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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ステントグラフト
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20240709BHJP
【FI】
A61F2/07
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022535369
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2021025625
(87)【国際公開番号】W WO2022009923
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2020116955
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】393015324
【氏名又は名称】株式会社グッドマン
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信也
(72)【発明者】
【氏名】片山 桂次郎
(72)【発明者】
【氏名】末田 泰二郎
(72)【発明者】
【氏名】廣田 悦子
(72)【発明者】
【氏名】淺井 元規
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0195191(US,A1)
【文献】特表2019-500163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸方向の一方側の端部である中枢端と、前記軸方向の他方側の端部である末梢端との間に亘って延びる管状部材と、
前記管状部材の側壁に固定され、前記中枢端側と前記末梢端側とに交互に折れ曲がりながら、前記管状部材の円周方向に沿って環状に延びるストラットからなる複数のステントリングであって、
前記軸方向の振幅が第1値である第1領域と、前記振幅が前記第1値よりも小さい第2値である第2領域とを含む変動リング、及び、
前記振幅の最大値が、前記第1値及び前記第2値よりも小さい第3値である小型固定リング
を少なくとも含む前記複数のステントリングと、
少なくとも一部が前記中枢端に対して前記末梢端側と反対側に配置され、前記末梢端側の端部である基端側と、前記末梢端側と反対側の端部である先端側とに交互に折れ曲がりながら環状に延びるストラットからなるベアトップと
を備え
前記小型固定リングは、前記ベアトップに対して前記末梢端側に隣接し、前記変動リングは、前記小型固定リングに対して前記末梢端側に隣接し、
前記ベアトップは、
前記基端から前記先端に向かう延伸方向が、前記管状部材の中心を通って前記軸方向に延びる中心線から離隔する向きに延び、
前記中枢端に対して前記末梢端側と反対側に延び且つ前記中心線と並行な基準方向に対する前記延伸方向の角度が第1角度である第1部位と、
前記先端を含む部位であって、前記基準方向に対する前記延伸方向の角度が、前記第1角度よりも小さい第2部位と
を有することを特徴とするステントグラフト。
【請求項2】
前記ベアトップの前記基端は、前記小型固定リングの前記中枢端側の端部に対して前記末梢端側に位置し、前記ベアトップの前記先端は、前記小型固定リングの前記中枢端側の端部に対して前記末梢端側と反対側に位置す
ことを特徴とする請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記ベアトップの前記基端の複数の極点と、前記小型固定リングのうち前記中枢端側の複数の極点との前記円周方向の位置が相違することを特徴とする請求項1又は2に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記ベアトップの前記基端の複数の極点と、前記小型固定リングのうち前記中枢端側の複数の極点との前記円周方向の位置が一致することを特徴とする請求項1又は2に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記複数のステントリングは、
前記振幅の最大値が、前記第3値よりも大きい第4値であり、前記変動リング及び前記小型固定リングよりも前記末梢端側に配置された大型固定リングを更に含むことを特徴とする請求項1からの何れかに記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記ベアトップは、
前記基端が、前記管状部材のうち前記中枢端の内面に固定されたことを特徴とする請求項1からの何れかに記載のステントグラフト。
【請求項7】
前記複数のステントリングは、
前記管状部材の外面に固定されたことを特徴とする請求項1からの何れかに記載のステントグラフト。
【請求項8】
前記複数のステントリングは、
前記管状部材の内面に固定されたことを特徴とする請求項1からの何れかに記載のステントグラフト。
【請求項9】
複数の前記変動リングと、1つの前記小型固定リングとを備えたことを特徴とする請求項1からの何れかに記載のステントグラフト。
【請求項10】
前記変動リングのうち前記中枢端側の複数の極点は、前記円周方向に沿って前記軸方向と直交する方向に延びる仮想線上に配列されることを特徴とする請求項1からの何れかに記載のステントグラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントグラフトに関する。
【背景技術】
【0002】
大動脈瘤の治療法として、ステントグラフト内挿術が知られている。ステントグラフト内挿術では、ステントグラフトを収縮して納めたカテーテルを大動脈に挿入し、患部まで移動させた後、ステントグラフトを留置する。患部に留置されたステントグラフトは、ステントの復元力によって広がり、血管の内壁に張り付く。これにより、ステントグラフトは、大動脈瘤に対する血液の流入を抑制する。ステントグラフト内挿術は、身体を大きく切り開く外科手術が必要ないので、低侵襲な治療法である。
【0003】
特許文献1は、弓部大動脈に留置するためのステントグラフトを開示する。このステントグラフトは、弓部大動脈の急峻な屈曲に対応するための構造として、傾斜構造を有する。傾斜構造は、ステントグラフトの環状ユニットを構成する線状のストラットにおいて、山部と谷部との間の長手方向の長さを円周方向において変化させることで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/047569号
【発明の概要】
【0005】
ステントグラフトのうち開口が形成された端部について、血管の内壁に対する高い密着性が要求される。これに対し、特許文献1に記載されたステントグラフトは、端部において血管の内壁に対する密着性が低下する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、開口が形成された端部を血管の内壁に適切に密着させることが可能なステントグラフトを提供することである。
【0007】
本発明に係るステントグラフトは、所定の軸方向の一方側の端部である中枢端と、前記軸方向の他方側の端部である末梢端との間に亘って延びる管状部材と、前記管状部材の側壁に固定され、前記中枢端側と前記末梢端側とに交互に折れ曲がりながら、前記管状部材の円周方向に沿って環状に延びるストラットからなる複数のステントリングであって、前記軸方向の振幅が第1値である第1領域と、前記振幅が前記第1値よりも小さい第2値である第2領域とを含む変動リング、及び、前記振幅の最大値が、前記第1値よりも小さい第3値である小型固定リングを少なくとも含む前記複数のステントリングと、少なくとも一部が前記中枢端に対して前記末梢端側と反対側に配置され、前記末梢端側の端部である基端側と、前記末梢端側と反対側の端部である先端側とに交互に折れ曲がりながら環状に延びるストラットからなるベアトップとを備えたことを特徴とする。
