(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】顕微鏡対物レンズ、顕微鏡装置、および顕微鏡光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 21/02 20060101AFI20240710BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G02B21/02
G02B21/00
(21)【出願番号】P 2022516980
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2021015352
(87)【国際公開番号】W WO2021215311
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020074551
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】楠井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼砂 和浩
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-271693(JP,A)
【文献】特開2014-048342(JP,A)
【文献】特開2016-085335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に並んだ、正の屈折力を有して物体からの光束を収斂光束にする第1レンズ群と、負の屈折力を有して前記第1レンズ群からの収斂光束を受ける第2レンズ群とからなり、
以下の条件式を満足する顕微鏡対物レンズ。
14.0[mm]≦NA×f
1.0<H1/H0
0.50≦L1/TL≦0.75
但し、NA:前記顕微鏡対物レンズの開口数
f:前記顕微鏡対物レンズの焦点距離
H1:前記第1レンズ群における軸上物点からのマージナル光線の高さの最大値
H0:前記第2レンズ群の最も像側のレンズ面における前記マージナル光線の高さ
L1:前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から、前記第1レンズ群における前記マージナル光線の高さが最も高いレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から、前記第2レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
【請求項2】
前記第2レンズ群は、前記第1レンズ群からの収斂光束を平行光束にする
請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
【請求項3】
前記第2レンズ群は、物体側から順に並んだ、像側のレンズ面が凹面である第1レンズ成分と、物体側のレンズ面が凹面である第2レンズ成分とを有し、
以下の条件式を満足する
請求項1または2に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.75≦L2/TL≦0.90
但し、L2:前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から、前記第1レンズ成分の像側のレンズ面および前記第2レンズ成分の物体側のレンズ面のうち前記マージナル光線の高さが低い方のレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から、前記第2レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
【請求項4】
前記第1レンズ成分は、前記第2レンズ群の最も物体側に配置され、
前記第2レンズ成分は、前記第1レンズ成分の像側に並んで配置される
請求項3に記載の顕微鏡対物レンズ。
【請求項5】
以下の条件式を満足する
請求項1~4のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.75<f1/f<1.20
但し、f1:前記第1レンズ群の焦点距離
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズを備える顕微鏡装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズと、前記顕微鏡対物レンズからの光を結像させる結像レンズとを備える顕微鏡光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡対物レンズ、顕微鏡装置、および顕微鏡光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、広い視野を有する顕微鏡用の対物レンズが種々提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような対物レンズでは、広い視野を確保しつつ解像度を高くすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る顕微鏡対物レンズは、物体側から順に並んだ、正の屈折力を有して物体からの光束を収斂光束にする第1レンズ群と、負の屈折力を有して前記第1レンズ群からの収斂光束を受ける第2レンズ群とからなり、以下の条件式を満足する。
14.0[mm]≦NA×f
1.0<H1/H0
0.50≦L1/TL≦0.75
但し、NA:前記顕微鏡対物レンズの開口数
f:前記顕微鏡対物レンズの焦点距離
H1:前記第1レンズ群における軸上物点からのマージナル光線の高さの最大値
H0:前記第2レンズ群の最も像側のレンズ面における前記マージナル光線の高さ
L1:前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から、前記第1レンズ群における前記マージナル光線の高さが最も高いレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から、前記第2レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
【0005】
本発明に係る顕微鏡装置は、上述の顕微鏡対物レンズを備える。
【0006】
本発明に係る顕微鏡光学系は、上述の顕微鏡対物レンズと、前記顕微鏡対物レンズからの光を結像させる結像レンズとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。
【
図2】第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
【
図3】第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。
【
図4】第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
【
図5】第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。
【
図6】第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
【
