(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】入力装置、コントローラおよびエラー検知方法
(51)【国際特許分類】
H01H 25/04 20060101AFI20240709BHJP
G06F 3/0338 20130101ALI20240709BHJP
G05G 25/00 20060101ALI20240709BHJP
G05G 9/047 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
H01H25/04 F
G06F3/0338 411
G05G25/00 C
G05G9/047
(21)【出願番号】P 2022569897
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2021044961
(87)【国際公開番号】W WO2022131078
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2020207047
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高垣 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】井口 和之
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-003651(JP,A)
【文献】特開2020-153664(JP,A)
【文献】特開平11-249807(JP,A)
【文献】特開2020-091538(JP,A)
【文献】米国特許第04459578(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 25/00 - 25/06
H01H 89/00
G01B 7/00 - 7/34
G05G 1/00 - 25/04
G06F 3/033- 3/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を発生する磁石と、
前記磁石が発生した磁場を検出するためのセンサと、
予め定められた第1平面において、前記磁石の位置を移動させるための磁石移動部と
を備え、
前記磁石は、第1磁石および第2磁石を含み、
前記センサは、前記第1平面に対する上面視において、前記磁石が移動する領域と異なる領域に設けられ、
前記磁石移動部は、前記第1平面において、予め定められた第1方向に前記第1磁石を移動させ、前記第1平面において、前記第1方向と異なる第2方向に前記第2磁石を移動させるように構成され、
前記第1方向および前記第2方向は、前記第1平面において交差し、
前記センサは、前記第1磁石および前記第2磁石
が移動した際の磁場の変化を検出可能な位置に設け
られた単一のセンサである
入力装置。
【請求項2】
磁場を発生する磁石と、
前記磁石が発生した磁場を検出するためのセンサと、
予め定められた第1平面において、前記磁石の位置を移動させるための磁石移動部と
を備え、
前記磁石は、第1磁石および第2磁石を含み、
前記磁石移動部は、前記第1平面において、予め定められた第1方向に前記第1磁石を移動させ、前記第1平面において、前記第1方向と異なる第2方向に前記第2磁石を移動させるように構成され、
前記第1方向および前記第2方向は、前記第1平面において交差し、
前記センサは、前記第1磁石の磁場を検出する第1センサおよび前記第2磁石の磁場を検出する第2センサを含み、
前記第1平面に対する上面視において、前記第1センサは前記第1磁石が移動する領域と異なる領域に設けられ、前記第2センサは前記第2磁石が移動する領域と異なる領域に設けられる
入力装置。
【請求項3】
磁場を発生する磁石と、
前記磁石が発生した磁場を検出するためのセンサと、
予め定められた第1平面において、前記磁石の位置を移動させるための磁石移動部と
を備え、
前記磁石移動部は、前記第1平面において、少なくとも2以上の方向に前記磁石を移動させるように構成され、
前記センサは、前記第1平面に対する上面視において、前記磁石が移動する領域と異なる領域に設けられた単一のセンサである
入力装置。
【請求項4】
前記センサは、上面視において、前記第1方向と前記第2方向との交点に設けられる
請求項
1または2に記載の入力装置。
【請求項5】
前記第1磁石の前記センサ側に配置された極性は、前記第2磁石の前記センサ側に配置された極性と同一である
請求項
4に記載の入力装置。
【請求項6】
前記磁石は、第1極および第2極を含み、
前記第1極および前記第2極は、前記第1平面内の予め定められた方向に配列される
請求項
1から5のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項7】
前記磁石移動部によって前記磁石を操作するための操作部を備え、
前記磁石移動部は、前記操作部による操作と連動して前記磁石を移動させる
請求項
1から6のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項8】
前記磁石移動部は、前記第1磁石が移動する第1方向と前記第2磁石が移動する第2方向との交点と、操作部の上面視における中心との間の距離Lの範囲内で前記磁石を移動させる
請求項
1、2または5いずれか一項に記載の入力装置。
【請求項9】
前記磁石が移動する方向における前記磁石の幅は、前記距離Lの10%以上、50%以下の長さである
請求項
8に記載の入力装置。
【請求項10】
前記磁石が移動する方向における前記磁石の幅は、1mm以上、5mm以下である
請求項
1から9のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項11】
前記センサは、上面視において、操作部の中心に対してずれた位置に設けられる
請求項
7から10のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項12】
