(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】おむつおよびその濡れ検知システム
(51)【国際特許分類】
A61F 13/42 20060101AFI20240709BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20240709BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61F13/42 F
A61F13/496
A61F5/44 S
(21)【出願番号】P 2020175135
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】潘 春暉
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017546(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0354546(US,A1)
【文献】特表2009-500640(JP,A)
【文献】特表2018-533430(JP,A)
【文献】特開昭63-105760(JP,A)
【文献】特開2019-166040(JP,A)
【文献】特開昭59-139253(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049758(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61F5/44
G08B21/20
G01N27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部、股下部および背側部を有する本体部と、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備えたおむつであって、
少なくとも一部が前記吸収体と接するようにセンサ素子が配置され、
該センサ素子は、信号を送受信するアンテナと、該アンテナで受信した信号を前記おむつの濡れの状態に応じて遅延させ前記アンテナから返信する信号を生成する遅延素子とを備え、
前記アンテナは、装用状態でのみ
ループアンテナとして機能することを特徴とするおむつ。
【請求項2】
請求項1記載のおむつにおいて、
前記本体部の前記背側部の両側に前記腹側部の表面とそれぞれ接続する一対の接続部を備え、
前記アンテナは、前記腹側部に配置された第1のアンテナ部、前記背側部に配置された第2のアンテナ部および前記接続部に配置された第3のアンテナ部とからなり、
装用状態で、前記第1のアンテナ部、前記第2のアンテナ部および前記第3のアンテナ部によりループアンテナが形成可能であることを特徴とするおむつ。
【請求項3】
請求項1記載のおむつにおいて、
前記本体部は、前記腹側部と前記背側部の一部が連続するパンツ型であり、
前記アンテナは、前記腹側部と前記背側部に連続して配置された第4のアンテナ部からなり、
装用状態で、前記第4のアンテナ部によりループアンテナが形成可能であることを特徴とするおむつ。
【請求項4】
おむつに備えられたセンサ素子の検出結果から前記おむつの濡れを検知するシステムであって、
質問信号を検知装置側アンテナから送信する送信機と、
前記質問信号をおむつ側アンテナで受信し、前記質問信号から応答信号を生成して前記おむつ側アンテナから出力する前記センサ素子と、
前記応答信号を検知装置側アンテナで受信する受信機と、
前記質問信号と前記応答信号から前記おむつの濡れを判定する判定装置と、を備え、
前記センサ素子は、装用状態でのみ
ループアンテナとして機能する前記おむつ側アンテナと、該おむつ側アンテナで受信した前記質問信号を前記おむつの濡れの状態に応じて遅延させ前記おむつ側アンテナから返信する前記応答信号を生成する遅延素子とからなることを特徴とする濡れ検知システム。
【請求項5】
請求項4記載の濡れ検知システムにおいて、
予め設定した遅延時間より短い遅延時間の前記応答信号を受信したとき、前記判定装置は前記おむつが濡れていると判定することを特徴とする濡れ検知システム。
【請求項6】
請求項4記載の濡れ検知システムにおいて、
予め設定した遅延時間より長い遅延時間の前記応答信号を受信した後、前記応答信号を受信しなくなったとき、前記判定装置は前記おむつが濡れていると判定することを特徴とする濡れ検知システム。
【請求項7】
請求項4乃至6いずれか記載の濡れ検知システムにおいて、