図7】第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。
【
図8】第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
【
図11】顕微鏡装置の一例である蛍光顕微鏡を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各実施形態の顕微鏡対物レンズ、顕微鏡装置、および顕微鏡光学系について、図を参照して説明する。各実施形態では、視野が広くて解像度が高い顕微鏡対物レンズ、顕微鏡装置、および顕微鏡光学系について説明する。
【0009】
まず、第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズについて説明する。第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの一例として、
図1に示す顕微鏡対物レンズOL(1)は、物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とを有して構成される。第1レンズ群G1は、物体Obからの発散光束を集光して収斂光束にするレンズ群である。第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1からの収斂光束を受けるレンズ群である。また、第2レンズ群G2は、実用的には第1レンズ群G1からの収斂光束を平行光束にするように構成されてもよい。なお、
図1、
図3、
図5、
図7、
図10において、物体Obは光軸上の物点(すなわち、軸上物点)を示す。
【0010】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、以下の条件式(1)および条件式(2)を満足する。
14.0≦NA×f ・・・(1)
1.0<H1/H0 ・・・(2)
但し、NA:顕微鏡対物レンズOLの開口数
f:顕微鏡対物レンズOLの焦点距離
H1:第1レンズ群G1における軸上物点(Ob)からのマージナル光線の高さの最大値
H0:第2レンズ群G2の最も像側のレンズ面におけるマージナル光線の高さ
【0011】
第1実施形態によれば、条件式(1)および条件式(2)を満足することで、視野が広くて解像度が高い顕微鏡対物レンズを得ることが可能になる。第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、
図3に示す顕微鏡対物レンズOL(2)でもよく、
図5に示す顕微鏡対物レンズOL(3)でもよく、
図7に示す顕微鏡対物レンズOL(4)でもよい。
【0012】
条件式(1)は、顕微鏡対物レンズOLの開口数と、顕微鏡対物レンズOLの焦点距離との関係を規定する条件式である。条件式(1)を満足することで、広い視野を維持しつつ解像度を高くすることができる。なお、条件式(1)の下限値の単位は[mm]である。
【0013】
条件式(1)の対応値が下限値を下回ると、顕微鏡対物レンズOLの開口数を大きくするには、顕微鏡対物レンズOLの焦点距離を短くする必要があり、顕微鏡対物レンズOLの視野が狭くなる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(1)の下限値を好ましくは15.0[mm]としてもよい。また、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(1)の上限値を好ましくは20.0[mm]以下としてもよい。
【0014】
条件式(2)は、第1レンズ群G1における軸上物点(Ob)からのマージナル光線の高さの最大値と、第2レンズ群G2の最も像側のレンズ面におけるマージナル光線の高さとの関係を規定する条件式である。条件式(2)を満足することで、第1レンズ群G1において球面収差や軸上色収差等の軸上収差を良好に補正することができ、第2レンズ群G2において像面湾曲やコマ収差等の軸外収差を良好に補正することができる。なお、各実施形態において、マージナル光線とは、軸上物点(Ob)から出て入射瞳(射出瞳)の端を通る光線(すなわち、開口数が最大となる光線)である。
【0015】
条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群G1における軸上収差の補正効果が小さくなるため、第2レンズ群G2における収差補正の負荷が大きくなり、軸上収差の補正と軸外収差の補正を両立させることが困難になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(2)の下限値を好ましくは1.05としてもよい。また、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(2)の上限値を好ましくは1.5未満としてもよい。
【0016】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、次の条件式(3)を満足してもよい。
0.45≦L1/TL≦0.75 ・・・(3)
但し、L1:第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から、第1レンズ群G1における軸上物点(Ob)からのマージナル光線の高さが最も高いレンズ面までの光軸上の距離
TL:第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から、第2レンズ群G2の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
【0017】
条件式(3)は、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から、第1レンズ群G1におけるマージナル光線の高さが最も高いレンズ面までの光軸上の距離と、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から、第2レンズ群G2の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離との関係を規定する条件式である。条件式(3)を満足することで、第1レンズ群G1において球面収差や軸上色収差等の軸上収差を良好に補正することができる。
【0018】
条件式(3)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群G1における物体側のレンズのパワーが強くなり、高次の軸上収差が発生する。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(3)の下限値を好ましくは0.5としてもよい。
【0019】
条件式(3)の対応値が上限値を上回ると、第1レンズ群G1によって十分に収束した光を第2レンズ群G2に入射させるため、第1レンズ群G1におけるマージナル光線の高さが最も高いレンズ面より像側に配置されるレンズのパワーを強くする必要があり、高次の軸上収差が発生する。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(3)の上限値を好ましくは0.7としてもよい。
