(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】表示装置及び表示方法
(51)【国際特許分類】
G09F 13/04 20060101AFI20240709BHJP
G09F 13/20 20060101ALI20240709BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G09F13/04 Z
G09F13/20 D
G09F9/00 362
G09F9/00 324
(21)【出願番号】P 2023571731
(86)(22)【出願日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2023023366
(87)【国際公開番号】W WO2024004867
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022106631
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【氏名又は名称】貴志 浩充
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】豊村 恭一
(72)【発明者】
【氏名】山口 芳郎
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-154047(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0097356(US,A1)
【文献】中国実用新案第211149988(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第111880259(CN,A)
【文献】特開2017-015973(JP,A)
【文献】特表2012-522260(JP,A)
【文献】中国実用新案第213025903(CN,U)
【文献】特開2023-074917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/04
G09F 13/20
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外域の波長を有する長波長光を照射する光源部と、
内装の色相を表現し、前記光源部から照射された前記長波長光が透過する基材と、
ユーザが視認する側に露出するように前記基材に対して配置され、前記基材を透過した前記長波長光に基づいて可視域の波長を有する短波長光を発生させる発光部と、
を備え、
前記光源部による前記長波長光の照射の有無に応じて前記発光部からの前記短波長光に基づく情報の表示及び非表示をそれぞれ切り替え
、
前記発光部は、前記長波長光から前記短波長光へのアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素を含有する最表層であって、前記基材に対し前記光源部と反対側に位置する前記最表層を含み、
前記最表層よりも前記光源部側に位置する、前記長波長光が透過しないフィルタ層をさらに備え、
前記フィルタ層は、前記基材における前記光源部と反対側の第1表面及び前記光源部側の第2表面の少なくとも一方に積層され、前記長波長光を通過させる貫通パターンが前記情報の表示形状に合わせて形成され、
前記光源部側から順に前記フィルタ層、前記基材、及び前記最表層が積層された積層構造を有する、
表示装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の表示装置であって、
前記最表層は、前
記第1表面の少なくとも一部に積層されている、
表示装置。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の表示装置であって、
前記色素は、前記情報の表示形状に合わせて配置されている、
表示装置。
【請求項4】
請求項
1又は2に記載の表示装置であって、
前記光源部は、前記情報の表示形状に合わせて配置されている複数の近赤外光源を含む、
表示装置。
【請求項5】
請求項
1又は2に記載の表示装置により実行される表示方法であって、
前記光源部による前記長波長光の照射の有無に応じて前記発光部からの前記短波長光に基づく前記情報の表示及び非表示をそれぞれ切り替えるステップを含む、
表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及び表示方法に関する。本出願は、2022年6月30日に日本国に特許出願された特願2022-106631号の優先権を主張するものであり、この出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【背景技術】
【0002】
従来、車両及び住宅などの内装に対して、通常時は、例えばインストルメントパネルなどの内装表面及び木目調の住宅内装表面などである一方で、必要に応じてディスプレイとして表示情報がこれらの表面に出現する技術が知られている。当該技術は、一見すると通常の表面材料でありながら実際は視認困難な微細多孔を有する表面設計を用い、背面から光を透過させることで実現される。
【0003】
例えば、特許文献1には、意匠性に優れた加飾シートが開示されている。このような加飾シートは、意匠層と、意匠層に積層された透明樹脂層と、を有し、意匠層の開口部として形成される光透過部が設けられ、透明樹脂層の意匠層と反対側の面に凹凸が設けられている。加飾シートは、画像光を透過させるために、意匠層における微細孔構造として形成された光透過部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来技術では、情報を表示するために光が透過する微細多孔を表面材料などの基材が有することで、基材の耐久性が低下するなど物性が制約されることになる。
