(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】角度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/12 20060101AFI20240709BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01D5/12 G
G01D5/12 Q
G01D5/245 110J
G01D5/245 110B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020115354
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10 2019 209 862.2
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ミッテライター
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-51702(JP,A)
【文献】特開2001-201362(JP,A)
【文献】特開2010-145333(JP,A)
【文献】特開2013-127435(JP,A)
【文献】特開2006-349168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角度測定装置であって、第1の構成要素群(1)と、第2の構成要素群(2)と、軸受(3)とを備え、第1および第2の構成要素群(1、2)が、回転軸線(A)を中心として軸受(3)によって互いに対して回転可能に配置されており、
第1の構成要素群(1)が、第1の区分(1.11;1.11′;1.11″)と第2の区分(1.12;1.12′;1.12″)とを有するスケール要素(1.1;1.1′;1.1″)を備え、
第2の構成要素群(2)が、
エアギャップをもってスケール要素(1.1;1.1′;1.1″)に向かい合って配置された位置センサ(2.11)を有する第1の構成ユニット(2.1)と、
エアギャップをもってスケール要素(1.1;1.1′;1.1″)に向かい合って配置された第1、第2、第3、第4、第5および第6の位置ピックアップ(2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26)を備える第2の構成ユニット(2.2)と、
補正継手(2.3)と
を有し、
位置センサ(2.11)によって、第1および第2の構成要素群(1、2)間の相対角度位置を決定するために第1の区分(1.11;1.11′;1.11″)が走査可能であり、
第1、第2および第3の位置ピックアップ(2.21、2.22、2.23)によって、第1の区分(1.11;1.11′;1.11″)またはスケール要素(1.1;1.1′;1.1″)に配置されたさらなる区分が、
回転軸線(A)に対して垂直に向けられた平面(P)におけるスケール要素(1.1;1.1′;1.1″)の変位を決定するために走査可能であり、
第4、第5、および第6の位置ピックアップ(2.24、2.25、2.26)によって、第2の区分(1.12;1.12′;1.12″)が、平面(P)に、もしくは平面(P)に対して平行に位置する傾斜軸線(B)を中心としてスケール要素(1.1;1.1′;1.1″)の傾斜を決定するために走査可能であり、
第1の構成ユニット(2.1)が、補正継手(2.3)によって、ねじり剛性を有するが、軸線方向および半径方向に撓むように第2の構造ユニット(2.2)に結合されており、これにより、位置センサ(2.11)が、位置ピックアップ(2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26)に対してねじり剛性を有するが、軸線方向および半径方向に撓むように配置されている角度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の角度測定装置において、
前記第1の区分(1.11)が、第1の方向に沿って互いに平行に、互いに隣接して配列された規則的なパターンを備え、第1の方向が周方向(u)の方向成分を有し、
前記第2の区分(1.12;1.12′;1.12″)が、第2の方向に沿って互いに平行に、互いに隣接して配列された規則的なパターンを備え、第2の方向が軸線方向(z)の方向成分を有する角度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の角度測定装置において、
前記第2の構成要素群(2)が、光源(2.211)と、前記第1の区分(1.11;1.11′;1.11″)とを有し、前記位置センサ(2.11)が、前記第1および第2の構成要素群(1,2)間の相対角度位置が光学原理によって決定可能であるように構成されている角度測定装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の角度測定装置において、