【0008】
ステントグラフトは、血管の急峻な屈曲部の内壁に対し、管状部材のうち変動リングの部分を密着させることができる。又、ステントグラフトは、ベアトップを血管の内壁に密着させることができる。又、ステントグラフトは、ベアトップの中枢端の角度を最適化することで、管状部材のうち開口部が形成された中枢端を、血管の内壁に適切に密着させることができる。
【0009】
本発明において、前記小型固定リングは、前記ベアトップに対して前記末梢端側に隣接し、前記変動リングは、前記小型固定リングに対して前記末梢端側に隣接してもよい。この場合、ステントグラフトは、ベアトップと小型固定リングとによって、管状部材のうち開口部が形成された中枢端を、血管の内壁に更に適切に密着させることができる。
【0010】
本発明において、前記ベアトップの前記基端は、前記小型固定リングの前記中枢端側の端部に対して前記末梢端側に位置し、前記ベアトップの前記先端は、前記小型固定リングの前記中枢端側の端部に対して前記末梢端側と反対側に位置し、前記小型固定リングに対して前記末梢端側に前記変動リングが隣接してもよい。ステントグラフトは、ベアトップと小型固定リングとによって、管状部材のうち開口部が形成された中枢端を、血管の内壁に更に適切に密着させることができる。
【0011】
本発明において、前記ベアトップの前記基端の複数の極点と、前記小型固定リングのうち前記中枢端側の複数の極点との前記円周方向の位置が相違してもよい。ステントグラフトは、ベアトップと小型固定リングとが干渉することを抑制できる。
【0012】
本発明において、前記ベアトップの前記基端の複数の極点と、前記小型固定リングのうち前記中枢端側の複数の極点との前記円周方向の位置が一致してもよい。ステントグラフトは、ベアトップと小型固定リングとの重複部分で管状部材を更に効率的に外方に広げ、血管に密着させることができる。
【0013】
本発明において、前記ベアトップは、前記基端から前記先端に向かう延伸方向が、前記管状部材の中心を通って前記軸方向に延びる中心線から離隔する向きに延びてもよい。ステントグラフトは、ベアトップに生ずる弾性力により、血管の内壁にベアトップを密着させることができる。
【0014】
本発明において、前記ベアトップは、前記中枢端に対して前記末梢端側と反対側に延び且つ前記中心線と並行な基準方向に対する前記延伸方向の角度が第1角度である第1部位と、前記先端を含む部位であって、前記基準方向に対する前記延伸方向の角度が、前記第1角度よりも小さい第2部位とを有してもよい。ステントグラフトは、ベアトップの第2部位を血管の内壁に接触させた場合において、ベアトップの先端が血管の内壁を傷付ける可能性を軽減できる。
【0015】
本発明において、前記複数のステントリングは、前記振幅の最大値が、前記第3値よりも大きい第4値であり、前記変動リング及び前記小型固定リングよりも前記末梢端側に配置された大型固定リングを更に含んでもよい。ステントグラフトは、血管の急峻な屈曲部分から直線状に延びる部分に対し、大型固定リングを密着させることができる。
【0016】
本発明において、前記ベアトップは、前記基端が、前記管状部材のうち前記中枢端の内面に固定されてもよい。ステントグラフトは、管状部材の中枢端を血管に密着させることができる。
【0017】
本発明において、前記複数のステントリングは、前記管状部材の外面に固定されてもよい。ステントグラフトは、管状部材の内側を通過する各種デバイス(たとえばガイドワイヤ)が複数のステントリングに引っ掛る可能性を軽減できる。
【0018】
本発明において、前記複数のステントリングは、前記管状部材の内面に固定されてもよい。ステントグラフトは、複数のステントリングの弾性力によって管状部材を外方に広げ、血管の内壁に密着させることができる。
【0019】
本発明において、前記第3値は前記第2値よりも小さくてもよい。ステントグラフトは、管状部材のうち開口部が形成された中枢端を血管の内壁に適切に密着させる力を、更に強めることができる。
【0020】
本発明において、複数の前記変動リングと、1つの前記小型固定リングとを備えてもよい。ステントグラフトは、血管の急峻な屈曲部の内壁に対する密着性を、更に高めることができる。
【0021】
本発明において、前記変動リングのうち前記中枢端側の複数の極点は、前記円周方向に沿って前記軸方向と直交する方向に延びる仮想線上に配列されてもよい。ステントグラフトは、管状部材のうち開口部が形成された中枢端を血管の内壁に適切に密着させる力を強めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ステントグラフト1Aの側面図である。
図2】ステントグラフト1Aの中枢端21近傍を拡大した側面図である。
図3】小型固定リング3の展開図である。
図4】ステントグラフト1Aの第1変動リング51~第3変動リング53の近傍を拡大した側面図である。
図5】第1変動リング51の展開図である。
図6】第n変動リング5nの展開図である。
図7】ステントグラフト1Aの末梢端22近傍を拡大した側面図である。
図8】第m大型固定リング6mの展開図である。
図9】ステントグラフト1Aの側面図である。
図10】ベアトップ7及び小型固定リング3の展開図である。
図11】ステントグラフト1Aの中枢端21近傍を拡大した側面図である。
図12】胸部大動脈8に配置されたステントグラフト1Aを示す図である。
図13図12の一部を拡大した図である。
図14】変形例において、ベアトップ7及び小型固定リング3を模式的に拡大した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態であるステントグラフト1Aについて説明する。本実施形態では、特に限定のない限り、ステントグラフト1Aが直線状に延びた状態を前提として、方向、距離等を説明する。図1の左側及び右側を、各々、ステントグラフト1Aの中枢側及び末梢側と定義する。中枢側と末梢側との間に亘って延びる方向を、軸方向Dと定義する。図1の上側及び下側を、各々、ステントグラフト1Aの大弯側及び小弯側と定義する。大弯側と小弯側との間に亘って延びる方向を、膨縮方向Eと定義する。
【0024】
<ステントグラフト1Aの概要>
ステントグラフト1Aは、胸部大動脈のうち弓部大動脈の近傍に形成された大動脈瘤や中枢側解離腔(エントリー)が弓部大動脈の近傍に形成された大動脈解離を、ステントグラフト内挿術により治療するために用いられる。図1に示すように、ステントグラフト1Aは、管状部材2A、複数のステントリング2B、及びベアトップ7を主な構成要素として有する。
【0025】
ステントグラフト1Aは、内方に折り畳まれた状態で、非図示のデリバリーシステムに収納される。デリバリーシステムは、脚の付け根の血管に開けられた切れ目から体内に挿入され、患部まで誘導される。その後、ステントグラフト1Aは、患部に留置される。ステントグラフト1Aの管状部材2Aは、複数のステントリング2Bの弾性力により広げられ、患部の内側に密着する。管状部材2Aは、血管のうち動脈瘤や解離腔の部分に対する血液の流れを抑制し、血管を保護する。ステントグラフト1Aのベアトップ7は、中枢端の角度を最適化することで、患部に留置された管状部材2Aの開口21Aから血液が漏れて大動脈瘤や解離腔に流れる現象(エンドリーク)の発生を抑制する。なお、以下では、特に説明のない限り、複数のステントリング2Bによって管状部材2Aが広げられた状態(図1等に示す状態)を前提として、ステントグラフト1Aの各構成を説明する。
