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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物、シート、金属ベース基板
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20240709BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240709BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240709BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240709BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20240709BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20240709BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240709BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240709BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08L71/12
C08L21/00
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/28
C08K3/38
C08K5/14
C08J5/24 CEZ
B32B15/08 U
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023213688
(22)【出願日】2023-12-19
【審査請求日】2024-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 広志
(72)【発明者】
【氏名】山下 太輔
(72)【発明者】
【氏名】藤田 明
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正紀
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/014584(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/119805(WO,A1)
【文献】特開2021-031600(JP,A)
【文献】国際公開第2021/251494(WO,A1)
【文献】特開2021-155737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/00-71/14
C08K 3/013
C08L 21/00
C08K 5/14
C08K 3/22
C08K 3/28
C08K 3/38
B32B 15/08
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂と、(B)合成ゴムと、(C)架橋剤と、(D-1 )第一の無機充填剤と、を含み、
前記(D-1)第一の無機充填剤が、平均粒子径0~0μmの凝集窒化ホウ素又は塊状窒化ホウ素であることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂が、炭素数2~15の不飽和二重結合を分子内に有する置換基を含む、末端変性ポリフェニレンエーテル樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)合成ゴムが、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、スチレンブタジエン、マレイン変性1,2-ポリブタジエン、アクリル変性1,2-ポリブタジエン、エポキシ変性1,2-ポリブタジエン、スチレン共役ジエンブロック共重合体、水添スチレン共役ジエンブロック共重合体、及び、ポリイソプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)架橋剤の分解温度が、100~150℃である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)架橋剤が、パーオキサイド系である、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(E)架橋助剤を含むものであって、前記(E)架橋助剤が、エステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、エーテルアクリレート、メラミンアクリレート、アルキドアクリレート、シリコンアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、スチレン、ポリパラメチルスチレン及び多官能エポキシからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(D-2)第二の無機充填剤として、アルミナ及び/又は窒化アルミを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、(F)シランカップリング剤を含む、請求項1又は6に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の樹脂組成物を含有するワニス。
【請求項10】
請求項9に記載のワニスをキャリア材に塗布すると共に、ワニス層が未硬化の状態で100~200μmの厚みに形成してなる、無機複合シート。
