(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20240710BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240710BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240710BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240710BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240710BHJP
【FI】
H01L33/60
C08K3/01
C08K9/06
C08L83/04
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2023037026
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2018185525の分割
【原出願日】2018-09-28
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八木 兵庫
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 祐司
(72)【発明者】
【氏名】山下 耕一郎
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-028188(JP,A)
【文献】特開2015-131910(JP,A)
【文献】特開2014-071430(JP,A)
【文献】特開2016-084385(JP,A)
【文献】特開2015-201623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリコーン樹脂、若しくはシリコーン変性樹脂、又は、これらを含むハイブリッド樹脂、
及び(B)7-オクテニルトリメトキシシランで表面処理されたルチル型の酸化チタン、を備え、
前記酸化チタンは、前記(A)と前記(B)を備える樹脂組成物全量の60重量%~80重量%含有され、
前記酸化チタンと前記7-オクテニルトリメトキシシランとの重量比率は、前記酸化チタンの母材100重量部に対して、前記7-オクテニルトリメトキシシランは0.3重量部~2重量部である樹脂組成物を準備する工程と、
発光素子を準備する工程と、
前記発光素子上に接着部材を介して波長変換部材を配置する工程と、
前記樹脂組成物を用いて前記発光素子の側方に最小厚さが50μm以下になるように光反射部材を配置する工程と、を備
え、
前記波長変換部材を配置する工程において、前記接着部材は前記波長変換部材の側面に接するように配置され、
前記光反射部材を配置する工程において、前記光反射部材は前記接着部材を介して前記波長変換部材の側面を被覆するように配置される、発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物を準備する工程において、前記(A)と、7-オクテニルトリメトキシシランで表面処理していない酸化チタンと、を含む樹脂組成物の粘度を100としたとき、該樹脂組成物と同じ重量比率である前記(A)と前記(B)を備える前記樹脂組成物の粘度は65以上92以下である前記樹脂組成物を準備する、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記波長変換部材上に透光部材を配置する工程をさらに含む、請求項1
又は2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記光反射部材を配置する工程において、前記樹脂組成物をトランスファー成形で配置する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記酸化チタンの平均粒径は0.1μm~0.5μmである、請求項1から
4のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置は、基板上に発光素子が実装され、その発光素子から発せられる光の取出し効
率を上げるために発光素子の側方に光反射部材を配置する構造が取られている。光反射部
材は、樹脂と反射材で構成されている。
【0003】
光の取出し効率を上げるため、樹脂中の反射材の含有量を増やす方法が考えられている
が、反射材の含有量が高くなると、樹脂の流動性が悪化して反射率の高い光反射部材を成
形することが難しくなる。
【0004】
そこで、予め表面処理をした反射材を樹脂に含有させることにより、樹脂の流動性の悪
化を防止する試みがなされている。例えば、特許文献1には、反射材である白色顔料を、