前記センサは、3軸の磁場を検出可能な3軸磁気センサである
請求項
1から11のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項13】
前記センサは、前記第1平面と直交する高さ方向において、前記磁石と同一の高さに配置される
請求項
1から12のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項14】
前記センサは、前記第1平面と直交する高さ方向において、前記磁石と少なくとも一部が重複する
請求項
1から13のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項15】
前記磁石および前記センサは、前記第1平面と直交する高さ方向において、中心が一致する
請求項
1から14のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項16】
前記第1平面に対する側面視において、前記センサの上方に設けられた磁場発生部を更に備える
請求項
1から15のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項17】
前記磁場発生部の材料は、前記磁石の材料と同一である
請求項
16に記載の入力装置。
【請求項18】
前記磁場発生部が前記センサに印加する磁場は、前記磁石が前記センサに印加する磁場より大きい
請求項
16または17に記載の入力装置。
【請求項19】
前記磁場発生部と前記センサとの間の距離は、前記磁石と前記センサとが最近接した場合の距離より小さい
請求項
16から18のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項20】
前記第1方向および前記第2方向は、前記第1平面において直交する
請求項
1、2、4、5、8または9のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項21】
前記第1平面において、前記第1方向および前記第2方向がなす角度は、鋭角または鈍角である
請求項
1、2、4、5、8または9のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項22】
請求項
1から21のいずれか一項に記載の入力装置を備えた
コントローラ。
【請求項23】
操作部の操作に応じて
、予め定められた第1平面において移動する磁石と、前記磁石が発生した磁場を検出するためのセンサとを備える入力装置のエラー検知方法であって、
前記操作部を予め定められたパターンで操作する段階と、
前記予め定められたパターンに基づいて磁場データを取得する段階と、
前記取得した磁場データに基づいて、前記磁石の向きの異常、前記磁石の強度の異常、または前記入力装置の実装誤差が許容範囲であるか否かの少なくとも1つを判定する段階とを備え
、
前記磁石は、第1磁石および第2磁石を含み、
前記操作する段階において、前記第1磁石および前記第2磁石は、前記操作部の操作に応じて、前記第1平面において、それぞれ予め定められた第1方向および前記第1方向と異なる第2方向へ移動し、
前記センサは、前記第1平面に対する上面視において、前記磁石が移動する領域と異なる領域に設けられる
エラー検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置、コントローラおよびエラー検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作部の操作に応じた信号を入力するための入力装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2012-221342号公報
特許文献2 特開2013-065398号公報
特許文献3 特開2016-207634号公報
【解決しようとする課題】
【0003】
従来、小型で耐久性のある入力装置を提供することが困難であった。
【一般的開示】
【0004】
本発明の第1の態様においては、磁場を発生する磁石と、磁石が発生した磁場を検出するためのセンサと、予め定められた第1平面において、磁石の位置を移動させるための磁石移動部とを備え、磁石は、第1磁石および第2磁石を含み、センサは、第1平面に対する上面視において、磁石が移動する領域と異なる領域に設けられ、磁石移動部は、第1平面において、予め定められた第1方向に第1磁石を移動させ、第1平面において、第1方向と異なる第2方向に第2磁石を移動させるように構成され、第1方向および第2方向は、第1平面において直交し、センサは、第1磁石および第2磁石に共通に設けられる入力装置を提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、本発明の第1の態様に係る入力装置を備えたコントローラを提供する。
【0006】
本発明の第3の態様においては、操作部の操作に応じて移動する磁石と、磁石が発生した磁場を検出するためのセンサとを備える入力装置のエラー検知方法であって、操作部を予め定められたパターンで操作する段階と、予め定められたパターンに基づいて磁場データを取得する段階と、取得した磁場データに基づいて、磁石の向きの異常、磁石の強度の異常、または入力装置の実装誤差が許容範囲であるか否かの少なくとも1つを判定する段階とを備えるエラー検知方法を提供する。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2A】操作部15が傾倒した状態での入力装置100の側面図の一例を示す。
【
図2B】操作部15が傾倒した状態での入力装置100の動作の一例を示す。
【
図3A】筐体10の内部の構造を示す入力装置100の上面図である。
【
図4】3軸の磁場を検出可能なセンサ40の一例を示す。
【
図6A】入力装置100の変形例を示す断面図である。
【
図6B】入力装置100の変形例を示す断面図である。
【
図6C】入力装置100の変形例を示す上面図である。
【
図6D】入力装置100による外乱検知方法の一例を示す。
【