【請求項11】
請求項9に記載のワニスをキャリア材に塗布形成して成る未硬化のワニス層を有する無機複合シートであって、前記無機複合シートが2枚積層し100~200μmの厚みに形成してなる、無機複合シート。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の無機複合シートを積層成形してなる金属ベース基板。
【請求項13】
金属ベース基板断面の無機複合シート層(キャリア材を除く)において、前記(D-1)第一の無機充填剤のうち、平均粒子径30~70μmの窒化ホウ素が前記無機複合シート層中70%以上観測される、請求項12に記載の金属ベース基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、シート及び金属ベース基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化や高周波化、高出力化の要求に伴い、半導体の高集積化やプリント配線板の小型化等を図る為にビルドアップ工法によるプリント配線基板の製造が盛んに行われている。これらプリント配線基板には、高い放熱性能が求められており、熱伝導性に優れた材料を用いる開発が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂モノマーと、硬化剤と、フィラーと、を含有し、前記フィラーが、D50が20μm以上であり、かつ、一次粒子のアスペクト比の平均が30以下である窒化ホウ素粒子、又は前記窒化ホウ素粒子の凝集体を含む第一のフィラーと、D50が10μm未満、かつ、平均アスペクト比が5以下である窒化ホウ素粒子又は前記窒化ホウ素粒子の凝集体を含む第二のフィラーと、を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、エポキシ樹脂モノマーと、2価のフェノール化合物をノボラック化したノボラック樹脂を含む硬化剤と、α-アルミナと窒化ホウ素との混合フィラー、とを含有したエポキシ樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-165401号公報
【文献】特開2016-155985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や2に記載されるように、一般的にプリント配線基板向けには、エポキシ樹脂組成物が用いられている。これは、エポキシ樹脂組成物は、シートに成形しBステージ化することに優れており、また、硬化物とした際に機械物性や耐熱性に優れるためである。
【0007】
しかしながら、エポキシ樹脂組成物からなるBステージを硬化させるには、積層物を両面から熱プレスし、付加反応を進めることが求められるが、反応時間が長く成形サイクルが長いことが課題となっている。また、プレスにより樹脂組成物中の無機充填剤が圧壊し本来の熱伝導性を発揮できない可能性があるという課題も生じていた。
【0008】
以上のことから、本発明では、熱伝導性と絶縁信頼性を向上しつつ、成形サイクルの短縮に寄与する樹脂組成物、及びワニス、その無機複合シート、金属ベース基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、ポリフェニレンエーテル樹脂と、架橋性樹脂と、特定の無機充填剤と、を含む樹脂組成物が、熱伝導性と絶縁信頼性に優れ、かつ成形サイクルの短縮に寄与することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) (A)ポリフェニレンエーテル樹脂と、(B)合成ゴムと、(C)架橋剤と、(D-1)第一の無機充填剤と、を含み、
前記(D-1)第一の無機充填剤が、平均粒子径10~80μmの窒化ホウ素であることを特徴とする、樹脂組成物。
(2) 前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂が、炭素数2~15の不飽和二重結合を分子内に有する置換基を含む、末端変性ポリフェニレンエーテル樹脂である、上記(1)に記載の樹脂組成物。
(3) 前記(B)合成ゴムが、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、スチレンブタジエン、マレイン変性1,2-ポリブタジエン、アクリル変性1,2-ポリブタジエン、エポキシ変性1,2-ポリブタジエンスチレン共役ジエンブロック共重合体、水添スチレン共役ジエンブロック共重合体、及び、ポリイソプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、上記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物。
(4) 前記(C)架橋剤の分解温度が、100~150℃である、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
(5) 前記(C)架橋剤が、パーオキサイド系である上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
(6) さらに、(E)架橋助剤を含むものであって、前記(E)架橋助剤が、エステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、エーテルアクリレート、メラミンアクリレート、アルキドアクリレート、シリコンアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、スチレン、ポリパラメチルスチレン及び多官能エポキシからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である上記(5)に記載の樹脂組成物。