【0026】
<管状部材2A>
管状部材2Aは、透水性が低い人工血管(グラフト)である。管状部材2Aは、合成樹脂製のグラフト材により形成される。管状部材2Aは中空で細長い構造を有し、軸方向Dに沿って延びる。管状部材2Aの軸方向Dの両端部のうち、中枢側の端部を中枢端21といい、末梢側の端部を末梢端22という。管状部材2Aは、中枢端21と末梢端22との間に亘って延びる。管状部材2Aの側壁20を、軸方向Dと直交する平面により切断した場合の断面形状は、円形である。側壁20の内面23は、軸方向Dに貫通する内腔20Pを有する。内腔20Pの直径rは、中枢端21と末梢端22との間に亘って一定である。ステントグラフト1Aは、デリバリーシステム内に収納され、ガイドワイヤに沿って血管内を移動する。管状部材2Aの内腔20Pの中心を通って軸方向Dに延びる仮想線を、中心線Cと定義する。管状部材2Aの側壁20の外面24に沿った方向であって軸方向Dと交差する方向を、円周方向と定義する。
【0027】
管状部材2Aの厚さd、管状部材2Aの中枢端21から末梢端22までの間の軸方向Dの長さl、及び、直径rは、特段限定されない。一例として、厚さdは0.1mm以下であり、長さlは100~200mmであり、直径rは20~45mmである。直径rは、管状部材2Aの中枢端21から末梢端22に亘って一様でなくてもよい。管状部材2Aの側壁20を、軸方向Dと直交する平面により切断した場合の断面形状は、円形でなくてもよく、多角形、楕円形等でもよい。
【0028】
<複数のステントリング2B>
複数のステントリング2Bは、各々、管状部材2Aの円周方向に沿って環状に延びるステントストラットである。より詳細には、複数のステントリング2Bは、各々、断面形状が円形、もしくは角が湾曲した四角形のワイヤである。複数のステントリング2Bは、各々、軸方向Dにおいて中枢側と末梢側とに交互に折れ曲がりながら、環状に延びる。言い換えれば、複数のステントリング2Bは、管状部材2Aの中枢端21側と末梢端22側とに交互に折れ曲がりながら、管状部材2Aの側壁20の外面24に沿って環状に延びる。複数のステントリング2Bは、管状部材2Aの側壁20の外面24に縫合糸で縫い付けられることによって固定される。なお、管状部材2Aに対する複数のステントリング2Bの固定方法は、他の方法でもよい。例えば複数のステントリング2Bは、接着剤やテープ剤により、管状部材2Aに固定されてもよい。又、例えば、管状部材2Aと同等の部材と管状部材2Aとの間に複数のステントリング2Bを配置し、管状部材2Aと同等の部材と管状部材2Aとを熱などで固着することにより、管状部材2Aに固定されてもよい。
【0029】
複数のステントリング2Bは、後述する小型固定リング3、複数の変動リング5、及び複数の大型固定リング6を有する。小型固定リング3、複数の変動リング5、及び複数の大型固定リング6を構成するストラットの太さは同一でなくてもよい。小型固定リング3、複数の変動リング5、及び複数の大型固定リング6の詳細は後述する。
【0030】
複数のステントリング2Bの夫々について、中枢端21側から末梢端22側に折れ曲がる複数の極点の各々を、中枢極点Pという。中枢極点Pは、言い換えれば、複数のステントリング2Bの各々のうち中枢端21側の極点に対応する。中枢極点Pは、中枢端21側に向けて凸状に湾曲する。隣接する2つの中枢極点Pの間に延びる線分が複数連結して形成される環状の仮想線を、中枢包絡線Sという。複数のステントリング2Bの夫々について、末梢端22側から中枢端21側に折れ曲がる複数の極点の各々を、末梢極点Qという。末梢極点Qは、言い換えれば、複数のステントリング2Bの各々のうち末梢端22側の極点に対応する。末梢極点Qは、末梢端22側に向けて凸状に湾曲する。隣接する2つの末梢極点Qの間に延びる線分が複数連結して形成される環状の仮想線を、末梢包絡線Tという。中枢包絡線Sと末梢包絡線Tとの間の軸方向Dの距離を、振幅Gと定義する。
【0031】
中枢包絡線Sと末梢包絡線Tとの間の軸方向Dにおける中心の位置を、中心位置Hと定義する。中心位置Hは、軸方向Dにおいて中枢包絡線Sと末梢包絡線Tとの間に配置され、環状に延びる。中枢極点P及び末梢極点Qの夫々の数の逆数を、折れ曲がり周期Wという。
【0032】
<小型固定リング3>
図2に示すように、小型固定リング3は、管状部材2Aの中枢端21と小型固定リング3の複数の中枢極点P3との夫々の位置が、軸方向Dにおいて同一となる位置に配置される。つまり、小型固定リング3の複数の中枢極点P3は、管状部材2Aの中枢端21に沿って配置される。図3は、膨縮方向Eにおいて小弯側の端部に対応する部位で小型固定リング3を切断し、平面状に展開した状態を示す。小型固定リング3の複数の中枢極点P3及び複数の末梢極点Q3の夫々の数は、一例として18であり、折れ曲がり周期W3は、一例として1/18である。
【0033】
図2図3に示すように、小型固定リング3は、湾曲部分31、32、及び直線部分33を有する。湾曲部分31は、小型固定リング3のうち各中枢極点P3の近傍の部分である。湾曲部分32は、小型固定リング3のうち各末梢極点Q3の近傍の部分である。、直線部分33は、小型固定リング3のうち湾曲部分31、32間に亘って直線状に延びる部分である。湾曲部分31、32の曲率R3は同一であり、一例として0.6mmである。湾曲部分32から中枢側に向けて、軸方向Dに対して小弯側に傾斜して延びる直線部分33を、直線部分33Aという。湾曲部分32から中枢側に向けて、軸方向Dに対して大弯側に傾斜して延びる直線部分33を、直線部分33Bという。直線部分33A、33Bは、夫々が連結する湾曲部分32を通って軸方向Dに延びる基準軸を中心として、対称に配置される。直線部分33と軸方向Dとの間のなす角度θ3は、一例として14.5°である。
【0034】
複数の中枢極点P3を連結する中枢包絡線S3と、複数の末梢極点Q3を連結する末梢包絡線T3とは、夫々、軸方向Dと直交する。中枢包絡線S3及び末梢包絡線T3の夫々の延びる方向は、互いに平行である。中枢包絡線S3及び末梢包絡線T3の軸方向Dにおける中心位置H3は、軸方向Dと直交する。中枢包絡線S3と末梢包絡線T3との間の距離である第3振幅G3は、小型固定リング3の環状の全域に亘って一定であり、一例として6.5mmである。
【0035】
<複数の変動リング5>
図1に示すように、複数の変動リング5は、第1変動リング51、第2変動リング52、第3変動リング53、第4変動リング54、第5変動リング55を有する。第1変動リング51~第5変動リング55は、管状部材2Aの中枢端21側から末梢端22側に向けて、第1変動リング51、第2変動リング52、第3変動リング53、第4変動リング54、第5変動リング55の順で配列する。図1図4に示すように、第2変動リング52~第5変動リング55の形状は同一である。第1変動リング51の形状と、第2変動リング52~第5変動リング55の形状とは相違する。詳細は後述する。
【0036】
図5は、膨縮方向Eにおいて小弯側の端部に対応する部位で第1変動リング51を切断し、平面状に展開した状態を示す。図6は、膨縮方向Eにおいて小弯側の端部に対応する部位で第2変動リング52~第5変動リング55の各々を切断し、平面状に展開した状態を示す。
【0037】