例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤により疎水
化処理した上で樹脂に含有させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の部材を使用しても、樹脂の流動性が不十分であり、
反射材の含有量を増やすことは難しい。
【0007】
そこで、本実施形態は、反射率の高い樹脂組成物及び発光装置を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一実施形態の樹脂組成物は、(A)シリコーン樹脂、若しくはシリコーン
変性樹脂、又は、これらを含むハイブリッド樹脂、及び(B)下記一般式1で示されるシ
ランカップリング剤で処理された反射材、を含む樹脂組成物である。
【0009】
【0010】
R1はH又はアルキル基、R2はH又はアルキル基、R3はアルキル基である。nは、
0~30の整数である。
【0011】
本発明の一実施の形態の発光装置は、発光素子と、前記発光素子の上に配置され、上面
及び側面を有し、蛍光物質を含有する波長変換部材と、前記波長変換部材の上面を被覆し
、蛍光物質を実質的に含有しない透光部材と、前記発光素子と前記波長変換部材の間に配
置される前記樹脂組成物で成形される光反射部材と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る実施形態は、反射率の高い樹脂組成物及び発光装置を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る発光装置の概略上面図(a)と、そのA-A断面における概略断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態の樹脂組成物について説明する。但し、本発明は、この実
施の形態及び実施例に限定されない。以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体
化するための樹脂組成物及び発光装置を例示するものであって、本発明は以下のものに特
定しない。
【0015】
以下、本発明に係る実施形態の各構成について詳細に説明する。
【0016】
実施形態1
実施形態1の樹脂組成物は、(A)シリコーン樹脂、若しくはシリコーン変性樹脂、又
は、これらを含むハイブリッド樹脂、及び(B)下記一般式1で示されるシランカップリ
ング剤で処理された反射材、を含む。
【0017】
【0018】
R1はH又はアルキル基、R2はH又はアルキル基、R3はアルキル基である。nは、0~30の整数である。この樹脂組成物は、例えば、発光装置などの光半導体装置の反射部材の作製に適している。この樹脂組成物に含有されるシランカップリング剤は、ビニル基を有しており、樹脂の流動性の悪化を抑制でき、結果として、高濃度の反射材を含む反射部材を形成することができ、発光素子からの光取り出し効率を向上させることができる。例えば、R1はH又はCH3、C2H5、C3H7、R2はH又はCH3、C2H5、C3H7、R3はCH3又はC2H5、C3H7であることが好ましい。nは、3~20が好ましく、4~10がより好ましく、5~7が更に好ましい。
【0019】
以下、各構成部材について具体的に説明する。
【0020】
(A)シリコーン樹脂、若しくはシリコーン変性樹脂、又はこれらを含むハイブリッド樹
脂
本実施形態1で用いられるシリコーン樹脂若しくはシリコーン変性樹脂、又はこれらを
含むハイブリッド樹脂は特に限定されないが、耐熱性及び耐光性から、シリコーン樹脂が
望ましい。
【0021】
(B)シランカップリング剤で処理された反射材
本実施形態1で用いられるシランカップリング剤は、下記式1で表されるシランカップ
リング剤である。
【0022】
【0023】
R1はH又はアルキル基、R2はH又はアルキル基、R3はアルキル基、nは、0~3
0の整数であることが好ましい。
【0024】
カップリング剤としては、一般式1で表されるビニル基を持つカップリング剤を単独で
も用いてもよいし、このビニル基を持つカップリング剤にさらに異なる種類のカップリン
グ剤をと併用して用いてもよい。
【0025】
反射材を表面処理する際のシランカップリング剤の使用量は、特に限定されるものでは
なく適宜設定されるが、例えば、反射材100重量部に対して、例えば、0.1~10重
量部、好ましくは、0.2~3重量部、より好ましくは、0.3~2重量部の範囲に設定
される。
【0026】
反射材を上記シランカップリング剤で処理する方法は、特に限定されるものではなく、
湿式法や乾式法、インテグラルブレンド法などを用いることができる。湿式法とは、予め
反射材を溶媒に投入し、スラリーを作成した後、上記シランカップリング剤を添加して処
