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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】AEI型ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
C01B39/48
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022209587
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2021092716の分割
【原出願日】2016-08-09
(65)【公開番号】P2023024789
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2015159852
(32)【優先日】2015-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 智也
(72)【発明者】
【氏名】青山 英和
(72)【発明者】
【氏名】三島 崇禎
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104140350(CN,A)
【文献】特開2017-081809(JP,A)
【文献】特表平09-501646(JP,A)
【文献】特表2010-514662(JP,A)
【文献】特表2016-538217(JP,A)
【文献】特開2003-114067(JP,A)
【文献】今坂怜史,高シリカ型ゼオライト膜の合成と分離プロセスへの応用,関西大学審査学位論文,2018年09月20日,<URL:http://kansai-u.repo.nii.ac.jp/records/13552>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/00 - 39/54
B01J 29/00 - 29/90
B01J 20/18
CAplus/REGISTRY(STN)
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゆるみ嵩密度が0.1g/cm以上0.5g/cm以下であり、アルミナに対するシリカのモル比(SiO /Al 比)が15以上100以下であるAEI型ゼオライト。
【請求項2】
酸量が1mmol/g以上2mmol/g以下である請求項1に記載のAEI型ゼオライト。
【請求項3】
平均結晶径が0.5μm以上2μm以下である請求項1又は2に記載のAEI型ゼオライト。
【請求項4】
ケイ素に対するシラノール量のモル比が0.5×10-2以下である請求項1又は2に記載のAEI型ゼオライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AEI型ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AEI型ゼオライトは、人工的に合成された結晶性アルミノシリケートである(特許文献1)。AEI型ゼオライトの製造方法として以下の方法が開示されている。
【0003】
特許文献1では、珪酸ソーダ、及びY型ゼオライトを含む混合物を結晶化させることにより、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al比」ともいう。)が10を超えるAEI型ゼオライトの製造方法が開示されている。
【0004】
非特許文献1では、珪酸ソーダ、及びY型ゼオライトを含む混合物を結晶化するAEI型ゼオライトの製造方法が開示されている。
【0005】
非特許文献2では、珪酸ナトリウム、及び、Y型ゼオライトの構造を有しSiO/Al比が高いゼオライトであるUSY型ゼオライトを含む混合物を結晶化する、AEI型ゼオライトの製造方法が開示されている。当該AEI型ゼオライトのSiO/Al比は18.2及び14.8であった。
【0006】
特許文献2では、シリカ源としてテトラエチルオルトシリケート、硝酸アルミニウム、及び、フッ化水素酸を含む混合物を結晶化するSiO/Al比が100を超えるAEI型ゼオライトの製造方法が開示されている。当該AEI型ゼオライトのSiO/Al比は532及び466であった。
【0007】
非特許文献4では、コロイダルシリカ、Y型ゼオライト、及び1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウムカチオンを含む原料を結晶化するSSZ-39の製造方法が開示されている。
【0008】
非特許文献5では、USY型ゼオライト、及び1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウムカチオンを含む原料を結晶化するSSZ-39の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許5,958,370号
【文献】米国特許公開2005/0197519号
【非特許文献】
【0010】
【文献】J.Am.Chem.Soc.,122(2000)p263
【文献】Chem.Commun.,48(2012)p8264
【文献】Chemistry Letters,43(2014)p302
【文献】第30回ゼオライト研究発表会、A5(2014年)
【文献】Chem. Commun.,51(2015)p11030
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これまで報告されているSiO/Al比が100以下のAEI型ゼオライトの製造方法は全て、Y型構造を有する結晶性アルミノシリケートをAEI型ゼオライトに構造転換させる製造方法であった。
【0012】
また、特許文献2はY型構造を有する結晶性アルミノシリケートを使用しない。しかしながら、得られるAEI型ゼオライトはSiO/Al比が100を超える高いものしか得られなかった。さらに、特許文献2の製造方法はAEI型ゼオライトを製造するためにフッ素を必須とする。フッ素は腐食性が高いため、これを使用するAEI型ゼオライトの製造方法においては、特殊な製造装置が必要となる。これに加え、AEI型ゼオライト製造後の排水等にフッ素が含まれるため、これを処理するための追加の工程が必要となる。そのため、特許文献2のAEI型ゼオライトの製造方法を工業的に適用する場合、製造コストが著しく高くなる。
【0013】
そのため、現実的なAEI型ゼオライトの製造方法、特にSiO/Al比が100以下のAEI型ゼオライトの製造方法は、アルミナ源はY型構造を有する結晶性アルミノシリケートに限定されていた。結晶性アルミノシリケートはコストが高い。そのため、結晶性アルミノシリケートを用いるAEI型ゼオライトの製造方法は工業的な製造方法としての適用が困難であった。
【0014】
これらの課題に鑑み、本発明はY型構造を有する結晶性アルミノシリケートの構造転換によらず、なおかつ、フッ素やリンを使用しないでAEI型ゼオライトが得られる製造方法を提供することを目的とする。更には、本発明は、製造コストを抑制したSiO/Al比が100以下のAEI型ゼオライトの工業的な製造方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、AEI型ゼオライトの製造方法について検討した。その結果、特定の構造指向剤とアルミナ源とを含む特定の組成物を結晶化させることで、Y型構造を有する結晶性アルミノシリケートの構造転換によらず、なおかつ、フッ素を使用することなくAEI型ゼオライトを見出した。
【0016】
すなわち、本発明はアルミナ源、シリカ源、構造指向剤、ナトリウム源及び水を含有し、アルミナ源及びシリカ源の合計重量に対する結晶性アルミノシリケートの重量割合が0重量%以上10重量%以下である組成物を結晶化し、なおかつ、前記組成物のシリカに対する水酸化物イオンのモル比が0.45以上であること、又は、結晶化時間が80時間以上であること、の少なくともいずれかを満たす結晶化工程、を有するAEI型ゼオライトの製造方法である。
【0017】
以下、本発明のAEI型ゼオライトの製造方法について説明する。
【0018】
本発明はAEI型ゼオライトの製造方法に係る。AEI型ゼオライトとは、AEI構造を有するゼオライトであり、特にAEI構造を有するアルミノシリケートである。
【0019】
アルミノシリケートは、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰返しからなる構造である。