図2図4図5図6に示すように、複数の変動リング5の夫々の複数の中枢極点P5(図2図4参照)及び複数の末梢極点Q5(図2図4参照)の夫々の数は、第1変動リング51~第5変動リング55で同一であり、一例として7である。折れ曲がり周期W5は、一例として1/7である。複数の変動リング5は、各々、湾曲部分501、502、及び直線部分503を有する。湾曲部分501は、各中枢極点P5の近傍の部分である。湾曲部分502は、各末梢極点Q5の近傍の部分である。直線部分503は、湾曲部分501、502間に亘って直線状に延びる部分である。湾曲部分502から中枢側に向けて、軸方向Dに対して小弯側に傾斜して延びる直線部分503を、直線部分503Aという。湾曲部分502から中枢側に向けて、軸方向Dに対して大弯側に傾斜して延びる直線部分503を、直線部分503Bという。直線部分503A、503Bは、夫々が連結する湾曲部分502を通って軸方向Dに延びる基準軸を中心として、対称に配置される。
【0038】
以下では、第1変動リング51~第5変動リング55の各々を、第N(Nは、1~5の何れかの整数)変動リング5Nと表記する場合がある。第2変動リング52~第5変動リング55の各々を、第n(nは、2~5の何れかの整数)変動リング5nと表記する場合がある。
【0039】
<第1変動リング51>
図2に示すように、第1変動リング51は、小型固定リング3に対して末梢端22(図1参照)側に隣接して配置される。第1変動リング51の複数の中枢極点P51を連結する中枢包絡線S51は、円周方向に延び、軸方向Dと直交する。言い換えれば、第1変動リング51の複数の中枢極点P51は、管状部材2Aの外面24に沿って円周方向に延び且つ軸方向Dと直交する仮想線(中枢包絡線S51)上に配列される。第1変動リング51の複数の中枢極点P51の軸方向Dの位置は同一である。
【0040】
小型固定リング3の末梢包絡線T3と、第1変動リング51の中枢包絡線S51とは、互いに平行である。末梢包絡線T3と中枢包絡線S51との間の軸方向Dの距離L12は、小型固定リング3の末梢極点Q3と、第1変動リング51の中枢極点P51との間の軸方向Dの距離に対応する。距離L12は円周方向に亘って同一であり、例えば0.5mmである。
【0041】
図5に示すように、第1変動リング51の各中枢極点P51を、中枢極点P51[1]、P51[2]・・・P51[7]と表記し、第1変動リング51の各末梢極点Q51を、末梢極点Q51[1]、Q51[2]・・・Q51[7]と表記する。第1変動リング51の複数の末梢極点Q51を連結する末梢包絡線T51は、軸方向Dと直交する直交部分T511、T521と、軸方向Dに対して傾斜した傾斜部分T531、T541を有する。直交部分T511は、末梢極点Q51[4]、Q51[5]間に亘って延びる。直交部分T521は、末梢極点Q51[6]、Q51[7]、Q51[1]、Q51[2]、Q51[3]間に亘って延びる。傾斜部分T531は、末梢極点Q51[3]、Q51[4]間に亘って延びる。傾斜部分T541は、末梢極点Q51[5]、Q51[6]間に亘って延びる。直交部分T511は、管状部材2Aのうち膨縮方向Eにおいて管状部材2Aの大弯側の端部近傍の部分に沿って延びる。直交部分T521は、管状部材2Aのうち膨縮方向Eにおける管状部材2Aの中心よりも大弯側の部分から小弯側の端部までの間の部分に沿って延びる。
【0042】
中枢包絡線S51と末梢包絡線T51との間の軸方向Dの距離の最大値を、第1振幅G511という。第1振幅G511は、中枢包絡線S51と、末梢包絡線T51の直交部分T511との間の軸方向Dの距離に対応する。第1振幅G511は、一例として15mmである。中枢包絡線S51と末梢包絡線T51との間の軸方向Dの距離の最小値を、第2振幅G521という。第2振幅G521は、中枢包絡線S51と、末梢包絡線T51の直交部分T521との間の軸方向Dの距離に対応する。第2振幅G521は、一例として10mmである。第1振幅G511は、第2振幅G521よりも大きい。第1振幅G511及び第2振幅G521は、何れも、小型固定リング3の第3振幅G3(図2参照)よりも大きい。
【0043】
図5に示すように、第1変動リング51のうち中枢包絡線S51と末梢包絡線T51との間の距離が第1振幅G511となる部分を、第1領域A511という。第1領域A511は、具体的には、第1領域A511は、第1変動リング51のうち中枢極点P51[4]及び末梢極点Q51[4]、Q51[5]を含む。第1変動リング51のうち中枢包絡線S51と末梢包絡線T51との間の距離が第2振幅G521となる部分を、第2領域A521という。具体的には、第2領域A521は、第1変動リング51のうち中枢極点P51[1]、P51[2]、P51[6]、Q51[7]、及び、末梢極点Q51[1]~Q51[3]、Q51[6]、Q51[7]を含む。
【0044】
第1変動リング51の中枢包絡線S51と末梢包絡線T51との間の軸方向Dにおける中心位置H51は、軸方向Dと直交する方向に対して末梢包絡線T51が屈曲することに応じ、軸方向Dと直交する方向に対して屈曲しながら円周方向に沿って延びる。図2に示すように、小型固定リング3の中心位置H3と、第1変動リング51の中心位置H51との間の軸方向Dにおける最小の距離L30は、中心位置H3、H51の夫々の膨縮方向Eにおける小弯側の端部の位置の間の距離に対応する。距離L30は、一例として8.75mmである。
【0045】
<第n変動リング5n(第2変動リング52~第5変動リング55)>
図4に示すように、第2変動リング52は、第1変動リング51に対して末梢端22(図1参照)側に配置される。第n変動リング5n(但しn=2を除く)は、第n-1変動リング5(n-1)(但しn=2を除く)に対して末梢端22側に配置される。
【0046】
図6に示すように、第n変動リング5nの複数の中枢極点P5nを連結する中枢包絡線S5nは、第1変動リング51と異なり、軸方向Dに屈曲する。第n変動リング5nの各中枢極点P5nを、中枢極点P5n[1]、P5n[2]・・・P5n[7]と表記し、第n変動リング5nの各末梢極点Q5nを、末梢極点Q5n[1]、Q5n[2]・・・Q5n[7]と表記する。第n変動リング5nの複数の中枢極点P5nを連結する中枢包絡線S5nは、軸方向Dと直交する直交部分S51nと、軸方向Dに対して傾斜した傾斜部分T53n、T54nを有する。直交部分S51nは、中枢極点P5n[5]、P5n[6]、P5n[7]、P5n[1]、P5n[2]、P5n[3]間に亘って延びる。傾斜部分S53nは、中枢極点P5n[3]、P5n[4]間に亘って延びる。傾斜部分S54nは、中枢極点P5n[4]、P5n[5]間に亘って延びる。第n変動リング5nの複数の末梢極点Q5nを連結する末梢包絡線T5nは、軸方向Dと直交する直交部分T51n、T52nと、軸方向Dに対して傾斜した傾斜部分T53n、T54nとを有する。直交部分T51nは、末梢極点Q5n[4]、Q5n[5]間に亘って延びる。直交部分T52nは、末梢極点Q5n[6]、Q5n[7]、Q5n[1]、Q5n[2]、Q5n[3]間に亘って延びる。傾斜部分T53nは、末梢極点Q5n[3]、Q5n[4]間に亘って延びる。傾斜部分T54nは、末梢極点Q5n[5]、Q5n[6]間に亘って延びる。
【0047】
図4に示すように、直交部分S51n(S512、S513)は、管状部材2Aのうち膨縮方向Eにおける中心よりも大弯側の部分から小弯側の端部までの間の部分に沿って延びる。傾斜部分S53n(S532、S533)、S54n(図6参照)は、管状部材2Aのうち膨縮方向Eにおける大弯側の端部近傍の部分に沿って延びる。直交部分T52n(T522、T523)は、管状部材2Aのうち膨縮方向Eにおける管状部材2Aの中心よりも大弯側から小弯側の端部までの間の部分に沿って延びる。