【0006】
本開示は、基材に関する物性の制約を抑制可能な表示装置及び表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
(1)
近赤外域の波長を有する長波長光を照射する光源部と、
前記光源部から照射された前記長波長光が透過する基材と、
前記基材に対して配置され、前記基材を透過した前記長波長光に基づいて可視域の波長を有する短波長光を発生させる発光部と、
を備え、
前記光源部による前記長波長光の照射の有無に応じて前記発光部からの前記短波長光に基づく情報の表示及び非表示をそれぞれ切り替える、
表示装置、
である。
【0008】
(2)
上記(1)に記載の表示装置では、
前記発光部は、前記長波長光から前記短波長光へのアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素を含有する最表層であって、前記基材に対し前記光源部と反対側に位置する前記最表層を含んでもよい。
【0009】
(3)
上記(2)に記載の表示装置では、
前記最表層は、前記基材における前記光源部と反対側の第1表面の少なくとも一部に積層されていてもよい。
【0010】
(4)
上記(2)に記載の表示装置は、
前記最表層よりも前記光源部側に位置する、前記長波長光が透過しないフィルタ層をさらに備え、
前記フィルタ層は、前記基材における前記光源部と反対側の第1表面及び前記光源部側の第2表面の少なくとも一方に積層され、前記長波長光を通過させる貫通パターンが前記情報の表示形状に合わせて形成されていてもよい。
【0011】
(5)
上記(4)に記載の表示装置は、
前記長波長光が透過し、前記フィルタ層を隠す隠蔽層をさらに備え、
前記光源部側から順に前記基材、前記フィルタ層、前記隠蔽層、及び前記最表層が積層された積層構造を有してもよい。
【0012】
(6)
上記(4)に記載の表示装置は、
前記光源部側から順に前記フィルタ層、前記基材、及び前記最表層が積層された積層構造を有してもよい。
【0013】
(7)
上記(1)に記載の表示装置では、
前記発光部は、前記長波長光から前記短波長光へのアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素が前記基材に含有されて構成されてもよい。
【0014】
(8)
上記(2)乃至(7)のいずれか1つに記載の表示装置では、
前記色素は、前記情報の表示形状に合わせて配置されていてもよい。
【0015】
(9)
上記(1)乃至(8)のいずれか1つに記載の表示装置では、
前記光源部は、前記情報の表示形状に合わせて配置されている複数の近赤外光源を含んでもよい。
【0016】
本開示は、
(10)
上記(1)乃至(9)のいずれか1つに記載の表示装置により実行される表示方法であって、
前記光源部による前記長波長光の照射の有無に応じて前記発光部からの前記短波長光に基づく前記情報の表示及び非表示をそれぞれ切り替えるステップを含む、
表示方法、
である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、基材に関する物性の制約を抑制可能な表示装置及び表示方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の一実施形態に係る表示装置の動作の第1例を示す模式図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る表示装置の動作の第2例を示す模式図である。
【
図3】
図1の表示装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る表示装置の構成の一部を示す模式図である。
【
図5】
図3の表示装置により実行される表示方法を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態に係る表示装置の構成の一部を示す模式図である。
【
図7】第3実施形態に係る表示装置の構成の一部を示す模式図である。
【
図8】第4実施形態に係る表示装置の構成の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0020】
図1は、本開示の一実施形態に係る表示装置10の動作の第1例を示す模式図である。
図2は、本開示の一実施形態に係る表示装置10の動作の第2例を示す模式図である。
図1及び
図2を参照しながら、一実施形態に係る表示装置10の動作について主に説明する。
【0021】
表示装置10は、例えば車両の室内に配置されているセンタコンソールに設置されている。
図1に示すとおり、表示装置10は、オンの状態にあるとき、当該センタコンソールの表面上に情報Fを表示させる。本開示において、「情報F」は、例えばアイコン、サイン、シンボル、イラスト、文字、操作画面、及び写真などを含む静止画、並びに動画の両方を含む画像などを含む。表示装置10は、例えばセンタコンソールの表面上でユーザが情報Fを視認可能なように当該情報Fを表現するための可視光を発生させる。
【0022】
図2に示すとおり、表示装置10は、オフの状態にあるとき、センタコンソールの表面上に情報Fを表示させない。このとき、センタコンソールの表面は、車両の通常の内装の一部として構成されている。ユーザは、センタコンソールの表面において情報Fが表示される第1部分と、センタコンソールの表面における他の第2部分と、を互いに同一の表層構造として視認する。ユーザは、第2部分に対し第1部分を異なる表層構造として識別するのではなく、同一の表層構造として識別する。
