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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20210101AFI20240710BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20240710BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20240710BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240710BHJP
【FI】
H01S5/022
F21V9/32
G02B1/115
F21Y115:30
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020166264
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057819
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大祐
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170856(JP,A)
【文献】特開2018-132724(JP,A)
【文献】特開2017-212390(JP,A)
【文献】特開2017-134323(JP,A)
【文献】特開2016-225448(JP,A)
【文献】特開2015-207646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0205737(US,A1)
【文献】登録実用新案第3228571(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/022
F21V 9/32
G02B 1/115
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面、及び前記底面よりも上方にまで達する側面を形成する枠、を備えた基部と、
前記底面に配置され、前記枠に囲まれる複数の半導体レーザ素子と、
前記枠に支持され前記複数の半導体レーザ素子の上方に配置される蓋部と、
前記蓋部の前記半導体レーザ素子側の面から前記底面側に向かう1つの凸部と、を有し、
前記複数の半導体レーザ素子のそれぞれから出射された光は、前記凸部と前記凸部の周辺環境との境界である境界面から入射し、前記凸部内を通り、前記凸部の境界面において反射され、前記蓋部を透過する、発光装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記凸部の中心軸を通る何れかの縦断面視において、前記底面側から前記蓋部側に行くにしたがって拡幅する形状である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記凸部は、錐体状又は錐台状である、請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記複数の半導体レーザ素子は、第1半導体レーザ素子及び第2半導体レーザ素子を含み、
前記凸部の境界面において、前記第1半導体レーザ素子からの光が入射する入射領域の少なくとも一部は、前記第2半導体レーザ素子から前記凸部へ入射した光が反射される反射領域でもあり、
前記第2半導体レーザ素子からの光が入射する入射領域の少なくとも一部は、前記第1半導体レーザ素子から前記凸部へ入射した光が反射される反射領域でもある、請求項1乃至3の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記凸部の境界面において、前記第1半導体レーザ素子からの光が入射する入射領域と、前記第2半導体レーザ素子からの光が入射する入射領域とは離れている、請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記基部の底面において、平面視で前記凸部を通る仮想的な第1直線によって二分される領域のうち一方に前記第1半導体レーザ素子が、他方に前記第2半導体レーザ素子が配置され、
前記第1半導体レーザ素子と前記第2半導体レーザ素子を結ぶ仮想的な第2直線は、前記凸部を通る、請求項4又は5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記複数の半導体レーザ素子のそれぞれから出射される光は、前記凸部の境界面に入射してから前記凸部の境界面によって反射されるまでの間で、互いに交差する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記複数の半導体レーザ素子は、平面視で前記凸部の中心に対して点対称に配置されている、請求項1乃至7の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記凸部は、ガラスを主材料にして形成される、請求項1乃至8の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記蓋部と前記凸部とは、一体成型されている、請求項1乃至9の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記凸部に入射した光は、前記凸部の境界面で全反射される、請求項1乃至10の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記凸部には、前記凸部の境界面において前記複数の半導体レーザ素子からの光が入射する入射領域に反射防止膜が設けられる、請求項1乃至11の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記蓋部の上方に配置される波長変換部を有する、請求項1乃至12の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記蓋部の前記半導体レーザ素子側の面とは反対側の面に、レンズ部を有する、請求項1乃至13の何れか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ素子を有する発光装置が知られている。一例として、特許文献1には、第1の面に配置され、第1の面に沿った第1方向にレーザ光を射出する半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子から射出されるレーザ光が入射する入射面、及び入射面から入射したレーザ光の少なくとも一部を反射する反射面を有するプリズムとを備えた発光装置が開示されている。この発光装置では、プリズムの反射面は、自然対数の底をeとしたとき、入射面からプリズムに入射したレーザ光のうち、光強度が中心強度の1/e以上となるレーザ光を全反射するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-212390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、小型化を可能とする発光装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係る発光装置は、底面、及び前記底面よりも上方にまで達する側面を形成する枠、を備えた基部と、前記底面に配置され、前記枠に囲まれる複数の半導体レーザ素子と、前記枠に支持され前記複数の半導体レーザ素子の上方に配置される蓋部と、前記蓋部の前記半導体レーザ素子側の面から前記底面側に向かう1つの凸部と、を有し、前記複数の半導体レーザ素子のそれぞれから出射された光は、前記凸部と前記凸部の周辺環境との境界である境界面から入射し、前記凸部内を通り、前記凸部の境界面において反射され、前記蓋部を透過する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施形態によれば、小型化を可能とする発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る発光装置を例示する斜視図である。
