強化ガラスは、イオン交換処理によって表面に圧縮応力層を備え、表面圧縮応力値が高いとガラスが湾曲するモードにより破壊されにくくなる。そのため、化学強化ガラスの表面圧縮応力値は200MPa以上が好ましく、順に、400MPa以上、600MPa以上、800MPa以上、900MPa以上、1000MPa以上、1100MPa以上がより好ましい。
【0069】
また、化学強化ガラスの使用時に圧縮応力層の深さ(DOL)の値を超える深さの傷がつくと化学強化ガラスの破壊を生じやすい。そのため、化学強化ガラスのDOLは深い方が好ましく、10μm以上が好ましく、順に、40μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、100μm以上、110μm以上、120μm以上、130μm以上、140μm以上、150μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、550μm以上がより好ましい。
【0070】
とくに、本実施形態の保護ガラスに用いられる化学強化ガラスにおいて、板厚tとDOLとの組み合わせとしては、板厚tが1.5mm~3.5mmの範囲で、DOLが200μm~580μmの範囲であると、屋外の環境下においても破壊しにくく好ましい。板厚tとDOLとの組み合わせは、板厚tが1.8mm~3.5mmの範囲でDOLが250μm~580μmの範囲が好ましく、板厚tが2.0mm~3.5mmの範囲でDOLが300μm~580μmの範囲がより好ましい。
【0071】
また、本実施形態の保護ガラスに用いられる化学強化ガラスにおいて、上記の板厚tとDOLとの関係に加え、表面圧縮応力値は700MPa以上が好ましく、800Ma以上であればより好ましく、900MPa以上であればさらに好ましい。
【0072】
さらに、本実施形態の保護ガラスに用いられる化学強化ガラスにおいて、上記の板厚tとDOLと表面圧縮応力値との関係に加え、表面から100μm深さの圧縮応力値は100MPa以上が好ましく、105MPa以上がより好ましい。
【0073】
また、強化ガラスが物理強化ガラスである場合も同様に、表面圧縮応力値および圧縮応力の深さは、上記範囲が好ましい。ガラスに対して物理強化を行う際には、ガラス表面を急冷し、ガラス内部はゆっくりと温度が下がるように温度条件を設定して(物理)強化ガラスを得る。この際、ガラス表面は伸びた状態で室温に戻り、ガラス内部はゆっくりと縮むために、表面には圧縮応力層が発生し、内部には引っ張り応力が発生する。物理強化ガラスの特徴は、表面の圧縮応力は小さいが、深くまで圧縮応力が存在することである。例えば、表面圧縮応力値は200MPa程度で、圧縮応力層の深さは100μm以上である。また、例えば、表面圧縮応力値は100~150MPa程度で、圧縮応力層の深さは、ガラスの板厚の1/5~1/6としてもよい。
【0074】
化学強化ガラスは、縦軸CS、横軸DOLの応力プロファイルを与えたときに、圧縮応力層を形成する領域に少なくとも1つの屈曲点を有するとよい。化学強化ガラスが、この屈曲点を境として傾きの異なる応力分布曲線を有することで、圧縮応力層が深くまで入り、ガラスが割れ難くなる点から好ましく、飛び石等により保護ガラスの割れを防ぐ効果を奏する。
【0075】
なお、得られた化学強化ガラス、物理強化ガラスの強度については、前述の飛び石による評価指標を援用できる。具体的には、SAE J400、JASO M104、ISO20567-1に基づき、評価できる。例えば、JASO M104の条件に基づき、放射物として9~15mmの花崗岩(玉砂利)を、0.1MPa、0.2MPaまたは0.4MPaで(ドーム形状も含む)強化ガラスに対して射出させたときの割れ状態を確認して評価できる。
【0076】
保護ガラス10の、表面粗さ(Ra)は適宜設定できる。例えば、保護ガラス10の表面粗さは、100nm以下が好ましく、より好ましくは70nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。
【0077】
また、保護ガラス10は保護ガラス自身が振動するように、振動子40が設置される構造でもよい(図4(a)及び図4(b)参照)。保護ガラス10が振動子40を備える場合、保護部材1は、センサ20を備えてもよく、備えなくてもよい。振動子40は、保護ガラス10に直接取り付けられてもよいし、支持部2に取り付けられてもよい。また保護ガラス10は、振動周波数を検出して振動を抑制する振動抑制機能を有してもよく、それによって保護ガラス10の振動の減衰を防ぎ、所定の振動数を維持できる。振動子40は、圧電素子のほか、電磁アクチュエーター、ピエゾ素子、水晶振動子、セラミック発振子、磁歪素子等、安定した振動数で発振する素子であればよい。このように、振動子40が振動することで、保護ガラスがスピーカーとして機能し、車に搭載された場合は走行時の振動を抑制できる。さらに、後述するように、保護ガラス10に付着した汚れも除去できる。