図6E】閾値設定方法のフローチャートの一例を示す。
【
図6F】磁場データを処理するための動作フローチャートの一例を示す。
【
図7A】センサ40の正常動作を確認するシステムの動作フローチャートである。
【
図7B】磁場データを取得する動作フローチャートの一例を示す。
【
図8】磁石を斥力配置にした場合の入力装置100の一例である。
【
図10】比較例に係る入力装置500の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1Aは、入力装置100の側面図の一例を示す。入力装置100は、筐体10と、操作部15と、磁石20と、磁石移動部30と、センサ40とを備える。入力装置100は、テレビゲーム用のコントローラなどに搭載され、操作部15の操作に応じた信号を入力するための装置である。
【0011】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、操作部15が移動する面を第1平面(即ち、XY平面)とし、第1平面に対して垂直な方向(Z軸方向)を入力装置100の高さ方向とする。なお、本明細書において、Z軸方向の正側から負側への視点を上面視と称する場合がある。
【0012】
筐体10は、磁石20と、磁石移動部30と、センサ40とを収容している。本例の筐体10の形状は、直方体であるがこれに限定されない。筐体10は、搭載されるコントローラに応じて埋め込み可能な形状を有する。
【0013】
操作部15は、上下左右に操作することができる突起状の部材である。操作部15は、操作によって任意の方向に傾倒することができる。操作部15は、傾倒動作に応じて、磁石移動部30によって磁石20を操作する。操作部15は、XY平面に対応する上下左右の傾倒動作に加えて、Z軸方向に押込まれてもよい。一例において、操作部15の材料は、絶縁樹脂である。
【0014】
磁石20は、第1極21および第2極22を有し、予め定められた大きさの磁場を発生する。本例では、第1極21がS極であり、第2極22がN極である。磁石20は、ネオジウム磁石またはフェライト磁石などの磁石であってよい。磁石20は、磁石移動部30の端部に固定されている。本例では、センサ40と近い位置に第1極21が配置され、センサ40から離れた位置に第2極22が配置されているが、第1極21および第2極22はこれと逆に配置されてもよい。本例の磁石20の形状は、直方体であるがこれに限定されない。
【0015】
第1極21および第2極22は、XY平面内の予め定められた方向に配列される。第1極21および第2極22は、X軸方向またはY軸方向に配列されてよい。なお、第1極21および第2極22は、Z軸方向に配列されてもよい。X軸方向は、第1方向の一例であり、Y軸方向は、第2方向の一例である。
【0016】
磁石移動部30は、操作部15による操作と連動して磁石20を移動させる。本例の磁石移動部30は、操作部15の傾きに応じた方向および位置に、磁石20を移動させる。本例の磁石移動部30は、操作部15の傾倒動作を磁石20のXY平面内の動きに変換するスライダとして機能する。
【0017】
センサ40は、磁石20が発生した磁場を検出する。本例のセンサ40は、磁石20の動きに応じた磁場の変化を磁場データとして出力する。センサ40が出力した磁場データを処理することにより、磁石20の動きを検出できる。センサ40は、3軸の磁場を検出可能な3軸磁気センサであってよいし、1軸または2軸の磁気センサであってよい。本例のセンサ40は、筐体10の底面に配置されているが、筐体10の底面よりも上方に配置されてよい。センサ40を筐体10の底面に配置すると、筐体10の側面に配置する場合よりも実装時の作業性が改善しやすくなる。
【0018】
図1Bは、入力装置100の上面図の一例を示す。操作部15の形状は、上面視において、略円形である。本例の操作部15は、指で操作されるのに適した形状を有するが、操作部15の形状は本例に限られない。中心C1は、操作部15の基準位置における中心位置を指す。操作部15の基準位置とは、傾倒されていない状態の操作部15の位置である。操作部15の中心C1は、筐体10のXY平面における中心と一致するように配置されてもよいし、筐体10のXY平面における中心からずれて配置されてもよい。
【0019】
図2Aは、操作部15が傾倒した状態での入力装置100の側面図の一例を示す。本例の入力装置100は、操作部15がX軸方向の負側に傾倒した状態を示している。操作部15がX軸方向の負側に傾倒することにより、磁石20がX軸方向の正側に移動して、センサ40と離れる方向にスライドしている。センサ40は、磁石20が離れたことにより弱められた磁場の磁場データを取得する。これにより、入力装置100は、操作部15がX軸方向の負側に傾いていることを知ることができる。
【0020】
図2Bは、操作部15が傾倒した状態での入力装置100の動作の一例を示す。本例の入力装置100は、操作部15がX軸方向の正側に傾倒した状態を示している。操作部15がX軸方向の正側に傾倒することにより、磁石20がX軸方向の負側に移動して、センサ40と近づく方向にスライドしている。センサ40は、磁石20が近づくことにより強められた磁場の磁場データを取得する。これにより、入力装置100は、操作部15がX軸方向の正側に傾いていることを知ることができる。
【0021】
磁石20とセンサ40との距離は、このような操作部15の傾倒動作によって距離が変化しても、センサ40によって磁石20の発生する磁場の変化を検知できるように設定される。磁石20とセンサ40との距離は、磁石20の発生する磁場の大きさまたは入力装置100に要求される特性、またはセンサ40の測定レンジ等に応じて適宜調整されてよい。
【0022】
本例の入力装置100は、センサ40を用いた磁気検出によって操作部15の傾倒動作に応じた磁場データを検出する非接触式であることから、センサ部と可動部は非接触であり、両部間での機械的な摩耗が発生しない。また、磁気データを検出する構成は埃や水の影響を受けにくい耐塵性および耐水性をもつため、例えば可動部を滑らかに動かすための潤滑剤等を注入しても問題ない。なお、本例では、操作部15がX軸方向に傾倒された成分に応じて磁石移動部30によって磁石20を移動させる場合について説明したが、Y軸方向等のその他の方向についても同様であってよい。