図2】第1実施形態に係る発光装置を例示する平面図である。
図3】第1実施形態に係る発光装置を例示する断面図である。
図4】第1実施形態に係る発光装置から波長変換部材及び光学部材を除いた状態の平面図である。
図5】半導体レーザ素子が発光したときの光の進み方を模式的に示す図である。
図6図5の凸部近傍の拡大図である。
図7】半導体レーザ素子と凸部との位置関係を例示する模式平面図(その1)である。
図8】半導体レーザ素子と凸部との位置関係を例示する模式平面図(その2)である。
図9】半導体レーザ素子と凸部との位置関係を例示する模式平面図(その3)である。
図10】第2実施形態に係る発光装置を例示する断面図である。
図11図10の凸部近傍を拡大するとともに、半導体レーザ素子が発光したときの光の進み方を模式的に示す図である。
図12】第3実施形態に係る発光装置を例示する断面図である。
図13図12の凸部近傍を拡大するとともに、半導体レーザ素子が発光したときの光の進み方を模式的に示す図である。
図14】第4実施形態に係る発光装置から波長変換部材及び光学部材を除いた状態の平面図である。
図15】半導体レーザ素子が発光したときの光の進み方を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる。しかし、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
【0009】
また、本開示において、三角形や四角形等の多角形に関しては、多角形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が施された形状も含めて、多角形と呼ぶものとする。また、隅(辺の端)に限らず、辺の中間部分に加工が施された形状も同様に、多角形と呼ぶものとする。つまり、多角形をベースに残しつつ、部分的な加工が施された形状は、本開示で記載される"多角形"の解釈に含まれるものとする。
【0010】
また、多角形に限らず、台形や円形や凹凸等、特定の形状を表す言葉についても同様である。また、その形状を形成する各辺を扱う場合も同様である。つまり、ある辺において、隅や中間部分に加工が施されていたとしても、"辺"の解釈には加工された部分も含まれる。なお、部分的な加工のない"多角形"や"辺"を、加工された形状と区別する場合は"厳密な"を付して、例えば、"厳密な四角形"等と記載するものとする。
【0011】
さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置等を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施形態において説明する内容は、他の実施形態や変形例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。さらに、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略した模式図を用いたり、断面図として切断面のみを示す端面図を用いたりすることがある。
【0012】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る発光装置を例示する斜視図である。図2は、第1実施形態に係る発光装置を例示する平面図である。図3は、第1実施形態に係る発光装置を例示する断面図であり、図2のIII-III線に沿う断面を示している。図4は、第1実施形態に係る発光装置から波長変換部材及び光学部材を除いた状態の平面図である。なお、図4では、便宜上、凸部282及び波長変換部291が投影される位置を破線で示している。
【0013】
図1図4に示すように、発光装置200は、基部210と、複数の半導体レーザ素子(第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、第3半導体レーザ素子220C、第4半導体レーザ素子220D)と、複数のサブマウント230と、保護素子250と、温度測定素子260と、配線270と、光学部材280と、波長変換部材290とを有する。なお、発光装置200は、これらの構成要素の全てを有していなくてもよい。例えば、発光装置200は、少なくとも、基部210と、複数の半導体レーザ素子220と、光学部材280とを有していればよい。
【0014】
発光装置200の各構成要素について説明する。
【0015】
(基部210)
基部210は、上面210a、下面210b、複数の内側面210c、1又は複数の外側面210d、及び底面210eを有している。基部210は、上面210aから下面210bの方向に窪んだ凹形状を有する。また、基部210は、平面視で外形が矩形であり、窪みはこの外形の内側に形成される。
【0016】
また、平面視で、上面210aに交わる1又は複数の内側面210cによって枠が形成される。すなわち、基部210は、底面210e、及び底面210eよりも上方にまで達する内側面210cを形成する枠を備えている。基部210の窪みは、底面210eとこの枠によって囲まれる。
【0017】
なお、基部210の上面210aの法線方向から対象物を見ることを平面視と称する場合があり、基部210の上面210aの法線方向から対象物を視た形状を平面形状と称する場合がある。
【0018】
また、基部210は、枠の内側において、1又は複数の段差部216を有する。なお、段差部216は、上面、及び、上面と交わり下方に進む側面のみから構成される。1又は複数の内側面210cには、基部210の上面210aと交わる側面と、段差部216の側面とが含まれる。
【0019】
基部210は、例えば、セラミックスを主材料として形成できる。例えば、セラミックスとして、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、又は炭化ケイ素を用いることができる。なお、基部210は、セラミックスに限らず、絶縁性を有する他の材料を主材料に用いて形成してもよい。
【0020】
また、基部210の底面210eには、1又は複数の金属膜が設けられる。また、基部210の上面210aには1又は複数の金属膜が設けられる。また、底面210eに設けられる1又は複数の金属膜には、上面210aに設けられた金属膜と電気的に接続する金属膜が含まれる。例えば、底面210eに設けられる金属膜と、上面210aに設けられる金属膜とが、ビアホールに設けられた金属膜を介して電気的に接続する。
【0021】
なお、基部210の枠は、底面210eから連続して設けられる代わりに、例えば、底面210eを囲い底面210eよりも下方に位置する平面から連続して設けられてもよい。また、基部210は一体に形成されたものでなく、例えば、板状部材の上に枠を接合したものであってもよい。また、基部210は、金属などの導電性を有する材料を主材料に用いて形成することもできる。
【0022】
(半導体レーザ素子220)