前記平面(P)における前記スケール要素(1.1;1.1′;1.1″)の変位が、磁気原理によって決定可能である角度測定装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の角度測定装置において、
前記第1の区分(1.11″)および前記第2の区分(1.12″)が、少なくとも部分的に重ね合わせて配置されている角度測定装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の角度測定装置において、
前記スケール要素(1.1;1.1′;1.1″)の変位を決定するための少なくとも2つの位置ピックアップ(2.21、2.22、2.23)が、回転軸線(A)を中心として中央角度を少なくとも90°だけずらして配置されている角度測定装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の角度測定装置において、
傾斜軸線(B)を中心とした前記スケール要素(1.1;1.1′;1.1″)の傾斜を決定するための少なくとも2つの位置ピックアップ(2.24、2.25、2.26)が、回転軸線(A)を中心として中央角度を少なくとも90°だけずらして配置されている角度測定装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の角度測定装置において、
少なくとも3つの前記位置ピックアップ(2.20~2.26)が、円形線に沿って配置されている角度測定装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の角度測定装置において、
前記第2の構成要素群(2)がケーシング(2.4)を備え、前記位置センサ(2.11)および前記複数の位置ピックアップ(2.20~2.26)が前記ケーシング(2.4)内に配置されている角度測定装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の角度測定装置において、
前記スケール要素(1.1;1.1′;1.1″)が円筒形状を有し、前記第1の区分(1.11)および/または前記第2の区分(1.12;1.12′;1.12″)がスケール要素(1.1;1.1′;1.1″)の周面に取り付けられている角度測定装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の角度測定装置において、
前記位置センサ(2.11)が、軸線方向(z)に関して前記第4、第5、および第6の位置ピックアップ(2.24、2.25、2.26)に対してずらして配置されている角度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケール要素を備える角度測定装置であって、請求項1に記載のスケール要素の相対的な角度位置ならびに側方変位および傾斜を測定するため角度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような角度測定装置は、例えば、スピンドルまたは回転テーブルに取り付けることができる。関連するスピンドルまたは回転テーブルは、しばしば加工機械または加工センターで使用される。スピンドルまたはモータスピンドルは、工作機械において回転工具、例えばフライスを保持することが多い。回転テーブルにワークピースが取り付けられ、ワークピースは、次いで、例えば、切削加工される。さらに回転テーブルは測定機械で使用され、この用途では、回転テーブルに固定されたワークピースが測定される。角度測定装置は、特に工作機械または測定機械では回転運動を測定するために使用される。このようなスピンドルまたは回転テーブルの性能、特に作動時の精度を向上させることがますます望まれている。
【0003】
日本国特許出願公開第2010‐217167号明細書は、ハブの回転速度の測定を可能にし、ハブに軸線方向に加えられる荷重の推定を可能にする信号を生成するエンコーダを有する測定装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特許出願公開第2010‐217167号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、作動時に複数の方向に回転軸線の位置を決定することができる角度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴によって解決される。
【0007】