【0020】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、像側のレンズ面が凹面である第1レンズ成分と、物体側のレンズ面が凹面である第2レンズ成分とを有し、次の条件式(4)を満足してもよい。
0.75≦L2/TL≦0.90 ・・・(4)
但し、L2:第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から、第1レンズ成分の像側のレンズ面および第2レンズ成分の物体側のレンズ面のうち軸上物点(Ob)からのマージナル光線の高さが低い方のレンズ面までの光軸上の距離
TL:第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から、第2レンズ群G2の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
【0021】
条件式(4)は、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から、第1レンズ成分の像側のレンズ面および第2レンズ成分の物体側のレンズ面のうち軸上物点(Ob)からのマージナル光線の高さが低い方のレンズ面までの光軸上の距離と、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から、第2レンズ群G2の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離との関係を規定する条件式である。条件式(4)を満足することで、第2レンズ群G2において像面湾曲やコマ収差等の軸外収差を良好に補正することができる。なお、各実施形態において、レンズ成分は、単レンズ又は接合レンズを示すものである。また、第1レンズ成分は、第2レンズ群G2の最も物体側に配置され、第2レンズ成分は、第1レンズ成分の像側に並んで配置されてもよい。
【0022】
条件式(4)の対応値が下限値を下回ると、マージナル光線の高さが最も高いレンズ面とマージナル光線の高さが最も低いレンズ面との間に配置されるレンズのパワーを強くする必要があり、高次の軸外収差が発生する。
【0023】
条件式(4)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群G2における像側のレンズの負のパワーを強くする必要があり、高次の軸外収差が発生する。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(4)の上限値を好ましくは0.8としてもよい。
【0024】
第1実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、次の条件式(5)を満足してもよい。
0.75<f1/f<1.20 ・・・(5)
但し、f1:第1レンズ群G1の焦点距離
【0025】
条件式(5)は、第1レンズ群G1の焦点距離と、顕微鏡対物レンズOLの焦点距離との関係を規定する条件式である。条件式(5)を満足することで、第1レンズ群G1において球面収差や軸上色収差等の軸上収差を良好に補正することができる。
【0026】
条件式(5)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群G1の屈折力が大きくなりすぎて、高次の軸上収差が発生する。
【0027】
条件式(5)の対応値が上限値を上回ると、高次の軸上収差が発生する。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(5)の上限値を好ましくは0.9としてもよい。
【0028】
次に、第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズについて説明する。第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの一例として、
図1に示す顕微鏡対物レンズOL(1)は、物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とを有して構成される。第1レンズ群G1は、物体Obからの発散光束を集光して収斂光束にするレンズ群である。第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1からの収斂光束を受けるレンズ群である。また、第2レンズ群G2は、実用的には第1レンズ群G1からの収斂光束を平行光束にするように構成されてもよい。
【0029】
第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、前述の条件式(1)および条件式(3)を満足する。第2実施形態によれば、条件式(1)および条件式(3)を満足することで、視野が広くて解像度が高い顕微鏡対物レンズを得ることが可能になる。第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、
図3に示す顕微鏡対物レンズOL(2)でもよく、
図5に示す顕微鏡対物レンズOL(3)でもよく、
図7に示す顕微鏡対物レンズOL(4)でもよい。また、第2実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、前述の条件式(2)を満足してもよく、前述の条件式(4)を満足してもよく、前述の条件式(5)を満足してもよい。
【0030】
次に、第3実施形態に係る顕微鏡対物レンズについて説明する。第3実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの一例として、
図1に示す顕微鏡対物レンズOL(1)は、物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とを有して構成される。第1レンズ群G1は、物体Obからの発散光束を集光して収斂光束にするレンズ群である。第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1からの収斂光束を受けるレンズ群である。第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、像側のレンズ面が凹面である第1レンズ成分と、物体側のレンズ面が凹面である第2レンズ成分とを有して構成される。また、第2レンズ群G2は、実用的には第1レンズ群G1からの収斂光束を平行光束にするように構成されてもよい。
【0031】
第3実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、前述の条件式(1)および条件式(4)を満足する。第3実施形態によれば、条件式(1)および条件式(4)を満足することで、視野が広くて解像度が高い顕微鏡対物レンズを得ることが可能になる。第3実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、
図3に示す顕微鏡対物レンズOL(2)でもよく、
図5に示す顕微鏡対物レンズOL(3)でもよく、
図7に示す顕微鏡対物レンズOL(4)でもよい。また、第3実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、前述の条件式(2)を満足してもよく、前述の条件式(3)を満足してもよく、前述の条件式(5)を満足してもよい。
【0032】