半導体レーザ素子220は、第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、第3半導体レーザ素子220C、及び第4半導体レーザ素子220Dを含む。ただし、これは一例であり、発光装置200は2以上の半導体レーザ素子を有していればよい。なお、第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、第3半導体レーザ素子220C、及び第4半導体レーザ素子220Dを特に区別する必要がない場合には、単に半導体レーザ素子220と称する。
【0023】
半導体レーザ素子220は、例えば、平面視で長方形の外形を有する。また、長方形の2つの短辺のうちの一辺と交わる側面が、半導体レーザ素子220から放射される光の出射端面となる。また、半導体レーザ素子220の上面及び下面は、出射端面よりも面積が大きい。
【0024】
なお、半導体レーザ素子220から放射される光(レーザ光)は拡がりを有し、光の出射端面と平行な面において楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を形成する。ここで、FFPとは、出射端面から離れた位置における出射光の形状や光強度分布を示す。
【0025】
半導体レーザ素子220から出射される楕円形状の光に基づき、楕円形状の長径を通る方向をFFPの速軸方向、楕円形状の短径を通る方向をFFPの遅軸方向とする。半導体レーザ素子220におけるFFPの速軸方向は、半導体レーザ素子220の活性層を含む複数の半導体層が積層される積層方向と一致し得る。
【0026】
また、半導体レーザ素子220のFFPの光強度分布に基づいて、ピーク強度値に対する1/e以上の強度を有する光を、主要部分の光と呼ぶものとする。また、この光強度分布において1/eの強度に相当する角度を拡がり角と呼ぶものとする。FFPの速軸方向における拡がり角は、FFPの遅軸方向における拡がり角よりも大きい。
【0027】
半導体レーザ素子220には、半導体レーザ素子220から出射される光の発光ピーク波長が、320nm~530nmの範囲、典型的には、430nm~480nmの範囲にあるものを用いることができる。このような半導体レーザ素子220としては、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、又はAlGaNを用いることができる。なお、半導体レーザ素子220から出射される光の発光ピークは、これに限らなくてよい。また、半導体レーザ素子220は、ここで挙げた波長範囲外の波長の光を出射してもよい。例えば、半導体レーザ素子220から出射される光は、可視光の範囲内で適宜決定することができる。第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、第3半導体レーザ素子220C、及び第4半導体レーザ素子220Dから出射される光の発光ピーク波長は、例えば、同一である。なお、ここでの同一には、発光ピーク波長の差が10nm以下である場合を含む。
【0028】
(サブマウント230)
サブマウント230は、例えば、直方体の形状で構成され、下面、上面、及び、側面を有する。また、サブマウント230は上下方向の幅が最も小さい。なお、形状は直方体に限らなくてよい。サブマウント230は、例えば、窒化アルミニウム、又は炭化ケイ素を用いて形成されるが、他の材料を用いてもよい。また、サブマウント230の上面には金属膜が設けられている。
【0029】
(保護素子250)
保護素子250は、半導体レーザ素子等の特定の素子に過剰な電流が流れて破壊されることを防ぐためのものである。保護素子250としては、例えば、Siで形成されたツェナーダイオードを使用できる。
【0030】
(温度測定素子260)
温度測定素子260は、周辺の温度を測定するための温度センサとして利用される素子である。温度測定素子260としては、例えば、サーミスタを使用できる。
【0031】
(配線270)
配線270は、2つの構成要素間の電気的な接続に用いられる。配線270としては、例えば、金属のワイヤを用いることができる。
【0032】
(光学部材280)
光学部材280は、蓋部281と、凸部282とを有する。蓋部281は、上面281aと、上面の反対面である下面281bと、上面281a及び下面281bと交わる1または複数の側面281cとを有する。1または複数の側面281cは上面281aの外縁と下面281bの外縁とを接続する。蓋部281は、例えば、直方体又は立方体である。この場合、蓋部281の上面281a及び下面281bは何れも矩形であり、蓋部281は4つの矩形の側面281cを有する。
【0033】
ただし、蓋部281は、直方体や立方体には限定されない。すなわち、蓋部281の平面形状は矩形には限定されず、円形、楕円形、多角形等の任意の形状とすることが可能である。
【0034】
凸部282は、蓋部281の下面281bから下方に突出している。凸部282は、側面282cを有する下凸形状の透光性部材である。なお、図3の例では、凸部282の側面282cは、蓋部281の下面281bと交わる。
【0035】
凸部282の中心軸Oは、例えば、蓋部281の下面281bと直交する。中心軸Oは、例えば、凸部282の任意の位置で、下面281bに平行に切断された凸部282の切断面における重心と、この位置とは異なる位置で、下面281bに平行に切断された凸部282の切断面における重心と、を結ぶ仮想的な直線とすることができる。なお、このときの2点の重心は重ならない。
【0036】
凸部282は、凸部282の中心軸Oを通る何れかの縦断面視において、下側から上側(蓋部側)に行くにしたがって拡幅する形状である。凸部282は、例えば、中心軸Oに対して回転対称である。
【0037】
凸部282は、例えば、蓋部281の下面281bから下側に凸となる錐体状又は錐台状である。ここで、錐体状又は錐台状は、厳密に錐体状又は錐台状である形状の他、例えば、円錐状や円錐台状で側面が曲面を有する形状等も含むものである。本実施形態では、一例として、凸部282が円錐台状であり、断面視において凸部282の側面282cは、凸部282の外側に膨らむ曲線状である。
【0038】
蓋部281及び凸部282は、例えば、ガラスを主材料にして一体的に形成されている。なお、蓋部281と凸部282とを別体とし、透光性接着剤等により両者を接合してもよい。この場合、例えば、上面281a及び下面281bを有する板状の蓋部281と、上面及び側面282cを有する凸状の凸部282とを用意し、蓋部281の下面281bに凸部282の上面を接合させることで、光学部材280を形成することができる。この場合、蓋部281は、例えば、ガラス、サファイア、炭化ケイ素等を含む透光性の材料を主材料にして形成できる。凸部282は、例えば、ガラスを主材料にして形成できる。凸部282の主材料となるガラスとしては、例えば、石英や硼珪酸ガラス等が挙げられる。
【0039】
あるいは、板状の蓋部281の所定位置に貫通孔を設け、貫通孔内に凸部282を部分的に挿入し、凸部282の一部を蓋部281よりも下方に突出させた状態で、貫通孔の内側面と凸部282の側面282cの一部とを接合してもよい。この場合、蓋部281は、例えば、ガラス、サファイア、石英、炭化ケイ素等を含む透光性の材料を主材料に使用できるが、金属等を含む遮光性の材料を使用してもよい。この場合も、凸部282は、透光性の材料、例えば、ガラスを主材料にして形成できる。
【0040】
(波長変換部材290)
