(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】CMP研磨液及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240709BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240709BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240709BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
(21)【出願番号】P 2022563058
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2021016073
(87)【国際公開番号】W WO2022224357
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】小峰 真弓
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴司
(72)【発明者】
【氏名】南 久貴
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531429(JP,A)
【文献】特開2017-139349(JP,A)
【文献】特開2019-143119(JP,A)
【文献】特開2016-017150(JP,A)
【文献】特開2016-017149(JP,A)
【文献】特開2017-110177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシリコンを研磨するためのCMP研磨液であって、
砥粒と、カチオン性ポリマーと、を含有し、
前記カチオン性ポリマーが、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖と、前記炭素原子に
直接結合した水酸基と、を有する重合体A、及び、アリルアミン重合体Bからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、CMP研磨液。
【請求項2】
前記カチオン性ポリマーが前記重合体Aを含む、請求項1に記載のCMP研磨液。
【請求項3】
前記重合体Aが、前記主鎖を有する複数種の構造単位を備える、請求項2に記載のCMP研磨液。
【請求項4】
前記重合体Aが、少なくともジメチルアミン及びエピクロロヒドリンを含む原料の反応物を含む、請求項2又は3に記載のCMP研磨液。
【請求項5】
前記重合体Aが、少なくともジメチルアミン、アンモニア及びエピクロロヒドリンを含む原料の反応物を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項6】
前記重合体Aの重量平均分子量が5000~1500000である、請求項2~5のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項7】
前記重合体Aの含有量が、当該CMP研磨液100質量部に対して0.001~0.1質量部である、請求項2~6のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項8】
前記カチオン性ポリマーが前記アリルアミン重合体Bを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項9】
前記アリルアミン重合体Bが、ジアリルジアルキルアンモニウム塩を単量体単位として有する重合体を含む、請求項8に記載のCMP研磨液。
【請求項10】
前記重合体Bの含有量が、当該CMP研磨液100質量部に対して0.001~0.01質量部である、請求項8又は9に記載のCMP研磨液。
【請求項11】
前記砥粒がセリウム系化合物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項12】
前記セリウム系化合物が酸化セリウムを含む、請求項11に記載のCMP研磨液。
【請求項13】
前記砥粒が水酸化物を含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項14】
前記砥粒の含有量が、当該CMP研磨液100質量部に対して0.1~2質量部である、請求項1~13のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項15】
pHが7.0以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項16】
pHが2.0~5.0である、請求項1~15のいずれか一項に記載のCMP研磨液。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のCMP研磨液を用いて被研磨材料を研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項18】
前記被研磨材料がポリシリコンを含む、請求項17に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CMP研磨液、研磨方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野では、メモリデバイス(超LSIデバイス等)の高性能化に伴い、従来技術の延長線上の微細化技術では高集積化及び高速化を両立することは限界になってきている。そこで、半導体素子の微細化を進めつつ、垂直方向にも高集積化する技術(すなわち、配線、素子等を多層化する技術)が開発されている。
【0003】
配線、素子等が多層化されたデバイスを製造するプロセスにおいて、最も重要な技術の一つにCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)技術がある。CMP技術は、化学気相蒸着(CVD)等によって基板上に薄膜を形成して基体を得た後、その基体の表面を平坦化する技術である。平坦化後の基体の表面に凹凸があると、露光工程における焦点合わせが不可能となったり、微細な配線構造を充分に形成できなかったり等の不都合が生じる。CMP技術は、デバイスの製造工程において、プラズマ酸化膜(BPSG、HDP-SiO2、p-TEOS等)の研磨によって素子分離領域を形成する工程、層間絶縁膜を形成する工程、酸化ケイ素膜(酸化ケイ素を含む膜)を金属配線に埋め込んだ後にプラグ(例えばAl・Cuプラグ)を平坦化する工程などにも適用される。
【0004】
CMPは、通常、研磨パッド上にCMP研磨液を供給することができる装置を用いて行われる。基体の表面と研磨パッドとの間にCMP研磨液を供給しながら、基体を研磨パッドに押し付けることによって基体の表面が研磨される。CMP技術においては、高性能のCMP研磨液が要素技術の一つであり、これまでにも種々のCMP研磨液が開発されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板上に素子分離領域を形成する工程においては、基板の表面に予め設けられた凹凸を埋めるように被研磨材料が形成される。その後、被研磨材料の表面をCMPによって平坦化することによって素子分離領域が形成される。素子分離領域を得るための凹凸が表面に設けられた基板上に被研磨材料を形成する場合、被研磨材料の表面にも、基板の凹凸に応じた凹凸が生じる。凹凸を有する表面の研磨においては、凸部が優先的に除去される一方、凹部がゆっくりと除去されることによって平坦化がなされる。
【0007】
半導体生産のスループットを向上させるためには、基板上に形成した被研磨材料の不要な部分を可能な限り高速に除去することが好ましい。例えば、メモリーの高積層化に伴い3D-NANDを作製する場合、ゲート等として基板上に設けられたポリシリコンを高い研磨速度で取り除くことが要求される。そのため、CMP研磨液に対しては、ポリシリコンを高い研磨速度で研磨することが求められる。
【0008】
本開示の一側面は、ポリシリコンの高い研磨速度を得ることが可能なCMP研磨液を提供することを目的とする。また、本開示の他の一側面は、このようなCMP研磨液を用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面は、ポリシリコンを研磨するためのCMP研磨液であって、砥粒と、カチオン性ポリマーと、を含有し、前記カチオン性ポリマーが、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有する重合体A、及び、アリルアミン重合体Bからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、CMP研磨液を提供する。
【0010】
本開示の他の一側面は、上述のCMP研磨液を用いて被研磨材料を研磨する工程を備える、研磨方法を提供する。
【0011】
このようなCMP研磨液及び研磨方法によれば、ポリシリコンの高い研磨速度を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一側面によれば、ポリシリコンの高い研磨速度を得ることが可能なCMP研磨液を提供することができる。本開示の他の一側面によれば、このようなCMP研磨液を用いた研磨方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の使用量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において「膜」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