したがって、角度測定装置は、第1の構成要素群と、第2の構成要素群と、軸受とを備える。第1および第2の構成要素群は、回転軸線を中心として、軸受によって、もしくは軸受を用いて、互いに対して回転可能に配置されている。第1の構成要素群は、第1の区分と第2の区分と、随意にさらなる区分とを有するスケール要素を備える。第2の構成要素群は第1の構造ユニットを有し、この第1の構造ユニットは、エアギャップをもってスケール要素に向かい合って配置された少なくとも1つの位置センサを有する。さらに、第2の構成要素群は、第1、第2、第3、第4、第5および第6の位置ピックアップを有する第2の構成ユニットを有する。位置ピックアップは、同様にエアギャップをもってスケール要素に向かい合って配置されている。第2の構成要素群はさらに補正継手を有する。少なくとも1つの位置センサによって、第1および第2の構成要素群間の相対的な角度位置を決定するために第1の区分が走査可能である。第1、第2、および第3の位置ピックアップによって、第1の区分、またはスケール要素に配置されたさらなる区分が、特に回転軸線に直交するように配向された平面におけるスケール要素の変位を決定するために走査可能である。さらに、平面に、もしくは平面に平行に位置する傾斜軸線を中心としたスケール要素もしくは回転軸線の傾斜(傾斜角度)を定量的に決定するために、第4、第5、および第6の位置ピックアップによって第2の区分が走査可能である。第1の構成ユニットは、補正継手によって、ねじり剛性を有するが、しかしながら、軸線方向および半径方向に撓むように第2の構成ユニットに結合されており、これにより、位置センサは、位置ピックアップに対してねじり剛性を有するが、しかしながら、軸方向および半径方向に撓むように配置されている。
【0008】
「ねじり剛性を有する」という用語は、以下では、周方向に関して、位置ピックアップに対する位置センサの位置が、補正継手に通常の負荷が加えられた場合であっても変化しないままであることとして理解されるべきである。これに対して、補正継手の軸線方向および半径方向の可撓性によって、補正継手に通常の負荷を加えられた場合に位置ピックアップに対する位置センサの位置を変化させる。特に、位置センサは、スケール要素に対して(軸線方向および半径方向に)不動に配置されている。
【0009】
「位置センサ」および「位置ピックアップ」という用語を使用することによって、主に、これらの要素が異なる構成ユニットに取り付けられることを表すことを意図している。関連する要素(位置センサ、位置ピックアップ)は、異なるように、または同一に構成することができる。
【0010】
位置センサによって、第2の構成要素群に対するスケール要素の角度位置を1回転以内に絶対的に決定することができる。これは、例えば、第1の区分が絶対的なコードトラックを有するか、または、スケール要素に基準マークが取り付けられており、この基準マークが、インクリメンタル区分と共に、1回転内の角度位置の絶対的な決定を可能にすることによって達成することができる。
【0011】
第2の区分は、インクリメンタル区分として、または絶対的な区分として構成することができる。絶対区分として構成することは、角度測定装置がスイッチオンされた後にもスケール要素の軸方向位置を直接に決定することができ、このことが、例えば、スケール要素が温度に起因して軸線方向に変位した場合に役立つことがあるという利点を有する。
【0012】
スケール要素としては、例えば、ハブに固定することができるリング状の本体を考慮することができる。あるいは、第1および/または第2の区分はハブに直接に取り付けることもできる。
【0013】
位置センサは、半径方向または軸線方向に延在するエアギャップをもってスケール要素に向かい合って配置することができる。同様に位置ピックアップもそれぞれ半径方向または軸線方向に延在するエアギャップをもってスケール要素に向かい合って配置することができ、この場合、それぞれのエアギャップの大きさは、加えられる負荷に起因する変位、ずれ、または補正継手の変形に伴う傾斜によって変化することがある。
【0014】
第1の区分および任意のさらなる区分は、有利には、第1の方向に沿って互いに平行に、互いに隣接して配列された規則的なパターンを含む。この場合、第1の方向は周方向の方向成分を有し、第2の区分は、第2の方向に沿って互いに平行に、互いに隣接して配列された規則的なパターンを含む。第2の方向は軸線方向に方向成分を有する。
【0015】
第1の区分の規則的なパターンが互いに隣接して配列される第1の方向は、周方向と同一であってもよい。同様に、第1の方向は、周方向に対して傾斜して、もしくは斜めに配置することができる(しかしながら、周方向に対して垂直ではない)。同様に、第2の区分の規則的なパターンが互いに隣接して配列される第2の方向は、軸線方向と同一に(したがって、回転軸線に平行に)配置することができる。同様に、第2の方向は、軸線方向に対して傾斜して、もしくは斜めに配置することができる(しかしながら、軸線方向に対して垂直ではない)。例えば、第1の区分の規則的なパターンと第2の区分の規則的なパターンとは、互いに対してV字状に配向することもできる。