理する方法である。乾式法とは、予め無溶媒下で反射材をミキサーなどに投入し、シラン
カップリング剤を投入し処理する方法である。インテグラルブレンド法とは、反射材を樹
脂に投入するとき同時に上記シランカップリング剤を投入し処理する方法である。
【0027】
本実施形態1で用いられる反射材の母材としては、金属化合物、金属酸化物、窒化物、
又は、硫化物の少なくともいずれか1つであることが好ましい。具体的には、反射材の母
材は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム
、イットリア安定化ジルコニア、酸化ニオブ、酸化イットリウム、チタン酸バリウム、水
酸化マグネシウム、酸化イットリウム、窒化ホウ素などの金属酸化物等の金属化合物が挙
げられる。他にも硫化亜鉛、硫化マグネシウムなどの金属硫化物や金属窒化物でもよく、
それぞれの屈折率や反射率等の性質を考慮して適宜選択できる。金属化合物は、比較的に
化学的に安定であり、酸化、硫化等の化学反応による変色が起こりにくく、発光装置とし
て高い信頼性を得ることができる。また、金属化合物の中でも金属酸化物は、比較的安価
であるため、好ましい。
【0028】
その中でも、酸化チタンは化学的に安定であり、可視光に対して高い光反射性を有する
ので好ましい。また、酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、単斜晶型等のもの
いずれも使用でき、結晶形態の異なるものを2種以上併用することもできる。酸化チタン
はルチル型が好ましい。ルチル型の酸化チタンは、屈折率が高く、光安定性の良く、アナ
ターゼ型と比べて光触媒としての活性が低いからである。
【0029】
反射材として酸化チタンは、樹脂成形体組成物全量の10重量%~80重量%含有する
ことが好ましい。より好ましくは20重量%~70重量%である。これにより、発光装置
における発光出力を高く維持することができる。酸化チタンの形状についても特に制限は
なく、粒子状、繊維状、板状(薄片状、鱗片状、雲母状等を含む)等の各種形状のものを
いずれも使用でき、形状の異なるものを2種以上併用することもできる。酸化チタンの大
きさは、特に制限されるものではないが、平均粒子径で0.1μm~0.5μmが好まし
い。酸化チタンを用いる場合には、表面処理により光触媒効果が抑制される。
【0030】
実施形態1の樹脂組成物の製造方法は、上記一般式1で与えられるシランカップリング
剤により反射材を処理する処理工程と、シリコーン樹脂若しくはシリコーン変性樹脂、又
はこれらを含むハイブリッド樹脂と、を混合する混合工程と、を含む。
ここで、処理工程において、100重量部の反射材を0.1重量部~10重量部のシラ
ンカップリング剤で処理することが好ましく、100重量部の反射材を0.3重量部~2
重量部のシランカップリング剤で処理することがより好ましい。
【0031】
以上のように構成された実施形態1の樹脂組成物は、ビニル基を有するシランカップリ
ング剤により表面処理された反射材を含んでいるので、流動性の悪化を抑制できる為、そ
の結果薄い壁厚の光反射部材を容易に成形することができる。また、発光装置の製造時及
び作動時における熱に対して安定であり、この熱による変色で、光取出し効率が悪化する
のを抑制することができる。
【0032】
実施形態2
本発明に係る実施形態2の発光装置は、実施形態1の樹脂組成物を用いて成形された反射部材を用いる発光装置である。
図1は、本発明の一実施の形態に係る発光装置の概略上面図(a)と、そのA-A断面における概略断面図(b)である。
【0033】
実施形態2の発光装置100は、発光素子10と、波長変換部材20と、透光部材30
と、接着部材40と、光反射部材50と、を備えている。波長変換部材20は、発光素子
10の上に配置されている。波長変換部材20は、上面及び側面を有している。波長変換
部材20は、蛍光物質25を含有している。透光部材30は、波長変換部材20の上面を
被覆している。透光部材30は、蛍光物質を実質的に含有していない。接着部材40は、
発光素子10と波長変換部材20の間に配置されている。接着部材40は、波長変換部材
20の側面を被覆している。光反射部材50は、接着部材40を介して波長変換部材20
の側面を被覆している。なお、この発光装置100は、導電部材60と、配線基板70と
、を更に備えている。そして、発光素子10は、配線基板70上にフリップチップ実装さ
れている。すなわち、発光素子10の正負電極は、導電部材60を介して、配線基板の配
線75上に載置されている。
以下、実施形態2の各構成部材について説明する。
【0034】
発光素子10
発光素子は、少なくとも半導体素子構造を備え、多くの場合に基板をさらに備える。発