検知対象の前記おむつは、腹側部、股下部および背側部を有する本体部と、該本体部の前記背側部の両側に前記腹側部の表面とそれぞれ接続する一対の接続部と、前記腹側部に配置された第1のアンテナ部、前記背側部に配置された第2のアンテナ部および前記接続部に配置された第3のアンテナ部とを備え、
装用された前記おむつの前記第1のアンテナ部、前記第2のアンテナ部および前記第3のアンテナ部により前記おむつ側アンテナとなるループアンテナが形成されていることを特徴とする濡れ検知システム。
【請求項8】
請求項4乃至6いずれか記載の濡れ検知システムにおいて、
検知対象の前記おむつは、腹側部と背側部の一部が連続するパンツ型であり、
前記腹側部と前記背側部に連続して配置された第4のアンテナ部を備え、
装用された前記おむつの前記第4のアンテナ部により前記おむつ側アンテナとなるループアンテナが形成されていることを特徴とする濡れ検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつとその濡れ検知システムに関し、特にバッテリーレスで濡れを検知することができるおむつおよびその濡れ検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者等おむつ装用者の中には、おむつの交換が必要になったことを介護者等に知らせることができない場合がある。おむつの交換が遅れると皮膚のかぶれ等が発生してしまうため、介護者等は適切におむつを交換する必要がある。
【0003】
介護者等の負担軽減のため、おむつの濡れ状態を検知することが可能なおむつおよび検知システムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来提案されているおむつの濡れ状態を検知する方法によると、未使用のおむつと、使用中で濡れのないおむつとを区別することができないため、読み取り機を用いて使用中のおむつが濡れているか確認する必要があった。そのため介護者等は、おむつ装用者の近くで読み取り機をおむつに向けて確認する必要があり、必ずしも介護者等の負担の軽減とはなっていなかった。本発明は、おむつ装用者から離れた場所からおむつの濡れ状態を検知することができるおむつおよびその濡れ検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、腹側部、股下部および背側部を有する本体部と、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備えたおむつであって、少なくとも一部が前記吸収体と接するようにセンサ素子が配置され、該センサ素子は、信号を送受信するアンテナと、該アンテナで受信した信号を前記おむつの濡れの状態に応じて遅延させ前記アンテナから返信する信号を生成する遅延素子とを備え、前記アンテナは、装用状態でのみループアンテナとして機能することを特徴とする。
【0007】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載のおむつにおいて、前記本体部の前記背側部の両側に前記腹側部の表面とそれぞれ接続する一対の接続部を備え、前記アンテナは、前記腹側部に配置された第1のアンテナ部、前記背側部に配置された第2のアンテナ部および前記接続部に配置された第3のアンテナ部とからなり、装用状態で、前記第1のアンテナ部、前記第2のアンテナ部および前記第3のアンテナ部によりループアンテナが形成可能であることを特徴とする。
【0008】
本願請求項3に係る発明は、請求項1記載のおむつにおいて、前記本体部は、前記腹側部と前記背側部の一部が連続するパンツ型であり、前記アンテナは、前記腹側部と前記背側部に連続して配置された第4のアンテナ部からなり、装用状態で、前記第4のアンテナ部によりループアンテナが形成可能であることを特徴とする。
【0009】
本願請求項4に係る発明は、おむつに備えられたセンサ素子の検出結果から前記おむつの濡れを検知するシステムであって、質問信号を検知装置側アンテナから送信する送信機と、前記質問信号をおむつ側アンテナで受信し、前記質問信号から応答信号を生成して前記おむつ側アンテナから出力する前記センサ素子と、前記応答信号を検知装置側アンテナで受信する受信機と、前記質問信号と前記応答信号から前記おむつの濡れを判定する判定装置と、を備え、前記センサ素子は、装用状態でのみループアンテナとして機能する前記おむつ側アンテナと、該おむつ側アンテナで受信した前記質問信号を前記おむつの濡れの状態に応じて遅延させ前記おむつ側アンテナから返信する前記応答信号を生成する遅延素子とからなることを特徴とする。
