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特許7518471ベルト部材、ベルト装置、定着装置及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ベルト部材、ベルト装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240710BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20240710BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G15/16
G03G15/00 552
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020105265
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021196569
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 紘也
(72)【発明者】
【氏名】平井 淳郎
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/060692(WO,A1)
【文献】特開2007-322471(JP,A)
【文献】特開2006-091182(JP,A)
【文献】特開2010-139935(JP,A)
【文献】特開2005-202091(JP,A)
【文献】特開2018-036557(JP,A)
【文献】特開2016-050960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/02
G03G 13/14-13/16
G03G 13/20
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/14-15/16
G03G 15/20
G03G 21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に用いられる無端状のベルト部材であって、
前記ベルト部材の内周面に凹凸を有し、
前記凹凸の凹部内に、前記凹凸よりも表面粗さの小さい小凹凸を有し、
前記小凹凸の表面粗さRaが0.05μm以上0.4μm以下であり、前記小凹凸の表面粗さRSmが5μm以上20μm以下であるベルト部材。
【請求項2】
前記凹凸の表面粗さRaが0.7μm以上3.0μm以下であり、前記凹凸の表面粗さ
RSmが150μm以上400μm以下である請求項1に記載のベルト部材。
【請求項3】
前記ベルト部材の内周面に、潤滑剤を有する請求項1又は2に記載のベルト部材。
【請求項4】
前記潤滑剤は、シリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、フッ素オイル、及びそれらを基油とするグリスのうち、少なくともいずれか1種類以上を含む請求項に記載のベルト部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のベルト部材と、
前記ベルト部材の内周面に対して相対的に摺接する摺接部材と、
を備えるベルト装置。
【請求項6】
無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接触する回転体と、
前記定着ベルトに対して前記回転体が接触する箇所で前記定着ベルトの内周面に直接的又は間接的に接触するニップ形成部材と、
を備え、
前記定着ベルトとして、請求項1から4のいずれかに記載のベルト部材を用いた定着装置。
【請求項7】
請求項5に記載のベルト装置、又は、請求項6に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト部材、ベルト装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置において、用紙にトナー画像を定着させる定着装置として、無端状のベルト部材を用いたものが知られている。
【0003】
この種の定着装置においては、ベルト部材が回転する際、その内側に配置されたニップ形成部材に対してベルト部材が摺動するため、ベルト部材とニップ形成部材との間で生じる摺動抵抗(摩擦)によって、回転トルクが増大したり、ベルト部材の摩耗が促進したりするなどの問題がある。そのため、ベルト部材の内周面には一般的に、グリスやオイルなどの潤滑剤が塗布されている。
【0004】
また、ベルト部材とニップ形成部材との間で生じる摺動抵抗を低減する対策として、特許文献1(特開2010-139935号公報)には、潤滑剤を安定して保持できるように、ベルト部材の内周面に、ピッチ4~5mmで高さ3~5μmのうねりと、ピッチ0.1mmで高さ3~4μmの凹凸と、を形成した構成が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ベルト部材とニップ形成部材との間で生じる摩擦抵抗は、経時的に上昇する傾向にある。このため、摩擦抵抗が上昇した場合は、ベルト部材の摩耗が促進される懸念がある。特に、ベルト部材の回転速度が速い高速機においては、ベルト部材にかかる負荷も大きくなるため、ベルト部材の摩耗が顕著になる。