【0078】
<センサ20>
収容されるセンサ20は、ミリ波、超音波、レーザー、可視光、赤外光、LIDAR、もしくはそれらを複合的に用いた検知機能または感知機能を有し、光検出方式、超音波方式、電波方式、レーザー方式、放射線方式、画像判別方式などの非接触式センサとして使用できる。例えば、センサ20が車に搭載された場合、検知機能を用いて該車に接近する隣接車両や走行方向に存在する障害物との距離を測定できる。また、センサ20が発信した信号に基づき、外部に設置された通信設備を介して外部設置機構を駆動してもよい。例えば、該通信設備がフロントガラスに設置されたトランスデューサであれば、該トランスデューサを介してワイパーを駆動させたり、ヒータを作動させたりもできる。
【0079】
センサ20は、超音波センサでもよい。超音波は、距離の測定のほか、撥水や窓の清掃にも利用されるため、常に安定した視界や計器の表示が得られる。とくに、車にセンサ20を搭載させた場合、その特性を活かして防曇や融雪にも適用できる。
【0080】
また、センサ20が超音波センサである場合、送受信する超音波の周波数帯が高いほど超音波が減衰することが知られている。そのため、実際、1KHz~20KHz、または40KHz~60KHzのような、100KHzより低い周波数帯の超音波が利用される。
【0081】
<カメラ30>
カメラ30は、その用途に応じて1個または複数個存在する。例えば車や電車といった移動手段、ドローンのような移動機器にカメラ30を搭載する場合、至近距離監視用、前方監視用、後方監視用と用途別に複数個設置してもよい。またセンサ20による検知機能または感知機能と併せて使用することで、接近する人や障害物の画像や動画も取得できる。
【0082】
<実装部5>
図2は、本実施形態におけるセンサ構成の一例を示す側面図である。実装部5は、センサやカメラ30、これらを連結する連結部から構成される。実装部5の給電は、有線による給電(図3(a)参照)でも、センサ端末を用いた外部通信手段による無線給電でもよい(図3(b)参照)。実装部5の給電機構によって導通をとることで、複数のセンサを実装できる。センサやカメラ30を連結する連結部は、リード線を用いてもよいし、ベース部材15に導電性の材料を用いて形成してもよい。
【0083】
実装部はベース部材15の上に設置される。ベース部材15の材質はシリコンやガラスのほか、鉄やアルミニウムなどの金属でもよく、ベース部材15と実装部の間に導電性の材料を敷設してもよい。例えば、超音波センサを搭載する場合、振動子は例えば、超音波発生素子50を有し、超音波発生素子50は外部に露出しないように、実装部5内に取り付けられるとよい。この場合、振動子はアルミニウム、ガラス、ポリイミド、シリコン、ポリカーボネートなどの材料を使用できる。
【0084】
<駆動原理>
図2に示すような超音波発生素子50は、一般的に、高周波電圧を圧電素子に印加して振動する原理を利用する。圧電素子に高周波電圧を印加して振動することで発生した超音波が、目標となる測定対象物に向けて送信され、測定対象物で反射された反射波として受信されることで、例えば、接近する隣接車両や走行方向に存在する障害物との距離を測定できる。超音波発生素子50は、間欠的にパルス信号を送信する送信部と、その反射波を受信する受信部を備えることでセンサとして機能する。
【0085】
また、超音波発生素子50は、電源から発熱体に超音波周期で変化する電流を流して発熱体を駆動することで、発熱体による発熱量が電流の周波数に追従して周期的に変化する原理を利用してもよい。発熱体で発熱した周期的な熱は、振動子に伝達され、振動子の温度が周期的に変化する。この温度変化により、振動子がその温度に応じて厚さ方向に周期的に熱膨張および収縮を繰り返して振動し、その振動により、振動子の振動面から超音波が発生する。発熱体は、アルミニウムなどのジュール熱を発生する電気抵抗体を用いてもよいし、ペルチェ素子を用いてもよい。
【0086】