波長変換部材290は、波長変換部291と、光反射部292とを有する。波長変換部291は、上面と、上面の反対面である下面と、上面及び下面と交わる1または複数の側面とを有する。1または複数の側面は、上面の外縁と下面の外縁とを接続する。波長変換部291は、例えば、直方体又は立方体である。この場合、波長変換部291の上面及び下面は何れも矩形であり、波長変換部291は4つの矩形の側面を有する。ここでいう矩形とは、長方形又は正方形である。
【0041】
ただし、波長変換部291は、直方体や立方体には限定されない。すなわち、波長変換部291の平面形状は矩形には限定されず、円形、楕円形、多角形等の任意の形状とすることが可能である。
【0042】
波長変換部291は、下面から入射した光を異なる波長の光に変換し、変換された光を上面から出射できる。波長変換部291は、入射した光の一部を出射してもよい。波長変換部291は、入射した光をすべて異なる波長の光に変換してもよい。この場合、波長変換部291に入射した光は、波長変換部291から出射されない。波長変換部291は、主材料に蛍光体を含有させて形成できる。
【0043】
波長変換部291には、光が照射されるため、波長変換部291の母材は、光の照射により分解されにくい無機材料を主材料に用いて形成することが好ましい。主材料は、例えば、セラミックスである。主材料に用いられるセラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、又は酸化マグネシウムが挙げられる。セラミックスの主材料は、波長変換部291に熱による変形や変色等の変質が生じないように、融点が1300℃~2500℃の材料を選択することが好ましい。波長変換部291は、例えば、セラミックスを主材料として形成された焼結体である。
【0044】
波長変換部291は、例えば、蛍光体と酸化アルミニウム等の透光性材料とを焼結させて形成できる。蛍光体の含有量は、セラミックスの総体積に対して0.05体積%~50体積%とすることができる。また、例えば、蛍光体の紛体を焼結させた、実質的に蛍光体のみからなるセラミックスを用いてもよい。また、波長変換部291は、蛍光体の単結晶で形成されてもよい。
【0045】
蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)SiO)、αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体等が挙げられる。なかでも、YAG蛍光体は、耐熱性が良好である。
【0046】
例えば、波長変換部291がYAG蛍光体を有する場合、下面から青色の励起光が入射すると、青色の励起光と蛍光とを組み合わせて白色光を上面から出射できる。
【0047】
光反射部292は、例えば、矩形状の開口を有する枠状部材である。光反射部292は、上面と、上面の反対面である下面と、上面の内縁と下面の内縁とを接続する1または複数の内側面と、上面の外縁と下面の外縁とを接続する1または複数の外側面とを有する。上面の外縁及び内縁、下面の外縁及び内縁は、例えば、矩形である。この場合、光反射部292は、4つの矩形の内側面と、4つの矩形の外側面とを有する。ただし、上面の外縁及び内縁、下面の外縁及び内縁は、矩形には限定されず、円形、楕円形、多角形等の任意の形状とすることが可能である。
【0048】
光反射部292は、例えば、セラミックスを主材料として形成された焼結体である。主材料に用いられるセラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、酸化アルミニウムは高反射率である点で好ましい。なお、光反射部292は、セラミックスを主材料としなくてもよい。光反射部292は、例えば、金属や、セラミックスと金属の複合体等を用いて形成されてもよい。
【0049】
波長変換部材290において、光反射部292の内側面は、波長変換部291の側面と接続する。波長変換部材290は、平板形状であり、例えば、直方体である。
【0050】
波長変換部291の上面と光反射部292の上面は、例えば、連続する1つの平面を形成してもよい。また、波長変換部291の下面と光反射部292の下面は、例えば、連続する1つの平面を形成してもよい。波長変換部291の上面及び/又は下面は、光反射部292の上面及び/又は下面よりも突出した形状であってもよい。この場合は、波長変換部291の側面の一部が、光反射部292の内側面と接続する。
【0051】
波長変換部材290は、波長変換部291と光反射部292とを一体的に形成することで、形成することができる。波長変換部291と光反射部292を別々に形成し、これらを接合して波長変換部材290を形成してもよい。波長変換部291と光反射部292とは、例えば、焼結体によって一体に形成される。例えば、波長変換部291の焼結体を形成した上で、波長変換部291と一体的に光反射部292の焼結体を形成することで、一体焼結体を形成することができる。このとき、波長変換部291の形成工程、及び、光反射部292の形成工程のそれぞれにおいて、形成される焼結体に含まれる空隙の割合(空隙率)を調整することも可能である。空隙率は、焼結条件(焼結温度、焼結時間、昇温速度)、材料の粒径、焼結助剤の濃度等により調整できる。
【0052】
例えば、同じセラミックスを主材料として波長変換部291と光反射部292を形成する場合、光反射部292の空隙率を波長変換部291の空隙率よりも大きくする。つまり、光反射部292が波長変換部291よりも多くの空隙を含むように複合部材13を形成する。この場合、光反射部292の空隙率が10%程度となるように、焼結条件を調整することが好ましい。これにより、波長変換部291の側面と光反射部292の内側面との境界に空気による反射領域が形成され、波長変換部291側から光反射部292の内側面に当たる光を波長変換部291側に反射させることができる。
【0053】
(発光装置200)
基部210の底面210eには、保護素子250と温度測定素子260とが配置される。保護素子250は、基部210の底面210eに形成された金属膜に配置され、接合される。温度測定素子260は、基部210の底面210eに形成された金属膜に配置され、接合される。
【0054】
基部210の底面210eには、複数のサブマウント230(図4では4つのサブマウント230)が配置されている。複数のサブマウント230は、それぞれその下面が基部210の底面210eに接合されている。複数のサブマウント230は、例えば、平面視において、長手方向が基部210の対角線方向を向くように配置される。複数のサブマウント230には、平面視において、基部210の対角線上に配置される2つのサブマウント230を含むことができる。複数のサブマウント230には、基部210の複数の対角線のそれぞれにおいて、対角線上に配置される2つのサブマウント230を含んでよい。複数のサブマウント230は、中心軸Oから等しい間隔をあけて配置されることができる。
【0055】
複数の半導体レーザ素子220は、基部210の底面210eに配置されている。具体的には、半導体レーザ素子220は、サブマウント230に配置されている。図4に示される発光装置200の例では、第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、第3半導体レーザ素子220C、及び第4半導体レーザ素子220Dが、それぞれ異なるサブマウント230の上面に配置されている。そして、それぞれのサブマウント230の下面は、基部210の底面210eに接合されている。
【0056】