【0020】
AEI構造とは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)のStructure Commissionが定めているIUPAC構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で、AEI型となる構造である。
【0021】
AEI型ゼオライトの結晶相は、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition,p.483(2007)に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターン、又は、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-struture.org/databases/のZeolite Framework TypesのAEIに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、これを同定することができる。
【0022】
本発明の製造方法により得られるAEI型ゼオライトとして、SSZ-39を挙げることができる。さらに、本発明の製造方法はSiO/Al比が100以下のAEI型ゼオライト、更にはSiO/Al比が50以下のAEI型ゼオライトの製造方法として適している。
【0023】
本発明の製造方法は、アルミナ源、シリカ源、構造指向剤、ナトリウム源及び水を含有し、アルミナ源及びシリカ源の合計重量に対する結晶性アルミノシリケートの重量割合が10重量%以下である組成物を結晶化する結晶化工程を有する。結晶化工程においてアルミナ源、シリカ源、構造指向剤、ナトリウム源及び水を含有する組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)が結晶化し、AEI型ゼオライトが得られる。
【0024】
アルミナ源はアルミニウム(Al)を含む化合物である。ゼオライトを製造するためのアルミナ源として、一般的に、アルミニウムイソプロポキシド、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、アルミナゾル、無定形アルミノシリケート、結晶性アルミノシリケートなどが知られている。人工的に合成されるゼオライトが結晶化できるか否かは、アルミナ源として使用するアルミニウム化合物の種類に大きく依存する。目的とする構造を有するゼオライトを得るためのアルミナ源は実質的に限られており、原料組成物の組成が同じであったとしても、アルミナ源の種類によっては、目的とする構造のゼオライトが得られない。AEI型ゼオライトは人工的に合成された結晶性アルミノシリケートである。SiO/Al比が100以下のAEI型ゼオライトの製造方法は、アルミナ源に含まれる結晶性ゼオライトの構造ユニットを再構築する方法、いわゆるゼオライトの構造転換による製造方法、具体的にはY型構造を有する結晶性アルミノシリケートの構造転換による製造方法のみであった。Y型構造を有する結晶性アルミノシリケートとは、構造コードでFAU型となる構造を有し、SiO/Al比が3を超える結晶性アルミノシリケートであり、具体的にはY型ゼオライト、USY型ゼオライト、ZSM-3、ZSM-20及びLZ-210からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0025】
これに対し、本願発明の製造方法では、Y型構造を有する結晶性アルミノシリケートの構造転換によらずにAEI型ゼオライトが得られ、特にSiO/Al比が100以下のAEI型ゼオライトが得られる。そのため、アルミナ源はアルミニウムを含む化合物であって、Y型構造を有する結晶性アルミノシリケート以外であればよい。さらに、本発明の製造方法においては、結晶性アルミノシリケートの構造転換によらずにAEI型ゼオライトを得ることが好ましいため、原料組成物は、アルミナ源及びシリカ源の合計重量に対する結晶性アルミノシリケートの重量割合が10重量%以下であり、更には、アルミナ源及びシリカ源の合計重量に対するFAU型となる構造を有する結晶性アルミノシリケートの重量割合が10重量%以下であることが好ましい。更には、原料組成物は、アルミナ源及びシリカ源の合計重量に対するY型構造を有する結晶性アルミノシリケートの重量割合は10重量%以下、更には5重量%以下、また更には1重量%以下であることが好ましく、実質的に、Y型構造を有する結晶性アルミノシリケートを含まないことが好ましい。
【0026】
アルミナ源は非晶質のアルミニウム化合物であることが好ましい。これにより、結晶性アルミノシリケートをアルミナ源として使用するAEI型ゼオライトの製造方法と比べ、本発明の製造方法はより工業的に適用しやすくなる。ここで、非晶質のアルミニウム化合物とはXRDにおいて規則性を有するピークを有さないものであり、幅の広いハローパターンを示すものを挙げることができる。
【0027】
アルミナ源は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、無定形アルミノシリケート、Y型構造以外の構造を有する結晶性アルミノシリケート、金属アルミニウム、擬ベーマイト、アルミナゾル、及びアルミニウムアルコキシドからなる群の少なくとも1種、更には酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、アルミナゾル、及び無定形アルミノシリケートからなる群の少なくとも1種、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、無定形アルミノシリケート、擬ベーマイト、アルミナゾル、及びアルミニウムアルコキシドからなる群の少なくとも1種、であることが好ましく、硫酸アルミニウム又は無定形アルミノシリケートの少なくともいずれかであることがより好ましい。これにより、Y型構造を有する結晶性アルミノシリケートの構造転換によらずAEI型ゼオライトを結晶化することができることはもちろん、結晶性アルミノシリケートの構造転換によらずAEI型ゼオライトを結晶化することができる。アルミナ源としての無定形アルミノシリケートはシリカ含有率が43重量%超(ケイ素含有率として20重量%超)であることが好ましく、SiO/Al比が1.4以上2000以下、更には1.4以上100以下、また更には1.4以上50以下の無定形アルミノシリケートを挙げることができる。
【0028】
原料組成物は、Y型構造を有する結晶性アルミノシリケート以外の結晶性アルミノシリケートを含んでいてもよい。しかしながら、原料組成物中の結晶性アルミノシリケートが多くなると、ゼオライト転換によるAEI型ゼオライトの生成が支配的となる。そのため、原料組成物が多量の結晶性アルミノシリケートを含むことは好ましくない。一方、少量の結晶性アルミノシリケートは種晶として機能し、これはAEI型ゼオライトの核発生を促進させる。そのため、原料組成物は種晶を含んでいてもよく、酸化物換算した原料組成物中のSi及びAlの合計重量に対する、酸化物換算した原料組成物中の結晶性アルミノシリケート中のSi及びAlの重量割合(以下、「(Si-Al)Cry/(Si-Al)Total」ともいう。)0重量%以上10重量%以下であり、0重量%以上5重量%以下であることが好ましい。原料組成物が結晶性アルミノシリケートを含む場合、0重量%超10重量%以下、更には3重量%以上5重量%以下、また更には4.1重量%以上4.6重量%以下であることが挙げられる。
【0029】
なお、原料組成物中の酸化物換算したSi及びAlの合計重量は、原料組成物中のSi及びAlを測定し、それぞれSiO及びAlに換算し、その合計重量とすればよい。同様に、原料組成物中の結晶性アルミノシリケート中のSi及びAlの重量は、結晶性アルミノシリケートのSi及びAlを測定し、それぞれSiO及びAlに換算し、その合計重量とすればよい。
【0030】