【0016】
本発明のさらなる構成では、第2の構成要素群は光源を有し、第1の区分および位置センサは、構成要素群間の相対角度位置が光学原理によって決定できるように構成されている。
【0017】
平面におけるスケール要素の変位は、有利には、磁気原理によって決定することができる。この場合、スケール要素の区分のパターンは、特に、磁気的なパターンとして、すなわち、局所的に定義された磁気的なN極およびS極のシーケンスとして構成されている。この構成では、位置センサおよび/または位置ピックアップは磁気センサとして構成されている。位置センサおよび/または位置ピックアップは、例えば、磁気抵抗原理に基づいて作動することができるか、またはホール式位置ピックアップとして構成することができる。あるいは、位置センサは、光学的または誘導的な測定原理に基づいていてもよく、原理を組み合わせることも可能であり、したがって第1の区分は、第2の区分とは異なる原理にしたがって走査することができる。
【0018】
有利には、第1の区分および第2の区分は、少なくとも部分的に重ねて配置されている。例えば、第1の区分および第2の区分は、円筒状のスケール要素の周面に取り付けることができ、第1の区分と第2の区分とを軸線方向に関して重ね合わせるように構成することができる。特に、第1の区分を光学的に走査可能な区分として構成し、第2の区分を磁気的に走査可能な区分として構成してもよい。
【0019】
本発明のさらなる構成では、スケール要素の変位を決定するための少なくとも2つの位置ピックアップは、回転軸線を中心として中央角度を少なくとも90°だけずらして配置されている。したがって、例えば、第1の位置センサは、第2の位置センサに対して、または第3の位置センサに対して、回転軸線を中心として中央角度を少なくとも90°だけずらして配置されている。中央角度は中心角度として理解されるべきであり、関連する中心は回転軸線に位置している。
【0020】
有利には、傾斜軸線を中心としたスケール要素の傾斜を決定するための少なくとも2つ位置ピックアップは、回転軸線を中心として中央角度を少なくとも90°だけずらして配置されている。この場合、したがって、例えば第4の位置ピックアップは、第5の位置ピックアップに対して、または第6の位置ピックアップに対して回転軸線を中心として中央角度を少なくとも90°だけずらして配置されている。
【0021】
本発明のさらなる構成では、位置ピックアップおよび随意に位置センサも円形線に沿って配置されている。
【0022】
有利には、第2の構成要素群はケーシングを備え、位置センサおよび複数の位置ピックアップはこのケーシング内に配置されている。
【0023】
有利には、位置センサおよび位置ピックアップは電子モジュールに電気的に接続されており、電子モジュールによって、スケール要素の角度位置、回転軸線に垂直な平面におけるスケール要素の変位または位置、およびスケール要素の傾斜が決定可能である。随意に、さらに電子モジュールによって軸線方向の位置を決定することもできる。
【0024】
当然ながら適宜に堅固に構成されているスピンドルまたは回転テーブルの場合、このような傾斜は比較的小さく、理想的な回転軸線に対して1分未満の角度範囲、例えば、100秒から50秒までの角度範囲である。したがって、これらの傾斜による位置の変化は最小限であり、位置センサは、傾斜に関して確実に述べることまたは定量値を提供することができるように、極めて高い分解能を有している必要がある。回転軸線は必要に応じて回転することができるので、上記傾斜はスケール要素の揺動をもたらす場合があり、これらの揺動は、角度測定装置によって、特に測定された角度位置を加えることによって定量的に確認することができる。
【0025】
有利には、角度測定装置は、位置センサおよび/または位置ピックアップによって生成された信号に基づいた情報を記憶するためのデータロガーとして使用することができるメモリモジュールを有する。
【0026】
本発明のさらなる構成では、第1の区分を走査することができる位置センサは、第2の区分を走査することができる位置ピックアップに対して軸線方向に関してずらして配置されている。特に、位置センサは、第4、第5、および第6の位置ピックアップに対してずらして配置することができる。
【0027】
少なくとも第2の区分(または両方の区分)は、有利には、円筒状のスケール要素の周面に取り付けられている。
【0028】
したがって、角度測定装置は、角度位置だけでなく、例えば回転テーブルの軸線変位もオンラインで検出することができる。特に、回転軸線に垂直な平面におけるスケール要素の角度位置および位置の測定値に基づいて、機械加工または測定プロセスにおける目標位置の補正を数値制御によって行うことができる。したがって、例えば、機械加工時にワークピースの位置を補正することができる。特に、角度測定装置は、数値制御と共に、絶対角度位置に関連して角度測定装置によって測定された位置データに基づいて補正値が生成されるように構成することができる。