【0010】
本願請求項5に係る発明は、請求項4記載の濡れ検知システムにおいて、予め設定した遅延時間より短い遅延時間の前記応答信号を受信したとき、前記判定装置は前記おむつが濡れていると判定することを特徴とする。
【0011】
本願請求項6に係る発明は、請求項4記載の濡れ検知システムにおいて、予め設定した遅延時間より長い遅延時間の前記応答信号を受信した後、前記応答信号を受信しなくなったとき、前記判定装置は前記おむつが濡れていると判定することを特徴とする。
【0012】
本願請求項7に係る発明は、請求項4乃至6いずれか記載の濡れ検知システムにおいて、検知対象の前記おむつは、腹側部、股下部および背側部を有する本体部と、該本体部の前記背側部の両側に前記腹側部の表面とそれぞれ接続する一対の接続部と、前記腹側部に配置された第1のアンテナ部、前記背側部に配置された第2のアンテナ部および前記接続部に配置された第3のアンテナ部とを備え、装用された前記おむつの前記第1のアンテナ部、前記第2のアンテナ部および前記第3のアンテナ部により前記おむつ側アンテナとなるループアンテナが形成されていることを特徴とする。
【0013】
本願請求項8に係る発明は、請求項4乃至6いずれか記載の濡れ検知システムにおいて、検知対象の前記おむつは、腹側部と背側部の一部が連続するパンツ型であり、前記腹側部と前記背側部に連続して配置された第4のアンテナ部を備え、装用された前記おむつの前記第4のアンテナ部により前記おむつ側アンテナとなるループアンテナが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のおむつは、折りたたまれた未使用状態では機能せず、装用状態でのみ機能するアンテナを備える構成としている。本発明のおむつを用いた濡れ検知システムは、おむつが装用されおむつ側アンテナとして機能したときにのみ所定の応答信号が得られるため、読み取り機を必要とせず、おむつ装用者から離れた場所でおむつの濡れ状態を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施例のテープ型のおむつの説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施例のセンサ素子の説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施例の濡れ検知システムの説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施例の濡れ検知システムの検知方法を説明する図である。
【
図5】本発明の第2の実施例のパンツ型のおむつの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のおむつは、一般的なおむつにセンサ素子を備えた構成となっている。このセンサ素子は、おむつを装用した状態でのみ機能するアンテナと、このアンテナで受信した質問信号をおむつの濡れの状態に応じて遅延させて返信する応答信号を生成する遅延素子とを備えている。
【0017】
装用した状態でのみ機能するアンテナとは、おむつが折りたたまれた状態ではアンテナとして機能しないものである。例えば、折りたたまれた状態ではループアンテナが形成されず、あるいはループアンテナの間隔が狭く放射が少ないためアンテナとして機能しないが、装用状態ではループアンテナが形成され、またループアンテナを形成する導電体の間隔が広くなりアンテナとして機能するように構成されたものである。
【0018】
遅延素子は、おむつが濡れていない状態ではアンテナが受信した質問信号を所定の時間だけ遅延させた応答信号を生成する素子であり、濡れの状態に応じて遅延時間が短くなるように構成されたものである。濡れた状態となった場合の遅延時間は、質問信号と応答信号とを区別できないほど短くなるように設定することもできる。
【0019】
本発明のおむつを用いた濡れ検知システムは、送信機から質問信号を送信し、この質問信号を受信したセンサ素子がおむつの濡れの状態に応じた応答信号を返信し、受信機で応答信号を受信することで、質問信号と応答信号から濡れを判定する構成としている。
【0020】