【0006】
また、上記のような問題は、定着装置に用いられるベルト部材に限らず、画像形成装置に用いられるその他のベルト部材においても同様に生じる虞がある。そのため、画像形成装置に用いられるベルト部材のさらなる摺動抵抗の低減が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、画像形成装置に用いられる無端状のベルト部材であって、前記ベルト部材の内周面に凹凸を有し、前記凹凸の凹部内に、前記凹凸よりも表面粗さの小さい小凹凸を有し、前記小凹凸の表面粗さRaが0.05μm以上0.4μm以下であり、前記小凹凸の表面粗さRSmが5μm以上20μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベルト部材が回転する際の摺動抵抗を効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】本実施形態に係る定着装置の斜視図である。
図4】本実施形態に係る定着ベルトの内周面の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0012】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部200と、転写部300と、定着部400と、記録媒体供給部500と、記録媒体排出部600と、を備えている。
【0013】
画像形成部200には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、が設けられている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外、基本的に同様の構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体である感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段である帯電ローラ3と、感光体2上にトナー画像を形成する現像手段である現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段であるクリーニング装置5と、を備えている。露光装置6は、画像情報に基づいて感光体2の帯電面を露光して静電潜像を形成する潜像形成手段である。なお、図1では、1つの作像ユニット1Bkが備える感光体2、帯電ローラ3、現像装置4、クリーニング装置5のみに符号を付しており、その他の作像ユニット1Y,1M,1Cにおいては符号を省略している。
【0014】
転写部300には、記録媒体である用紙に画像を転写する転写装置8が設けられている。なお、画像が形成(転写)される記録媒体は、紙(普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、封筒などを含む)のほか、OHPシートなどの樹脂製のシートであってもよい。転写装置8は、中間転写ベルト11と、4つの一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13と、を有している。中間転写ベルト11は、表面に画像を担持してその画像を用紙に転写する転写部材であり、無端状のベルト部材で構成されている。各一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11を介してそれぞれ別の感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に、中間転写ベルト11と各感光体2とが接触する一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架する複数のローラの1つに接触し、中間転写ベルト11との間に二次転写ニップを形成している。
【0015】
定着部400には、用紙を加熱する加熱装置であると共に、熱により用紙上の画像を定着させる定着装置9が設けられている。
【0016】
記録媒体供給部500には、用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15と、が設けられている。
【0017】
記録媒体排出部600には、用紙を画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙を載置する排紙トレイ18と、が設けられている。
【0018】
次に、図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0019】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2、及び中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が回転することにより、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触して一旦停止される。