(7) さらに、(D-2)第二の無機充填剤として、アルミナ及び/又は窒化アルミを含む、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
(8) さらに、(F)シランカップリング剤を含む、上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
(9) 上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含有するワニス。
(10) 上記(9)に記載のワニスをキャリア材に塗布すると共に、ワニス層が未硬化の状態で100~200μmの厚みに形成してなる、無機複合シート。
(11) 上記(9)にに記載のワニスをキャリア材に塗布形成して成る未硬化のワニス層を有する無機複合シートであって、前記無機複合シートが2枚積層し100~200μmの厚みに形成してなる、無機複合シート。
(12) 上記(10)又(11)に記載の無機複合シートを積層成形してなる金属ベース基板。
(13) 金属ベース基板断面の無機複合シート層(キャリア材を除く)において、前記(D-1)第一の無機充填剤のうち、平均粒子径30~70μmの窒化ホウ素が前記無機複合シート層70%以上観測される、上記(12)に記載の金属ベース基板。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂と、合成ゴムと、特定の無機充填剤と、を用いることで、熱伝導性と絶縁信頼性に優れたものとなり、かつ、成形サイクルの向上に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について詳細を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定
されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することが
できる。
【0013】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂と、(B)合成ゴムと、(C)架橋剤と、と、(D-1)第一の無機充填剤と、を含み、前記(D-1)第一の無機充填剤が、平均粒子径10~80μmの窒化ホウ素である。
【0014】
〔(A)ポリフェニレンエーテル樹脂〕
本発明で用いるポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物を単独で用いる単独重縮合や、該化合物を2種以上用いる共重合により得ることができる。ポリフェニレンエーテル樹脂を用いると、樹脂組成物の流動性が高くなることを抑制でき、また、得られる硬化物が低誘電特性を示す為、絶縁信頼性を向上させることができる。
【0015】
前記フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2,6-ジプロピルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2-メチル-6-プロピルフェノール、2-エチル-6-プロピルフェノール、m-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,3-ジプロピルフェノール、2-メチル-3-エチルフェノール、2-メチル-3-プロピルフェノール、2-エチル-3-メチルフェノール、2-エチル-3-プロピルフェノール、2-プロピル-3-メチルフェール、2-プロピル-3-エチル-フェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,3,6-トリエチルフェノール、2,3,6-トリプロピルフェノール、2,6-ジメチル-3-エチルフェノール、2,6-ジメチル-3-プロピルフェノール等が挙げられる。
【0016】
前記フェノール性水酸基を有する化合物の単独重縮合や共重合により得られるポリフェニレンエーテル樹脂を具体的に例示すると、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジエチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジプロピルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルにスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体が挙げられる。
【0017】
また、本発明で用いるポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリスチレンなどとのアロイ化ポリマーの形で市販されることがある。このようなアロイ化ポリマーも使用できる。アロイ化ポリマーとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのアロイ化ポリマー、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン-ブタジエンコポリマーとのアロイ化ポリマー等が挙げられる。
【0018】
本発明で用いるポリフェニレンエーテル樹脂の中でも、1つのフェニレン骨格につき該フェニレン骨格の炭素原子に結合したメチル基を1~4つ有する樹脂が好ましい。また、ポリフェニレンエーテル樹脂は重量平均分子量が500以上5000以下であることが好ましく、500以上2000以下であることがより好ましく、1000以上2000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、ポリスチレン換算した値である。
【0019】