また、超音波発生素子50は、圧電式振動検出素子を備える受信部を用いて(障害物等からの)反射波を検出できる。例えば、圧電式振動検出素子は、SOI基板上にMEMS技術によって作製でき、圧電体薄膜を下面電極および上面電極で挟み込むように積層して形成される。圧電体薄膜は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)であり、圧電式振動検出素子は近接して設置された振動部の変位を電気信号に変換して、超音波を検出する。
【0087】
圧電式振動検出素子は、回路素子に出力された電気信号に基づき演算処理を行い、信号の増幅およびノイズの除去を行うことができ、送信部から送信した超音波と検出した超音波の位相差、時間差を比較する。振動子は、圧電素子のほか、電磁アクチュエーター、ピエゾ素子、水晶振動子、セラミック発振子、磁歪素子等、振動数を安定して発振する素子であればよい。
【0088】
さらに、相乗的に得られる効果として、超音波発生素子50をセンサとして搭載し、保護ガラスに超音波を照射することで、保護ガラスに付着した水滴や汚れを除去できる。
【0089】
上記により、距離の検出や汚れの除去といった多様なセンサの機能と、高い剛性を備える化学強化ガラスの両方の性質を併せ持つ、保護部材を備えるセンサモジュールが提供される。
【実施例
【0090】
以下、具体的な実施例を基に、本発明を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
<実施例1~5及び比較例1~4>
フロート法で製造されたアルミノシリケートガラスからなる厚さ0.5mmの大判サイズの板ガラスA~Eを準備した。このアルミノシリケートガラスは、酸化物基準の質量百分率表示で以下の組成であった。
ガラスA:SiO 60.9%、Al 12.8%、NaO 12.2%、KO 5.9%、MgO 6.7%、CaO 0.1%、SrO 0.2%、BaO 0.2%、及びZrO 0.1%
ガラスB:SiO 60.9%、Al 16.8%、NaO 15.6%、MgO 5.3%、KO 1.2%、ZrO 0.3%、及びTiO 0.1%
ガラスC:SiO 71.6%、Al 1.9%、NaO 13.4%、KO 0.3%、MgO 4.7%、CaO 7.8%、及びZrO 0.2%
ガラスD:SiO 59.9%、B 7.7%、Al 17.2%、MgO 3.3%、CaO 4.1%、SrO 7.7%、及びBaO 0.1%
ガラスE:SiO 69.6%、Al 12.6%、LiO 3.9、NaO 5.4%、KO 1.6%、MgO 4.7%、CaO 0.2%、及びZrO 2.0%
【0092】
続いて、ガラスA~Eに対して以下に示す(1)板ガラス切断加工工程、(2)切削工程、(3)研磨工程、(4-1)化学強化工程又は(4-2)物理強化工程、及び、(5)貼合工程を経て、実施例1~5及び比較例1~3の保護部材を製造した。各例において用いた硝材は、表1に示す通りである。なお、ガラスの製造時にガラスを引っ張る速さを調整すること、及び必要に応じて研磨やエッチングを行うことで、所望の板厚のガラス板を製造した。
また、ガラスに変えて樹脂を用いて比較例4の保護部材を製造した。
【0093】
(1)板ガラス切断加工工程
この板ガラスを所定の大きさとなるようにダイヤモンドブレードを用いて切断した。
【0094】
(2)切削工程
続いて、切断したガラスの端面の切削加工を行った。
【0095】
(3)研磨工程
さらに、切削加工を行ったガラスに対して鏡面研磨を行った。これにより、主表面の表面粗さRaが100nm以下のガラスを形成した。
【0096】
(4-1)化学強化工程
(実施例1~3)
硝酸カリウム(KNO)の溶融塩を430℃まで加熱した後、該溶融塩に研磨工程を施したガラスを実施例1及び3では5時間、実施例2では7時間浸漬して化学強化処理を行った。化学強化処理した後、ガラスを50℃~90℃のイオン交換水で2回洗浄し、室温のイオン交換水で流水洗浄し、60℃で2時間乾燥した。
(実施例4)
実施例4は、化学強化処理を2段階で行った。具体的には、研磨工程を施したガラスEを450℃に加熱された100%のNaNOからなる溶融塩に2.5時間浸漬させ、洗浄後、425℃に加熱された100%のKNOからなる溶融塩に1.5時間浸漬させ、洗浄し、化学強化ガラスを得た。これらの洗浄は、実施例1~3と同様の方法で行った。
(4-2)物理強化工程
(実施例5)
研磨工程を施したガラスCを急冷開始温度(軟化点付近)で電気炉内に5分間保持した後、電気炉外へ取り出して大気中で放冷することで物理強化を行った。
【0097】
(5)貼合工程
化学強化工程または物理強化工程の後、得られた板ガラスを接着層でガラス製の円筒状の支持部と貼合することで、実施例1~5及び比較例1~4の保護部材を作製した。