【0020】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkでは、まず、帯電ローラ3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーやその他の異物はクリーニング装置5によって除去され、感光体2は次の静電潜像の形成に備えられる。
【0021】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出され、一連の印刷動作が完了する。
【0022】
以上の印刷動作の説明は、フルカラー画像を形成するときの動作についてであるが、4つの作像ユニットのうち、いずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像ユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0023】
図2は、本実施形態に係る定着装置9の概略構成図、図3は、その斜視図である。以下、図2及び図3を参照しつつ、本実施形態に係る定着装置9の構成について説明する。
【0024】
図2及び図3に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ハロゲンヒータ22と、端部ヒータ27A,27Bと、ニップ形成部材23と、反射部材24と、ステー25と、熱移動補助部材26と、ベルト保持部材28と、を備えている。
【0025】
定着ベルト20は、用紙Pの未定着画像担持面側に配置され、用紙P上の未定着画像を定着させる定着部材である。定着ベルト20は、無端状のベルト部材によって構成されている。また、定着ベルト20は、その長手方向Zの両端に挿入された一対のベルト保持部材28(図3参照)によって回転可能に保持される。各ベルト保持部材28は、例えばフランジ状に形成されており、定着ベルト20の内側に余裕をもって挿入される。このため、定着ベルト20は、一対のベルト保持部材28によって非張架状態(ベルトにテンションがかからない、いわゆるフリーベルト方式)で回転可能に保持される。
【0026】
加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に接触する回転体である。具体的に、加圧ローラ21は、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴムなどから成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFA又はPTFEなどから成る離型層によって構成されている。加圧ローラ21は、バネなどの付勢部材によって定着ベルト20に対して加圧(圧接)され、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に、ニップ部Nが形成されている。また、加圧ローラ21は、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ21が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nにおいて定着ベルト20に伝達されることにより、定着ベルト20が従動回転する。図2に示すように、未定着画像を担持する用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に進入すると、回転する定着ベルト20と加圧ローラ21とによって用紙Pが搬送されながら加熱されると共に加圧され、未定着画像が用紙Pに定着される。
【0027】
本実施形態では、加圧ローラ21を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ21の内部にヒータを配置してもよい。また、加圧ローラ21が弾性層を有しない場合は、熱容量が小さくなるため、定着性が向上する。しかしながら一方で、未定着トナーを定着させるときに、ベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、加圧ローラ21が厚さ100μm以上の弾性層を有することが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層があることにより、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができ、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。加圧ローラ21の弾性層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ21の内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いることも可能である。ソリッドゴムに比べてスポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト20の熱が奪われにくくなる点で望ましい。