本発明の樹脂組成物におけるポリフェニレンエーテル樹脂の配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物特性が良好である点から、樹脂組成物の固形分全体を100質量とした際に、25wt%以下であると好ましく、13~15wt%であると好ましい。前記範囲内であると、得られる無機複合シートのピール強度に優れ好ましい。
【0020】
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂は、炭素数2~15の不飽和二重結合を分子内に有する置換基により末端変性された、末端変性ポリフェニレンエーテル樹脂であるとより好ましい。
【0021】
炭素数2~15の不飽和二重結合を分子内に有する置換基とは、特に構造を限定されるものではないが、例えば、下記式などが挙げられる。
【0022】
【化1】
【0023】
式(1)中、Yは、炭素数1~13の炭化水素基、アリーレン基、又はカルボニル基を示す。Rは、それぞれ独立に水素原子、水酸基又は炭素数1~13の炭化水素基(例えば、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基)、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基を示す。
【0024】
本実施形態の末端変性ポリフェニレンエーテルは、末端変性ポリフェニレンエーテル1分子当たりの、分子末端に有する、炭素数2~15の不飽和二重結合を分子内に有する置換基の平均個数(末端置換基数)が1.5~3個であることが好ましく、1.7~2.7個であることがより好ましく、1.8~2.5個であることがさらに好ましい。前記範囲内にあると、架橋点が十分形成され、得られる硬化物の耐熱性優れ、また、反応の過剰進行を抑制し、樹脂組成物の保存性安定性や流動性維持に優れるため好ましい。
【0025】
なお、末端変性ポリフェニレンエーテルの末端置換基数は、末端変性ポリフェニレンエーテル1モル中に存在する全ての末端変性ポリフェニレンエーテルの1分子あたりの、置換基数の平均値を表した数値等が挙げられる。この末端置換基数は、例えば、得られた末端変性ポリフェニレンエーテルに残存する水酸基数を測定して、末端変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分を算出することによって、測定することができる。この末端変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分により算出される。末端変性ポリフェニレンエーテルに残存する水酸基数の測定方法は、末端変性ポリフェニレンエーテルの溶液に、水酸基と会合する4級アンモニウム塩(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)を添加し、その混合溶液のUV吸光度を測定することによって、求めることができる。
【0026】
〔(B)合成ゴム〕
本発明で用いる架橋性樹脂は、特に制限されるものではないが、例えば、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、スチレンブタジエン、マレイン変性1,2-ポリブタジエン、アクリル変性1,2-ポリブタジエン、エポキシ変性1,2-ポリブタジエン、スチレン共役ジエンブロック共重合体、水添スチレン共役ジエンブロック共重合体、及び、ポリイソプロピレンからなる群の中から選ばれた少なくとも1種以上であることが好ましく、電気特性と耐熱性の観点から、スチレンブタジエン、エポキシ変性1,2-ポリブタジエンであると特に好ましい。合成ゴムを配合することで、得られる樹脂組成物の可撓性や、金属との密着性が向上するため好ましい。
【0027】
〔(C)架橋剤〕
本発明で用いる架橋剤は、特に制限されるものではないが、より好ましくは分解温度が100~150℃である。架橋剤としては、硫黄系、パーオキサイド系、キノイド系、ビスマレイミド系が挙げられる。なお、本明細書において「分解温度」とは、10時間半減期温度のことを示す。
【0028】
前記硫黄系としては、硫黄、テトラメチルチラウムジスルフィド、2-(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、モルフォリンジスルフィドなどが挙げられる。
【0029】
前記パーオキサイド系としては、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミリパーオキサド、ジ-tert-ブチルパーオキサド、2・5-ジメチル-2・5-ジ-tert-ブチルパーオキシヘキシン-3、2・5-ジメチル-2・5-ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサン、α・α’-ビス(tert-ブチルパーオキ-m-イソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0030】
前記キノイド系としては、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキサイド、p-ニトロソベンゼンなどが挙げられる。
【0031】
前記ビスマレイミド系としては、4,4’-ビスマレイミドジフェニルアミン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミドなどが挙げられる。なお、ビスマレイミド系架橋剤は、パーオキサイド系架橋剤を用いた場合、後述する架橋助剤としても使用することができる。
【0032】
架橋剤としては、パーオキサイド系であることが好ましく、ジクミルパーオキサイドであるとより好ましい。パーオキサイド系であると、ワニスからシートを作製する際の溶媒を除去する温度で反応が進まない為好ましい。