【0023】
図3Aは、筐体10の内部の構造を示す入力装置100の上面図である。本例の入力装置100は、X軸方向またはY軸方向に移動する2つの磁石20の動きを1つのセンサ40で検出する。本例の入力装置100は、2つの磁石20aおよび磁石20bと、2つの磁石移動部30aおよび磁石移動部30bとを備える。磁石20aは、第1磁石の一例である。磁石20bは、第2磁石の一例である。本例の入力装置100は、検知部50を備える。
【0024】
筐体10は、XY平面において、略正方形の形状を有する。筐体10の中心付近に設けられた操作部15の周囲に、磁石20、磁石移動部30、センサ40および検知部50が配置されている。筐体10内のレイアウトは、本例に限定されず、センサ40または検知部50を外部に接続するための配線等を考慮して変更されてよい。
【0025】
磁石移動部30aは、XY平面において、X軸方向に磁石20aを移動させる。本例の磁石移動部30aは、操作部15のX軸方向の動きと連動して磁石20aをX軸方向にスライドさせる。本例の磁石移動部30aは、操作部15の中心C1よりも筐体10のY軸方向の正側の辺に沿って配置される。
【0026】
磁石移動部30bは、XY平面において、Y軸方向に磁石20bを移動させる。本例の磁石移動部30bは、操作部15のY軸方向の動きと連動して磁石20bをY軸方向にスライドさせる。本例の磁石移動部30bは、操作部15の中心C1よりも筐体10のX軸方向の負側の辺に沿って配置される。
【0027】
本例では、第1方向(即ち、X軸方向)と第2方向(即ち、Y軸方向)は、第1平面(即ち、XY平面)において直交している。但し、第1平面において、第1方向および第2方向がなす角度は、鋭角であってもよく、鈍角であってもよい。このような場合であっても、センサ40の磁場データの処理の方法を変えることにより、磁場データから操作部15の状態を取得することができる。
【0028】
センサ40は、磁石20aおよび磁石20bに共通に設けられる。即ち、本例のセンサ40は、磁石20aの位置に応じた磁場と、磁石20bの位置に応じた磁場をそれぞれ検出する。センサ40は、磁石移動部30aのX軸方向の負側であって、磁石移動部30bのY軸方向の正側に設けられる。例えば、センサ40は、X軸方向における磁場の変化から磁石20aの位置を検出して、Y軸方向における磁場の変化から磁石20bの位置を検出する。
【0029】
本例のセンサ40は、上面視において、磁石20aが移動する第1方向と、磁石20bが移動する第2方向との交点P1に設けられる。センサ40は、上面視において、交点P1を中心に配置されてもよいし、交点P1を少なくとも含むように配置されてもよい。本例の入力装置100は、センサ40を複数の磁石20に対して共通に設けることで、入力装置100の小型化を実現することができる。
【0030】
また、本例のセンサ40は、上面視において、磁石20が移動する領域と異なる領域に設けられている。センサ40は、上面視において、操作部15の真下に設けられず、中心C1からXY平面にてずれた位置に設けられる。したがって、入力装置100は、操作部15のZ軸方向の押し込み動作の影響を受けにくくなる。これにより、本例の入力装置100は、Z軸方向における押し込み動作以上の厚みを確保する必要がないので、薄型化することができる。一方、操作部15の中心C1の下方にセンサを設ける場合、操作部15のZ軸方向の押し込み動作の影響を受ける恐れがあり、薄型化が困難である。
【0031】
検知部50は、操作部15の押し込み動作に対応するZ軸方向の成分を検知する。例えば、検知部50は、プッシュ検知用のタクトスイッチを備え、押し込み動作に応じた検出データを出力する。操作部15の押し込み動作を検出しない場合は、検知部50を省略してもよい。検知部50からの検出データは、センサ40の磁場データの処理部と同一の処理部で処理されてもよい。
【0032】
なお、本例の磁石20aでは、センサ40と近い位置に第1極21aが配置され、センサ40から離れた位置に第2極22aが配置されている。また、本例の磁石20bでは、センサ40と近い位置に第2極22bが配置され、センサ40から離れた位置に第1極21bが配置されている。即ち、本例の入力装置100では、磁石20がセンサ40に近づいたときに互いに引き寄せ合う引力配置であるが、後述する斥力配置であってもよい。
【0033】
図3Bは、入力装置100の動作の一例を示す。操作部15の操作に応じた磁石20の位置の変化の様子を示している。操作部15が基準位置にある場合、磁石20aおよび磁石20bもそれぞれの基準位置に配置されている。操作部15が傾倒されると、操作部15の傾倒に連動して磁石20の位置が変化する。例えば、操作部15がX軸方向の正側に傾倒されると、磁石20aがX軸方向の負側に移動する。また、操作部15がY軸方向の正側に傾倒されると、磁石20bがY軸方向の負側に移動する。
【0034】
なお、本例では、操作部15がX軸方向またはY軸方向のいずれかに傾倒された場合について図示しているが、操作部15がX軸方向およびY軸方向に対して斜めに傾倒されてよい。この場合も同様に、X軸方向の成分とY軸方向の成分のそれぞれに応じて、磁石20aおよび磁石20bが移動して、操作部15の操作を検知することができる。
【0035】
図4は、3軸の磁場を検出可能なセンサ40の一例を示す。本例のセンサ40は、3軸の磁場を検出するための3軸磁気センサとして機能する。センサ40は、XY平面内の少なくとも2軸の磁場を検出すれば、操作部15による2次元での操作に応じた磁場データを取得できる。そのため、センサ40が3軸磁気センサの場合、2軸を操作部15の操作の検出に使用して、残りの軸を外乱検出用などの他の用途に使用することができる。なお、センサ40は、1軸の磁場を検出する1軸磁気センサを2つ含む構成でもよいし、2軸の磁場を検出する2軸磁気センサを1つ含む構成であってもよい。