光素子としては、例えば発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)チップが挙げ
られる。発光素子の上面視形状は、矩形、特に正方形状又は一方向に長い長方形状である
ことが好ましいが、その他の形状であってもよく、例えば三角形状、五角形状、六角形状
等であれば発光効率を高めることもできる。発光素子は基板と半導体層とを有し、発光素
子、主に基板の側面は、上面に対して、垂直であってもよいし、内側又は外側に傾斜して
いてもよい。発光素子は、同一面側に正負(p,n)電極を有することが好ましいが、正
/負電極を互いに反対の面に有する対向電極構造でもよい。
【0035】
1つの発光装置に搭載される発光素子の個数は1つでも複数でもよい。複数の発光素子
は、直列又は並列に接続することができる。半導体素子構造は、半導体層の積層体、即ち
少なくともn型半導体層とp型半導体層を含み、また活性層をその間に介することが好ま
しい。半導体素子構造は、正負電極及び/若しくは絶縁膜を含んでもよい。正負電極は、
金、銀、錫、白金、ロジウム、チタン、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ニッ
ケル又はこれらの合金で構成することができる。絶縁膜は、珪素、チタン、ジルコニウム
、ニオブ、タンタル、アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸
化物又は窒化物で構成することができる。発光素子の発光波長は、半導体材料やその混晶
比によって、紫外域から赤外域まで選択することができる。半導体材料としては、蛍光物
質を効率良く励起できる短波長の光を発光可能な材料である、窒化物半導体(主として一
般式InxAlyGa1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)で表される)を用い
ることが好ましい。発光素子の発光波長は、発光効率、並びに蛍光物質の励起及びその発
光との混色関係等の観点から、400nm以上530nm以下が好ましく、420nm以
上490nm以下がより好ましく、450nm以上475nm以下がよりいっそう好まし
い。このほか、InAlGaAs系半導体、InAlGaP系半導体、硫化亜鉛、セレン
化亜鉛、炭化珪素などを用いることもできる。発光素子の基板は、主として半導体素子構
造を構成する半導体の結晶を成長可能な結晶成長用基板であるが、結晶成長用基板から分
離した半導体素子構造に接合させる接合用基板であってもよい。基板が透光性を有するこ
とで、フリップチップ実装を採用しやすく、また光の取り出し効率を高めやすい。基板の
母材としては、サファイア、スピネル、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、シリコン、炭
化珪素、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、硫化亜鉛、酸化亜鉛、セレン化亜鉛
、ダイヤモンドなどが挙げられる。なかでも、サファイアが好ましい。基板の厚さは、例
えば0.02mm以上1mm以下であり、基板の強度や発光装置の厚さの観点において、
0.05mm以上0.3mm以下であることが好ましい。
【0036】
波長変換部材20
波長変換部材20の母材21は、発光素子10から出射される光に対して透光性(例え
ば光透過率50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは85%以上)を有するも
のであることが好ましい。波長変換部材の母材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェ
ノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの変性樹脂若しくはハイ
ブリッド樹脂を用いることができる。なかでも、シリコーン樹脂又はその変性樹脂若しく
はハイブリッド樹脂は、耐熱性及び耐光性に優れ、好ましい。ガラスでもよい。波長変換
部材は、これらの母材のうちの1種を単層で、若しくはこれらの母材のうちの2種以上を
積層して構成することができる。このほか、波長変換部材は、蛍光体と無機物(例えばア
ルミナ)との焼結体、又は蛍光体の板状結晶などを用いることができる。なお、波長変換
部材の母材の屈折率を、透光部材(の母材)の屈折率より高くすることで、光の取り出し
効率を高めることもできる。
【0037】
波長変換部材20に含有される蛍光物質は、発光素子から出射される一次光の少なくと
も一部を吸収して、一次光とは異なる波長の二次光を出射する。これにより、可視波長の
一次光及び二次光の混色光(例えば白色光)を出射する発光装置とすることができる。蛍