原料組成物に含まれる結晶性アルミノシリケートはY型構造以外の構造を有する結晶性アルミノシリケートであり、更にはY型ゼオライト、USY型ゼオライト、ZSM-3、ZSM-20及びLZ-210以外の結晶性アルミノシリケートを挙げることができる。これにより、結晶性アルミノシリケートが存在してもY型ゼオライトの構造転換を生じさせることなく、主として非晶質のアルミニウム化合物の結晶化によりAEI型ゼオライトを製造することができる。さらに、原料組成物が結晶性アルミノシリケートを含む場合、当該結晶性アルミノシリケートはAEI型ゼオライト、CHA型ゼオライト、KFI型ゼオライト及びLEV型ゼオライトからなる群の少なくとも1種であり、AEI型ゼオライト又はCHA型ゼオライトの少なくともいずれかであることが好ましく、更にはCHA型ゼオライトであることが好ましい。原料組成物が少量のCHA型ゼオライトを含むことによって、ANA型ゼオライト等のAEI型ゼオライト以外の結晶性アルミノシリケートの生成がより一層抑制される傾向がある。
【0031】
原料組成物が含有する結晶性アルミノシリケートは平均粒径が0.5μm以上5μm以下、更には0.5μm以上4μm以下、また更には0.85μm以上4μm以下を挙げることができる。
【0032】
シリカ源はケイ素(Si)を含む化合物である。シリカ源は、シリカゾル、ヒュームドシリカ、沈降法シリカ、無定形ケイ酸、及び、無定形アルミノシリケートからなる群の少なくとも1種であることが好ましく、無定形ケイ酸又は無定形アルミノシリケートの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0033】
AEI型ゼオライトが得られる構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)としては、ピペリジニウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アゾニウム[5,4]デカンカチオン、アゾニアビシクロ[3,3,1]ノナンカチオン、アゾニアビシクロ[3,2,1]オクタンカチオン、及び、カンヒジニウムカチオンなどが知られている。
【0034】
本発明の製造方法において、SDAはピペリジニウムカチオンであることが好ましく、N,N-アルキル-2,6-アルキルピペリジニウムカチオン(N,N-ジアルキル-2,6-ジアルキルピペリジニウムカチオン)又はN,N-アルキル-3,5-アルキルピペリジニウムカチオン(N,N-ジアルキル-3,5-ジアルキルピペリジニウムカチオン)の少なくともいずれか、更には、1,1-ジエチル-cis-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン又は1,1-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムカチオンの少なくともいずれかであることが好ましい。AEI型ゼオライトが得られるSDAとして知られている化合物の中でも、これらのいずれかのカチオンをSDAとすることで、アルミナ源として高価な結晶性アルミノシリケートの使用量を低減することができる。
【0035】
原料混合物に含まれるSDAは、上記のいずれかのカチオンを含む水酸化物、ハロゲン化物及び硫酸塩からなる群の少なくとも1種、更には水酸化物又はハロゲン化物であることが挙げられる。汎用的な製造設備を使用できることから、SDAは水酸化物の塩であること、また更には水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群の少なくとも1種であり、また更には上記のカチオンの水酸化物、塩化物及び臭化物からなる群の少なくとも1種であることが挙げられる。特に好ましいSDAとして、1,1-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(以下、「DMDMPOH」ともいう。)又は1,1-ジエチル-cis-2,6-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(以下、「DEDMPOH」ともいう。)の少なくともいずれかを挙げることができる。
【0036】
ナトリウム源はナトリウムを含む化合物であり、特に塩基性を示すナトリウムの化合物が挙げられる。原料組成物がナトリウムを含有することで、非晶質のアルミナ源からAEI型ゼオライトを得ることができる。具体的なナトリウム源として、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム及び硫酸ナトリウムからなる群の少なくとも1種、更には水酸化ナトリウムを挙げることができる。また、シリカ源またはアルミナ源がナトリウムを含む場合、当該ナトリウムもナトリウム源とすることができる。
【0037】
原料組成物は、ナトリウム以外のアルカリ金属を含む化合物(以下、「アルカリ金属源」ともいう。)を含んでいることが好ましい。アルカリ金属源を含むことにより、AEI型ゼオライト以外の構造の結晶性アルミノシリケートの副生が抑制されやすくなる。アルカリ金属源は、ナトリウム以外のアルカリ金属を含む化合物であり、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群の少なくとも1種を含む化合物であり、更にはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群の少なくとも1種を含む水酸化物である。
【0038】
工業的に入手しやすいため、アルカリ金属源はカリウムを含む化合物であることが好ましく、水酸化カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム及び臭化カリウムからなる群の少なくとも1種であることがより好ましい。さらに、工業的に入手しやすく、比較的安価であることからアルカリ金属源は水酸化カリウムであることが好ましい。
【0039】
原料組成物は水を含む。原料組成物が含む水は、蒸留水、脱イオン水や純水であればよい。また、アルミナ源やシリカ源など、原料組成物に含まれる他の成分に由来する水であってもよい。
【0040】
原料組成物における、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)は更には5以上100以下、更には5以上90以下であることが好ましい。得られるAEI型ゼオライトのSiO/Al比は原料組成物のSiO/Al比より低くなる。そのため、SiO/Al比が100以下であることで、SiO/Al比が100以下のAEI型ゼオライトが得られる。AEI型ゼオライトの収率がより向上するため、SiO/Al比は10以上、更には15以上、また更には20以上、また更には23以上であることが好ましい。原料組成物のSiO/Al比として、5以上100以下、更には10以上65以下、また更には15以上60未満、また更には15以上50以下、また更には15以上50未満を挙げることができる。
【0041】
SiO/Al比が50以下のAEI型ゼオライトを得る場合、好ましい原料組成物のSiO/Al比として、は20以上46以下、更には23以上44以下、また更には23以上36以下を挙げることができる。SiO/Al比が10以上30以下のAEI型ゼオライトを得るための特に好ましい原料組成物のSiO/Al比として15以上30未満、更には20以上28以下を挙げることができる。
【0042】
原料組成物におけるシリカに対するSDAのモル比(以下、「SDA/SiO比」ともいう。)は、0.05以上であることが好ましい。よりAEI型ゼオライトの結晶化を促進させるためにSDA/SiO比は0.10以上、更には0.13以上、また更には0.15以上であることが好ましい。製造コストを低減させる観点からSDAは少ないことが好ましく、SDA/SiO比が0.40以下、更には0.30以下、また更には0.25以下であることが好ましい。AEI型ゼオライトの結晶化の効率及び製造コストの観点から、原料組成物のSDA/SiO比は0.05以上0.40以下、更に0.10以上0.30以下、また更には0.13以上0.25以下、また更には0.13以上0.23以下、また更には0.15以上0.23以下であることが好ましい。
【0043】
原料組成物におけるシリカに対するナトリウムのモル比(以下、「Na/SiO比」ともいう。)は、0.01以上1.0以下、更には0.1以上0.6以下であることが好ましい。特に好ましい範囲として、Na/SiO比は0.1以上0.3未満、更には0.1以上0.25以下、また更には0.1以上0.2以下、また更には0.1以上0.18以下を挙げることができる。
【0044】
原料組成物におけるシリカに対するナトリウム以外のアルカリ金属のモル比(以下、「M/SiO比」ともいう。)は、0以上0.5以下、更には0以上0.3未満、また更には0以上0.2以下、また更には0以上0.1以下、また更には0以上0.05以下であればよい。
【0045】