【0029】
位置ピックアップは、有利には、2μm未満、特に1μm未満、特に750nm未満の分解能を有することができる。分解能のこれらの値は、軸線方向位置および側方位置の両方を決定するために、すなわち回転軸に垂直な平面において達成することができる。
【0030】
したがって、角度測定装置によって、測定された角度位置の関数として、残りの5自由度におけるスケール要素もしくは回転軸線の変位または移動を定量的に検出することができる。
【0031】
スケール要素はさらなる区分を有することができ、スケール要素は、第1の区分を光学原理にしたがって走査することができ、さらなる区分を磁気原理にしたがって走査することができるように構成してもよい。第1の区分およびさらなる区分は、少なくとも部分的に重ね合わせて配置することができる。例えば、第1の区分およびさらなる区分は、円筒状のスケール要素の周面に適用することができ、第1の区分およびさらなる区分は、軸線方向に関して重ね合わせて構成することができる。
【0032】
本発明の有利な構成が、従属請求項に記載されている。
【0033】
本発明による角度測定装置のさらなる詳細および利点が、添付の図面を参照した例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図5】角度測定装置を示すさらなる部分断面図である。
【
図6】第1の実施形態による角度測定装置のスケール要素を示す詳細図である。
【
図7】第2の実施形態による角度測定装置のスケール要素を示す詳細図である。
【
図8】第3の実施形態による角度測定装置のスケール要素を示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1および
図2は、それぞれ、例えばフライス盤などの工作機械の回転テーブル軸に取り付けることができる角度測定装置の分解図を示す。角度測定装置は、第1の構成要素群1と第2の構成要素群2とを備える。
図3に示すように、第1の構成要素群1は、第2の構成要素群2に対して回転軸線Aを中心として回転可能であり、この場合、構成要素群1は回転子として機能することができ、第2の構成要素群2は「固定子」と呼ぶこともできる。さらに、
図4に示す角度測定装置は、本形態では、ころ軸受として構成された軸受3を備えている。
【0036】
第1の構成要素群1は、ハブ1.2に回転不能に固定されたスケール要素1.1を有する(例えば、
図4または
図5参照)。ハブ1.2は、例えば回転テーブルのシャフトを収容する役割を果たし、この場合、シャフトはハブ1.2に不動および回転不能に結合されている。
【0037】
第2の構成要素群2は、第1の構成ユニット2.1であって、本形態では2つの部分で構成されており、したがって、本形態では「固定ジョー」と呼ぶことができる第1の部分2.1aと、例示的な実施形態では「軸受プレート」と呼ぶことができる第2の部分2.1bとを備える第1の構成ユニット2.1を有する。第1の部分2.1aには位置センサ2.11が固定されており、この位置センサは、半径方向のエアギャップをもってスケール要素1.1に向かい合って配置されている(
図4参照)。
【0038】
さらに第2の構成要素群2は、2つの部分で構成された第2の構成ユニット2.2を備える。したがって、第2の構成ユニット2.2はこの場合には「フランジ」と呼ぶこともできる第1の部分2.2aおよび第2の部分2.2bを含む。複数の位置ピックアップ2.20~2.26が、保持リングとして構成された第1の部分2.2aに直接に取り付けられている。
図5に示すように、位置ピックアップ2.20~2.26は、半径方向のエアギャップをもってスケール要素1.1に向かい合って配置されている。ここで説明する実施形態によれば、角度測定装置は、詳細には、第1の位置ピックアップ2.21、第2の位置ピックアップ2.22、第3の位置ピックアップ2.23、第4の位置ピックアップ2.24、第5の位置ピックアップ2.25、第6の位置ピックアップ2.26および第7の位置ピックアップ2.20を備える。位置ピックアップ2.20~2.26は、それぞれ周方向uに互いにずらして配置されている。
【0039】
第2の構成要素群2は補正継手2.3を備えている。この補正継手は、製造および組み立ての不正確さによって引き起こされるずれを補正する役割を果たす。補正継手2.3を用いて、第1の構成ユニット2.1は、第2の構成ユニット2.2に、ねじり剛性を有するが、しかしながら軸線方向および半径方向に撓むように結合されている。例示的な実施形態では、第1の構成ユニット2.1の第1の部分2.1bは、一点鎖線により