光物質は、以下に示す具体例のうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いる
ことができる。具体的な蛍光物質としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系
蛍光体(例えばY3(Al,Ga)5O12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガー
ネット系蛍光体(例えばLu3(Al,Ga)5O12:Ce)、シリケート系蛍光体(
例えば(Ba,Sr)2SiO4:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えばCa8M
g(SiO4)4Cl2:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えばSi6-zAlzOz
N8-z:Eu(0<Z<4.2))、窒化物系蛍光体(例えば(Sr,Ca)AlSi
N3:Euで表されるCASN又はSCASN系蛍光体)、フッ化珪酸カリウム系蛍光体
(例えばK2SiF6:Mn)などが挙げられる。このほか、蛍光物質は、量子ドットを
含んでもよい。量子ドットは、粒径1nm以上100nm以下程度の粒子であり、粒径に
よって発光波長を変えることができる。量子ドットは、例えば、セレン化カドミウム、テ
ルル化カドミウム、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化鉛、セレン化鉛、又はAgInS2
、AgZnInSx、CuInS2などが挙げられる。量子ドットは、球状ガラス又は透
光性の無機化合物中に封止されていてもよい。本発明の一実施の形態は、これら蛍光物質
の中でも水分や酸素など大気中の成分に比較的弱い物質を使用できる点においても優れて
いる。
【0038】
透光部材30
透光部材30は、発光素子10から出射される光に対して透光性を有するものであれば
よい。透光部材30の光透過率は、発光素子10からの光の50%以上、好ましくは70
%以上、より好ましくは85%以上を透過するものであることが好ましい。透光部材30
は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル
樹脂、又はこれらの変性樹脂若しくはハイブリッド樹脂を用いることができる。なかでも
、シリコーン樹脂若しくはシリコーン変性樹脂又はそれらを含むハイブリッド樹脂は、耐
熱性及び耐光性に優れる。透光部材30はガラスでもよい。透光部材30は、これらの母
材のうちの1種を単層で、若しくはこれらの母材のうちの2種以上を積層して構成するこ
とができる。また、透光部材は、光拡散剤を含有してもよく、好ましくはその表面の滑ら
かさを維持できる程度の含有量とする。
【0039】
接着部材40
接着部材40の母材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボ
ネート樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの変性樹脂若しくはハイブリッド樹脂が挙げられ
る。なかでも、シリコーン樹脂又はその変性樹脂若しくはハイブリッド樹脂は、耐熱性及
び耐光性に優れ、好ましい。
【0040】
光反射部材50
光反射部材50は上述の樹脂組成物を用いる。光反射部材50は、発光素子10から側
方へ出射される光を効率良く上方へ反射させ、光取り出し効率を高める。その光取出し効
率を高めるためには、光反射部材中の反射材の含有量が多い方がよいが、反射材は粒状の
粒子であるため、樹脂51に混合する際に、樹脂51の粘度が高くなり、混合し難い。そ
のため、樹脂の粘度が高くなるため、樹脂に含有する反射材の含有量が制限させる。しか
し光反射部材に含まれる反射材を所定のシランカップリング剤で表面処理することで、発
光装置作製時の熱によって変色することなく、樹脂の粘度を低く抑えつつ反射材を高充填
できる。その結果、反射材が高充填された樹脂組成物を用いて、例えば、200μm以下
、さらには50μm以下の薄い光反射部材を成形することができる。このような薄い光反
射部材であっても、光反射部材の光反射率を高くできるので、光反射部材からの光の漏れ
を低減でき、光の取出し効率が高い発光装置を提供することができる。なお光反射部材を
薄くすることで、結果的に、発光装置自体の薄型化、小型化もできるようになる。
【0041】
導電部材60
導電部材60は、発光素子10の電極と配線基板70とを電気的に接続するためのもの
である。導電部材60としては、金、銀、銅などのバンプ、金、銀、銅、プラチナ、アル
ミニウム、パラジウムなどの金属粉末と樹脂バインダを含む金属ペースト、錫-ビスマス
系、錫-銅系、錫-銀系、金-錫系などの半田、低融点金属などのろう材のうちのいずれ