【0028】
ハロゲンヒータ22は、定着ベルト20の内側に配置され、定着ベルト20の内周面に光(例えば赤外線光)を直接照射して加熱する加熱源である。このような加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、カーボンヒータ、セラミックヒータなどの他の輻射熱式のヒータを用いることが可能である。また、電磁誘導加熱方式の加熱源を用いることも可能である。本実施形態では、2つのヒータ22が定着ベルト20内に配置されているが、ヒータ22の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0029】
端部ヒータ27A,27Bは、定着ベルト20の長手方向両端部側をニップ部Nで加熱する一対の端部熱源である。端部ヒータ27A,27Bは、定着ベルト20の長手方向に互いに離れた位置に独立して配置されると共に、ニップ形成部材23に一体的に設けられている。
【0030】
ニップ形成部材23は、定着ベルト20の内側に配置され、加圧ローラ21からの加圧力を受けて定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nを形成する部材である。本実施形態では、ニップ形成部材23が、熱移動補助部材26を介して定着ベルト20の内周面に接触しているが、熱移動補助部材26を省略し、ニップ形成部材23が定着ベルト20の内周面に直接接触してもよい。ニップ形成部材23の材料としては、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材を用いることが望ましい。具体的に、ニップ形成部材23の材料としては、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂が挙げられる。このような耐熱性部材でニップ形成部材23を構成することにより、定着温度域で、熱によるニップ形成部材23の変形を防止することができるため、安定したニップ部Nの状態が確保でき、出力画質の安定化を図れる。
【0031】
ステー25は、ニップ形成部材23の加圧ローラ21側とは反対側に接触して、ニップ形成部材23を支持する支持部材である。ステー25によってニップ形成部材23が支持されることにより、加圧ローラ21の圧力によるニップ形成部材23の撓み、特に定着ベルト20の長手方向に渡るニップ形成部材23の撓みが抑制され、均一な幅のニップ部Nが形成される。ステー25の材料としては、剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料が好ましい。
【0032】
反射部材24は、ヒータ22から放射される熱及び光(例えば、赤外線光)を反射する部材である。反射部材24によってヒータ22の熱や光が定着ベルト20に向かって反射されることにより、定着ベルトが効率良く加熱される。また、反射部材24は、ステー25とヒータ22との間に配置されており、ヒータ22によるステー25の加熱も抑制できる。このため、熱エネルギーの無駄な消費を低減でき、省エネルギー化も図れる。
【0033】
また、反射部材24の機能を、ステー25に持たせてもよい。例えば、ヒータ22に対向するステー25の対向面を鏡面処理することにより、ステー25が反射部材24の機能を兼ねるように構成することができる。この場合、反射部材24を別途設けなくてもよいので、小型化及び低コスト化に有利となる。
【0034】
熱移動補助部材26は、ニップ形成部材23と定着ベルト20との間に介在し、定着ベルト20の熱量をその長手方向に移動させ、定着ベルト20の表面温度のばらつきを抑制する部材である。熱移動補助部材26は、ニップ形成部材23よりも熱伝導率が高い高熱伝導材料によって構成される。熱移動補助部材26の材料としては、例えば、銅、アルミニウム、あるいは銀などを用いることができる。本実施形態では、定着ベルト20の内周面に対して対向する熱移動補助部材26の対向面が、平面状に形成されているが、凹形状やその他の形状であってもよい。熱移動補助部材26の対向面が凹形状の場合は、これに倣ってニップ部Nも凹形状になり、定着ベルト20に対する用紙Pの分離性が向上する。
【0035】
ところで、上記のような定着ベルト20を備える定着装置9においては、定着ベルト20が回転すると、熱移動補助部材26に対して定着ベルト20が摺動する。このとき、定着ベルト20と熱移動補助部材26との間での生じる摺動抵抗が経時的に上昇すると、定着ベルト20が摩耗したり、回転トルクが大きくなったりする懸念がある。特に、高速機の場合は、摺動抵抗による定着ベルトへの負荷が大きくなるため、定着ベルトの摩耗が顕著となる虞がある。また、このような問題は、定着ベルト20の内周面に接触する部材が熱移動補助部材26である場合に限らず、ニップ形成部材23やその他の部材が定着ベルト20の内周面に(直接)接触する場合も同様に発生し得る。すなわち、回転する定着ベルト20の内周面に対して相対的に摺接する摺接部材が設けられている構成においては、摺接部材と定着ベルト20との間で摺動抵抗が発生するため、定着ベルト20の摩耗の虞がある。そこで、本実施形態に定着装置9においては、定着ベルト20の摩耗を抑制するため、定着ベルト20の構成を次のようにしている。