【0036】
図5Aは、入力装置100の変形例を示す。本例の入力装置100は、2つのセンサ40aおよびセンサ40bを備える点で
図3Aの実施例と相違する。本例の入力装置100は、X軸方向またはY軸方向に移動する2つの磁石20の動きを2つのセンサ40で検出する。
【0037】
センサ40aは、磁石移動部30aのX軸方向の正側に設けられ、磁石20aの位置に応じた磁場の変化を検出する。センサ40aは、磁石20aの位置に応じた磁場の変化を検出するための1軸センサであってもよいし、多軸センサであってもよい。センサ40aは、磁石20aの磁場を検出するための第1センサの一例である。
【0038】
センサ40bは、磁石移動部30bのY軸方向の負側に設けられ、磁石20bの位置に応じた磁場の変化を検出する。センサ40bは、磁石20bの位置に応じた磁場の変化を検出するための1軸センサであってもよいし、多軸センサであってもよい。センサ40bは、磁石20bの磁場を検出するための第2センサの一例である。
【0039】
本例のセンサ40aおよびセンサ40bは、上面視において、磁石20aまたは磁石20bが移動する領域と異なる領域に設けられている。また、センサ40aおよびセンサ40bは、上面視において、操作部15の中心C1に対して非対称な位置にそれぞれ設けられる。即ち、センサ40aおよびセンサ40bは、操作部15の中心C1の下方に設けられていない。これにより、入力装置100の薄型化を実現することができる。
【0040】
また、本例の複数の磁石20は、上面視において、互いに離れた位置に設けられている。したがって、本例の入力装置100は、磁石20同士の引力および斥力の影響を小さくして、操作部15による操作感への影響を抑制することができる。
【0041】
図5Bは、入力装置100の変形例を示す。本例の入力装置100は、2つのセンサ40aおよびセンサ40bの位置が
図5Aの実施例と相違する。
【0042】
センサ40aは、移動する磁石20aの側方に配置される。本例のセンサ40aは、磁石20aがX軸方向に移動する場合に、磁石20aよりもY軸方向の負側に配置される。即ち、センサ40aは、磁石移動部30aよりもY軸方向の負側に配置される。
【0043】
同様に、センサ40bは、移動する磁石20bの側方に配置される。本例のセンサ40bは、磁石20bがY軸方向に移動する場合に、磁石20bよりもX軸方向の正側に配置される。即ち、センサ40bは、磁石移動部30bよりもX軸方向の正側に配置される。これにより、磁石20のストロークを長くすることができ、入力装置100のレイアウトの自由度が高くなり、入力装置100の小型化を実現しやすくなる。
【0044】
図5Cは、入力装置100の変形例を示す。本例の入力装置100は、1つのセンサ40と、センサ40の外周に設けられた1つの磁石20を備える。本例の入力装置100は、XY平面内を移動する1つの磁石20の動きを1つのセンサ40で検出する。
【0045】
本例のセンサ40は、上面視において、磁石20が移動する領域と異なる領域に設けられている。センサ40は、上面視において、操作部15の近傍に設けられているが、これに限定されない。本例のセンサ40は、上面視において、磁石20が配置される予め定められた円C2の近傍に設けられている。
【0046】
磁石20は、上面視において、予め定められた円C2内に設けられる。本例の磁石20は、操作部15の傾倒動作に応じて円C2の外周およびその内側を移動する。但し、磁石20は、円C2から逸れて、XY平面内の任意の領域で移動してもよい。なお、本例の磁石移動部30は不図示である。本例の入力装置100は、磁石20およびセンサ40を1つずつ備えることによって、操作部15の動きを検知することができる。
【0047】
図5Dは、入力装置100の変形例を示す。本例の入力装置100は、2つのセンサ40aおよびセンサ40bと、1つの磁石20を備える。本例の入力装置100は、XY平面内を移動する1つの磁石20の動きを2つのセンサ40aおよびセンサ40bで検出する。
【0048】
磁石20は、上面視において、予め定められた円C2内を移動するように配置される。本例の磁石20は、操作部15の傾倒動作に応じて円C2の外周およびその内側を移動する。本例の磁石20は、XY平面内の予め定められた方向に配列された第1極21および第2極22を備える。
【0049】
センサ40aおよびセンサ40bは、上面視において、磁石20が移動する円C2の外側に配置される。本例のセンサ40aは磁石20が移動する円C2のX軸方向の正側に設けられ、センサ40bは磁石20が移動する円C2のY軸方向の負側に設けられる。これにより、磁石20の位置に応じた2軸の磁場の変化を検出することができる。センサ40aおよびセンサ40bの位置は、磁石20の磁場を検出可能な位置であれば本例に限られない。
【0050】
このように、入力装置100は、磁石20およびセンサ40の個数と位置を任意に決定できるので、レイアウトの自由度が高く、小型化を実現しやすい。入力装置100に実装するセンサ40の個数を少なくすることにより、簡潔な配線を実現して、実装時の作業性を改善することができる。また、入力装置100の内部構造を簡潔にすることで実装誤差を小さくできる。
【0051】
図6Aは、入力装置100の変形例を示す断面図である。本例では、磁石20とセンサ40の高さが重なるように調整されている。
【0052】
センサ40は、Z軸方向において、磁石20と同一の高さに配置される。同一の高さとは、Z軸方向において、磁石20およびセンサ40の少なくとも1部が重複することを指してよい。本例の磁石20およびセンサ40は、Z軸方向の中心が一致するように、高さが調整されている。磁石20とセンサ40のZ軸方向の高さを揃えることにより、磁石20が移動してもセンサ40においてZ軸方向に入力される磁場が変化しにくくなる。これにより、入力装置100は、Z軸方向における磁場を検出することによる外乱検知の精度を向上することができる。
【0053】
図6Bは、入力装置100の変形例を示す断面図である。本例では、センサ40の上方に磁場発生部60が配置されている。