<CMP研磨液>
本実施形態に係るCMP研磨液(CMP用研磨液)は、ポリシリコンを研磨するためのCMP研磨液である。本実施形態に係るCMP研磨液は、砥粒(研磨粒子)と、カチオン性ポリマーと、を含有し、カチオン性ポリマーが、窒素原子(N原子)及び炭素原子(C原子)を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有する重合体A、及び、アリルアミン重合体B(以下、「重合体B」という)からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、「特定カチオン性ポリマー」と総称する)を含む。本実施形態に係るCMP研磨液の特定カチオン性ポリマーは、重合体A及び重合体Bを含む態様、重合体Aを含み、かつ、重合体Bを含まない態様、又は、重合体Bを含み、かつ、重合体Aを含まない態様であってよい。
【0016】
本実施形態に係るCMP研磨液によれば、ポリシリコンの高い研磨速度を得ることができる。本実施形態に係るCMP研磨液によれば、実施例に記載の評価方法においてポリシリコンの研磨速度として1200Å/min以上を得ることができる。ポリシリコンの高い研磨速度が得られる要因は必ずしも明らかではないが、下記のとおりであると推定される。但し、要因は下記内容に限定されない。すなわち、ポリシリコンの表面に特定カチオンポリマーが吸着し、ポリシリコンのシリコン-シリコン結合に極性が生じる。これにより、脆弱化することで結合が切られやすいため、ポリシリコンの高い研磨速度が得られると推定される。
【0017】
本実施形態に係るCMP研磨液によれば、ポリシリコンの高い研磨速度を得つつ酸化ケイ素の研磨速度を抑制することもできる。本実施形態に係るCMP研磨液によれば、実施例に記載の評価方法において、酸化ケイ素に対するポリシリコンの研磨速度比(ポリシリコンの研磨速度/酸化ケイ素の研磨速度)として1以上(例えば3以上)を得ることができる。
【0018】
本実施形態に係るCMP研磨液によれば、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素の研磨速度比(窒化ケイ素の研磨速度/酸化ケイ素の研磨速度)を高めることもできる。本実施形態に係るCMP研磨液によれば、実施例に記載の評価方法において、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素の研磨速度比として0.2以上(例えば0.5以上)を得ることができる。
【0019】
本実施形態に係るCMP研磨液は、ポリシリコンを研磨した際にポリシリコンの高い研磨速度が得られればよく、ポリシリコンとは異なる被研磨材料の研磨に用いられてよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、窒化ケイ素の研磨に用いられてよく、ポリシリコン及び窒化ケイ素の研磨に用いられてよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、酸化ケイ素の研磨に用いられてよく、ポリシリコン及び酸化ケイ素の研磨、窒化ケイ素及び酸化ケイ素の研磨、又は、ポリシリコン、窒化ケイ素及び酸化ケイ素の研磨に用いられてよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、ポリシリコン、窒化ケイ素及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも一種の被研磨材料を表面に有する基体の当該被研磨材料を研磨するために用いられてよい。
【0020】
(砥粒)
砥粒は、例えば、セリウム系化合物、アルミナ、酸化ケイ素(シリカ)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ムライト、窒化ケイ素、α-サイアロン、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素等を含むことができる。砥粒の構成成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。砥粒は、ポリシリコンの高い研磨速度を得やすい観点、及び、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、セリウム系化合物及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0021】
ところで、3D-NANDを作製するに際して、ポリシリコン及び窒化ケイ素を高い研磨速度で取り除くことが要求される場合がある。これに対し、従来、一つのCMP研磨液を用いてポリシリコン及び窒化ケイ素を同時に高い研磨速度で研磨することが難しいことから、種類の異なるCMP研磨液を用いて、ポリシリコンを研磨する工程、及び、窒化ケイ素を研磨する工程の二段階に分けて研磨が行われている。しかしながら、生産性の向上及び設備の簡素化の観点から、一段階の研磨で仕上げることが要求される。これに対し、本実施形態に係るCMP研磨液では、砥粒がセリウム系化合物を含むことにより、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得ることができると共に、窒化ケイ素の高い研磨速度を得つつ酸化ケイ素の研磨速度を抑制することができる。
【0022】
セリウム系化合物としては、酸化セリウム(セリア)、セリウム水酸化物、硝酸アンモニウムセリウム、酢酸セリウム、硫酸セリウム水和物、臭素酸セリウム、臭化セリウム、塩化セリウム、シュウ酸セリウム、硝酸セリウム、炭酸セリウム等が挙げられる。セリウム系化合物は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点、並びに、研磨傷が少ない被研磨面が得られやすい観点から、酸化セリウムを含んでよい。
【0023】
酸化セリウムを使用する場合、砥粒は、結晶粒界を有する多結晶酸化セリウム(例えば、結晶粒界に囲まれた複数の結晶子を有する多結晶酸化セリウム)を含んでよい。このような多結晶酸化セリウム粒子は、単結晶粒子が凝集した単なる凝集体とは異なっており、研磨中の応力により細かくなると同時に、活性面(細かくなる前は外部にさらされていない面)が次々と現れるため、被研磨材料の高い研磨速度を高度に維持できると考えられる。
【0024】
酸化セリウムを含む砥粒の製造方法としては、液相合成;焼成、又は、過酸化水素等により酸化する方法などが挙げられる。結晶粒界を有する多結晶酸化セリウムを含む砥粒を得る場合には、炭酸セリウム等のセリウム源を焼成する方法を用いることができる。焼成時の温度は、例えば350~900℃であってよい。製造された酸化セリウム粒子が凝集している場合は、機械的に粉砕してよい。
【0025】
砥粒がセリウム系化合物(例えば酸化セリウム)を含む場合、砥粒におけるセリウム系化合物の含有量は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、砥粒の全体(CMP研磨液に含まれる砥粒の全体)を基準として、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上、又は、実質的に100質量%(砥粒が実質的にセリウム系化合物からなる態様)であってよい。
【0026】
砥粒が酸化ケイ素を含む場合、砥粒における酸化ケイ素の含有量は、ポリシリコンの高い研磨速度を得やすい観点、及び、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、砥粒の全体(CMP研磨液に含まれる砥粒の全体)を基準として、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、又は、99質量%以上、又は、実質的に100質量%(砥粒が実質的に酸化ケイ素からなる態様)であってよい。
【0027】
砥粒における水酸化物の含有量(例えばセリウム水酸化物の含有量)は、砥粒の全体(CMP研磨液に含まれる砥粒の全体)を基準として、0.01質量%以下、0.001質量%以下、又は、0.0001質量%以下であってよい。砥粒は、水酸化物(例えばセリウム水酸化物)を含まなくてよい(水酸化物の含有量(例えばセリウム水酸化物の含有量)が実質的に0質量%であってよい)。
【0028】
CMP研磨液における砥粒の平均粒径は、下記の範囲であってよい。砥粒の平均粒径は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点から、50nm以上、70nm以上、70nm超え、75nm以上、80nm以上、85nm以上、又は、90nm以上であってよい。砥粒の平均粒径は、研磨傷を抑制しやすい観点から、500nm以下、300nm以下、280nm以下、250nm以下、200nm以下、180nm以下、160nm以下、150nm以下、120nm以下、100nm以下、又は、90nm以下であってよい。これらの観点から、砥粒の平均粒径は、50~500nmであってよい。
【0029】
砥粒の平均粒径を制御するためには、従来公知の方法を使用することができる。酸化セリウム粒子を例にすると、砥粒の平均粒径の制御方法としては、上述の焼成温度、焼成時間、粉砕条件等の制御;濾過、分級等の適用などが挙げられる。
【0030】
砥粒の平均粒径としては、レーザ回折/散乱式粒度分布計で測定される算術平均径を用いることができる。砥粒の平均粒径は、例えば、株式会社堀場製作所製のLA-920(商品名)等を用いて、実施例に記載の方法で測定できる。