原料組成物がアルカリ金属源を含む場合、原料組成物のナトリウムに対する、ナトリウム以外のアルカリ金属のモル比(以下、「M/Na比」ともいう。)は、0以上2.0以下、更には0を超え1.0以下、また更には0.05以上0.6以下、また更には0.1以上0.6以下を挙げることができる。ナトリウム以外のアルカリ金属の割合はナトリウムの割合以下であることが好ましく、M/Na比は0.05以上0.5以下、更には0.05以上0.35以下、また更には0.1以上0.5以下、また更には0.1以上0.45以下を挙げることができる。
【0046】
原料組成物がナトリウム以外のアルカリ金属(M)とナトリウムとを含有する場合、原料組成物中のシリカに対するアルカリ金属のモル比(以下、「(M+Na)/SiO」ともいう。)の好ましい範囲は、0.1以上0.6以下、更には0.1以上0.5以下、また更には0.1以上0.3未満である。例えば、(M+Na)/SiO比は0.1以上0.28以下、更には0.1以上0.25以下であってもよい。
【0047】
原料組成物のシリカに対する水のモル比(以下、「HO/SiO比」とする。)は、3以上50以下、更には5.0以上50.0以下、また更には5.0以上25.0以下を挙げることができる。HO/SiO比をこの範囲とすることで非晶質のアルミナ源からAEI型ゼオライトが結晶化しやすくなる。
【0048】
より短時間で非晶質のアルミナ源からAEI型ゼオライトを結晶化させるため、HO/SiO比は5.0以上20.0未満であることが好ましい。なお、原料組成物に結晶性アルミノシリケートが含まれる場合、HO/SiO比は8.0以上15.0以下であることが挙げられる。
【0049】
原料組成物は水酸化物イオン(OH)を含む。水酸化物イオンは原料組成物に含まれる各成分から持ち込まれる水酸化物イオン(OH)を含んでいてもよい。AEI型ゼオライトが結晶化するための原料組成物中のシリカ対する水酸化物イオン(以下、「OH/SiO比」ともいう。)は0.1以上1.0以下、更には0.2以上0.8以下また更には0.3以上0.8以下であることが挙げられる。OH/SiO比が高いほどAEI型ゼオライトの結晶化が促進される。OH/SiO比が0.45以上であれば、工業的に適用可能な結晶化時間でAEI型ゼオライトが結晶化する。OH/SiO比は0.45以上0.8以下、更には0.47以上0.8以下であることが好ましい。OH/SiO比は0.45以上の場合、結晶化時間が80時間以上であってもよい。しかしながら、OH/SiO比が0.45以上であれば、結晶化時間が80時間未満であっても、AEI型ゼオライトが単一相で結晶化する。
【0050】
料組成物の組成として以下のモル組成である。なお、以下の組成における各割合はモル(mol)割合であり、Mはナトリウム以外のアルカリ金属、SDAは有機構造指向剤である。
【0052】
下の組成である。
SiO/Al比 10以上60未満
SDA/SiO比 0.1以上0.30以下
Na/SiO比 0.05以上0.30未満
M/SiO比 0.02以上0.5以下
O/SiO比 9以上20未満
OH/SiO比 0.45以上0.8以下
【0053】
原料組成物の組成は、本明細書に記載したSiO/Al比、SDA/SiO比、Na/SiO比、M/SiO比、(M+Na)/SiO比、M/Na比、HO/SiO比及びOH/SiO比の各範囲の組合せからなる組成を有していればよい。本発明において、原料組成物の組成は一般的な方法により求めることができる。
【0054】
原料組成物は結晶化後の排水処理を必要とする元素を実施的に含んでいないことが好ましい。このような元素として、フッ素(F)やリン(P)を挙げることができる。原料組成物がフッ素を含有する場合、製造装置に対腐食性の材質を用いる必要がある。そのため、原料組成物はフッ素を含まないこと、すなわち、フッ素含有量が0重量ppmであることが好ましい。しかしながら、通常の組成分析等による測定誤差を考慮すると、原料組成物のフッ素含有量は検出限界以下であり、更には100重量ppm以下、また更には10重量ppm以下であることが挙げられる。原料組成物がフッ素やフッ素化合物を含有しないことで、汎用的な設備を用いたAEI型ゼオライトの製造ができる。また、原料組成物はリンを含まないことが好ましく、リン含有量は検出限界以下であること、更には100重量ppm以下、また更には10重量ppm以下であることが好ましい。
【0055】
原料組成物中のフッ素含有量及びリン含有量は、ICPなど一般的な測定方法により測定することができる。
【0056】
結晶化工程において、原料組成物が結晶化すれば、その結晶化方法は適宜選択することができる。好ましい結晶化方法として、原料組成物を水熱処理することが挙げられる。水熱処理は、原料組成物を密閉耐圧容器に入れ、これを加熱すればよい。水熱処理条件として以下のものを挙げることができる。
処理温度 :100℃以上、200℃以下、好ましくは130℃以上、190℃以下、より好ましくは140℃以上、180℃以下の任意の温度
処理圧力 :自生圧
【0057】
結晶化時間は80時間以上、更には100時間以上であることが好ましい。結晶化時間が80時間以上の場合、OH/SiO比は0.45以上であってもよいが、結晶化時間は80時間以上であれば、原料組成物はOH/SiO比が0.45未満であってもAEI型ゼオライトが単一相で結晶化する。結晶化時間は500時間以下、更には300時間以下、また更には200時間以下であればよい。
【0058】
OH/SiO比が0.45未満であれば、120時間以上、更には150時間以上の結晶化時間でAEI型ゼオライトの単一相が結晶化する。また、OH/SiO比が0.45以上であれば、結晶化時間が75時間以下、更には50時間以下であってもAEI型ゼオライトが単一相で結晶化する。
【0059】
結晶化工程における原料組成物は、静置された状態又は攪拌された状態のいずれでもよい。得られるAEI型ゼオライトの組成がより均一になるため、結晶化は原料組成物が攪拌された状態で行うことが好ましい。得られたAEI型ゼオライトは、必要に応じて解砕や粉砕をしてもよい。
【0060】
本発明のAEI型ゼオライトの製造方法は、結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程、SDA除去工程、アンモニウム処理工程又は熱処理工程の1つ以上を含んでいてもよい。
【0061】
洗浄工程は、結晶化後のAEI型ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるAEI型ゼオライトを純水で洗浄すればよい。
【0062】
乾燥工程は、結晶化工程後又は洗浄工程後のAEI型ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、結晶化工程後又は洗浄工程後のAEI型ゼオライトを、大気中、50℃以上、150℃以下、更には100℃以上、150℃以下で2時間以上、静置又はスプレードライヤーによる乾燥が例示できる。
【0063】
SDA除去工程は、AEI型ゼオライトに含まれるSDAを除去するために行う。通常、結晶化工程を経たAEI型ゼオライトは、その細孔内にSDAを含有している。そのため、必要に応じてこれを除去することができる。
【0064】
SDA除去工程は、SDAが除去されれば任意の方法で行うことができる。これらの除去法として、酸性水溶液を用いた液相処理、レジンなどを用いた交換処理、熱分解処理及び焼成処理からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。製造効率の観点から、SDA除去工程は熱分解処理、又は焼成処理のいずれかであることが好ましい。
【0065】
アンモニウム処理工程は、AEI型ゼオライトに含有されるアルカリ金属を除去するために行う。アンモニウム処理工程は一般的な方法で行うことができる。例えば、アンモニウムイオンを含有する水溶液をAEI型ゼオライトと接触させることで行う。
【0066】
熱処理工程では、AEI型ゼオライトを400℃以上、600℃以下の熱処理を行う。カチオンタイプがアンモニウム型(NH 型)のAEI型ゼオライトである場合、当該熱処理により、カチオンタイプがプロトン型(H型)のAEI型ゼオライトとなる。より具体的な焼成条件としては、大気中、500℃、1~2時間を挙げることができる。
【0067】