【0048】
図6に示すように、中枢包絡線S5nと末梢包絡線T5nとの間の軸方向Dの距離の最大値を、第1振幅G51nという。第1振幅G51nは、中枢包絡線S5nの傾斜部分S53n、S54nの交点、即ち中枢極点P5n[4]と、末梢包絡線T5nの直交部分T51nとの間の軸方向Dの距離に対応する。第1振幅G51nは、一例として15mmである。中枢包絡線S51と末梢包絡線T51との間の軸方向Dの距離の最小値を、第2振幅G52nという。第2振幅G52nは、中枢包絡線S5nの直交部分S51nと、末梢包絡線T5nの直交部分T52nとの間の軸方向Dの距離に対応する。第2振幅G521は、一例として10mmである。第1振幅G51nは、第2振幅G52nよりも大きい。第1振幅G51n及び第2振幅G52nは、小型固定リング3の第3振幅G3(図2参照)よりも大きい。第1振幅G51nは、第1変動リング51の第1振幅G511と同一である。第2振幅G52nは、第1変動リング51の第2振幅G521と同一である。以下、第1振幅G511、G51nを、第1振幅G51と総称する。第2振幅G521、G52nを、第2振幅G52と総称する。第2振幅G52は、第3振幅G3よりも大きい。
【0049】
図6に示すように、第n変動リング5nのうち中枢包絡線S51と末梢包絡線T51との間の距離が第1振幅G51nとなる部分を、第1領域A51nという。第1領域A51nは、具体的には、第1領域A51nは、第n変動リング5nのうち中枢極点P5n[4]及び末梢極点Q5n[4]、Q5n[5]を含む。第n変動リング5nのうち中枢包絡線S5nと末梢包絡線T5nとの間の距離が第2振幅G52nとなる部分を、第2領域A52nという。具体的には、第2領域A52nは、第n変動リング5nのうち中枢極点P5n[1]、P5n[2]、P5n[6]、Q5n[7]、及び、末梢極点Q5n[1]~Q5n[3]、Q5n[6]、Q5n[7]を含む。
【0050】
第n変動リング5nの中枢包絡線S5nと末梢包絡線T5nとの間の軸方向Dにおける中心位置H5nは、円周方向に沿って軸方向Dと直交する方向に延びる。図9に示すように、第1変動リング51の中心位置H51と、第2変動リング52の中心位置H52との間の軸方向Dにおける最大の距離である第1距離L31は、中心位置H51、H52の夫々の膨縮方向Eにおける小弯側の端部の位置の間の距離に対応する。第1距離L31は、一例として21.5mmである。第n変動リング5nの中心位置H5nと、第n+1変動リング5(n+1)の中心位置H5(n+1)との間の軸方向Dにおける最大の距離である第n距離L3nは、中心位置H5n、H5(n+1)の夫々の膨縮方向Eにおける小弯側の端部の位置の間の距離に対応する。第n距離L3n(第2距離L32、第3距離L33、第4距離L34)は、nの値に関わらず同一であり、一例として19mmである。第1距離L31は、第n距離L3n以上となる。
【0051】
図4に示すように、第1変動リング51の末梢包絡線T51と、第2変動リング52の中枢包絡線S52との間の軸方向Dにおける最大の距離L41は、末梢包絡線T51と中枢包絡線S52との夫々の膨縮方向Eにおける小弯側の端部の位置の間の距離に対応する。距離L41は、一例として11.5mmである。第1変動リング51の末梢包絡線T51と、第2変動リング52の中枢包絡線S52との間の軸方向Dにおける最小の距離L61は、末梢包絡線T51と中枢包絡線S52との夫々の膨縮方向Eにおける大弯側の端部の位置の間の距離に対応する。距離L61は、一例として4mmである。
【0052】
図9に示すように、第n変動リング5nの末梢包絡線T5nと、第n+1変動リング5(n+1)の中枢包絡線S5(n+1)との間の軸方向Dにおける最大の距離L4n(距離L42、L43、L44)は、末梢包絡線T5nと中枢包絡線S5(n+1)の夫々の膨縮方向Eにおける小弯側の端部の位置の間の距離に対応する。距離L4nは、nの値に関わらず同一であり、一例として9mmである。距離L41は、距離L4n以上である。第n変動リング5nの末梢包絡線T5nと、第n+1変動リング5(n+1)の中枢包絡線S5(n+1)との間の軸方向Dにおける最小の距離L6n(距離L62、L63、L64)は、末梢包絡線T5nと中枢包絡線S5(n+1)の夫々の膨縮方向Eにおける大弯側の端部の位置の間の距離に対応する。距離L6nは、nの値に関わらず同一であり、一例として4mmである。
【0053】
第n変動リング5nの各パラメータ(第1距離L31、第nL3n、距離L41、L4n、L61、L6n、第1振幅G51n、第2振幅G52nは、上記実施形態に限定されず、他の値であってもよい。例えば、距離L61は、0mmよりも大きい何れかの値でもよい。距離L6nは、0mmよりも大きい何れかの値でもよい。第1振幅G51nと第2振幅G52nとの比(第1振幅G51n/第2振幅G52n)は、1.5~2の範囲であってもよい。
【0054】
<複数の大型固定リング6>
図1図7に示すように、複数の大型固定リング6は、第1大型固定リング61、第2大型固定リング62、第3大型固定リング63を有する。第1大型固定リング61~第3大型固定リング63は、管状部材2Aの中枢端21側から末梢端22側に向けて、第1大型固定リング61、第2大型固定リング62、第3大型固定リング63の順で配列する。第1大型固定リング61~第3大型固定リング63の形状は同一である。第1大型固定リング61は、第5変動リング55に対して末梢端22側に隣接して配置される。第3大型固定リング63は、管状部材2Aの末梢端22と第3大型固定リング63の末梢極点Q6との夫々の位置が、軸方向Dにおいて同一となる位置に配置される。つまり、第3大型固定リング63の末梢極点Q6は、管状部材2Aの末梢端22に沿って配置される。
【0055】
図8は、膨縮方向Eにおいて小弯側の端部に対応する部位で第1大型固定リング61を切断し、平面状に展開した状態を示す。図7図8に示すように、複数の大型固定リング6の夫々の複数の中枢極点P6及び複数の末梢極点Q6の夫々の数は、第1大型固定リング61~第3大型固定リング63で同一であり、一例として6である。折れ曲がり周期W6は、一例として1/6である。複数の大型固定リング6は、各々、各中枢極点P6の近傍における湾曲部分601、各末梢極点Q6の近傍における湾曲部分602、及び、湾曲部分601、602間に亘って直線状に延びる直線部分603を有する。湾曲部分601、602の曲率R6は、第1大型固定リング61~第3大型固定リング63で同一であり、一例として0.8である。湾曲部分602から中枢側に向けて、軸方向Dに対して小弯側に傾斜して延びる直線部分603を、直線部分603Aという。湾曲部分602から中枢側に向けて、軸方向Dに対して小弯側に傾斜して延びる直線部分603を、直線部分603Bという。直線部分603A、603Bは、夫々が連結する湾曲部分602を通って軸方向Dに延びる基準軸を中心として、対称に配置される。直線部分603と軸方向Dとの間のなす角度θ6は、第1大型固定リング61~第3大型固定リング63で同一であり、一例として26°である。
【0056】
複数の中枢極点P6を連結する中枢包絡線S6と、複数の末梢極点Q3を連結する末梢包絡線T6とは、夫々、軸方向Dと直交する方向に延びる。中枢包絡線S6及び末梢包絡線T6の夫々の延びる方向は、互いに平行である。中枢包絡線S6及び末梢包絡線T6の軸方向Dにおける中心位置H6は、軸方向Dと直交する。中枢包絡線S6と末梢包絡線T6との間の距離である第4振幅G6は、複数の大型固定リング6の夫々の環状の全域に亘って一定であり、一例として15mmである。第4振幅G6は、小型固定リング3の第3振幅G3よりも大きく、且つ、複数の変動リング5の第1振幅G51と同一である。