【0033】
上述の(A)ポリフェニレンエーテル樹脂、(B)合成ゴム、及び(C)架橋剤の配合割合は、特に限定されるものではないが、例えば、前記3成分の全体質量を100とした際に、(A):(B):(C)=30:25:60~50:5:45の範囲であることが好ましい。前記範囲内にあることで、電気特性と耐熱性に優れ好ましい。
【0034】
〔無機充填剤〕
≪(D-1)第一の無機充填剤≫
(窒化ホウ素)
本実施形態の窒化ホウ素は、鱗片状の窒化ホウ素をランダムに配向させた凝集窒化ホウ素又は塊状窒化ホウ素である。凝集窒化ホウ素又は塊状窒化ホウ素を用いることで、面方向に窒化ホウ素が配向することを抑制し、後述する無機複合シートとした際に、厚み方向の熱伝導率が向上する為、好ましい。
【0035】
前記窒化ホウ素の平均粒子径は、10μm以上80μm以下が好ましく、更に30μm以上70μm以下が好ましい。前記範囲内にあると、得られる硬化物の熱伝導性が向上するため好ましい。なお、本発明において第一の無機充填剤における「平均粒子径」とは、凝集あるいは塊状の二次粒子の粒子径を示すものである。
【0036】
本実施形態の窒化ホウ素は、市販されているものを用いることができ、HP-40MF、HP40-J2(水島合金鉄株式会社製)、PTX60(モメンティブ社製)、Agglomerates50(スリーエム社製)などが挙げられる。好ましいのは内部ボイドのない焼成して凝集体に作製されたHP-40MF、HP40-J2(水島合金鉄株式会社製)である。
【0037】
本実施形態の窒化ホウ素は、公知の方法により製造することもできる。例えば、特開2019-073409号公報に記載の方法を用いることができる。
【0038】
本実施形態の樹脂組成物における、窒化ホウ素の含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部中、60~85質量部であればよく、65~80質量部が好ましい。
【0039】
≪(D-2)第二の無機充填剤≫
本発明の樹脂組成物は、第二の無機充填剤を含んでいても良く、前記第二の無機充填剤としてはアルミナ及び/又は窒化アルミが挙げられる。アルミナ及び/又は窒化アルミであると、熱伝導率に優れるため好ましい。
【0040】
(アルミナ)
本実形態において、「アルミナ」は酸化アルミニウムであり、γ、δ、θ、κ等の各種の結晶形の遷移アルミナであっても、または遷移アルミナ中のアルミナ水和物を含んであっても良いが、より安定性に優れる点で、基本的にα結晶形であることが好ましい。
【0041】
前記アルミナの形状は、球状、多面体状であることが好ましく、特に14面体以上の多面体状であることがより好ましい。14面体以上であることで、14面体未満の多面体と比較して、粒子同士の面間距離が近くなることにより、優れた熱伝導率が得られやすくなるため好ましい。
【0042】
アルミナの形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認することができる。JEOL社製JCM7000を用いて、サンプルの任意の視野からの複数SEM画像により得られたイメージを観察する。そして、無作為に選出した50個のアルミナ粒子の観察結果に対し、個数基準で60%以上の粒子の形状を、そのサンプルが有する形状と判断できる。
【0043】
本実施形態におけるアルミナの平均粒子径は、25μm以上45μm以下が好ましい。平均粒子径が25μm以上であると、ワニスとした際に粘度が上昇することを抑制し好ましい。平均粒子径が45μm以下であるとシートの加工性に優れ好ましい。
【0044】
本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積粒度分布から、体積基準メジアン径D50として算出された値とする
【0045】
本実施形態の樹脂組成物における、アルミナの含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部中、30~80質量部であればよく、40~70質量部がであってもよい。好適なアルミナの含有量は後述する窒化ホウ素の含有量に応じて設定することができる。
【0046】
本実施形態のアルミナは市販されているアルミナ粒子を用いても良く、特開2016-028993号公報、国際公開第2021/070729号に記載の方法により製造したアルミナ粒子を用いても良い。
【0047】
市販されているアルミナ粒子としては、DAW45(デンカ社製)、CB-A20S、CB-AS30S、CB-P15(レゾナック社製)、AZシリーズ(日鉄マテリアル&ケミカル社製)、AH40-S(DIC社製)、AO-502(アドマテックス社製)が挙げられ、流動性では観点から、CB-A20S、CB-A30S、CB-P15(レゾナック社製)、AO-502(アドマテックス社製)、熱伝導性ではAH40-S(DIC社製)であると良いが、これらに限定されるものではない。
【0048】
なお、これらアルミナ粒子は単独で用いても良く複数組み合わせて用いてもよいが、複数組み合わせて用いることが好ましい。複数組み合わせて使用する場合、多面体形状のアルミナ粒子が全アルミナ中、50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有するとより好ましい。前記範囲内にあることで、得られる無機複合シート、金属ベース基板の熱伝導性が特に優れるため好ましい。
【0049】
(窒化アルミ)