【0023】
表示装置10は、例えば任意の制御信号を取得することで、必要な情報Fを必要なタイミングで表示する。例えば、表示装置10は、ユーザにより入力された任意の入力情報に基づく制御信号を取得し、必要な情報Fを必要なタイミングで表示する。例えば、表示装置10は、有線又は無線による任意の通信方法によって他の任意の装置から制御信号を受信することで取得し、必要な情報Fを必要なタイミングで表示する。
【0024】
図3は、
図1の表示装置10の構成の一例を示す機能ブロック図である。表示装置10は、光源部11、基材12、発光部13、入力部14、通信部15、記憶部16、及び制御部17を有する。
【0025】
光源部11は、近赤外域の波長を有する長波長光を照射する任意の近赤外線光源を含む。本開示において、「近赤外域」は、例えば780nm以上2500nm未満の波長領域を含む。光源部11は、例えば長波長光を面状に照射する面光源を含んでもよい。光源部11は、例えば直下型のバックライトを含んでもよいし、エッジライト型のバックライトを含んでもよい。光源部11は、LED(Light-Emitting Diode)光源及びLD(Laser Diode)光源などの任意の光源を含んでもよい。これらに限定されず、光源部11は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及び有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどを含んでもよい。
【0026】
長波長光としての近赤外光は、X線ほどではないが所定のレベルで物質を透過する性質を有していることが知られている。
【0027】
基材12は、光源部11から照射された長波長光が透過する任意の材料に基づいて形成されている。基材12は、染料及び顔料などに基づいて形成されている。例えば、基材12は、単一の顔料に基づいて形成されていてもよいし、複数の顔料を適宜選択して調色が施された状態で形成されていてもよい。基材12は、例えば車両内装などの主要色である黒色系又は茶色系の色相が表現されたものであってもよい。基材12は、黒色系又は茶色系の濃色表現を可能としながらも長波長光を吸収しない色素配合により形成されていてもよい。
【0028】
発光部13は、基材12に対して配置され、基材12を透過した長波長光に基づいて可視域の波長を有する短波長光を発生させる任意の発光要素を含む。本開示において、「可視域」は、例えば400nm以上780nm未満の波長領域を含む。発光部13は、例えば光源部11から照射された長波長光から短波長光へのアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素を含有する層として構成される。発光部13は、このような色素に加えて、表示装置10が設置される内装に合うその他の着色色材を、近赤外光の透過を抑制しないように含んでもよい。発光部13は、情報Fとしてユーザに視認させるための短波長光を発生させる。発光部13は、例えば特定のアイコンを情報Fとして示す短波長光を発生させてもよい。
【0029】
入力部14は、ユーザ入力を検出して、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。例えば、入力部14は、物理キー、静電容量キー、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、及び音声入力を受け付けるマイクロフォンなどを含む。表示装置10は、入力部14を用いてユーザにより入力された任意の入力情報に基づく制御信号を取得する。
【0030】
通信部15は、有線又は無線による任意の通信方法によって他の任意の装置と通信可能に接続される任意の通信モジュールを含む。通信部15は、例えば車両におけるCAN(Controller Area Network)の通信プロトコルに対応する通信モジュールを含んでもよい。これに限定されず、通信部15は、4G(4th Generation)及び5G(5th Generation)などの移動体通信規格又はインターネット規格に対応する通信モジュールを含んでもよい。表示装置10は、通信部15を介して他の任意の装置から制御信号を受信する。
【0031】
記憶部16は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリなどであるが、これらに限定されない。記憶部16は、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部16は、表示装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部16は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、通信部15により受信又は送信される各種情報、及び入力部14により取得される各種情報などを記憶する。記憶部16に記憶された情報は、通信部15を介して受信される情報で更新可能である。
【0032】
制御部17は、1つ以上のプロセッサを含む。本開示において、「プロセッサ」は、例えば汎用のプロセッサ及び特定の処理に特化した専用のプロセッサなどを含む。制御部17は、表示装置10の各構成部と通信可能に接続され、表示装置10全体の動作を制御する。制御部17は、光源部11による長波長光の照射のオンオフを制御して、発光部13からの短波長光に基づく情報Fの表示及び非表示をそれぞれ切り替える。
【0033】