【0031】
砥粒の含有量は、CMP研磨液100質量部に対して下記の範囲であってよい。砥粒の含有量は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点から、0.01質量部以上、0.05質量部以上、0.08質量部以上、0.1質量部以上、0.15質量部以上、0.2質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、0.8質量部以上、1.0質量部以上、1.5質量部以上、又は、2.0質量部以上であってよい。砥粒の含有量は、砥粒の凝集を抑制しやすい観点、及び、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、10質量部以下、5.0質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下、2.0質量部未満、1.5質量部以下、1.0質量部以下、0.8質量部以下、又は、0.5質量部以下であってよい。これらの観点から、砥粒の含有量は、0.01~10質量部、0.1~10質量部、又は、0.1~2質量部であってよい。
【0032】
(カチオン性ポリマー)
本実施形態に係るCMP研磨液は、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖と、前記炭素原子に結合した水酸基と、を有する重合体A、及び、重合体B(アリルアミン重合体。重合体Aに該当する化合物を除く)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む特定カチオン性ポリマーを含有する。本実施形態に係るCMP研磨液は、特定カチオン性ポリマー以外のカチオン性ポリマーを含有してよく、含有していなくてもよい。「カチオン性ポリマー」は、カチオン基、又は、カチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーとして定義される。カチオン基としては、アミノ基、イミノ基等が挙げられる。カチオン性ポリマー(例えば特定カチオン性ポリマー)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
特定カチオン性ポリマーは、水溶性であってよい。水への溶解度が高い化合物を使用することにより、所望の量の特定カチオン性ポリマーを良好にCMP研磨液中に溶解させることができる。室温(25℃)の水100gに対する特定カチオン性ポリマーの溶解度は、0.005g以上又は0.02g以上であってよい。溶解度の上限は特に制限はない。
【0034】
特定カチオン性ポリマーは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、重合体A又は重合体Bとして、炭素原子を含む主鎖と、当該主鎖に結合する側鎖とを、有すると共に、主鎖及び側鎖からなる群より選ばれる少なくとも一種が窒素原子を含む重合体Pを含んでよい。「主鎖」とは、最も長い分子鎖をいう。「側鎖」とは、主鎖から枝分かれしている分子鎖(例えば、炭素原子を含む分子鎖)を指す。側鎖は、主鎖を構成する複数の原子(例えば2つの原子)に結合していてもよい。
【0035】
重合体Pにおける側鎖の分子量の最大値は、重合体Pが酸化ケイ素に吸着することにより酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、100以下、80以下、60以下、50以下、40以下、30以下、又は、20以下であってよい。重合体Pにおける側鎖の分子量の最大値は、15以上であってよい。
【0036】
特定カチオン性ポリマーは、重合体Aを含むことができる。重合体Aにおいて水酸基は、主鎖の炭素原子に直接結合している。重合体Aは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖を有する構造単位を備えてよく、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖を有する複数種(例えば2種)の構造単位を備えてよい。
【0037】
重合体Aは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、下記特徴の少なくとも一つを満たしてよく、下記特徴の少なくとも一つを満たす構造単位(窒素原子及び炭素原子を含む主鎖を有する構造単位)を備えてよい。
窒素原子及び炭素原子を含む主鎖は、窒素原子と、当該窒素原子に結合したアルキレン鎖と、を含んでよい。アルキレン鎖の炭素原子に水酸基が結合してよい。アルキレン鎖の炭素数は、1以上であり、2以上又は3以上であってよい。アルキレン鎖の炭素数は、6以下、5以下、又は、4以下であってよい。アルキレン鎖の炭素数は、1~6であってよい。
重合体Aは、第四級アンモニウム塩を構成する窒素原子を含んでよい。第四級アンモニウム塩は、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる少なくとも一種が結合した窒素原子を含んでよく、メチル基が結合した窒素原子を含んでよい。第四級アンモニウム塩は、2つのアルキル基が結合した窒素原子を含んでよく、2つのメチル基が結合した窒素原子を含んでよい。第四級アンモニウム塩は、アンモニウムカチオンと塩化物イオンとを含んでよい。
重合体Aは、酸付加塩を構成する窒素原子を含んでよく、塩酸塩を構成する窒素原子を含んでよい。
【0038】
重合体Aにおいて、窒素原子と、水酸基が結合した炭素原子とは、隣接していてよく、隣接していなくてよい。重合体Aは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、窒素原子と、水酸基が結合した炭素原子との間に介在する炭化水素基を有してよく、窒素原子と、水酸基が結合した炭素原子との間に介在する炭素数1の炭化水素基(例えばメチレン基)を有してよい。重合体Aは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、窒素原子及び炭素原子を含む主鎖を有する構造単位として、窒素原子と、水酸基が結合した炭素原子との間に介在する炭化水素基を有する構造単位を備えてよく、窒素原子と、水酸基が結合した炭素原子との間に介在する炭素数1の炭化水素基(例えばメチレン基)を有する構造単位を備えてよい。
【0039】
重合体Aは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、少なくともジメチルアミン及びエピクロロヒドリンを含む原料の反応物(例えば縮合物)を含んでよく、少なくともジメチルアミン、アンモニア及びエピクロロヒドリンを含む原料の反応物(例えば縮合物)を含んでよい。反応物を与える原料は、ジメチルアミン、アンモニア及びエピクロロヒドリン以外の化合物を含んでよい。重合体Aは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、下記式で表される構造を有する化合物を含んでよい。重合体Aは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、ジメチルアミン/エピクロロヒドリン縮合物(重縮合物)及びジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン縮合物(重縮合物)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、重合体Aとして、ジメチルアミン、エピクロロヒドリン及びエチレンジアミンを含む原料の反応物(例えば縮合物)を含有しなくてもよい。
【0040】
【化1】
[式中、aは1以上の整数を示し、bは0以上(例えば1以上)の整数を示す。]
【0041】
重合体Aの分子量(例えば重量平均分子量)は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、下記の範囲であってよい。重合体Aの分子量は、5000以上、7000以上、8000以上、10000以上、15000以上、15000超え、30000以上、50000以上、60000以上、80000以上、100000以上、200000以上、300000以上、400000以上、450000以上、500000以上、600000以上、800000以上、1000000以上、又は、1200000以上であってよい。重合体Aの分子量は、2000000以下、1500000以下、1300000以下、1200000以下、1000000以下、800000以下、600000以下、500000以下、450000以下、400000以下、300000以下、200000以下、100000以下、60000以下、50000以下、30000以下、15000以下、15000未満、10000以下、又は、8000以下であってよい。これらの観点から、重合体Aの分子量は、5000~2000000、5000~1500000、10000~2000000、10000~1000000、50000~500000、又は、100000~500000であってよい。重合体Aの分子量(例えば重量平均分子量)は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0042】
特定カチオン性ポリマーが重合体Aを含む場合、カチオン性ポリマーにおける重合体Aの含有量、又は、特定カチオン性ポリマーにおける重合体Aの含有量は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、カチオン性ポリマーの全体(CMP研磨液に含まれるカチオン性ポリマーの全体)、又は、特定カチオン性ポリマーの全体(CMP研磨液に含まれる特定カチオン性ポリマーの全体)を基準として、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上、又は、実質的に100質量%(カチオン性ポリマー又は特定カチオン性ポリマーが実質的に重合体Aからなる態様)であってよい。