従来のAEI型ゼオライトの製造方法は、従来のゼオライト転換によるAEI型ゼオライトの製造方法と比べて、原料組成物のSiO/Al比と、得られるAEI型ゼオライトのSiO/Al比の差が少ない。例えば、本発明の製造方法では、OH/SiO比が0.49以上0.72以下と、水酸化物イオンが多い原料組成物を用いた場合であっても、原料組成物のSiO/Al比に対する得られるAEI型ゼオライトのSiO/Al比(以下、「SAR変化率」ともいう。)が、60%以下、更には58%以下であることが挙げられる。SAR変化率は低いほど、原料組成物からのAEI型ゼオライトの結晶化が効率よくなる。そのため、本発明の製造方法のSAR変化率、特に原料組成物のOH/SiOが0.36以上0.49以下におけるSAR変化率は55%以下、更には50%以下、また更には48%以下、また更には45%以下であることが好ましい。
【0068】
本発明の製造方法は高いOH/SiO比におけるSAR変化率が低いため、特にSiO/Al比が50以下、更には25以下、また更には15以上25以下のAEI型ゼオライトを得るための製造方法として適している。
【0069】
結晶化工程では、例えば、下式で求められるAEI型ゼオライトの収率として、40%を超え、50%以上、更には70%以上、また更には75%以上であることが挙げられる。
【0070】
収率(重量%)=(AEI型ゼオライト中のAl及びSiOの合計重量)
/(原料組成物中のAl及びSiOの合計重量)×100
ここで、AEI型ゼオライトのAl及びSiOとの合計重量は、AEI型ゼオライト中のAl含有量を測定し、これをAl換算して求まる重量、及び、AEI型ゼオライト中のSi含有量を測定し、SiO換算して求まる重量の合計重量である。また、原料組成物中のAl及びSiOの合計重量も同様な方法で求めればよい。
【0071】
本発明において、原料組成物の水以外の成分に対するゼオライトの固形分の割合(以下、「固形分回収率」ともいう。)は高いことが好ましい。固形分回収率が高くなることで、本発明の製造方法の製造工程から排出される未利用成分が減少し、環境に対する負荷が小さくなる。固形分回収率は、以下の計算式から求められる値である。
【0072】
固形分回収率(%)
=(AEI型ゼオライト中の金属を酸化物換算した重量の合計)
÷(原料組成物の水以外の成分の合計重量)×100 ここで、金属を酸化物換算した重量は、Si、Al及びNa、並びにKなどのアルカリ属をそれぞれSiO、Al及びNaO、並びにKOなどのアルカリ金属酸化物として換算して求めればよい。
【0073】
本発明の製造方法で得られるAEI型ゼオライトは、触媒担体として適したSiO/Al比を有し、SiO/Al比が100以下、更には50以下、また更には30以下、更には25以下であること、及び、10以上、更には14以上、また更には15以上であることが挙げられる。特に好ましいSiO/Al比として10以上100以下、更には14以上50以下、更には15以上30以下であることが挙げられる。
【0074】
本発明の製造方法で得られるAEI型ゼオライトは、平均結晶径が0.1μm以上、更には0.5μm以上であること、及び、5μm以下、更には2μm以下であることが挙げられる。特に好ましい平均結晶径として0.5μm以上8μm以下、更には0.5μm以上2μm以下であることが挙げられる。これにより、水熱雰囲気下へ晒されても劣化しにくくなる。これに加え、この様な平均結晶径であることにより、粒子同士が凝集しにくくなり、触媒基材への塗布性の向上が期待できる。
【0075】
本発明における結晶径とは、一次粒子の粒径であり、電子顕微鏡で観察される独立した最小単位の粒子の直径である。平均結晶径は、電子顕微鏡で無作為に抽出した30個以上の一次粒子の結晶径を相加平均した値である。そのため、複数の一次粒子が凝集した二次粒子の直径である二次粒子径や平均二次粒子径と、結晶径や平均結晶径とは異なる。一次粒子の形状は、立方晶形状、正方晶形状、並びに、立方晶形状又は正方晶形状が複合化した双晶形状からなる群の少なくとも1種であってもよい。
【0076】
AEI型ゼオライトの充填性は、結晶化工程の条件や、結晶化後の処理工程によりある程度調整することができる。本発明のAEI型ゼオライトの充填性は、ゆるみ嵩密度として0.1g/cm以上0.5g/cm以下である。ゆるみ嵩密度がこの範囲であることで、AEI型ゼオライトが触媒や吸着剤等として実用的な充填性を有するものとなる。ゆるみ嵩密度は、ふるいを通したAEI型ゼオライトを自然落下させて容器に充てんさせたときの嵩密度であり、これは一般的な粉体物性測定装置により測定することができる。

【0077】
本発明の製造方法で得られるAEI型ゼオライトは、酸触媒として十分な酸量を有する。酸量は、0.5mmol/g以上3mmol/g以下であり、更には1mmol/g以上2mmol/g以下である。
【0078】
酸量は、有機物を除去した状態のプロトン型のAEI型ゼオライトをアンモニアTPD測定することで求めることができる。
【0079】
本発明の製造方法で得られるAEI型ゼオライトは、ケイ素に対するシラノール量のモル比(以下、「SiOH/Si比」ともいう。)が0.5×10-2以下であることが挙げられる。理想的なAEI型ゼオライトはシラノールを含まないが、現実的に、AEI型ゼオライトはシラノールを含む。そのため、SiOH/Si比は0を超え0.3×10-2以下、更には0を超え0.2×10-2以下を挙げることができる。
【0080】
シラノール量は、有機物を除去した状態のアンモニウム型のAEI型ゼオライトをNMR測定することで求めることができる。
【0081】
本発明の製造方法で得られるAEI型ゼオライトは、高い耐熱性を有し、水熱雰囲気への曝露前後の結晶性の低下が少なく、Y型ゼオライトを原料として得られる従来のAEI型ゼオライトと比べて、水熱雰囲気への曝露前後の結晶性の低下が少ないことが好ましい。水熱雰囲気への曝露による結晶性の低下度合いは、水熱雰囲気に晒される前の結晶性に対する、水熱雰囲気に晒された後の結晶性の割合(以下、「結晶化維持率」ともいう。)を指標とすることができ、これは熱水雰囲気の曝露前後のXRDピークの強度を比較することで求めることができる。
【0082】
本発明の製造方法で得られるAEI型ゼオライトは、触媒担体や吸着剤として使用することができる。更には、本発明の製造方法で得られるAEI型ゼオライトが銅又は鉄の少なくともいずれかを含有することで、これを触媒として、更には窒素酸化物還元触媒として使用することが期待できる。
【発明の効果】
【0083】
本発明により、Y型構造を有する結晶性アルミノシリケートの構造転換によらず、なおかつ、フッ素を使用しないでAEI型ゼオライトが得られる製造方法を提供することができる。これにより、従来のAEI型ゼオライトの製造方法と比べ製造コストを低減することができる。更には、本発明により、製造コストを抑制したAEI型ゼオライトの工業的な製造方法を提供することができる。
【0084】
更に、本発明のAEI型ゼオライトの製造方法はSiO/Al比が100以下、更には50以下、また更には25以下のAEI型ゼオライトの製造方法として適している。
【実施例
【0085】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「比」は特に断らない限り、「モル比」である。
【0086】
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(商品名:MXP-3、マックサイエンス社製)を使用し、生成物のXRD測定を行った。測定条件は以下のとおりである。
【0087】
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 毎秒0.04°
発散スリット : 1.00deg
散乱スリット : 1.00deg
受光スリット : 0.30mm
計測時間 : 3.00秒
測定範囲 : 2θ=3°~43°
得られたXRDパターンと、特許文献1の表1のXRDパターンとを比較することで、結晶構造の同定を行った。
【0088】
(組成分析)
組成分析は蛍光X線装置(商品名:RIX2100、リガク社製)を使用して行った。前処理として、生成物を600℃で1時間焼成した。得られた分析結果から、生成物のSiO/Al比を求めた。
【0089】
(SAR変化率)
組成分析により得られたSiO/Al比から、以下の式により、SAR変化率を求めた。
【0090】
SAR変化率(%)
={1-(生成物のSiO/Al比)
/原料組成物のSiO/Al比)}×100
(収率)
以下の式より、AEI型ゼオライトの収率を求めた。
【0091】
収率(重量%)=(AEI型ゼオライト中のAl及びSiOの合計重量)