以下では、表示装置10のより具体的な構成について、第1実施形態乃至第4実施形態として主に説明する。以下では、表示装置10が有する複数の構成部のうち、光源部11、基材12、及び発光部13の構造関係に主に着目しながら説明する。
【0034】
(第1実施形態)
図4は、第1実施形態に係る表示装置10の構成の一部を示す模式図である。
図4を参照しながら、第1実施形態に係る表示装置10の構成の一部について主に説明する。
【0035】
第1実施形態では、発光部13は、長波長光から短波長光へのアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素を含有する最表層であって、基材12に対し光源部11と反対側に位置する最表層を含む。発光部13を構成する最表層は、基材12における光源部11と反対側の第1表面S1の少なくとも一部に積層されている。例えば、発光部13を構成する最表層は、基材12の第1表面S1の全体に積層されている。
【0036】
より具体的には、基材12の第1表面S1側に発光部13が配置されている。発光部13は、表示装置10における最表層として構成され、ユーザにより直接視認される。
【0037】
基材12において第1表面S1と反対側に位置する第2表面S2側に光源部11が配置されている。光源部11は、基材12の第2表面S2と離間した状態で対向するように配列されている複数の近赤外線光源を含む。
図4では、簡便な図示を目的として、光源部11における複数の近赤外線光源が左右方向に一列にのみ配列されている様子が示されているが、このような一次元的な配列に限定されない。光源部11は、発光部13を構成する最表層が広がる平面と対応する位置おいて、当該平面と同一の面積を有する領域にわたり二次元的に配列されている複数の近赤外線光源を含んでもよい。
【0038】
表示装置10の制御部17は、入力部14又は通信部15を介して所定の制御信号を取得すると、光源部11を制御して長波長光を照射させる。制御部17は、例えば光源部11において二次元的に配列されている複数の近赤外線光源のうち、制御信号に基づいて表示すべき情報Fの表示形状に適合する一部の近赤外線光源のみをオンにして長波長光を照射させる。複数の近赤外線光源のうち制御すべき近赤外線光源などの情報を含む制御情報は、情報Fと共に例えば記憶部16に記憶されている。制御部17は、記憶部16に記憶されているこのような制御情報を読み出して、光源部11を制御する。
【0039】
光源部11から照射された長波長光は、第2表面S2から基材12の内部へと入射する。基材12は、光源部11から照射された長波長光を透過させる。一方で、基材12は、可視域の波長を有する光については透過させない。例えば、基材12の第2表面S2側に光源部11に加えて可視光光源が付加的に配置されていると仮定すると、当該可視光光源から照射された可視光は、基材12を透過しない。
図4では、このような比較説明のために可視光光源を仮想的に例示しているが、表示装置10がこのような可視光光源を構成として有しているわけではない点に留意されたい。
【0040】
基材12を透過した長波長光は、基材12の第1表面S1を介して発光部13を構成する最表層に入射する。最表層に入射した長波長光の少なくとも一部は、発光部13に含まれる色素によって吸収され、アップコンバージョンに基づく非線形光学効果によって低エネルギー状態から高エネルギー状態への変換が実現される。これにより、最表層に入射した長波長光の少なくとも一部は、短波長光へと変換される。
【0041】
発光部13を構成する最表層は、長波長光から短波長光へのアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素を、全体にわたり略均一の濃度で含有する。発光部13は、1色の色素のみを含む場合、1色の短波長光を発生させる。発光部13は、複数色の色素を含む場合、複数色の短波長光を発生させる。発光部13が複数色の色素を含む場合であっても、光源部11は、単一の長波長光を照射する光源を含む。発光部13は、単一の長波長光に基づいて複数色の短波長光を発生させる。これに限定されず、光源部11は、発光部13に含まれる複数色の色素ごとに、対応する長波長光を照射する複数の光源を含んでもよい。
【0042】
発光部13は、光源部11における一部の近赤外線光源のみから照射された長波長光を対応する色素で吸収することで、制御信号に基づいて表示すべき情報Fの表示形状に適合する短波長光を発生させる。ユーザは、発光部13に含まれる色素の一部から発生した短波長光を視認することで、表示装置10の最表層に情報Fが表示されていることを認識する。
【0043】
表示装置10は、光源部11による長波長光の照射の有無に応じて発光部13からの短波長光に基づく情報Fの表示及び非表示をそれぞれ切り替える。より具体的には、表示装置10は、入力部14又は通信部15を介して表示をオンにする制御信号を取得すると、光源部11による長波長光の照射をオンにして情報Fを表示する。表示装置10は、光源部11による長波長光の照射がオンの状態で情報Fを表示する。表示装置10は、入力部14又は通信部15を介して表示をオフにする制御信号を取得すると、光源部11による長波長光の照射をオフにして情報Fを非表示にする。表示装置10は、光源部11による長波長光の照射がオフの状態で情報Fを非表示にする。
【0044】
図5は、
図3の表示装置10により実行される表示方法を示すフローチャートである。表示装置10により実行される表示方法では、光源部11による長波長光の照射の有無に応じて発光部13からの短波長光に基づく情報Fの表示及び非表示がそれぞれ切り替えられる。
図5を参照しながら、表示装置10の制御部17が実行する処理の流れについて主に説明する。