次に、第4実施形態に係る顕微鏡対物レンズについて説明する。第4実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの一例として、
図1に示す顕微鏡対物レンズOL(1)は、物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とを有して構成される。第1レンズ群G1は、物体Obからの発散光束を集光して収斂光束にするレンズ群である。第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1からの収斂光束を受けるレンズ群である。また、第2レンズ群G2は、実用的には第1レンズ群G1からの収斂光束を平行光束にするように構成されてもよい。
【0033】
第4実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、前述の条件式(1)および条件式(5)を満足する。第4実施形態によれば、条件式(1)および条件式(5)を満足することで、視野が広くて解像度が高い顕微鏡対物レンズを得ることが可能になる。第4実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、
図3に示す顕微鏡対物レンズOL(2)でもよく、
図5に示す顕微鏡対物レンズOL(3)でもよく、
図7に示す顕微鏡対物レンズOL(4)でもよい。また、第4実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、前述の条件式(2)を満足してもよく、前述の条件式(3)を満足してもよく、前述の条件式(4)を満足してもよい。
【0034】
第1~第4実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第1レンズ群G1は、少なくとも1つのメニスカスレンズと、少なくとも1つの正の単レンズと、少なくとも1つの接合レンズとを有し、当該接合レンズは、正レンズと負レンズとから構成されてもよい。また、光軸上の物点から出射する光の高さは、第1レンズ群G1において最大となるように構成されてもよい。
【0035】
第1~第4実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第2レンズ群G2を構成する第1レンズ成分および第2レンズ成分のうち、少なくとも1つが接合レンズであってもよい。また、第2レンズ群G2の最も像側のレンズ面は、像側に凸面を向けて形成されてもよい。
【0036】
次に、本実施形態に係る顕微鏡光学系について説明する。
図10に示すように、本実施形態に係る顕微鏡光学系MCSは、物体側から順に並んだ、上述の各実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLと、結像レンズILとを有して構成される。顕微鏡対物レンズOLは、物体Obからの光を平行にする。結像レンズILは、顕微鏡対物レンズOLからの光を集光し、像面Imgにおいて物体の像を結像させる。結像レンズILは、対物レンズOLからの光を集光し、像面Imgにおいて物体Obの像を結像させる。この物体Obの像は、接眼レンズEPを通して観察者の眼Eyeにより観察される。また、物体Obの像は、接眼レンズEPに限らず、例えばリレーレンズ(図示せず)により、イメージセンサ(図示せず)が配置される第2の像面に再び結像されてもよい。本実施形態に係る顕微鏡光学系MCSは、上述の各実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLを備える。これにより、視野が広くて解像度が高い顕微鏡光学系を得ることが可能になる。
【0037】
次に、本実施形態に係る顕微鏡装置について説明する。顕微鏡装置の一例として、蛍光顕微鏡100を
図11に基づいて説明する。蛍光顕微鏡100は、ステージ101と、光源111と、照明光学系121と、顕微鏡光学系131と、接眼レンズ141と、撮像装置151とを有して構成される。ステージ101上には、例えば、スライドガラス(図示せず)とカバーガラス(図示せず)との間に保持された試料SAが載置される。また、ステージ101上には、浸液とともに試料容器(図示せず)に収容された試料SAが載置されてもよい。試料SAは、蛍光色素などの蛍光物質を含む。試料SAは、例えば、予め蛍光染色された細胞などである。
【0038】
光源111は、所定の波長帯の励起光を発生させる。所定の波長帯は、蛍光物質を含む試料SAを励起させることが可能な波長帯に設定される。光源111から出射した励起光は、照明光学系121に入射する。
【0039】
照明光学系121は、光源111から出射した励起光によって、ステージ101上の試料SAを照明する。照明光学系121は、光源111側から試料SA側へ向かう順に、コリメータレンズ122と、ダイクロイックミラー124とを備える。また、照明光学系121は、顕微鏡光学系131を構成する対物レンズ132を含む。コリメータレンズ122は、光源111から出射した励起光を平行光にする。
【0040】
ダイクロイックミラー124は、光源111からの励起光が反射し、かつ試料SAからの蛍光が透過する特性を有する。ダイクロイックミラー124は、光源111からの励起光をステージ101上の試料SAに向けて反射させる。ダイクロイックミラー124は、試料SAで発生した蛍光を顕微鏡光学系131のミラー133に向けて透過させる。ダイクロイックミラー124とコリメータレンズ122との間には、光源111からの励起光を透過させる励起フィルター123が配設される。ダイクロイックミラー124とミラー133との間には、試料SAからの蛍光を透過させる蛍光フィルター125が配設される。
【0041】
顕微鏡光学系131は、対物レンズ132と、ミラー133と、第1の結像レンズ134Aと、第2の結像レンズ134Bとを備える。また、顕微鏡光学系131は、照明光学系121を構成するダイクロイックミラー124を含む。対物レンズ132は、試料SAが載置されるステージ101の上方に対向して配置される。対物レンズ132は、光源111からの励起光を集光してステージ101上の試料SAに照射する。また、対物レンズ132は、試料SAで発生した蛍光を受光して平行光にする。
【0042】
ミラー133は、例えば、透過率と反射率の比率が1:1に設定されたハーフミラーを用いて構成される。ミラー133に入射した蛍光の一部は、当該ミラー133を透過して第1の結像レンズ134Aに入射する。第1の結像レンズ134Aを透過した蛍光は、第1の像面ImgAで結像する。観察者は、接眼レンズ141を用いて、第1の像面ImgAに結像された試料SAの像を観察することが可能である。ミラー133に入射した蛍光の他の一部は、当該ミラー133を透過して第2の結像レンズ134Bに入射する。第2の結像レンズ134Bを透過した蛍光は、第2の像面ImgBで結像する。第2の像面ImgBには、撮像装置151のエリアセンサ152が配置される。
【0043】
なお、ミラー133は、ハーフミラーに限らず、光の反射方向を選択的に切り替えることが可能な光路切替ミラーを用いて構成されてもよい。この場合、ミラー133は、試料SAからの蛍光を第1の結像レンズ134Aおよび第2の結像レンズ134Bのうちいずれか一方に切り替えて反射させる。
【0044】