濡れの状態の判定は、例えばセンサ素子から送信される応答信号が予め設定した遅延時間より短い遅延時間の応答信号である場合、おむつが濡れていると判定する。またセンサ素子から送信される応答信号が予め設定した遅延時間より長い遅延時間の応答信号を受信した後、応答信号を受信しなくなった場合にも、おむつが濡れていると判定する。以下、本発明のおむつおよびその濡れ検知システムの実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の第1の実施例について説明する。本発明のおむつは、一般的な使い捨ておむつとして形成することができる。本実施例のおむつは、
図1に示すようにテープ型のおむつとなる。
図1(a)に模式的に示すようにおむつ本体部10は、腹側部11と、股下部12と、背側部13と、背側部13の両端の接続部14とからなる。このようなおむつを被介護者等が装用する場合、接続部14を腹側部11の表面に接続する。
図1(b)は、
図1(a)に示すおむつ本体部10の股下部12のA-A面の断面図で、尿等を透過させる液透過性トップシート15と尿等を透過させない液不透過性バックシート16との間に尿等を吸収する吸収体17が配置された構造となっている。
図1(b)に示す例では、液透過性トップシート15の下であって吸収体17上にセンサ素子20の一部となる遅延素子22が配置されている。この遅延素子22は、不織布等上に導電性インクにより所望の形状に印刷して形成したり、金属箔をパターニングして形成することができる。図示しないが、遅延素子22上に逆流防止のための中間シートを配置してもよい。また遅延素子22は、吸収体17の下であって液不透過性バックシート16上に配置することも可能で、少なくとも遅延素子22が尿等に触れるように配置すれば良い。
【0022】
おむつ本体部10の腹側部11の裏面側(装用状態で表面となる面)にアンテナの一部を構成する第1のアンテナ部21aが、背側部13の表面側あるいは裏面側にアンテナの一部を構成する第2のアンテナ部21bが、接続部14の表面側(装用状態で腹側部11の表面と接着する面)にそれぞれ第3のアンテナ部21cが形成されている。この第1乃至第3のアンテナ部21a~21cは、おむつ本体部10に導電性インクにより印刷して形成したり、金属箔をパターニングして形成することができる。あるいはテープ状に形成した第1乃至第3のアンテナ部21a~21cをおむつ本体部10に貼り付けて形成することもできる。
【0023】
図1(a)に示すように、遅延素子22と第2のアンテナ部21bは接続されている。また後述するように装用状態では、第1のアンテナ部21aの両端に第3のアンテナ部21cがそれぞれ接続する構成とすることで、第1乃至第3のアンテナ部21a~21cが接続してループアンテナが形成され、このループアンテナが遅延素子22と接続する構成となる。
【0024】
第1乃至第3のアンテナ部21a~21cは、装用状態でのみアンテナとして機能するもので、装用前の折りたたまれた状態や
図1(a)に示すように広げられた状態ではアンテナとして機能しない。つまり、未装用状態のおむつは、後述する濡れ検知システムにおいて応答信号を送信することはない。
【0025】
装用状態でアンテナとして機能させる際、アンテナの利得を上げるため第1乃至第3のアンテナ部21a~21cをそれぞれ多重に形成し、それぞれを接続する構成することで複数のループアンテナを備える構成とすることもできる。
【0026】
図1(a)に示す例では、第2のアンテナ部21bに接続された遅延素子22を蛇行した導電線により構成している。このように構成された遅延素子22は、
図2に示すように第1乃至第3のアンテナ部21a~21cからなるアンテナ21に接続する端部からインダクターが直列に接続し、アンテナ21と接続する端部と反対側の端部が開放端となる。また隣接する導電線によりキャパシタが接続され、共振器が構成されている。
【0027】
次に濡れ検知システムについて説明する。本実施例のおむつは被介護者等に装用され、第1乃至第3のアンテナ部21a~21cが連続したアンテナを形成した状態となる。
図3は本実施例の濡れ検知システム40の説明図である。
【0028】
図3に示すように、おむつ側にはセンサ素子20が形成されている。このセンサ素子20は、上述のように装用状態でアンテナとして機能するおむつ側アンテナ21A(アンテナ21)とそれに接続する遅延素子22とで構成されている。本実施例のおむつ側アンテナ21Aはループアンテナを構成するため、装用された状態でのみアンテナとして機能し、折りたたまれた状態や第1乃至第3のアンテナ部21a~21cが接続されていない状態ではアンテナとして機能しない。従って、被介護者等の周囲に未使用状態のおむつが置かれていたとしても、本発明の濡れ検知システム40に影響を与えることはない。