【0036】
図4は、本実施形態に係る定着ベルトの内周面の拡大断面図である。図4において、上側が定着ベルトの内側(内径側)、下側が定着ベルトの外側(外径側)である。
【0037】
図4に示すように、本実施形態に係る定着ベルト20においては、その内周面20aに、表面粗さ(凹凸差)が相対的に大きい凹凸30と、その凹凸30よりも表面粗さ(凹凸差)が小さい小凹凸31と、が設けられている。凹凸30は、定着ベルト20の周方向(回転方向)の全体に渡って交互に設けられた多数の凸部41及び多数の凹部42を有する。ここで、互い隣り合う凸部41及び凹部42の最頂部から最低部までの高さの中間位置を中間点mとすると、本発明における凸部41及び凹部42は、中間点mを境界として区分された凸部及び凹部を意味する。すなわち、互いに隣り合う中間点mの間で内径方向(図4における上方)へ突出する部分が凸部41であり、互いに隣り合う中間点mの間で外径方向(図4における下方)へ凹む部分が凹部42である。
【0038】
小凹凸31は、上記のように構成された凹凸30のうち、主に凹部42に設けられている。また、小凹凸31は、表面粗さRaが0.05μm以上0.4μm以下で、かつ、表面粗さRSmが5μm以上20μm以下であるように構成されている。各表面粗さRa、RSmは、JIS B 0601に準拠する方法によって測定される算術平均粗さ及び曲線要素の平均長さである。
【0039】
<小凹凸の各表面粗さRa、RSmの測定方法>
本実施形態では、株式会社キーエンス製のレーザ顕微鏡「VK-X250」を用いて小凹凸31の各表面粗さRa、RSmを測定した。そのときの測定条件は、下記の通りである。
(1)測定長:各凹部42の長さ
(2)カットオフ周波数:0.025mm
(3)測定箇所:10点(平均値)
【0040】
以上のように、本実施形態に係る定着ベルト20においては、内周面20aに設けられた凹部42内に微細な小凹凸31が形成され、さらに、小凹凸31の表面粗さRaが0.05μm以上0.4μm以下で、かつ、表面粗さRSmが5μm以上20μm以下となるように構成されていることにより、小凹凸31の表面と潤滑剤との接触角が大きくなり、小凹凸31において撥油性(撥液性)、いわゆるロータス効果が得られるようになる。このロータス効果によって、凹部42内の潤滑剤が凸部41へ供給されやすくなる。すなわち、凹部42よりも潤滑剤が保持されにくい凸部41への潤滑剤供給性能が向上するため、定着ベルト20の内周面20aにおいて潤滑剤が均一又はそれに近い状態に分散し、局部的な潤滑剤不足が経時的に発生するのを抑制できるようになる。これにより、定着ベルト20と熱移動補助部材26との間で生じる摩擦抵抗を効果的に低減できるようになり、定着ベルト20の摩耗や回転トルクの上昇を長期的に抑制することが可能となる。
【0041】
このように、本実施形態に係る定着ベルト20によれば、定着ベルト20の耐久性を向上させることができるため、定着ベルト20に摩耗や損傷が生じにくくなり、信頼性が向上する。特に、定着ベルトに負荷がかかりやすい高速機においては、本実施形態に係る定着ベルトを適用することにより、大きな効果(ベルトの摩耗抑制効果)が得られるようになる。
【0042】
また、定着ベルト20の内周面20aにおいて、潤滑剤をより効果的に分散保持できるようにするには、凹凸30の表面粗さRaが0.7μm以上3.0μm以下であって、かつ、凹凸30の表面粗さRSmが150μm以上400μm以下であることが好ましい。凹凸30の各表面粗さRa、RSmをこのような範囲内に設定することにより、潤滑剤を分散保持しやすくなり、局部的な摩耗をより効果的に抑制できるようになる。加えて、定着ベルト20と熱移動補助部材26との接触面積も低減できるため、摩擦抵抗のより一層の低減を実現できる。
【0043】
ここで、凹凸30における各表面粗さRa、RSmは、上述の小凹凸31の各表面粗さRa、RSmと同様に、JIS B 0601に準拠する測定方法によって測定が可能である。具体的な測定方法(測定条件)は次の通りである。
【0044】
<凹凸の各表面粗さRa、RSmの測定方法>
本実施形態では、株式会社キーエンス製のレーザ顕微鏡「VK-X250」を用いて、下記の測定条件により凹凸30の各表面粗さRa、RSmを測定した。
(1)測定長:3mm
(2)カットオフ周波数:0.8mm
(3)測定箇所:10点(平均値)
【0045】
以下、本実施形態に係る定着ベルトの構成要素及び製造方法について説明する。
【0046】
<定着ベルトの構成要素>
定着ベルトは、少なくともポリイミドなどから成る無端状(筒状)の基材を有する。なお、定着ベルトは、基材のみを有する単層構造である場合に限らず、複数層から成るベルト部材であってもよい。定着ベルトが複数層から構成されている場合、複数層のポリイミド層が用いられていてもよいし、ポリイミド層を基材として、ポリイミド以外の材料を含む層が用いられていてもよい。例えば、定着ベルトは、ポリイミド層から成る基材と、基材の外周面に設けられたシリコーンゴムなどの弾性層と、弾性層の外周面に設けられたテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などから成る離型層と、を有する3層構造であってもよい。また、定着ベルトは、基材及び弾性層の実から成る2層構造であってもよい。