図1に例として示したねじ結合部によって補正継手2.3の3つのタブ2.31、2.33、2.35に結合されている。これに対して、第2の構成ユニット2.2の第2の部分2.2bは、補正継手2.3の3つの他のタブ2.32、2.34、2.36に結合されている。このようにして、位置センサ2.11は、複数の位置ピックアップ2.20~2.26に対して、ねじり剛性を有するが、しかしながら、軸線方向および半径方向に撓むように、もしくは柔軟に配置されている。
【0040】
補正継手2.3が上述のように第1の構成ユニット2.1および第2の構成ユニット2.2に結合された後、第1の部分2.2aは、ねじによって第2の構成ユニット2.2の第2の部分2.2bに結合することができる。これにより、位置センサ2.11および位置ピックアップ2.20~2.26は、スケール要素1.1の高さで軸線方向に配置されている。
【0041】
図1に基づいて、特に補正継手2.3の設置状況を明確にし、
図2には、第1の部分2.2aおよび第2の部分2.2bを含む第2の構成ユニット2.2に関する状況を示す。組み立ての過程で、第2の構成ユニット2.2は、第1の構成ユニット2.1の第2の部分2.1bの上方に軸方向に移動する。
【0042】
さらに第2の構成要素群2はケーシング2.4を備え、このケーシングは、第2の構成ユニット2.2の第2の部分2.2bに結合され、通常、測定のために機械部品に堅固に固定される。ケーシング2.4は、角度測定装置の内部を環境の影響から保護する役割を果たす。このことに関連して、ハブ1.2とケーシング2.4との間にシールが設けられていることが多いが、明確にするために図には示されていない。
【0043】
上述のように、角度測定装置が所定のように作動される場合、ハブ1.2は、回転可能なシャフトに堅固かつ回転不能に結合されており、ケーシングもしくは第2の構成ユニット2.2の第2の部分2.2bは定置の機械部品に結合されている。機械部品に対するシャフトの偏心、揺動または軸方線向変位は、角度測定装置、特に軸受3に反力を生じさせる。反力の大きさを制限するために補正継手2.3が設けられており、この補正継手は、半径方向および軸線方向に撓むように、もしくは弾性的に変形可能である。しかしながら、補正継手2.3はねじり剛性を有し、したがって、角度位置の測定精度は損なわれない。位置センサ2.11は、第1の構成ユニット2.1の第2の部分2.1bに堅固に結合されている。補正継手2.3の変形は、スケール要素1.1に対する位置センサ2.11の位置に影響を及ぼさない。これに対して、位置ピックアップ2.20~2.26は、補正継手2.3の弾性の範囲内でスケール要素1.1に対して(軸線方向および半径方向に)変位させることができる。
【0044】
例示的な実施形態では、位置センサ2.11および位置ピックアップ2.20~2.26は、ほぼ同一に構成されており、全て円形の線に沿って配置されている。
図4は、位置センサ2.11を(
図3のD‐D線を通る)断面図で示し、
図5は、位置ピックアップ2.20~2.26の位置ピックアップ2.21を(
図3のF‐F線を通る)断面図で示す。関連する位置センサ2.11および位置ピックアップ2.21はそれぞれLED2.111、2.211、コンデンサ2.112、2.212、およびセンサ素子2.113、2.213を備える。センサ素子2.113、2.213は、この場合には回路基板にいわゆる「光ASIC」として構成されている。光源としての役割を果たすLED2.111,2.211はコンデンサ2.112、2.212によってスケール要素1.1に光を送信する。LED2.111、2.211、コンデンサ2.112、2.212、およびセンサ素子2.113、2.213は、角度測定装置2の第2の構成要素グループ、すなわちステータに割り当てられている。例示的な実施形態では、それぞれの位置センサ2.11および位置ピックアップ2.20~2.26はケーシングを有し、ケーシング内には対応するセンサ素子2.113、2.213が配置されている。代替的には、ケーシングを省略することもできるし、または複数のセンサ素子を1つの同じケーシング内に配置することもできる。例えば、幾つかまたは全ての位置センサ2.11および位置ピックアップ2.20~2.26を1つの同じ回路基板に取り付けることもできる。
【0045】
これとは対照的に、スケール要素1.1は、既に述べたように、回転可能なハブ1.2に固定されている。
図6に示すように、スケール要素1.1は、第1の区分1.11と第2の区分1.12とを含む。例示的な実施形態では、スケール要素1.1は、円筒状もしくはリング形状の本体として構成されており、本体の周面には第2の区分1.12および第1の区分1.11の両方が配置されており、この場合、第2の区分1.12は第1の区分1.11に対して軸線方向zに関してずらして配置されている。
【0046】