第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、第3半導体レーザ素子220C、及び第4半導体レーザ素子220Dは、例えば、図3及び図4に示す点SPに対して点対称に配置されている。点SPは、凸部282の中心軸Oを基部210の底面210eの方向に延長した線上に位置する。すなわち、点SPは、平面視で凸部282の中心(または中心軸O)と一致する。なお、複数の半導体レーザ素子220を点SPに対して点対称に配置することは、必須ではない。例えば、複数の半導体レーザ素子220を点SPに対して非対称に配置することで、発光装置200から出射される光のビーム形状を調整可能である。
【0057】
半導体レーザ素子220は、平面視で、出射端面が、基部210の内側面210c又は外側面210dと平行及び垂直にならない。つまり、半導体レーザ素子220は、平面視で、基部210の内側面210c及び外側面210dに対して出射端面が斜めになるように配置される。半導体レーザ素子220は、例えば、平面視で、基部210の何れかの内側面210c及び外側面210dに対して出射端面が45度になるように配置される。
【0058】
基部210の底面210eにおいて、平面視で凸部282を通る仮想的な第1直線によって二分される領域のうち一方に第1半導体レーザ素子220Aが、他方に第2半導体レーザ素子220Bが配置される。図4を参照すれば、例えばLを第1直線とすることができる。そして、第1半導体レーザ素子220Aと第2半導体レーザ素子220Bを結ぶ仮想的な第2直線は、凸部282を通る。図4を参照すれば、例えばLを第2直線とすることができる。
【0059】
また、基部210の底面210eにおいて、平面視で凸部282を通る仮想的な第3直線によって二分される領域のうち一方に第3半導体レーザ素子220Cが、他方に第4半導体レーザ素子220Dが配置される。図4を参照すれば、例えばLを第3直線とすることができる。そして、第3半導体レーザ素子220Cと第4半導体レーザ素子220Dを結ぶ仮想的な第4直線は、凸部282を通る。図4を参照すれば、例えばLを第4直線とすることができる。
【0060】
なお、図4に示す二点鎖線Lは仮想的な第1直線及び第4直線の一例であり、二点鎖線Lは仮想的な第2直線及び第3直線の一例である。第1直線乃至第4直線は全て、凸部282の中心軸Oを通っているが、中心軸Oを通らなくてもよい。第1直線と第2直線とは直交しているが、直交していなくてもよい。第3直線と第4直線とは直交しているが、直交していなくてもよい。第1直線と第4直線とは、同じ直線でなくてもよい。第2直線と第3直線とは、同じ直線でなくてもよい。
【0061】
半導体レーザ素子220が配されたサブマウント230は、発光装置200において、半導体レーザ素子220から発生した熱を逃がす放熱部材としての役割を果たしている。サブマウント230を放熱部材として機能させるには、半導体レーザ素子220よりも熱伝導率の良い材料で形成すればよい。
【0062】
また、サブマウント230は、発光装置200において、半導体レーザ素子220の光の出射位置を調整する役割を果たすことができる。サブマウント230は、例えば、半導体レーザ素子220の光軸を通る光が底面210eと平行になるようにし、かつ、半導体レーザ素子220からの光を凸部282の所定の位置に照射させたい場合に、サブマウント230を調整部材として使用できる。なお、ここでの平行は、±3度以内の差を許容する。
【0063】
半導体レーザ素子220、保護素子250、及び温度測定素子260は、対応する配線270を介して基部210の底面210eに設けられた金属膜と電気的に接続されている。これらの素子と外部電源との電気的な接続には、基部210の底面210eに設けられた金属膜を利用する。これにより、基部210の上面210aの金属膜を介して、これらの素子と外部電源とを電気的に接続できる。
【0064】
光学部材280は、基部210の上面側に配置されている。詳細には、光学部材280の蓋部281は基部210の枠に支持され、枠に囲まれる複数の半導体レーザ素子220の上方に配置されている。蓋部281の下面281bの外周部は、例えば、基部210の段差部216の上面と接合されている。
【0065】
蓋部281が基部210に接合されることで、半導体レーザ素子220が配された閉空間が形成される。この閉空間は、例えば、気密封止された状態で形成される。気密封止されることで、半導体レーザ素子220の光の出射端面に有機物等が集塵することを抑制できる。
【0066】
光学部材280の凸部282は、蓋部281の半導体レーザ素子220側の面である下面281bから基部210の底面210e側に向かって突出する1つの凸部である。凸部282の先端部(底面210e側の端部)は、半導体レーザ素子220の出射端面よりも下側(底面210e側)に配置されている。発光装置200の低背化の観点からは、凸部282の先端部は底面210e側に近付けられる程好ましいといえる。
【0067】
波長変換部材290は、蓋部281の上方に配置される。つまり、波長変換部材290は、光学部材280の蓋部281の上面281a側に配置される。波長変換部材290の光反射部292の外周部は、例えば、蓋部281の上面281aよりも高い位置にある基部210の上面210aと接合されている。波長変換部材290において、波長変換部291の下面及び光反射部の292の下面と、蓋部281の上面281aとの間には隙間があり、両者は接していない。両者を接さないようにすることで、光学部材280と波長変換部材290の実装位置をそれぞれ調整しやすくなる。光学部材280の蓋部281の厚み(言い換えれば、蓋部281の下面281bから上面281aまでの高さ)は、段差部216の高さ(言い換えれば、段差部216の側面の幅)以下であることが好ましい。波長変換部291は、中心軸Oを含み、凸部282と平面視で重複する位置にある。
【0068】
光反射部292の下面側に、破壊検知の仕組みを設けてもよい。破壊検知の仕組みは、例えば、光反射部292の下面側に設けられた所定形状の配線パターンで実現できる。例えば、光反射部292の下面側に設けた配線パターンを、発光装置200の外部に配置した検知回路と電気的に接続する。そして、検知回路で配線パターンの抵抗値の変化をモニタし、抵抗値が所定の閾値を超えて変化したときに、波長変換部材290の破壊を検知できる。
【0069】
図5は、半導体レーザ素子が発光したときの光の進み方を模式的に示す図である。図6は、図5の凸部近傍の拡大図である。
【0070】
図5及び図6に示す第1半導体レーザ素子220A及び第2半導体レーザ素子220Bを含む4つの半導体レーザ素子のそれぞれの出射端面から出射された光は、凸部282と凸部282の周辺環境との境界である境界面から凸部282内に入射する。ここで、凸部282の周辺環境とは、例えば、空気、真空、空気以外の特定の気体等であり、側面282cが周辺環境との境界面となる。
【0071】
凸部282の境界面において、第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、第3半導体レーザ素子220C、及び第4半導体レーザ素子220Dからの光が入射するそれぞれの入射領域は、互いに離れている。
【0072】
例えば、平面視において、第1半導体レーザ素子220Aからの光が入射する入射領域と、第2半導体レーザ素子220Bからの光が入射する入射領域とは、中心軸Oを挟んで互いに対向する。また、例えば、平面視において、第3半導体レーザ素子220Cからの光が入射する入射領域と、第4半導体レーザ素子220Dからの光が入射する入射領域とは、中心軸Oを挟んで互いに対向する。
【0073】