【0045】
ステップS100では、制御部17は、表示をオンにする制御信号を取得したか否かを判定する。制御部17は、表示をオンにする制御信号を取得したと判定すると、ステップS101の処理を実行する。制御部17は、表示をオンにする制御信号を取得していないと判定すると、ステップS100の処理を再度実行する。
【0046】
ステップS101では、制御部17は、ステップS100において表示をオンにする制御信号を取得したと判定すると、光源部11を制御して長波長光を照射させる。
【0047】
ステップS102では、制御部17は、表示をオフにする制御信号を取得したか否かを判定する。制御部17は、表示をオフにする制御信号を取得したと判定すると、ステップS103の処理を実行する。制御部17は、表示をオフにする制御信号を取得していないと判定すると、ステップS102の処理を再度実行する。
【0048】
ステップS103では、制御部17は、ステップS102において表示をオフにする制御信号を取得したと判定すると、光源部11を制御して長波長光の照射を停止させる。
【0049】
ステップS104では、制御部17は、表示装置10の動作が終了したか否かを判定する。制御部17は、表示装置10の動作が終了したと判定すると、フローを終了する。制御部17は、表示装置10の動作が終了していないと判定すると、ステップS100の処理を再度実行する。
【0050】
以上のような第1実施形態によれば、基材12に関する物性の制約を抑制可能である。表示装置10は、基材12を透過した長波長光に基づいて可視域の波長を有する短波長光を発生させる発光部13を有することで、従来技術のように微細多孔を基材12に形成することなく情報Fの表示制御を実行することができる。したがって、表示装置10は、光が透過する微細多孔の形成に伴う基材12の耐久性の低下を抑制可能であり、基材12の耐久性を維持した状態で情報Fの表示制御を実行することができる。
【0051】
表示装置10は、発光部13がアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素を含有する最表層を含むことで、ユーザが視認する短波長光を表示装置10においてユーザに最も近い位置から発生させることができる。表示装置10は、このような発光部13における表面発光に基づき情報Fを表示するので、より鮮やかな色彩でより明るい情報Fを表示することが可能である。表示装置10は、微細多孔における透過に起因してユーザに視認される可視光の光量が限定的となっていた従来技術と異なり、より大きな光量で短波長光を発生させ、ユーザに視認させることができる。
【0052】
表示装置10は、最表層が基材12における光源部11と反対側の第1表面S1の全体に積層されていることで、情報Fを非表示にして、ユーザに情報Fの表示領域を認識させないこともできる。ユーザは、例えば表示装置10が設置されているセンタコンソールの表面において情報Fが表示される第1部分と、センタコンソールの表面における他の第2部分と、を互いに同一の表層構造として視認する。ユーザは、第2部分に対し第1部分を同一の表層構造として識別する。これにより、ユーザは、情報Fの表示領域が内装の表面上のどこにあるのかを情報Fの非表示により識別することなく、通常の内装デザインとして識別することができる。したがって、表示装置10は、情報Fの非表示状態で、内装のデザイン性を維持可能である。
【0053】
上記第1実施形態では、発光部13は、長波長光から短波長光へのアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素を含有する最表層であって、基材12に対し光源部11と反対側に位置する最表層を含むと説明したが、これに限定されない。発光部13は、表示装置10における最表層に代えて、又は加えて、短波長光をユーザが視認可能な任意の位置に積層されている層を含んでもよい。発光部13は、以上のような層構造に限定されず、層構造に代わる任意の構成により少なくとも1色の色素を含んでもよい。
【0054】
上記第1実施形態では、発光部13を構成する最表層は、基材12の第1表面S1の全体に積層されていると説明したが、これに限定されない。発光部13を構成する最表層は、基材12の第1表面S1の一部のみに積層されていてもよい。
【0055】
表示装置10は、最表層が基材12における光源部11と反対側の第1表面S1の一部に積層されていることで、情報Fが非表示になっているときであっても、ユーザに情報Fの表示領域を認識させることができる。ユーザは、例えば表示装置10が設置されているセンタコンソールの表面において情報Fが表示される第1部分と、センタコンソールの表面における他の第2部分と、を互いに異なる表層構造として視認する。ユーザは、第2部分に対し第1部分を異なる表層構造として識別する。これにより、ユーザは、情報Fの表示領域が内装の表面上のどこにあるのかを容易に識別することができ、その視線を情報Fへ容易に向けることができる。
【0056】
上記第1実施形態では、基材12は、可視光を透過させないと説明したが、これに限定されない。基材12は、長波長光と同様に、可視光を透過させてもよい。
【0057】
上記第1実施形態では、発光部13を構成する最表層は、長波長光から短波長光へのアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素を、全体にわたり略均一の濃度で含有すると説明したが、これに限定されない。最表層は、少なくとも1色の色素を、不均一な濃度で含有してもよい。例えば、少なくとも1色の色素は、情報Fの表示形状に合わせて発光部13において配置されていてもよい。