【0057】
第1大型固定リング61の末梢包絡線T61と、第2大型固定リング62の中枢包絡線S62との間の軸方向Dにおける距離L51は、第2大型固定リング62の末梢包絡線T62と、第3大型固定リング63の中枢包絡線S63との間の軸方向Dにおける距離L52と同一である。距離L51、L52は、一例として4mmである。
【0058】
図9に示すように、第5変動リング55の中心位置H55と、第1大型固定リング61の中心位置H61との間の軸方向Dにおける最大の距離L40は、中心位置H55、H61の夫々の膨縮方向Eにおける小弯側の端部の位置の間の距離に対応する。距離L40は、一例として19mmである。図7に示すように、第1大型固定リング61の中心位置H61と、第2大型固定リング62の中心位置H62との間の軸方向Dにおける距離L41は、第2大型固定リング62の中心位置H62と、第3大型固定リング63の中心位置H63との間の軸方向Dにおける距離L42と同一である。距離L41、L42は、一例として19mmである。管状部材2Aの末梢端22と、第3大型固定リング63の末梢極点Q63は、軸方向Dにおいて同一位置に配置される。
【0059】
複数の大型固定リング6の各パラメータ(折れ曲がり周期W6、曲率R6、角度θ6、第4振幅G6、距離L30、L41、L42、L51、L52は、上記実施形態に限定されず、他の値であってもよい。例えば、折れ曲がり周期W6は、1/4~1/12の範囲の何れかの値でもよい。距離L51は、0mmよりも大きい何れかの値でもよい。距離L52は、0mmよりも大きい何れかの値でもよい。
【0060】
<ベアトップ7>
図1に示すように、ベアトップ7は、小型固定リング3に対して管状部材2Aの中枢端21側に配置される。ベアトップ7は、環状に延びるストラット、より詳細には、断面形状が長方形のワイヤである。ベアトップ7は、軸方向Dにおいて中枢側と末梢側とに交互に折れ曲がりながら、環状に延びる。
【0061】
図2に示すように、ベアトップ7のうち軸方向Dにおける中枢側の端部を先端71といい、軸方向Dにおける末梢側の端部を基端72という。つまり、ベアトップ7は、先端71側と基端72側とに交互に折れ曲がりながら環状に延びる。基端72は、ベアトップ7のうち管状部材2Aの末梢端22側の端部であり、末梢端22側に向けて凸状に湾曲する複数の極点の各々(以下、末梢極点Q7という。)に対応する。先端71は、ベアトップ7のうち管状部材2Aの中枢端21に対して末梢端22と反対側の端部であり、軸方向Dにおいて中枢側に向けて凸状に湾曲する複数の極点の各々(以下、中枢極点P7という。)に対応する。複数の中枢極点P7を結ぶ中枢包絡線S7と、複数の末梢極点Q7を結ぶ末梢包絡線T7は、夫々、軸方向Dと直交する。中枢包絡線S7と末梢包絡線T7との間の距離であるベアトップ振幅G7は、ベアトップ7の環状の全域に亘って一定であり、一例として12mmである。
【0062】
図10は、膨縮方向Eにおいて小弯側の端部に対応する部位でベアトップ7及び小型固定リング3を切断し、平面状に展開した状態を示す。ベアトップ7の複数の中枢極点P7及び複数の末梢極点Q7の夫々の数は、一例として8であり、折れ曲がり周期W7は、一例として1/8である。ベアトップ7は、各中枢極点P7の近傍における湾曲部分701、各末梢極点Q7の近傍における湾曲部分702、及び、湾曲部分701、702間に亘って延びる線状部分703を有する。湾曲部分702から中枢側に向けて、軸方向Dに対して小弯側に傾斜して延びる線状部分703を、線状部分703Aという。湾曲部分702から中枢側に向けて、軸方向Dに対して大弯側に傾斜して延びる線状部分703を、線状部分703Bという。線状部分703A、703Bは、夫々が連結する湾曲部分702を通って軸方向Dに延びる基準軸を中心として、対称に配置される。線状部分703と軸方向Dとの間のなす角度θ7は、一例として12.5°である。
【0063】
図2に示すように、ベアトップ7は、基端72を含む一部が、管状部材2Aの中枢端21の内面23に固定される。ベアトップ7のうち、管状部材2Aに固定された部分(基端72を含む一部)は、管状部材2Aの中枢端21に対して末梢端22側に配置される。管状部材2Aの中枢端21と、ベアトップ7の基端72との間の軸方向Dの距離L21は、一例として4mmである。このため、ベアトップ7の基端72と小型固定リング3の中枢極点P3との間の軸方向Dの距離L11も、4mmとなる。
【0064】
ベアトップ7の各末梢極点Q7と、小型固定リング3の中枢極点P3との夫々の円周方向の位置は相違する。より具体的には、図10に示すように、ベアトップ7の各末梢極点Q7を通って軸方向Dに延びる仮想的な直線Diと、小型固定リング3の各中枢極点P3を通って軸方向Dに延びる仮想的な直線Djとは、一直線上に配置されない。
【0065】
図2に示すように、ベアトップ7のうち、基端72に固定された部分(基端72を含む一部)を除く部分は、管状部材2Aの中枢端21に対して軸方向Dの中枢端側、言い換えれば、管状部材2Aの中枢端21に対して末梢端22と反対側に配置される。以下、この部分を突出部70という。突出部70の軸方向Dの距離L20は、ベアトップ7の先端71と管状部材2Aの中枢端21との間の軸方向Dの距離に対応する。距離L20は、一例として8mmである。
【0066】
突出部70において、基端72から先端71に向かう方向を、延伸方向Fという。延伸方向は、軸方向Dに対して傾斜する。より詳細には、延伸方向Fは、中心線Cから離隔する向きに傾斜して延びる。このため、基端72の複数の末梢極点Q7を結ぶ末梢包絡線T7の直径よりも、先端71の複数の中枢極点P7を結ぶ中枢包絡線S7の直径の方が大きくなる。
【0067】
更に詳細には、次の通りである。図11に示すように、ベアトップ7は屈曲する。ベアトップ7は、基端部位76、第1部位77、及び第2部位78を有する。基端部位76は、管状部材2Aに固定されている部分である。第1部位77は、基端部位76の先端に連結し、中枢側に向けて延伸方向F77に沿って延びる。第2部位78は、第1部位77の先端に連結し、中枢側に向けて延伸方向F78に沿って延びる。第2部位78の先端は、ベアトップ7の先端71に対応する。延伸方向F77、F78の各々と、中心線Cと並行な基準方向Bとの間のなす角度を、第1角度θ77、第2角度θ78と表記する。第1角度θ77は、一例として12°である。第2角度θ78は、一例として0°である。第2角度θ78は、第1角度θ77よりも小さい。
【0068】
ベアトップ7の各パラメータ(ベアトップ振幅G7、折れ曲がり周期W7、曲率R7、角度θ7、距離L11、L20、L21、第1角度θ77、第2角度θ78は、上記実施形態に限定されず、他の値であってもよい。例えば、折れ曲がり周期W7は、1/4~1/12の範囲の何れかの値でもよい。距離L11は、0mm~4mmの範囲の何れかの値でもよい。距離L21は、0mm~4mmの範囲の何れかの値でもよい。
【0069】
<使用方法>
ステントグラフト1Aは、折り畳まれた状態でデリバリーシステムに収納される。デリバリーシステムは、脚の付け根の血管に開けた切れ目から体内に挿入される。この時、ステントグラフト1Aの中枢側、言い換えれば、軸方向Dにおいてベアトップ7が設けられた側が、デリバリーシステムの進行方向を向く。ステントグラフト1Aは、患部まで誘導された後、デリバリーシステムから押出され、血管内に留置される。ステントグラフト1Aの管状部材2Aは、複数のステントリング2Bの弾性力により広げられる。