【0054】
磁場発生部60は、第1極61および第2極62を有し、予め定められた大きさの磁場を発生する。本例では、第1極61がS極であり、第2極62がN極である。本例の磁場発生部60は、筐体10の上方に固定されており、センサ40に予め定められた強度の磁場を印加する。本例の磁場発生部60の形状は、直方体であるがこれに限定されない。
【0055】
本例では、センサ40と近い位置に第1極61が配置され、センサ40から離れた位置に第2極62が配置されているが、第1極61および第2極62はこれと逆に配置されてもよい。つまり、磁場発生部60は、センサ40に対してZ軸方向に磁場を印加できればよく、その着磁方向は限定されない。
【0056】
図6Cは、入力装置100の変形例を示す上面図である。
図6Cにおいて、磁場発生部60はセンサ40の直上に配置されているが、必ずしも直上に配置される必要はない。磁場発生部60の位置は、センサ40の上方であってよく、上面視においてセンサ40と一部重なる位置であってよい。
【0057】
磁場発生部60の位置は、例えば、入力装置100の他の構成要素の配置位置に応じて、またはセンサ40のX、Y軸方向に印加したい磁場の強度に応じて、またはセンサ40の測定レンジに応じて、X、YおよびZ軸方向にずらして配置してよい。磁場発生部60は固定磁石であるため、磁石可動部が不要であり、薄さの制限もない。よって、筐体10の薄型化に影響を及ぼさない範囲で追加可能である。
【0058】
ところで、磁石の温度が変化した場合、その残留磁束密度が変化することが知られている。したがって、筐体10内の温度が変化した場合、磁石20がセンサ40に印加する磁場の大きさが変化し、検出される操作部15の位置座標がずれるといった課題が生じる。本例の入力装置100は、磁場発生部60を用いてセンサ40に対しZ軸方向に磁場を印加することで、温度が変化した際に磁場データを補正することができる。
【0059】
図6Bおよび
図6Cに示した状況において、センサ40が受けるX軸方向の磁場をB
x、Z軸方向の磁場をB
zとすると、B
xおよびB
zは以下の式1で表すことができる。
【数1】
ここで、B
x(20)およびB
x(60)はそれぞれ磁石20および磁場発生部60がセンサ40に与えるX軸方向の磁場の大きさであり、B
z(60)は磁場発生部60がセンサ40に与えるZ軸方向の磁場の大きさである。
図6Bに示した状況では磁石20とセンサ40はZ軸方向において同じ高さにあるので、磁石20はセンサ40に対してZ軸方向の磁場を与えない。各軸の比を取ることで、以下の式2を得る。
【数2】
【0060】
温度がΔT変化した場合、磁場の大きさは温度に線形に変化するので、式2は以下の式3のように変形される。ここで、α
20およびβ
20は磁石20の磁石材料によって決まる係数であり、α
60およびβ
60は磁場発生部60の磁石材料によって決まる係数である。
【数3】
ここで、磁石20と磁場発生部60の材料が同じであればα
20=α
60かつβ
20=β
60となり、式3は以下の式4のように変形できる。式4はΔTを含まないので、磁場発生部60を用いてZ軸方向の磁場を印加することにより、磁石20の温度特性による位置座標ずれを防ぐことができることが分かる。
【数4】
【0061】
本例では、磁石20と磁場発生部60とで同一材料の磁石が用いられているが、同一材料でなくても、α20=α60かつβ20=β60であればよい。即ち、磁石20と磁場発生部60とが同一の温度特性を有していればよい。
【0062】
温度特性が同一である磁場発生部60がセンサ40に印加する磁場を基準として、上述の計算により、センサ40により出力される磁場データを補正することができる。これにより、検出される操作部15の位置座標が、磁石20の温度特性によりずれることを防ぐことができる。
【0063】
ここまでは磁石20とセンサ40のZ軸方向における高さが一致している場合について説明したが、磁石20は、Z軸方向において、センサ40と異なる高さであってもよい。
【0064】
磁石20とセンサ40とがZ軸方向において異なる高さにある場合、磁場発生部60がセンサ40に印加する磁場の大きさは、磁石20がセンサ40に印加する磁場の大きさより大きくてよい。即ち、磁石20がZ軸方向においてセンサ40に印加する磁場の大きさをBz(20)とするとき、Bz(60)はBz(20)より大きくてよい。
【0065】
また、磁場発生部60とセンサ40との間の距離は、磁石20とセンサ40とが最近接した場合の距離より小さくてよい。これにより、磁場発生部60がセンサ40に印加する磁場の大きさを、磁石20がセンサ40に印加する磁場の大きさよりも大きくできる。より具体的には、後述するが、一例において交点P1から磁石20までの距離の最小値は2.5mmであるから、センサ40の上面から磁場発生部60の底面までの距離を2.5mm未満とすることで、Bz(60)をBz(20)より大きくできる。
【0066】
磁石20とセンサ40のZ軸方向の中心が一致していない場合、磁石20はセンサ40に対してZ軸方向の磁場を与えることになるので、上記式2は以下の式5のようになる。
【数5】
式2では右辺の変数はB
x(20)のみであったのに対し、式5ではB
z(20)という変数が加わるので、計算が煩雑になる。そこで、例えば、磁場発生部60及び磁石20の配置を調節すること等により、B
z(60)をB
z(20)よりも大きくすることで、上記式5は以下の式6のように近似することができ、結果として上記式4のように扱うことが可能になる。
【数6】
【0067】
図6Dは、入力装置100による外乱検知方法の一例を示す。本例の入力装置100は、磁束密度(mT)の予め定められた閾値B1および閾値B2を設定しておき、検出したZ軸方向の磁場が閾値B1から閾値B2までの範囲を超えた場合に外乱を検知したと判断する。入力装置100は、磁石20とセンサ40の高さを揃えることにより、磁石20の移動によるZ軸方向の磁束密度への影響を抑制しやすくなる。これにより、外乱検知の精度を向上することができる。
【0068】