【0029】
一方検知装置30は、検知装置側アンテナ31、この検知装置側アンテナ31に接続する送信機32および受信機33、送信機32から送信する質問信号と受信機33で受信した応答信号がそれぞれ入力する判定装置34を備えている。
【0030】
おむつが濡れているかどうか検知を行う際には、送信機32からバースト信号を出力するように制御する。例えば、315MHzのバースト信号を質問信号として検知装置側アンテナ31から出力する。この質問信号をおむつ側アンテナ21Aが受信する。おむつ側アンテナ21Aには遅延素子22の一端が接続している。遅延素子22の他端は開放されているので、おむつが濡れていない状態、あるいは濡れが遅延素子22の特性に影響を与えない程度である場合には、おむつ側アンテナ21Aが受信した質問信号は、遅延素子22を伝搬し他端で全反射し、再び遅延素子22を伝搬しておむつ側アンテナ21Aから応答信号として出力される。この応答信号は、受信機33で受信される。判定装置34では、質問信号と応答信号とを比較し、濡れの有無を判断する。
【0031】
上述したように、折りたたまれた状態や第1乃至第3のアンテナ部21a~21cが接続されていない状態ではアンテナとして機能しないため、検知装置30から送信される質問信号に対して、折りたたまれた状態のおむつ等から応答信号が出力されることはない。
【0032】
図4は、検知装置側アンテナ31から送信される質問信号と、検知装置側アンテナ31で受信される応答信号と、判定装置34内で検知される質問信号と応答信号の信号強度を示している。検知装置側アンテナ31から送信される質問信号は、ほとんど遅延なくおむつ側アンテナ21Aが受信するため、おむつ側アンテナが受信する質問信号は、検知装置側アンテナの質問信号とほぼ同様となる。またおむつ側アンテナ21Aから送信される応答信号は、ほとんど遅延なく検知装置側アンテナ31が受信するため、おむつ側アンテナ21Aから送信される質問信号は、検知装置側アンテナの応答信号とほぼ同様となる。
【0033】
図3および
図4を用いて濡れの検知方法を説明する。
図4(a)は、おむつが濡れていない状態、あるいは濡れた状態ではあるが遅延素子21に影響を与えない程度の場合の信号を示している。
図4(a)に示すように、検知装置側アンテナ31から送信された質問信号に対して十分に長い遅延時間を有する応答信号が検知装置側アンテナ31で受信されている。判定装置34では、送信機32から入力する信号(質問信号)と受信機33から入力する信号(応答信号)の信号強度から遅延時間を検知する。この検知された応答信号の遅延時間が予め設定した遅延時間より長い場合には濡れがない(おむつを交換する必要がない)と判定される。
【0034】
図4(b)は、おむつが濡れた状態を示している。おむつのセンサ素子20の遅延素子22の一部に濡れが達し、隣接する導電線間が短絡し、あるいは導電線が消失すると遅延素子22の導電線が短くなる。その結果、濡れのない状態(
図4aの状態)より遅延時間が短い応答信号が得られることになる。判定装置34では、送信機32から入力する信号(質問信号)と受信機33から入力する信号(応答信号)の信号強度を検出する。この検知された応答信号の遅延時間が予め設定した遅延時間より短い場合には、おむつが濡れた状態(おむつを交換する必要がある)と判定される。濡れた状態となったと判定するための遅延時間は、遅延素子22の配置や大きさにより適宜設定すればよい。
【0035】
図4(c)も、おむつが濡れた状態を示している。
図4(b)同様、濡れのない状態より遅延時間が短い応答信号が得られており、
図4(b)に示す状態よりさらに短い遅延時間の応答信号が得られた状態である。このような状態の判定装置34では、送信機32から入力する信号(質問信号)と受信器33から入力する信号(応答信号)の信号強度を検出すると、質問信号と応答信号が重なり、応答信号が消失したようになる。おむつが濡れていない状態では
図4(a)に示すような信号の送受信が行われるのが通常であるから、
図4(a)に示す信号の送受信が行われる状態から
図4(c)に示す信号の送受信が行われる状態に変化した場合には、おむつが濡れた状態(おむつを交換する必要がある)と判定することができる。このように時間の経過により遅延時間が変化することを検知する場合は、検知装置30に記憶装置を備える構成とすればよい。
【0036】