【0043】
重合体Aの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して下記の範囲であってよい。重合体Aの含有量は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、0.00001質量部以上、0.00005質量部以上、0.0001質量部以上、0.0002質量部以上、0.0003質量部以上、0.0005質量部以上、0.0008質量部以上、0.001質量部以上、0.002質量部以上、0.0025質量部以上、0.003質量部以上、0.004質量部以上、0.005質量部以上、0.008質量部以上、0.01質量部以上、0.012質量部以上、又は、0.015質量部以上であってよい。重合体Aの含有量は、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、0.02質量部以上、0.025質量部以上、0.03質量部以上、0.04質量部以上、0.05質量部以上、0.08質量部以上、又は、0.1質量部以上であってよい。重合体Aの含有量は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、10質量部以下、5質量部以下、2.5質量部以下、2.5質量部未満、2質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下、0.1質量部以下、0.08質量部以下、又は、0.05質量部以下であってよい。重合体Aの含有量は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点から、0.04質量部以下、0.03質量部以下、0.025質量部以下、0.02質量部以下、又は、0.015質量部以下であってよい。重合体Aの含有量は、窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点から、0.012質量部以下、0.01質量部以下、0.008質量部以下、又は、0.005質量部以下であってよい。重合体Aの含有量は、0.004質量部以下、0.003質量部以下、又は、0.0025質量部以下であってよい。これらの観点から、重合体Aの含有量は、0.00001~10質量部、0.0001~1質量部、0.0025~0.1質量部、又は、0.001~0.1質量部であってよい。
【0044】
重合体Aの含有量に対する砥粒の含有量の比率Aは、下記の範囲であってよい。比率Aは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、0.1以上、0.5以上、1以上、1超え、2以上、3以上、5以上、8以上、又は、10以上であってよい。比率Aは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点から、15以上、20以上、25以上、30以上、又は、33以上であってよい。比率Aは、窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点から、40以上、50以上、60以上、62.5以上、67以上、80以上、又は、100以上であってよい。比率Aは、120以上、150以上、167以上、200以上、300以上、400以上、又は、500以上であってよい。比率Aは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、1000以下、800以下、500以下、400以下、300以下、200以下、167以下、150以下、120以下、100以下、80以下、67以下、62.5以下、60以下、50以下、40以下、又は、33以下であってよい。比率Aは、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、8以下、又は、5以下であってよい。これらの観点から、比率Aは、0.1~1000、1~500、又は、5~100であってよい。
【0045】
特定カチオン性ポリマーは、重合体Bを含むことができる。重合体Bは、アリルアミン重合体であり、アリルアミン化合物(アリル基及びアミノ基を有する化合物)を単量体単位として有する重合体(アリルアミン化合物由来の構造単位を有する重合体)である。重合体Bは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、ジアリルジアルキルアンモニウム塩を単量体単位として有する重合体を含んでよい。
【0046】
重合体Bは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、下記一般式(I)で表される構造単位、下記一般式(II)で表される構造単位、下記一般式(III)で表される構造単位、下記一般式(IV)で表される構造単位、及び、下記一般式(V)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種を有してよい。重合体Bに含まれる構造単位として、一般式(I)~(V)で表される構造単位は、一種単独であってもよく、二種以上であってもよい。
【0047】
【化2】
[式中、R
11及びR
12は、各々独立に水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示し、アミノ基は酸付加塩を形成していてもよい。]
【0048】
【化3】
[式中、R
2は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示し、含窒素環は酸付加塩を形成していてもよい。]
【0049】
【化4】
[式中、R
3は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示し、含窒素環は酸付加塩を形成していてもよい。]
【0050】
【化5】
[式中、R
41及びR
42は、各々独立に水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示し、D
-は、一価の陰イオンを示す。]
【0051】
【化6】
[式中、R
51及びR
52は、各々独立に水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示し、D
-は、一価の陰イオンを示す。]
【0052】
一般式(I)、(II)及び(III)におけるR11、R12、R2及びR3のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよい。R11、R12、R2及びR3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、これらの水酸基付加物(3-ヒドロキシプロピル基等)などが挙げられる。
【0053】
「アラルキル基」とは、アルキル基の水素原子の1つがアリール基で置換されている基をいう。一般式(I)、(II)及び(III)において、R11、R12、R2及びR3のアラルキル基を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよい。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基、これらの水酸基付加物等が挙げられる。
【0054】
一般式(I)中のアミノ基、並びに、一般式(II)及び(III)中の含窒素環は、酸付加塩を形成していてもよい。酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、アミド硫酸塩、メタンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0055】
重合体Bは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、一般式(I)で表される構造単位を有してよく、一般式(I)においてR11及びR12が水素原子である構造単位を有してよい。
【0056】
一般式(IV)及び(V)におけるR41、R42、R51及びR52のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよい。R41、R42、R51及びR52のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、これらの水酸基付加物(3-ヒドロキシプロピル基等)などが挙げられる。R41、R42、R51及びR52からなる群より選ばれる少なくとも一種のアルキル基の炭素数は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、1~10、1~7、1~4、1~3、又は、1~2以下であってよい。
【0057】
一般式(IV)及び(V)におけるR41、R42、R51及びR52のアラルキル基を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよい。R41、R42、R51及びR52のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、これらの水酸基付加物等が挙げられる。
【0058】