【0070】
図12に示すように、ステントグラフト1Aは、胸部大動脈8の内側に密着し、弓部大動脈8Bに沿って屈曲する。ステントグラフト1Aのベアトップ7は、弓部大動脈8Bのうち、より心臓に近い胸部大動脈の位置に密着する。ステントグラフト1Aの管状部材2Aのうち膨縮方向Eにおける小弯側は、弓部大動脈8Bの小弯部81側に配置される。複数の変動リング5の夫々の小弯側の端部は、弓部大動脈8Bの急峻な屈曲部となる小弯部81に密着する。管状部材2Aのうち膨縮方向Eにおける大弯側は、弓部大動脈8Bの大弯部82側に配置される。複数の変動リング5の夫々の大弯側の端部は、弓部大動脈8Bの大弯部82に密着する。複数の大型固定リング6は、胸部大動脈8のうち、より腹部大動脈に近い下行大動脈8Cの位置に密着する。
【0071】
図13に示すように、管状部材2Aは、膨縮方向Eにおける小弯側の部分のうち複数の変動リング5の夫々の間の部分が収縮することによって、弓部大動脈8Bの急峻な屈曲部分となる小弯部81で屈曲する。ここで、図9に示すように、第1変動リング51と第2変動リング52との間の小弯側の距離L41は、大弯側の距離L61よりも大きい。第2変動リング52と第3変動リング53との間の小弯側の距離L42は、大弯側の距離L62よりも大きい。第3変動リング53と第4変動リング54との間の小弯側の距離L43は、大弯側の距離L63よりも大きい。第4変動リング54と第5変動リング55との間の小弯側の距離L44は、大弯側の距離L64よりも大きい。このため、管状部材2Aは、複数の変動リング5が固定された位置において大弯側よりも小弯側で収縮し易く、屈曲し易くなる。このため、ステントグラフト1Aは、弓部大動脈8Bの急峻な屈曲部分となる小弯部81に管状部材2Aを密着させることができる。
【0072】
図12に示すように、ステントグラフト1Aは、弓部大動脈8Bに形成された大動脈瘤80の部分に対する血液の流れを、管状部材2Aにより抑制し、胸部大動脈8を保護する。ステントグラフト1Aのベアトップ7は、複数のステントと組み合わせることで、管状部材2Aのうち中枢端21に形成された開口21Aを、血管の内壁に更に適切に密着させることができる。このため、ステントグラフト1Aは、管状部材2Aの中枢端21の開口部から血液が漏れて大動脈瘤80に流れる現象、即ちエンドリークの発生を抑制できる。
【0073】
<本実施形態の作用、効果>
ステントグラフト1Aは、弓部大動脈8Bの急峻な屈曲部分である小弯部81の内壁に対し、管状部材2Aのうち複数の変動リング5が固定された部分を密着させることができる。又、ステントグラフト1Aは、弓部大動脈8Bの上行大動脈8Aの内壁にベアトップ7を密着させることができる。このため、ステントグラフト1Aは、管状部材2Aのうち中枢端21に形成された開口21Aを、血管の内壁に適切に密着させることができるので、エンドリークの発生を抑制できる。
【0074】
小型固定リング3は、ベアトップ7に対して管状部材2Aの末梢端22側に隣接する。複数の変動リング5は、小型固定リング3に対して管状部材2Aの末梢端22側に隣接する。つまり、管状部材2Aを良好に屈曲させるために設けた複数の変動リング5とベアトップ7との間に、小型固定リング3が配置される。小型固定リング3の第3振幅G3は、複数の変動リング5の第1振幅G511、G51nよりも小さい。又、小型固定リング3の折れ曲がり周期W3は、複数の変動リング5の折れ曲がり周期W5よりも大きい。このため、小型固定リング3は、より強い弾性力で管状部材2Aの中枢端21の開口21Aを血管に密着させることができる。従って、ステントグラフト1Aは、ベアトップ7と小型固定リング3とによって、管状部材2Aのうち中枢端21に形成された開口21Aを、血管の内壁に更に適切に密着させることができる。
【0075】
ベアトップ7の基端72に対応する複数の末梢極点Q7の円周方向の位置と、小型固定リング3の複数の中枢極点P3の円周方向の位置とは相違する。これによりステントグラフト1Aは、ベアトップ7の複数の末梢極点Q7と、小型固定リング3の中枢極点P3とが近接した場合でも、ベアトップ7と小型固定リング3とが接触することを抑制できる。
【0076】
ベアトップ7は、基端72から先端71に向かう延伸方向Fが、管状部材2Aの中心線Cから離隔する向きに延びる。この場合、ステントグラフト1Aが血管内に配置された時に、ベアトップ7は血管の内壁に接触し易くなる。このためステントグラフト1Aは、ベアトップ7に生ずる弾性力により、血管の内壁にベアトップ7を密着させることができる。又、ベアトップ7は、管状部材2Aの中枢端21の開口が血管に対して位置ずれする可能性を軽減できる。
【0077】
ベアトップ7は、基準方向Bに対する延伸方向Fの角度が第1角度θ77である第1部位77と、基準方向Bに対する延伸方向Fの角度が、第1角度θ77よりも小さい第2角度θ78である第2部位78とを有する。この場合、ステントグラフト1Aが血管内に配置された時に、ベアトップ7の先端71よりも、第1部位77~第2部位78が血管の内壁に接触し易くなる。つまり、ベアトップ7は、第1部位77~第2部位78全体で血管に接触することで、先端71のみが血管に接触する可能性を軽減できる。従って、ステントグラフト1Aは、ベアトップ7の先端71が血管の内壁を傷付ける可能性を軽減できる。
【0078】
ステントグラフト1Aは、第4振幅G6を有する複数の大型固定リング6を備える。複数の大型固定リング6は、複数の変動リング5及び小型固定リング3に対して末梢端22側に配置される。この場合、ステントグラフト1Aは、血管の急峻な屈曲部分から直線状に延びる部分(例えば、下行大動脈8C)に対し、複数の大型固定リング6を密着させる。複数の大型固定リング6の第4振幅G6は、小型固定リング3の第3振幅G3よりも大きい。このため複数の大型固定リング6は、直線状に延びる下行大動脈8Cに対し、管状部材2Aを適度な強さで押し付けて密着させることができる。
【0079】
小型固定リング3の第3振幅G3は、複数の変動リング5の第2振幅G521、52n以下である。この場合、小型固定リング3が弾性力によって管状部材2Aを外方に広げる力を高めることができる。このためステントグラフト1Aは、管状部材2Aのうち中枢端21の開口21Aを血管の内壁に密着させる力を、更に強めることができる。
【0080】
ベアトップ7の基端72は、管状部材2Aのうち中枢端21の内面23に縫合糸等で固定される。この場合、ベアトップ7は、管状部材2Aの中枢端21の開口21Aを、弾性力によって外側に広げる。このためステントグラフト1Aは、管状部材2Aの中枢端21を血管の内壁に適切に密着させることができる。又、複数のステントリング2Bは、管状部材2Aの外面24に固定される。このためステントグラフト1Aは、管状部材2Aの内側を通過する各種デバイスが複数のステントリング2Bに引っ掛る可能性を軽減できる。
【0081】
複数のステントリングは、5つの変動リング5と、1つの小型固定リング3とを備える。この場合、ステントグラフト1Aは、弓部大動脈8Bの急峻な屈曲部分である小弯部81の内壁に対する管状部材2Aの密着性を、5つの変動リング5によって更に高めることができる。又、ステントグラフト1Aは、管状部材2Aの中枢端21の開口21Aを、1つの小型固定リング3によって血管に適切に密着させることができる。
【0082】