前記窒化アルミとしては、公知慣用のものが用いられるが、平均粒子径が0.5~100μmの粒状であることが好ましい。市販されている窒化アルミとしては、FAN-f05-A1、FAN-f30-A1、FAN-f50-A1、FAN-f80-A1(古河電子株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本実施形態の樹脂組成物においては、(D-1)第一の無機充填剤と(D-2)第二の無機充填剤とを併用することができる。併用する場合、(D-1)第一の無機充填剤および(D-2)第二の無機充填剤の合計含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部中60~85質量部であることが好ましく、65~80質量部であることがより好ましい。前記範囲内にあることで、樹脂組成物またはそのワニスの粘度上昇を抑制し、均一な塗膜を形成することができる。
【0051】
前記範囲内であれば、(D-1)第一の無機充填剤と(D-2)第二の無機充填剤の含有量は、どのような組み合わせであってもよいが、(D-1)第一の無機充填剤と(D-2)第二の無機充填剤の質量比が50:50~5:95であるとよく、45:55~10:90であるとより好ましく、40:60~15:85であると特に好ましい。前記範囲内であると、熱伝導率および絶縁信頼性の両方を優れた水準で兼備できることから好ましい。
【0052】
(D-1)第一の無機充填剤と(D-2)第二の無機充填剤を組み合わせることにより、従来より優れた熱伝導率を取得することができるため、樹脂組成物中の充填量を低減することができる。また、充填量が低減されることにより、樹脂組成物の絶縁破壊電圧が高くなり、さらに、絶縁破壊電圧のばらつきが抑制され、電気特性を安定化することができる。なお、得られる特性の観点から、(D-1)第一の無機充填剤単独であると特に好ましい。
【0053】
〔(E)架橋助剤〕
本実施形態において、(C)架橋剤としてパーオキサイド系を使用する場合は、効率的な架橋反応を進める観点で、さらに架橋助剤を加えることが好ましい。前記架橋助剤としては、例えば、エステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、エーテルアクリレート、メラミンアクリレート、アルキドアクリレート、シリコンアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、スチレン、ポリパラメチルスチレン及び多官能エポキシからなる群の中から選ばれた少なくとも1種以上であることが好ましく、電気特性と耐熱性の観点から、トリアリルイソシアヌレートであると特に好ましい。
【0054】
(E)架橋助剤の配合量は、樹脂組成物(無機充填剤を除く)全体を100とした際に、0.5~5wt%であることが好ましい。前記範囲内にあることで、架橋反応が効率よく進行させることができる。
【0055】
〔(F)シランカップリング剤〕
シランカップリング剤としては、エポキシシラン等などが挙げられる。
【0056】
<ワニス>
本発明の樹脂組成物はワニスに好適に使用することができる。前記ワニスの調製方法としては、公知の方法を使用でき、前記樹脂組成物を、有機溶媒に溶解(希釈)し、ワニスとすることができる。
【0057】
前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メトキシプロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒を用いることができ、前記溶媒は1種のみでもよいし、2種以上併用してもよい。
【0058】
前記溶媒の使用量は特に限定されるものではなく、例えば、シート加工性を加味して適宜決定することができる。具体的には、得られるワニスの粘度は3000mPa・s~15000mPa・sとなるように調製することが好ましい。粘度が3000mPa・s以上であると、塗工時のはじきによる外観不良が抑制され好ましい。粘度が15000mPa・s以下であると、塗工時のスジむらによる外観不良が抑制され好ましい。
【0059】
〔その他成分〕
前記ワニスは、本発明の目的を損なわない範囲で、その他成分を含有することができる。例えば、分散剤などが挙げられる。
【0060】
前記分散剤としては、塗料用に使用されている分散剤であれば特に限定されるものではないが、例えばDisperbyk-110、111、180、161、BYK-W996、W9010、W903などが挙げられる。分散剤を用いることにより、無機充填剤の分散性を向上させるだけでなく、ワニスの粘度を上述の範囲内に調製することが可能となる。
【0061】
<無機複合シート>
前記ワニスは、無機複合シートに好適に用いられる。無機複合シートは、上述のワニスをキャリア材に塗布し、加熱乾燥させたものである。
なお、前記無機複合シートが、キャリア材表面において半硬化状態で形成される。すなわち、前記加熱乾燥とは、Bステージ化することであり、キャリア材に塗布されたワニスを加熱することにより、ワニス中の架橋の反応を一部行わせているものである。したがって、本実施形態の無機複合シートは、積層成形の加熱加圧によって一旦溶融した後に硬化する性質を備えているものである。
【0062】
ワニスの塗布方法は特に制限されず、公知の方法により実施することができる。例えば
、コンマコート、ダイコート、リップコート、グラビアコート等の方法が挙げられる。所
定の厚さの無機複合シートを形成する方法としては、ギャップ間に被塗工物を通過させる
コンマコート法、ノズルから流量を調節したワニスを塗布するダイコート法等が好ましい
【0063】
キャリア材に形成される前記無機複合シートの厚みは、100~200μmであること
が好ましい。厚みが200μm以下であると、熱抵抗が小さくなり好ましい。厚みが20