凸部282の境界面において、第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、第3半導体レーザ素子220C、及び第4半導体レーザ素子220Dからの光が入射する入射領域には、反射防止膜を設けることが好ましい。これにより、それぞれの半導体レーザ素子からの光の入射領域における反射を防止することができる。例えば、反射防止膜を設けることにより、それぞれの半導体レーザ素子の出射光のうち99.5%程度を凸部282内に入射させることができる。反射防止膜は、例えば、Nb/SiO、Ta/SiO、Al/SiO、ZrO/SiO、ZrO/Al等の誘電体多層膜を1または複数積層させて形成することができる。なお、凸部282の側面282cの全体に反射防止膜を設けてもよい。
【0074】
境界面の入射領域から凸部282内に入射したそれぞれの半導体レーザ素子からの光は、境界面の入射領域でやや上側(蓋部281側)に屈折して直進し、凸部282内を通り、凸部282の境界面の反射領域に達する。それぞれの半導体レーザ素子について、反射領域は、例えば、中心軸Oを挟んで入射領域と対向する位置にある。
【0075】
凸部282の境界面において、第1半導体レーザ素子220Aからの光が入射する入射領域の少なくとも一部は、第2半導体レーザ素子220Bから凸部282へ入射した光が反射される反射領域でもある。また、凸部282の境界面において、第2半導体レーザ素子220Bからの光が入射する入射領域の少なくとも一部は、第1半導体レーザ素子220Aから凸部282へ入射した光が反射される反射領域でもある。第3半導体レーザ素子220C及と第4半導体レーザ素子220Dについても同様のことが成立する。
【0076】
第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、第3半導体レーザ素子220C、及び第4半導体レーザ素子220Dから出射される光は、凸部282の境界面に入射してから凸部282の境界面によって反射されるまでの間で、互いに交差する。
【0077】
例えば、第1半導体レーザ素子220Aから凸部282に入射した光の少なくとも一部は、凸部282で反射するまでの間に第2半導体レーザ素子220Bから凸部282に入射した光と交差する。また、第2半導体レーザ素子220Bから凸部282に入射した光の少なくとも一部は、凸部282で反射するまでの間に第1半導体レーザ素子220Aから凸部282に入射した光と交差する。第3半導体レーザ素子220C及と第4半導体レーザ素子220Dについても同様のことが成立する。
【0078】
境界面の反射領域に達した光は、反射領域において反射されて蓋部281側に進み、蓋部281を透過する。反射面は、断面視において、底面210e側から蓋部281側に近づくにつれて中心軸Oから離れる方向に傾斜するとともに、凸部282の外側に膨らむ曲線状である。そのため、反射面で反射されたそれぞれの光は収束光となり、例えば、中心軸Oに近づく方向に進む。反射領域で反射されたそれぞれの光は、互いに交差してもよい。なお、反射面で反射された光を収束光とするには、反射面を多面形状としてもよい。この場合、反射面は、断面視において屈曲した直線状となる。
【0079】
反射領域は、反射領域に達する光のピーク波長に対する光反射率が90%以上であることが好ましい。反射領域に達する光は、凸部282の材料(例えば、ガラス)と周辺環境(例えば、空気)との屈折率差により反射領域で全反射されることがより好ましい。全反射を用いることにより、半導体レーザ素子220から出射された光の99%以上を波長変換部291に入射させることが可能である。
【0080】
なお、凸部282の主材料がガラスである場合、屈折率は1.4~1.8程度である。周辺環境が空気である場合、屈折率は1であるから、凸部282の主材料がガラスであれば、凸部282と空気との境界面で全反射が可能である。
【0081】
蓋部281を透過した光は、波長変換部材290の波長変換部291に入射し、波長変換部291は、蓋部281を透過し第1の光を異なる波長の第2の光に変換する。蓋部281を透過した第1の光、及び/又は波長変換部291で波長変換された第2の光は、波長変換部291の上面から発光装置200の外部に出射される。
【0082】
なお、波長変換により生じる熱が特定の箇所に集中すると波長変換部291による光の変換効率が低下しやすいため、波長変換部291に入射する光の分布はより均一的に拡がっている方が好ましい。例えば、4つの半導体レーザ素子220のそれぞれから出射されたレーザ光の光強度の強い部分が重ならないようにすることが好ましい。例えば、境界面の反射領域の傾斜度合い及び曲率を調整することで、このような制御が可能である。
【0083】
発光装置200は、例えば、車載ヘッドライトに利用できる。また、発光装置200は、これに限らず、照明、プロジェクター、ヘッドマウントディスプレイ、その他ディスプレイのバックライト等の光源に利用できる。
【0084】
このように、発光装置200では、ミラーとして機能する1つの凸部282を、蓋部281の下面281bに、基部210の底面210e側に突出するように設けている。その結果、以下に記載する効果を奏する。
【0085】
すなわち、発光装置の底面側に各半導体レーザ素子が配置され、さらに、1つの半導体レーザ素子に対して1つのミラーが配置される構造と比べて、発光装置の底面側にミラーの実装スペースを用意しなくてよいため、発光装置の小型化が可能となる。
【0086】
また、発光装置200では、凸部282と半導体レーザ素子220とを両者が接触しない程度に近接して配置できるため、反射領域に照射される光の拡がりを抑えることができ、小型化に有利である。
【0087】
また、発光装置200では、凸部282の先端部(底面210e側の端部)を、半導体レーザ素子220の出射端面よりも下側(底面210e側)に配置することで、発光装置200の低背化が可能である。
【0088】
また、発光装置200では、ミラーとして機能する1つの凸部282に対して複数の半導体レーザ素子220を対称に配置するだけで、それぞれの半導体レーザ素子220から出射される光を凸部282入射させ、その後反射させることが可能である。そのため、半導体レーザ素子220の個数を増やした場合でも、光学設計が容易である。
【0089】
また、発光装置200では、ミラーとして機能する1つの凸部282により、それぞれの半導体レーザ素子220から出射される光を反射させるので、ミラーの中心軸に対称となるように各光路を統一させることが可能である。
【0090】
また、蓋部281の光が透過する領域及び凸部282を、ガラスを主材料にして形成することで、半導体レーザ素子220から出射される光の偏光特性を保持できる。
【0091】
また、凸部282における反射に全反射を用いることにより、従来の発光装置における金属膜や誘電体多層膜等を成膜したミラーの反射面と比較して、光の反射率を向上できる。
【0092】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例では、第1実施形態とは半導体レーザ素子の個数が異なる発光装置の例を示す。なお、第1実施形態の変形例において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0093】
図7は、半導体レーザ素子と凸部との位置関係を例示する模式平面図(その1)である。図7に示す発光装置200Aのように、蓋部の下面に平面形状が長方形状の凸部283を設け、凸部283の対向する長辺の外側に半導体レーザ素子220を3つずつ互いに離隔して配置してもよい。例えば、凸部283を挟んで互いに対向する2つの半導体レーザ素子220が3組配置される。もちろん、凸部283の長辺を長くすることで、さらに多くの半導体レーザ素子220を配置可能である。