図6は、スケール要素1.1の周面の一部を示す。第2の区分1.12は、第2の方向に沿って互いに平行に互いに隣接して配列された規則的なパターンもしくは線を備え、第2の方向は軸線方向の方向成分を有する。例示的な実施形態では、第2の方向は軸線方向zと同一である。
【0047】
第1の区分1.11は、第2の方向に沿って互いに平行に、互いに隣接して配列された規則的なパターンもしくは線を備え、第2の方向は軸線方向の方向成分を有する。例示的な実施形態では、第2の方向は、回転軸線Aに対して平行に、もしくは方向zに対して平行に延在している。さらに第1の区分1.11は基準マーク1.111を備える。
【0048】
換言すれば、第1の区分1.11は規則的なパターンを備え、これらのパターンは、この場合には線として構成されており、第2の方向に配向され、互いに平行に配置されている。例示的な実施形態では、第2の方向は、回転軸線Aに対して平行に、もしくは方向zに対して平行に延在している。第2の区分1.12は同様に規則的なパターンを備え、これらのパターンは、この場合には周方向に構成されており、これらのパターンの周方向の長手方向側面が第1の方向に配向されており、互いに平行に配置されている。第1の方向は周方向uに延在している。
【0049】
例示的な実施形態では、第1の区分1.11のパターンおよび第2の区分1.12のパターンは、光に対して反射性および非反射性のストリップとして構成されている。スケール要素1.1は、第1の区分1.11によってスケール要素1.1もしくはハブ1.2の角度位置にしたがって入射光を変調することができる。入射した光は、第2の分割1.12によってスケール要素1.1またはハブ1.2の軸方向位置にしたがって変調される。変調された光は、最終的に、
図4および
図5のセンサ素子2.113、2.213の光検出器に当たる。
【0050】
位置センサ2.11によって位置センサ2.11に対するスケール要素1.1の角度位置が決定可能となるように位置センサ2.11によって第1の区分1.11が走査可能である。この場合、角度位置は1回転内で絶対的に決定することができる。この目的のために、
図6に示すように、インクリメンタルな第1の区分1.11を使用することができ、この区分によって、基準マーク1.111に関連して、1回転を超えて絶対角度位置を生成することができる。代替的には、第1の区分1.11は、コード化の意味で、すなわち一義的なコード値の生成によって、絶対的に、例えば擬似ランダムコードまたはグレイコードとして構成することができる。位置センサ2.11の信号は、第2の構成要素群2の適切な位置に取り付けられた電子モジュールに伝送される。特に角度位置のデジタル値は電子モジュールによって生成される。同様に位置ピックアップ2.20~2.26は電子モジュールに電気的に接続されている。位置ピックアップ2.20~2.26は、
図3に示すように基本的に対で配置されている(第1の対2.21、2.24、第2の対2.22、2.25、第3の対2.23、2.26)。例示的な実施形態では、第1の位置ピックアップ2.21、第2の位置ピックアップ2.22、および第3の位置ピックアップ2.23によって第1の区分1.11が走査される。
【0051】
第4の位置ピックアップ2.24、第5の位置ピックアップ2.25、および第6の位置ピックアップ2.26によって第2の区分1.12が走査され、これらの位置ピックアップ2.24、2.25、2.26によってスケール要素1.1の軸方向位置を決定することもできる。前述のいずれか1つの対に属さない位置ピックアップ2.20は、補正値を決定する方法(ここには詳述しない)を実施するために第1の区分1.11を走査する役割も果たす。
【0052】
電子モジュールでは、軸線方向位置にもハブ1.2の絶対角度位置が割り当てられる。
【0053】
電子モジュール内で第1の位置ピックアップ2.21、第2の位置ピックアップ2.22、および第3の位置ピックアップ2.23の位置信号を適切に関連付けることによって、回転軸線Aに対して垂直に向けられた平面Pにおけるスケール要素1.1の位置、すなわち、回転軸軸Aの実際の位置のx、y座標を決定することができる。この位置は、「側方位置」と呼ぶこともでき、所与の回転テーブルにおいて機械加工時に加えられる荷重に依存している。さらに、実際の側方位置にはハブ1.2の絶対角度位置も割り当てられる。
【0054】
角度測定装置を用いて、第4の位置ピックアップ2.24、第5の位置ピックアップ2.26、および第6の位置ピックアップ2.26の位置信号を適切に関連付けることによって、平面Pに位置する傾斜軸線Bを中心としたスケール要素1.1の傾斜の程度ならびに揺動の程度および方向を決定することもできる。平面Pは、回転軸線Aに対して垂直に配向されている。
【0055】