/(原料組成物中のAl及びSiOの合計重量)×100 Al及びSiOとの合計重量は、Al含有量を測定し、これをAl換算して求めた重量、及び、Si含有量を測定し、SiO換算して求めた重量の合計重量とした。
【0092】
(固形分回収率)
以下の式から、AEI型ゼオライトの固形分回収率を求めた。
固形分回収率(%)
=(AEI型ゼオライト中の金属をそれぞれ酸化物換算した重量の合計)÷(原料組成物の水以外の成分の合計重量)×100
【0093】
(シラノール量)
合成したAEI型ゼオライトを600℃×2時間空気中で焼成した後に、1H MAS NMRにより、シラノール量の含有量を測定した。条件は以下の通りとした。測定に先立ち、試料を真空排気下にて400℃で5時間保持し脱水することで前処理とした。前処理後、室温まで冷却した試料を窒素雰囲気下で採取し秤量した。測定装置は一般的なNMR装置(装置名:VXR-300S、Varian製)を使用した。
【0094】
共鳴周波数 :300.0MHz
パルス幅 :π/2
測定待ち時間 :10秒
積算回数 :32回
回転周波数 :4kHz
シフト基準 :TMS
得られた1H MAS NMRスペクトルからシラノール基に帰属されるピーク(2.0±0.5ppmのピーク)を波形分離し、その面積強度を求めた。得られた面積強度から検量線法により試料中のシラノール量を求めた。
【0095】
(酸量)
合成したAEI型ゼオライトを600℃×2時間空気中で焼成した後に、マイクロトラック・ベル株式会社製のBELCATIIを用い、アンモニアTPD(Temperature Programmed Desorption)法によって測定した。測定に先立ち、AEI型ゼオライト0.05gを500℃、ヘリウム中で加熱処理して吸着成分を除去した後、100℃で、ヘリウム99%、アンモニア1%の混合気体を流通させることでアンモニアを飽和吸着させた。次にヘリウムガスを流通させて系内に残存するアンモニアを除去した。アンモニアの除去後、以下の条件で処理した際に試料から脱離したアンモニア量を定量し、酸量を求めた。
雰囲気 :ヘリウム流通下(流通速度30mL/分)
昇温速度 :10℃/分
処理温度 :100℃~700℃
【0096】
(平均結晶径)
電子顕微鏡(装置名:JSM-6390LV、日立分光社製)を用いて一次粒子の結晶径及び形状を観察した。一次粒子が立方晶形状の結晶である場合は結晶の1辺の長さを測定すること、及び、一次粒子が正方晶形状の結晶である場合は正方形の面の辺の長さを測定することで結晶径を求めた。平均結晶径は、30個以上の一次粒子を無作為に抽出し、個々の結晶径の測定値の平均から求めた。
【0097】
(ゆるみ嵩密度)
粉末試料をふるいを通して自然落下させ、容器に充てんさせたときの嵩密度を測定し、ゆるみ嵩密度とした。測定には粉体物性測定装置(装置名:MULTI TESTER MT-1001、セイシン企業製)を用いた。
【0098】
実施例1
SiO換算で9.84gの粒状無定形ケイ酸、Al換算で0.37gの硫酸アルミニウム、23.08gの21重量%DEDMPOH、3.35gの水酸化ナトリウム、及び20.12gの純水を混合し、以下の組成からなる原料組成物を得た。
【0099】
SiO/Al =45
Na/SiO =0.56
O/SiO =12.8
DEDMPOH/SiO =0.16
OH/SiO =0.72
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは0重量%であった。
【0100】
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉した。当該オートクレーブを回転させながら、135℃で120時間加熱して原料組成物を結晶化させた。
【0101】
得られた生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が19のSSZ-39であった。収率は45重量%、固形分収率は27%及びSAR変化率は58%であった。
結果を表1に示す。
【0102】
実施例2
原料組成物の組成を以下の組成としたこと、及び、結晶化の温度を150℃としたこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得た。
【0103】
SiO/Al =33
Na/SiO =0.56
O/SiO =19.8
DEDMPOH/SiO =0.16
OH/SiO =0.72
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは0重量%であった。
【0104】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が15のSSZ-39であった。収率は47重量%、固形分収率は29%及び、SAR変化率は55%であった。結果を表1に示す。
【0105】
本実施例のAEI型ゼオライトの平均結晶径は1.5μmであった。
【0106】
実施例3
SiO換算で11.82gの粒状無定形ケイ酸、Al換算で0.79gの硫酸アルミニウム、0.57gのAEI型ゼオライト(SiO/Al比=16、平均粒径3.1μm)、11.72gの53重量%DMDMPOH、1.56gの水酸化ナトリウム、1.10gの水酸化カリウム、及び30.00gの純水を混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
【0107】
SiO/Al =25
Na/SiO =0.20
K/SiO =0.10
(Na+K)/SiO =0.30
K/Na =0.50
O/SiO =9.8
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.50
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0108】
当該原料組成物を使用したこと、及び、結晶化を180℃で48時間行ったこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得た。
【0109】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が12のSSZ-39であった。収率は53重量%、固形分収率は31%及び、SAR変化率は52%であった。結果を表1に示す。
【0110】
実施例4
原料組成物として以下の組成の原料組成物を使用したこと以外は実施例3と同様な方法で生成物を得た。
【0111】
SiO/Al =25
Na/SiO =0.20
K/SiO =0.07
(Na+K)/SiO =0.27
K/Na =0.35
O/SiO =9.8
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.47
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.49重量%であった。
【0112】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が13のSSZ-39であった。収率は57重量%、固形分収率は34%及び、SAR変化率は48%であった。結果を表1に示す。
【0113】
実施例5
原料組成物として以下の組成の原料組成物を使用したこと以外は実施例3と同様な方法で生成物を得た。
【0114】
SiO/Al =25
Na/SiO =0.20
K/SiO =0.05
(Na+K)/SiO =0.25
K/Na =0.25
O/SiO =9.8
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.45
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0115】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が14のSSZ-39であった。収率は59重量%、固形分収率は37%及び、SAR変化率は44%であった。結果を表1に示す。
【0116】
実施例6
原料組成物として以下の組成の原料組成物を使用したこと以外は実施例3と同様な方法で生成物を得た。
【0117】
SiO/Al =25
Na/SiO =0.18
K/SiO =0.07
(Na+K)/SiO =0.25
K/Na =0.39
O/SiO =9.8
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.45