【0098】
(6)評価工程
各例の保護部材(ガラス又は樹脂)の評価は以下に示す分析方法により行った。
保護部材の透過率の評価では、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 U-4100)を用いて300nm~1000nmの波長領域の透過スペクトルを測定した。なお、400nm~800nmの波長域での最小値Tminを算出した。
【0099】
強化ガラスの表面圧縮応力値(CS)および圧縮応力層深さ(DOL)は有限会社折原製作所のガラス表面応力計FSM‐6000またはSLP-1000を用いて測定した。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に、各例の保護部材に対して剛性、光透過性、対候性、超音波照射による水滴の除去、超音波照射によるガラスの割れ、耐熱性を評価した評価結果を記載する。例えば剛性評価であれば、〇は該保護部材を備えるセンサモジュールを屋外に設置した場合に必要な剛性を十分有することを示し、△は一部の結果において必要な剛性を満たさないことを示す。×は全ての場合において必要な剛性を満たさないことを示す。
【0102】
1.剛性評価(飛び石試験結果)
各例の保護部材に対して剛性評価(飛び石試験)を実施した。センサを保護し、かつ内部のセンサが一定のセンシング性能を保つためには、一定の力をかけた場合の、保護材料の変形量が小さい必要がある。剛性評価は、JASO M104の条件に基づき行った。具体的には、放射物として9~15mmの花崗岩(玉砂利)を、放射距離350mmで射出回数を3回、90°の角度で放射した。当該試験は、射出圧力を変えて行い、射出圧力0.1MPaで割れたものを×、射出圧力0.1MPaで割れず、射出圧力0.2MPaで割れたものを△、射出圧力0.2MPaで割れず、射出圧力0.4MPaで割れたものを〇、射出圧力0.4MPaで割れなかったものを◎、として剛性評価した。結果を表1に示す。
【0103】
2.割れ評価
また、保護材料に変形を与えた場合に保護材料が破壊しないことも必要である。島津製作所製のオートグラフにより、上リング10mm、下リング30mmの治具を用いて、各例の保護部材に対してリングオンリング試験を行った。ここで、各例の保護部材を50mm×50mm×1mmのサンプルに加工し、引張応力をかけた時に、600MPa以上で割れたものを〇、600MPa未満で割れたものを×とした。また、樹脂(比較例4)は破壊しなかったが、変形量が大きく、力がかかった場合に内部のセンサと接触する恐れがあったため、×と評価した。その結果、強化処理を施した実施例1~実施例5のガラスは、センサを保護するために必要な剛性、割れ耐性を有することがわかったが、強化処理を施していないガラス(比較例1~3)および樹脂(比較例4)では、十分な剛性、割れ耐性を有していないことがわかった。
【0104】
3.光透過率
各例の保護部材に対して400nm~800nmの波長領域の透過スペクトルを測定した。各例の保護部材を加工して得られた50mm×50mm×1mmのサンプルにてTminが85%以上のものを〇、それ未満のものを×として評価した。その結果、強化処理の有無にかかわらず、各ガラスおよび樹脂カバーで好適な結果を示すことを確認できた。
【0105】
4.耐候性
各例の保護部材を備えるセンサモジュールを屋外に設置した際のヤケ、ヒートショックに対する耐性(耐候性)を以下の試験で評価した。
耐候性の評価は各例の保護部材を60℃、湿度80%、100時間保持する試験、及びその後波長300nm以下のUV光を10時間照射する試験の両方により行った。これらの両方の試験を経た後に、見た目で表面がうっすらと白く曇る(ヤケる)ものは△とし、変化のなかったものを〇、変形変色したものを×とした。結果、樹脂カバー(比較例4)を除く各ガラスで好適な結果を示すことを確認できた。
【0106】
5.水滴除去
各例の保護部材内に超音波振動子を配置して超音波を照射し、保護部材に付着した水滴を除去できる(評価:〇)か否(評価:×)かの評価を行った。結果、全ての保護部材で水滴を除去する効果が確認できたが、強化していないガラス(比較例1~3)で割れが生じた。一方で、強化されたガラス(実施例1~5)において割れは生じなかった。
【0107】
6.耐熱評価
各例の保護部材に透明ヒータを埋め込み、昇温した状態で一定時間経過した後に外観評価を行った。具体的には、100℃で、1時間保護部材を保持した後に、著しい変形や変色の有無を目視で観察した。変形変色のあったものは×、無かったものは〇としている。