【0058】
これにより、表示装置10は、光源部11における複数の近赤外線光源のうち、制御信号に基づいて表示すべき情報Fの表示形状に適合する一部の近赤外線光源のみをオンにして長波長光を照射させるような制御を実行する必要がない。表示装置10では、例えば二次元的に配列されている複数の近赤外線光源の全てがオンになったとしても、情報Fの表示形状に合わせて配置されている色素のみが長波長光を吸収して短波長光に変換する。それ以外の長波長光は発光部13も通過して短波長光に変換されない。したがって、表示装置10は、情報Fの表示制御をより簡便な方法で実行することができる。
【0059】
上記第1実施形態では、光源部11は、発光部13を構成する最表層が広がる平面と対応する位置おいて、当該平面と同一の面積を有する領域にわたり二次元的に配列されている複数の近赤外線光源を含むと説明したが、これに限定されない。光源部11は、表示装置10による情報Fの表示を実現可能な任意の態様で配列されている複数の近赤外線光源を含んでもよい。例えば、光源部11は、情報Fの表示形状に合わせて配置されている複数の近赤外線光源を含んでもよい。
【0060】
これにより、表示装置10は、光源部11における複数の近赤外線光源のうち、制御信号に基づいて表示すべき情報Fの表示形状に適合する一部の近赤外線光源のみをオンにして長波長光を照射させるような制御を実行する必要がない。表示装置10は、例えば情報Fの表示形状に合わせて配置されている複数の近赤外線光源の全てをオンにするだけで表示制御を実行できる。
【0061】
表示装置10では、例えば発光部13を構成する最表層において少なくとも1色の色素が全体にわたり略均一の濃度で含有されていたとしても、情報Fの表示形状に合わせて配置されている複数の近赤外線光源から照射された長波長光に対応する色素のみが短波長光を発生させる。それ以外の色素は、長波長光が入射しないので、短波長光を発生させない。したがって、表示装置10は、情報Fの表示制御をより簡便な方法で実行することができる。
【0062】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る表示装置10の構成の一部を示す模式図である。
図6を参照しながら、第2実施形態に係る表示装置10の構成の一部について主に説明する。
【0063】
第2実施形態に係る表示装置10では、基材12と発光部13との間の層構造が第1実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が第2実施形態に係る表示装置10にも当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0064】
第2実施形態では、表示装置10は、発光部13を構成する最表層よりも光源部11側に位置する、長波長光が透過しないフィルタ層18をさらに有する。フィルタ層18は、基材12における光源部11と反対側の第1表面S1及び光源部11側の第2表面S2の少なくとも一方に積層される。
図6では、一例として、フィルタ層18は、基材12における光源部11と反対側の第1表面S1に積層されている。フィルタ層18では、長波長光を通過させる貫通パターンが情報Fの表示形状に合わせて形成されている。
【0065】
表示装置10は、長波長光が透過し、フィルタ層18を隠す隠蔽層19をさらに有する。隠蔽層19は、フィルタ層18に対してユーザが視認する側に配置されており、フィルタ層18における貫通パターンがユーザにより直接視認されないようにするためのものである。
【0066】
表示装置10は、光源部11側から順に基材12、フィルタ層18、隠蔽層19、及び発光部13を構成する最表層が積層された積層構造を有する。光源部11は、表示装置10におけるこのような積層構造と離間した状態で対向するように配列されている複数の近赤外線光源を含む。
図6では、簡便な図示を目的として、光源部11における複数の近赤外線光源が左右方向に一列にのみ配列されている様子が示されているが、このような一次元的な配列に限定されない。光源部11は、フィルタ層18に対して、第2表面S2側に二次元的に配列されている複数の近赤外線光源を含んでもよい。
【0067】
表示装置10の制御部17は、入力部14又は通信部15を介して所定の制御信号を取得すると、光源部11を制御して長波長光を照射させる。制御部17は、例えば光源部11において二次元的に配列されている複数の近赤外線光源の全てをオンにして長波長光を照射させる。
【0068】
光源部11から照射された長波長光は、第2表面S2から基材12の内部へと入射する。基材12は、光源部11から照射された長波長光を透過させる。基材12を透過した長波長光は、基材12の第1表面S1を介してフィルタ層18に到達する。
【0069】
フィルタ層18に到達した長波長光のうち、フィルタ層18に形成されている貫通パターンに位置する長波長光のみがフィルタ層18を通過して隠蔽層19に入射する。それ以外の長波長光は、フィルタ層18を透過せずに遮断される。
【0070】
隠蔽層19に入射した長波長光は、そのまま発光部13を構成する最表層に入射する。最表層に入射した長波長光は、発光部13に含まれる色素によって吸収され、アップコンバージョンに基づく非線形光学効果によって低エネルギー状態から高エネルギー状態への変換が実現される。これにより、最表層に入射した長波長光は、短波長光へと変換される。発光部13を構成する最表層において全体にわたり略均一の濃度で含有されている少なくとも1色の色素のうち、フィルタ層18の貫通パターンに対応する位置にある色素のみが長波長光を受けて短波長光を発生させる。
【0071】