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0118】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が14のSSZ-39であった。収率は59重量%、固形分収率は37%及び、SAR変化率は44%であった。結果を表1に示す。
【0119】
実施例7
原料組成物として以下の組成の原料組成物を使用したこと以外は実施例3と同様な方法で生成物を得た。
【0120】
SiO/Al =25
Na/SiO =0.24
K/SiO =0.03
(Na+K)/SiO =0.27
K/Na =0.13
O/SiO =9.8
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.47
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0121】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が14のSSZ-39であった。収率は58重量%、固形分収率は36%及び、SAR変化率は44%であった。結果を表1に示す。
【0122】
実施例8
原料組成物として以下の組成の原料組成物を使用したこと以外は実施例3と同様な方法で生成物を得た。
【0123】
SiO/Al =31
Na/SiO =0.22
K/SiO =0.05
(Na+K)/SiO =0.27
K/Na =0.23
O/SiO =9.8
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.47
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0124】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が17のSSZ-39であった。収率は56重量%、固形分収率は35%及び、SAR変化率は45%であった。結果を表1に示す。
【0125】
実施例9
原料組成物として以下の組成の原料組成物を使用したこと以外は実施例3と同様な方法で生成物を得た。
【0126】
SiO/Al =36
Na/SiO =0.24
K/SiO =0.09
(Na+K)/SiO =0.33
K/Na =0.38
O/SiO =9.8
DMDMPOH/SiO =0.16
OH/SiO =0.49
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0127】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が17のSSZ-39であった。収率は49重量%、固形分収率は32%及び、SAR変化率は53%であった。結果を表1に示す。
【0128】
実施例10
原料組成物として以下の組成の原料組成物を使用したこと以外は実施例3と同様な方法で生成物を得た。
【0129】
SiO/Al =43
Na/SiO =0.20
K/SiO =0.09
(Na+K)/SiO =0.29
K/Na =0.45
O/SiO =9.8
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.49
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0130】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が18のSSZ-39であった。収率は43重量%、固形分収率は26%及び、SAR変化率は58%であった。結果を表1に示す。
【0131】
実施例11
12.88gの非晶質アルミノシリケート(SiO/Al比=27)、0.57gのAEI型ゼオライト(SiO/Al比=16、平均粒径3.1μm)、6.42gのDMDMPOH、0.94gの水酸化ナトリウム、0.45gの水酸化カリウム、及び36.48gの純水を混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
【0132】
SiO/Al =27
Na/SiO =0.13
K/SiO =0.03
(Na+K)/SiO =0.16
K/Na =0.23
O/SiO =9.8
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.36
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.31重量%であった。
【0133】
当該原料組成物を使用したこと、及び、結晶化を170℃で168時間行ったこと以外は参考例1-1と同様な方法で生成物を得た。
【0134】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が18のSSZ-39であった。収率は69重量%、固形分収率は42%及び、SAR変化率は33%であった。結果を表1に示す。
【0135】
実施例12
7.84gの非晶質アルミノシリケート(SiO/Al比=33)、16.92gの21重量%DEDMPOH、2.36gの水酸化ナトリウム、及び29.88gの純水を混合し、以下の組成からなる原料組成物を得た。
【0136】
SiO/Al =33
Na/SiO =0.56
O/SiO =20
DEDMPOH/SiO =0.16
OH/SiO =0.72
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは0重量%であった。
【0137】
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉した。当該オートクレーブを回転させながら、150℃で72時間加熱して原料組成物を結晶化させた。
【0138】
得られた生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が15のSSZ-39であった。収率は49重量%、固形分回収率は29%及び、SAR変化率は54%であった。結果を表1に示す。
【0139】
本実施例のAEI型ゼオライトの平均結晶径は0.85μmであった。
【0140】
実施例13
12.47gの非晶質アルミノシリケート(SiO/Al比=39)、0.73gのAEI型ゼオライト(SiO/Al比=18、平均粒径3.1μm)、11.82gの53重量%DMDMPOH、1.88gの水酸化ナトリウム、0.56gの水酸化カリウム、及び30.27gの純水を混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
【0141】
SiO/Al =37
Na/SiO =0.24
K/SiO =0.05
(Na+K)/SiO =0.29
K/Na =0.21
O/SiO =10
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.49
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0142】
当該原料組成物を使用したこと、及び、結晶化を170℃で36時間行ったこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得た。
【0143】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が19のSSZ-39であった。なお、ICP法によるSiO/Al比は19であった。収率は53重量%、固形分回収率は31%及び、SAR変化率は50%であった。結果を表1に示す。
【0144】
本実施例のAEI型ゼオライトのシラノール量はSiOH/Si=0.1×10-2であった。
【0145】
本実施例の酸量は1.72mmol/gであった。
【0146】
実施例14
12.38gの非晶質アルミノシリケート(SiO/Al比=41)、0.73gのAEI型ゼオライト(SiO/Al比=18、平均粒径3.1μm)、11.77gの53重量%DMDMPOH、1.73gの水酸化ナトリウム、1.00gの水酸化カリウム、及び30.13gの純水を混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
【0147】
SiO/Al =39
Na/SiO =0.22
K/SiO =0.09
(Na+K)/SiO =0.31
K/Na =0.41
O/SiO =10