撮像装置151は、イメージセンサ152を備える。イメージセンサ152には、CCDやCMOS等の撮像素子が用いられる。撮像装置151は、イメージセンサ152を用いて、第2の像面ImgBに結像された試料SAの像を撮像することが可能である。
【0045】
以上のように構成される蛍光顕微鏡100において、光源111から出射した励起光は、コリメータレンズ122を透過して平行光となる。コリメータレンズ122を透過した励起光は、励起フィルター123を通ってダイクロイックミラー124に入射する。ダイクロイックミラー124に入射した励起光は、当該ダイクロイックミラー124で反射して対物レンズ132を透過する。対物レンズ132を透過した励起光は、ステージ101上の試料SAに照射される。これにより、照明光学系121は、光源111から出射した励起光によって、ステージ101上の試料SAを照明する。
【0046】
励起光の照射によって、試料SAに含まれる蛍光物質が励起されて蛍光が出射する。試料SAからの蛍光は、対物レンズ132を透過して平行光となる。対物レンズ132を透過した蛍光は、ダイクロイックミラー124に入射する。ダイクロイックミラー124に入射した蛍光は、当該ダイクロイックミラー124を透過し、蛍光フィルター125を通ってミラー133に入射する。
【0047】
ミラー133に入射した蛍光の一部は、当該ミラー133を透過して第1の結像レンズ134Aに入射する。第1の結像レンズ134Aを透過した蛍光は、第1の像面ImgAで結像する。ミラー133に入射した蛍光の他の一部は、当該ミラー133を透過して第2の結像レンズ134Bに入射する。第2の結像レンズ134Bを透過した蛍光は、第2の像面ImgBで結像する。
【0048】
そして、観察者は、接眼レンズ141を用いて、第1の像面ImgAに結像された試料SAの像を観察する。また、撮像装置151は、イメージセンサ152を用いて、第2の像面ImgBに結像された試料SAの像を撮像する。この蛍光顕微鏡100では、対物レンズ132として、上述の各実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLが用いられる。これにより、視野が広くて解像度が高い顕微鏡装置を得ることが可能になる。
【0049】
なお、視野が広くて解像度が高くなると、撮像装置151により取得される試料SAの画像の情報量が多くなる。これに対し、イメージセンサ152としてTDI(Time Delay Integration)方式のイメージセンサを用いることで、試料SAの画像を短時間で取得することが可能である。
【0050】
本実施形態に係る顕微鏡装置の一例として、蛍光顕微鏡100について説明したが、これに限られるものではない。例えば、本実施形態に係る顕微鏡装置は、多光子励起顕微鏡や、ライトシート顕微鏡、位相差顕微鏡、共焦点顕微鏡、超解像顕微鏡等であってもよい。また、蛍光顕微鏡100は、
図11に示すような正立顕微鏡に限らず、倒立顕微鏡であってもよい。このように本実施形態により、各種の機能を有する顕微鏡システムを構成することが可能である。
【実施例】
【0051】
以下、第1~第4実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの実施例を図面に基づいて説明する。
図1、
図3、
図5、
図7は、第1~第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL{OL(1)~OL(4)}の構成を示す断面図である。これら
図1、
図3、
図5、
図7において、各レンズ群を符号Gと数字(もしくはアルファベット)の組み合わせにより、各レンズを符号Lと数字(もしくはアルファベット)の組み合わせにより、それぞれ表している。この場合において、符号、数字の種類および数が大きくなって煩雑化するのを防止するため、実施例毎にそれぞれ独立して符号と数字の組み合わせを用いてレンズ等を表している。このため、実施例間で同一の符号と数字の組み合わせが用いられていても、同一の構成であることを意味するものでは無い。
【0052】
以下に表1~表4を示すが、この内、表1は第1実施例、表2は第2実施例、表3は第3実施例、表4は第4実施例における各諸元データを示す表である。各実施例では収差特性の算出対象として、d線(波長λ=587.6nm)、g線(波長λ=435.8nm)、C線(波長λ=656.3nm)、F線(波長λ=486.1nm)を選んでいる。
【0053】
[全体諸元]の表において、βは倍率を示し、NAは開口数を示す。D0は、作動距離(ワーキングディスタンス)であり、(カバーガラスの厚さの分を除いた)物体Obから顕微鏡対物レンズOLにおける最も物体側のレンズ面(後述の第1面)までの光軸上の距離を示す。fは、顕微鏡対物レンズOLの焦点距離を示す。f1は、第1レンズ群G1の焦点距離を示す。f2は、第2レンズ群G2の焦点距離を示す。TLは、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から、第2レンズ群G2の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離を示す。L1は、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面から、第1レンズ群G1におけるマージナル光線の高さが最も高いレンズ面までの光軸上の距離を示す。L2は、第1レンズ群G1最も物体側のレンズ面から、第2レンズ群G2における第1レンズ成分の像側のレンズ面および第2レンズ成分の物体側のレンズ面のうちマージナル光線の高さが低い方のレンズ面までの光軸上の距離を示す。H1は、第1レンズ群G1におけるマージナル光線の高さの最大値を示す。H0は、第2レンズ群G2の最も像側のレンズ面におけるマージナル光線の高さを示す。
【0054】
[レンズデータ]の表において、面番号は物体側からのレンズ面の順序を示し、Rは各面番号に対応する曲率半径(物体側に凸のレンズ面の場合を正の値としている)、Dは各面番号に対応する光軸上のレンズ厚もしくは空気間隔、ndは各面番号に対応する光学材料のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、νdは各面番号に対応する光学材料のd線を基準とするアッベ数を、それぞれ示す。曲率半径の「∞」は平面又は開口を示す。また、空気の屈折率nd=1.00000の記載は省略している。
【0055】
以下、全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径R、面間隔D、その他の長さ等は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
【0056】
ここまでの表の説明は全ての実施例において共通であり、以下での重複する説明は省略する。
【0057】
(第1実施例)
第1実施例について、
図1~
図2および表1を用いて説明する。
図1は、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(1)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(1)の先端部と、物体Obを覆うカバーガラスCvとの間は、空気で満たされている。なお、カバーガラスCvのd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率は1.52とし、カバーガラスCvの厚さは0.17mmとする。