【0047】
また、定着ベルトは、導電性粒子を含んでいてもよい。導電性粒子としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属酸化物、カーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などを用いることができる。定着ベルトが導電性粒子を含むことにより、定着ベルトに帯電性が付与され、定着ベルトの帯電が抑制されて、記録媒体(用紙)と定着ベルトとが静電吸着することを抑制して、安定して記録媒体を排出することができる。
【0048】
金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。また、金属酸化物としては、分散性を良くするために、上記の金属酸化物に予め表面処理を施したものも挙げられる。また、カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等が挙げられる。また、導電性高分子材料としてはポリアニリンなどが挙げられる。また、導電性粒子は1種のみを用いてもよいし、必要に応じて、複数種の導電性粒子を併用してもよい。
【0049】
また、定着ベルトは、所望の性状に応じて、例えば、分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などの他の添加剤を含んでいてもよい。
【0050】
また、定着ベルトのポリイミド層の平均厚さは、60μm以上140μm以下であることが好ましい。定着ベルトのポリイミド層の平均厚さが60μm以上140μm以下であることにより、定着ベルトとしての強度を確保し、かつ、十分な伝熱性を備えることができる。また、定着ベルトが、ポリイミド層と、弾性層と、離型層と、を有する3層構造である場合、定着ベルト全体の厚さは400μm~500μm程度とすることができる。なお、定着ベルトのポリイミド層の平均厚さとは、定着ベルト内の任意の10点を測定した値の平均値である。厚さの測定には、指針式の膜厚計や渦電流式の膜厚計などの一般汎用品が使用でき、例えば、アンリツ社のエレクトリックマイクロメーターを使用することができる。
【0051】
定着ベルトのポリイミド層を構成するポリイミドは、特に限定されず、芳香族系のポリイミドを好適に用いることができる。芳香族系のポリイミドは、例えば、芳香族多価カルボン酸無水物又はその誘導体と芳香族ジアミンとの反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られる。芳香族系のポリイミドは、その剛直な主鎖構造により溶媒などに対して不溶であり、また不融の性質を有する。そのため、まず、芳香族多価カルボン酸無水物と芳香族ジアミンとの反応により、有機溶媒に可溶なポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を合成する。このポリアミック酸の段階で様々な方法で成形加工が行われ、成形加工したポリアミック酸を加熱もしくは化学的な方法で脱水反応させて環化(イミド化)し、ポリイミドとされる。加熱によるイミド化は、ポリアミック酸を、例えば、200℃~350℃に加熱処理することによってポリイミドに転化する方法であり、ポリイミド(ポリイミド樹脂)を得る簡便かつ実用的な方法である。本実施形態に係る定着ベルトを構成するポリイミドの前駆体となるポリアミック酸は、定着ベルトのポリイミド層に含まれる上記の溶媒を重合反応における溶媒として用いて、既知の方法で製造することができる。
【0052】
<定着ベルトの製造方法>
定着ベルトの製造方法の概要は、まず、円筒形の定着ベルトの金型(支持体)の外面に、ポリイミド前駆体を含有する塗工溶液を塗工して、ポリイミド前駆体を含有する塗工膜を形成する。次に、形成された塗工膜を、円筒形の金型を加熱することにより、ポリイミド前駆体をポリイミド樹脂に転化し、さらに、溶媒を蒸発させる。最後に、ポリイミド樹脂を円筒形の金型から脱型する。これにより、定着ベルトが得られる。
【0053】
次に、定着ベルトの詳しい製造方法について一例を挙げて説明する。
【0054】
定着ベルトを成型する円筒形の金型としては、金属製の金型を用いることができる。この金型をゆっくりと回転させながら、ポリイミド前駆体を含有する塗工液を、ノズル、ディスペンサーなどの液供給装置を用いて、円筒形の金属金型の外面全体に均一になるように塗布して、流延(塗工膜を形成)する。その後、回転速度を所定速度まで上げて、所定速度に達したら一定速度に維持して、所望の時間、回転を継続する。そして、金型を回転させつつ徐々に昇温させて、80℃~150℃の温度で塗膜の中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒など)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。