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.51
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0148】
当該原料組成物を使用したこと、及び、結晶化を170℃で24時間行ったこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得た。
【0149】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比18のSSZ-39であった。収率は48重量%、固形分回収率は27%及び、SAR変化率は55%であった。結果を表1に示す。
【0150】
実施例15
12.62gの非晶質アルミノシリケート(SiO/Al比=29)、0.74gのAEI型ゼオライト(SiO/Al比=18、平均粒径3.1μm)、11.80gの53重量%DMDMPOH、1.58gの水酸化ナトリウム、0.78gの水酸化カリウム、及び30.22gの純水を混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
【0151】
SiO/Al =28
Na/SiO =0.20
K/SiO =0.07
(Na+K)/SiO =0.27
K/Na =0.35
O/SiO =10
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.47
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0152】
当該原料組成物を使用したこと、及び、結晶化を170℃で48時間行ったこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得た。
【0153】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が15のSSZ-39であった。収率は57重量%、固形分回収率は35%及び、SAR変化率は46%であった。結果を表1に示す。
【0154】
本実施例のAEI型ゼオライトの平均結晶径は1.8μmであった。
【0155】
実施例16 12.39gの非晶質アルミノシリケート(SiO/Al比=41)、0.73gのAEI型ゼオライト(SiO/Al比=18、平均粒径3.1μm)、11.77gの53重量%DMDMPOH、1.71gの水酸化ナトリウム、1.00gの水酸化カリウム、及び30.13gの純水を混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
【0156】
SiO/Al =39
Na/SiO =0.22
K/SiO =0.09
(Na+K)/SiO =0.31
K/Na =0.41
O/SiO =10
DMDMPOH/SiO =0.20
OH/SiO =0.51
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは4.40重量%であった。
【0157】
当該原料組成物を使用したこと、及び、結晶化を170℃で36時間行ったこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得た。
【0158】
得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比(XRF)が17のSSZ-39であった。収率は47重量%、固形分回収率は27%及び、SAR変化率は55%であった。結果を表1に示す。
【0159】
本実施例のAEI型ゼオライトのゆるみ嵩密度は0.34g/cmであった。
【0160】
比較例1
米国特許5,958,370号の実施例を参照し、Y型構造を有する結晶性アルミノシリケートの構造転換によるAEI型ゼオライトの製造を行った。すなわち、SiO換算で3.28gのケイ酸ソーダ水溶液、0.82gのY型ゼオライト(SiO/Al比=6)、8.69gの21重量%DEDMPOH水溶液、及び36.28gの純水を混合し、以下の組成からなる原料組成物を得た。
【0161】
SiO/Al =50
Na/SiO =0.56
O/SiO =44.8
DEDMPOH/SiO =0.16
OH/SiO =0.72
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは11.50重量%であった。
【0162】
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、135℃で168時間加熱して生成物を得た。
【0163】
得られた生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が19のSSZ-39であった。収率は40重量%、固形分回収率は24%及び、SAR変化率は62%であった。結果を表1に示す。
【0164】
比較例2
SiO換算で6.47gのケイ酸ソーダ水溶液、1.61gのY型ゼオライト(SiO/Al比=6)、17.15gの21重量%DEDMPOH、及び16.13gの純水を混合し、以下の組成からなる原料組成物を得た。
【0165】
SiO/Al =50
Na/SiO =0.56
O/SiO =19.8
DEDMPOH/SiO =0.16
OH/SiO =0.72
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは11.50重量%であった。
【0166】
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、135℃で168時間加熱して生成物を得た。
【0167】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が16のSSZ-39であった。また、収率は35wt%、固形分回収率は21%及び、SAR変化率は68%であった。結果を表1に示す。
【0168】
本比較例のAEI型ゼオライトの平均結晶径は0.99μmであった。
【0169】
比較例3
SiO換算で2.75gのケイ酸ソーダ水溶液、2.78gのY型ゼオライト(SiO/Al比=29)、7.42gの34重量%DMDMPOH、0.61gの水酸化ナトリウム、及び36.82gの純水を混合し、以下の組成からなる原料組成物を得た。
【0170】
SiO/Al = 60
Na/SiO =0.49
O/SiO =29.8
DMDMPOH/SiO =0.18
OH/SiO =0.67
原料組成物の(Si-Al)Cry/(Si-Al)Totalは42.69重量%であった。
【0171】
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを回転させながら、145℃で94時間加熱して生成物を得た。
【0172】
生成物を濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。得られた生成物はAEI型ゼオライトであり、SiO/Al比が18のSSZ-39であった。収率は32重量%、固形分回収率は19%及び、SAR変化率は70%であった。結果を表1に示す。
【0173】
比較例4
結晶化時間を75時間としたこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得た。得られた生成物はアモルファスのみであり、AEI型ゼオライトは得られなかった。結果を表1に示す。
【0174】
【表1】
【0175】
本発明の製造方法により、Y型ゼオライトの構造転換によることなく、更には非晶質のアルミニウム化合物からAEI型ゼオライトが製造できることが確認できた。さらに、微量の結晶性アルミノシリケートが含まれている場合であっても、非晶質のアルミニウム化合物からAEI型ゼオライトが製造できることが確認できた。また、本発明の製造方法においては、原料組成物とAEI型ゼオライトのSAR変化率が60%以下、更には50%以下、また更には45%以下であった。これより、比較例で示したようなY型ゼオライトの構造転換によるAEI型ゼオライトの製造方法と比較して、原料として使用したシリカ源及びアルミナ源が効率よく使用されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の製造方法は、工業的なAEI型ゼオライトの製造方法として、特にSiO/Al比が100以下、更には50以下のAEI型ゼオライトの工業的な製造方法として利用することができる。