【0058】
第1レンズ群G1は、物体Obからの発散光束を集光して収斂光束にするレンズ群である。第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL11と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL12と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL13、両凹形状の負レンズL14、および両凸形状の正レンズL15を接合してなる第1接合レンズCL11と、両凸形状の正レンズL16と、両凸形状の正レンズL17および両凹形状の負レンズL18を接合してなる第2接合レンズCL12とから構成される。
【0059】
第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1からの収斂光束を平行光束にするレンズ群である。第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL21および物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL22を接合してなる第1接合レンズCL21と、両凹形状の負レンズL23および両凸形状の正レンズL24を接合してなる第2接合レンズCL22と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL25とから構成される。第1接合レンズCL21は、各実施形態における第1レンズ成分に該当する。第2接合レンズCL22は、各実施形態における第2レンズ成分に該当する。
【0060】
以下の表1に、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。
【0061】
(表1)
[全体諸元]
β=10倍
NA=0.75
D0=1.70
f=20.00
f1=15.25
f2=-140.27
TL=86.84
L1=44.56
L2=65.11
H1=16.25
H0=15.01
[レンズデータ]
面番号 R D nd νd
1 -9.455 7.36 1.7283 28.38
2 -20.308 0.20
3 -72.385 9.72 1.5932 67.90
4 -14.062 0.20
5 -621.234 7.73 1.4560 91.36
6 -14.527 2.38 1.5530 55.07
7 86.281 8.47 1.4343 95.02
8 -26.160 0.50
9 68.673 8.00 1.4978 82.57
10 -44.093 0.50
11 25.941 9.20 1.4343 95.02
12 -33.618 1.87 1.5530 55.07
13 35.321 0.80
14 32.223 5.68 1.5932 67.90
15 140.892 2.49 1.6127 44.46
16 17.005 8.70
17 -14.702 1.60 1.6730 38.26
18 180.493 4.74 1.4875 70.31
19 -32.520 1.19
20 -81.976 5.51 1.8503 32.35
21 -25.735
【0062】
図2は、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、非点収差、倍率色収差、およびコマ収差)を示す図である。この図においては、顕微鏡対物レンズに結像レンズを組み合わせた状態での諸収差を示す。
図2の各収差図において、NAは開口数、Yは像高を示し、dはd線(波長λ=587.6nm)、gはg線(波長λ=435.8nm)、CはC線(波長λ=656.3nm)、FはF線(波長λ=486.1nm)に対する諸収差をそれぞれ示す。球面収差図において、縦軸は入射瞳径の最大値を1として規格化して示した値を示し、横軸は各光線における収差の値[mm]を示す。非点収差図においては、実線は各波長に対するメリジオナル像面を示し、破線は各波長に対するサジタル像面を示す。また、非点収差図において、縦軸は像高[mm]を示し、横軸は収差の値[mm]を示す。倍率色収差図において、縦軸は像高[mm]を示し、横軸は収差の値[mm]を示す。コマ収差図は、像高Yが12.5mmのときの収差の値[mm]を示す。なお、以下に示す各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0063】
各収差図より、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズは、開口数NAが大きくなっても諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0064】
(第2実施例)
第2実施例について、
図3~
図4および表2を用いて説明する。
図3は、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(2)は、物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(2)の先端部と、物体Obとの間は、浸液IM(水)で満たされている。なお、浸液IM(水)のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率は1.33とする。
【0065】
第1レンズ群G1は、物体Obからの発散光束を集光して収斂光束にするレンズ群である。第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズL11および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL12を接合してなる第1接合レンズCL11と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL13と、両凹形状の負レンズL14および両凸形状の正レンズL15を接合してなる第2接合レンズCL12と、両凸形状の正レンズL16、両凹形状の負レンズL17、および両凸形状の正レンズL18を接合してなる第3接合レンズCL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL19および両凸形状の正レンズL120を接合してなる第4接合レンズCL14と、両凸形状の正レンズL121とから構成される。
【0066】
第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1からの収斂光束を平行光束にするレンズ群である。第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、両凸形状の正レンズL21および両凹形状の負レンズL22を接合してなる第1接合レンズCL21と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL23および物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL24を接合してなる第2接合レンズCL22とから構成される。第1接合レンズCL21は、各実施形態における第1レンズ成分に該当する。第2接合レンズCL22は、各実施形態における第2レンズ成分に該当する。