角度測定装置によって、特に回転テーブルの場合、ハブ1.2の絶対的な角度位置を決定し、絶対的な角度位置の関数としてハブ1.2の側方位置および軸線方向位置を測定することが可能である。上述の回転テーブルがいずれにしても極めて堅固に構成されていることにより、この場合、μm範囲以下で位置測定が行われる。したがって、特に位置センサ2.11および位置センサ2.20~2.26の高分解能が必要である。同様に、傾斜軸線Bを中心としたケーシング2.2に対する回転軸線Aの傾斜を測定することもできる。
【0056】
さらに処理された位置信号は、最終的にケーブルを介して別の装置、例えば機械の制御装置に出力される。
【0057】
したがって、位置センサ2.11および位置ピックアップ2.20~2.26は、例示的な実施形態では、角度位置または軸線方向位置を検出する位置センサである。
【0058】
第2の実施形態によれば、スケール要素1.1′の周面図も示されている
図7にしたがって、スケール要素1.1′は、第1の方向に沿って互いに平行に、互いに隣接して配列された規則的なパターンもしくは線(図中の黒および白の長方形)を有する第1の区分1.11′を備え、第1方向は周方向uの方向成分を有する。例示的な実施形態では、第1の方向は円周方向uと同一である。さらに第1の区分1.11′は基準マーク1.111′を備える。
【0059】
第2の区分1.12′は、第2の方向に沿って互いに平行に、互いに隣接して配列された規則的なパターンもしくは線(図では白黒の矩形)を備え、第2の方向は軸線方向の方向成分を有する。例示的な実施形態では、第2の方向は軸線方向zと同一である。
【0060】
第2の例示的な実施形態におけるパターンは、磁気的なN極およびS極として構成されている。
【0061】
したがって、第2の例示的な実施形態では、位置センサおよび位置ピックアップは、磁気式のピックアップとして構成されている。例示的な実施形態では、位置センサおよび位置ピックアップは磁気抵抗式の検出器を有する。特に、これらはガラス基板の磁気抵抗パターンとして構成することができる。
【0062】
図8に基づいて第3の実施形態を説明する。
図8は、軸線方向に比較的小さい寸法を有するスケール要素1.1″の周面図を示す。このスケール要素1.1″は第1の区分1.11″を備え、この区分は、第1の方向に沿って互いに平行に、互いに隣接して配列された規則的なパターンもしくは線を備え、第1の方向は円周方向uに方向成分を有する。第3の例示的な実施形態では、第1の方向は円周方向uと同一である。さらに第1の区分1.11″は、同様にパターンもしくは線からなる基準マーク1.111″を含む。第1の区分1.11″および基準マーク1.111″のパターンは、第1の例示的な実施形態と同様に、光に対して反射性および非反射性のストリップとして構成されている。
【0063】
これに対して、第2の区分1.12″は、第2の方向に沿って互いに平行に、互いに隣接して配列された規則的なパターンもしくは線を備え、第2の方向は軸線方向の方向成分を有する。例示的な実施形態では、第2の方向は軸線方向zと同一である。第2の区分1.12″の周方向パターン(第2の例示的な実施形態の磁気的な第2の区分1.12′と比較可能)は例示的な実施形態では磁気的なN極およびS極として構成されている。第1の区分1.11″および第2の区分1.12″は少なくとも部分的に重ねて配置されており、これにより、第1の区分1.11″および第2の区分1.12″のための軸線方向の所要スペースを低減することができる。この構成は、両方の区分1.11″、1.12″がほぼ同じ軸線方向高さで、もしくは同一の周方向範囲で走査されるので、傾斜軸線Bを中心とした傾斜が測定にほとんど影響を及ぼさないという利点を有する。
【0064】
次に、位置センサ2.11は、
図4によれば、光学原理にしたがって第1の区分1.11″を走査することができ、位置ピックアップは磁気原理したがって作動する。したがって、第3の例示的な実施形態では、角度位置が光学的に検出され、平面Pにおけるスケール要素1.1″の傾斜もしくはスケール要素1.1″の変位が磁気原理によって検出される。
【符号の説明】
【0065】
1 第1の構成要素群
1.1、1.1′、1.1″ スケール要素
1.11、1.11′、1.11″ 第1の区分
1.111、1.111′、1.111″ 基準マーク
1.12、1.12′ 第2の区分
1.2 ハブ
2 第2の構成要素群
2.1 第1の構成ユニット
2.1a 第1部分
2.1b 第2部分
2.2 第2の構成ユニット
2.2a 第1の部分
2.2b 第2の部分
2.11 位置センサ
2.111、2.211 LED
2.112、2.212 コンデンサ
2.113、2.213 センサ素子
2.20、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26 位置ピックアップ
2.3 補正継手
2.31、2.32、2.33、2.34、2.35、2.36 タブ
2.4 ケーシング
3 軸受
A 回転軸線
z 軸線方向