以上により、発光部13は、表示すべき情報Fの表示形状に適合する短波長光を発生させる。ユーザは、発光部13に含まれる色素の一部から発生した短波長光を視認することで、表示装置10の最表層に情報Fが表示されていることを認識する。
【0072】
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態における効果に加えて以下の効果を奏する。表示装置10は、長波長光を通過させる貫通パターンが情報Fの表示形状に合わせて形成されているフィルタ層18をさらに有する。これにより、表示装置10は、光源部11における複数の近赤外線光源のうち、制御信号に基づいて表示すべき情報Fの表示形状に適合する一部の近赤外線光源のみをオンにして長波長光を照射させるような制御を実行する必要がない。表示装置10では、例えば二次元的に配列されている複数の近赤外線光源の全てがオンになったとしても、情報Fの表示形状に合わせて形成されている貫通パターンのみで長波長光がフィルタ層18を透過する。対応する色素のみが当該長波長光を吸収して短波長光に変換する。それ以外の長波長光はフィルタ層18を通過せずにフィルタ層18によって遮断される。したがって、表示装置10は、情報Fの表示制御をより簡便な方法で実行することができる。
【0073】
表示装置10は、長波長光が透過し、フィルタ層18を隠す隠蔽層19をさらに有することで、情報Fの表示形状に合わせて形成されている貫通パターンがユーザに視認されないようにすることができる。したがって、表示装置10は、フィルタ層18の貫通パターンに依らずに、内装のデザイン性を維持可能である。
【0074】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る表示装置10の構成の一部を示す模式図である。
図7を参照しながら、第3実施形態に係る表示装置10の構成の一部について主に説明する。
【0075】
第3実施形態に係る表示装置10では、基材12の第2表面S2側にフィルタ層18が積層されている点で第1実施形態及び第2実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態及び第2実施形態と同様であり、対応する説明が第3実施形態に係る表示装置10にも当てはまる。以下では、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態及び第2実施形態と異なる点について主に説明する。
【0076】
第3実施形態においても、表示装置10は、発光部13を構成する最表層よりも光源部11側に位置する、長波長光が透過しないフィルタ層18をさらに有する。
図7では、一例として、フィルタ層18は、基材12における光源部11側の第2表面S2に積層されている。表示装置10は、第2実施形態と異なり、フィルタ層18を隠す隠蔽層19を有する必要がない。表示装置10では、フィルタ層18に対してユーザが視認する側に基材12が配置されており、フィルタ層18における貫通パターンは、基材12により隠される。
【0077】
表示装置10は、光源部11側から順にフィルタ層18、基材12、及び発光部13を構成する最表層が積層された積層構造を有する。光源部11は、表示装置10におけるこのような積層構造と離間した状態で対向するように配列されている複数の近赤外線光源を含む。
図7では、簡便な図示を目的として、光源部11における複数の近赤外線光源が左右方向に一列にのみ配列されている様子が示されているが、このような一次元的な配列に限定されない。光源部11は、フィルタ層18に対向するように、二次元的に配列されている複数の近赤外線光源を含んでもよい。
【0078】
表示装置10の制御部17は、入力部14又は通信部15を介して所定の制御信号を取得すると、光源部11を制御して長波長光を照射させる。制御部17は、例えば光源部11において二次元的に配列されている複数の近赤外線光源の全てをオンにして長波長光を照射させる。
【0079】
光源部11から照射された長波長光は、フィルタ層18に到達する。フィルタ層18に到達した長波長光のうち、フィルタ層18に形成されている貫通パターンに位置する長波長光のみがフィルタ層18を通過して基材12に入射する。それ以外の長波長光は、フィルタ層18を透過せずに遮断される。
【0080】
貫通パターンを通過した長波長光は、基材12の第2表面S2から基材12の内部へと入射する。基材12は、光源部11から照射された長波長光を透過させる。基材12を透過した長波長光は、基材12の第1表面S1を介して発光部13を構成する最表層に入射する。
【0081】
最表層に入射した長波長光は、発光部13に含まれる色素によって吸収され、アップコンバージョンに基づく非線形光学効果によって低エネルギー状態から高エネルギー状態への変換が実現される。これにより、最表層に入射した長波長光は、短波長光へと変換される。発光部13を構成する最表層において全体にわたり略均一の濃度で含有されている少なくとも1色の色素のうち、フィルタ層18の貫通パターンに対応する位置にある色素のみが長波長光を受けて短波長光を発生させる。
【0082】
以上により、発光部13は、表示すべき情報Fの表示形状に適合する短波長光を発生させる。ユーザは、発光部13に含まれる色素の一部から発生した短波長光を視認することで、表示装置10の最表層に情報Fが表示されていることを認識する。
【0083】
以上のような第3実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態における効果に加えて以下の効果を奏する。表示装置10は、光源部11側から順にフィルタ層18、基材12、及び発光部13を構成する最表層が積層された積層構造を有することで、情報Fの表示形状に合わせて形成されている貫通パターンがユーザに視認されないようにすることができる。表示装置10において、基材12がフィルタ層18に形成されている貫通パターンを隠す隠蔽層19の役割を果たす。