【0094】
凸部283の短手方向の縦断面形状は、例えば、円錐状や円錐台状である。凸部283の長手方向の縦断面形状は、例えば、長方形状である。
【0095】
図8は、半導体レーザ素子と凸部との位置関係を例示する模式平面図(その2)である。図8に示す発光装置200Bのように、蓋部の下面に平面形状が長方形状の凸部284を設け、凸部284の対向する長辺の外側に半導体レーザ素子220を2つずつ互いに離隔して配置してもよい。例えば、凸部284を挟んで互いに対向する2つの半導体レーザ素子220が2組配置される。凸部284の長辺の同一側に配置される2つの半導体レーザ素子220は、1つのサブマウント230上に配置されてもよい。これにより、発光装置を小型化できる。
【0096】
凸部284の短手方向の縦断面形状は、例えば、円錐状や円錐台状である。凸部284の長手方向の縦断面形状は、例えば、長方形状である。
【0097】
図9は、半導体レーザ素子と凸部との位置関係を例示する模式平面図(その3)である。図9に示す発光装置200Cように、蓋部の下面に平面形状が楕円形状の凸部285を設け、凸部285の周囲に沿って6つの半導体レーザ素子220を互いに離隔して配置してもよい。例えば、凸部285を挟んで互いに対向する2つの半導体レーザ素子220が1組配置され、この対向する半導体レーザ素子220のそれぞれの両側に2つの半導体レーザ素子220が対向する半導体レーザ素子220に対して斜めに配置される。
【0098】
凸部285の短手方向の縦断面形状は、例えば、円錐状や円錐台状である。凸部285の長手方向の縦断面形状は、例えば、短手方向の縦断面形状と高さが等しく底面が長い円錐状や円錐台状である。
【0099】
このように、蓋部の下面側に設けられる凸部の形状と、半導体レーザ素子の個数や配置を選択することで、種々のパターンの配光特性を実現可能である。
【0100】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、第1実施形態とは異なる光学部材を有する発光装置の例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0101】
図10は、第2実施形態に係る発光装置を例示する断面図であり、図3に対応する断面を示している。図11は、図10の凸部近傍を拡大するとともに、半導体レーザ素子が発光したときの光の進み方を模式的に示す図である。
【0102】
図10及び図11に示すように、発光装置300は、波長変換部材290を有していない点、及び光学部材280が光学部材380に置換された点が、発光装置200(図1図6参照)と相違する。発光装置300から光学部材380を除いた状態の平面図は、図4と同様となる。なお、発光装置300は、波長変換部材290を有していないため、基部210には、波長変換部材290を配置する段差は設けなくてよい。
【0103】
(光学部材380)
光学部材380は、蓋部281と、凸部382とを有する。凸部382は、蓋部281の下面281bから下方に突出している。凸部382は、底面と、底面と交わる側面382cを有する下凸形状の透光性部材であり、中心軸Oに対して回転対称である。
【0104】
発光装置200では、凸部282が円錐台状であり、断面視において凸部282の側面282cが凸部282の外側に膨らむ曲線状であった。これに対して、発光装置300では、凸部382が円錐台状であり、断面視において凸部382の側面382cが直線状である。
【0105】
光学部材280と同様に、光学部材380において、蓋部281と凸部382とは一体成型されたものであってもよいし、別体を透光性接着剤等により接合したものであってもよい。凸部382は、凸部282と同様に、例えば、ガラスを主材料にして形成できる。
【0106】
(発光装置300)
図11に示す第1半導体レーザ素子220A及び第2半導体レーザ素子220Bを含む4つの半導体レーザ素子のそれぞれの出射端面から出射された光の進み方は、境界面の反射領域に達するまでは発光装置200の場合と同様である。ただし、発光装置300において、境界面の反射領域に達した光が反射領域で反射されて進む方向は、発光装置200の場合と異なる。
【0107】
すなわち、発光装置200では、断面視において凸部282の側面282cが凸部282の外側に膨らむ曲線状であるため、境界面の反射領域に達した光は、曲面状の反射領域で反射されて中心軸Oに近づく方向に収束しながら進んでいた。一方、発光装置300では、断面視において凸部382の側面382cが直線状であるため、境界面の反射領域に達した光は、直線状の反射領域で反射されて発散しながら蓋部281側に進み、蓋部281の上面281aに達する。
【0108】
蓋部281の上面281aに達した光は、蓋部281を透過する際に周辺環境との境界面で屈折して更に発散し、発散光が蓋部281の上面281aから出射される。発光装置300は、波長変換部材290を有していないため、蓋部281の上面281aから出射される発散光が、発光装置300の出射光となる。
【0109】
発光装置300は、例えば、車載ヘッドライト、照明、プロジェクター、ヘッドマウントディスプレイ、その他ディスプレイ等の光源に利用できる。
【0110】
このように、発光装置300では、発光装置200と同様に、ミラーとして機能する1つの凸部382を、蓋部281の下面281bに、基部210の底面210e側に突出するように設けている。その結果、発光装置の小型化が可能となるなど、発光装置200と同様の効果を奏する。
【0111】
また、発光装置300では、凸部382を円錐台状とし、断面視において凸部382の側面382cを直線状としたことにより、発散光を得ることが容易である。
【0112】
〈第3実施形態〉
第3実施形態では、蓋部の半導体レーザ素子側の面とは反対側の面にレンズ部を有する発光装置の例を示す。なお、第3実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0113】
図12は、第3実施形態に係る発光装置を例示する断面図であり、図3に対応する断面を示している。図13は、図12の凸部近傍を拡大するとともに、半導体レーザ素子が発光したときの光の進み方を模式的に示す図である。
【0114】
図12及び図13に示すように、発光装置400は、光学部材380が光学部材480に置換された点が、発光装置300(図10及び図11参照)と相違する。
【0115】
(光学部材480)
光学部材480は、蓋部281と、凸部482と、レンズ部483とを有する。凸部482は、蓋部281の下面281bから下方に突出している。凸部482は、底面と、底面と交わる側面482cを有する下凸形状の透光性部材であり、中心軸Oに対して回転対称である。
【0116】
凸部482は、発光装置200の凸部282と同様に、円錐台状であり、断面視において凸部482の側面482cが凸部482の外側に膨らむ曲線状である。しかし、凸部482の側面482cの曲率は、凸部282の側面282cの曲率よりも小さく、断面視において側面482cは直線に近い緩やかな曲線である。
【0117】
レンズ部483は、蓋部281の上面281aに設けられている。レンズ部483は、蓋部281の上面281aから上方に突出する例えばドーム型の凸レンズである。レンズ部483の湾曲面483aは、例えば、非球面である。
【0118】