重合体Bは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、一般式(IV)で表される構造単位を有してよく、一般式(IV)においてR41及びR42がメチル基である構造単位を有してよい。
【0059】
一般式(IV)及び(V)におけるD-としては、Cl-、Br-、I-等のハロゲンイオン;メチルサルフェートイオン、エチルサルフェートイオン、ジメチルサルフェートイオン等のアルキルサルフェートイオンなどが挙げられる。
【0060】
一般式(IV)において下記一般式(IVa)で表される部分構造、及び、一般式(V)において下記一般式(Va)で表される部分構造としては、N,N-ジアルキルアンモニウム塩、N-アルキル-N-ベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。N,N-ジアルキルアンモニウム塩としては、N,N-ジアルキルアンモニウムハライド、N,N-ジアルキルアンモニウムアルキルサルフェート等が挙げられる。N,N-ジアルキルアンモニウムハライドとしては、N,N-ジメチルアンモニウムハライド、N,N-ジエチルアンモニウムハライド、N,N-ジプロピルアンモニウムハライド、N,N-ジブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。N,N-ジアルキルアンモニウムアルキルサルフェートとしては、N,N-ジメチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N-メチルエチルアンモニウムエチルサルフェート等が挙げられる。N-アルキル-N-ベンジルアンモニウム塩としては、N-メチル-N-ベンジルアンモニウムハライド、N-エチル-N-ベンジルアンモニウムハライド等のN-アルキル-N-ベンジルアンモニウムハライドなどが挙げられる。上述の部分構造のハライドとしては、クロリド、ブロミド、ヨージド等が挙げられる。重合体Bは、上述の部分構造として、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、N,N-ジメチルアンモニウムクロリド及びN,N-メチルエチルアンモニウムエチルサルフェートからなる群より選ばれる少なくとも一種を有してよい。
【0061】
【0062】
重合体Bは、アリルアミン化合物と、アリルアミン化合物以外の化合物との共重合体であってもよい。重合体Bは、例えば、一般式(IV)で表される構造単位を与える単量体と、アリルアミン化合物以外の単量体とを共重合して得られる構造を有してよい。
【0063】
重合体Bは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、下記一般式(VI)で表される構造単位を有してよく、一般式(IV)で表される構造単位と、一般式(VI)で表される構造単位とを有してよい。
【0064】
【化8】
[式中、R
6は、水素原子又はアルキル基を示す。]
【0065】
一般式(VI)におけるR6としては、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、水素原子及びメチル基からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよく、水素原子であってよい。一般式(VI)で表される構造単位を与える単量体としては、アクリルアミド等が挙げられる。
【0066】
重合体Bは、一般式(VI)で表される構造単位を有するアリルアミン重合体として、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、ジアリルメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体、及び、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0067】
重合体Bの分子量(例えば重量平均分子量)は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、下記の範囲であってよい。重合体Bの分子量は、1000以上、3000以上、5000以上、8000以上、10000以上、30000以上、50000以上、80000以上、100000以上、300000以上、又は、500000以上であってよい。重合体Bの重量平均分子量は、2000000以下、1500000以下、1000000以下、800000以下、600000以下、500000以下、300000以下、100000以下、80000以下、50000以下、30000以下、15000以下、15000未満、10000以下、又は、8000以下であってよい。これらの観点から、重合体Bの分子量は、1000~2000000、5000~1000000、又は、8000~1000000であってよい。重合体Bの分子量は、重合体Aの分子量と同様に測定することができる。
【0068】
特定カチオン性ポリマーが重合体Bを含む場合、カチオン性ポリマーにおける重合体Bの含有量、又は、特定カチオン性ポリマーにおける重合体Bの含有量は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、カチオン性ポリマーの全体(CMP研磨液に含まれるカチオン性ポリマーの全体)、又は、特定カチオン性ポリマーの全体(CMP研磨液に含まれる特定カチオン性ポリマーの全体)を基準として、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上、又は、実質的に100質量%(カチオン性ポリマー又は特定カチオン性ポリマーが実質的に重合体Bからなる態様)であってよい。
【0069】
重合体Bの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して下記の範囲であってよい。重合体Bの含有量は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、0.00001質量部以上、0.00005質量部以上、0.0001質量部以上、0.0002質量部以上、0.0003質量部以上、0.0005質量部以上、0.0008質量部以上、0.001質量部以上、0.002質量部以上、0.0025質量部以上、0.003質量部以上、0.004質量部以上、又は、0.005質量部以上であってよい。重合体Bの含有量は、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、0.008質量部以上、又は、0.01質量部以上であってよい。重合体Bの含有量は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、10質量部以下、5質量部以下、2.5質量部以下、2.5質量部未満、2質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下、0.1質量部以下、0.08質量部以下、0.05質量部以下、0.04質量部以下、0.03質量部以下、0.025質量部以下、0.02質量部以下、0.015質量部以下、0.012質量部以下、又は、0.01質量部以下であってよい。重合体Bの含有量は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点から、0.008質量部以下、又は、0.005質量部以下であってよい。これらの観点から、重合体Bの含有量は、0.00001~10質量部、0.0001~1質量部、0.001~0.01質量部、又は、0.005~0.01質量部であってよい。
【0070】
重合体Bの含有量に対する砥粒の含有量の比率Bは、下記の範囲であってよい。比率Bは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、0.1以上、0.5以上、1以上、1超え、2以上、3以上、5以上、8以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、33以上、40以上、又は、50以上であってよい。比率Bは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点から、60以上、62.5以上、67以上、80以上、又は、100以上であってよい。比率Bは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、1000以下、800以下、500以下、400以下、300以下、200以下、167以下、150以下、120以下、又は、100以下であってよい。比率Bは、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、80以下、67以下、62.5以下、60以下、又は、50以下であってよい。これらの観点から、比率Bは、0.1~1000、10~500、又は、50~100であってよい。
【0071】