【0067】
以下の表2に、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。
【0068】
(表2)
[全体諸元]
β=10倍
NA=0.85
D0=2.57
f=20.00
f1=16.36
f2=-55.47
TL=94.07
L1=62.77
L2=74.57
H1=18.36
H0=17.14
[レンズデータ]
面番号 R D nd νd
1 ∞ 3.00 1.4585 67.85
2 -3.310 6.00 2.0010 29.12
3 -8.975 0.20
4 -35.409 4.50 1.6180 63.34
5 -22.000 0.20
6 -40.270 1.20 1.7340 51.51
7 49.596 8.00 1.5691 71.31
8 -19.999 0.20
9 66.659 7.00 1.4978 82.57
10 -39.999 1.20 1.6230 58.12
11 54.987 7.80 1.4978 82.57
12 -70.031 0.20
13 284.159 1.50 1.8160 46.62
14 41.499 10.50 1.4339 95.25
15 -36.256 0.20
16 74.995 8.50 1.4978 82.57
17 -40.229 0.30
18 75.627 8.00 1.4978 82.57
19 -31.604 3.50 1.8160 46.59
20 36.639 9.00
21 -17.876 1.50 1.5407 46.97
22 -120.465 9.00 1.7495 35.33
23 -26.266
【0069】
図4は、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、非点収差、倍率色収差、およびコマ収差)を示す図である。各収差図より、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズは、開口数NAが大きくなっても諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0070】
(第3実施例)
第3実施例について、
図5~
図6および表3を用いて説明する。
図5は、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(3)は、物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(3)の先端部と、物体Obとの間は、浸液IM(水)で満たされている。なお、浸液IM(水)のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率は1.33とする。
【0071】
第1レンズ群G1は、物体Obからの発散光束を集光して収斂光束にするレンズ群である。第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズL11および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL12を接合してなる第1接合レンズCL11と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14および両凸形状の正レンズL15を接合してなる第2接合レンズCL12と、両凸形状の正レンズL16、両凹形状の負レンズL17、および両凸形状の正レンズL18を接合してなる第3接合レンズCL13と、両凸形状の正レンズL19と、両凸形状の正レンズL120および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL121を接合してなる第4接合レンズCL14とから構成される。
【0072】
第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1からの収斂光束を平行光束にするレンズ群である。第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、両凸形状の正レンズL21および両凹形状の負レンズL22を接合してなる第1接合レンズCL21と、両凹形状の負レンズL23および両凸形状の正レンズL24を接合してなる第2接合レンズCL22とから構成される。第1接合レンズCL21は、各実施形態における第1レンズ成分に該当する。第2接合レンズCL22は、各実施形態における第2レンズ成分に該当する。
【0073】
以下の表3に、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。
【0074】
(表3)
[全体諸元]
β=12倍
NA=1.00
D0=2.30
f=16.67
f1=16.86
f2=-62.06
TL=95.04
L1=53.90
L2=73.55
H1=20.14
H0=16.89
[レンズデータ]
面番号 R D nd νd
1 ∞ 2.00 1.4585 67.85
2 -3.501 6.50 1.8830 40.76
3 -11.493 0.15
4 -37.602 5.20 1.5924 68.33
5 -13.857 0.15
6 100.000 1.50 1.6935 53.21
7 49.191 7.80 1.4339 95.25
8 -26.675 0.15
9 125.876 9.20 1.4978 82.57
10 -20.736 1.80 1.7432 49.26
11 63.797 8.00 1.4339 95.25
12 -50.110 0.15
13 132.395 9.00 1.4978 82.57
14 -34.377 0.30
15 44.923 10.00 1.4343 95.02
16 -34.217 1.20 1.8160 46.62
17 -69.507 0.15
18 34.455 6.80 1.4978 82.57
19 -66.192 1.20 1.7292 54.61
20 21.128 12.00
21 -17.007 1.29 1.7340 51.51
22 434.518 8.20 1.8830 40.76
23 -24.699
【0075】
図6は、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、非点収差、倍率色収差、およびコマ収差)を示す図である。各収差図より、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズは、開口数NAが大きくなっても諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0076】
(第4実施例)
第4実施例について、
図7~
図8および表4を用いて説明する。