レンズ部483は、平面視で凸部482と重複する位置に設けられる。レンズ部483の中心軸は、例えば、中心軸Oと一致する。レンズ部483と凸部482の平面形状が何れも円形である場合、レンズ部483の最大径(蓋部281の上面281aとの境界部の径)は、凸部482の最大径(蓋部281の下面281bとの境界部の径)よりも大きいことが好ましい。
【0119】
光学部材480において、蓋部281と凸部482とレンズ部483とはすべて一体であってもよいし、別体を透光性接着剤等により接合したものであってもよい。凸部482及びレンズ部483は、例えば、ガラスを主材料にして形成できる。
【0120】
(発光装置400)
図13に示す第1半導体レーザ素子220A及び第2半導体レーザ素子220Bを含む4つの半導体レーザ素子のそれぞれの出射端面から出射された光は、発光装置300の場合と同様に境界面の反射領域に達する。境界面の反射領域に達した光は、直線に近い曲線状の反射領域で反射されて緩やかに発散しながら蓋部281側に進み、レンズ部483の湾曲面483aに達する。
【0121】
レンズ部483の湾曲面483aに達した光は、レンズ部483を透過する際に周辺環境との境界面で屈折して平行光となり、平行光がレンズ部483の湾曲面483aから出射される。発光装置400は、波長変換部材290を有していないため、レンズ部483の湾曲面483aから出射される平行光が、発光装置400の出射光となる。
【0122】
発光装置400は、例えば、車載ヘッドライト、照明、プロジェクター、ヘッドマウントディスプレイ、その他ディスプレイ等の光源に利用できる。
【0123】
このように、発光装置400では、発光装置200と同様に、ミラーとして機能する1つの凸部482を、蓋部281の下面281bに、基部210の底面210e側に突出するように設けている。その結果、発光装置の小型化が可能となるなど、発光装置200と同様の効果を奏する。
【0124】
また、発光装置400では、レンズ部483がコリメートレンズとして機能し、複数の半導体レーザ素子220からの出射光をまとめてコリメートできる。その結果、発光装置400から平行光を得ることが容易である。なお、レンズ部483による光学制御は、コリメートに限らなくてよい。
【0125】
〈第4実施形態〉
第4実施形態では、半導体レーザ素子同士が対向していない発光装置の例を示す。なお、第4実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0126】
第4実施形態に係る発光装置の斜視図は図1と同様であり、第4実施形態に係る発光装置の平面図は図2と同様である。図14は、第4実施形態に係る発光装置から波長変換部材及び光学部材を除いた状態の平面図である。なお、図14では、便宜上、凸部282及び波長変換部291が投影される位置を破線で示している。図15は、半導体レーザ素子が発光したときの光の進み方を模式的に示す図である。図15は、図2の波長変換部291の中心を通り光反射部292の長辺に平行な線に沿う断面を示している。
【0127】
図14及び図15に示すように、発光装置500は、3つの半導体レーザ素子を有する点が、4つの半導体レーザ素子を有する発光装置200(図1図4等参照)と相違する。発光装置500は、第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、及び第3半導体レーザ素子220Cを有している。
【0128】
発光装置500において、第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、及び第3半導体レーザ素子220Cは、互いに対向していない。第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、及び第3半導体レーザ素子220Cは、例えば、点SPを中心として3回回転対称に配置される。この場合、図14において、第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、及び第3半導体レーザ素子220Cを点SPを中心に時計回りに120度回転させると、第1半導体レーザ素子220Aは回転前の第2半導体レーザ素子220Bの位置に来る。同様に、第2半導体レーザ素子220B及び第3半導体レーザ素子220Cは、それぞれ回転前の第3半導体レーザ素子220C及び第1半導体レーザ素子220Aの位置に来る。
【0129】
第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、及び第3半導体レーザ素子220Cから出射される光の発光ピーク波長は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、及び第3半導体レーザ素子220Cから出射される光の発光ピーク波長が異なる場合、例えば、第1半導体レーザ素子220Aが赤、第2半導体レーザ素子220Bが緑、第3半導体レーザ素子220Cが青に対応する発光ピーク波長を有してもよい。
【0130】
第1半導体レーザ素子220A、第2半導体レーザ素子220B、及び第3半導体レーザ素子220Cのそれぞれの出射端面から出射された光は、凸部282と凸部282の周辺環境との境界である境界面から凸部282内に入射する。凸部282内に入射したそれぞれの半導体レーザ素子からの光は、境界面の入射領域でやや上側(蓋部281側)に屈折して直進し、凸部282内を通り、凸部282の境界面の反射領域に達する。境界面の反射領域に達した光は、反射領域において反射されて蓋部281側に進み、蓋部281を透過する。蓋部281を透過した光は、波長変換部材290の波長変換部291に入射し、波長変換部291は、蓋部281を透過し第1の光を異なる波長の第2の光に変換する。蓋部281を透過した第1の光、及び/又は波長変換部291で波長変換された第2の光は、波長変換部291の上面から発光装置500の外部に出射される。
【0131】
発光装置500のように、半導体レーザ素子同士が対向しないように配置してもよい。この場合も、発光装置500の小型化等、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、第2実施形態及び第3実施形態においても、半導体レーザ素子の個数及び配置を第4実施形態と同様にすることができる。
【0132】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、前述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、前述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0133】
200、200A、200B、200C、300、400、500 発光装置
210 基部
210a、281a 上面
210b、281b 下面
210c 内側面
210d 外側面
210e 底面
216 段差部
220 半導体レーザ素子
220A 第1半導体レーザ素子
220B 第2半導体レーザ素子
220C 第3半導体レーザ素子
220D 第4半導体レーザ素子
230 サブマウント
250 保護素子
260 温度測定素子
270 配線
280、380、480 光学部材
281 蓋部
281c、282c、382c、482c 側面
282、283、284、285、382、482 凸部
290 波長変換部材
291 波長変換部
292 光反射部
483 レンズ部
483a 湾曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15