【0055】
その後、自己支持性のある膜が形成されたところで、段階的にさらに昇温し、最終的に200℃~350℃程度で高温加熱処理(焼成)する。これにより、ポリイミド前駆体のイミド化(転化)を行う。このとき、金属金型の内側から加熱することがより望ましい。このような加熱手段を適用することができれば、どのような加熱器を使用してもよい。具体的には、加熱器として、例えば、ハロゲンヒータ、IHヒータなどが挙げられる。
【0056】
金型の加熱の方法としては、円筒形の金型の外面から加熱する方法と、内側から加熱する方法に大別されるが、目的に応じて適宜選択することができる。本実施形態に係る定着ベルトを得るためには、円筒形の金型の外面にポリイミド前駆体を含有する塗工液を塗工し、金型の内側から加熱することが効果的である。
【0057】
定着ベルトの製造方法としては、上述の方法に限られず、目的に応じて他の方法を適宜選択することができる。上記のように、ポリイミド前駆体溶液(ポリアミック酸溶液)に、必要に応じて、導電性粒子や分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などの他の添加剤を分散した塗工液を用いてもよい。
【0058】
また、支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、円筒状の金属金型などが挙げられ、金型の外面にポリイミド前駆体溶液を塗布する。金型に使用する金属の種類としては、耐久性や加工性の観点からステンレスやアルミが好ましいがこれに限らない。金型表面には凹凸が形成されており、凹凸形成方法としてはブラスト加工などが挙げられるがこれに限らない。ブラスト加工として、初めに番手の大きい(粒径の小さい)粒子でブラスト加工(一次ブラスト加工)し、その後、番手の小さい(粒径の大きい)粒子でブラスト(二次ブラスト加工)することにより、容易に本発明のベルト内面形状を得ることができる。このとき、番手の大きいものとしては、#1000~4000あたりが好ましく、番手の小さなものとしては#150~#30あたりが好ましい。ブラスト粒子の材質としては、シリカ、アルミナ、ガラス、ジルコニアなどの金属酸化物が加工性の点で好ましいがこれに限らない。
【0059】
<潤滑剤>
定着ベルトの内周面に塗布される潤滑剤としては、耐熱性の高い(例えば、200℃以上の耐熱性を有する)潤滑剤を用いることが好ましい。耐熱性の高い潤滑剤を用いることにより、定着ベルトと摺接部材との間で生じる摩擦抵抗を長期に亘って低減でき、定着ベルトの耐久性を向上させることができる。具体的に、潤滑剤としては、シリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、フッ素オイル、及びそれらを基油とするグリスのうち、少なくともいずれか1種類以上を含むものを適用できる。
【0060】
続いて、本発明の効果確認試験について説明する。
【0061】
<効果確認試験>
本試験では、下記表1に示す本発明の実施例1~9及び本発明とは異なる比較例1~4に係る定着ベルトを、電子写真方式の画像形成装置(株式会社リコー製、imagio Color 5100)に搭載される定着装置に用い、駆動開始時の定着装置に生じる初期回転トルクと、300万枚の用紙を定着処理した際に定着装置に生じる通紙後回転トルクに、異常があるか否かを確認した。表1では、回転トルクに異常があった場合を×、異常がなかった場合を○としている。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例1~9及び比較例1~4に係る各定着ベルトは、基本的に上述の製造方法に基づいて作製されている。各定着ベルトのより詳しい構成及び態様については下記の通りである。
【0064】
<実施例1>
実施例1は、定着ベルトの製造に使用する金型として、外径147mm、長さ340mmで、材質がSUS304の金型を用いた。また、定着ベルトの内周面に凹凸及び小凹凸を形成するためのブラスト加工は、株式会社不二製作所製の「ニューマブラスターSFK-2」ブラスト装置を用いて行った。小凹凸を形成するための一次ブラスト加工には、#3000のアルミナ粒子を用い、表面粗さが相対的に大きい凹凸を形成するための二次ブラスト加工には、#120のジルコニア粒子を用いた。また、各ブラスト加工時の金型の回転数を200rpmとし、一次ブラスト加工におけるブラスト粒子吐出時間及び吐出圧は、40分、0.1MPa、二次ブラスト加工におけるブラスト粒子吐出時間及び吐出圧は、20分、0.2MPaとした。また、定着ベルトの内周面に、信越シリコーン株式会社製のジメチルシリコーンオイル「KF968]4gを均一に塗布した。
【0065】
<実施例2>
実施例2は、上記実施例1の条件のうち、二次ブラスト加工に#30のジルコニア粒子を用いた。それ以外は、実施例1と同じ条件である。
【0066】
<実施例3>