閾値B1は、操作部15を予め定められたパターンで操作した場合にセンサ40に印加される磁場の最小値から地磁気相当の磁場を引いたものであってよい。閾値B2は、操作部15を予め定められたパターンで操作した場合にセンサ40に印加される磁場の最大値に地磁気相当の磁場を足したものであってよい。また最大値・最小値から差し引きする値は、地磁気による磁束密度よりも余裕を持たせた値でもよい。これにより、磁石20によって磁化された金属部品(例えば、バネ)によって発生する磁場の影響を抑制できる。また、実装誤差に起因する、磁石20の移動によって発生する磁場の影響を抑制できる。例えば、閾値B1および閾値B2は、それぞれ-500μTと、+500μTである。
【0069】
図6Eは、閾値設定方法のフローチャートの一例を示す。本例のフローチャートは、通常処理状態において外乱検知をするための閾値を設定するための処理の一例である。ステップS100において、磁場データの取得を開始する。磁場データの取得は、入力装置100の内部に設けられた処理部で実行されてもよいし、入力装置100の外部に設けられた処理部で実行されてもよい。
【0070】
ステップS102において、操作部15を予め定められたパターンで操作する。例えば、操作部15の外周を一周するように操作する。また、「スティックを真上に倒して、5秒かけて時計回りにゆっくりと回してください。」といった案内を表示してユーザに予め定められたパターンで操作部15を操作させてよい。
【0071】
ステップS104において、ステップS102で取得した磁場データに基づいて、閾値を設定する。ステップS104において、ステップS102で取得した磁場データから最大値および最小値を抽出してよい。一例において、閾値は、ステップS102で取得した磁場データの最大値および最小値と、地磁気とに基づいて設定される。例えば、ステップS102で取得した磁場データの最小値から地磁気相当の磁場を引いたものを閾値B1に、最大値に地磁気相当の磁場を足したものを閾値B2に設定する。これにより、通常動作時の磁石20の移動による外乱の誤検知を回避することができる。なお、本例の閾値設定方法は、入力装置100の製造時に実行されてもよいし、入力装置100がコントローラに実装された後に実行されてもよいし、入力装置100を使用するユーザによって実行されてもよい。例えば、入力装置100の工場出荷時に閾値を設定した後に、ユーザが閾値を再設定してもよい。
【0072】
図6Fは、磁場データを処理するための動作フローチャートの一例を示す。ステップS200において、処理部が磁場データを取得する。ステップS200では、通常処理状態での磁場データを取得してよい。通常処理状態とは、例えば入力装置100がゲームのコントローラの場合、入力装置100を用いてゲームをプレイしている状態を指す。ステップS202において、磁場が閾値を超えた否かを判断する。ステップS202では、ステップS104で設定された閾値を用いてもよい。磁場が閾値を超えた場合はステップS204でエラー処理を実行して、磁場が閾値を超えていない場合はステップS206で通常処理を継続する。エラー処理は、閾値を超えた磁場データを採用しない処理であってもよく、ユーザに外乱を検知したことを通知する処理であってもよい。このように、センサ40に3軸磁気センサを用いて外乱検知することにより、外乱のエラー処理を実現できる。
【0073】
図7Aは、センサ40の正常動作を確認するシステムの動作フローチャートである。ステップS300において、処理部がセンサ40との通信を開始する。ステップS310において、処理部とセンサ40との通信が正常か否かを判断する。通信が正常の場合、ステップS320において、処理部がセンサ40から磁場データを取得する。通信が正常でない場合、動作異常を報告する。ステップS320の具体的な磁場データの判断方法については後述する。
【0074】
ステップS330において、磁場データが正常か否かを判断して、磁場データが正常の場合に確認を終了して、磁場データが正常でない場合、動作異常を報告する。これにより、入力装置100は、磁石20およびセンサ40が正しく配置されており、センサ40が正常に動作していることを確認することができる。
【0075】
なお、ステップS310における通信が正常か否かの判断は、処理部と入力装置100との間における認証動作によって実行されてよい。例えば、処理部は、スレーブアドレスでセンサ40を指定して、特定のレジスタ(デバイスID)の読み出し値を判定する。処理部は、デバイスIDの読み出し値を判定した後に、自己診断機能(即ち、セルフテスト)を実行して、その結果に基づいて通信が正常であるか否かを判断してよい。
【0076】
図7Bは、磁場データを取得する動作フローチャートの一例を示す。本例の動作フローチャートは、ステップS320において磁場データが正常か否かを判断するための具体的な方法を示す。
【0077】
ステップS322において、操作部15を予め定められたパターンで操作する。処理部は、ユーザに予め定められたパターンで操作するように指示を出してもよい。ステップS324において、磁石20の向きに異常がないかを判断する。磁石20の向きに異常がある場合、磁場データに異常ありと判定し、磁石20の向きに異常がない場合、ステップS326で磁石20の強度に異常がないかを判断する。磁石20の強度に異常がある場合、磁場データに異常ありと判定し、磁石20の強度に異常がない場合、ステップS328で入力装置100の実装誤差が許容範囲であるか否かを判断する。実装誤差が許容範囲でない場合、磁場データに異常ありと判定し、実装誤差が許容範囲である場合、正常であると判定する。ステップS324~ステップS328では、ステップS322の操作で得られる磁場出力の大きさ、磁場出力の極性、または磁場出力の歪の少なくとも1つを用いて、各ステップの判定をする。なお、ステップS324~ステップS328を実行する順序は、適宜入れ替えられてもよい。ステップS322の後に、ステップS324~ステップS328の少なくとも1つが実行されてもよい。
【0078】