結果、ガラスを用いた実施例1~5、比較例1~3の各例の保護部材が好適な結果を示すことがわかった。
【0108】
上記1.~6.による評価結果より総合的に判断し、保護部材の性能はガラスの組成に起因する強化処理後の圧縮応力値(CS)および圧縮応力層深さ(DOL)に強く依存することがわかった。また、得られた評価結果をもとに、保護ガラスのCSおよびDOLは、DOLが10μm以上かつCSが100MPa以上であることが好ましく、DOLが40μm以上かつCSが600MPa以上であれば、より好ましいことがわかった。
【0109】
<実施例6~10>
ガラスEに対して(1)板ガラス切断加工工程、(2)切削工程、(3)研磨工程、(4-1)化学強化工程、及び、(5)貼合工程を経て、実施例6~10の保護部材を製造し、上記1.~6.の評価を行った。
実施例6、7、及び10は、化学強化処理を2段階で行った。具体的には、研磨工程後のガラスEを100%のNaNOからなる溶融塩に浸漬させ、洗浄後、100%のKNOからなる溶融塩に浸漬させ、洗浄して、化学強化ガラスを得た。処理温度及び時間は表2に示す通りである。
実施例8、9は、化学強化処理を1段階で行った。具体的には、研磨工程後のガラスEを100%のNaNOからなる溶融塩に浸漬させ、洗浄して化学強化ガラスを得た。処理温度及び時間は表2に示す通りである。
【0110】
<実施例11~13>
ガラスBに対して(1)板ガラス切断加工工程、(2)切削工程、(3)研磨工程、(4-1)化学強化工程、及び、(5)貼合工程を経て、実施例11~13の保護部材を製造し、上記1.~6.の評価を行った。
化学強化処理は1段階で行った。具体的には、研磨工程後のガラスBを、KNOにNaNOを所定の重量比で添加した溶融塩に浸漬させ、洗浄して、化学強化ガラスを得た。溶融塩中のKNOとNaNOの重量比、処理温度及び時間は、表2に示す通りである。
【0111】
【表2】
【0112】
表2の結果より、実施例6~13で得られた保護部材(化学強化ガラス)は、剛性評価(飛び石試験結果)では少なくとも、JASO M104に基づく射出圧力0.1MPaでは、割れが発生しなかった。また、光透過率、耐光性、割れ評価、および、耐熱評価の各評価では、いずれも、所望の評価結果が得られた。
【0113】
<実施例14~16>
板厚6mmの平板状のガラスEに対して、切削加工を行い、内側の半径18mm(内径36mm)、外側の半径20mm(外径40mm)、板厚(肉厚)2mmのドーム形状のガラスを形成した。切削加工後のガラス板は、表面を研磨し、凸面と凹面の表面粗さRaを8nm、また、端面の表面粗さRaを0.15μmとした。このとき、ドーム形状のガラス板は、横幅25mm、高さ5.3mmの一部半球形のガラスとした。その後、一部半球形のガラスを、100%のNaNOからなる溶融塩に浸漬させ、洗浄後、100%のKNOからなる溶融塩に浸漬させ、洗浄して、実施例14、15の保護部材(一部半球形の化学強化ガラス)を得た。また、板厚6mmの平板状のガラスEを用いて、内側の半径16.8mm(内径33.6mm)、外側の半径20mm(外径40mm)、板厚(肉厚)3.2mmのドーム形状のガラスを形成したこと以外は同様にして、実施例16の保護部材(一部半球形の化学強化ガラス)を得た。化学強化の処理温度及び時間は表3に示す通りである。得られた実施例14~16の保護部材に対して、剛性評価を行った。
【0114】
【表3】
【0115】
表3の結果より、実施例14~16で得られた一部半球形の化学強化ガラス(保護部材)は、剛性評価(飛び石試験結果)では少なくとも、JASO M104に基づく射出圧力0.2MPaでも割れが発生せず、高い剛性を有した。
【0116】
本実施形態によれば、剛性、耐傷性、及び耐候性に優れ、屋外用途に適したセンサモジュールを提供することが可能となる。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0118】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2017年7月5日付けで出願された日本特許出願(特願2017-132137)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0119】
1 保護部材
2 支持部
5 実装部
10 保護ガラス
15 ベース部材
20 センサ
25 電源
30 カメラ
40 振動子
50 超音波発生素子
60 透明ヒータ
図1
図2
図3
図4