特定カチオン性ポリマーの含有量(重合体Aの含有量及び重合体Bの含有量の合計)は、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、CMP研磨液100質量部に対して下記の範囲であってよい。特定カチオン性ポリマーの含有量は、0.00001質量部以上、0.00005質量部以上、0.0001質量部以上、0.0002質量部以上、0.0003質量部以上、0.0005質量部以上、0.0008質量部以上、0.001質量部以上、0.002質量部以上、0.0025質量部以上、0.003質量部以上、0.004質量部以上、0.005質量部以上、0.008質量部以上、0.01質量部以上、0.012質量部以上、0.015質量部以上、0.02質量部以上、0.025質量部以上、0.03質量部以上、0.05質量部以上、0.08質量部以上、又は、0.1質量部以上であってよい。特定カチオン性ポリマーの含有量は、10質量部以下、5質量部以下、2.5質量部以下、2.5質量部未満、2質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下、0.1質量部以下、0.08質量部以下、0.05質量部以下、0.03質量部以下、0.025質量部以下、0.02質量部以下、0.015質量部以下、0.012質量部以下、0.01質量部以下、0.008質量部以下、0.005質量部以下、0.004質量部以下、0.003質量部以下、又は、0.0025質量部以下であってよい。これらの観点から、特定カチオン性ポリマーの含有量は、0.00001~10質量部、0.0001~1質量部、0.001~0.01質量部、0.005~0.01質量部、0.0025~0.1質量部、又は、0.001~0.01質量部であってよい。
【0072】
特定カチオン性ポリマーの含有量(重合体Aの含有量及び重合体Bの含有量の合計)に対する砥粒の含有量の比率Cは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、下記の範囲であってよい。比率Cは、0.1以上、0.5以上、1以上、1超え、2以上、3以上、5以上、8以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、33以上、40以上、50以上、60以上、62.5以上、67以上、80以上、100以上、120以上、150以上、167以上、200以上、300以上、400以上、又は、500以上であってよい。比率Cは、1000以下、800以下、500以下、400以下、300以下、200以下、167以下、150以下、120以下、100以下、80以下、67以下、62.5以下、60以下、50以下、40以下、33以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、8以下、又は、5以下であってよい。これらの観点から、比率Cは、0.1~1000、1~500、50~100、又は、5~100であってよい。
【0073】
(水)
本実施形態に係るCMP研磨液は、水を含有することができる。水としては、特に制限されるものではないが、脱イオン水、イオン交換水及び超純水からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0074】
(他の成分)
本実施形態に係るCMP研磨液は、その他の添加剤(カチオン性ポリマーに該当する化合物を除く)を含有してよい。添加剤としては、後述するpH調整剤及びpH緩衝剤;水溶性高分子;非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0075】
水溶性高分子としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸共重合体塩等のポリアクリル酸系ポリマー;ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸塩等のポリメタクリル酸系ポリマー;ポリアクリルアミド;ポリジメチルアクリルアミド;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、デキストリン、シクロデキストリン、プルラン等の多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマー;ポリグリセリン、ポリグリセリン誘導体等のグリセリン系ポリマー;ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0076】
非イオン性界面活性剤として、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル誘導体、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリエチレングリコールのオキシエチレン付加体、メトキシポリエチレングリコールのオキシエチレン付加体、アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体等のエーテル型界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアミノエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル等のエーテルエステル型界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド等のアルカノールアミド型界面活性剤;アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体;ポリビニルピロリドン;ポリアクリルアミド;ポリジメチルアクリルアミド;ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0077】
本実施形態に係るCMP研磨液において、炭酸グアニジンの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して、0.001質量部以下、0.001質量部未満、又は、0.0001質量部以下であってよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、炭酸グアニジンを含有しなくてよい(炭酸グアニジンの含有量が実質的に0質量部であってよい)。ヒドロキシアルキルセルロースの含有量は、CMP研磨液100質量部に対して、0.005質量部以下、0.005質量部未満、又は、0.001質量部以下であってよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、ヒドロキシアルキルセルロースを含有しなくてよい(ヒドロキシアルキルセルロースの含有量が実質的に0質量部であってよい)。酸化剤の含有量は、CMP研磨液100質量部に対して、0.01質量部以下、0.001質量部以下、又は、0.0001質量部以下であってよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、酸化剤を含有しなくてよい(酸化剤の含有量が実質的に0質量部であってよい)。4-ピロン系化合物の含有量は、CMP研磨液100質量部に対して、0.01質量部以下、0.01質量部未満、0.001質量部以下、0.001質量部未満、又は、0.0001質量部以下であってよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、4-ピロン系化合物を含有しなくてよい(4-ピロン系化合物の含有量が実質的に0質量部であってよい)。芳香族ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、CMP研磨液100質量部に対して、0.1質量部以下、0.05質量部以下、0.005質量部未満、0.001質量部以下、又は、0.0001質量部以下であってよい。本実施形態に係るCMP研磨液は、芳香族ポリオキシアルキレン化合物を含有しなくてよい(芳香族ポリオキシアルキレン化合物の含有量が実質的に0質量部であってよい)。
【0078】
(pH)
本実施形態に係るCMP研磨液のpHは、下記の範囲であってよい。pHは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点、並びに、酸化ケイ素の研磨速度を抑制しやすい観点から、10.0以下、9.5以下、9.0以下、8.0以下、8.0未満、7.0以下、7.0未満、6.5以下、6.0以下、6.0未満、5.0以下、5.0未満、又は、4.8以下であってよい。pHは、ポリシリコン及び窒化ケイ素の高い研磨速度を得やすい観点から、1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上、2.5以上、3.0以上、3.0超え、3.2以上、3.5以上、3.8以上、4.0以上、4.0超え、4.2以上、4.5以上、又は、4.8以上であってよい。これらの観点から、pHは、1.0~10.0、1.0~8.0、3.0~7.0、3.5~6.0、又は、2.0~5.0であってよい。pHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0079】
本実施形態に係るCMP研磨液のpHは、pHメータ(例えば、株式会社堀場製作所製の型番F-51)で測定することができる。例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH:4.01)と中性リン酸塩pH緩衝液(pH:6.86)とホウ酸塩pH緩衝液(pH:9.18)とを標準緩衝液として用いてpHメータを3点校正した後、pHメータの電極をCMP研磨液に入れて、3分以上経過して安定した後の値を測定する。このとき、標準緩衝液とCMP研磨液の液温は共に25℃とする。
【0080】