図8は、磁石20を斥力配置にした場合の入力装置100の一例である。本例の入力装置100は、
図3Aの実施例と基本的な構成が同じである。
【0079】
入力装置100は、磁石20aおよび磁石20bがセンサ40に近づいた場合に、互いに反発し合うように極性が配置されている。このように、磁石20aおよび磁石20bが反発し合う斥力配置の場合、2つの磁石間の斥力が操作部15を基準位置に戻す方向に働く。操作部15を基準位置に戻す方向には、バネによる基準位置への復帰力が加えられているので、ユーザは磁石20どうしの反発力を実感しにくくなる。
【0080】
一方、磁石20が互いに引き合う引力配置の場合、引力はバネによる基準位置への復帰力を打ち消す方向に働くので、ユーザは、特定の方向に操作部15を倒したときだけ操作部15の戻りが悪いといった印象を受ける場合がある。よって、磁石20を反発し合う配置にすることで、入力装置100の操作感が向上しやすくなる。
【0081】
また、引力配置の場合、磁石移動部30に対してそれぞれ逆向きに磁石20を取り付ける必要があるのに対して、斥力配置の場合、磁石移動部30に対して同じ向きに磁石20取り付ければよい。よって、斥力配置では、磁石移動部30aおよび磁石移動部30bに対して、同一の部材を使いまわすことができるので、量産性を高めることができる。
【0082】
図9Aは、センサ40の近傍の拡大図の一例を示す。本例では、入力装置100のレイアウトの設計方法の一例を示す。
【0083】
距離Lは、X軸方向またはY軸方向における、交点P1と中心C1との間の距離である。特に、距離Laは、X軸方向における交点P1と中心C1との間の距離を示す。距離Lbは、Y軸方向における交点P1と中心C1との間の距離を示す。磁石移動部30は、距離Lの範囲内で磁石20を移動させてよい。一例において、距離Lは、5mm以上、8mm以下である。本例の距離Laは、距離Lbと同一であるが、異なっていてもよい。
【0084】
幅Wは、磁石20が移動する方向における磁石20の幅である。即ち、幅Wは、磁石20の1辺に対応する。特に、幅Waは、磁石20aのX軸方向における幅を示す。幅Wbは、磁石20bのY軸方向における幅を示す。磁石20は、距離Lの10%以上、50%以下の長さの辺を有してよい。一例において、磁石20は、1mm以上、5mm以下の辺を有する。本例の幅W1は、2mmである。本例の幅Waは、幅Wbと同一であるが、異なっていてもよい。磁石20の体積は、例えば、8mm3である。
【0085】
距離Dは、交点P1と磁石20との間の距離を示す。距離Dは、磁石20の位置に応じて変化する。距離Dminは、距離Dの最小距離であり、距離Dmaxは、距離Dの最大距離である。一例において、距離Dminが2.5mmであり、距離Dmaxは4.5mmである。
【0086】
ここで、人間が指を動かしたと感知できる最小の長さがおよそ0.1mmである。入力装置100が0.1mmを感知しようとすると、操作部15のおよそ6mmのストロークS1をおよそ60分割する必要がある。即ち、操作部15と連動する磁石20のストロークS1をおよそ60分割する必要がある。ストロークS1については後述する。一方、地磁気の大きさが30μTから60μTであり、これが通常動作中になるべく影響しないようにする必要がある。例えば、磁石20のストロークを予め定められた個数のマスに分割した際に、全てのマスの磁場変化量が60μT以上である必要がある。本例の入力装置100は、このような条件を満たす距離Dとして、2.5mm以上、4.5mm以下に設定した。これにより、使用中の地磁気の影響を抑制することができる。
【0087】
図9Bは、入力装置100の断面図を示す。幅W1は、筐体10のX軸方向における幅を示す。幅W1は、例えば、15mm以上、25mm以下である。高さHは、筐体10の底面から操作部15の上面までの入力装置100の高さを示す。高さHは、例えば、12mm以上、16mm以下である。ストロークS1は、操作部15の傾斜によって操作部15が移動する最大距離である。本例のストロークS1は、操作部15がX軸方向の正側に最も傾斜した場合の位置から、X軸方向の負側に最も傾斜した場合の位置まで移動した際の操作部15の頂点の軌跡の距離である。操作部15は、XY平面のいずれの方向においても、同一のストロークS1を有してよい。
【0088】
図10は、比較例に係る入力装置500の一例を示す。入力装置500は、操作部515と連結された駆動部510をスライドさせて、シート抵抗部520と接触した金属電極の接触部525を移動させる。駆動部510の一端にはシート抵抗部520が配置され、他端には電極530が配置されている。これにより、入力装置500は、操作部515の傾きに応じた出力電圧を出力する。
【0089】
しかしながら、入力装置500では、シート抵抗部520と接触部525との接触によって、シート抵抗部520の表面522が摩耗して入力装置500の出力が不安定となる場合がある。入力装置500の出力が不安定となると、入力装置500を搭載したコントローラの誤動作する場合がある。
【0090】
図11は、コントローラ200の構成の一例を示す。本例のコントローラ200は、2つの入力装置100aおよび入力装置100bを備える。但し、入力装置100の個数はこれに限定されない。例えば、ユーザは、操作部15aおよび操作部15bをそれぞれ親指で操作して、テレビゲームをプレイすることができる。
【0091】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0092】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0093】
10・・・筐体、15・・・操作部、20・・・磁石、21・・・第1極、22・・・第2極、30・・・磁石移動部、40・・・センサ、50・・・検知部、60・・・磁場発生部、61・・・第1極、62・・・第2極、100・・・入力装置、200・・・コントローラ、500・・・入力装置、510・・・駆動部、515・・・操作部、520・・・シート抵抗部、522・・・表面、525・・・接触部、530・・・電極