実施例3は、上記実施例1の条件のうち、二次ブラスト加工に#100のジルコニア粒子を用い、二次ブラスト加工の吐出圧を0.15MPaとした。また、定着ベルトの内周面に塗布する潤滑剤として、信越シリコーン株式会社製のフロロシリコーンオイル「FL100」を用いた。それ以外は、実施例1と同じ条件である。
【0067】
<実施例4>
実施例4は、上記実施例1の条件のうち、二次ブラスト加工に#150のジルコニア粒子を用い、二次ブラスト加工の吐出圧を0.5MPaとした。また、定着ベルトの内周面に塗布する潤滑剤として、ダイキン工業株式会社製のフッ素オイル「デムナムS-200」を用いた。それ以外は、実施例1と同じ条件である。
【0068】
<実施例5>
実施例5は、上記実施例1の条件のうち、一次ブラスト加工に用いる粒子を#5000のアルミナ粒子とし、二次ブラスト加工に用いる粒子を#30のジルコニア粒子とし、さらに、二次ブラスト加工の吐出圧を0.5MPaとした。それ以外は、実施例1と同じ条件である。
【0069】
<実施例6>
実施例6は、上記実施例1の条件のうち、一次ブラスト加工に用いる粒子を#2000のアルミナ粒子とし、二次ブラスト加工に用いる粒子を#30のジルコニア粒子とし、さらに、一次ブラスト加工の吐出圧を0.2MPaとし、二次ブラスト加工の吐出圧を0.5MPaとした。それ以外は、実施例1と同じ条件である。
【0070】
<実施例7>
実施例7は、上記実施例1の条件のうち、一次ブラスト加工に用いる粒子を#5000のアルミナ粒子とした以外、同じ条件である。
【0071】
<実施例8>
実施例8は、上記実施例1の条件のうち、一次ブラスト加工に用いる粒子を#2000のアルミナ粒子とし、二次ブラスト加工に用いる粒子を#30のジルコニア粒子とし、さらに、一次ブラスト加工の吐出圧を0.2MPaとした。それ以外は、実施例1と同じ条件である。
【0072】
<実施例9>
実施例9は、上記実施例1の条件のうち、二次ブラスト加工に用いる粒子を#30のジルコニア粒子とし、さらに、二次ブラスト加工の吐出圧を0.3MPa、吐出時間を15分とした。それ以外は、実施例1と同じ条件である。
【0073】
<比較例1>
比較例1は、上記実施例1の条件のうち、一次ブラスト加工の吐出圧を0.02MPaとした以外、同じ条件である。
【0074】
<比較例2>
比較例2は、上記実施例1の条件のうち、一次ブラスト加工に用いる粒子を#2000のアルミナ粒子とし、二次ブラスト加工に用いる粒子を#30のジルコニア粒子とし、さらに、一次ブラスト加工の吐出圧を0.4MPaとした。それ以外は、実施例1と同じ条件である。
【0075】
<比較例3>
比較例3は、上記実施例1の条件のうち、二次ブラスト加工に用いる粒子を#2000のジルコニア粒子とし、一次ブラスト加工の吐出圧を0.02MPaとした以外、同じ条件である。
【0076】
<比較例4>
比較例4は、上記実施例1の条件のうち、一次ブラスト加工に用いる粒子を#60のジルコニア粒子とし、二次ブラスト加工に用いる粒子を#5のガラスビーズとし、さらに、一次ブラスト加工の吐出圧を0.7MPaとし、二次ブラスト加工の吐出圧を0.1MPaとした。それ以外は、実施例1と同じ条件である。
【0077】
上記表1に示すように、本試験の結果、小凹凸31の各表面粗さRaが0.05μm以上0.4μm以下で、かつ、表面粗さRSmが5μm以上20μm以下の範囲にある実施例1~9においては、いずれも、初期回転トルク及び通紙後回転トルクに異常は確認されなかった。一方、小凹凸31の各表面粗さRa、RSmが前記範囲内に無い比較例1~4においては、初期回転トルク及び通紙後回転トルクに異常が確認された。すなわち、小凹凸31の各表面粗さRaを0.05μm以上0.4μm以下とし、かつ、表面粗さRSmを5μm以上20μm以下とすることにより、定着ベルトの摩耗が低減され、耐久性が向上することが、本試験により実証された結果となった。
【0078】
以上、本発明の実施形態及び各実施例について説明したが、本発明は、上述の実施形態又は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。また、上述の実施形態では、定着ベルトが、その長手方向両端に挿入されたベルト保持部材によって非張架で保持されるフリーベルト方式の定着装置を例に説明したが、本発明は、定着ベルトが複数のローラなどに掛け回されて張架される構成にも適用可能である。
【0079】
また、本発明は、画像形成装置に搭載されるベルト装置の一例である定着装置に適用される場合に限らない。例えば、本発明は、中間転写ベルト11を備える転写装置8(図1参照)などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
9 定着装置(ベルト装置)
20 定着ベルト(ベルト部材)
20a 内周面
21 加圧ローラ(回転体)
22 ハロゲンヒータ
23 ニップ形成部材
26 熱移動補助部材(摺接部材)
30 凹凸
31 小凹凸
41 凸部
42 凹部
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【文献】特開2010-139935号公報
図1
図2
図3
図4