CMP研磨液のpHは、添加剤として使用する化合物の種類によって変化し得る。そのため、CMP研磨液は、pHを上述の範囲に調整するためにpH調整剤(特定カチオン性ポリマーに該当する化合物を除く)を含有してもよい。pH調整剤としては、酸成分、塩基成分等が挙げられる。酸成分としては、プロピオン酸、酢酸等の有機酸(アミノ酸に該当する化合物を除く);硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸;グリシン等のアミノ酸;複素環式アミン;アルカノールアミンなどが挙げられる。塩基成分としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等が挙げられる。本実施形態に係るCMP研磨液は、酸成分を含有してよく、有機酸を含有してよい。CMP研磨液は、pHを安定化させるため、pH緩衝剤を含有してもよい。緩衝液(緩衝剤を含む液)として緩衝剤を添加してよい。緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。pH調整剤又はpH緩衝剤を使用することなく調製されたCMP研磨液をCMPにそのまま適用してもよい。
【0081】
本実施形態に係るCMP研磨液は、少なくとも砥粒及びカチオン性ポリマーを含有する一液式研磨液として保存してよく、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して前記CMP研磨液となるように前記CMP研磨液の構成成分をスラリと添加液とに分けた複数液式(例えば二液式)の研磨液セット(CMP研磨液セット)として保存してもよい。スラリは、例えば、少なくとも砥粒と水とを含む。添加液は、例えば、少なくともカチオン性ポリマーと水とを含む。
【0082】
上述の研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されてCMP研磨液が作製される。また、一液式研磨液は、水の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に水で希釈して用いられてもよい。複数液式の研磨液セットは、水の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に水で希釈して用いられてもよい。
【0083】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、本実施形態に係るCMP研磨液を用いて被研磨材料を研磨する研磨工程を備える。研磨工程は、本実施形態に係るCMP研磨液を用いて、表面に被研磨材料を有する基体の当該被研磨材料を研磨する工程であってよい。研磨工程は、本実施形態に係るCMP研磨液を被研磨材料と研磨用部材(研磨パッド等)との間に供給しながら、研磨部材によって被研磨材料を研磨する工程であってよい。被研磨材料は、ポリシリコン、窒化ケイ素及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、ポリシリコンを含んでよい。研磨工程は、例えば、各成分の含有量、pH等が調整されたCMP研磨液を使用し、表面に被研磨材料を有する基体をCMP技術によって平坦化する工程であってよい。被研磨材料は、膜状(被研磨膜)であってよく、ポリシリコン膜、窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜等であってよい。
【0084】
本実施形態に係る研磨方法は、以下のようなデバイスの製造過程において、表面に被研磨材料を有する基体を研磨することに適している。デバイスとしては、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体;DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリ等の記憶素子;マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子;MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子;混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子などが挙げられる。
【0085】
本実施形態に係る研磨方法は、表面に段差(凹凸)を有する基体における当該表面の研磨に適している。基体としては、ロジック用の半導体デバイス、メモリ用の半導体デバイス等が挙げられる。被研磨材料は、高さ1μm以上の段差を有する被研磨材料、又は、上から見たときに凹部又は凸部がT字形状又は格子形状に設けられた部分を有する被研磨材料であってよい。例えば、被研磨材料を有する研磨対象は、メモリセルを有する半導体基板であってよい。本実施形態によれば、メモリセルを有する半導体基板を備える半導体デバイス(DRAM、フラッシュメモリ等)の表面に設けられた被研磨材料も高い研磨速度で研磨できる。本実施形態によれば、3D-NANDフラッシュメモリの表面に設けられた被研磨材料についても、高い平坦性を確保しつつ高い研磨速度で研磨することができる。基体の被研磨材料は、ポリシリコン、窒化ケイ素又は酸化ケイ素に加えて、Al、Cu、Ti、TiN、W、Ta、TaN等を含んでよい。
【0086】
研磨装置としては、例えば、基体を保持するホルダーと、研磨パッドが貼り付けられる研磨定盤と、研磨パッド上にCMP研磨液を供給する手段と、を備える装置が好適である。研磨装置としては、株式会社荏原製作所製の研磨装置(型番:EPO-111、EPO-222、FREX200、FREX300等)、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置(商品名:Mirra3400、Reflexion等)などが挙げられる。
【0087】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリル-エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4-メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)及びアラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の樹脂が使用できる。研磨パッドの材質としては、特に、研磨速度及び平坦性に更に優れる観点から、発泡ポリウレタン及び非発泡ポリウレタンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。研磨パッドには、CMP研磨液がたまるような溝加工が施されていてよい。
【0088】
研磨条件に特に制限はなく、研磨定盤の回転速度は、基体が飛び出さないようにする観点から、200rpm(min-1)以下であってよく、基体にかける圧力(加工荷重)は、被研磨面の傷を抑制しやすい観点から、100kPa以下であってよい。研磨している間、ポンプ等によって研磨パッドにCMP研磨液を連続的に供給してよい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常にCMP研磨液で覆われていてよい。
【0089】
研磨終了後、流水中で基体を充分に洗浄し、さらに、基体上に付着した水滴をスピンドライヤ等により払い落としてから乾燥させてよい。
【0090】
このように研磨することによって、表面の凹凸を解消し、基体全面にわたって平滑な面を得ることができる。被研磨材料の形成及び研磨を所定の回数繰り返すことによって、所望の層数を有する基体を製造することができる。
【0091】
このようにして得られた基体は、種々の電子部品及び機械部品として使用することができる。具体例としては、半導体素子;フォトマスク、レンズ、プリズム等の光学ガラス;ITO等の無機導電膜;ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路;光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶;固体レーザ単結晶;青色レーザLED用サファイヤ基板;SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶;磁気ディスク用ガラス基板;磁気ヘッドなどが挙げられる。
【0092】
本実施形態に係る部品の製造方法は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体を個片化する個片化工程を備える。基体は、ポリシリコン、窒化ケイ素及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも一種を備えてよい。基体としては、ウエハ(例えば半導体ウエハ)等が挙げられる。個片化工程は、例えば、本実施形態に係る研磨方法により研磨されたウエハ(例えば半導体ウエハ)をダイシングしてチップ(例えば半導体チップ)を得る工程であってよい。本実施形態に係る部品の製造方法は、個片化工程の前に、本実施形態に係る研磨方法により基体を研磨する工程を備えてよい。本実施形態に係る部品は、例えばチップ(例えば半導体チップ)である。本実施形態に係る部品は、本実施形態に係る部品の製造方法により得られる部品である。本実施形態に係る電子デバイスは、本実施形態に係る部品を備える。
【実施例】
【0093】
以下、本開示を実施例により更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。例えば、CMP研磨液の材料の種類及びその配合比率は、本実施例に記載の種類及び比率以外の種類及び比率でも差し支えなく、研磨対象の組成及び構造も、本実施例に記載の組成及び構造以外の組成及び構造でも差し支えない。
【0094】
<砥粒の準備>
(酸化セリウム粒子)