一般的にこのような質問信号と応答信号の送受信は、バッテリーレスの通信のため比較的短い距離の通信となるので、中継器を介した通信としてもよい。
【0037】
判定装置34によりおむつが濡れた状態と判定された場合、図示しない通信手段により介護者等におむつを替える必要があることを伝えることができる。この通信は、有線通信、無線通信のいずれでもよい。おむつを替える必要があると通知された介護者等は、被介護者等から離れた場所でおむつの交換が必要となったことを知ることができる。例えば介護者等の携帯情報端末へおむつの交換を求めるメッセージを送信したり、介護者等が認識できる表示装置に表示すればよい。
【実施例2】
【0038】
次に第2の実施例について説明する。上述の第1の実施例では、テープ型のおむつを装用状態でおむつ側アンテナとして使用する場合について説明したが、本発明はテープ型のおむつに限定されるものではない。一般的に使用されるパンツ型のおむつを用いた場合でも本発明により濡れを検知することは可能である。
【0039】
パンツ型のおむつ本体部10は、
図5に示すように腹側部11と背側部13の一部が連続した形状であり、装用状態で装用者のウエスト部に沿って第4のアンテナ部21dが形成されている。この第4のアンテナ部21dが装用状態でおむつ側アンテナ21Aとなる。第4のアンテナ部21dには、上記第1の実施例同様、センサ素子20の一部となる遅延素子22が形成されている。遅延素子22の構成は同一となる。上述の第1の実施例と比較しておむつ本体部10の形状が相違し、ループアンテナを第1乃至第3のアンテナ部21a~21cで形成する代わりに第4のアンテナ部21d
で形成した点が相違しているのみである。
【0040】
従って、第4のアンテナ部21dが装用状態でのみアンテナで機能し、装用前の折りたたまれた状態ではアンテナとして機能しない点は、上述の第1の実施例と同様である。つまり、未装用状態のパンツ型おむつも、濡れ検知システムにおいて応答信号を送信することはない。
【0041】
装用状態でアンテナとして機能させる際、アンテナの利得を上げるため第4のアンテナ部21dを多重に形成し、それぞれを接続する構成とすることで複数のループアンテナを備える構成とすることもできる。
【0042】
パンツ型のおむつに形成される第4のアンテナ部21dは、それ自体連続して形成されているため、第1の実施例で説明したテープ型のおむつに形成された第1乃至第3のアンテナ部21a~21cを連続するように接続する必要がなく、簡便にアンテナを形成することができる。
【0043】
次に濡れ検知システムについて説明する。本実施例のおむつは被介護者等に装用され、第4のアンテナ部21dがアンテナとして機能する。
【0044】
本実施例においても
図3に示すように、おむつ側にセンサ素子20が形成されている。このセンサ素子20は、装用状態でアンテナとして機能するおむつ側アンテナ21Aとそれに接続する遅延素子22とで構成されている。第4のアンテナ部21dからなるおむつ側アンテナ21はループアンテナを構成するため、装用された状態でのみアンテナとして機能し、折りたたまれた状態ではアンテナとして機能しない。従って、被介護者等の周囲に未使用状態のおむつが置かれていたとしても、本発明の濡れ検知システム40に影響を与えることはない。
【0045】
一方検知装置30は、検知装置側アンテナ31、この検知装置側アンテナに連続する送信機32および受信機33、送信機32から送信する質問信号と受信機33で受信した応答信号がそれぞれ入力する判定装置34を備えている。
【0046】
おむつが濡れているかどうか検知を行う際には、送信機32からバースト信号を出力するように制御する。例えば、315MHzのバースト信号を質問信号として検知装置側アンテナ31から出力する。この質問信号をおむつ側アンテナ21Aが受信する。おむつ側アンテナ21Aには遅延素子22の一端が接続している。遅延素子22の他端は開放されているので、おむつが濡れていない状態、あるいは濡れが遅延素子22の特性に影響を与えない程度である場合には、おむつ側アンテナ21Aが受信した質問信号は、遅延素子22を伝搬し他端で全反射し、再び遅延素子22を伝搬しておむつ側アンテナ21Aから応答信号として出力される。この応答信号は、受信機33で受信される。判定装置34では、質問信号と応答信号とを比較し、濡れの有無を判断する。
【0047】
上述したように、折りたたまれた状態ではアンテナとして機能しないため、検知装置30から送信される質問信号に対して、折りたたまれた状態のおむつから応答信号が出力されることはない。