0μmに近づくほど、シート形成時のミクロボイド発生を抑制でき、絶縁破壊電圧が大きくなり好ましい。無機複合シートを2枚積層し使用する際は、積層プレス後の厚みが100~200μmとなるように1枚当たりの厚みを調整することが好ましい。本発明の樹脂組成物は、従来のものと比較して薄膜化が可能であり、キャリア材を容易に剥離できるため、2枚積層プレス形成であっても厚みを100~200μmの無機複合シートを得ることが可能となった。
【0064】
前記キャリア材としては、高分子フィルムや金属シートを用いることが好ましい。前記
高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレ
フィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、アセチルセ
ルローズ、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。前記金属シートとしては、金属シー
トとしては、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔のような金属箔等を例示することができ
る。さらには、キャリア材としては、離型紙等が挙げられる。
【0065】
<金属ベース基板>
本発明の無機複合シートは、積層成形し金属ベース基板として好適に用いることができ
る。具体的には、上述で得られた無機複合シートを2枚以上積層させ、所望の厚みとした
後に、その片側又は両側の最外層に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物をプレ
ス成形の様な加熱加圧により積層一体化することで得られる。ここで金属箔としては、銅
、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。
積層物を加熱加圧する条件としては、ワニスが硬化する条件で適宜調整して加熱
加圧すればよいが、加圧の圧力があまりに低いと、得られる金属ベース基板の内部に気泡
が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成形性を満足する条件で加圧すること
が好ましい。例えば、加熱温度100~200℃、圧力0.98~4.9MPaの条件下
で10分~2時間加熱加圧成形することにより一体成形して金属ベース基板を得ることが
できる。
【実施例
【0066】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳述するが、本記述は本発明を限定するものではない。
【0067】
〔フィラーの調製〕
本実施形態においては、複数のフィラーを併用したものを用いた。各フィラーの配合を表1に示す。
【0068】
使用したフィラーは以下の通りである。
HP40MF100(凝集窒化ホウ素、JFEミネラル株式会社)
HP40MFJ2(凝集窒化ホウ素、JFEミネラル株式会社)
AH-40S(多面体アルミナ、DIC株式会社)
【0069】
[製造例1]
オルトホウ酸(新日本電工株式会社製)100質量部と、アセチレンブラック(HS100、デンカ株式会社製)35質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、黒鉛製の坩堝中に充填し、アーク炉にて、アルゴン雰囲気で、2200℃にて5時間加熱し炭化ホウ素を合成した。合成した炭化ホウ素の塊をボールミルで40分粉砕し、篩網を用いて粒径75μm以下に篩分け、更に硝酸水溶液で洗浄して鉄分等不純物を除去後、濾過・乾燥して平均粒径33μmの炭化ホウ素粉末を作製した。
【0070】
前記炭化ホウ素粉末を窒化ホウ素製の坩堝中に充填した後、抵抗加熱炉を用い、窒素ガスの雰囲気で、2000℃、9気圧(0.8MPa)の条件で10時間加熱することにより炭窒化ホウ素を得た。
【0071】
前記炭窒化ホウ素100質量部と、ホウ酸200質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、窒化ホウ素製の坩堝中に充填し、抵抗加熱炉を用い0.3MPaの圧力条件で、窒素ガス雰囲気下で、室温から1000℃までの昇温速度を10℃/min、1000℃からの昇温速度を2℃/minとして、保持温度2000℃まで昇温し、当該保持温度2000℃にて保持時間10時間で加熱することにより、一次粒子が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素を合成した。
【0072】
合成した塊状窒化ホウ素を乳鉢により10分解砕をおこなった後、篩網を用いて、篩目95μmのナイロン篩にて分級を行った。焼成物を解砕及び分級することより、一次粒子が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末を得た。
【0073】
[製造例2]
炭化ホウ素合成時の粉砕を1時間にし、平均粒径20μmの炭化ホウ素(炭素量19.9%)を合成して原料としたこと以外は、製造例1と同様の条件で合成した。
【0074】
(平均粒子径D50)
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積粒度分布から、体積基準メジアン径D50として算出された値とする。
【0075】
【表1】
【0076】
〔樹脂の調製〕
表2に従い樹脂の調製を行った。
【0077】
使用した材料は以下の通りである。
ポリフェニレンエーテル(NORYL SA9000、数平均分子量1900:SABIC社製)
エポキシ(以下の3成分をa:b:c=11:6:3の配合で混合し使用した)
a:エピクロン850(DIC株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
b:NC-3000(日本化薬株式会社製、フェノールビフェニルアラルキルエポキシ樹脂)