か1つを用いることができる。
【0042】
配線基板70
配線基板70に用いられる基体71は、リジッド基板であれば、樹脂(繊維強化樹脂を
含む)、セラミックス、ガラス、金属、紙などを用いて構成することができる。樹脂とし
ては、エポキシ、ガラスエポキシ、ビスマレイミドトリアジン(BT)、ポリイミドなど
が挙げられる。セラミックスとしては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジル
コニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタン、若しくはこれらの混合物などが
挙げられる。金属としては、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン
、若しくはこれらの合金などが挙げられる。基体は、可撓性基板(フレキシブル基板)で
あれば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポ
リマー、シクロオレフィンポリマーなどを用いて構成することができる。なお、これらの
基材のうち、特に発光素子の線膨張係数に近い物性を有する基材を使用することが好まし
い。
【0043】
基体71に設けられる配線75は、基体の少なくとも上面に形成され、基体の内部及び
/若しくは側面及び/若しくは下面にも形成されていてもよい。また、配線75は、発光
素子が搭載される素子搭載部75a、外部接続用の端子部75b、これらを接続する引き
出し配線部などを有することが好ましい。配線は、銅、鉄、ニッケル、タングステン、ク
ロム、アルミニウム、銀、金、チタン、パラジウム、ロジウム、又はこれらの合金で形成
することができる。これらの金属又は合金の単層でも多層でもよい。特に、放熱性の観点
においては銅又は銅合金が好ましい。また、配線の表層には、接合部材の濡れ性及び/若
しくは光反射性などの観点から、銀、白金、アルミニウム、ロジウム、金若しくはこれら
の合金などの層が設けられていてもよい。
以上のように構成された実施形態2の発光装置は、所定のシランカップリング剤により
表面処理された反射材を多く含む光反射部材を備えているため、発光装置からの光取出し
効率を向上させることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明に係る実施例について説明する。ただし、本発明は下記の実施例に制限さ
れるものではない
表1に示すように、実施例1及び比較例1、2の樹脂組成物を作製した。実施例1の樹
脂組成物は、シリコーン樹脂と、ビニル基を持つカップリング剤と、酸化チタンである反
射材と、を重量比率(%)でシリコーン樹脂:カップリング剤:反射材=34:1:65
となるよう秤量、調整を行った。ビニル基を持つシランカップリング剤の種類については
、7-オクテニルトリメトキシシラン試薬(94.4%)を使用した。酸化チタンはルチ
ル型を使用した。比較例1及び2の樹脂組成物は、実施例1とカップリング剤を使用しな
い以外は同じ材料を使用した。比較例1の樹脂組成物は、シリコーン樹脂と、表面処理し
ていない酸化チタンである反射材と、を重量比率(%)でシリコーン樹脂:反射材=40
:60となるよう秤量、調整を行った。比較例2の樹脂組成物は、シリコーン樹脂と、表
面処理していない酸化チタンである反射材と、を重量比率(%)でシリコーン樹脂:反射
材=35:65となるよう秤量、調整を行った。実施例1の光反射部材は、所定量の酸化
チタンと、カップリング剤とを同時に投入し、インテグラルブレンドにて処理を行った。
実施例1の樹脂組成物は、カップリング剤で処理した酸化チタンと、シリコーン樹脂と、
を所定量投入し、自転公転ミキサーにて混合し作成した。比較例1及び2の樹脂組成物も
、同様に、酸化チタンと、シリコーン樹脂と、を所定量投入し、自転公転ミキサーにて混
合し作成した。
【0045】
実施例1、比較例1及び2の樹脂の流動性評価は、樹脂粘度測定をレオメーターにて測
定を行った。測定条件は、常温で、回転数5rpmの粘度を測定した。評価結果として示
す値は、比較例1の樹脂組成物の粘度(Pa・s)を100としたときの相対値にて示し
た。
【0046】
【0047】
評価結果において、比較例1の樹脂組成物に対して、反射材の重量比率が高いにもかか
わらず、実施例1の樹脂組成物の方が、粘度が低く流動性が大幅に改善された。一方、比
較例1の樹脂組成物に対して、反射材の重量比を高くした比較例2の樹脂組成物は、粘度
が大幅に高くなり、流動性に乏しくなり、光反射部材の成形が困難であった。よって比較
例2の樹脂組成物を用いて光反射部材を成形すること、及び、光取り出し効率の高い光反
射部材を成形することは困難である。
【0048】
(実施例2)
実施例2の発光装置を作製する。