炭酸セリウム水和物40kgをアルミナ製容器に入れた後、830℃で2時間、空気中で焼成して黄白色の粉末を20kg得た。この粉末についてX線回折法で相同定を行い、当該粉末が多結晶体の酸化セリウムを含むことを確認した。焼成によって得られた粉末の粒径をSEMで観察したところ、20~100μmであった。次いで、ジェットミルを用いて酸化セリウム粉末20kgを乾式粉砕した。粉砕後の酸化セリウム粉末をSEMで観察したところ、結晶粒界を有する多結晶酸化セリウムを含む粒子が含まれていることが確認された。また、酸化セリウム粉末の比表面積は9.4m2/gであった。比表面積の測定はBET法によって実施した。
【0095】
上述の酸化セリウム粉末15kg、及び、脱イオン水84.7kgを容器内に入れて混合した。さらに、1Nの酢酸水溶液0.3kgを添加して10分間撹拌することにより酸化セリウム混合液を得た。この酸化セリウム混合液を別の容器に30分かけて送液した。その間、送液する配管内で、酸化セリウム混合液に対して超音波周波数400kHzにて超音波照射を行った。
【0096】
500mLビーカー4個にそれぞれ500gの酸化セリウム混合液を採取し、遠心分離を行った。遠心分離は、外周にかかる遠心力が500Gになるような条件で2分間実施した。ビーカーの底に沈降した酸化セリウム粒子(セリア粒子、砥粒)を回収し、上澄みを分取した。レーザ回折/散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製、商品名:LA-920)を用いて、酸化セリウム粒子の含有量が5質量%の分散液における酸化セリウム粒子の平均粒径を測定した結果、平均粒径は90nmであった。
【0097】
(酸化ケイ素粒子)
酸化ケイ素粒子(シリカ粒子、砥粒)として扶桑化学工業株式会社製の商品名「PL-3」を準備した。レーザ回折/散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製、商品名:LA-920)を用いて、酸化ケイ素粒子の含有量が5質量%の分散液における酸化ケイ素粒子の平均粒径を測定した結果、平均粒径は70nmであった。
【0098】
<CMP研磨液の作製>
表1~4に記載の砥粒(上述の酸化セリウム粒子又は酸化ケイ素粒子)及びカチオン性ポリマーと、脱イオン水とを混合することにより各実施例及び比較例2~4のCMP研磨液を得た。上述の酸化セリウム粒子と、脱イオン水とを混合することにより比較例1のCMP研磨液を得た。砥粒及びカチオン性ポリマーの含有量(基準;:CMP研磨液の全量)を表1~4に示す。ポリマー水溶液を用いてカチオン性ポリマーを供給する場合、カチオン性ポリマーの含有量は、ポリマー水溶液中のポリマーの質量に基づき算出した。カチオン性ポリマーとしては、下記の化合物を用いた。
【0099】
(カチオン性ポリマー)
[特定カチオン性ポリマー]
A1:ジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン重縮合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスKHE100L、重量平均分子量:7056(測定値))
A2:ジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン重縮合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスKHE102L、重量平均分子量:53336(測定値))
A3:ジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン重縮合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスKHE105L、重量平均分子量:479796(測定値))
A4:ジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン重縮合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスKHE1000L、重量平均分子量:1296145(測定値))
A5:ジメチルアミン/エピクロロヒドリン重縮合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスKHE104L)
B1:ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重縮合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスFPA1002L、上述の一般式(IV)で表される構造単位を有する重合体)
B2:ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体(ニットーボーメディカル株式会社製、商品名:PAS-J-81、上述の一般式(IV)で表される構造単位、及び、上述の一般式(VI)で表される構造単位を有する重合体)
B3:アリルアミン重合体(ニットーボーメディカル株式会社製、商品名:PAA-08、上述の一般式(I)で表される構造単位を有する重合体)
【0100】
[特定カチオン性ポリマーに該当しないカチオン性ポリマー]
X1:メタクリル酸トリメチルアミノエチルメチル硫酸塩重合物(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスFPV1000L)
X2:ポリアルキレングリコール変性スチレン-マレイン酸共重合体(共栄社化学株式会社製、商品名:フローレンGW-1500)
X3:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(青木油脂工業株式会社製、商品名:GEP-2500、EO/PO=30/70)
【0101】
上述の特定カチオン性ポリマーA1~A4の重量平均分子量の測定値は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリエチレンオキシド(東ソー株式会社製、SE-2、SE-5、SE-30及びSE-150)、プルラン(PSS製、pss-dpul 2.5m)、並びに、ポリエチレングリコール(富士フィルム和光純薬株式会社製、PEG400、PEG1000、PEG3000及びPEG6000)を用いて3次式で近似した。
ポンプ:株式会社島津製作所製、商品名「LC-20AD」
検出器:株式会社島津製作所製、商品名「RID-10A」
カラムオーブン:株式会社島津製作所製、商品名「CTO-20AC」
カラム:東ソー株式会社製の商品名「TSKGelG6000PWXL-CP」を2本直列に接続
カラムサイズ:7.8mmI.D×300mm
溶離液:0.1M硝酸ナトリウム水溶液
試料濃度:4mg/2mL(N.V.換算)
注入量:100μL
流量:1.0mL/min
測定温度:25℃
【0102】
レーザ回折/散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製、商品名:LA-920)を用いて、CMP研磨液における砥粒の平均粒径を測定した結果、酸化セリウム粒子の平均粒径はいずれも90nmであり、酸化ケイ素粒子の平均粒径は70nmであった。
【0103】
CMP研磨液のpHを以下の条件により測定した。測定結果を表1~4に示す。
測定温度:25℃
測定装置:株式会社堀場製作所製、型番F-51
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃);ホウ酸塩pH緩衝液、pH:9.18)を用いて3点校正した後、電極をCMP研磨液に入れて、3分以上経過して安定した後のpHを上述の測定装置により測定した。
【0104】
<研磨特性評価>
上述の各CMP用研磨液を使用し、表面に被研磨膜(ポリシリコン膜、窒化ケイ素膜又は酸化ケイ素膜)を有するブランケットウェハを下記研磨条件で研磨した。ブランケットウェハとして、直径300mmのシリコン基板上に配置された膜厚200nmのポリシリコン膜を有するウェハ、直径300mmのシリコン基板上に配置された膜厚300nmの窒化ケイ素膜を有するウェハ、及び、直径300mmのシリコン基板上に配置された膜厚1000nmの酸化ケイ素膜(二酸化ケイ素膜)を有するウェハを用いた。上述の各CMP用研磨液を使用したポリシリコン膜の研磨は、砥粒の水分散液を用いてポリシリコン膜を研磨した後に行った。
【0105】
[研磨条件]
研磨装置:CMP用研磨機、Reflexion-LK(APPLIED MATERIALS社製)
研磨パッド:多孔質ポリウレタンパッドIC-1010(デュポン株式会社製)
研磨圧力(荷重):3.0psi
定盤回転数:93rpm
ヘッド回転数:87rpm
CMP研磨液の供給量:125mL/min
研磨時間:15秒(ポリシリコン)、15秒(窒化ケイ素)、30秒(酸化ケイ素)
【0106】
Nova Measuring Instruments社製の光干渉式膜厚測定装置(装置名:NOVA i500)を用いて、研磨前後の被研磨膜(ポリシリコン膜、窒化ケイ素膜及び酸化ケイ素膜)の膜厚を測定して膜厚の変化量を算出した。79点の膜厚を測定し、膜厚の平均値を用いて膜厚の変化量を算出した。膜厚の変化量と研磨時間とに基づき、下記式により被研磨膜の研磨速度(ブランケットウェハ研磨速度)を算出した。また、酸化ケイ素に対するポリシリコンの研磨速度比、及び、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素の研磨速度比を算出した。結果を表1~4に示す。特定カチオン性ポリマーを用いることによりポリシリコンの高い研磨速度が得られることが分かる。
研磨速度[Å/min]=(研磨前の膜厚[Å]-研磨後の膜厚[Å])/研磨時間[min]
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】