c:VG-3101(株式会社プリンテック製、3官能エポキシ樹脂)
スチレンブタジエンコポリマー(SBS:旭化成株式会社製)
1,4-ポリブタジエン(PB:日本曹達株式会社製)
トリアリルイソシアヌレート(TAIC:三菱ケミカル株式会社製)
ジクミルパーオキサイド(パークミルD、分解温度116.4℃:日油株式会社製)
1,1-ジ((t-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン(パーヘキサC、分解温度90.7℃:日油株式会社製)
【0078】
【表2】
【0079】
〔実施例1~8、比較例1〕
調整したフィラーならびに樹脂を用いて、表3に従い配合し樹脂組成物を得た。さらに、以下の方法に従い無機複合シートならびに金属ベース基板を作製し評価した。
【0080】
(金属ベース基板の作製)
得られた樹脂組成物を、プラネタリーミキサーにて混練し、所定量の溶剤(トルエン)を配合することにより粘度を3000mPa・sに調製したワニスを得た。次に、このワニスを厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムに塗布し、130℃で8分間加熱乾燥することにより、キャリア材の一面に厚み150μmでBステージ状態の無機複合シートを形成した。
【0081】
得られた無機複合シートを1枚重ね、銅箔18μmを、塗工シート、アルミ板1mmに配置し、真空中で加熱温度175℃、加圧力2.94MPaで30分間、加熱加圧成形し金属ベース基板を作製した。なお、エポキシを用いた比較例においては、前述の条件では作製ができないため、加熱温度175℃、加圧力2.94MPaで90分間に変更し、加熱加圧成形した。
【0082】
〔実施例9〕
(積層無機複合シートの作製)
表3に従い得られた樹脂組成物を、プラネタリーミキサーにて混練し、所定量の溶剤(トルエン)を配合することにより粘度を3000mPa・sに調製したワニスを得た。次に、このワニスを厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムに塗布し、130℃で8分間加熱乾燥することにより、キャリア材の一面に厚み100μmでBステージ状態の無機複合シートを形成した。
【0083】
得られた無機複合シートを2枚重ね、銅箔18μmを両側に配置し、真空中で加熱温度175℃、加圧力2.94MPaで30分間、加熱加圧成形し金属ベース基板を作製した。
【0084】
従来の無機複合シートでは、キャリア材を剥離して単独で取り扱うことが不可能であり、また薄膜の無機複合シートを形成することが困難であったため、積層プレスして使用すると厚くなり、本実施形態の様な無機複合シートを得ることはできなかった。
【0085】
(熱伝導率)
無機複合シートを積層させ、真空中で加熱温度175℃、加圧力2.94MPaで90分間、加熱加圧成形し厚み1mmのシート硬化物を得た。前記シート硬化物を熱伝導率測定装置(LFA467 HyperFlash、NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱拡散率及び比熱の測定を行った。次いで、アルキメデス法により、この放熱部材の密度を測定した。得られた熱拡散率、比熱、そして密度の積から、この放熱部材の熱伝導率を見積もった。
【0086】
(90度ピール強度(引きはがし強さ)の評価)
得られた金属ベース基板をJIS C 6481に準拠して、銅箔の引きはがし強さを測定した。ピール強度測定装置としては、島津製作所社製「オートグラフ」を用いた。20個のテストサンプルについて、銅箔の引きはがし強さを測定した。20個のテストサンプルにおける銅箔の引きはがし強さの測定値の平均値を、90度ピール強度とした。
【0087】
(絶縁破壊強度の評価)
得られた金属ベース基板における銅箔をエッチングすることにより、直径2.5cmの円形に銅箔をパターニングして、テストサンプルを得た。耐電圧試験機(YST-243AT-100、ヤマヨ試験器有限会社製)を用いて、貫層方向に0.5kV/秒の速度で電圧が上昇するように、温度25℃にて交流電圧を印加した。テストサンプルに10mAの電流が流れた電圧を絶縁破壊電圧とした。絶縁破壊電圧をテストサンプルの厚みで除算することで規格化し、絶縁破壊強度を算出した。
【0088】
(面積比率)
得られた金属ベース基板断面を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM-IT100、日本電子株式会社製)にて観察し、前記SEM付帯のエネルギー分散型X線分光法(EDX)により元素マッピング分析を行い、SEM画像ならびに元素マッピング画像を得た。元素マッピング分析では、窒素の分布を分析する。
【0089】
得られたTEM像と元素マッピング画像から、(D-1)第一の無機充填剤を同定し、平均粒子径30~70μmの(D-1)第一の無機充填剤の面積比率を算出した。
【0090】
【表3】
【0091】
実施例のいずれの樹脂組成物は、いずれも比較例の樹脂組成物と比較して、低圧力で短時間で硬化が進行する為に、成形サイクルの大幅な時間短縮ができた。
【要約】
【課題】 熱伝導性と絶縁信頼性を向上しつつ、成形サイクルの短縮に寄与する樹脂組成物、及びワニス、その無機複合シート、金属ベース基板を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)ポリフェニレンエーテル樹脂と、(B)合成ゴムと、(C)架橋剤と、(D-1)第一の無機充填剤と、を含み、前記(D-1)第一の無機充填剤が、平均粒子径10~80μmの窒化ホウ素であることを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【選択図】 なし