【0048】
図4は、検知装置側アンテナ31から送信される質問信号と、検知装置側アンテナ31で受信される応答信号と、判定装置34内で検知される質問信号と応答信号の信号強度を示している。検知装置側アンテナ31から送信される質問信号は、ほとんど遅延なくおむつ側アンテナ21Aが受信するため、おむつ側アンテナが受信する質問信号は、検知装置側アンテナの質問信号とほぼ同様となる。またおむつ側アンテナ21Aから送信される応答信号は、ほとんど遅延なく検知装置側アンテナ31が受信するため、おむつ側アンテナ21Aから送信される質問信号は、検知装置側アンテナの応答信号とほぼ同様となる。
【0049】
図3および
図4を用いて濡れの検知方法を説明する。
図4(a)は、おむつが濡れていない状態、あるいは濡れた状態ではあるが遅延素子22に影響を与えない程度の場合の信号を示している。
図4(a)に示すように、検知装置側アンテナ31から送信された質問信号に対して十分に長い遅延時間を有する応答信号が検知装置側アンテナ31で受信されている。判定装置34では、送信機32から入力する信号(質問信号)と受信機33から入力する信号(応答信号)の信号強度から遅延時間を検知する。この検知された応答信号の遅延時間が予め設定した遅延時間より長い場合には濡れがない(おむつを交換する必要がない)と判定される。
【0050】
図4(b)は、おむつが濡れた状態を示している。おむつのセンサ素子20の遅延素子22の一部に濡れが達し、隣接する導電線間が短絡し、あるいは導電線が消失すると遅延素子22の導電線が短くなる。その結果、濡れのない状態(
図4aの状態)より遅延時間が短い応答信号が得られることになる。判定装置34では、送信機32から入力する信号(質問信号)と受信機33から入力する信号(応答信号)の信号強度を検出する。この検知された応答信号の遅延時間が予め設定した遅延時間より短い場合には、おむつが濡れた状態(おむつを交換する必要がある)と判定される。濡れた状態となったと判定するための遅延時間は、遅延素子22の配置や大きさにより適宜設定すればよい。
【0051】
図4(c)も、おむつが濡れた状態を示している。
図4(b)同様、濡れのない状態より遅延時間が短い応答信号が得られており、
図4(b)に示す状態よりさらに短い遅延時間の応答信号が得られた状態である。このような状態の判定装置34では、送信機32から入力する信号(質問信号)と受信器33から入力する信号(応答信号)の信号強度を検出すると、質問信号と応答信号が重なり、応答信号が消失したようになる。おむつが濡れていない状態では
図4(a)に示すような信号の送受信が行われるのが通常であるから、
図4(a)に示す信号の送受信が行われる状態から
図4(c)に示す信号の送受信が行われる状態に変化した場合には、おむつが濡れた状態(おむつを交換する必要がある)と判定することができる。このように時間の経過により遅延時間が変化することを検知する場合は、検知装置30に記憶装置を備える構成とすればよい。
【0052】
一般的にこのような質問信号と応答信号の送受信は、バッテリーレスの通信のため比較的短い距離の通信となるので、中継器を介した通信としてもよい。
【0053】
判定装置34によりおむつが濡れた状態と判定された場合、図示しない通信手段により介護者等におむつを替える必要があることを伝えることができる。この通信は、有線通信、無線通信のいずれでもよい。おむつを替える必要があると通知された介護者等は、被介護者等から離れた場所でおむつの交換が必要となったことを知ることができる。例えば介護者等の携帯情報端末へおむつの交換を求めるメッセージを送信したり、介護者等が認識できる表示装置に表示すればよい。
【0054】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば上記実施例では検知装置側アンテナは、送受信アンテナとして説明したが、送信用アンテナと受信用アンテナと分離する構成とすることができる。
【符号の説明】
【0055】
10:おむつ本体部、11:腹側部、12:股下部、13:背側部、14:接続部、15:液透過性トップシート、16:液不透過性バックシート、17:吸収体、
20:センサ素子、21:アンテナ、21A:おむつ側アンテナ、21a:第1のアンテナ部、21b:第2のアンテナ部、21c:第3のアンテナ部、21d:第4のアンテナ部、
30:検知装置、31:検知装置側アンテナ、32:送信機、33:受信機、34:判定装置、
40:濡れ検知システム