【0084】
したがって、表示装置10は、フィルタ層18の貫通パターンに依らずに、内装のデザイン性を維持可能である。加えて、表示装置10は、このようなデザイン性の維持に関する効果を、第2実施形態のような隠蔽層19を有さずに最小の構成単位で実現可能である。結果として、表示装置10における積層構造について、製造コストの低減及び製造の簡素化が実現可能である。
【0085】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態に係る表示装置10の構成の一部を示す模式図である。
図8を参照しながら、第4実施形態に係る表示装置10の構成の一部について主に説明する。
【0086】
第4実施形態に係る表示装置10では、発光部13が少なくとも1色の色素を含有する最表層を含まない点で第1実施形態乃至第3実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が第4実施形態に係る表示装置10にも当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0087】
第4実施形態では、発光部13は、長波長光から短波長光へのアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素が基材12に含有されて構成される。表示装置10では、基材12と発光部13とが互いに一体的に構成されている。発光部13は、表示装置10における基材12の一部として構成され、ユーザにより直接視認される。
【0088】
光源部11は、基材12の第2表面S2と離間した状態で対向するように配列されている複数の近赤外線光源を含む。
図8では、簡便な図示を目的として、光源部11における複数の近赤外線光源が左右方向に一列にのみ配列されている様子が示されているが、このような一次元的な配列に限定されない。光源部11は、基材12の第1表面S1が広がる平面と対応する位置おいて、当該平面と同一の面積を有する領域にわたり二次元的に配列されている複数の近赤外線光源を含んでもよい。
【0089】
表示装置10の制御部17は、入力部14又は通信部15を介して所定の制御信号を取得すると、光源部11を制御して長波長光を照射させる。制御部17は、例えば光源部11において二次元的に配列されている複数の近赤外線光源のうち、制御信号に基づいて表示すべき情報Fの表示形状に適合する一部の近赤外線光源のみをオンにして長波長光を照射させる。複数の近赤外線光源のうち制御すべき近赤外線光源などの情報を含む制御情報は、情報Fと共に例えば記憶部16に記憶されている。制御部17は、記憶部16に記憶されているこのような制御情報を読み出して、光源部11を制御する。
【0090】
光源部11から照射された長波長光は、第2表面S2から基材12の内部へと入射する。基材12は、光源部11から照射された長波長光を透過させる。基材12を透過する長波長光の少なくとも一部は、基材12に含まれる色素によって吸収され、アップコンバージョンに基づく非線形光学効果によって低エネルギー状態から高エネルギー状態への変換が実現される。これにより、基材12を透過する長波長光の少なくとも一部は、短波長光へと変換される。
【0091】
基材12と一体的に構成される発光部13は、長波長光から短波長光へのアップコンバージョンを実現する少なくとも1色の色素を、基材12の全体にわたり略均一の濃度で含有する。発光部13は、1色の色素のみを含む場合、1色の短波長光を発生させる。発光部13は、複数色の色素を含む場合、複数色の短波長光を発生させる。発光部13が複数色の色素を含む場合であっても、光源部11は、単一の長波長光を照射する光源を含む。発光部13は、単一の長波長光に基づいて複数色の短波長光を発生させる。これに限定されず、光源部11は、発光部13に含まれる複数色の色素ごとに、対応する長波長光を照射する複数の光源を含んでもよい。
【0092】
発光部13は、光源部11における一部の近赤外線光源のみから照射された長波長光を対応する色素で吸収することで、制御信号に基づいて表示すべき情報Fの表示形状に適合する短波長光を発生させる。ユーザは、発光部13に含まれる色素の一部から発生した短波長光を視認することで、表示装置10の基材12の第1表面S1に情報Fが表示されていることを認識する。
【0093】
以上のような第4実施形態によれば、第1実施形態における効果に加えて以下の効果を奏する。表示装置10は、少なくとも1色の色素が基材12に含有されて発光部13が構成されることで、第1実施形態のような積層構造を有さずとも同様の表示制御を実行することができる。これにより、表示装置10は、製造コストの低減及び製造の簡素化を実現可能である。
【0094】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0095】
例えば、上述した各構成部の形状、大きさ、配置、向き、及び個数などは、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、大きさ、配置、向き、及び個数などは、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 表示装置
11 光源部
12 基材
13 発光部
14 入力部
15 通信部
16 記憶部
17 制御部
18 フィルタ層
19 隠蔽層
F 情報
S1 第1表面
S2 第2表面