実施例2の発光装置として、実施例1の樹脂組成物をトランスファー成形して光反射部
材を作成し、その光反射部材を用いて発光装置を作製する。発光装置はNSSW703B
-HG(日亜化学工業株式会社製)の形態を採る。
【0049】
比較例3の発光装置は、比較例1の樹脂組成物を用いた以外は実施例2の発光装置と同
様の方法にて作製する。表2は、実施例2及び比較例3の発光装置の光束を測定した結果
である。
【0050】
【0051】
発光装置の全光束評価は、積分式全光束測定機にて実施し、比較例3の発光装置の全光
束を100としたときの全光束比にて示す。
この結果から、実施例2の発光装置は、比較例3の発光装置より全光束が大きい。
【0052】
(実施例3)
従来、発光装置に使用される光反射部材は、何ら表面処理していない酸化チタン粒子等
の反射材を含有する樹脂を用いて作製されている。
しかしながら、発光素子からの光取り出し効率を高めるため、光反射部材に含有される
反射材の濃度を高くすることが試みられている。光反射部材の母材である樹脂に表面処理
していない反射材を混合させると樹脂の粘度が急激に高くなり、流動性が悪化するために
、樹脂に反射材を高充填することが難しい。
【0053】
例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤により表面処理された酸化チタンを
用いて光反射部材を試作してみたところ、樹脂の流動性が悪く、光反射部材の成形が困難
であった。
一方、本実施形態で説明した、ビニル基を有するシランカップリング剤により表面処理
された酸化チタンを用いた光反射部材を試作してみたところ、樹脂の流動性の悪化を抑制
することができ、光反射部材も容易に成形でき、また、光反射部材を高充填することがで
きる。その結果、光取出し効率の高い発光装置ができるようになった。
【0054】
これらについて、本実施形態のビニル基を要するシランカップリング剤で表面処理され
た酸化チタンと、比較例としてエポキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理され
た酸化チタンと、をそれぞれ樹脂に混合し、実施例の樹脂組成物と比較例の樹脂組成物と
を作成した。
【0055】
また、実施例3の樹脂組成物と比較例4の樹脂組成物との樹脂粘度を確認した。確認方
法としては、比較例4の樹脂組成物において、樹脂組成物の重量比率が、シリコーン樹脂
:酸化チタン:エポキシ基を持つカップリング剤=39:60:1になるように秤量、混
合し樹脂組成物を作成し粘度を評価した。エポキシ基を有するカップリング剤については
、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシランを用いた。比較例5の樹脂組成物におい
て、樹脂組成物の重量比率が、シリコーン樹脂:表面処理していない酸化チタン=40:
60になるように秤量、混合し樹脂組成物を作成し粘度を評価した。実施例3の樹脂組成
物において、樹脂組成物の重量比率が、シリコーン樹脂:酸化チタン:ビニル基を持つカ
ップリング剤=39:60:1になるように秤量、混合し樹脂組成物を作成した。ビニル
基を有するシランカップリング剤については、7-オクテニルトリメトキシシランを用い
た。実施例3及び比較例4の樹脂組成物作成後、粘度測定をレオメーターにて常温で5r
pmにて測定を行い評価した。
【0056】
その結果、比較例5の表面処理していない酸化チタンを用いた樹脂組成物の粘度(Pa
・s)を100とすると、実施例3のビニル基を持つシランカップリング剤により表面処
理された酸化チタンを用いた樹脂組成物の粘度(Pa・s)は65になった。それに対し
て、比較例4のエポキシ基を持つシランカップリング剤で表面処理された酸化チタンを用
いた樹脂組成物の粘度(Pa・s)は113であった。この結果から、実施例3の樹脂組
成物は、流動性の悪化に抑制効果があることが確認できた。一方、比較例4の樹脂組成物
は、流動性の悪化の抑制効果はなかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の一実施の形態に係る発光装置は、液晶ディスプレイのバックライト装置、各種
照明器具、大型ディスプレイ、広告や行き先案内等の各種表示装置、プロジェクタ装置、
さらには、デジタルビデオカメラ、ファクシミリ、コピー機、スキャナ等における画像読
取装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
10…発光素子
20…波長変換部材(21…母材、25…蛍光物質)
30…透光部材
40…接着部材
50…光反射部材(51…樹脂、55…反射材)
60…導電部材
70…配線基板(71…基体、75…配線(75a…素子搭載部、75b…端子部))