第1変動リング51の複数の中枢極点P51を連結する中枢包絡線S51は、円周方向に延び、軸方向Dと直交する。つまり、第1変動リング51の複数の中枢極点P51は、管状部材2Aの外面24に沿って円周方向に延び且つ軸方向Dと直交する仮想線(中枢包絡線S51)上に配列される。この場合、小型固定リング3と第1変動リング51とが一定の間隔を維持した状態で配列されるので、管状部材2Aを外方に広げる力は、管状部材2Aの中枢端21において特に強くなる。このためステントグラフト1Aは、管状部材2Aのうち中枢端21の開口21Aを血管の内壁に密着させる力を更に強めることができる。
【0083】
なお、複数のステントリング2Bの各々の振幅Gは、中枢端21側の複数の中枢極点P間を連結する中枢包絡線Sと、末梢端22側の複数の末梢極点Q間を連結する末梢包絡線Tとの間の軸方向Dの距離として定義される。これにより、血管の内壁に密着させることが可能な複数のステントリング2Bの形状を、振幅Gに基づき容易に規定できる。なお、複数の変動リング5において、大弯側の第1振幅G51nは、小弯側の第2振幅G52nよりも大きい。このため、ステントグラフト1Aは、弓部大動脈8Bの急峻な屈曲部分である小弯部81の内壁に対し、管状部材2Aのうち複数の変動リング5が固定された部分を密着させることができる。
【0084】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。ステントグラフト1Aは、弓部大動脈に留置されて使用される場合に限定されず、他の血管の部位に留置されて使用されてもよい。
【0085】
複数の変動リング5の各々の振幅は、最大の第1振幅G51から最小の第2振幅G52に向けて、次第に小さくなってもよい。この場合、中枢包絡線G5及び抹消包絡線T5は、互いに近接する向きに直線状に延びてもよい。
【0086】
ベアトップ7の形状は、上記実施形態に限定されず、他の形状でもよい。例えば、ベアトップ7の先端71は、矩形状に曲折してもよい。ベアトップ7の基端72は、管状部材2Aの中枢端21に固定されていてもよい。管状部材2Aに対するベアトップ7の固定方法は、上記実施形態に限定されない。例えばベアトップ7は、管状部材2Aに対して接着剤等により固定されてもよい。
【0087】
ベアトップ7、小型固定リング3、複数の変動リング5、及び複数の大型固定リング6の個数及び並び順は、上記実施形態に限定されない。例えば、ベアトップ7、第1変動リング51、小型固定リング3、第n変動リング5n、及び複数の大型固定リング6の順で配列されてもよい。複数の変動リング5と複数の大型固定リング6のとの間に、小型固定リング3が設けられてもよい。第3大型固定リング63に対して管状部材2Aの末梢端22側に、小型固定リング3が設けられてもよい。小型固定リング3が複数設けられてもよい。管状部材2Aの末梢端22にもベアトップが設けられてもよい。
【0088】
図14に示すように、ベアトップ7の基端72が、小型固定リング3のうち管状部材2Aの中枢端21側の端部、即ち、中枢極点P3に対して末梢端22側に位置しなくてもよい。即ち、ベアトップ7の基端72と、小型固定リング3の中枢極点P3とが、軸方向Dにおいて重複しなくてもよい。なお、ベアトップ7の先端71は、小型固定リング3の複数の中枢極点P3に対して末梢端22側と反対側に位置する。
【0089】
ベアトップ7の複数の末梢極点Q7と、小型固定リング3の複数の中枢極点P3との夫々の円周方向の位置が一致していてもよい。より具体的には、ベアトップ7の各末梢極点Q7を通って軸方向Dに延びる仮想的な直線Diと、小型固定リング3の各中枢極点P3を通って軸方向Dに延びる仮想的な直線Djとは、一直線上に配置されてもよい。ベアトップ7の複数の末梢極点Q7と、小型固定リング3の複数の中枢極点P3とが接触してもよい。
【0090】
ベアトップ7は、角度の異なる部位を複数箇所有してもよい。ベアトップ7は、基端72から先端71に向けて一直線状に延びてもよい。又は、ベアトップ7は軸方向Dと並行に延びてもよい。この場合、ベアトップ7は、軸方向Dに対して傾斜していなくてもよい。
【0091】
複数のステントリング2Bは、小型固定リング3及び複数の変動リング5のみ有し、複数の大型固定リング6を有さなくてもよい。この場合、複数の変動リング5が、管状部材2Aの末梢端22の近傍まで配置されていてもよい。
【0092】
ベアトップ7は、管状部材2Aのうち中枢端21の外面24に基端72が固定されてもよい。この場合、管状部材2Aに対するベアトップ7の取り付けを容易に行うことができる。複数のステントリング2Bは、管状部材2Aの内面23に固定されていてもよい。この場合、複数のステントリング2Bによって管状部材2Aをより適切に外方に広げ、管状部材2Aを血管に密着させることができる。
【0093】
複数の変動リング5の第1振幅G511、G51nと、複数の大型固定リング6の第4振幅G6とは相違していてもよい。小型固定リング3の第3振幅G3は、複数の変動リング5の第2振幅G521、52nよりも大きくてもよいし、第3振幅G3と第2振幅G521、52nが同一であってもよい。
【0094】
複数の変動リング5及び大型固定リング6の数は、上記実施形態に限定されない。このため、複数の変動リング5の数は、2~4、6以上の何れかであってもよい。又、複数のステントリング2Bは第1変動リング51又は第2変動リング52のみ有してもよい。つまり、ステントグラフト1Aは1つの変動リング5のみ有してもよい。
【0095】
第1変動リング51の複数の中枢極点P51の軸方向Dの位置は一致していなくてもよい。より具体的には、第1変動リング51の複数の中枢極点P51を連結する中枢包絡線S51の少なくとも一部が、軸方向Dと直交する方向に対して傾斜していてもよい。例えば、第1変動リング51は、第n変動リング5nと同じ形状を有してもよい。
【0096】
小型固定リング3の中枢極点P3は、管状部材2Aの中枢端21に対して末梢側に配置されてもよい。即ち、小型固定リング3の中枢極点P3と管状部材2Aの中枢端21とは、軸方向Dにおいて異なる位置に配置されてもよい。最も末梢端に配置される第3大型固定リング63の複数の末梢極点Q6は、管状部材2Aの末梢端22に対して中枢側に配置されてもよい。即ち、第3大型固定リング63の複数の末梢極点Q6と管状部材2Aの末梢端22とは、軸方向Dにおいて異なる位置に配置されてもよい。
【0097】
ベアトップ7の湾曲部分701の曲率と、湾曲部分702の曲率とは、同一であってもよいし相違してもよい。湾曲部分701の曲率は、複数の中枢極点P7のすべてで一致してもよいし、複数の中枢極点P7毎に相違してもよい。
【0098】
ベアトップ7の各末梢極点Q7と、小型固定リング3の中枢極点P3との夫々の円周方向の位置が一致してもよい。この場合、ステントグラフト1Aは、ベアトップ7と小型固定リング3との重複部分で管状部材2Aを更に効率的に外方に広げ、血管に密着させることができる。
【0099】
小型固定リング3の複数の中枢極点P3は、軸方向Dにおいて同一の位置に配置されなくてもよい。複数の中枢極点P3を連結する中枢包絡線S3の少なくとも一部は、軸方向Dに対して傾斜してもよい。同様に、小型固定リング3の複数の末梢極点Q3は、軸方向Dにおいて同一の位置に配置されなくてもよい。複数の末梢極点Q3を連結する末梢包絡線T3の少なくとも一部は、軸方向Dに対して傾斜してもよい。中枢包絡線S3と末梢包絡線T3との間の距離である第3振幅G3は、小型固定リング3の円周方向の位置に応じて変動してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14