図7は、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す断面図である。第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(4)は、物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(4)の先端部と、物体Obを覆うカバーガラスCvとの間は、空気で満たされている。なお、カバーガラスCvのd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率は1.52とし、カバーガラスCvの厚さは0.17mmとする。
【0077】
第1レンズ群G1は、物体Obからの発散光束を集光して収斂光束にするレンズ群である。第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL11と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL12と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL13、両凹形状の負レンズL14、および両凸形状の正レンズL15を接合してなる第1接合レンズCL11と、両凸形状の正レンズL16と、両凸形状の正レンズL17および両凹形状の負レンズL18を接合してなる第2接合レンズCL12とから構成される。
【0078】
第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1からの収斂光束を平行光束にするレンズ群である。第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、両凸形状の正レンズL21および両凹形状の負レンズL22を接合してなる第1接合レンズCL21と、両凹形状の負レンズL23および両凸形状の正レンズL24を接合してなる第2接合レンズCL22と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL25とから構成される。第1接合レンズCL21は、各実施形態における第1レンズ成分に該当する。第2接合レンズCL22は、各実施形態における第2レンズ成分に該当する。
【0079】
以下の表4に、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。
【0080】
(表4)
[全体諸元]
β=10倍
NA=0.80
D0=1.22
f=20.00
f1=15.26
f2=-184.75
TL=88.47
L1=45.28
L2=66.45
H1=16.99
H0=16.02
[レンズデータ]
面番号 R D nd νd
1 -9.267 6.84 1.7283 28.38
2 -21.308 0.20
3 -50.864 9.45 1.5932 67.90
4 -12.620 0.20
5 -437.617 6.93 1.4560 91.36
6 -13.531 3.13 1.5530 55.07
7 505.411 10.04 1.4343 95.02
8 -24.935 0.50
9 77.838 8.00 1.4978 82.57
10 -44.014 0.50
11 27.884 9.67 1.4343 95.02
12 -30.538 1.90 1.5530 55.07
13 35.211 0.80
14 33.912 5.00 1.5932 67.90
15 -613.951 3.30 1.6127 44.46
16 18.717 8.88
17 -15.554 1.90 1.6730 38.26
18 198.283 3.95 1.4875 70.31
19 -34.136 1.76
20 -84.972 5.52 1.8503 32.35
21 -26.238
【0081】
図8は、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、非点収差、倍率色収差、およびコマ収差)を示す図である。各収差図より、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズは、開口数NAが大きくなっても諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0082】
各実施例に係る顕微鏡対物レンズは、無限遠補正型のレンズであるため、物体の像を結像させる結像レンズと組み合わせて使用される。そこで、顕微鏡対物レンズと組み合わせて使用される結像レンズの一例について、
図9および表5を用いて説明する。
図9は、各実施例に係る顕微鏡対物レンズと組み合わせて使用される結像レンズの構成を示す断面図である。各実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図は、この結像レンズと組み合わせて使用したときのものである。
図9に示す結像レンズILは、物体側から順に並んだ、両凸形状の正レンズL31、両凹形状の負レンズL32、および両凸形状の正レンズL33を接合してなる第1接合レンズCL31と、両凸形状の正レンズL34と、両凸形状の正レンズL35および両凹形状の負レンズL36を接合してなる第2接合レンズCL32とから構成される。結像レンズILは、各実施例に係る顕微鏡対物レンズの像側に配置される。なお、第2接合レンズCL32の像側に、像面Imgが配置される。また、結像レンズILの入射瞳面Puは、無限遠補正型の対物レンズの射出瞳面に対応する。
【0083】
以下の表5に、結像レンズの諸元の値を掲げる。なお、[レンズデータ]の表において、面番号、R、D、nd、およびνdは、前述の表1~表4の説明で示したものと同じである。
【0084】
(表5)
[レンズデータ]
面番号 R D nd νd
1 143.588 8.80 1.4560 91.36
2 -94.993 4.00 1.5638 60.71
3 89.827 7.60 1.4560 91.36
4 -309.677 114.10
5 116.697 8.50 1.6477 33.73
6 -363.426 21.00
7 56.818 9.30 1.5725 57.30
8 -208.394 15.20 1.7380 32.33
9 33.862 67.04
【0085】
次に、[条件式対応値]の表を下記に示す。この表には、各条件式(1)~(5)に対応する値を、全実施例(第1~第4実施例)について纏めて示す。
条件式(1) 14.0≦NA×f
条件式(2) 1.0<H1/H0
条件式(3) 0.45≦L1/TL≦0.75
条件式(4) 0.75≦L2/TL≦0.90
条件式(5) 0.75<f1/f<1.20
【0086】
[条件式対応値]
条件式 第1実施例 第2実施例 第3実施例 第4実施例
(1) 15.00 17.00 16.67 16.00
(2) 1.08 1.07 1.19 1.06
(3) 0.51 0.66 0.56 0.51
(4) 0.75 0.79 0.77 0.75
(5) 0.76 0.82 0.84 0.76
【0087】
上記各実施例によれば、視野が広くて解像度が高い顕微鏡対物レンズおよび顕微鏡光学系を実現することができる。
【0088】
ここで、上記各実施例は本実施形態の一具体例を示しているものであり、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0089】
G1 第1レンズ群 G2 第2レンズ群